彼らが夢の続きを見られますように
●
「ね、√能力って知ってる?」
ふと、友人の言葉を思い出す。
「なにそれ、研究所の新兵器?」
「違くて……秘められた超パワーみたいなやつ!」
夢見がちなヤツだったから。『あったら良いな』の話か、って思った覚えがある。
「それに目覚めると死なずに戦い続けられるんだって」
「死なないって|少女人形《レプリノイド》の人たちみたいな感じ?」
ちょうど教室の外を歩いていた|少女人形《レプリノイド》の人にちらっと目をやる、にこやかに手を振ってくれてちょっと気恥ずかしい気分になる。
死んだら後が無い私たちに代わって前線を維持し、戦い……散っていく頼もしい仲間達。あの人たちは死ぬ事を物ともしない。
「そういうんじゃなくて!バーッて治っちゃうみたいな」
「なるほどね」
それにしても戦い続けられる事がメリットなんて、なんとも面白くない話だ。
「死なずに戦い続けるなんて私はやだな。もっと夢のある話はないの?」
「あるよ!!√能力者になると|あの《・・》チョコレート味カロリーバーよりもずっと甘い食べ物が沢山ある世界に行けるんだって」
もう本当に夢の話だ。どうやら想像力の限界を超えてしまったらしい。
でも、そうだな。チョコレート味カロリーバーより甘い食べ物か、それって。
「すっごく良いね。そういうのが聞きたかった」……。
『バイタル低下、緊急蘇生を行います』
ガイド音と一緒に走った電流に現実に引き戻された。
ふらつく視界に映るのは機械共の残骸と、壊れた防壁と、そしてーー。
悲しんでいる暇は無い。
校舎の方から戦闘音が聞こえている。あそこには戦えない人だっている。
フレームがイカレてしまった愛銃を投げ捨てて、主の居なくなった銃を拾い上げる。
甘い夢を見る時間は終わった。|戦い続けなければ《・・・・・・・・》。
●
「√能力はそんな都合の良いものではありませんが。それでもできることはあります」
水垣シズク(機々怪々を解く・h00589)はそう呟いてスクリーンの電源を起動した。
「ゾディアック・サインによる予知が確認されました。推定24時間後、√ウォーゾーンにて学徒動員兵の訓練施設に対し包囲攻撃が仕掛けられます」
スクリーンに戦場の見取り図が映し出される。
いくつかの防壁で守られた校舎の回りには敵を表す赤いマーカーが地の果てまで埋め尽くすように置かれており。
困難という言葉では到底足りない難局であることが見て取れる。
「重要な事は2つ、戦場に指揮官に該当する機体が確認できなかったこと。撃破した人を生体パーツとして回収しようとする動きを見せなかったこと」
これらの情報から、現状√ウォーゾーンで確認されている指揮官相当の3個体の内、この戦闘に関わっている可能性が最も高い個体は1つ。
レリギオス・オーラムの統率官『ゼーロット』だ。
自らの地位と権力に拘泥する非常に人間臭いこの個体は、人類相手の戦場を全くもって重要視していない。
大して頭を使わなかった結果、量産できる機体をひたすらに送り続けるという雑で強力な戦術を取るに至ったのだろう。
「しかし、そこに突破口があります」
敵の数は無数であっても無限ではない。
いくら量産が効くとはいえ練兵所1つ攻め落とすのに資源を浪費し続ければそれこそ"責任問題"になる。
周囲に失敗を喧伝して助けを乞える性格でない以上、撤退するか……本人が直接現れるか。どちらにせよそこまで耐える事ができれば人類にも勝利の目があるはずだ。
学園を防衛しつつ、敵の戦力に想定を超えたダメージを与えることが出来れば敵の侵攻を一時停止させることすらも可能かもしれない。
敵の圧力を弱める遅滞戦闘こそが今回の戦闘の鍵となるだろう。
必要な情報を告げ終えると、シズクは祈るように強く握りしめていた手を緩め、集まった√能力者達に目を合わせた。
「皆さん。託します……勝ってくださいね」
マスターより
ナズミヤ初めまして、ナズミヤと申します。
初めてのシナリオとなりますが、皆様に喜んで頂けるリプレイが書けるよう頑張って行きたいと思います。
よろしくお願いいたします。
●第1章
実質無限に送られてくるバトラクス(背景の球体ロボット) or ドローンとの戦闘となります。この章では√能力による反撃を行いませんので自由に戦闘プレイング送っていただいて構いません。
また、現地住民との協力や治療などの戦闘以外のロールも歓迎いたします。
●第2章
集団敵としてのバトラクスとの戦闘 もしくは 食事による休憩フェーズになります。
おそらく🔵の数などで分岐を行う事になると思いますが、プレイングに分岐の希望記述頂きました場合は、そちらも参考にいたします。
●第3章
ボス、統率官『ゼーロット』との戦闘となります。
判定甘めに行う予定ですので、お好きな方法で戦っていただければと思います。
OPのNPCは意図して話しかけるなどの指定が無ければ出しませんので普通にRP送っていただいて大丈夫です。
プレイングお待ちしております。
15
第1章 冒険 『機械軍団の終わりなき進軍』
POW
真っ向から攻撃を仕掛ける
SPD
戦術や速度で敵を撹乱する
WIZ
罠や障害物を設置する
√ウォーゾーン 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●
明け方、球体に兵器だけを取りつけたような、不格好な兵たちが歩みだす。
その数は時と共に増え、やがて大地を覆い隠すほどの量となって人類の明日を築くはずだった生徒達の学び舎を取り囲んでいく。
戦場を戦い抜くための術を学んできた彼らであっても、この灰色の洪水を生き抜く術は無く。
僅かに残っていた逃走経路も瞬く間に灰色の群れによって埋め尽くされていく。
その一方で、流れに逆行しようとする者たちの姿があった。
√能力者達。他の世界から、あるいはこの世界のどこかから。生徒達の明日を守るために駆け付けた、人類にとっての紛れもない希望。
僅かに残った道を押し広げ、彼らは灰色の海に浮かぶ校舎へとたどり着く。
絶望的な防衛戦が始まろうとしていた。
(俺と同じ立場の子達か……放ってはおけないな)
できるだけ被害を出さずに難局を切り抜けられるよう、全力を尽くそう
敵を射程に捉え次第決戦気象兵器『レイン』を起動
範囲内を満遍なく攻撃してから、弾道計算+レーザー射撃で確実に仕留めていくよ
現地戦力が前線に出ていたら共闘を要請
「俺が派手にやるから、追撃を頼めるだろうか」
協力してくれるなら先にレインで攻撃して追撃をお願い
手伝ってもらう代わりに彼らが攻撃されないように守る
敵が接近してきたらハッキングでコントロールを奪って同士討ちを狙い、その隙にダッシュで接近して鎧砕きで叩き割る
怪我をしても退かずに戦い続けるよ
人々の未来を守るために、ね
アドリブ可、連携可
◆キャラ設定
敵を発見次第、人格・黄色に切り替わる
黄色は喜びの感情を強く持ち、それ以外の感情は希薄になる
攻撃してもされても、戦闘なら何でも嬉しく楽しい
戦闘中の痛みによる生の実感もまた好き
※仲間への配慮や連携は忘れない
◆人格・黄色のスタンス
戦闘の匂いしかしない世界っ!羨ましいなっ!
存分に楽しませてもらわなきゃね!
◆戦闘
黄色の武器庫から取り出したるは『アサルトライフル』
球体ロボやドローンと戦った経験はあまり無いけれど
ともあれ弱点っぽい所を狙ってどんどん撃ち落とそう
接近されたり残弾が尽きたら『ビームサーベル』を取り出し接近戦へ移行
敵が全然減らないや、とんでもないね……この世界!
◆即興連携・アドリブ歓迎
●
戦場の暴威は一切の慈悲なく命を奪うが、それでも順序はある。
心の折れたものから死ぬ。
それは兵士として鍛錬を続けてきた学徒動員兵達であっても例外ではない。
むしろ未来の為に努力し続けてきた彼らだからこそ。
無意味に、無惨に、ただ死ぬという現実ほど、心を抉る物は無い。
「あっ……!」
ドローンの狙撃によって一人の少年の手からライフルが弾き飛ばされる。
続けて、バトラクスの砲口が無防備な少年を射線に捉えーー。
砲撃は突如として方向を変え、ドローンを叩き落した。
その挙動は外部からの|干渉《ハッキング》によるものに他ならない。
即座にセンサーが元凶を探してぐるぐると回る、その探知の隙間を縫うように1つの影が走り抜けた。
影は勢いをそのままにハンドアックスを振り降ろし、装甲ごとコントロールユニットを叩き割られて停止した球体を蹴り飛ばす。
転がりだした球体ロボットは他の戦闘機械を巻き込んで混乱を作り出し。
「レイン砲台、掃射!」
降り注いだ光の雨が混乱する機械達をまとめて薙ぎ払った。
僅かな間とはいえ、安全が確保された事を確認した影……。
クラウス・イーザリー(人間(√ウォーゾーン)の学徒動員兵・h05015)は倒れた少年へと手を伸ばした。
「大丈夫だった?」
「ぁ……はい!」
少年は差し伸べられた手を取る。
歳は自分より3つか4つ上、ストライドスーツが影響してか日焼けこそないが、機械の探知を潜り抜ける身体能力、状況を利用して敵の行動を封じる判断力は戦場を知り尽くしたもの。
そして、無表情ながらも、思いやりを感じる視線。
歴戦。それもただ敵を倒すための戦いではない。この人は、誰かを救うための戦いをし続けて来た人だ、と自然と理解できた。
実際、その評価は間違っていない。
自分と同じ立場の学徒動員兵が襲われそうになるのを見て、放っておけずに自分の危険も顧みず飛び込んでしまったのだから。
だが、その姿が心の折れかけていた学徒動員兵達にとってどれほど救いであったかなど、言うまでもない。
「援軍だ、協力してこの場を切り抜けよう」
「はいっ!」
クラウスの言葉に強く頷いた所で、先ほど機械達を薙ぎ払った方から聞こえる音に、少年の目が向く。
そこにはレインの掃射で出来た空隙にいつの間にやら滑りこみ、戦闘機械の流れを押しとどめている少女……らしき姿があった。
「あちらの方も援軍ですか?」
離れた場所からでも分かる、その技量は驚くべきものだ。
球体ロボットの全重量を支える脚の関節を、爆発性のミサイルを抱えるポッドを、あるいはドローンのモノアイを。
金色に輝くアサルトライフルからばら撒くように放たれた弾丸が戦闘機械達の急所に吸い込まれていく光景は空恐ろしさすら覚える。
しかしそれ以上に気になるのはその振る舞いだ。
「どっちを向いても戦闘の匂いしかしない世界っ!……楽しいっ!」
新しいおもちゃを与えられた子供のように戦える喜びを全身で表現する姿は、一見狂気の怪物のようにも見えなくもない。
しかし、それはあくまでそう見える、と言う話。
『ザータクラの手錠』の人間災厄であるハスミン・スウェルティ(黄昏刑務所・h00354)が狂気の怪物で無いと言い切れるかは怪しい所だが。
少なくとも彼女は外から見えるそれよりもずっと理知的で、他者への思いやりに満ちている。
それは現地協力者との関係確保を進めるクラウスが動きやすいよう、とっさの時間稼ぎを判断し。唯一の感情、喜びの発露においてすら、この世界の人が嫌がりそうな『羨ましい』という一言を心の中に留めたことからも分かる。
自分はもちろん、一緒に戦う仲間も、なんなら敵だって、全員楽しい方がいい。
楽しさを基準に動く彼女は、この場においてはある意味人間以上に信頼できる存在と言えた。
「ああ、仲間だよ」
強く言い切ったクラウスに、少年は僅かに抱いていた疑念を捨てる。
「いつまでも彼女に任せてる訳にも行かない、俺が派手にやるから、追撃を頼めるだろうか」
「わかりました!」
学徒動員兵達が各々の持ち場に散っていく中、いつの間にやらハスミンはクラウスの隣に戻っていた。
「ワタシもここで援護した方が良いかな?」
にこやかにアサルトライフルを軽く振る。
せっかくなので√ウォーゾーンらしい飛び道具を色々試してみたっていい。
プリズムランチャーとかハウリングキャノンとか、面白そうな武器は他にいくらでもある。
援護は援護で|面白い《・・・》、だからやりやすい方を選んでね、と。
それに対し、クラウスはほんの少し思考を巡らせた。
敵の配置、味方の配置、フレンドリーファイアの可能性、戦局を左右する大駒を援護に回すデメリット。
蓄積された経験が判断を導き出すのは一瞬だった。
「いや、好きにしてくれ」
「最高!」
当たらないし、当てない。
双方の技量を冷静に見切っての判断を、ハスミンは彼なりの信頼と受け取った。
そうと決まれば一秒だって待っていられない。
空中にアサルトライフルを置き去り、心のままに戦闘機械の群れへと身を投げる。
「じゃあ、存分に楽しませてもらわなきゃね!」
せっかく仲間の用意してくれた舞台を楽しみ尽くさないなんてもったいない。
そして、死線を超える喜びを、闘争の痛みを楽しむならやっぱり接近戦だ!
