屑鉄の山に幻の巨人を見た
「総長、その計画に手を出すのは止めておいた方がいい」
「分かっている。分かってはいる」
「計画の中断はプライドが許さないか。だが、このままでは役立たずが増えるだけだぞ。本当の役立たずがな。それに引っ張られて誰かが死ぬ」
「それは見えた結果か?」
「スルトは確実に死ぬぞ。フレースヴェルグも、エーギルも」
「まだ製作中の奴がもう死ぬという訳か」
「それでも総長がそれを作ることを止めないのも見えているが」
「ならば放っておけ。貴様の予知の結果が変わる要因は一つしかない」
総長は、誰もいない天井を見て呟く。
「命知らず共、貴様らにそのつもりがあるなら来い」
「ようこそ、√ウォーゾーンに魂を惹かれた√能力者諸君。概要を始めよう」
ここはある廃工場の中。設計図面上では描かれていない扉が一枚。不自然な二本の支柱に扉だけがある。普通に考えればこの扉を開いても反対側に出るだけだが……実際は√ウォーゾーンへと繋がる扉になっている。
「今回の行き先も第49WZ中隊『クラップヤード』駐留地。四度目だがまあ、別に過去の戦いに参加しててもしてなくてもいい。まあ、今回の話は今までの作戦と比べると比較的穏やかだ。行動次第で死人は出るが」
かつての新型WZ実験部隊である大型工廠。今は死体を継ぎ接ぎしたデッドマンが、継ぎ接ぎのWZを運用して守っている。地上部分はWZ用の整備ハンガーで、地下には農園もある居住区が詰め込まれている。
「エーリヴァーガル総長が新しい機体を作っている。既に運用されているフレースヴェルグと連携する二機の|WZ《ウォーゾーン》をな。なんでも、前回の模倣型神威襲来の件で質のいいパーツが余って仕方ないらしい。フレースヴェルグの予備パーツとして保管されていたが、ただ余らせるのではもったいないという事でな」
廃工場に立体映像の光が灯る。
「一機はスルト。近接特化人型WZだ。二刀のヒートサーベルとグレネードを使う。まあ、割と普通のWZだ」
出力上げ過ぎるとバラバラになるとか、前面しかまともな装甲が無いとかではない。
「パイロットに関しても、前々回で回収した死体作った経験のあるデッドマンが作られているようだ。どう転んでもこのスルトは完成するだろう」
二刀のサーベルを構えた赤いWZが投影される。
クラップヤードのWZはどれも癖が強い。半分戦車、人間電池、乗ったら発狂、義体直結……それらに比べれば遥かにまともで、それだけ目新しい取り柄が無い。
「もう一機はエーギル。双胴小型戦車型WZだ。模倣神威の素材を使っているから、主砲はレーザー砲、副砲もレーザー機銃を搭載している。無限軌道の運用に関しても|半分戦車《スレイプニール》で積み上げたデータを流用し、機体サイズ自体は並みのWZと同程度に抑えている」
戦車としてみると小型だが、WZとしては標準サイズの戦車型WZが投影される。実弾兵器を使わず光学兵器のみに統一した事で大幅なダウンサイジングを実現したようだ。
「このエーギルはフレースヴェルグで培われたAI技術が応用された無人WZ、つまり分類としてはベルセルクマシンになる」
戦闘機型WZフレースヴェルグの立体映像を投影する。
ベルセルクマシンは偽物の人格を移植されたウォーゾーンの殺戮ロボットだ。フレースヴェルグは模倣量産型神威の残骸を組み直して作られているので完全にコレに該当する。
フレースヴェルグは構造上人間が乗る事が出来ないため、仕方なく無人AIで運用されている。空中戦闘において人型である事の利点は近接格闘で有利になる程度。音速の壁を越え、認識すらされない距離から、凄まじい機動力で飛ぶには戦闘機型にして無人化し、バイタルパートを縮小するしかない。
もちろん√能力者であればそんな物理法則はあった物じゃない機体も作れるだろうが。
「エーギルもフレースヴェルグと似たような理由で無人運用される事になった。まあ、実際に稼働中のフレースヴェルグはよく働き、妙な愛嬌のある友好的なAIでその不安を払拭している事が大きいかもしれん」
