陣取れ★ダンジョン攻防戦!
●探し求めた、その果てに
――長い事、徘徊していた気がする。
大地を踏みしめ、黒い騎士が歩みを進める。
腰に帯びたその剣は装飾華美、一体どれ程の伝説を持つ逸品か。
纏う鎧はビロードのような短毛で覆われ、その存在感だけで周囲に圧倒的な風格を示しているかのよう。
――ああ、ようやくたどり着いた。
騎士の向かう先には、ぽっかりと口を開けたダンジョン。
彼にとってそのダンジョンは、何も恐れるものではなかった。
むしろ、この地こそ自らの野望を実現するための場――「王国」の礎となるべき場所。
そこには既に無数の「黒犬の妖精」が住み着いていたが、構うものか。
格の違いを示し、我が配下にしてしまえばいい。
「いいか、犬ども。良く聞け」
「――ここを我が本拠地とする!」
黒い騎士の言葉が響き渡った瞬間、周囲の黒犬たちが彼の周りに集まってくる。
期待通り、彼らはまるで崇拝するかのように目を輝かせ、自分を見上げている。
だが――。
あ、ダメだこれトンチキだわ。
黒い騎士は思わず目を逸らす。
その場にいる黒犬たち、どう見ても頭が悪い。
いや、悪いというより何も考えていない。
「……付いて来い。我が名を轟かせる、品格と節度ある蹂躙騎士団を築くのだ!」
それでも一先ず命令を下す黒い騎士。だが、現実は理想とは程遠い。
「わーい、黒鎧のダンナ!ついていきまーす!」
「ハラ減ってるんでぇ、とりあえず侵入者喰っていいっスか?!」
――彼の理想の騎士団は、瞬く間に無法者の集まりに変貌した。
●我らが|首領《ボス》!!
「ワンワン! 我らのボス、かっけー!!」
「次、何すんの!? どこ壊しに行くんスか!?」
黒犬たちの歓声が飛び交い、黒い騎士の周囲は一気に騒然となる。
無邪気に跳ね回りながら、手当たり次第にダンジョンの壁を引っ掻いたり、地面を掘り返したりする黒犬たち。
――おい、何だこの有様は。
黒い騎士は己のこめかみを押さえた。それでも足りずに頭を抱えた。
高貴なる蹂躙騎士団を作るための配下たるべき黒犬たちは、どいつもこいつも秩序という概念を持ち合わせていない。
「……いいか、お前たち。まずは整列だ。いいか、列になって――」
「ねぇねぇボス、列ってなんスか? 食べれるヤツ?」
「えっ、整列したら褒めてくれる? じゃあ俺、二列作る!」
「兄貴、二列はムズくねっスか? 俺は輪っか作りたいっス!」
黒い騎士は深いため息をつき、遠い目をした。
今や彼の夢見た「恐れと畏怖と憧れの眼差しを集める蹂躙騎士団」は儚い幻と消えつつある。
それどころか近所の村の井戸端会議で噂するおばちゃんたちが、わさわさと居る黒犬どもの散歩をする自分を見て、眉をひそめる未来すら脳裏に浮かぶ。
「……なんてこった」
黒い騎士はしばし沈黙したのち、思い切り天を仰ぎ――。
「助けて、√能力者――!!!!」
●ダンジョンどうでしょう
「――いや助けてって、キミ敵でしょおおおおお?!?!」
突如机をバンと叩き、たった今見た自分の予知に思わずツッコミを入れた「星詠みの少女」――神童・裳奈花(風の祭祀継承者・h01001)はアタフタと周囲を見回す。
「お、お騒がせしましたっ。取り敢えず、今見た予知をお伝えします」
簡潔に纏めると以下の様だ。
◇『ダンジョン』
洞窟の中に出来た、まだ浅いダンジョン。
内部は広く、「オベリスク」と呼ばれる魔力柱が幾つかある。
オベリスクを壊せば壊すほど、√能力者に有利なバフが掛かる。
当然敵は妨害して来るので、蹴散らしてしまおう。
◇黒い騎士:堕落騎士『ロード・マグナス』
嘗ては世界に安寧をもたらす聖剣を探索する勇者として名を馳せたが、遺産の影響を受けてモンスター化。
数多のダンジョンを制覇した実力は折り紙付き『だ っ た』。
この勇者、どうやらモンスター化する際に「知恵」をまるっと何処かに落っことしたようだ。
徘徊の最中に拾った「DXスーパー聖剣刀」なる玩具を腰に帯び、「黒龍の鎧」……は内側がカビていてクリーニングに出した為、
代わりに|ディスカウントストア《ノンキ・ホーテ》で購入したあったかフリースアーマーを身に付けている。
◇黒犬の妖精:『バーゲスト』
ダンジョンのモンスターの一種で、悪意に満ちた「黒犬の妖精」……というのが通説だが、今回生じた個体群は「おバカで陽気」らしい。
尤も、一般人からすれば脅威には変わりないので、速やかな討伐が望ましい。
「バーゲストと√能力者を戦わせて消耗した所を襲うのが、ロード・マグナスの狙いみたいですが……コチラが到着するまでは、ロードマグナスはバーゲストの世話で精神的に消耗していくようなので、暫く放っておくのがいいかもですね!」
まさかの放置プレイ。
「ダンジョンへの出発までは王国の城下町でお腹を満たしたり、アイテムを買い揃えたり、日向ぼっこして過ごしたり。お好きにどうぞです!」
裳奈花はぺこりと一礼し、√能力者たちを送り出すのだった。
マスターより

お世話になります。新米マスターの式永と申します。
シナリオ難易度:易しい
対多数戦で√能力・アイテム・技能を使って気兼ねなく無双しよう!がコンセプトのシナリオとなります。
第一章は日常シーンとなります。
行動内容に関しては、余程逸脱したものでない限り、露店・食堂・広場など皆様の想像で生やして頂いて構いません。
またオープニング中に裳奈花が挙げた選択肢の他、簡単なお使いクエストなんかもあると思います。
こちらもほのぼのとした内容であれば自由に想像して請けてみて下さい。
※第一章の展開次第で、第二章が分岐します。
情報収集を急ぐなどのプレイングが多かった場合、第二章の『集団戦』が『冒険』に変わる事がございます。
1/10(金)19:00よりプレイング受付開始となります。
飛び入りや各章のみの参加も歓迎致します。
それでは、皆様の往く旅路に良い風が吹きますように。
53
第1章 日常 『クエストを受注しました!』

POW
筋力を使って物理で解決する
SPD
培った技術で問題解消に導く
WIZ
知恵や知識から打開策を考える
√ドラゴンファンタジー 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

アドリブ、共闘、連携喜んで!
中々のトンチキ具合の依頼を受けた様な気がしますが、とりあえず暫く放置プレイって話なので、情報収集兼ねて街の散策でもしますかねぇ
あ、この串焼き美味しぃ
特に気兼ねなく街の散策をして買い食いをしたり、情報収集と言う体でおばちゃん達との会話に花を咲かせます
オベリスクやロード…マグナム?って言うのも何となく聞いてみますが、そんなことより串焼き美味いですよね。おばちゃんも食べますかぁ?
おばちゃん達の話が幾ら長くても、少女分隊出しているので大丈夫なはず…
もし仮に他の人達の手が足らなければ、少女分隊を増援要因で送りますが、要らなければ皆おばちゃん達に捕まってます。おばちゃん最強か?
●そのおばちゃん、コミュ強につき
昼下がりの城下町。石畳の通りには露店が立ち並び、香ばしい焼き物や甘い香りが漂う中、逢沢・巡(散歩好きなLandmine・h01926)の少女分隊たちは忙しなく動き回っていた。
鍛冶屋で武具を眺める一人目は、「この金属、良い素材だねぇ」と鍛冶屋のおじさんと談笑中。
市場で野菜を吟味する二人目は、楽しげに品定め。
そして串焼き屋に並ぶ三人目は、「タレ多めでお願い!」と笑顔を浮かべて追加注文中だ。
「わぁ、この串焼き、絶妙だねぇ!」
少女分隊たちはそれぞれの役割を楽しげに遂行していた。……はて、そんな役割だったっけ?
一方その頃、巡本人はというと……。
「おやお嬢ちゃん、この辺じゃ見かけない顔だねぇ」
「あ、はい、まぁ……ちょっと散策中なんだぁ、新しい街の雰囲気を楽しもうかなって」
「まあまあ、それならこの街のこと、色々教えてあげるよ!」
見事なまでにおばちゃんの「地雷」を踏み抜いていた。
「二丁目のレストランのハンバーグがまた絶品でねぇ」
「だってあそこの調理器具。ぜーんぶ鍛冶屋のガンテツさんちの特注品だって話よ?」
観光案内と言う名目の世間話はいつまで経っても終わらない。
おばちゃんたちはまるでスタミナ切れを知らないトークマシンだ。
(あぁ、串焼き食べたい……!)
少女分隊たちが美味しそうに串焼きを頬張る姿が脳裏をよぎる。
こんなの絶対おかしいよ。少女分隊とワタシ、本来の立場逆では??
「そういえば、三つ隣の街にダンジョンがあるって話だけど、|魔力柱《オベリスク》って物理的に壊せるらしいわよ?」
「|魔力柱《オベリスク》……へぇ、貴重な情報ですねぇ」
おばちゃんたちの継戦能力にげんなりしつつも、有力情報を漏らさずメモに取る巡。
「それと、三日前から有名な串焼き商人がこの辺に滞在してるんだって」
「そうそう、あの露店の串焼き、美味しいんだけどタレが濃いのよね」
「串焼き……」
巡の胃が切ない音を立てる。少女分隊たちは今頃串焼きを食べ終わって次の店に向かっているだろう。
その光景を想像するたび、巡は心の中で涙を流すのだった。
後日、巡はこう語る。
「出来たての串焼きを持って来てくれた少女分隊が、天使に見えましたぁ……」
🔵🔵🔵 大成功

√ドラゴンファンタジーに来るのはこれで二度目
なーんかこのファンタジックな世界観が気に入っちゃったんだよねー
物語の中にいる!って感じで
それじゃ、出発まで羽を伸ばしちゃお
城下町で人気のスイーツをリサーチ
Key:airでレギオン達を呼び出して町の人の噂話なんかから情報を集めてもらうのもいいかも!
んー、さすが城下町
スイーツも√ウォーゾーンよりちょー充実してるっぽい
迷うけど今回はバスクチーズケーキで!
酒場のデザートメニューだというそれを注文すれば、食べる前にセルフィーをパシャリ
今日も盛れてるのを確認したらいただきまーすっ
ヤバ、ちょー美味しい!
焦げ目の香ばしさとクリームチーズのしっとりした甘みが最高すぎっ
●甘味と情報、ヒバリの探索記
青空の広がる昼下がり。石畳の通りを歩きながら、薄羽・ヒバリ(alauda・h00458)は満面の笑みを浮かべていた。
「やっぱこのファンタジーな雰囲気、最高! スイーツ探しも捗りそうだよね~」
手早くKey:AIRを起動すると、レギオンたちが光と共に出現する。
「みんな、この街で一番美味しいスイーツを探してきて! 噂話も集めてくれると嬉しいな」
レギオンは指示を受け、風のように散らばっていく。
それを見送ったヒバリは、自分も通りを歩きながら気になるお店をチェックする。
「このパン屋さん、クロワッサンがめっちゃ美味しそう! あ、あそこの雑貨屋も可愛い……後で寄っちゃおっかな」
そんな中、一体のレギオンが戻り、情報を表示した。
”少女分隊より噂の共有:酒場『グリフォンの止まり木』に絶品バスクチーズケーキあり”。
「おぉ、ナイス! 酒場でスイーツって新鮮だね!」
レギオンに案内され、路地を進むと趣ある石造りの建物が現れる。
「ここが『グリフォンの止まり木』かぁ。いい雰囲気!」
木の温もりが感じられる店内には、甘い香りが漂っている。早速席に着くと、メニューの「特製バスクチーズケーキ」を注文する。
しばらくして運ばれてきたバスクチーズケーキは、焦げ目が美しい一皿。添えられたホイップクリームも魅力的だ。
「いただきまーす!」
フォークを入れると、しっとりとした質感が伝わり、一口食べれば焦げ目の香ばしさと濃厚なクリームチーズの甘みが絶妙に絡み合う。
「ヤバい、これちょー美味しい! 甘さと香ばしさのハーモニーが最高!」
食後には店員から酒場の歴史やスイーツ誕生の秘話も聞き、興味深い時間を過ごす。
「この街、スイーツも噂話も充実してる~!」
お腹も心も満たされたヒバリは、再びレギオンに声をかける。
「次はどこ行こっか? もっと面白いお店、教えてよ!」
甘さと街の魅力に、彼女の冒険心はますます掻き立てられていった。
🔵🔵🔵 大成功

【黒華】
騎士さんを消耗させるための自由行動!
マスティマさんと堂々と遊びに行けるし騎士は不憫だし星詠みさんナイスアイデア!
るんるんしていると行先の案を聞かれちゃったりするので胸を張ってアイデア出すよ
ずばり、犬達へのご飯の準備~
ボクは手作りのトリカラをあげるつもり
もちろんイジワルの調味料をたっぷりまぶしてね♪
わぁ、愛犬がいるんだー
いいないいな、いつか触らせてね!
愛犬にごはんをあげるけどならず者風の犬はお預けなワケだ、いいね!
ボクはいわゆる普通の食材屋さんで鶏の唐揚げの材料を買い
マスティマさんのジャーキー屋さんめぐりに興味津々について回る
マスティマさんの愛犬達が寄ってきてくれるなら喜んで戯れちゃう!