黄色の武器庫……亜空間の収納庫から抜き放たれたビームサーベルが金の輝きを放ち、着地点のバトラクス達を数体纏めて焼き切った。
空いた隙間を埋めるかのように湧き出してきた戦闘機械達が、砲塔を向けた者から順にレイン砲台の光線によって次々と撃ち抜かれていく。
その卓越した技量に感心しながらハスミンは次なる敵の群れへと飛び込んだ。
「敵が全然減らないや、とんでもないね……この世界!」
「それでも、戦い続けよう。人々の未来を守るために、ね」
歴戦の学徒動員兵と、『手錠』の人間災厄。
異色の組み合わせの2人は、この地獄の戦場において学徒達の心を守る確かな希望となっていた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
POWの行動を選択。
仲間である学徒動員兵を護るために僕は闘う。
決戦型WZ「重装甲超火力砲撃特化機【玄武】」に搭乗して積極的に戦う。
とにかく力押しで闘う。
大口径ビームランチャー【撃滅】と超火力ビームキャノン【殲滅】をバランスよく使用する。(スキル「制圧射撃」「一斉発射」可能であれば「無差別攻撃」を使用)
止めは【大火力ファミリアセントリー一斉射撃】、前述の攻撃に加えて大火力ファミリアセントリーを5基召喚して一斉発射をする(スキルは「制圧射撃」「一斉発射」可能であれば「無差別攻撃」を使用)
台詞「この程度で僕を落とせないよ。」
「何度も僕にやられるなんて・・・所詮は機械、学習能力は無いのかい?」
「僕がいる限り、仲間に犠牲は出させないよ。」
●
幾度も、もはや数えるのも億劫になるほどに幾度も。
北城・氷(人間(√ウォーゾーン)の決戦型WZ「重装甲超火力砲撃特化機【玄武】」・h01645)は戦場に立ち続けてきた。
それは決して√ウォーゾーンに限らない。
√EDEN、最も弱く、最も豊かな世界においてすらも。
体を突き動かす戦闘機械群への静かな怒りを糧に、彼は愛機である【玄武】を駆り。
かの恐るべき統率者、スーパーロボット『リュクルゴス』すら幾度も退けてきた。
しかし、今回の戦場で彼を動かすのは怒りだけではない。
押し寄せる灰色の死に必死に抗う学徒動員兵達。
学び舎こそ違えど、共にこの世界の明日を信じ、戦い続ける仲間たち。
背後に確かに感じるその存在が彼に力を与えていた。
彼らは決して力なきものでは無いが、この戦場を生き延びるにはそれだけでは足りない。
灰色の波を押しとどめ、反撃の機会を与える絶対不壊の盾が。
無限とも思える機械の群れの喉元を穿つ必殺の矛が必要なのだ。
この戦場において、北城・氷はその|どちらも《・・・・》になりうる。
●
大きな門を構える防衛の要所、本来であれば最も厚く人員を割くべきそこに立っていたのはたった一機のWZだった。
ある程度知能のある戦闘機械であれば疑問を感じても不思議ではない状況。
だが、そんな機能など存在しない量産型達はWZごと門を破壊するべく集中砲火を浴びせ。
WZが持つ特大のビームランチャーから放たれた一撃によって弾幕ごと薙ぎ払われた
煙の向こうでWZ……重装甲超火力砲撃特化機【玄武】の装甲が紺碧に輝き。静かに動き出す。
「この程度では、僕を落とせないよ」
戦闘機械達に最期の刻を告げる宣告と共に、【玄武】の砲門が白く輝いた。
肩に備える2門のビームキャノン【殲滅】と手に構えるビームランチャー【撃滅】から放たれる光が
波のように押し寄せる戦闘機械達を次から次へと消し飛ばしていく。
火力の上では圧倒的なそれも数の優位を崩しきるには至らない。次々に補給される戦闘機械達はじりじりと門への距離を詰めていき。
さらには他の方面から応援の戦闘機械たちが現れ、その数は当初の3倍近くにまで達する。
絶体絶命とすら見える戦況。
裏を返せば、それは他の方面の戦闘機械達を十分に引き付けられたと言う事だ。
「この時を待っていたよ、来い!大火力ファミリアセントリー」
氷の力強い呼び声に応え、5機の巨大なファミリアセントリーが姿を表す。一機一機が撃滅並みの火力を持つそれが一斉に熱を帯びた。
「全砲門一斉射撃!!」
視界を埋め尽くす閃光、そして轟音。それが晴れた時、灰色に埋め尽くされていた地平が元の色を取り戻していた。
通常であればそんなことはありえない。
破壊した数の問題ではない、単なる破壊であれば戦闘機械の残骸が残り、地平はまだらに染まるだろう。
それが元の色に戻ったということは、その一撃が残骸すらも纏めて消し飛ばしたということに他ならない
そして、常であれば瞬く間に後続の兵によって埋め尽くされるその空白は、どういうわけか遅々として埋まることは無かった。
そう、与えられた命令以上の事は思考しない量産機達が躊躇っていた。
"そこ"は危険地帯だ。踏み入れば間違いなく終わる。と。
計算を遥かに超える火力に演算機能がエラーをおこしたのか。
砲火ごしにすら伝わる強い感情が戦闘機械に恐怖という感情を与えたのか。
いずれにせよ、この戦場を支配するのは数に勝る量産機ではなく、たった一機のWZ。否、たった一人の人間だ。
「僕がいる限り、仲間に犠牲は出させないよ」
門へと迫る全ての敵を受け止めて、紺碧の要塞はそこに立つ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
圧倒的な物量で蹂躙しようだなんてヒドイ話ね。
とりあえず私は人手が足りなさそうな、能力者が少なそうなエリアの最前線を目指すわ。
この状況なら小細工抜きで正面から真っ向勝負で行こうかしら。
面で攻撃をしたいから遠距離からショットガンで制圧射撃をおこなっていくわ。
これだけの数がいるとどうやっても当たるから便利ね。
基本的には敵戦力の低下を目指したいところだけど、もし負傷している人がいたら持ち前の怪力で安全圏まで運びたいわね。
やっぱり放っておけないもの。
距離が詰まってきたら『黒鉄の拳』を使って1体ずつ撃破。
私だってただただ憧れていたわけじゃないわ。
この拳だって、捨てたものじゃないのよ!
※集団戦が希望です。
影を追う。他の√能力者が居ない最も過酷な戦場で、瞳に焼きついた彼女の残影をなぞるように体を動かす。
時に破壊した戦闘機械で射線を切り、時に攻撃の予兆を示したレギオンの群れを散弾で撃ち落とす。
「これだけいるとどうやっても当たるから便利ね」
手慣れた動きでショットガンを装弾しつつ、戦場を知り尽くした戦士のようにカレン・イチノセ(承継者・h05077)は駆ける。
(でも、まだ……足りない)
こうして大きな戦場に立って初めて気づいた事だ。
呼吸が、力の通し方が、足運びが。立ちはだかる敵を倒す為の動きに体が追い付かない時がある。
弾の管理が、狙いの速さが、間合いの取り方が。一秒でも長く戦う為の技を再現出来ない時がある。
そして何より、影が見えなくなる時がある。そこに足りないのは知識か経験か、あるいは……。
それでも、足りない事にすら気づけなかった時よりずっと前に進んでいる。
憧れと共に重ねた研鑽の日々が今、確かに形となっていた。
それに、気づくのは足りない事ばかりではない。
圧倒的な物量と相対し休みなく戦い続けることで、研鑽だけでは気づけなかった動きの意図が見えてきた。
ただがむしゃらに多くの敵を倒すのではなく、選択肢を広く残し続ける。
視野を広く持ち、あらゆる状況を想定し、備え、判断する。
そうして初めて救えるものがある、ということ。
視界の隅に足を撃たれ孤立している学徒動員兵の少女の存在を捉えたカレンは、大きく地を蹴って少女と砲塔の間に割り込んだ。
距離はほぼゼロ、ショットガンを構えた所で砲撃と同士討ちになる、そんな状況。
だが、彼女にはまだ切り札が残っている。
「この拳だって、捨てたものじゃないのよ!」
跳躍の勢いをそのままに振り抜いた黒鉄の拳が球体ロボットの体躯に突き刺さった。
発射で大きく吹き飛ばされた戦闘機械は他の機械を巻き込んで盛大に爆発する。
そうして作り出された隙を逃さず、カレンは少女を抱きかかえた。
「安全圏まで運ぶわ、しっかり掴まって!」
「す、すみません、ありがとうございます……!」
少女を衛生兵に任せるついでに補給を手早くすませ、カレンは再び前線へと踏み出す。
その時、すとんと何かが腹に落ちた。
意図していたかは分からないが、いつだって自分はその背中に守られていたのだ。
だから彼女の影を追った自分もまた、後ろに立つ者を守ることが出来た。
技は、誰かの為の行動は、思いはいつだって承け継がれる
カレンは一歩、影の隣へと踏み出した。
🔵🔵🔴 成功
「私」としての初の戦闘……どこまでやれるか不安ですが、きっと学徒動員兵の方々のほうが不安でしょう
であれば、私は身を挺して戦うのみです
他の√能力者の方とは別方面を担当。とにかく進軍を妨害する必要があります
出し惜しみをしている場合ではありませんので、手近の敵に対しブレイズイントゥルージョンを使用
あまりに敵の密度が高いならば敢えて当てず、幻炎侵食地帯を作ることで攻勢や進軍の勢いを削ぎます
その上でパルスブレードやハウリングキャノンで脚部を損傷させれば、後続の敵の障害物、即ち壁とする事も可能かと
そうして壁を作った後は、侵食地帯外の敵を優先し攻撃
同様に脚部破壊・壁とする事を目的としますが、校舎を攻撃圏内に入れた敵がいる場合は対処を優先
レギオンスウォームも併用し、素早く完全破壊を敢行。その後は脚部か火器を狙うよう指示した上でレギオン達に侵食地帯付近の抑えを任せ、私自身は移動と脚部破壊行動を繰り返しましょう
基本的に、敵へのトドメは壁が出来てからで良いのです。これは防衛戦なのですから
●
南門方面の防壁上にある詰所は複雑な空気に満ちていた。
他方面の√能力者からの連絡こそあったものの。獣、あるいは竜に似た|殺戮機械《ベルセルクマシン》が味方であると信じきるには戦況はあまりにも悪い。
若干の居心地の悪さを感じながらも、一方で新藤・アニマ(我楽多の・h01684)はその反応を冷静に捉えていた。
(不安……なのですね。当然です。であれば、私のやることは1つです)
こんな時だからこそ、行動で示さなくてはならない。
ブリーフィングやこの校舎にたどり着くまでの戦闘で得た情報と自らのスペックを総合すれば少なくとも防衛という目的は果たせるだろうと判断できた。
「門正面の防衛を受け持ちます、皆さんにはそこから逸れた敵の対処をお願いできますか」
最も過酷な戦場を引き受けるというアニマの提言を、学徒動員兵達はおずおずと受け入れた。
学徒達の様々な意図を持った視線を背中に受けながらアニマは防壁の上に立つ。
手に持つのは機械への特攻を持つパルスブレード、そして√能力者であればその剣が全てを消し去る幻の炎を纏っていることも分かるだろう。火力だけで言えば十分すぎるように見えるそれをアニマは少し頼りなさげに見やった。
(これで壊れてくれると良いのですが)
今のアニマとしての人格を得てから初めての戦闘。どこまでやれるか不安を感じないわけではなかった。
だが、ちらりと学徒達の方を見て、アニマは思考を切り替える。今は為すべきことを為すときだ。
決意を抱き、一人の|殺戮機械《ベルセルクマシン》が戦場へと飛び降りた。
落下の勢いが乗ったパルスブレードは容易く装甲を切り裂き、内部の機構を破壊する。そのまま残骸を乗り越えてきた物、その左右から現れたもの、加えて三体を破壊した所でアニマは一度距離を取った。
(装甲は十分に破壊できそうですが、やはり時間対効率を考えると力押しは困難ですね。であれば、当初の予定通りに進めましょう)
思考を反映し、パルスブレードを覆っていた破壊の炎が形を変える。収束から拡散へ、大きく膨れ上がり解放の時を求めて渦巻くそれを地面へと叩きつけると。幻炎が大地を走った。
ここにいる量産型には認識すらできない幻の炎は瞬く間に周囲を侵食し、世界の理を歪ませていく。歪んだ理の中では放たれた砲弾は炸裂することなく落ち、前へと進む脚は崩れ落ちる。
√能力者であれば誰もが足を踏み入れることを躊躇う炎の中心で、アニマは再びパルスブレードを構えた。
「では、防衛線の構築を開始します」
再び戦場へと飛び込んだアニマが狙うのは球体ロボット達の脚部一点。幻炎に動きを封じられた量産機たちは、瞬く間に脚部を破壊され簡易のバリケードとなって積みあがっていく。