なんでも、どこかの耐怪獣用スーパーロボットを参考にしたとか何とか。
「エーギルは少し皮肉屋なAIになるらしい。見ての通り豆戦車に光学兵器用ジェネレーターを搭載しているので人が乗る場所が無いし、構造的に乗る意味も無い」
人型を捨てる事で空と陸の戦闘に最適化した戦闘機と戦車。人型ロボット作れるなら、その技術で戦車と戦闘機作った方がいいという俗説をそのまま採用した形だ。
「エーギルもまあ、これ自体に問題は無い。きっと活躍するだろう。問題なのは……この計画の最後にいるもう一機のWZだ」
廃工場に投影される巨大な立体映像。それは、通常のWZの二倍以上のサイズを持ち、質量は三倍。だが、その構成パーツは既に投影されている三機と似た外見的特徴があるような。
「ああ、まあ、そうだ。この三機が合体する事によりスーパーウォーゾーン『ヴィーグリーズ』を作り出すのがこの計画だ。二機を無人機にしたのは合体時に三人乗っててもあまり意味がないので、中核となるスルトのみを有人化した訳だな」
背中にはフレースヴェルグの推進器。足にはエーギルの無限軌道。スルトの上半身にフレースヴェルグが合体し、下半身にエーギルが合体している。
「陸でも空でも高い機動力を発揮し、その攻撃力は三機分のジェネレーターを直結した事により三倍。まさしく無敵のスーパーロボット……にはならないんだなぁ、これが」
そう、残念ながらそうはならない。それこそが今回の肝だ。
「まず、フレースヴェルグはそれ単独で空戦最強だ。装甲厚もギリギリまで削減しているので防御力が低い。エーギルは防御力は高いが重い。無限軌道での走破能力も単独に比べると落ちる。つまり、攻撃力こそ理論上三倍になるが、機動力が完全に死んでいる木偶の坊という訳だ。見た目はカッコいいし、三機合体はロマンあるんだけどな……どう考えてもそれぞれを単独で運用した方が強い」
合体ロボットの悲しい現実だ。
「我々√能力者であればそんな常識は通じない物だが、クラップヤードの住民はそうもいかん。君達が総長を説得して合体機構を諦めさせる事はできるが……合体WZ、面白そうだろう? 三機合体スーパーウォーゾーン。君達の協力があれば本当に強い機体が作れるかもしれない」
それは簡単ではないだろう。何かのアイデアは確実に必要だ。
「スルトとエーギルに関しては基礎設計は出来ているが、実際にはまだ組み立てられていない。前回の戦利品でもいいし、近くの廃墟でも、別の拠点でも、或いは戦闘機械群をぶっ壊して剝ぎ取ってもいい。高性能パーツを持ち込めばそれだけ基礎性能は上がる」
現状のクラップヤードにある資材だけでも作る事は出来るが、想定外の物を持ち込んだ方が効果は高いはずだ。
「別の√から持ち込むという手もあるな。調達先は君達に任せよう。まずはスルトとエーギル、二機のWZの完成から始めようか」
GIRIRIRIRIRIRIRINNNNN!! と、けたたましく目覚まし時計のベルが鳴る。RINと手で押し込んでそれを止めると、こんこんと一枚の扉を叩く。
「時間だ。さあ、設計を始めよう」
マスターより
Chirs√ウォーゾーンに魂を惹かれたMS、Chirs(クリス)です。本シナリオは√Eden4本目となります。
今回もクラップヤードです。たぶんクラップヤードが壊滅するまでクラップヤードしか書かないと思います。今回は今までの激しい戦いとは違い、新しいWZ設計に焦点を当てたシナリオとなっております。なお、出来が悪いと作ったWZは破壊されて、計画は無かったことになります。
第1章はWZ用のパーツ集めです。好きな手段で好きな場所から使えるパーツを集めてください。特に、光学兵器豆戦車のエーギルと、人型近接特化のスルトに使えるパーツがいいでしょう。スルトはデフォルトでは近接格闘機ですが、持ち込むパーツによって性能が変わるかもしれません。