【黒華】
すごい!
僕たちは気ままに遊べて犬たちは楽しくて敵は消耗するなんてすごい作戦だ
あの星詠みの彼女は稀代の軍師になるかもしれないね…!
で、何をする?シャル
僕はこの町の美味しいものを食べ歩いたり名産品を見て回るのも…あぁ!
犬達へのご飯?それは良いね
それならイジワルなご飯はシャルに任せて、僕は僕の愛犬たちのおやつを調達しようかな
鹿や雉のジャーキーなんかを売っていると良いのだけれど、そうだ、魔物のお肉もヘルシーだったらアリかもね
僕の愛犬たちは可愛いよ!いつかと言わず見せてあげる
猟犬のドルチェとフォルツァを呼び出して一緒に歩こう
何だろう、シャルを仲間だと認識している気がする
皆可愛いね
●のどかな日常、時々イタズラ
賑わう城下町の通りには観光客や商人、地元の住人が行き交い、キラリと光るレギオンたちが青空を気持ち良さそうに翔けていく。
そんな中、マスティマ・トランクィロ(万有礼讃・h00048)とシャル・ウェスター・ペタ・スカイ(|不正義《アンジャスティス》・h00192)は自由行動の許可を得て散策を始めていた。
「黒犬たちを疲弊させるために遊び回るなんて、天才的な発想だよね! 星詠みの彼女は稀代の軍師になるかもしれないね。」
マスティマが笑顔で言うと、シャルは胸を張った。
「そうそう! ボクたちは遊んで楽しいし、敵は苦しむ。最高でしょ!」
褒め過ぎ褒め過ぎ。そんなに煽てたら彼女、木に登った上に皿回しまで始めそう。
「で、まず何をしよっか? シャル」
マスティマがシャルに尋ねると、彼は胸を張って提案した。
「黒犬たちにご飯をあげる準備! ボクは香辛料たっぷりのトリカラを作るんだ!」
「なるほど、それは良いね。それなら僕は愛犬たちのおやつを探そうかな。鹿や雉のジャーキーなんて売っているといいけど」
二人は合流場所を決めた後、それぞれ目当てのものを探すため、露店街へと歩みを進めた。
通りを歩くマスティマの隣には、彼の呼び出した愛犬たち、ドルチェとフォルツァが寄り添うように歩いている。
美しい毛並みと引き締まった体つきの二頭の猟犬は、町の人々の視線を集めながらも、誇らしげに飼い主の歩みに従っていた。
「ここに良いものがあるかも。」
マスティマは肉類を扱う店を見つけると、犬たちと一緒に立ち寄った。
「いらっしゃい! 今日は良い鹿肉が入ってるよ。」
店主の威勢の良い声に、マスティマの目が嬉しそうに見開かれる。
「それは素晴らしいね! ジャーキーにしてあるものもある?」
「もちろんだとも。そっちの棚に並べてあるよ。」
店主が指差した先には、鹿、雉、さらには魔物の肉で作られた珍しいジャーキーが並んでいた。
マスティマは一つ一つのジャーキーを手に取り、香りや硬さを確かめる。
「どれも美味しそうだね……うん、この鹿肉ジャーキーは良さそうだ。あとは雉も試してみようかな」
犬たちも鼻をひくつかせながら彼の足元に座り、興味津々の様子だ。
「君たちも楽しみだろう?」
微笑みながら犬たちの頭を撫で、選んだジャーキーを購入したマスティマは、次の店へと向かう。
「魔物のお肉も気になるね。ヘルシーなら試してみても良いかな……。」
彼の目には、この町の名産を見つける楽しみが輝いていた。
一方その頃、シャルは近くの食材店で鶏肉を吟味していた。
「唐揚げを作るなら、まずは鶏もも肉だよね。でも、ただの唐揚げじゃつまらない。やっぱりイジワルに香辛料をたっぷり入れなきゃ!」
彼は店の奥に積まれた香辛料の棚を見つけると、目を輝かせて駆け寄った。
「うわー、スパイスの種類が多い! これなんか良さそう!」
彼は次々と瓶を手に取り、ラベルを確かめる。ハバネロパウダーにカイエンペッパー、そして名前も聞いたことのない異国のスパイスまで……。
「これ全部使ったら、どんな味になるかな?」
楽しげな表情でスパイスを選ぶシャル。その悪戯心が垣間見える笑顔は、見ているだけで人々を和ませた。
「やっぱり衣にもひと工夫しなきゃね。パン粉だけじゃなくて、この粗挽きのナッツを混ぜるとかどう?」
頭の中で創作唐揚げの完成図を描きながら、彼は材料を選び終えた。
「よし、準備完了! あとは揚げるだけだ!」
戦闘とは無関係に見える? とんでもない!
ダイスも00(クリティカル)を指しているし、きっと大活躍する筈だ。
買い物を終えた二人は、街外れにあるドッグランで合流した。
広々としたスペースでは、数頭の犬たちが元気よく駆け回っている。
「シャル、良い材料は見つかった?」
「うん、完璧だよ! で、そっちは?」
「犬たちのために美味しいジャーキーを買ったよ。」
マスティマは袋を開け、ドルチェとフォルツァに一切れずつ与えた。二頭は満足げに尻尾を振りながらジャーキーを噛み締めている。
「わあ、この子たち、本当に可愛いね!」
シャルは笑顔を浮かべ、ドルチェとフォルツァに近づいた。二頭もシャルに興味を示し、じゃれつくように鼻を近づけてくる。
「ドルチェもフォルツァも、シャルが好きみたいだね。」
マスティマが嬉しそうに言うと、シャルはその場にしゃがみ込み、犬たちと全力で遊び始めた。
「いいね、この毛並み! ボクも犬を飼いたくなっちゃう!」
楽しそうに戯れるシャルと愛犬たちを見ながら、マスティマは穏やかな笑みを浮かべた。
「またこうして一緒に遊ぼう。次はもっと広い場所でね。」
冬の澄んだ空気の中、犬たちの元気な鳴き声と二人の笑い声が響き渡る。
どこかの黒い騎士が疲弊していく一方で、彼らのひと時の平和は続いていた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

せっかくなので、城下町の露天で良い魔導書や錬金術の本、マジックアイテムを探してみます。
「おじさん、これいくら?」
値段を聞いたら、その八割ぐらいの値段を提示して交渉成立なら購入しまくります!
「ふっふっふ、いい買い物だったのです」(満面の笑顔で)
お使いクエストは、簡単な野犬などを追い払う程度の討伐依頼があれば受けたいですね。
新しく得た√能力「邪風の爪」の試し打ちを兼ねて一気に片付けて差し上げます。
あ、ついでにその堕落騎士とやらに関する伝承が書かれた本がないか探してみましょう。

ダンジョンに陣取ってるバーケスト達、温和な性格のようですが、際深部攻略したい方達にとっては障害で邪魔なので退治すればよろしいのでしょうか?
まずはダンジョン向かう前に、流行知識で入手した近隣の有名そうな甘味処に向かいましょう!
配信者にも人気らしいですしね。
そこで名物おぜんざいみたいな甘味頂くとしましょう。
美味しいお店は放浪の旅人にとって、ささやかな自分ご褒美ですしね。
うんお値段も庶民価格なのに、とても甘くて美味しいですね。
甘い物には緩和するために渋いお茶もあいますね。
あとはウォーミングアップで何か日帰りですむ依頼でも受けれたらよいですね。(マスター様のアドリブにお任せします。)
終わったら本番で。
●炎と風が紡ぐ魔法の調べ
石畳の道が続く城下町。たった今、香辛料と鳥肉を袋に提げた銀長髪の青年が出て来た小道の先。
清水のせせらぎが響く静かな区画に、ひっそりと佇む本屋があった。
木製の扉を押して中へ入ると、柔らかなオレンジ色の明かりが本棚の影を際立たせる。
古びたインクと紙の香りが漂い、天井まで届く棚には革表紙の魔導書や巻物がぎっしりと並んでいた。
カウンターの奥では初老の店主が椅子に腰掛け、手元の本を静かにめくっている。
「いらっしゃいませ。お探しのものがあればどうぞ、ご遠慮なく」
丸眼鏡が落ち着いた印象を与える彼の声は低く温かく、聞くだけで心が和むようだった。
紫の瞳を輝かせたミンシュトア・ジューヌ(エルフの|古代語魔術師《ブラックウィザード》・h00399)は棚を見て回り、興味深そうに魔導書の背表紙を指でなぞる。
一冊を抜き取るとカウンターへ向かい、問いかけた。
「おじさん、この本はいくら?」
「それは20銀貨だよ」
ミンシュトアは一瞬考え込むような素振りを見せた後、柔らかな口調で切り出した。
「15銀貨ではどうかしら。この装丁は素敵だけど、紙が黄ばんでいて。年季を考えると、その分を差し引いてほしいの」
店主は数秒の沈黙の後、微笑みながら頷いた。
「お嬢さん、特別だよ。それで構わない」
扉を出たミンシュトアは、魔導書を大事そうに抱えながら満足げに呟く。
「ふっふっふ、いい買い物だったのです」
赤髪をまとめたサティー・リドナー(人間(√EDEN)の|錬金騎士《アルケミストフェンサー》・h05056)は、石畳の通りに面した甘味処に足を運んだ。
引き戸を開けると、鈴の音が軽やかに響く。
小ぢんまりとした店内は温かな雰囲気で、木目のテーブルが並び、い草の座布団が小さな席に添えられていた。
壁には筆文字で書かれたメニューが掛けられ、地元名物の名前が目を引く。
「名物おぜんざい、とっても美味しそうですね」
カウンター越しの女将に注文を告げ、サティーは席に腰掛けた。
窓際の席からは通りを行き交う人々が眺められ、店内の穏やかな時間に溶け込んでいく。
しばらくして運ばれてきたおぜんざいは、湯気を立てる真っ白な陶器の器に収まっていた。
小豆の艶やかな赤が目に映え、その上には程よく焼き目のついた餅が二つ浮かんでいる。
スプーンを差し入れると、餅の柔らかな表面がスルリと沈む。
小豆の香りがふわりと鼻をくすぐり、一口運べば、優しい甘みとほのかな塩気が舌の上で溶け合う。
「美味しい……お値段も庶民的で、私のお財布にも優しいですね」
ふと窓の外に目を向けると、紙袋を抱えて歩く貴公子と、それに寄り添う二頭の猟犬の姿が見える。
笑顔を浮かべたその様子に心が和む。賑わう城下町に平和なひとときが流れているのを感じながら、サティーはおぜんざいを一口また一口と楽しんだ。
甘味処から出たサティーと、魔導書を抱えたミンシュトアが城下町の掲示板の前で顔を合わせた。
クエスト依頼を確認する二人の目に「狼を追い払う討伐依頼」が飛び込んでくる。
「簡単そうな依頼ですね。ウォーミングアップにちょうど良さそうです」
「そうね、わたしも新しい能力を試してみたいの」
二人はクエストを受け、町外れの農地へ向かった。そこでは農夫が困惑した表情で迎えてくれる。
「狼の群れが作物を荒らして困ってるんだ。頼むよ、何とかしてくれ」
草地を進むと、荒れた畑の向こうで何かが動いた。鋭い牙を持つ狼たちが影の中から現れ、低い唸り声と共に二人を睨みつける。
「さて、早速お試しと行きましょうか」
ミンシュトアは静かに杖を掲げ、唇から呪文を紡ぐ。
「天地ノ狭間漂ウ風御魂(カゼミタマ) 解キ放タレシ其ノ身捧ゲヨ……邪風の爪!」
瞬間、空気が震えるような音を立てて疾風が巻き起こる。鋭い刃のような風が狼たちを切り裂き、衝撃波に押されて何匹かが悲鳴を上げながら後退する。
砂煙が舞い上がる中、渦巻く追い風はサティーの戦闘力を一時的に高めた。
「私も負けていられませんね。――フレイム!」
サティーは指先に小さな炎を作り出し、次々と「ウィザード・フレイム」を展開する。浮かび上がるいくつもの炎球は、狼たちを取り囲むように配置される。
「行きます!」
サティーが指を鳴らすと、フレイムが一斉に閃光を放った。眩しい光が狼たちの視界を奪い、低い悲鳴と共に群れは散り散りになって逃げていく。
風が止み、静寂が戻る。サティーは炎を収め、ほっと息をついた。
「これで農夫さんも少しは安心できますね」
「ええ、わたしたちのチームワークも悪くなかったわ」
ミンシュトアが杖を肩に担ぎながら微笑み返す。
ウォーミングアップの成果か、身体を廻る魔力の流れがスムーズだ。
準備万端と言った調子で二人は城下町に戻る。
本番は、これからだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