校舎を襲う彼らは数こそ多いものの火力はそれほど高くなく、また走破性も低い。それなりの硬さを持ち、球状ゆえに上に登ることも難しい同輩の装甲は、意外にも彼らを阻む障害として非常に優秀だった。
そうしてせき止められた流れは当然防壁へ、さらにはその先の校舎へと向かい始める。
しかし、それもまた予想された範囲を越える行動ではない。
球体ロボットがその砲塔を校舎に向けるや否や、控えていたレギオンが起動した。レギオンたちは校舎への脅威度を見極めながら、一機、また一機と確実に量産機を破壊していく。
「おおよそ状況は整いましたね」
脚部を破壊した敵による簡易バリケード、幻炎による行動の制限、レギオンによる脅威の排除。
当初想定した防衛線の構築は完了した。
後はこの防衛線をどこまで広げることが出来るか、だ。
「では、もうひと働きするとしましょう」
たった一人で戦闘機械の波を押しとどめる彼女の姿は確かに学徒達の心を奮い立たせていた。
今や彼女を疑う者は一人もいない。その姿はこの南門において人類の希望の灯そのものであった。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功
・行動選択:POW
・パワードスーツ型鹵獲兵器に搭乗して戦闘を行う。
・【立体機動推進機関】にて【空中ダッシュ】を使用。
・空中を移動しながら、【長砲身機関銃】および【自動式散弾銃】による
【牽制射撃・制圧射撃】にて敵機を処理。
・着地地点の近くに敵機がいた場合は、【炸裂加速式杭打機】にて近接攻撃を実施。
・敵機との距離が離れた場合は、√能力【暗黒の森の番犬】を使用。距離を詰めて
【慣性増幅打撃】に合わせ、【炸裂加速式杭打機】を使用。
・セリフ「……システム戦闘モード起動」、「これより戦闘に参加します」
・アドリブ可、連携可、詠唱どちらでも。
●
戦局は完全な拮抗状態にあった。
これはつまり、供給され続ける戦闘機械と、√能力者・学徒動員兵達がそれを倒す速度が一致していると言う事だ。
ここで当然の疑問が湧く。
不可能では?と言う疑問だ。
短期的にであればありうる状況だ。
しかし、戦闘機械の供給が無尽蔵なのに対し、防衛側は弾薬の補給、人員の負傷・交代など様々な原因で防衛力に波ができる。当然一か所でも破られればその時点で他の守りは全くの無意味となる。
どう考えても長期的に成立できる状況ではない。
ここに、機神・鴉鉄(|全身義体の独立傭兵《ロストレイヴン》・h04477)が居なければ。
「そろそろ弾薬切れそう、補給まだ!!?」
「待ってろ!多分すぐに……ほら!」
校舎上空から高速で接近したパワードスーツが|炸裂加速式杭打機《パイルバンカー》の衝撃で戦闘機械たちを弾き飛ばしながら着地する。
「|重力慣性制御力場《G.I.C.フォース・フィールド》の展開を確認……出力安定……加速開始……」
そして、戦闘機械たちがその脅威の規模を把握するよりも早く、再び戦場の空へと躍り出た。
当然、戦闘機械達の砲撃が一斉に向けられるが、|重力慣性制御力場《G.I.C.F.F》によって生み出される高速の三次元駆動は敵の行動予測を裏切り続け、ただの一発の被弾すら許さない。
逆に、空中から放たれる銃弾は、自身を狙うものを|長砲身機関銃《アサルトライフル》で、学徒達を狙うものを|自動式散弾銃《ショットガン》で次々に撃ち抜き、一撃でその機能を停止させていく。
そんな状況で学徒に戦力を向ける余裕などあるはずがない。
「今のうちだ!あの人が抑えてくれてるうちに補給済ませてこい!!」
「OK、すぐ戻ってくる!」
手慣れた反応から分かるように、この光景は一度や二度目ではない。
唯一この戦場全域をカバーし、防衛力の欠けた箇所をひたすらに埋め続ける事で限界の戦線を辛うじて成立させる最速の遊撃手。
それが鴉鉄の果たしている役割だった。
それは当然並大抵の事ではない。
否、そんな言葉では足りない。
|立体機動推進機関《3Dマニューバーブースター》によってもたらされる戦線間の高速移動。
卓越した戦術眼と|総体支援人工知能《オールマインド》による情報収集によって為される全戦線の状況把握。
そしてパワードスーツ一機で敵の圧力を押しとどめる高い技量。
自身の持つ能力・装備を完璧に把握し、あらゆる状況に適応するプロの独立傭兵である彼女を以て初めて実現する神業に他ならない。
「補給終わったよ!」
「よし、攻撃開始!」
そして、補給を追えた学徒の帰還を確認した鴉鉄は置き土産とばかりに|炸裂加速式杭打機《パイルバンカー》を用いた|慣性増幅打撃《イナーシャル・ブースト》の一撃で戦闘機械たちを散らし、再び次の戦線へと飛び立った。
移動の僅かな時間にバイタルを整えながら、機神・鴉鉄は次の戦線を見据える。
『次の戦線は北部5号です、先ほどより多数の敵機が確認されていますが。問題はありませんか?』
「問題ない」
敵の数が多い?補給が少ない?それがなんだというのだ。独立傭兵にとってそうではない戦闘など片手で数えられる程しかない。
コックピットから戦場を睥睨し、鴉鉄は再び宣言した。
「これより戦闘に参加します」
🔵🔵🔴 成功
第2章 集団戦 『バトラクス』
POW
バトラクスキャノン
【爆破】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【砲弾】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【戦闘情報の共有】による戦闘力強化を与える。
【爆破】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【砲弾】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【戦闘情報の共有】による戦闘力強化を与える。
SPD
人間狂化爆弾
爆破地点から半径レベルm内の全員に「疑心暗鬼・凶暴化・虚言癖・正直病」からひとつ状態異常を与える【特殊化学兵器】を、同時にレベル個まで具現化できる。
爆破地点から半径レベルm内の全員に「疑心暗鬼・凶暴化・虚言癖・正直病」からひとつ状態異常を与える【特殊化学兵器】を、同時にレベル個まで具現化できる。
WIZ
スウィープマシーン
【機銃掃射】による牽制、【粘着弾】による捕縛、【突撃体当たり】による強撃の連続攻撃を与える。
【機銃掃射】による牽制、【粘着弾】による捕縛、【突撃体当たり】による強撃の連続攻撃を与える。
●
戦闘開始から48時間。戦況は拮抗していた。
本来であれば半日も立たないうちに完全に制圧されていた人類の拠点は、
今なお無事であるどころか徐々に戦闘機械の群れを押し返し初めていた。
戦闘機械にとって完全に想定外の事態。
窮した彼らは戦局を一変させるべく、本来であれば予備として留めおくはずであった戦力の投入を決断した。
「な、なんだアレ!?」
監視塔から索敵を行っていた一人の学徒動員兵の叫びに視線が集まる。
集まった他の生徒達に何があったのかと問われた彼は、青ざめた顔で正門方面を指し示した。
正面門へと迫るのは先ほどまで戦い続けていたバトラクスと同型の戦闘機械。
しかし、1つ大きく異なる点があった。
サイズだ。
その体躯は4m前後、通常のWZよりも一回り大きく、分厚い装甲は通常のバトラクスであれば容易く撃ち抜くアサルトライフルの弾丸を物ともしない。
そんな怪物が数十体、校舎へ向けて進軍していた。
ここが分水嶺だ。
このバトラクスの進軍を許せば間違いなく校舎は蹂躙されるだろう。
しかし、乾坤一擲とも言えるこれらの戦力が破壊されればこの場に居る戦闘機械達が打てる手はもはや無い。
今こそ死力を尽くして戦う時だ。
・心情:敵の攻撃目標は学徒動員兵の訓練施設から変更はないと推測。敵の物量が多く、損耗を度外視で攻め込まれれば、防衛線を突破される可能性があると判断。訓練施設から離れ、遊撃による陽動・攪乱で侵攻速度の低減させることを目標とする。
・行動選択:√能力【暗黒の森の番犬】を使用。敵に包囲されないよう、接近攻撃は控え、移動速度の増加のみを利用して、銃火器を用いた遠距離攻撃で、敵の進行方向(訓練施設方向と推定)の側面および背面から高速で移動しながら攻撃。陽動の効果が低ければ、(攻撃が手薄と推測される)敵部隊の背面から、接近して攻撃。こちらに無理にでも注意を引き付けます。
・アドリブ可、連携可、詠唱不要
●
いかなる混迷でも最速最善の判断を。
いかなる難局でも最高の成果を。
それこそが独立傭兵に課せられた絶対のルールだ。
少なくとも機神・鴉鉄(|全身義体の独立傭兵《ロストレイヴン》・h04477)はそうあり続ける。これまでも、これからもだ。
だからこそ、その戦場は誰よりも過酷な物となる。
●
群れを成して迫る巨体のバトラクス達の出現を、校舎上空から確認した鴉鉄の判断は迅速だった。
強度、物量から言って√能力者の力無しに撃破することは不可能。しかし、各方面を守るために散っている√能力者達が集合するのを悠長に待っていれば、防衛線を突破されてしまうことは明白だ。
重要となるのは時間稼ぎ。それも、一体二体を足止めしていたのではまるで足りない。出来るだけ多くの敵を、一つの目標に引き付ける必要がある。
「陽動を行います」
鴉鉄は即座に|立体機動推進機関《3Dマニューバーブースター》の出力を引き上げた。
校舎へ向けて歩むバトラクス達へと高速で接近し、すれ違いざまに|自動式散弾銃《ショットガン》を発射する。
通常のバトラクスであれば穴だらけのオブジェクトへと変換する程度の威力を持つそれだが。此度の巨大な機体に対しては球状の厚い装甲に阻まれ、彼らの優先度を変更するに至らないようだった。
であれば、脅威と認識せざるを得ない兵器を使うまで。速度を維持したまま集団の背後へと回り込み、|重力慣性制御力場《G.I.C.F.F》によって急激に減速、滑るように地面に着地する。
「主兵装を|重質量砲《マスドライバー》に換装」
本来は長距離からの要塞破壊に用いるそれを大地に下ろす。あの巨体であればどこを狙っても当たるはずだが、今必要なのは彼らに排除の必要がある脅威だと認識させる事だ。故に狙う場所は一点。
「装填完了、加速開始……射出」
|質量弾《プロジェクタイル》が空を裂き、轟音と共にコントロール機関を守る厚い装甲へと突き刺さる。そして、その速度のままに装甲ごと内部機関をえぐり取った。
沈黙した同型機を前に、戦闘機械達の脅威度の更新プロトコルが走る。無数の砲塔が一斉に鴉鉄に向けられた。
粘着弾による捕縛、大質量の体当たりといった致命的な一撃はもちろん、サイズに比して巨大化した機銃掃射やミサイルですら一発一発が装甲を大きく削り取る恐るべき兵器だ。|重力慣性制御力場《G.I.C.F.F》によって高速戦闘を可能としている鴉鉄をもってしてもその攻撃を回避し続けるというのは尋常の事ではない。
加熱し始めた砲塔に|長砲身機関銃《アサルトライフル》を撃ちこんで発射角をずらし、ミサイルを|自動式散弾銃《ショットガン》で迎撃。そうして針の穴程に生まれた安全地帯を出力限界ギリギリの高速機動で通り抜ける。
さらには、避け続けた先が袋小路であると判断した際にはあえて弾幕の薄い箇所に飛び込み、より広い行動範囲を確保する。
脳が焼き切れてもおかしくない死線を、極めて冷静に見据え続ける。全ては任務の成功のために。
そして、ついに時が来る。
『友軍の到達を確認、状況の達成を確認しました』
報告と同時にアイセンサーから入る視界の端に友軍、√能力者達の姿が映るのを確認した鴉鉄は、即座に機首を上方へと向けた。
陽動の為に付かず離れずの距離を保つ必要のあったここまでの戦いと異なり、バトラクス達に最高速で離脱する彼女に攻撃を当てる術はない。散発的に追撃の砲火が上がるが、それらを軽々と躱し、鴉鉄は射程圏外へと飛び出した。
「……一時帰還し、補給を行います」
退き時を誤らない事もまた、戦場で生き残る者の習いだ。
だが、まだすべき事は残っている。鴉鉄は次なる戦闘に備え、速やかに補給拠点へと移動を始めるのだった。
🔵🔵🔵 大成功
ナズミヤマスターにおまかせします。かっこいい継萩・サルトゥーラをお願いします!
