聖夜のハッピー・アラモード
「わあぁ……見てみて!|白日《ハクヒ》、|夕日《ユウヒ》!全部がキラキラしてるよっ!」
待ちに待ったクリスマス。双子烏の白日と夕日は何故だかとてもおとなしい。視線は不思議とこちらに投げてくるのだが。
√EDENにやってきて、初めて迎えるクリスマス風景はどこも輝きに溢れている。|透羽《とうわ》・|花羅《から》のポニーテールに添えられた赤と緑のストライプのリボン――『Weaving Christmas』が誇らしげで、彼女もまた華やかだ。
これまでのクリスマスはお家で焼き魚や煮物、そんな変わらない「いつも通り」の穏やかな食卓だったけれど、今年のテーブルはお祭り色がたっぷり。
「今日は特別だもん。注文する時から、ずーっと楽しみにしてたんだから!」
ねっ、と自分に言い聞かせながら、眼の前には、夢にまで見た豪勢なご飯。
まずは、花羅の大好物――ケチャップたっぷりのオムライス!
たっぷりとろぉり卵は厚めで。スプーンでつつけば、ぷるんと弾ける香りの立体感。湯気は出来立ての証だ、鼻をくすぐって、立ち上る。
「いっただっきまーす!んむっ、……ほくほくだぁ♪」
頬張った瞬間、卵の層の絶妙な弾力と、炊きたてのご飯の食感が口いっぱいに広がった。あまりの美味しさに、花羅の頬っぺたも落ちそうなくらい、もちもちと幸せな形に膨らんだ。
「おーいしー♪えへへっ、幸せだなぁ……。ねえ、夕日もそう思うでしょ?……って、あーっ!そっちのドリアのチーズ、狙っちゃダメだよ!?」
隣で大人しくしていた夕日が、とろーり伸びたチーズに嘴を伸ばそうとして、花羅は慌ててお皿を抱え込む。
「あいてっ!?」
そわそわとしてるかと思いきや反撃が。
「これは私のー!あ、でも……そんなに欲しそうな顔するなら、一口だけだよ? ……なーんてねっ♪」
夕日ばかり構っている。
そんな湿り気のある視線を飛ばす白日が呆れたように羽を震わせた。
「わわ、白日も! ごめんごめん、もちろん忘れてないよ! ほら、このチキンもすっごく美味しそうだよ、一緒に食べよう?」
花羅は、大きいチキンを一切れ切り分け、白日の前に差し出した。
照焼味で焼き上げられたチキンのパリッとした皮の奥には、驚くほどジューシーで柔らかなお肉。はむっと美味しく頂いたなら、花羅の目はキラキラ輝きを更に増す。
瞳の中の、太陽は此処に在り。
「ふふ、白日も夕日も、今日はなんだか静かだと思ったら……美味しいものを前にして、お行儀よくしてただけなのかな?」
つついてる間は目に見えて大人しくなったのだ――。
彩り鮮やかな温野菜のサラダも忘れてはいけない。主食をたっぷり食べるなら。
「やっぱり副菜もバランスよく、選ばなきゃだよね。……だけど」
苦手な豆類が見え隠れしているような気がする。
「う~ん……」
考えに考えて、ちょっと避ける。
避けると二羽が、豆類をつつく。そこに豆類はありませんでした。
花羅の苦手は双子烏によって回収される。だってクリスマス、だからね。
「あー、食べた食べた!もうお腹がパンパンだよ。この調子だと、本当に幸せ太りしちゃうかもねー?ふふっ、でもそのくらい幸せなんだぁ♪」
お皿の上が綺麗に片付いた頃、外はすっかり帳が下りていた。
帰宅後、花羅はふと思い出したようにもう一つの大切なプレゼントを取り出した。
『静かな夜に灯るテーブルライト』。
机に置きスイッチを入れると、部屋の隅々まで、まるで夕日の光を閉じ込めたような、やわらかな黄金色の輝きが満ちていく。
「わあ……。すっごく綺麗。これ、眠る前の時間にぴったりだね。落ち着くなぁ……」
花羅はポニーテールのリボンを解き、枕元に置く。
昼間の賑やかな喧騒が嘘のように、部屋には穏やかで優しい静寂が訪れた。花羅はベッドに腰掛け、足元に寄り添う白日と夕日の頭を優しく撫でる。
「あのね、白日、夕日。私、√EDENに来て、みんなと出会えて……今日みたいなクリスマスを過ごせて、本当に良かった。サンタさんの正体は知ってるけど……でも、世界にはこんなにたくさんの優しさが溢れてるんだって、改めて思ったよ」
二羽は小さく鳴いて、花羅の手にそっと嘴を寄せた。
それは彼らなりの、愛情の示し方。
「来年も、再来年も。またこうやって、みんなで美味しいものを食べようね。約束だよ?」
窓の外では雪が静かに降り始めている。テーブルライトの光に包まれながら、花羅は心地よい眠気を感じていた。もちもちのオムライスの味、チーズの伸びる感覚、そして大切な相棒たちの温もり。そのすべてが、彼女にとってかけがえのない宝物だ。
「おやすみなさい……メリー、クリスマス」
呟きとともに花羅は夢の中へと落ちていく。その寝顔は、最高のご馳走を食べた後特有の、この上なく満ち足りた幸せな微笑みに彩られていた。静かな夜に灯る光は、彼女が深い眠りにつくまで、ずっと暖かく寄り添い続けていた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴 成功