√ドラゴンファンタジーに来たのは初めてだが、クエスト……か。
とりあえず俺は暗殺者としてのスキルを駆使してターゲット……クエストの討伐対象を排除するか。死角からレイン砲台からのレーザー射撃をしておけば向こうはこちらを特定することが難しいはずだ。
もし他に同じクエストを受注している奴がいるなら『マルチ・サイバー・リンケージ・システム』でバフをかけておけば動きやすくなるだろう。
……しかし、討伐系のクエストを受けたのはいいが、何か珍しいものをドロップしたりしないものか……同居人にお土産の一つは持って帰りたいものだ。
●義体の影、鋭き瞳
√ドラゴンファンタジーの城下町を、黒衣に身を包んだ青年が静かに歩いていた。
銀の瞳が鋭く街並みを捉え、無数の情報が義眼から視界に流れ込む。
商人たちの掛け声、鍛冶屋の火花、屋台から立ち昇る食材の匂い──どれも初めて訪れるこの地の活気を伝えていた。
しかし、鏡見・氷雨(愛を掴んだ暗殺者・h00561)の興味はそこにはない。義眼に映るARマップを確認しつつ、指定された峡谷へ向かっていた。
合流地点には自警団の隊員たちが待機しており、鋭い視線のリーダーが一歩前に出る。
「お前が今回の助っ人か。助かる、俺たちだけじゃ”はぐれモンスター”相手じゃ手が足りないんでな」
「仕事を受けた。それだけだ」
短く返した氷雨は、黙々とレイン砲台を準備し始めた。彼の無口な態度に、団員たちは少し戸惑った様子だったが、リーダーは黙認するように頷く。
峡谷に響くストーントロールの重い足音。岩を削るような低い唸り声が、近づく脅威を告げていた。
氷雨は背後の岩場へと静かに移動し、そっと指を動かして「マルチ・サイバー・リンケージ・システム」を起動する。
青白い光が自警団員たちの背中に薄く走ったが、誰もその変化には気付かない。
「行くぞ! 突撃!」
リーダーの号令で団員たちが飛び出し、ストーントロールの注意を引きつける。
鈍重な拳が地面を揺るがせる中、氷雨は砲台の射線を合わせて呟く。
「レイン、発射」
光のレーザーが連続で放たれ、ストーントロールの硬い外殻を次々と削っていく。怯んだ隙に自警団員たちが武器を振るい、一撃を加える。
自分達の動きがやけに鋭いことに気付きながらも、団員たちは深く考える暇もなく戦い続けた。
最後の一撃は、氷雨の放ったレインの最終照射だった。
閃光が峡谷を貫き、ストーントロールは巨体を揺らして崩れ落ちた。静寂が戻り、自警団員たちは歓声を上げた。
「さて、ドロップ品は……」
氷雨がトロールの残骸に近寄ると、手に取ったのは「最良質な土塊」。彼は眉をわずかに上げ、考え込むように呟いた。
「家庭菜園向けのレアドロップか」
丁度、大葉を育てている同居人が居る。見栄えは無いが、手渡したら有効活用してくれるだろう。
任務完了後、解散の準備を進める自警団の中で、リーダーが氷雨に近寄った。
「おい、分かってたぞ。お前が何かやってたってな」
氷雨はわずかに目を細めたが、リーダーは言葉を続ける。
「礼を言うぜ。おかげで誰も傷つかずに済んだ」
リーダーは手を差し出す。氷雨は一瞬迷った後、『左手』を伸ばし、しっかりと握手を交わす。
「また、頼むぜ」
去っていくリーダーの背を見送り、氷雨は静かに峡谷を後にした。
左手に残る温もりが、彼に少しだけ満足感を与えていた。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『バーゲスト』

POW
角突撃
【全身に生えた角】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【前足】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
【全身に生えた角】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【前足】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
SPD
バーゲストファング
命中する限り「【穢らわしい牙】による攻撃→技能攻撃→[穢らわしい牙]攻撃→技能攻撃」を何度でも繰り返せる。技能攻撃の成功率は技能レベルに依存し、同じ技能は一度しか使えない。
命中する限り「【穢らわしい牙】による攻撃→技能攻撃→[穢らわしい牙]攻撃→技能攻撃」を何度でも繰り返せる。技能攻撃の成功率は技能レベルに依存し、同じ技能は一度しか使えない。
WIZ
バーゲスト・スタンピード
自身の【赤く輝く目】がA、【全身から生えた角】がB、【鋭い爪を備えた脚】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
自身の【赤く輝く目】がA、【全身から生えた角】がB、【鋭い爪を備えた脚】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
●
誇り高き蹂躙騎士団を結成するという夢を胸に、バーゲストたちを配下に収めたものの、彼らの無秩序ぶりには呆れるばかりだった。
整列を命じれば、「列って何っスか?」という質問が飛び、訓練を始めようとすれば、全員が「そんな事より遊んで欲しいッス!」と跳ね回る。
おまけに最近では、自分の背中で寝そべる者まで現れる始末だ。
「おい、お前たち! 騎士としての誇りを――」
「ボス! あの新しい柱、噛んでもいいっスか?」
「駄目だ! それは|魔力柱《オベリスク》だ!」
薄暗いダンジョンの中、モンスターを強化する効果を持つとされる、不気味に発光する魔力柱。
実はウッカリ「Wi-Fiモード」で動作中なだけなのだが、ロード・マグナスはその効果を信じ込んでいた。
そしてバーゲストたちも、柱を「おもちゃ」として興味津々で囲む。
そこへ、ダンジョンの入口付近で異変が起きる。|侵入者《√能力者》たちが現れたのだ。
バーゲストたちは一斉に反応し、唸り声を上げながら殺到する。
「ほう、やればできるではないか」
ロード・マグナスはその様子を見て、目を細めた。
だが実際のところ、バーゲストたちは敵と遊べると思い込んでいただけだった。
中には「お腹空いたから喰おう!」と牙を鳴らす者もいる始末。
それでも、ロード・マグナスは自分の指揮が通じたと思い込み、わずかな満足感を抱いていた。
「よし、今こそ我が蹂躙騎士団の力を見せつけるのだ! 行け、バーゲストども!」
バーゲストは遊びの範疇でも、その牙と爪は油断出来ない。
彼らの(無邪気な)吠え声がダンジョン中に響き渡り、第二章の幕が上がる。
――余談だが、バーゲストは倒すと無害な魔力に還るだけらしく、更にある程度は転生先を選べるとあって本人(犬)たちも満更ではない様子。
という訳で、犬にヒドイ事出来ない優しいキミも、安心して戦うといいぞっ。

バーゲストを、討伐する。
ダンジョンのオベリスク破壊は、他の仲間でやられると思うので、私は、やんちゃなワンちゃん達との戦いに集中する。
でもバーゲストの鋭い爪や牙で引っ掛かれたら痛そう。(私は、痛覚遮断のフード付きロングコート装備で平気ですが。)
仲間負傷を危惧するから、ルート能力忘れようとする力発動、中心に範囲の方守りますね。
詠唱錬成剣を大剣に変化させ受け流しを、しやすく攻撃します。
沢山遊んで満足したら、天にどうか安らかに召されて下さい、バーゲスト。
(あとで飼い主の黒騎士さんもきっと送り届けますから、安心してお眠り下さいね、来世もっと良識ある優しい素敵な飼い主さんにも再び巡逢えることを祈ります。)