アドリブ歓迎。
「やったろうじゃないの!」
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ」
√能力は指定した物をどれでも使用ます。
戦うことが好きで好きで楽しく、戦闘知識や勘を活かしてハデに行動します。
楽しいからこそ冷静でいられる面もあります。
多少の怪我は気にせず積極的に行動しますがヤバいときは流石に自重します。
仲間との連携も行えます。
軽口を叩いたりやんわりと皮肉を言ったりしますが、他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
◆キャラ設定
人格・黄色のまま参戦
黄色は喜びの感情を強く持ち、それ以外の感情は希薄になる
攻撃してもされても、戦闘なら何でも嬉しく楽しい
戦闘中の痛みによる生の実感もまた好き
※仲間への配慮や連携は忘れない
◆黄色のスタンス
待ってたよ、なにせ大型兵器向きの武器達が待ちくたびれてたからっ!
◆戦闘
序盤は黄色の武器庫から『ハウリングキャノン』を取り出して迎撃
完全な撃破を狙わず、装甲を削って弱い所を作る事に努める
「倒せない雰囲気に吞まれちゃ駄目だよ、皆っ!」
校舎に近づかれる、もしくは敵に肉薄された時点で『ハンマー』に持ち替え
隙がありそうな脚部、もしくは弱った装甲に速度を生かして叩き込む
◆即興連携・アドリブ歓迎
●
正門前の学徒達は見るからに絶望に支配されていた。
「ここまで来てまだあんな奴らが……」
「ほんとに勝てるのか、俺達……」
そんな中、蔓延る"楽しくない"空気を追い払おうとハスミン・スウェルティ(黄昏刑務所・h00354)は学徒動員兵達へ呼びかけを続けていた。
「倒せない雰囲気に吞まれちゃ駄目だよ、皆っ!」
先ほどまでの戦場で八面六臂の活躍を見せ、反撃の嚆矢となった人間災厄の鼓舞に、彼女の戦いを見ていた者たちをはじめとした者達が立ち上がる。しかし、それだけでは校舎に蔓延する絶望のムードを打ち破るには不十分であるようだった。
そして、時を同じくして正門前にたどり着いた継萩・サルトゥーラ (|Chemical Eater《ケミカルイーター》・h01201)もまた学徒動員兵達の戦意低下を重く受け止めていた。
「分かりやすく士気下がっちゃってんな」
どちらかといえば、学徒達に近い立場である継萩は彼らの気持ちもよく理解できた。
仕方のない話だ、継戦能力・戦力共に生徒達を上回る√能力者と違い、ここに居る学徒動員兵達はベテラン揃いというわけではない。
いつ終わるとも知れない地獄のような戦場で、まだ敵がこれほどの弾を隠しておくだけの余裕があったのだと思えば折れてしまうのも不思議ではなかった。
しかし、数こそ減ったと言え敵の雑兵の数が打ちとめになったわけではない。こんな空気では勝てる戦いも勝てなくなってしまう。
そう、『勝てる戦い』だ。
あるいは邪神、あるいはスーパーロボット、√能力者達が立ち向かってきた強敵達を考えれば、多少デカイだけの量産型の数十体程度、苦境ではあっても絶望ではない。
なら、話は簡単だ。
勝利はすぐそこにあるのだと知らしめるしかない。
言葉で伝わらないのなら、行動で。
「なら少し」
「ここはいっちょ」
「「ハデに」」
「行こっか」
「やったろうじゃないの」
「あれ?」「お?」
見た目も故郷も、在り方さえも大きく異なる。しかし、戦いを楽しむという一点を共有する2人がその結論にたどり着いたのは同時だった。
●
互いの能力を簡単に共有し、2人の√能力者が巨大な球状兵器の群れに向けて戦場へと駆けだす。
もうじき敵の射程圏内に入るという所で、継萩がハスミンに視線を向けた。
「思った以上にデカイな、何か効きそうな武器あったか?」
「もちろん!なにせ大型兵器向きの武器達が待ちくたびれてたからっ!」
言いつつ、ハスミンが|黄色の武器庫《亜空間の収納庫》からスピーカー状の兵器を取り出した。
ハウリングキャノン、√ウォーゾーンで開発された、敵WZ対策などにそれなりに用いられる対装甲兵器だ。
継萩が現在使用している兵器ではなかったが、数多の戦場で継萩に継ぎ足されてきた誰かが使っていたのだろう。その運用法は頭の中にあった。
「良いねぇ、合わせるぜ!」
「じゃあ早速、起動!」
トリガーを引くと同時にスピーカーから振動超音波が射出され、巨大バトラクスの装甲へと収束していく。超音波はぶ厚い外殻と共振し、数秒の後、キィンという高音と共にコントロールユニットを守る装甲に蜘蛛の巣状のヒビをいれる。
「そこだ、アバドン展開ッ!」
そして、即座に改造ドローン「アバドン」のミサイルがいくつも撃ちこまれ、装甲ごとコントロールユニットを打ち砕いた。
装甲の破壊までに数秒というのはそれほど短い時間ではない。
√能力の性質によりかなりの速度を確保できるハスミンであっても、弾幕の雨をかわしながら一点に攻撃を当て続けるというのはそれなりに骨の折れる作業だ。
しかし、時に攻撃に、時に盾に、時に囮にと状況に応じて的確に役割をこなし続けるドローンがサポートする事でその成功率は飛躍的に向上する。
2人の√能力者による連携によって、1体、また1体と巨体のバトラクスたちはその機能を停止していった。
しかし、敵もやられるばかりではない。精鋭として作り出された彼らは戦場にて新たな戦術を考案する程度の知能を持つ。
順当に敵を倒していた2人の視界の奥で、ふいに二機のバトラクスが縦に並ぶ。
そして、2人が疑問に思うよりも早く、後ろに控えた一体が前の一体を蹴り飛ばした。衝撃で脚部が吹き飛んだバトラクスは、巨大な質量弾となって高速で校舎へと転がり始める。
量産可能な巨大兵器にのみ許された一手。なにより厄介なのは、僚機の使い捨てさえ許容できるならなんどでも同じ手を打つ事が出来るという事だ。有効であると学習されたが最後、全員まとめて押し潰されてしまうのは疑いようもない。
「マジかっ!?」
「すごい!!」
驚きと歓喜、反応の差は生物としての在り方の違いか。
即座に攻撃の構えを取ったハスミンを視界の端に捉えた継萩は、その意図を理解し、彼女が動き出すよりも早く|改造ドローン《アバドン》へと指示を飛ばした。
「アバドンッ!!受け止めろ!!」
継萩の思考に沿って即座に展開されたドローンが巨大な質量弾を受け止める。
インパクトの瞬間に蹴散らされても不思議ではない重量の差に対し、球面形状に合わせて配置されたドローンは衝撃を全体で分散させ、接触面に激しく火花が散らしながらも巨大な球体の速度を抑え込んでいく。
数メートルの制動を経て、球体は完全に停止する。
「そのままっ!」
そして、間髪いれずドローンを踏んでハスミンが空中へと駆けあがった。
最後の踏切りと同時に黄色の武器庫より取り出された巨大なハンマーは、√能力、|戦い無くして己が価値無し《ノーバトル・ノーライフ》により4倍速4連撃分という最大最速の運動エネルギーを与えられ。
完全に静止した巨体の真芯へと叩きつけられた。
耳をつんざくような破砕音と共に巨大なバトラクスが敵陣へと押し戻される。
蹴りだされた時よりも確実に速度を増して送り返されたそれは、数体の巨大戦闘機械を巻き込んで吹き飛ばした。
「やった!ストライク!!」
「全く、ハデにやるわ」
「キミもね!」
これほどの光景を見せられて未だ敗北の予感に膝を抱えていられるような者はここに居ない。
湧きあがる学徒動員兵達の声を背に2人は次の敵を見据える。
楽しい戦場は、まだまだこれからだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
「さっきの連中よりは強そうだ」
校舎や生徒達に被害が出る前に押し留めないと
序盤は遠距離戦
アクセルオーバーを起動
上昇した移動力で的を絞らせないように移動しながら、弾道計算+レーザー射撃で脚部を狙って機動力を奪う
ある程度接近されたら飛び出して近接戦闘
「これ以上近寄らせる訳にはいかないよ」
ダッシュで敵の懐に飛び込んで紫電一閃で装甲無視攻撃
ハッキングで敵のコントロールを奪っての同士討ちを試みる、電磁ブレードで機能停止を狙って時間稼ぎするなども併用して、撃破と撹乱で敵の侵攻を遅らせるよ
少し無茶かもしれないけど……必死に今を生きるあの子達を守る為なら、何だってやるさ
※アドリブ、連携歓迎です
●
巨大化し、スペックとしては各段に強力になったバトラクス達だが。クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)にとって必ずしも与しにくい敵と言う訳ではなかった。
「さっきの連中よりは強いようだけど、弱点はそのままみたいだな」
特殊な電流によって自身の速度を大きく引き上げることができるクラウスにとって、鈍重な戦闘機械の照準を振り切ることはそれほど困難ではない。加えて、彼らは致命的な弱点を残したままであるようだった。
それは、ハッキングへの対策だ。
精鋭として機能を増強された彼らであるが、ベースとなるOSは量産型のバトラクスとそれほど変わらない。兵器の運用にリソースを取られている最中などは全くの隙だらけだ。
主砲発射の瞬間に干渉によって照準を大きくずらされたバトラクスが、近くにいたもう一体のバトラクスに砲撃を直撃させ、おおきくぐらつかせた。その瞬間を狙い、レイン砲台から放たれたレーザーが二体の脚部を撃ち抜く。
移動できなくなったバトラクス達にパルスブレードを突き刺して機能を停止させながらクラウスは冷静に状況を確認していた。
「これだけやって二体か」
巨体の戦闘機械たちは見た目のインパクト程強大な敵という訳ではなかった。
しかし、それは必ずしも容易な戦場であることを意味しない。
「これは……ジリ貧だな」
レインメーカーとして、そしてベテランの戦士として鍛えられた眼は冷静に戦局を見据える。
局地局地で見ればこちらの戦力が敵の力を上回っているのは確かだ。しかし、全体で見るとまた話は別だった。
厚い装甲と弾幕は確実に√能力者達の足を押しとどめ、数で勝る敵の進軍を許してしまっている。全て倒し切るのが先か、校舎に辿り着かれるのが先か。このまま状況が変わらなければ後者となる目算が高いように見えた。
天秤を優位に傾ける決定的な一手を打つ必要がある。
方法は……無い訳ではなかった。
クラウスはちらりと校舎へと目をやる。
恐怖を押し殺し前線に立つ歩兵が居た。
苦しむ仲間に寄り添い手を握る衛生兵が居た。
寝る間を惜しんでWZを整備する工兵が居た。
皆、今を生きようと必死に足掻いていた。
彼らの思いを無駄にすることなどできるものか。
「少し無茶かもしれないけど……」
彼らの夢を、取り戻す為に。
「やるしかないか」
決断は一瞬、クラウスは√能力、アクセルオーバーの出力を最大まで引き上げた。
彼の身体へと流れ込む特異な波長を持った電流はニューロンの電気信号を置き換え、脳の定めたリミッターを次々と外して行く。
それと同時に、迸る決意を現すように、研ぎ澄ました刃を思わせる紫電が絶縁抵抗を越えて大気の壁を裂いた。
「これ以上、彼らに近寄らせる訳にはいかないよ」
閃光が、敵陣を駆け抜けた。
脚部が断たれる。バランスを崩した巨体が倒れ、背後に控える戦力の進路を妨害する。
装甲が弾ける。深く刻まれた一閃は内部構造に電磁パルスの爪痕を大きく残し、演算能力を削り取る。
武装が砕け散る。主兵装へと叩き込まれた一撃は誘爆を引き起こし、火力を大きく奪い去る。
そして、大地を焦がす程の摩擦熱と共に地面を踏みしめて停止したクラウスの背後で一斉に爆発音が鳴り響いた。
●
射程から外れた場所に一旦退避し、状況を確認する。
敵の前線は大混乱状態に陥り、進軍の動きは一時止まっているようだった。
個人の戦果としては十分過ぎる程の物だが、それでもこの攻撃の影響は一時的な物に過ぎない。
「まだ、止まってられない」
彼は再び立ち上がり、戦場へと歩き出す。守るべきものを守るために。
🔵🔵🔴 成功
指揮官がしびれを切らしましたか
これ迄の同型と比べれば数は少なく、しかし性能はその比ではない……
速やかに破壊しなければなりません
√能力で高速殺戮モードへ変じ、まずは最も近い敵から処理しましょう
砲弾発射口の直線軌道上を避けるようジグザグに走行
発射後の砲弾着弾範囲からは速度を活かして逃れ、懐へ飛び込みます
脚部関節にパルスブレードで一撃、同時にハウリングキャノンで胴体部の装甲を破砕、残り2撃で破砕箇所を拡げつつ内部へダメージを与えられる攻撃を敢行
仮に撃破しきれずとも、脚部損壊と装甲破壊が済んでいる以上、他√能力者による追撃で破壊されるでしょう
あとは変形のタイムリミットが来るまで、同様の戦闘を行います
「性能はこれまでの比では無いですが、数としては中途半端……おそらくは予備機、指揮官がしびれを切らしましたか」
南門から巨大な敵の進軍を捉えた新藤・アニマ(我楽多の・h01684)は、進軍予測地点に向けて全力で駆けながら巨大な戦闘機械の動きを分析していた。
装甲の強度は、厚さは、攻撃の手段は、威力は。
彼女の持つパルスブレードや頭部ユニットに内蔵されたハウリングキャノンは巨大な戦闘機械に対して有効な装備であったが。適当に振るって効果のあるものではない。だからこそ、観察が必要だった。
機銃、ミサイル、粘着弾、そして爆撃弾。装備こそ通常のバトラクスと同様でもその火力は大きく上回る。特に主砲より放たれる爆撃弾は、ベルセルクマシンの融合装甲を以てしても直撃は避けなくてはならないと感じるものだ。
では、同じ機械であるバトラクスに取ってはどうだろうか。よくよく観察してみれば、主砲射撃は彼ら自身にとっても脅威であるようで、常に遠方に向けて放たれ、密集地帯では使用を避けているようだった。
「やはり懐に潜り込むのが効果的ですね」
攻略の道筋は見えた。後は成すだけだ。
「インクルードカリギュラ発動。速やかに敵を破壊します」
銀灰色の光がアニマの全身に灯り、インビジブルが彼女の深層に働きかける。|殺戮機械《ベルセルクマシン》の多くが本質的に持つ|殺戮の意思《プログラムベルセルク》。|偽物の人格《友好強制AI》に覆い隠されたそれが、√能力によって内包する力だけを引きずり出され、彼女の融合装甲に変化が現れる。
全身を覆う装甲はコア等の重要な箇所のみを残して軽量化され、浮いたリソースが脚部を始めとした高速機動用の部位へと割り当てられる。
より早く。より強く。殺戮の為だけに組みなおされた身体から生み出される速度は通常の4倍。
「行きます」
眼にも止まらぬ銀灰色の閃光となったアニマはフェイントを織り交ぜながらバトラクスの照準をずらし、着弾範囲を避け、一瞬にして巨大戦闘機械の足元へと潜り込んだ。
全身を硬い装甲に覆われた巨大戦闘機械であるが。扱いとしてはあくまで精鋭止まり、指揮官機やスーパーロボットのごとくその稼働部を装甲で覆う事まではされていない。
その確かな弱点に、アニマのパルスブレードが突き刺さった。
放電音が響く。僅かな間を置いて、バトラクスの片足が炸裂し、支えを失った球状の身体が地面へと叩きつけられた。
「ハウリングキャノン機動」
落下の衝撃で弱った装甲に超音波振動が収束し、耐え切れずガラスのように粉砕する。そうして生まれた裂け目に。
「これで、壊れてください」
全てを消し去る幻の炎が流し込まれた。
ややあって、黒い煙を吐くだけとなったバトラクスからパルスブレードを引き抜く。
僅かに幻の炎の余燼を残すそれを一瞥し、アニマは困ったように呟いた。
「少し時間がかかりすぎますね」
駆動系に大きな出力を回す高速殺戮モードは長期戦に向いたものでない。
今のように一体一体を丁寧に処理していればあっという間に時間制限を迎えてしまうのは必定と言えた。考え方を変える必要がある。
バトラクス破壊の主な障害は生半可の武装であれば弾き返してしまう硬質な装甲だ。
逆を言えば、それさえどうにかすれば追撃で十分に破壊可能という事でもある。
全てを自分だけで為す必要もない。
「目標を変更。装甲および脚部の破壊を最優先とします……仲間に託すこともまた戦い、ということでしょうか」
ちらりと背後の学徒達を、そして同じく戦闘機械達と戦っている√能力者達を見やる。そしてアニマは、再びバトラクス達の群れに向けて足を踏み出した。
🔵🔵🔴 成功
大きいわね、これはショットガンじゃ厳しそうかしら。
でも大丈夫……だって私は、素手の方が強いもの。
ショットガンで牽制を行いつつ距離を詰めていきます。
硬い装甲を砕くべく近接格闘戦を中心に行います。
基本は外装からの破壊を試みますが時間がかかりそうなら貫通攻撃を用いて内部から直接破壊する努力をします。
決死戦を使うときは足元を狙って多少バランスを崩してから捕縛して一気に引き寄せられればと考えています。
砲弾は着弾前に弾いて少しでも直撃を避けられるよう意識します。
戦闘情報の共有は気にしません。
私の情報なんて大したものじゃないわ。
だって、小細工抜きの力技だもの!
●
「あんなの絶対勝てっこありません……だから……」
カレン・イチノセ(承継者・h05077)から見て一回りは年下の学徒動員兵の少女は、震える手で彼女の手を掴み、精一杯に言葉を紡いでいた。
その目にあるのは、諦めと、絶望と……覚悟。
「逃げてください……!私たちは大丈夫ですから」
本来この戦場に居なかったはずの援軍。とっくに終わっていたはずの命だ。
これ以上危険に巻き込まれる必要はない、と。
そんな少女の悲壮な覚悟を良しとできる程、カレンの面倒見は悪く無かった。
「ありがとう。でも、心配しないで」
生身の左手で戦場の塵と疲労できしんだ髪を梳いてやる。
しばらくそうしていると、カレンの手を強く握っていた少女の手がゆっくりと緩み、ほどけていった。
そして、カレンは迫る巨大な戦闘機械へと向き直る。
「怖く、無いんですか……?」
後ろから聞こえる少女のか細い声に、カレンは目をしっかりと合わせ、にっ、と。微笑む。
「大丈夫。あの程度蹴散らして来るわ。だから、あなたも諦めないで」
少女に見送られ、カレンは戦場へと走り出した。
●
「思ったよりも大きいわね」
進軍を続ける巨大戦闘機械の元へとたどり着いたカレンは、まずは小手調べとばかりに戦闘機械の外殻へ一発、二発とショットガンを撃ちこむ。
予想通りというべきか、散弾の火力では彼らの装甲を抜くことは出来ないようで、弾丸は硬質の音だけを残して散乱した。だが、当然ながらそれだけでお手上げとなるようであればこんなところに来ていない。
「やっぱりショットガンじゃ厳しいわね、なら。拳で!」
カレンにはまだ、最も頼りとする近接格闘の技が残っている。
|決死戦《デッド・オア・アライブ》。恩人たる2人の片割れから承け継ぎ、√能力へと昇華された、鎖を用いた格闘技術。
艶やかで変幻自在だった記憶の中のそれに比べ、やや力任せなのは否めない。だが、確かに面影を残す動きによって振るわれた鎖はバトラクスの脚部へと絡みつき、カレンとバトラクスを結びつけた。
しかし、巨大兵器はカレンをまるで脅威として認識していないかのように歩みを進める……事実、鎖はバトラクスの動きを多少阻害こそすれど、侵攻を止めるには至っていなかった。
当然だ、重量の差で言えば、二階建ての建造物と綱引きをするようなもの、筋力、体格、どれをとっても勝てる道理などあるはずがない。
などと……その程度の定めを越えられない技が、思いが、√能力に至るはずもない。
「こっちを……っ!見ろっ!!」
脚部へとショットガンを撃ちこむと同時、全力をもって鎖を引き絞る。
ズッ、と僅かな抵抗。しかし拮抗は一瞬、物理を覆し、金属の巨体が宙を舞った。勢いをそのままに黒鉄の拳がバトラクスの装甲に突き刺ささる。
装甲を貫通し、外殻の中で乱反射した衝撃は巨大機械の内部を貫き、開口部から爆炎と共に吐き出された。
崩れ落ちる僚機達の姿を認識し、バトラクス達のアイセンサーが初めてカレンに向く。今この瞬間、カレンは戦闘機械達にとっての脅威として認識された。
間髪いれずに発射された砲弾を右手で弾き、カレンは次の敵へと駆けだす。
「いくらでもかかってきなさい。小細工抜きで、真正面から相手してあげる!」
後ろに立つ者達の思いを糧に、カレンは機械の巨体の前に立ちはだかった。
🔵🔵🔴 成功
POWの行動を選択。
仲間である学徒動員兵を護るために僕は闘う。
決戦型WZ「重装甲超火力砲撃特化機【玄武】」に搭乗して積極的に戦う。
とにかく力押しで闘う。
大口径ビームランチャー【撃滅】と超火力ビームキャノン【殲滅】をバランスよく使用する。(スキル「制圧射撃」「一斉発射」可能であれば「無差別攻撃」を使用)
止めは【大火力ファミリアセントリー一斉射撃】、前述の攻撃に加えて大火力ファミリアセントリーを5基召喚して一斉発射をする(スキルは「制圧射撃」「一斉発射」可能であれば「無差別攻撃」を使用)
台詞「この程度で僕を落とせないよ。」
「何度も僕にやられるなんて・・・所詮は機械、学習能力は無いのかい?」
「僕がいる限り、仲間に犠牲は出させないよ。」
「次はバトラクスか、誰が来ようと僕が倒してみせるさ」
バトラクス。同型機との情報共有機能を持ち、量産機故の自爆特攻によって徐々に敵の分析を重ね、ついには圧殺する数の暴力の権化。
人間サイズの通常の個体であっても厄介なそれが単体で戦力となりうるスペックを獲得したとき、どれほどの脅威となるかは火を見るより明らかだ。
しかしその能力が北城・氷(人間(√ウォーゾーン)の決戦型WZ「重装甲超火力砲撃特化機【玄武】」・h01645)にとって障害となっていたかと言えば。
「何度も僕にやられるなんて……所詮は機械、学習能力は無いのかい?」
少なくとも正面切っての戦闘ではそうでは無いようだった。原因は単純、北城が彼らに情報共有の隙を与えていないからだ。
「またそれか、やらせないよ」
情報共有弾を射出しようとした後方の一体に大口径ビームランチャー【撃滅】から放たれる光の奔流が突き刺さり、強化された装甲を抉り抜いて爆散させる。
幾度も同型機を排除してきたが故の冷静な判断は、確実にバトラクス達の数を削っていた。
とはいえ、その戦闘が一方的であったかと言えばそうではない。
戦略的重点ともいえる北城が十全に機能することを防ぐべく、敵は常に数体のバトラクスをぶつけ続ける事でその動きを阻害していた。
もっと距離を詰める事が出来れば火力を集中させ、一気に破壊することもできるだろうが。中・遠距離特化のこの機体でそれをおこなうのは流石に自殺行為だ。
力押しの殲滅戦を得意とする彼だが、それしか出来ない訳では当然ない。決戦型WZ【玄武】の実力を最大限発揮する為の最適な作戦がそれだというだけだ。
そして、この状況は予測の範疇でもあった。故に有効な作戦の用意が無いはずもない。仲間である√能力者達との協議によって決定した、この戦場における最大火力を最も活かすための作戦。その用意が整ったことを知らせる短い連絡が入った瞬間。玄武は大地を蹴って大きく後ろへ跳び退った。
当然、好機と見たらしき戦闘機械達の攻撃が集中するが、それを超火力ビームキャノン【殲滅】の閃光が払いのけ。戦場を見渡す高台へと飛び上がる。
開けた視界に他の√能力者達によって装甲の一部や脚部を破壊されたバトラクスたちが目に映る。
既に傷ついていない戦闘機械は殆ど無く。√能力者達は射線を空けるように退避していた。
ーー時は来た。
「唸れ」
北城の呼び声に応え、五機の大火力ファミリアセントリーが現れる。
「暴れろ!」
センサー上の照準が次々と標的を捉え、ロックマーカーがその位置を示す。
「そして吼えろ!!」
北城の感情の昂ぶりに答えるように、ファミリアセントリーと撃滅、殲滅が咆哮を上げるように出力を引き上げ。
玄武のモニターがReadyを告げる。
「人類の敵を全て消せ!!大火力ファミリアセントリー一斉射撃ッ!!」
そして、紺碧のWZから極光が解き放たれた。
極光は巨兵達の傷ついた外殻を食い破り、荒れ狂う奔流となって戦闘機械たちを押し流す。
ここまで√能力者達が行ってきたすべての戦いが、この一撃を持って結実し……。
ついに、戦場に終幕をもたらした。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功
第3章 ボス戦 『統率官『ゼーロット』』
POW
マルチプライクラフター