事前に受けたクエストにより、√能力の予習は万全です。
範囲攻撃と味方へのバフを考慮して、今回も「邪風の爪」を使います。
とはいえ、このような愉快なお犬さん達を倒すのはなんだか忍びない気もします……
次は無害なお犬さんに転生して、優しい飼い主さんに飼ってもらえることを祈りつつ。
「風の力で遊んであげますよ」
結局倒してしまうことに変わりないのですが、強い疾風で舞い上げたり。
少しは楽しんでもらえましたか?
戦況を判断して、バーゲストへの火力が十分であれば、なぎ払いでオベリスクを破壊していきます。
ついでに世界知識でオベリスクについて学んだことがないか思い出してみましょう。
●ワンワン! お出迎えだ!!
ダンジョンの入り口では黒犬たち――バーゲストの群れが勢揃いしていた。
彼らのギラギラした目と低い唸り声は、一見すると恐ろしい。
「ワンワン! お客さんだ、喰っちゃっていいの?」
「どうだったっけ、ボスからはもてなせって聞いたッスよ!」
まぁ、尻尾がブンブンに振れている状態じゃ恐ろしさも八割引きではある。
「やんちゃなワンちゃんたちですね」
サティー・リドナー(人間(√EDEN)の|錬金騎士《アルケミストフェンサー》・h05056)は黒犬たちを見つめ、静かにため息をついた。いやホント、仰る通り。
「とはいえ、放っておくわけにはいきません。準備は、よろしいですか?」
「ええ、先程の戦いで充分整っていますから」
サティーに声を掛けられたミンシュトア・ジューヌ(エルフの|古代語魔術師《ブラックウィザード》・h00399)は杖を掲げ、バーゲストたちの動きを冷静に観察する。
尻尾をふりふり、その場でピョンピョン飛び跳ねてウォーミングアップする黒犬たち。
(愉快なお犬さん達ですね……)
ちょっぴり忍びなく思うミンシュトア。いいんですかお嬢さん、躊躇いは「隙」ですよ。
吠え声と共に、黒犬たちが一斉に飛び掛かってきた。ミンシュトアは咄嗟に身を引いたが、一匹の黒犬の爪がその衣服を掠めた。
「わっ!」
裂けた袖口から風が入り込み、彼女の動きを一瞬だけ妨げる。
「これは……服しか傷つけられてない?」
ミンシュトアが不思議そうに腕を見下ろすと、黒犬たちも立ち止まり、自分の爪をじっと見つめた。
丸い。爪の先端がピカピカに丸められているではないか。
黒犬たちの脳裏に、夜な夜なヤスリを片手に「お前達、爪の手入れくらいしておくものだ」と甲斐甲斐しくお世話する主の姿が浮かぶ。
彼らの目が潤む。――ボス、あなたの愛情、確かに届いています!
「いやいや、感動のひと時じゃないですよ! ほら、まだ戦闘中!」
ミンシュトアがそう突っ込む間もなく、黒犬たちは再び飛び掛かってきた。
「|錬成《シンセシス》、|結晶氷鐵《グレイスティル》!!」
サティーの手の内に薄蒼の閃光が走り、ミンシュトアへの攻撃を纏めて受け流す。弾き飛ばされる黒犬たち!
その手には氷で編まれた大剣が握られていた。
詠唱錬成剣。|錬金騎士《アルケミストフェンサー》を象徴する、魔法剣型竜漿兵器だ。
更にサティーの周囲に不思議な力場が発生する。
と、みるみる内にミンシュトアの服の裂け目が癒合していくではないか。
「守りは任せて下さい、代わりに攻撃を……!」
頼もしいサティーの様子に――
「ワウワウ、なんかキュンとするッス!」
「俺、彼女の姫になりてぇなぁ……!」
敵の黒犬どもがメロメロになっていた。
「ええ、お任せしましょう。彼等は|魔力柱《オベリスク》ごと、風の力で遊んであげますよ」
ミンシュトアが軽く呟き、詠唱を開始する。
「天地ノ狭間漂ウ風御魂(カゼミタマ)」
詠唱に呼応した魔力が大気より析出し、彼女の杖に集う。
「解キ放タレシ其ノ身捧ゲヨ……邪風の爪!」
唱句を結べば、放たれた風が瞬時に暴風となり、黒犬たちを飲み込み天井まで舞い上げる!!
「兄貴、俺空飛んでる……ついにチョウチョになれたッス!」
一頭のバーゲストが空中で足をバタつかせながら叫ぶ。その姿は蝶々……ではなく、どちらかというと冬空に舞うゴミ袋。
なおも風は吹き荒れ、黒犬たちは|魔力柱《オベリスク》の側をすいー(ゴンッ)、すいー(ガシャッ)と衝突しながら飛んでいく。――訂正、蝶というよりも、川を流れる空き缶だった。
「少しは楽しんでもらえましたか?」
ミンシュトアは満足げに微笑むが、黒犬たちの瞳には若干の涙が浮かんでいるようにも見える。
「ふぅ、良い感じに戦えていますね」
サティーは氷の大剣を構え直し、次々とミンシュトアに襲い掛かろうとする黒犬たちをなぎ倒していく。
傷ついた衣服も「忘れようとする力」でたちどころに修復され、攻撃が全く通らない。
「……これでおしまいです」
ミンシュトアが最後の詠唱を終え、疾風で残った黒犬たちをまとめて吹き飛ばす。壁に激突する瞬間、ポン!と音を立てて魔力に還って行くバーゲスト達。
その姿に、二人はわずかに安堵の息をついた。
「簡単ではなかったけれど、無事に済んで良かったですね」
「ええ、彼らもこれで天に召され……いえ、次はもっと素敵な飼い主に出会えることを祈りましょう」
二人の背後では、風に煽られた柱が傾き、ついにはガラガラと崩れ落ちていった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

……ふむ、これが『バーゲスト』……なかなか凶悪そうな見た目だが、なんだろう、この「遊んで」感は……
それなら遊んでやろう。ちょうど俺のAnkerも犬が好きでな。きっと喜んでくれる。
「橙弥、いるのは分かっている。ほら(なでこなでこ)」
橙弥を呼び出し、頭を撫でまくる。
怒り狂った橙弥がピアノ線で攻撃するから俺はそれを避けて『バーゲスト』に当てるだけだ。
目やら角やら増えているがいくら増えても無駄だ、橙弥のピアノ線攻撃は動物程度ミンチにするぞ……? あれ、何度か見たが死体処理面倒にならないか……?
橙弥のピアノ線を避けつつ、俺もレイン砲台とハチェットで『バーゲスト』に対処する。
これくらい、二人なら楽勝だ。
●痴話喧嘩は犬も食わないって知ってる??
洞窟内の岩場の影から覗く赤い目が、暗闇の中で妖しく光る。鏡見・氷雨(愛を掴んだ暗殺者・h00561)は淡々とした表情でそれを見つめ、呟いた。
「……ふむ、これがバーゲストか。凶悪そうな見た目だが、この『遊んで』感は何だろうな」
氷雨が小さく指を鳴らすと、彼の隣に霧鎖・橙弥の姿が現れる。無表情の少年だが、その瞳にはうっすらと不機嫌さが滲んでいる。
「呼んだ?」
「呼んだ。お前の出番だ」
そう言って、氷雨は橙弥の頭をわしわし撫で始めた。口には出していないが、「よーしよしよし、おーよしよし」とばかりの見事な撫でっぷりだ。
「やめろ、なでるな! 俺は犬じゃない!」
「ふむ、だが似たようなものだろう?」
「何処がだよ!」
怒り狂う橙弥がピアノ線を繰り出すと、氷雨は小さなステップで軽やかに避ける。
――ギャゥン!
背後に忍び寄っていたバーゲストの一匹がピアノ線に巻き取られ、あっという間に地面に叩きつけられた。
「お前、狙ってやったな!」
「ふむ、たまたまだ」
「嘘つけ!」
ワンワン放置で終始イイ感じに戯れる二人。
クリスマスは終わった筈で、バレンタインデーにはちょっと早い今日この頃。
傍らではピアノ線でお仕置きされた一頭が満足げな笑みを残して魔力に還りつつある。
黒犬たちに不穏な空気が漂い始める。俺達だってもっと主とキャンキャンウフフしたかったのに! ジーク嫉妬!!
いちゃつきやがって、リア充爆発しろ!!
嫉妬に燃えるバーゲストが唸り声を上げながら一斉に突進してきた。その数、十を超える。
「どうやら彼ら、本気で遊びたいようだな」
氷雨は冷静にレイン砲台を展開し、頭上に小型のドローンを浮かべる。
「砲台、起動。あとは適当に遊べ」
ドローンから放たれたレーザーが、バーゲストたちの群れに正確に命中する。
スポンジよろしく穴だらけになり、ポン!ポン!と小気味良い音と共に魔力に還るバーゲスト。
だが、それでも怯まず突進してくる別の個体がいた。
「橙弥、そいつは頼んだ」
「勝手に振るなよ!」
橙弥は呟きながらもピアノ線を構え、素早い動きでバーゲストの突進をいなす。
鋭い刃物のようなピアノ線がバーゲストの足元を捉えると、その体はバランスを崩して転倒・消滅した。
「しかし……目やら角やら、増えてきているな」
「いや、増えても無駄だろ。こんなやつら、ピアノ線でミンチだ」
バーゲストたちは二人の間で翻弄されていく。ピアノ線に巻かれる者、レーザーで焦がされる者、硬く冷たい右腕で叩き伏せられる者。次第にその勢いは衰えていった。
最後の一匹が消え去り、静寂が訪れる。橙弥は深く息を吐いた。
「これで終わりか」
「ふむ。二人なら楽勝だな」
氷雨はレイン砲台を収めながら廃墟の奥を指差す。そこには不気味な光を放つ魔力柱がそびえ立っている。
「橙弥、最後にあれを折るぞ」
「お前がやれよ」
「ふむ。では共に行こう」
二人は柱の前に立ち、氷雨がハチェットを振り上げると橙弥がピアノ線を絡める。一斉に振り下ろされる攻撃に柱は悲鳴のような音を立てて崩れ落ちた。
「これで一段落だな」
「次は俺を撫でるなよ」
「考えておこう」
――氷雨の「考えておく」は、「考えない」の意味だ。それを理解している橙弥は、軽く頭を抑えるのだった。
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ、連携喜んで!
可愛いお犬様ですねぇ〜
爆破するのが心苦しいですよぉ。
そーれ。取ってこぉい〜。
そこら中に地雷を散布し、はしゃぎ回るワンちゃん達をニコニコ顔で見守ります。地雷をフリスビーみたいに投げて本人も楽しみます。勿論取ったら爆発するし、信管を下に向けて投げてるので、取らなくても落下した衝撃で爆発します。
人の心とか無いんか…?
この少女人形はありませんでした。動物愛護団体はキレていい。
鉄の匂いとかで地雷の場所が分かるようになりました?わな線地雷とか非金属地雷とかも豊富にあるので、もっと嗅ぎ分けておいで〜
見事ワタシの元まで辿り着けたらご褒美として食べていいですよ。大爆発しますが。
良い転生を。
●ワウワウ! フリスb「ドォーン!!」
「可愛いお犬様ですねぇ~」
逢沢・巡(散歩好きなLandmine・h01926)は、はしゃぎ回るバーゲストの群れを見下ろしながら、フリスビーを片手ににっこりと微笑んだ。
「そーれ、取ってこぉい~」
ふわりと空を飛ぶ鉛色の円盤、「|M14-Toepopper《爪先飛ばし》」と銘打たれたソレは紛う事無きフリスビー。
……じゃねえんだよ、思いっきり対人地雷なんだよなぁ。
尻尾ふりふり、オンオンオン! と元気よく並走するイッヌことバーゲスト。
モンスターの脚力で空中ジャンプ&お口でキャッチ、おみご「ドッカァァァン!!!」
ですよね。
軽やかな動きで、地雷を投げる巡。信管を下に向けて投げられたそれは、犬たちの間に着地すると同時に、
――ドッカァァァン!!!
爆風と共にバーゲストたちを巻き込み、鉄臭い煙が辺りを覆う。
「爆破するのが心苦しいですよぉ。でも、ほらっ!」
巡サーン? ほらっ、じゃあないんだよ。
さっきから星詠みのスマホに動物型モンスター愛護団体から猛抗議のコールが殺到してますよー?
次々と投げ込まれる地雷に、バーゲストたちは大興奮。小さな爆音に反応して走り回る様子は、まるでおもちゃを追う犬そのものだ。
ホンマか? 逃げ回ってるんじゃなく?
巡はリュックから新たな種類の円盤を取り出した。鉄の匂いがしない、今度こそフリスビーだぁ! と目を輝かせる黒犬たち。けれども。
――どれを取っても、爆発。
そりゃそうだ、非金属タイプの地雷だもの。うーん、めぐるん。サイコ★
「賢いワンちゃんですねぇ。でももっと頑張って、わたしの元まで辿り着いてみてくださいね!」
巡は挑発するように手を叩き、|魔力柱《オベリスク》の根元に向かって駆け出す。
「もし辿り着けたら、ご褒美として……食べてもいいですよ」
俗に言う「捕まえてごら~ん♪」ってヤツ。青春真っ只中の男女がキャッキャウフフのアレだが
イイのかバーゲスト、アレめぐるんだぞ。
衝動に正直となったバーゲストたちは巡に向かって全力突進、地雷原を突破した一頭がついに乙女のふくらはぎに喰らい付く。
「痛っ――なんちゃって~。おめでとう、良く頑張ったねぇ」
ハイライトの無い黒い瞳でにっこりと笑む巡。
刹那、バーゲストの第六感に風が語り掛ける。 \(^o^)/オワタ と。
大 爆 発 !!!
壮絶な爆音と共に、魔力柱は粉々になり、砂煙を巻き上げながら地面に沈んでいく。
勿論黒犬どもも巻き添い。
「爆破解体、成功です」
いつの間にそこに居たのか。岩の上で脚を組んだ巡は満足げに微笑みを浮かべる。
そう、逢沢・巡は|少女人形《レプリノイド》。自分の素体を起爆するなど朝飯前なのだ。
爆発しても|バックアップ素体《代わり》が居るもの。
「頭から爪先迄シッカリ爆破物ですからねぇ」
――それなんてtopp〇?
🔵🔵🔵 大成功

スイーツを食べて気分もアガったし、ここからはお仕事モードのヒバリでいくよ
ターゲットはまだまだ遊び足りないわんちゃん達!
さっ、こっちだよー!ついてきて
Key:AIRを操作しCODE:Chaseを起動
囮として1体のレギオンを放ち、バーゲスト達をダンジョン内の一箇所へと誘導
続いて誘導した敵を残り20体のレギオンで包囲してレーザー砲を一斉照射
どう?この範囲攻撃からは逃げられないっしょ!
ちょっと!飛び付いてくるのはナシだって
レギオン対物理シーケンスっ
向かってくるバーゲストはレギオンの放つ追尾ミサイルの爆風とDef:CLEARのバリアを展開してガード
できるギャルは髪型もメイクもばっちりキープするんだから!
●ワフーン! お姉さん、それなんてコスメ?!
バーゲストの悲鳴がダンジョン内に響き渡る中、薄羽・ヒバリ(alauda・h00458)は軽やかに髪をかき上げた。
「さーて、スイーツでチャージ完了!お仕事モードのヒバリ、えちょっと待って?!」
はい何でしょうヒバリさん?
「もう悲鳴上げてるんですけど?!」
ダンジョン内はそこかしこに爆発の跡、霜が降りた岩場、穴だらけの|魔力柱《オベリスク》の残骸、何処から飛んできたのやら真冬の空を舞ったごみ袋。
マジで荒れ荒れ。ヒバリの整ったお肌とは大違い。
――ここでカメラさんがアップ。美肌、整う。crystalの艶めきパールファンデ、4|slv.《銀貨》。
「ええと気を取り直して。ターゲットはそこの可愛いわんちゃんたち。こっちだよー!」
彼女の指先が軽く踊ると、Key:AIRが静かに起動。髪をなびかせる微風の中、輝くモニターディスプレイが展開される。指先で滑らかに操作し、CODE:Chaseを選択。
――ちょっとタイム。彼女の指先にズームアップ。ナチュラルでありながらグロスの様な艶めき。ギャルの間で今流行りのネイル、オーリオールのジェミニ(3|slv.《銀貨》)。
一体のレギオンが囮として動き出す。青い光をまとったその姿に、バーゲストたちは興味津々とばかりに飛びつくよう追いかけていく。
「よーし、いい子たち。遊び足りないなら、もっと楽しませてあげるからね」
バーゲストたちを巧みに誘導しながら、ヒバリは次の操作に移った。
レギオンたちを指揮し、敵を一箇所に集めると、残り21体のレギオンが包囲網を形成。
「範囲攻撃、いっちゃいます!レーザー一斉照射、GO!」
――バシュウウゥッッ!!
眩い光線が一斉に放たれ、バーゲストたちはまるで花火のように魔力の光となって消え去る。
「どう?この範囲攻撃からは逃げられないっしょ!」
だが、その時――
「ちょっと!飛びついてくるのはナシだって!」
バーゲストの一匹が彼女に跳びかかろうとした瞬間、ヒバリは冷静にKey:AIRを操作。
「レギオン対物理シーケンス、展開っ!」
追尾ミサイルが轟音と共に発射され、爆風が迫るバーゲストを弾き飛ばす。同時にDef:CLEARがバリアを展開し、ヒバリの周囲に防御の光が瞬いた。
「はぁー、危ない危ない!髪型もメイクも崩せないんだから!」
――ラ・ローズ堂のリップバーム、3|slv.《銀貨》。
どんな状況でも潤いキープ!
彼女は軽くスカートを直し、レーザーの操作に再び集中した。バーゲストたちの勢いも次第に衰え、最後の一匹が尻尾を巻いて消えていく。
そして、目の前にはそびえ立つ魔力柱《オベリスク》。ヒバリはポーズを決めながらKey:AIRを操作する。
「これでフィニッシュといきましょ!女子力の真髄、見せてあげる!」
――全レギオン、エネルギーを集中。放たれる極光のごとき光線が、魔力柱《オベリスク》を直撃した。
「どう?これができるギャルの力だよ!」
バリバリバリッ……!
激しい振動。光が散り、轟音を立てて倒れる魔力柱《オベリスク》。
「女子力に負けて圧し折れる魔力柱……今日も勝っちゃったね!」
女子力とは一体。
ヒバリは満面の笑みでその場を後にし、Key:AIRを軽く振ってレギオンたちを呼び戻した。
――もちろん、リップもヘアセットも完璧なままで!
🔵🔵🔵 大成功

【黒華】
シャル、犬だ!
おやつの唐揚げは持って来た?
あれ? いけない、そういう僕はドルチェとフォルツァのおやつしか買ってない…
あ、待って君たち
これは君たちの分じゃないんだってば、噛まないで!
霊的防護で身を護りながら距離を取る
噛みつかれたりしたら勝手に燃やしてしまうからね…
愛犬たちがそわそわしているのには気付いているよ
彼等と遊びたいんだね?
良いとも
ドルチェ、フォルツァ、それから皆!ゴー!
あっ、皆、あの唐揚げは食べないでね
後でシャルがご褒美をくれるから今はダメ、いいね?
シャル、すごく噛まれてるけど平気?
平気そうだね…それなら良いか
さぁ、皆、遊び終わったら戻っておいで!
おやつの時間にしよう

【黒華】
マスティマさんが買ってきたおやつを狙う元気いっぱいのバーゲストを見て
事前に揚げてきたほうが良かったかなーなんて思う
美味しいトリカラ作るからしばらく待ってるんだぞー
それでは
√能力「ボクの料理に魅せられちゃえ!」でレッツ・クッキング!
全部がイタズラだとビックリ効果が下がっちゃうかもなので
スパイスを使うのは半分くらいにしようかな
もれなく13%の呪い効果はあるけどねぇ
そっか、マスティマさんのワンちゃんも唐揚げ欲しいだろうから
イタズラ唐揚げの後に普通に調理もしよう
マスティマさん、「待て」をよろしくねー
バーゲストの激しいじゃれつきにもニッコニコ
イタズラ成功でもニッコニコ
ボクは幸せなドラゴンなのだ!
●ダンジョンでまさかのドッグレースが(略)だけど、トリカラは美味いッス!!
さて、こちらはダンジョンの別区画。そこには未だ元気いっぱいに跳ね回るバーゲストたちが居た。
その視線の先には、微笑みを浮かべるマスティマ・トランクィロ(万有礼讃・h00048)の姿。
「シャル、見てごらんよ。犬だ!」
黒犬たちの視線はマスティマに集中している。分かるわー、マスティマさんの滲み出る温和さってつい惹き付けられるよねー。
「ワウワウ! お兄さん、それ美味しそうッスね!!」
違った、コイツらマスティマさんのベルトに吊るした紙袋(inジャーキー)にしか興味ねぇわ!!
肉の匂いに惹かれた黒犬たちが、ワンワンと吠えながら次々に群がっていく。
「いや、それ僕の愛犬たち用なんだけどなぁ……」
気づけば黒犬たちの群れはマスティマに密集し、まるで犬団子のように重なり合っていた。
団子の隙間からは、かろうじてジャーキーの紙袋を握ったマスティマの手だけが突き出ている。
「おーい、みんな落ち着いて。これは君たちのじゃないんだってば! 噛まないで!」
霊的防護で身を守りつつ噛まれないように必死なマスティマ。
これはあくまで黒犬たちへの優しさだ。
うっかり噛みついたりなんぞしようものなら、|ルキウスの炎《タンゴ・マーレボルジェ》が黙っちゃいない。
燃やされる程度で済めばいいね! |倚天連斬《跪け》されちゃうんじゃない?
一方、少し離れた場所でシャル・ウェスター・ペタ・スカイ(|不正義《アンジャスティス》・h00192)は、手際よく調理道具を準備していた。
「事前に揚げてきたほうが良かったかなー。でも、ここで作ったほうが出来たてを楽しめるよね♪」
彼が手にしたのはスパイスと新鮮な鶏肉。
塩少々に少量の牡蛎醤油。生姜とニンニク、更にタマネギをすりおろした特製のタレに、鶏肉を漬け込む。
シャルは唐揚げの下味をつけながら、ちらりとマスティマのほうを見やる。
「……うーん、やっぱり助けなきゃマズイかな?」
そのとき、黒犬団子に突っ込んだ黒い影! 次の瞬間、黒犬たちを蹴散らしマスティマを軽々と背中に乗せると、一直線に駆け出した。
彼の賢い愛犬の片割れ、フォルツァだ!!
「フォルツァ!? ちょっと待って! 僕はまだ心の準備が!」
フォルツァの俊足に引き寄せられるように、黒犬たちも一斉に駆け出す。ダンジョンの中央はドッグレース会場さながらの大混乱。
一方、マスティマの家の厩。
彼の愛馬であるトラヴィアータは歯噛みしていた。
台詞を付けるのならば「乗ったのか――自分以外のヤツの背に」。
ひとしきり歯噛みした後、ごくんと何かを飲み込んだ。
――草である。
この名馬は単に食事をしているだけであり、嫉妬とは無縁の長閑さの中に居た。
柔らかく降り注ぐ冬の日差し。囀る小鳥の声。
厩には今日も平和な時間が流れている。
―――|𝓕𝓲𝓷.《めでたし、めでたし》
「Finじゃないよ、ボクまだ何の活躍もしてないでしょー!」
鋭くツッコミを入れつつも、シャルの調理の手は止まらない。
気の早い腹ペコな黒犬数頭に|嚙みつかれて《じゃれつかれて》いるが、彼はニッコニコだ。
0、0、0、0、0ダメージ。
|硬《か》ってえな、ドラゴンの肌……。
小麦粉と片栗粉、砕いたナッツをまぶした鳥肉を卵液にくぐらせる。
ここで揚げれば美味しい唐揚げの出来上がり……なのだが、勿論そこで終わるシャルくんではない。
オリジナルブレンドの激辛スパイスが入った瓶を手に取り、にんまりと微笑む。
「普通の唐揚げだけじゃつまらないから、半分は普通、半分はイタズラ仕様。これでサプライズもバッチリ!」
大変楽しそうで何よりです。
衣の付いた鳥肉を手際よくポンポンと油に放り込む。ジュワッという音が響き、香ばしい匂いが立ち上る。
黄金色に輝く唐揚げが油の中で踊る様子は、見る者の食欲を盛大に刺激するだろう。
尤も、今はマスティマがピンチなので調理速度は2倍速。
火はきちんと通るのかって? 細かい事はイイんだよ、√能力バンザイ!
「まずはイタズラ唐揚げを一皿。激辛スパイスをたっぷりまぶしてっと♪」
揚げたての唐揚げをうず高く皿に盛り、黒犬たちに差し出す。
「はい、待たせたね! どうぞ召し上がれ!」
にっっこり。シャルくんの眩しいスマイル!
毒っ気のない笑顔と美味しそうな匂いに後押しされ、マスティマを追いかけていた元気いっぱいの黒犬たちは一斉に方向転換!
続々とイタズラ仕様の唐揚げを頬張った。次の瞬間――
「ガウッ! ガウッ!? アッツイ! スパイシーすぎるッ!」
|クリティカルヒット《ダイス値00》!!
バーゲストたちは涙目で喉を押さえ、次々と地面に転がり始める。
舌を無数の安全ピンで刺された挙句、火で炙ったかのような猛烈な辛さ!
それでいてナッツ交じりのザクザクな食感、下味で整えられたジューシーな旨みも負けじと主張して来る。
まさに天国と地獄!
半死半生で苦しむバーゲスト、しかし激辛スパイスによるスリップダメージは残りHP:1で止まってしまった。無常!!
そんな悶える黒犬たちの側に、鮮やかな黄色が近づいた。
マスティマのもう一頭の愛犬、心優しきドルチェ。
介錯とばかりに前足でペシッと黒犬たちの頭を軽く叩いていく。ボフン、と軽い音を立てて黒犬たちは魔力に還っていった。
ご褒美にとシャルから普通の唐揚げを貰うドルチェ&フォルツァ。
その様子を見ながら消える直前、バーゲストの最後の一頭が満足げに呟く。
「オレ、生まれ変わるならキミたちみたいな熱い犬に……ホットドックに、なるッスよ――」
「……あーあ、食べ物になっちゃったよ」
彼の転生先での受難を思い、シャルとマスティマは顔を見合わせ、同時に肩をすくめたのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『堕落騎士『ロード・マグナス』』