自身のレベルに等しい「価値」を持つ【新兵装】を創造する。これの所有者は全ての技能が価値レベル上昇するが、技能を使う度に13%の確率で[新兵装]が消滅し、【爆発】によるダメージを受ける。
自身のレベルに等しい「価値」を持つ【新兵装】を創造する。これの所有者は全ての技能が価値レベル上昇するが、技能を使う度に13%の確率で[新兵装]が消滅し、【爆発】によるダメージを受ける。
SPD
スマッシュビーム
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【腹部から発射されるビーム光線】で300回攻撃する。
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【腹部から発射されるビーム光線】で300回攻撃する。
WIZ
リモデリング・フィンガー
視界内のインビジブル(どこにでもいる)と自分の位置を入れ替える。入れ替わったインビジブルは10秒間【放電】状態となり、触れた対象にダメージを与える。
視界内のインビジブル(どこにでもいる)と自分の位置を入れ替える。入れ替わったインビジブルは10秒間【放電】状態となり、触れた対象にダメージを与える。
●
巨大兵が沈黙し、バトラクスたちもその殆どが破壊され防壁の前に散らばっている。
あまりにも激しい襲撃の連続。しかしそれでも、√能力者達は。そして学徒動員兵達は生き残ったのだ。
「終わった……勝ったんだ!!」
学徒動員兵の誰かがそう声を上げ、釣られるようにして大きな歓声が上がった瞬間。
轟音を立てて、マザーシップが高高度から飛来した。
その甲板に貴族を思わせる白い戦闘機械。統率官『ゼーロット』がイライラと怒りを露わにしながら進み出る。
そして、マザーシップの空中プロジェクションに映し出されたゼーロットの声が校舎に向けて響き渡った。
「よくも、よくも私の手をここまで煩わせてくれたな生肉ども。大人しく消えていれば良かったものを、私の評価に泥を塗ってくれおって」
一方的な怒りをぶつけながら、ゼーロットは懐からなんらかの機械を取り出す。幾つかのボタンで構成されたそれはなんらかのリモコンのように見える。
危険を認識した一人のレインメーカーがそれをレーザーで撃ち抜くが、機械は赤熱すらすることなく平常を保つ。
ゼーロットはその中でもひときわ目を引く赤いボタンを叩きつけるように押した瞬間、バトラクス達の残骸に一斉に赤い光が灯った。
『自爆シーケンスが送信されました。緊急停止を行うか、すみやかに退避してください。繰り返します……』
バトラクス達から繰り返し流れ出す警告音をBGMにゼーロットはリモコンらしき物を掲げて勝ち誇った。
「もうこの地区は必要ない。生肉ども、訓練施設ごと消し飛ぶがいい!!!」
決着の時だ。ゼーロットを撃破し、バトラクスたちの自爆を停止せよ。
・心情:敵のマザーシップ上でゼーロットと戦うのは不利と判断。
ゼーロットを地上に落下させて、地上戦に持ち込むことを
目標とする。
目標の達成のために、自己犠牲は厭わないものとする。
・行動選択:立体機動推進機関による【空中ダッシュ】および
√能力【暗黒の森の番犬】でマザーシップにいるゼーロットに向い、
飛行して一直線に接近します。
遠方から直線で近付くために、射撃による攻撃が予想されますが、
意図的に攻撃され易い行動を取っています。
狙いは回避や逃走といった作戦を取らせないため。
また、後述の√能力の発動にも必要だからです。十分に近付けたら、
次の√能力【ルビコン川を渡る】を使用し、攻撃を仕掛けます。
√能力発動に際して、攻撃宣言が必要になるため、パワードスーツの
外部スピーカーを使い、ゼーロットに対して音声で通信。
√能力の一撃でゼーロットが地上に落ちなければ、
交戦を続けますが、常にゼーロットを地上に落とすことを
考えて行動します。
・アドリブ可、連携可、詠唱可
POWの行動を選択。
ゼーロットめ、ついに現れたか!
学徒動員兵の皆を貴様から護るため、僕は全力で闘う!!
決戦型WZ「重装甲超火力砲撃特化機【玄武】」に搭乗して積極的に全力で戦う。
大口径ビームランチャー【撃滅】と超火力ビームキャノン【殲滅】をバランスよく使用する。(スキル「制圧射撃」「一斉発射」可能であれば「無差別攻撃」を使用)
止めは【大火力ファミリアセントリー一斉射撃】、前述の攻撃に加えて大火力ファミリアセントリーを5基召喚して一斉発射をする(スキルは「制圧射撃」「一斉発射」可能であれば「無差別攻撃」を使用)
台詞「この程度で僕を落とせないよ。」
「何度も僕にやられるなんて・・・君には学習能力は無いのかい?」
「僕がいる限り、学徒動員兵の皆に犠牲は出させないよ。」
「ゼーロットか、貴様は僕が制裁する!消えろ!!」
「戦闘機械群を殲滅することは人類の義務だ!」
戦闘不能に陥り、戦場に残った兵を自爆させる……潤沢な資源の上に成り立つ有効な手段ですが、それを受ける側としては許容出来ません
この戦乱の世界の人は儚い、しかし本来、簡単に吹き飛ばされるような軽い命であってはならないのですから
統率官とはいえ、戦闘能力は高いものと想定。可能であれば仲間である他√能力者とも協力しましょう
接敵を阻む為にも恐らく射撃兵装は使ってくるとみて、直線的な動きを避けつつ距離を詰めます
回避しきれないものはエネルギーバリアで軽減し、アシュラベルセルクで複製。兵装を複製したなら牽制で撃ち返しますが、√能力自体を複製した場合は温存します
接敵後も局所的にエネルギーバリアを展開したまま、明確な隙が出来るまではパルスブレード等による武器での攻撃を行い、状況次第でレギオンによる撹乱も併用し私や仲間の行動を補助します
隙が生まれたら本命の攻撃を実行。√能力複製腕がある場合はここで使用、新兵装で【焼却】を増幅した上でブレイズイントゥルージョンを叩き込みましょう
● 北城・氷
ゼーロットの発言が終わると同時、即座にマザーシップの全エンジンが起動した。
遅れるようにレインメーカーや対空砲による砲撃、WZによる追撃が行われるが。
攻撃に反応して生成されたエネルギーバリアに阻まれ、瞬く間に通常の手段で乗り込むのは不可能な高度へと上昇し、戦域外に向けて加速をはじめる。
もはや止める手段はない。
これで終わり、努力も、犠牲も、その全てが無駄であったと。誰もが絶望しかけたその瞬間。
極太のレーザーがマザーシップから迸った。
『第一エンジンおよびエネルギーバリア維持機構に障害発生、速やかな対応を……』
けたたましく警告を告げるスピーカーを踏み砕き、炎の中から紺碧に輝く一機のWZが甲板に歩み出る。
この戦場で最も多くの戦闘機械を滅ぼしたWZ、重装甲超火力砲撃特化機【玄武】……北城・氷(h01645)がそこに居た。
「貴様、いつの間に……」
「ゼーロットか、貴様は僕が制裁する。消えろ!!」
「うおぉっ!!?」
玄武が握る大口径ビームランチャー【撃滅】から挨拶代わりに放たれた一撃を、ゼーロットは装備していたエナジーバリア新兵装によって間一髪で防御する。
「言葉も介さんかっ、これだから生肉どもはっ!!」
「戦闘機械群を殲滅することは人類の義務だ、貴様と話す必要がどこにある!」
欠片も言葉を交わす気のない北城に代わって、あえて"いつ"、を答えるならば、マザーシップが飛来した直後である。
北城は敵の旗艦を認識した時点でゼーロットの布告の一切を無視し、艦壁にとりつき内部に侵入できる箇所を探していたのだ。
戦闘機械群の言葉など聞くだけ無駄というすがすがしいまでの割り切りによるその行動は、結果として人類の希望を紙一重で繋いでいた。
そして、それはゼーロットとの直接対決においても同様だ。この場に置いてゼーロットの動きを止められるのは北城のみ、彼が最後の希望なのだ。
ゼーロットから展開されたドローン新兵装に加え、マザーシップの防衛機能が北城の元へ殺到する。
北城は重装甲とは思えない巧みな軌道でそれを回避し、三門のビーム兵器でミサイルの雨を薙ぎ払いながら少しずつ歩みを前に進めていった。
玄武は本来近接戦闘を得意とするWZではない。
だが、ゼーロットの強力な装甲とエナジーバリア新兵装に対し十分なダメージを与える為には、大火力を持つ玄武であってもある程度距離を詰める必要があった。
そして、守るべき者がいる北城が止まる事はない、装甲に傷を受け、ビーム兵器のオーバーヒートによるダメージを抱えながらも一歩一歩、前へ。
「くそ、来るなっ!!」
「学徒動員兵の皆を貴様から護るためにも、この程度で、落ちるものか!」
焦りと共に振り降ろされたレーザーブレードをその装甲で受けながらも、ゼーロットの真正面へと迫った北城が吼える。
「これなら、どうだ!!」
「ま、待て!ぐわぁあああああああっ!!」
【殲滅】【撃滅】の三門から放たれるビームがゼーロットを吹き飛ばす。
エナジーバリア越しとはいえ、玄武が持つ超火力はゼーロットに確かにダメージを与えていた。
「やってくれたな……」
「いいや、まだ終わっていない!」
そして、玄武が持つ武器はこれだけではない。
ゼーロットが行動不能となった一瞬の隙をついて召喚された五機の大火力ファミリアセントリーが一斉に彼に照準を向ける。
「喰らえ、全砲門、一斉射撃!!」
先ほどの三門にファミリアセントリーを加えた、計8本の光の奔流がゼーロットとその装備を薙ぎ払った
● 新藤・アニマ
一方で、僅かな隙をついてマザーシップに乗り込んでいた一人である、新藤・アニマ(我楽多の・h01684)は北城の奮戦によってがら空きになったマザーシップのコントロール室へと侵入し、船の防衛システムへと干渉を仕掛けていた。彼女が北城と異なるのは、その作戦行動が他√能力者との協調の上で行われていることだ。
「対空システム、ドローンユニット……エンジンや自爆装置の停止はできないようですが」
『十分です、こちらも後10分程で突入準備が整います。問題は敵のエナジーバリアの対処ですが』
機神・鴉鉄(|全身義体の独立傭兵《ロストレイヴン》・h04477)の|戦闘拡張機械化鎧《パワードスーツ》に内蔵されたAI、|総体支援人工知能《オールマインド》からの連絡を受け。
アニマは甲板で行われている戦いに目をやる。
強力なレーザー砲撃を撃ちこまれたゼーロットは動きに精彩を欠いているようだが、同様に北城の側も戦闘の維持は難しい状況に見える。
「わかりました、私がそちらの対処を行います」
そう言って、アニマは甲板へと飛び出した。突然の乱入者にゼーロットは即座にドローンを差し向ける。そして、アニマの姿を認識してほんの少し驚いたように視線を揺らした。
「貴様は……そうか、鹵獲された個体か。生肉どもに敗れるに飽き足らず、同族に牙まで剥くとは、全く以て救いようが無いな」
人間に向ける者とは違う、傲慢ながらも感情を感じさせる言葉に、アニマは少し意外に思いながらドローンの攻撃をジグザグに回避し、ゼーロットへと距離を詰める。
「戦闘不能に陥った兵を自爆させるあなたに言われる所以は無いと思いますが」
そして、ゼーロットの正面に立ったアニマは彼へと言葉を返した。
「効率の問題だ。どうせ滅びるものであれば最大限利用すべきなのは貴様とて理解しているだろう。いや……貴様のような輩には分からんか。消えゆく敗残者共に肩入れしてなんの価値がある」
心底理解出来ないといった様子でボヤキ交じりの疑問を投げかけるゼーロット。だが、アニマもまた、その判断を肯定しないにせよ、彼の疑問を感覚として理解できる部分はあった。
「そうですね。理解はします。この世界において、人の命は儚いものです。ですが、そうあることがそもそも間違いなのです」
思い浮かぶのはこの戦場で出会った学徒動員兵の子たちの顔、誰もが必死に、懸命に生きていた。
「簡単に吹き飛ばされて良い命などない、今の私はそう思います」
それが植え付けられたものであると理解していても。彼らの為になりたいと願った|殺戮機械《ベルセルクマシン》、新藤・アニマはそう信じた。
「……やはり話にならん」
ゼーロットは何かを言いかけた後、諦めたように首を振る。再びアニマへと向けられた視線は人間を見るそれと同じ物へ変わっていた。
そして、ゼーロットの攻撃が殺到する。
パルスブレードやレギオンによる攻撃はエナジーバリア新兵装によって弾かれてしまうものの、範囲から外れたドローン兵器の破壊や多数の実体弾への対処には十分だ。
部位ごとに分割したことで個々の出力を上げることが可能となったプロテクトバリアと合わせ、アニマはゼーロットの猛攻を凌いでいく。
常であれば弾切れを起こしても不思議ではない状況だが。受けた攻撃を複製、活用できる√能力、アシュラベルセルクによって敵レギオンの装備を複製、そのまま撃ち返すことで通常を遥かに越える継戦を可能としていた。
「ええい、面倒だ。これで終わらせてやる」
ついに業を煮やしたのか、ゼーロットは背部の格納ユニットから槍状の新兵装を引き抜く。先端に強力なエネルギー力場を発生させることによるバリアの破壊を目的としたそれはアニマのプロテクトバリアを貫き、融合装甲へと突き刺さった。
「一撃とは行かなかったか、だが、次で終わりだ」
「いいえ、むしろ、この時を待っていました」
「むっ!?」
アニマは自身に突き刺さった槍を片方の手でしっかりと握る、突き刺さった刃から伝わるエネルギーが内部回路を焼くのも気にしない。重要なのはゼーロットに確実に攻撃を当てる事だ。全てはそう、最大の障害となるエネルギーバリアの破壊の為。
「な、なんのつもりだ!離せ!!」
√能力、アシュラベルセルクにより、アニマの背部から複製腕が形成されていく。それは今しがたアニマに向けて振るわれたバリア破壊兵装と同様の形状を取り、しかし、一つ決定的な違いを宿していた。
「その炎は……ッ!」
√能力を持つゼーロットの目には見える。彼の新兵装を基に作り出された槍状の複製腕を覆うように燃え盛る炎の幻影が。
「そのバリアは、ここで焼却させてもらいます」
次の瞬間、炎を宿した槍は退避の隙すら与えずエナジーバリアを貫き、バリアユニットへと突き刺さった。
● 機神・鴉鉄
炎から逃れるようにゼーロットが大きく地面を蹴る。そして破損されたバリアユニットを再生成しようとするが……。
「くっ、エネルギーが足りんか!」
アニマと北城、2人の√能力者との戦闘は彼の想像を遥かに超えてエネルギーを削っていた。焦るゼーロットに上空から声が響く。
「指揮官機へ布告。これより決戦攻撃を実行します」
外部スピーカーを通して送られた通告にゼーロットは声の元へと顔を向ける。
そこには空中にたたずむ決戦型WZ、戦闘拡張機械化鎧《パワードスーツ》『|W.E.G.A《ウェーガ》』の姿があった。
情報有利を自分から崩すような、普段の鴉鉄であればけして行わない攻撃の宣言。
それは、鴉鉄の持つ最高火力の一撃が必要となるとの判断によるものだ。
√能力には特定の条件を満たすことで効果を発揮するものがある。鴉鉄の持つそれもまた、複雑で困難な条件を達成する必要があった。
『|決戦攻撃の布告《コード・レッド》、|達成《レディ》』
|総体支援人工知能《オールマインド》が条件の達成を数え上げるのを確認し、鴉鉄はゼーロットへ吶喊する。
「次から次へとっ!!」
とっさに装備したレーザーガンの新兵装からいくつもの光弾が放たれる。致命傷たりうるエンジン部分へ的確に迫るその攻撃を増加装甲で受け、破損したそれを迷わず切り離す。
『|装甲の破棄《アーマーパージ》、|達成《レディ》』
凄まじい速度で接近する鴉鉄に、ゼーロットは危機感を顕わにした。
「くっ、退避を……」
ゼーロットの体から電流が迸り、瞬間移動の√能力による回避を行おうとする。しかし。
「させません」
アニマが展開したレギオンによる攻撃が、その発動を阻害した。
「余計な真似を!」
逃走を封じられたゼーロットはせめてもの抵抗とばかりにレーザーガンの新兵装を構える。それを|重力慣性制御力場《G.I.C.F.F》によって加速された鴉鉄の拳が弾き飛ばした。
衝撃によってゼーロットは僅かにバランスを崩し、彼の注意が一瞬飛ばされた武器へと向けられる。その一瞬の隙こそが最後の条件だった。
『|姿勢制御停止《スタッガー》、|達成《レディ》。|位置関係適正《ポジション・フロント》。|全条件達成《オールクリア》。|ルビコン川を渡る《クロス・ザ・ルビコン》。|有効化《アクティベート》』
発動条件の達成を告げる|総体支援人工知能《オールマインド》の宣言と共に、|炸裂加速式杭打機《パイルバンカー》のシリンダを満たすインビジブルが紅い黄昏色を帯びる。
純粋なエネルギー体へと転化を果たしたインビジブルはシリンダ内で急激に増幅し、紅いエネルギー放電を迸らせる。
「|点火《イグニッション》」
そして、鴉鉄が引き金を引くと同時に信管が炸裂した。
生まれた種火はインビジブルを燃やし尽くしながら一瞬にして膨張し、射出口を塞ぐ杭を超音速へと一気に加速させる。
北城の、アニマの、2人の奮戦は全てこの一撃のために……希望を、地上で待つ|√能力者《なかま》達に託すために。
射出された杭がゼーロットの装甲へと突き立てられた。
反動で|炸裂加速式杭打機《パイルバンカー》が崩壊しながら後方へと吹き飛んでいく。
それと同時に、この戦場でおそらく最大瞬間火力の一撃を真正面から受けたゼーロットもまた、凄まじい速度で弾き飛ばされた。
「ぐぉぉぉぉぉおおおおッ!!!」
広大な甲板を一気に横断する、接地した脚部は摩擦熱の黒いラインを描き、停止の為のあらゆる試みは意味を為さない。
しばらく吹き飛ばされたゼーロットはそのまま落下防止壁に激突し、それを大きく歪ませてようやく停止した。
「小癪……なッ。だが……一手足りなかったようだな!!」
「|いいえ《・・・》」
至近距離から聞こえたその声に反応する間もなく、最高速度に達した|戦闘拡張機械化鎧《パワードスーツ》がゼーロットへと突っ込んだ。
体当たりの勢いで落下防止壁が粉砕され、ゼーロットの体が外へと投げ出される。
破損していない側の手がゼーロットの身体を掴み、|立体機動推進機関《3Dマニューバーブースター》の出力が最大出力のさらに上、リミッターを越えた領域まで押し込まれる、方向は、地表面。
「なァッ!!?正気か貴様ァッ!!?」
誰がどう見ても自殺行為にしか見えない高速の落下。その速度は|戦闘拡張機械化鎧《パワードスーツ》の表面が赤熱する温度に達し、一陣の流星となって地上に迫る。
そして、轟音と共にゼーロットが地表へと叩きつけられた。
「目標の達成を確認……」
激突の直前に、|重力慣性制御装置《G.I.C.F.F》で自身の勢いを殺した鴉鉄が、ギリギリで立ち上がる。
高空での戦いは決した。あとは、地上に残る者たちが引き継ぐ番だ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
クラウス・イーザリー「必要かどうかを決めるのはお前じゃない」
自爆なんてさせない、絶対に止めてみせるよ
ダッシュで接近し、ハッキングで適当な信号を飛ばして意識を乱しながら√能力猛襲を発動
拳攻撃の間に鎧砕き、居合、クイックドロウ、喧嘩殺法(蹴り)、レーザー射撃、2回攻撃、不意打ちを順番に挟んでいって連続攻撃
装甲が砕けたら隙間に電磁ブレードを捩じ込んで機能停止を狙うよ
敵からの攻撃は見切りで回避を試みるけど、動けなくならない程度の怪我なら怯まずに攻撃を続ける
絶対に、自爆される前にこいつを倒して爆発を止めるんだ
あの子達の命も居場所も、絶対に奪わせない
その為なら俺が傷付くことくらい大したことじゃない
※アドリブ連携可、詠唱不要
●
小規模なクレーターの中からゼーロットがふらふらと立ち上がる。
レーザー攻撃、破壊の炎による焼却、パイルバンカーによる全力の一撃と高高度からの落下という幾多のダメージを受けながらも、その装甲にはヒビなどが入っている様子はない。
「よくも、よくもやってくれたな……だが無駄な努力だ!」
ゼーロットがマザーシップを見上げ、身体が電流を帯びた。
リモデリング・フィンガー。視界内への瞬間移動を可能とする√能力。その発動の前兆だ。
マザーシップにて戦った√能力者達の決死の一撃を無に帰さんとするそれが、効力を発揮しようとした瞬間。
「そうでもないよ」
「ぐぅぉっ!?」
鋭い声がゼーロットの頭を射貫いた。
ハッキング、普段の彼であればファイアウォールが自動で対処し、仕掛けられた事にすら気づかないだろう。
しかし、現在のリソースを削られた彼に対しては、瞬間移動の実行に数秒の遅延を生じさせるだけの効力を発揮した。
そしてクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)にとって、それは十分過ぎる隙だ。
電流によって加速された脚力は距離の壁を一瞬で乗り越え、ピンポイントバリアを纏った拳の一撃がゼーロットの装甲へと叩きつけられる。
「ぐっ!?」
硬質な物同士がぶつかる鈍い音が響き、ゼーロットを軽く後ろへ吹き飛ばす。
そして続けざまにバトルアックスが振り降ろされ。
「ふざけるなよ生肉がぁっ!!よくもこの私に不快なノイズを送り込んでくれたな!!」
咆哮と共にゼーロットが抜き放ったレーザーブレードの新兵装と激しくぶつかり合った。僅かな拮抗の後、力負けしたバトルアクスが弾き飛ばされる。
しかし、追撃として振るわれた一撃は鞘から抜き放ったナイフで受け止め。流れるように拳の一撃を叩き込む。
バトラクス達の自爆を阻止するために、今はとにかく絶え間なく攻撃を続け、ゼーロットの逃走を阻止する必要があった。
躱し切れなかったレーザーブレードの一撃が確実にクラウスの身体に傷をつけていく、それでも彼は決して止まらない。
「あの子達の命も居場所も、絶対に奪わせない」
「またご自慢の同胞愛とやらか!!」
叫びに応じて照準を合わせようとしたドローンを小型拳銃で撃ち抜き、ゼーロットには蹴りを挟んで一瞬距離を離す。
それによって空いた空間にファミリアセントリーを滑りこませると、レイン砲台からのレーザー射撃と同時砲火を浴びせかけた。
炸裂弾を含む強烈な弾幕はレーザーの熱に反応して爆発を引き起こし、ゼーロットの身体を炎に包み込む。
通常の簒奪者であれば滅ぼすのに十分過ぎる攻撃。だが、他のそれに劣るとはいえ|王権執行者《レガリアグレイド》たるゼーロットを沈めるには至らない。
「いい加減にしろっ!!」
灰にまみれながらも爆炎の中から飛び出したゼーロットがクラウスを地面に叩きつける。
「敗北者の分際でいつまでもこの世界にしがみつきおって!」
そして、怒りのままに距離を詰め、レーザーブレードを振り降ろした。
クラウスはカウンター気味に拳での反撃を試みるが、リーチの差は歴然だ。
「この世界にとって、貴様らの存在はもはやッ!不要なのだッ!!」
「必要かどうかを決めるのは……お前じゃない」
絶体絶命と見えたその瞬間、嵌めていたバトルグローブから瞬時に展開された刃がゼーロットの無防備な肩口を刺し貫いた。
完全に想定外の状況から放たれた一撃は、確かに彼の装甲にヒビを入れる。この戦闘初めて見えたゼーロットの装甲の限界、それをクラウスが見逃すはずがない。
ひび割れた装甲めがけ電磁ブレードを突き立て。刃が欠けるのにも構わず捩じ込まれたそれの、出力を一気に引き上げる。
「がぁぁあああああっ!!」
激しい絶叫と共に、ゼーロットの手からリモコンが零れ落ちた。
🔵🔵🔵 大成功
ハスミン・スウェルティ◆キャラ設定
黄色のまま参戦
黄色は喜びの感情を強く持ち、それ以外の感情は希薄になる
攻撃してもされても、戦闘なら何でも嬉しく楽しい
戦闘中の痛みによる生の実感もまた好き
※仲間への配慮や連携は忘れない
◆黄色の心境
若干無粋だけど、目の前に出て来てくれたのは嬉しいね
明らかに強そうな相手と戦える機会って、そう多くは無いし
◆
(近づく際の演出に使えればリアルタイムどろんチェンジ・大鴉に変化)
◆戦闘
【新兵装】は魅力的だけど一目惚れしないように注意
黄色の武器庫から取り出したるは『リボルギアシューター』で射撃戦
他所の世界の武器なら、その装甲じゃ対策を練れないんじゃないかな
近接戦では銃を仕舞って『チェーンソー剣』を出そう
傷つく事を恐れない者が持つこの武器が、どれだけ脅威か教えてあげる!