POW
英雄は死なず
【鎧】と完全融合し、【剣】による攻撃+空間引き寄せ能力を得る。また、シナリオで獲得した🔵と同回数まで、死後即座に蘇生する。
【鎧】と完全融合し、【剣】による攻撃+空間引き寄せ能力を得る。また、シナリオで獲得した🔵と同回数まで、死後即座に蘇生する。
SPD
ファルス・ソード
自身が受けた武器や√能力を複製した【偽りの聖剣】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
自身が受けた武器や√能力を複製した【偽りの聖剣】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
WIZ
カースドフレア
移動せず3秒詠唱する毎に、1回攻撃or反射or目潰しor物品修理して消える【呪いの炎】をひとつ創造する。移動すると、現在召喚中の[呪いの炎]は全て消える。
移動せず3秒詠唱する毎に、1回攻撃or反射or目潰しor物品修理して消える【呪いの炎】をひとつ創造する。移動すると、現在召喚中の[呪いの炎]は全て消える。
●
黒騎士、もとい堕落騎士『ロード・マグナス』は失望していた。
バーゲスト戦で消耗した√能力者を斃し、名声を得て更なるモンスター軍団を編成し、近隣市街を蹂躙してやろうと計画していたのに。
蓋を開けてみれば、このザマだ――。
爆発痕だらけの床。ビームの跡が生々しい壁。ピアノ線で切刻まれたオブジェ。一本残らず綺麗に圧し折られた|魔力柱《オベリスク》。
あと、なんか知らんけど薄っすら漂っているトリカラの美味しそうな匂い。
そして――ぜーんぜん消耗してない√能力者の皆様方!!
「罠とは言え、√能力者なぞに呼びかけた我が間違いであったとでも言うのか……!!」
・多分そう
・大体そう
⇒絶対そう
ぎりりぃと歯噛みする黒騎士。
「で、あるならば……我が直々に手を下すしかあるまい!!」
漆黒のあったかフリースアーマー(背中に値札タグ&値下げシール付き)とDXスーパー聖剣刀(対象年齢:3歳以上)で武装した『ロード・マグナス』、何やらプリズムを取り出した!
黒騎士の姿が何重にもブレ、存在感を保ったまま分かれていく。武装、能力共に本物と遜色ない、完全な分身術!
「見せてやろう、我々黒騎士団の恐ろしさを……!!」
アホが増殖しただけなんだよなぁ。
ただ計画そのものは悪質ではあるし、放って置いても良い事は無さそうなので、ここは一つギャフンと懲らしめてやって下さいよ!

親玉が出てきたか。
まぁ、何が出てきても俺はただ排除するの――なんかもふもふだなァおい。
値下げシールの付いた値札タグ外し忘れているぞ、どれ、俺が外してやろう。
『決戦気象兵器「レイン」』発動、威力を100分の1に抑えてはいるがもふもふのお前にはこれでいいだろう。弱いレーザーだが、フリースアーマーを切り刻んで燃やすには十分すぎる。分身? そんなもの攻撃が当たれば消えると聞くが?
さて、そのフリースアーマーの下は何を装備しているんだ? まさかいちご柄のトランクスではあるまいな?
「レイン」の効果範囲内だとすぐに焦げるぞ? 少しは回避して見せろ。

マグナスさん、先住民のワンちゃん達はバーゲストが先に天に召されました、
不死の貴方に居座られては、近隣の民のご迷惑、将来の不安になるので、騎士団気取りでトップブリーダー目指す野望も費えました、実力行使で立ち退かせてもらいます。
仲間の戦闘を支援で、対カースドフレアでウィザードフレイムで撃ち合い相殺させます!
詠唱錬金剣で対ファルスソード、大剣状態で受け流し、剣技はコピー防止で使用しません。
分身したのは驚きですが、流行知識で鑑定した見た目では、安価な安物装備ですね、手加減でしょうか、ワンちゃんの爪痛くないよう入念手入れする方だし、嘗められたものです、でも容赦しませんから。
憧れ伝説の騎士堕落に失望する。
●豪炎、時々小雨
ロード・マグナスの威容が目の前に立ちはだかった。がっしりとした体を覆う分厚い――しかしどこか間の抜けた――フリース素材の鎧が嫌でも目に付く。
「おいおい、値下げシール付きのタグをつけたまま戦場に出るとはな……」
鏡見・氷雨(愛を掴んだ暗殺者・h00561)は静かにため息をついた。知恵を失い、どこか抜けたモンスターとなってしまったこの存在に、一抹の哀れみすら覚える。
「嘗て英雄と謳われた騎士――ロード・マグナス」
サティー・リドナー(人間(√EDEN)の|錬金騎士《アルケミストフェンサー》・h05056)は抑えた声で語りかけた。その眼差しには、淡い憧れと哀惜が交錯している。ダンジョンの床を靴底で小さく叩くのは、若干の苛立ちか。
コツン。
「嘗て、とは失礼な。今も我は英雄である、さあひれ伏すがいい!」
黒騎士が尊大に叫びながら、ゆっくりと両手を掲げる。
コツン。
「憎しみの名に応え燃え上がれ。滅びの呪詛を抱きて、この地を焦がせ」
空間に緑色の炎が次々と生じ、螺旋を描いて漂い始める。
それは英雄の力の残滓と呪いの力が融合した√能力。攻撃か反射、さらには目潰しや修復効果を選択的に発揮する厄介な炎だ。
(ロード・マグナス……あなたはかつて、人々の希望でした。けれど今、あなたは堕落してしまった。だから――)
――コツン。
|音の反響を把握した《・・・・・・・・・》サティーは眦を上げ、詠唱を開始した。
「「知恵を纏いて燃え上れ。古の声に応え、我が命に従え」」
サティの周囲に明々と燃える炎が現れる。
「カースドフレア!」「「ウィザードフレイム」」
二つの炎が空間で激突、火花を散らす!
双方の√能力は互角。然し、氷雨を標的に含む分ロード・マグナスの炎は数が多い。
普通に打ち合えば数の優位でサティーは押し敗ける。
――そう、|普通に打ち合えば《・・・・・・・・》。
「何故だ……何故押し切れない!!」
拮抗を崩せない事に黒騎士は焦り始める。
即興で編み出した|二重詠唱《デュアル・エコー》。サティーは洞窟の反響を利用し、一度の詠唱で二回の魔力行使を行ったのだ。
複数のウィザードフレイムが波状攻撃のように次々と展開され、二人分のカースドフレアを悉く相殺していく……!!
「すごいな。あの子、どれだけ根性があるんだ?」
背後で様子を見ていた氷雨が呟く。彼は状況を見極め、サティーが作り出した隙を逃すつもりはない。
(わぅわぅ……でもコレ、トンチキですよね?)
氷雨の背後からバーゲストの霊体がひょっこりと顔を出す。お前まだ成仏して無かったのか。
そうなんだよなぁ……トンチキの筈なんだけどさ。同系統の√能力のぶつかり合いって燃えるじゃん??
「サティー、そのまま頼む」
「はい……っ!」
サティーの詠唱が続き、ウィザードフレイムはさらに勢いを増した。カースドフレアは次々と相殺され、黒騎士の威圧感が徐々に薄れていく。
「貴様らごときに……この我が……!」
ロード・マグナスが吠えながら、フリースアーマーを震わせる。しかし、その隙を突いて氷雨が決戦気象兵器「レイン」を発動した。
「これで終わりだ。決戦気象兵器、レイン――1/100開放」
頭上の砲台から、微弱に調整されたレーザーが一斉に降り注ぐ。
それでもフリースアーマーを切り刻んで燃やすには十分すぎる出力だ。
何で全力開放じゃないのかって?
氷雨は空気の読める男だ。サティーの抱く複雑な胸中は、彼女自身の手で晴らしてやる必要がある。
(クゥーン。その能力、ちょっとでもあの子に振り分けてやったらどうかな)
黒犬(霊体)が見遣る先の岩陰からは「拗ねてます」オーラが漂って来る。「よーしよしよし」と撫でられた時のご機嫌斜めが未だ直ってない様子。
「さて、そのフリースアーマーの下は何を装備しているんだ? まさかいちご柄のトランクスではあるまいな?」
挑発するように言葉を投げかける氷雨。
狼狽える黒騎士。――狼狽えるな。図星って空気を出すな。サティーの嘆きが深まってしまう。
あと、今も岩陰に居るであろう14歳の同居人にあんまりそういうのは見せたくない。
「 "レイン" の効果範囲内だとすぐに焦げるぞ? 少しは回避して見せろ」
氷雨の言う通り、棒立ちでは即座に丸裸にされてしまう。堕落騎士「ロード・マグナス」、知恵は失っても騎士の誇りまでは失っていない!
黒騎士は標的を氷雨に移し、降りしきるレーザーを掻い潜るように駆ける。
――氷雨の狙い通りに。
黒騎士が動いた事で、カースドフレアの緑色の炎が消滅。均衡が破れ、サティーのウィザードフレイムが襲い掛かる!!
豪炎がロード・マグナスを包み込み、フリースアーマーごと容赦なく焼き尽くした。
「ぐわあああっ!」
堕落騎士「ロード・マグナス」が断末魔を上げながら崩れ落ちる。その体は光の粒子となり、跡形もなく消えていった。
「ふぅ……なんとか終わりましたね」
サティーは額の汗をぬぐいながら、安堵の笑みを浮かべた。一方の氷雨は冷静な表情を崩さず、淡々と場を見渡す。
「見事だったな」
「ありがとうございます。……あれ?」
サティーは氷雨の背後にいる黒犬(霊体)に気付く。
「あなたは天に召されないのですか?」
(俺、姉さんに憑いて行きたいなぁ。素敵な飼い主に巡り合えるようにって祈ってくれたじゃん!)
尻尾をぶんぶん振る黒犬(霊体)をよしよしと撫でるサティー。
そんな微笑ましい光景に氷雨の表情も僅かに柔らかくなった。
――その柔らかな表情のまま岩陰の裏に視線を移す氷雨!
また撫でられる気配を感じて冷や汗をかき始める岩陰!
橙弥くん逃げて、超逃げて!
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

あー……なんですかこのトンチキボスは。
早く片付けて、購入した魔導書を読みましょう。
増えた黒騎士の数を減らすため、「邪風の爪」で範囲攻撃です。
物理攻撃だけでなく精神攻撃も忘れずに。
「黒くてたくさん増えるって、Gと同じですね。」
ついでに部位破壊で、背中についたままの値札タグと値下げシールを切り取ってあげましょう。
「ほらほら、タグとシールがついたままですよ!まったく、だらしないんだから。」
……って、これではまるで甲斐甲斐しい世話女房みたいではないですか!?
わたしはれっきとした14歳の乙女です!!
(逆に自分が精神的ダメージを受けたかも……)
任務完了後は、仲間の行動のお手伝いか宴会でも。
ミンシュトア・ジューヌ(|知識の探索者《ナリッジ・シーカー》・h00399)の目の前に、ロード・マグナスの分裂体が立ちはだかる。
黒い鎧に身を包み、無駄に堂々とした態度で威厳を装っているつもりのようだ。だが――。
「……タグがついてるじゃないですか。しかも値下げシールまで。これで威厳を保てるとでも?」
ミンシュトアは溜め息をつきながら指摘した。
「些末なことを指摘するな、カーチャンに怒られていた頃を思い出すでは無いか!」
大声を上げながら、ロード・マグナスは手を掲げる。
詠唱の間にカースドフレアが生み出され、ダンジョンの薄暗い空間に緑色の炎の塊が浮かび上がった。
「だ、だ、」
一方ミンシュトア、絶句。
「誰が! 貴方の! カーチャンですかーー!!」
怒りを乗せた秘技、詠唱省略!!
「邪風の爪!」
彼女の杖から放たれた巨大な風の魔弾が、ダンジョンの空間を巻き込みながら進む。竜巻の風圧はカースドフレアの炎を次々とかき消し、まるで砂埃を掃くようにロード・マグナスの攻撃を無効化していく。
「うぅ……我の力が! 炎が消えていくとは……」
ロード・マグナスはショックを受けた様子で後ずさる。その様子を見て、ミンシュトアは肩をすくめる。
「黒くてたくさん増えるなんて……ゴ■■リと同じですね」
わざとらしいため息と共に言い放つと、ロード・マグナスの表情が一気に沈んだ。
「ゴ、ゴキ■■……」
思わずと言った様子で膝から崩れ落ちる。脳内に去来する|「やーい、お前の鎧クロ■■ブリー」と弄られていた《被害妄想の》日々。
「そのような例え、無礼であるぞぉぉ……」
凹むロード・マグナスが抗議するが、ミンシュトアは構わず杖を一振り。竜巻の一部がロード・マグナスの背中を掠め、値札タグと値下げシールを吹き飛ばした。
「ほら、タグとシールがついたままなんてだらしないですね。少しは整えてから出直してきたらどうです?」
カーチャンは否定したけど世話焼き女房みたいですよ、ミンシュトアさん?
甲斐甲斐しい自分の台詞に気付いた瞬間、ミンシュトアまで膝から崩れ落ちる。
(女房だなんて、わたしはれっきとした14歳の乙女です!!)
嫁入りには早すぎる、しかも相手がこんなオバカではお先が真っ暗だ。
自分で精神的ダメージを受けた彼女だったが、杖を振る手は止めない。
「邪風の爪!」
さらに強化された竜巻がロード・マグナスを包み込み、彼を鎧ごと切刻みながら吹き飛ばした。
「ぐわあああ! せめて■キブ■呼ばわりを訂正しろー!!」
最後の抗議を叫びながら、ロード・マグナスの分裂体は光の粒子となり消滅していった。
ミンシュトアはほっと一息つきながら、杖を肩に担ぐ。 「やれやれ、これでまた魔導書を読む時間ができましたね」
報酬を受け取ったら、またあの本屋に寄ろう。買い増した魔導書を片手に、優雅にカフェタイムと洒落込むか、はたまた盛大に宴会を開いたっていいかもしれない。
精神に負ったダメージを癒すべく、ミンシュトアは今後の予定を立てるのであった。
🔵🔵🔵 大成功

待って待って
なんかあの鎧増えてるんですけどっ
…もしかして、四人揃えて並べたら消えたりするー?
私、パズルゲームは結構得意!
なーんて
一番得意なのはキックボクシングのフィットネスゲーム!
さっきのカロリーすら消し飛ぶ(消費する)女子力を見せてあげる!
Key:AIRを操作して打ち込む指示はCODE:Smash
レギオン達の援護射撃によって、黒騎士うち一体を孤立させる
続いてレギオン達の放つリンケージワイヤーで縛り付け、肉薄
ブーツの隠し刃を用いた回し蹴りを浴びせちゃう
足の爪は激かわペディキュアでしっかりガード済み!
振るわれる剣はDef:CLEARを展開し中和
このネイルだって、一枚たりとも欠けさせないんだからっ
●え、私が配信? 集団幻覚でも見てるのかな?
「待って待って、なんかあの鎧増えてるんですけどっ」
悲しいけどこれトンチキなのよね。混乱しつつもツッコミを入れてくれるの嬉しいなぁ!
MSの心中はさておき、薄羽・ヒバリ(alauda・h00458)は分裂体の黒騎士を眺めて思案顔。
(…もしかして、四人揃えて並べたら消えたりする? 私、パズルゲームは結構得意!)
四つ並んだ瞬間にビックリしたような表情を残して消える黒騎士(頭だけの姿)を想像するヒバリ。
「消えぬわ! バーゲストではあるまいに!」
人の思考にツッコむ黒騎士。まぁ確かに黒犬たちなら、4匹並んだ瞬間やられて消えてくれそうではある。こう、ノリで。
「あの子たちが整列出来なかったのってまさかソレが原因?!」
明かされる衝撃の事実。ホントかよ。
ここでヒバリは違和感を覚える。黒騎士、なーんかモフモフになってない?
よくよく見れば、黒騎士の体はフリースアーマーと同化しているではないか。さてはこいつ、会話の隙に√能力使ってやがったな。
「ああっ、卑怯者ー!」
「フハハハ! 勝てば良かろうなのだ!!」
黒騎士は装飾華美な剣を鞘から抜く。DXスーパー聖剣刀(対象年齢3歳以上)、光り輝くその刀身から美しい声で問いかけが投げられる。
《これは、簒奪者から世界を守る戦いである》
「いいえ。」
――スン。
DXスーパー聖剣刀は光を失い、沈黙した。
「……え。我の√能力、これで終わり?」
「変な所で正直なあたり、あなたって一応腐っても元勇者なのね」
ちゃっかりと構えていた|Def:CLEAR《板状バリア》の後ろから、そろりと顔を出すヒバリ。警戒してたのに肩透かし。
それはそれとして此処からはヒバリのターン! 食べたスイーツのカロリー消費も兼ねて、手加減無しの全力勝負!
Key:AIRを指で弾き、レギオンを呼び出す。追加で打ち込むコマンドは「CODE:Smash」。
散開したレギオンがレーザービームで黒騎士を追い詰め、リンケージワイヤーを放って拘束する。
「ま、一番得意なのは」
軽やかに駆け出すヒバリ。その足元、|Kick-Ass《レザーブーツ》のヒールがカシュッと乾いた音を立て、隠し刃が展開!
「キックボクシングのフィットネスゲームなんだけどね!」
軽くステップを踏みながら|ワンツージャブ《牽制キック》&|ハイキック《本命の蹴り上げ》!
はい、ドン・ドン・カカカッ! |更にコンボを繋ぐ一人連携《\モウイッカイ アソベルドン/》!
「ぐぼァ……ッ、貴様それはリズムゲームであろう……!」
「細かい事は気にしなーい、リズムゲームもフィットネスゲームも閲覧数稼げるんだよ?」
ちなみに足の爪は激かわペディキュアでしっかりガード済みだそう。
戦闘中は視られないのが残念、気になる人は本編後のヒバリが出演するCMをチェケラ!
閲覧数が一定数を超えると、TomiTubeから盾が貰えるそうです。知らんけど。
連撃の〆。黒騎士の頸椎に叩き込まれる、それは見事な回し蹴り。スローモーションでもう一度。
魅惑のおみ足は映すけど、それ以上は映さない鉄壁のスカート! ヒバリ★チャンネルはお子様も安心してご覧いただける健全なチャンネルです♪
「……|R-15G《ぼうりょく》」
消滅寸前、ボッコボコの黒騎士が低い声で呟く。――目を逸らすな薄羽・ヒバリ。後から編集で上手くカットできるかなーとか考えてるだろう、顔に書いてあるぞ。
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ・連携歓迎
『ふむ、ちと出遅れたか?』
依頼があると聞いて出向いてみたが、少々城下町で遊びすぎたようだ。到着してみれば残るはボス戦、配下の黒犬は既に倒されたよう…不覚。
しかし、この目の前にいるフリースと玩具の剣という珍妙な姿をした大男は大層な宣言と共に分身したけれど、どうにも、どうにもこう…脱力する。しかし宣戦布告されたとあっては受けて立たねばなるまい。
『良かろう、相手をしてくれる。来い、我が内なる竜よ!』
こちらも最高純度の竜漿結晶である月光石を使って黄金竜へと変化する。
小細工技能一切なし、最初からの力づくの真っ向勝負に挑む。自分が気絶したら…まぁ他の誰かが何とかしてくれるだろう、多分。
●お洒落な喫茶店はつい長居してしまいがちだから……!
洞窟めいたダンジョン内は、激しい戦闘の(という体の遊び散らかした)跡を残していた。
奥からは堕落騎士「ロード・マグナス」のものと思しき声が聞こえている。
『ふむ、ちと出遅れたか?』
月の光を閉じ込めたかのような金の髪をふわりと風に遊ばせ、現れたるは高貴を絵に描いたような女性。
後塵を拝した事を憂う様に、長い睫毛がそっと伏せられる。然し遅れたのはむべなるかな、深い理由があったのだ。
時は少々遡る。
ルナ・ディア・トリフォルア(三叉路の|紅い月《ルーナ》・h03226)は、静かな喫茶店の一角に腰を下ろしていた。窓際の席からは城下町の賑わいが見渡せるが、店内は対照的に落ち着いた雰囲気で満たされている。
目の前には、温かいココアのドーナツ。表面には細やかな粉糖が振りかけられ、薄琥珀の生地からはカカオがふうわりと甘やかに香る。
指先で摘まみ口元へと運べば、しっとりとした食感と仄かなビター感。
傍らの紅茶はダージリンか。湯気とともに立ち上る香りは、繊細な花の香りと爽やかな果実の香りを纏い、上品で優雅な雰囲気を醸し出す。
「うむ……ん、良きものよ」
カップを傾けて一口含めば、柔らかくも力強い味わいが口中に広がり、馥郁たる香りが鼻を抜ける。
優美な香りは、心に安らぎと贅沢な時間をもたらし、一瞬で日常を忘れさせる魔力を持つ。
――で、思わず依頼の事まで忘れちゃったんですね? 是非お店の人に伝えてあげて下さい、きっと喜びます!
さて、時は戻って現在。
「√能力者よ、我が栄誉の為ここで屍を晒すが良いぞ!!」
ルナの目の前にはもっふもふのフリースアーマーと同化した男が仁王立ちしていた。
「……なんというか、脱力するのう」
それでも宣戦布告された以上、受けて立たねばならない。ルナはゆるりと腕を掲げ、高らかに詠唱する。
「良かろう、相手をしてくれる。来い、我が内なる竜よ!」
手元に在るのは、最高純度の竜漿結晶――月光石。それを握り込んだ瞬間、彼女の身体は黄金の輝きに包まれ、巨大な竜へと変貌した。
灼熱と電撃を纏う黄金竜――まさに神話の化身。
ルナが竜と化すと同時に、彼女の魔力に呼応し強化されたか。ロード・マグナスのフリースアーマーもボワッッ!と逆立つ。
「――否、あれは」
彼女の纏う雷に影響を受け、ぱりっぱりに静電気を帯びただけである。
それにしたって凄い帯電量。かの電気ネズミの必殺技だって再現できてしまうだろう。
「くっ、なんだこれは! 逆立った毛がモゾモゾして動き辛いではないか!」
黒騎士は不満げに、その原因たる彼女を攻撃せんと腰元の装飾華美な剣に手をかけ――
バ ヂ ン !!
「あ゛ 痛゛ ぁ゛ ?!?!!」
たっぷり静電気を貯め込んだ体で金属を触ればそうもなる。
そしてDXスーパー聖剣刀は電池で動く小児用玩具だ、そこに一瞬でも高圧電流が流れれば。
(死ーん)
スイッチを押した所でうんともすんとも言わないDX(略)刀。お釈迦である。南無。
「おのれぇ良くも、「遅いわ、戯け」」
ズ、ドンッ!
その瞬間、炎を纏ったルナの尻尾が容赦なく振り抜かれた。
ロード・マグナスは蘇生する暇すら与えられず、遥か向こうの壁目掛けて飛ばされて行く。
「ふむ……まぁ、あの分では万に一も仕留め損ないは有り得ないじゃろうて」
金色の竜の姿をしたルナは、溜息混じりに呟く。
だが、竜漿の消費は大きく、意識がふわりと揺らいだ。
「……ん? ああ、少しばかり気を抜いたか」
彼女は頭を振り、黄金竜の姿から元の人間の姿へと戻る。
「さて、他の者共は大丈夫かのう?」
ルナは疲労を隠すように歩を進め、先へと視線を向けるのであった。
🔵🔵🔵 大成功