◆統率官へ
直接戦闘は嫌いかな?それとも蹂躙戦だけしか楽しめない?楽しみ方を教えてあげるよ!
ワタシを倒したと思った時、キミは楽しかったんじゃないかな?
でも生憎、ワタシ達は皆諦めが悪くてね。さあ、もっと楽しもうよ!
◆即興連携アドリブ歓迎
●
一陣の風と共に一羽の鴉が駆け抜け、落下したリモコンを掴んだ。
それは少し離れた所まで飛んで煙に包まれる。煙が晴れた時、そこには黄色く染まった髪を持つ人間災厄、ハスミン・スウェルティ(黄昏刑務所・h00354)の姿があった。
彼女が仲間へリモコンを投げ渡し、離脱を促していると、ゼーロットが嘲るように告げる。
「馬鹿め、その装置の権限は私にある。いくら操作しようと私が生きている限り無駄だ」
「そっか、ってことは戦う理由バッチリって事だね!」
ゼーロットの予測と異なり、強敵との戦いが必定と知ってハスミンの声が弾む。
「戦闘狂いか……っ」
その表情に敵対派閥の姿をダブらせたのか、ゼーロットの声に苦々しい響きが混じった。
「あれ、直接戦闘は嫌いかな?」
「貴様らに割く時間が無駄だというだけの事だ!!」
「無駄を楽しめないなんてもったいない!楽しみ方を教えてあげるよ!」
至極純粋な表情で、ハスミンは玩具のような光線銃、リボルギアシューターを取り出した。
一瞬の間の後、機械の指揮官と人間災厄がぶつかりあう。
ハスミンはゼーロットの振るうレーザーブレードを時に躱し、時に銃身で防ぎながら光線銃を撃ちこむ。
瞬く間に光弾による痕がゼーロットに刻み込まれていく一方で、実体を持たない光弾による攻撃はゼーロットの動きを阻害しにくい。
であればこそ、そこに大技による逆転を許しうる土壌があった。
「捕えたぞ、死ね!」
銃身で剣戟を弾いた隙をついて、ゼーロットの腹部に収束したエネルギーが放たれる。スマッシュビーム、秘めに秘め、ついに至近距離から放たれた奥の手が狙い過たずハスミンの体を貫く。
黄に染まっていた髪がゆっくりと色を失い、銀色に変化していくのを見て、ゼーロットは彼女を視界から外した。
「ようやく仕留めたか、手間を掛けさせ……、て……」
言いかけて、強烈な悪寒に視線を戻す。アイセンサーに映った光景は、彼の常識を大きく逸脱するものだった。
黒く武骨な手錠から染み出すように漆黒が溢れ、ハスミンの体に空いた空隙を埋めていく。√能力者に常の蘇生とは明らかに異なる挙動を目にし、ゼーロットの体は自然に動いた。
警戒からか……あるいは恐怖によるものか。速やかに確実な止めを刺さんとレーザーブレードを振り降ろす。しかしーー。
「な……っ!!」
ギャリィィッ。と、金属の喚く異常な音が響き、ハスミンに届きかけた刃が両断された。
確かに息絶えたはずの彼女の手にいつの間にか握られた、チェーンソー状の回転刃が走る異形の剣が唸りを上げ、応えるようにその瞳が開く。
瞬間、先ほどとは比べ物にならないほど色濃く、目を焼きそうな程の|黄色《歓喜》がハスミンの髪を鮮やかに染め上げた。
「やられちゃったかー。それでどうかな?一瞬の隙をついて大技でひっくり返すの、楽しかったんじゃない!?」
興奮気味に問いかけるハスミンに対し、ゼーロットは茫然と問い返す。
「まさか、手を抜いていたというのか……?」
「そんな事しないよ、さっきのはちゃんと致命傷!でも生憎、ワタシ達は皆諦めが悪くてね。その程度じゃ終わる気になれないんだ!」
文字通り死線を彷徨うほどの戦場への歓喜が黄金のオーラを燃やし、回転刃を彼女の色に染め上げる。
「さぁ、もっと楽しもうよ!」
回転刃は空間すらも巻き込んで、歪められた力場がゼーロットを引き寄せ、回避不能の剣の嵐を巻き起こす。
戦況だけみればハスミンの優勢。しかし、刻一刻と迫る時間を考えれば。ちまちまとダメージを与えているのでは間に合わない。
……それを理解していたからこそ、彼女は何よりも先んじて布石を打ったのだから。
互いの攻撃がぶつかりあって間合いが開いた瞬間を見極め、ハスミンは再び光線銃でゼーロットの胸部装甲を撃ち抜く。
光弾は、銃撃を警戒から外していたゼーロットに防がれることなく突き刺さった。
「今更そんな豆鉄砲を……ッ!!?」
リボルギアシューターは√マスクド・ヒーローで作られた物だ。
映像作品めいたその√において。武器は戦いの道具であると同時に象徴だ。ゆえにそれは時として非合理で、遊び心に満ちた、知らなければ対処不能な性能を発揮する。
例えば、|特定の陣形で撃ちこむと敵を拘束する《・・・・・・・・・・・・・・・・・》とか。
ゼーロットの装甲に撃ちこまれた弾丸に反応し。円を描くように刻まれていた銃痕がそれぞれの色に輝く。
輝きは銃痕を中心に広がり、そして、8色の花弁を持つ光の花が咲いた。
「ッ……!?何だこれはッ!体が動かんっ!!」
光の花に囚われ、無防備となったゼーロットを前にハスミンは跳躍した。
高く掲げた回転刃が最高速に至り、歌うように叫びを上げる。
「こういうの、必殺技っていうらしい、よっ!!」
|黄色《歓喜》の一閃が光の花ごとゼーロットの装甲を断ち割った
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
見た目のわりに随分と感情豊かね……ってそんなこと言ってる場合じゃないわ、時間がないじゃない!
一気に片付けないと!
みんなを避難させる余裕はなさそうだから、とにかく敵に近づいていくわ。
黒鉄の拳を使って一気に距離を詰めていければと。
走りながらショットガンも撃って少しでもダメージを与えられればラッキーかしら。
基本はやっぱり接近戦ね。だって硬そうなんだもの。
鎧なのかは分からないけれど砕いていくわ。
あと私の蹴り、あなたが思ってるより重いと思うから覚悟してよね。
もしインビジブルと場所を入れ替えられても大丈夫よ。
そのときは決死戦を使って捕えれば良いもの。
自慢の怪力であなたを引き寄せてあげるわ。
新兵装でどんな攻撃を受けるかわからないけれど……引き寄せた後には黒鉄の拳であなたの装甲を打ち抜いてあげるから覚悟しておいてよね。
やっぱりクラッシックが一番よね!
多少の傷なんて平気よ。
だって、お姉ちゃんたちはいつだってそうだったもの!
●
「まだだァ!!!!」
そのまま機能を停止するかに見えたゼーロットが叫ぶ。
オーバーヒート直前まで機能を酷使し、大量のドローンが生成される、粗製乱造で形は歪だがゼーロットを覆い隠すには十分だ。
そして、ゼーロットの体が電流を帯びた。リモデリングフィンガー。視界内への瞬間移動を行うその√能力はゼーロットの体を√能力者達の射程外へと運び去った。
「振り切った……か?」
そのまま数度の発動を挟んだのち、タイマーに目をやる。残り時間は3分程。
「……念のためだ、もう一度移動しておくか」
爆発から距離をとるため、再度瞬間移動を発動しようとした瞬間。
散弾が2発、3発とゼーロットの壊れかけの装甲にめり込み、続けて胴体に鎖が巻きつく。不意を撃たれグラついたゼーロットの体が一気に引き寄せられ、そこに鈍色の拳が突き刺さった。
「クソ、生肉共が……まだ兵を残していたか……!」
起き上がったゼーロットの視線の先に、カレン・イチノセ(承継者・h05077)が立っていた。
「ギリギリだけど、間に合ったみたいね」
爆発までもう時間が無い、カレンは即座に次の攻撃へと移る。
「ええい、厄介な!」
ゼーロットは先ほど同様に出力を度外視したドローンを大量に生成し、一斉射撃を仕掛けた。しかしカレンは一歩も退くことなくゼーロットとの距離を詰めていく。姉と慕った|恩人《ヒト》達は、いつだって傷つく事を恐れずに戦っていた。ならば、カレンも止まるわけには行かない。今、彼女の背には学徒動員兵達全ての命がかかっているのだ。
一切の攻撃を恐れる事無く近づいてくるカレンに、ゼーロットは最後に残った手札を切る判断をした。
新兵装ワイヤークロー、火力こそないが制圧に長けたその装備がカレンの右腕に絡みつき、先ほどゼーロットを吹き飛ばした拳の一撃を封じる。それを受け、カレンはとっさに振るいかけた拳を蹴りへと切り替えた。
「武器もなしに我が装甲を貫けるとでも!?」
「生憎だけど。私の蹴り、あなたが思ってるより重いと思うから!」
生身の見た目からは予想だにしなかった重さを持つ左脚の一撃がめり込み、ゼーロットの体が大地を転がった。
「ぐ、今の状態では防御すら困難か。業腹だが……っやむを得ん」
ゼーロットの体に電流が走り、貯めも僅かにその姿が掻き消える。これまでの長距離移動とは異なる、非常に短距離の瞬間移動。そして、先ほどの言動。そこから導き出される答えは。
「まさか、逃げ回って時間を稼ぐ気!?」
瞬間移動先自体は直前の視線を追えば大まかに分かる。
だが、致命的に時間が足りない。次か、その次の打ち合いで勝負を決めなければ自爆の解除には到底間に合わないだろう。
一撃で勝負を決められるのが理想的だが、最初の不意打ちで破壊できなかったことを考えるとそれも難しい。
どうにかして逃げ回る敵へと近づき、連続攻撃を叩き込まなくてはならない。
必要なのは、鎖の技。ゼーロットを引き寄せ、逃がさず、捕え続ける、より卓越した技が必要だ。
こんな時、彼女ならどうするだろうか。
目を閉じ、瞳の奥に今も焼き付くその姿を想起する。
力で上回る敵をも翻弄するその姿を。そして、髪色と同じ銀の|鎖《ライン》を。
動き、距離、速さ。ただ制するのでも、ただ近づくのでも、ただ引き寄せるのでもない。
しなやかに、優雅に、自在に。|敵すらも舞台に巻き込んで《・・・・・・・・・・・・》。
……あぁ、そうか。と不意に肩の力が抜けた。
幾度真似ようとしても完全には形になり切らず、我流で扱い続けてきた彼女の技。
しかし、この戦場で数多くの敵と、力だけでは及ばない敵と戦い、経験を得て、足りなかったものの片鱗が見えたように思えた。
今はまだ、見えただけだ。
今の自分にはそれを埋める力はない。
だから、力を借りる。最も銀の彼女を知っていたであろう、金の背中に。
「……見ていて、お姉ちゃん達」
覚悟と共に開かれた目に、ゼーロットの出現の前兆が映る。
まだ姿すら見えないそれに、カレンは狙い過たず鎖を投擲した。
移動直後の硬直に合わせて投げられたそれを避け切れず、ゼーロットの腕が絡めとられる。再び、鎖に強い力が加わった。しかし、それ自体はゼーロットの予測の範疇でもあったようだ。
「馬鹿の一つ覚えもいい加減にしろッ!!」
同じ轍は踏まないとばかりに全力で引き寄せに抵抗する。
その抵抗が鎖を通じて伝わる0.1秒にも満たない一瞬。金の幻影に導かれ、カレンは全身全霊を込めて右足を踏み切った。
「何ィ!!?」
引き寄せる腕の力、踏み込む脚の力、そして、抵抗するゼーロットの力。
その全てを、一点にーー。
「|黒鉄の拳《フォーティ・キャリバー》ァッ!!」
衝撃がゼーロットを突き抜け、地を割り、風を裂く。
……一寸の間を置いて、ゼーロットの胴体に空いた大穴から火花が散り。
「馬鹿、な!!この、私がッ!!ぐぁあああああああああっ!」
長きに渡った戦いに終わりを告げる爆発の音が、戦場に響き渡った。
ゼーロットによって妨害されていた停止信号を受信し、バトラクス達に灯っていた赤い光が一斉に消える。
√能力者達は。ついに学徒動員兵達を守り切ったのだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功