【黒華】
良かった…助けを求める気の毒な騎士はいなかったんだね
それにしても、DXスーパー聖剣刀とあったかフリースアーマー…!
何だろう、童心に返りたくなるこの気持ち
シャルがお怒りみたいだね
あの√能力、パレードみたいで賑やかで見てて楽しい
あ、あちらも随分おかんむりだね…
炎?炎で勝負するなら僕は意外と負けないよ
『ルキウスの炎』で炎属性攻撃&焼却
あれっ?
待って君!服にタグが…
√能力で加速して回り込んでタグを切りに行く
動かれると手元が狂ってしまうかもしれないけど…
ごめんね、わざとじゃないんだよ
正直あんまりこの技を使いこなせていないんだよね

【黒華】
ええっ、あの呼びかけって罠だったの?!
えー、真面目に助けてあげようと思ってたのにーボクの親切心に謝れー
(しばらく放置プレイしてた?知らないよ!)
ボクは怒ったので、√能力の眷属大集合を使って小さい者をいーっぱい呼び出す
子ども達は遊ぼ遊ぼと黒騎士に突撃するし、ぬいぐるみ達もボクが操って突撃させる
攻撃役じゃ無い死霊は構ってほしげに黒騎士の頭上付近を飛び回るけど、これも集中力がそがれるでしょ
あの可愛らしいワンちゃん達に振り回されるなら、この状況も辛いと思うんだよねぇ~
おーっ、マスティマさんやるぅ~
服のタグはボクもちょっと気になってたんだよね
カットが成功しても、失敗して騎士に刺さっても大喜び!
●真心と悪戯心は表裏一体と言うけれど
ズ ド ン !!!!!
遥か側方から吹き飛んできて、轟音と共にダンジョンの壁に頭から突き刺さるロード・マグナスの分裂体(戦闘済み)。
点滅して消えるといういかにもレトロなゲームのやられ演出を見るものは誰も居ない。
パラパラと落ちた微小な土塊が転がる先には――二人の√能力者がいた。
「良かった…助けを求める気の毒な騎士はいなかったんだね」
ほっとしたように呟くマスティマ・トランクィロ(万有礼讃・h00048)。
騙されたのにこの余裕。心の広さ。懐の深さ。もうマスティマさんには脱帽です。ね、シャルくん?
「えー、真面目に助けてあげようと思ってたのにーボクの親切心に謝れー」
一方、激おこと言った調子でぷんぷんのシャル・ウェスター・ペタ・スカイ(|不正義《アンジャスティス》・h00192)。
――やっぱシャルくんはこうでなくちゃな!!
さて、二人の目の前にいるのは英雄のなれの果て。ロード・マグナスの分裂体、えーとこれ何人目だ。
その姿はかつての栄光を語るような堂々たる威風だが、その装備は――
「DXスーパー聖剣刀とあったかフリースアーマー……?」
童心を擽られるマスティマ。……流石にディスカウントショップの品をお土産にはしませんよね?
「我の炎は呪いの業火! √能力者よ、その身に刻み込むがよい!」
威勢よく吠える黒騎士、だが声に覇気がない。
それもその筈、この二人が城下町で楽しいひと時を過ごしていた間、彼はずーっとオバカな黒犬たちのブラッシングやら歯磨きやら爪鑢やらetc.のお世話を続けていたのだ。
仮面で隠れて見えないが、きっと目は死んでいる筈。
魔力と気力を振り絞るように、呪われし緑色の炎が黒騎士の頭上に形作られる。
その姿に哀れみを感じるのがマスティマならば。
「イジワルなコト思い付いちゃったもんね、おいで! シャルの可愛いお友達!」
妨害を思いついてニヤリとするのがシャルだ。
|眷属大集合《ファミリアズパレード》、ちびドラゴンず&ぬいぐるみ達&死霊のぽよ。総勢20名が黒騎士に群がった!
「待て、待て、お前たち! 火を扱ってる時に近寄るんじゃあない!! それに "死霊のぽよ" とは何だ!」
詠唱阻害によりカースドフレイムの生成が停止する。ちなみに、ぽよは "勾玉のような形でぽよぽよしている" のでぽよだそうです。可愛いね!
「「「遊ぼ、遊ぼ! 黒いオジサン、あーそーぼーー!!」」」
ちびっ子たちの大合唱! まさかのお世話リターンズに黒騎士もグロッキー……あ、戦意が圧し折れる音。
その様子をニコニコと微笑ましく見守るマスティマ。
シャルの操る√能力は、まるで平和なパレードそのもの。ここが明るい空の下で、シャボン玉でも飛んでいたとしたら。
そんな美しいIFの景色を胸にしまい、前を見据える。
そう。数こそ少ないが、黒騎士が辛うじて完成させたカースドフレイムが幾つか此方に飛んできているのだ。
「炎で勝負するなら、僕は意外と負けないよ」
――だよね、ルキウス。心中の呼びかけに応えるかのように、独りでに手の内で懐中時計の蓋が開く。灯り、揺れる炎。
|カースドフレイム《呪われた炎》は、様々な呪詛を含む。その厄介さはシャルのプチ・クラウドでよく知っている。
そんな一筋縄では攻略できそうもないの呪炎に、ルキウスの炎が真っ直ぐに飛び掛かる。
「うん。厄介だよ。あくまで|シャルの雲は《・・・・・・》、の話だけどね」
爆ぜる。燃える。焼き尽す。知恵を失った黒い騎士と、月下に吠える黒き獣では、その炎に籠めたモノの重さが違い過ぎる。
格の違いを知れ。頭を垂れろ。彼ならば、そんな台詞を放ったかもしれない。
「あ、あぁぁぁ……我の、我の炎が……??」
ちびっ子たちをてんこ盛りに乗せ、地に伏せた黒騎士が呻く。その背にはさっきからヒラヒラと揺れる紙片が。
「あれっ? 待って君! 服にタグが」
世話焼きお兄ちゃーーーーん!!
√能力・|栄えあれ貴き我が血族《グロリア・ドゥラメンテ》を使ってまで、迅速にタグ&値下げシールを切りに行く。
あー、マスティマさん。多分それオーバースペックだ。
黒騎士はマスティマの善意に気付く筈も無く、その攻撃を避けようと藻掻く。
結果、『装甲を貫通する威力2倍の血刃』はタグ&値下げシールを切るに留まらず。
ザ ッ ク リ ★ミ
「痛っっったぁぁぁぁぁ??!!!?!」
「ご、ごめんね! わざとじゃないんだよ……」
気の毒そうなマスティマの後ろでは、「おーっ、マスティマさんやるぅ~!」とシャルが大はしゃぎ。
黒犬のお世話の精神疲弊+眷属たちによるお世話のオカワリ+とどめのザックリ★により、黒騎士は遂に色々と尽き果てた。
「正直、あんまりこの技を使いこなせていないんだよね」
サラサラと光の粒子となって消えていくロード・マグナスの分裂体を見送りながら、マスティマは密かに特訓を心に誓うのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

アドリブ、連携喜んで!
分身して黒騎士|団《・》って、ちょっと虚しく無いですか?(心無い問い掛け)
まぁ、それはそうと、最近寒いですよねぇ。
そのフリース…暖かそうですねぇ?
ボスだし元勇者だから、警戒して地雷は余り踏んでくれないだろうなぁ…困ったなぁ…よし。ぶつけましょう。っと言う事で、踏まないのであれば、直接ぶつければいいじゃない〜の精神で戦杖槍を持ち出して戦います。ちょいちょい地雷も撒き(落とし)ます。
対戦車地雷なので、ある程度は鈍器として使えますが、一定の衝撃で勿論爆発します。怖いですね。
仮に爆発したら、他の地雷にも誘爆するでしょうね。本当に怖いですね。
フリースは追い剥ぎします。寒いんで。
●こいつ……動くぞ!
「ぐ、ぬぅぅ……」
第三章の終盤の話である。一人の堕落騎士が、最早その場所のみとなった自陣で苛ついていた。
広いダンジョンには、この男の味方は誰も居ない。ただ、所々ぶち壊れた|魔力柱《オベリスク》に、|M93-Hornet《センサー式地雷》が一匹とまっている。
「 "|蟋蟀《きりぎりす》がとまっている" みたく言うな! 誰だ、そんなとんでもないブツを仕掛けたのは!!」
吠えるロード・マグナス。逢沢・巡(散歩好きなLandmine・h01926)以外に誰が居るって言うんだ。
「居た居た~。黒騎士さん、ご機嫌ナナメですねぇ~」
そこへ『あ、散歩中に会うなんて奇遇ですね~』みたいなノリで現れる巡。
「貴様ら……我の黒騎士団を何処まで愚弄すれば気が済むのだ!」
怒りに肩を戦慄かせ、黒騎士はDXスーパー聖剣刀を抜剣!
《装備者の怒りを確認。オルタ化します》
黒と赤のプラズマを放ち、危険な明滅を繰り返すDXスーパー聖剣刀・オルタ! カッコイイ!
「分身して黒騎士|団《・》って、ちょっと虚しく無いですか?」
その黒騎士|団《・》も壊滅しちゃったんですけどね!
巡の言葉に黒騎士の纏う空気が変わる。
DXスーパー聖剣刀・オルタをだらりと下げる! 俯く! そのまま蹲る!
冒険者養成所デビューに失敗し、パーティーはいつも引率ベテラン冒険者と一緒。
酒場で馬鹿話が出来る仲間も無く、いつもサンドイッチを頼んでダンジョンメシならぬ便所メシ。
終いには酒場の女の子に覚えられ「あ、いつものサンドイッチですね?」とか声を掛けられる始末。
「仲の良い奴とペア組め」が滅びの呪文になる自分が、分身無しで|団《・》など作れるものか。
正論のナイフに心を抉られ、黒騎士の脳裏に流れ始める "存在しない記憶" ……!!
「まぁ、それはそうと、最近寒いですよねぇ」
構ったげてよ巡サン。
「そのフリース…暖かそうですねぇ?」
このタイミングで|強奪《コウゲキ》|宣言《・・》ですか??
と言うか、|防護ベスト脱ぎながら《・・・・・・・・・・》言うセリフ?
「フン……最早野盗と変わらぬではないか」
蚊の鳴くような声で|詰《なじ》る黒騎士。
プーンと耳元に響く、季節外れなモスキート音。あ、やぶ蚊。
何でもないような素振りで蚊の吸血を|弾く《・・》巡。
黒騎士は覇気のない声でとつとつと自らの過去を語り始めた。
「我は……我は、こうなる前は、勇m」
ここで巡、|正面から《・・・・》戦杖槍を振りかぶり脳天めがけて|SMAAAASH《打撃地雷特攻》!!
KABOOOOOOOM!!!
8倍強化された爆風に乗り、「ひゃあ~♪」と歓声を上げて吹き飛ぶ巡。モノローグ無視してバンザイアタックって、人の心とか無いんか。
巨大なクレーターの中心部には、ピクピクと四肢を動かす黒騎士。その哀愁漂う姿は、まるでスリッパではたかれたゴキ■■。
「ワタシが~|引剥《ひはぎ》をしようと~、恨むまいな~」
何かをポロポロと落としつつ駆け寄る巡。モンスターの所持品故か、奇跡的に無傷なフリースアーマーを宣言通りに引っぺがす。
「コレ、貰っていきますねぇ。寒いので」
用は済んだ、とばかりにダンジョンの出口へ猛ダッシュ!
「……ッ、オ……オイ……」
死んだように倒れていたロード・マグナスが、いちご柄のトランクス姿で身を起す。そこへぎこちない動きで近付く変な虫。
げぇ、M93-Hornetじゃん!! 誰だセンサー式地雷に六本脚なんて付けたヤツ!!
ピ。ピ。ピ。ピピピーーーーーーーー!!!
ダンジョンは出入り口から轟音と共に、爆炎と大量の煙を吐きだした後に沈黙した。
巡の行方は、誰も知らない。
――多分普通に帰ったんじゃないんスかね。
🔵🔵🔵 大成功