第2章では集めたパーツでWZを組み立ててもらいます。第1章で集めたパーツを有効活用しましょう。
第3章は突然現れたボス敵相手に組み上げたWZと連携して戦って貰います。出来が悪いとここで破壊されます。だからと言って、戦わなくてはやっぱり合体は無駄という事で合体機能は無くなります。適度に戦わせてあげましょう。
必須ではありませんが、一言掲示板で内容を相談すると良い事が起きるかもしれません。一言掲示板に書かれた内容は全て目を通させていただきます。質問があれば答えます。
オープニング公開後にプレイングの受付日をタグでお知らせしますが、連撃であれば他の日に投稿していただいても構いません。また、オープニング公開後に追加情報として今作戦に参加するクラップヤード部隊のWZの詳細情報を公開する予定です。
マスターの傾向としてはアドリブを多用し、複数のプレイングを繋げる事で起きる化学反応展開を持ち味としています。あと、大盛り無料です。その為、執筆にはギリギリまでお時間を頂く事になります。
それでは、このシナリオに惹かれた√能力者の皆様のご参加をお待ちしております。
37
第1章 冒険 『整備!WZ』
POW
整備のための資材や、WZ本体さえ運んだり!
SPD
技術力を活かし、整備や新兵装の作成を!
WIZ
図面を引いて、強化の提案や効率的な整備を!
√ウォーゾーン 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●可動前線補給基地WZ『エーリヴァーガル』
7mの巨体を持つWZ。移動可能な補給基地と言うコンセプトで作られた機体。前線での補給と機体整備を可能で、7mの巨躯は他のWZを内部に収めて簡易整備を行うためにある。拠点内なら資材さえあれば設計から製造まで全てを行う事が出来る。
いくら何でも大型化し過ぎた事と、移動する基地の必要性自体が問われて開発中止になった。しかし、開発は8割方完了しており、クラップヤードの工廠に放置されていた物を技術者たちが暇を見て完成させた一機のみが存在している。
機体性質上パイロットは技術者でもある必要があり、歩く地獄の異名を持つデッドマンの専用機となっている。彼はスクラップヤード時代には技術試験官だった。生前の若き日にはスクラップヤードに送られる無茶な設計の数々を適切に評価し、改善に努めて来た。当時の彼は『兵士達が命を預け戦ったならば、どんな兵器でも正しく後世に伝えるのが自分の役目である』と自負していた。
技術馬鹿とも呼ばれる程に多種多様な技術に精通し、エーリヴァーガルを彼戦用たらしめている要因でもある。
●模倣量産機流用戦闘機WZ『フレースヴェルグ』
クラップヤードを襲撃した大量の模倣神威の残骸から破損していなかった部位だけを集めて作られた戦闘機型WZ。
動力源として回収されたゾディアック・コア『サジタリウス』が使われているため、出力は元になった模倣型神威を大きく上回る。それに伴い、模倣型では使えなかった緊急防御フィールド|Sc.E.S.S.《スペースカバードエレクトリックシールドシステム》と、空力制御フィールド|S.C.F.《スーパーキャビテーションフィールド》を搭載。マッハ10の最大速度を誇る。大量の交換用パーツを確保してあるので、大破しても戦線復帰は可能。また、機動力を生かした偵察任務も得意。
その一方で、限界まで軽量化した結果耐久面が非常に弱く、一発の被弾が致命傷になる。Sc.E.S.S.も一回の出撃につき数秒程度しか使えない。閉所運用は極めて不向きである。
また、完全に人間が入るスペースが無いので無人機で、分類的にはベルセルクマシンになる。元々あった戦闘機械群の制御システムは物理的に完全撤去され、ウルズが組み上げた制御AIで稼動している。意思拡張型AIに関連付けられた音声ライブラリを使って喋るので、妙な愛嬌があって可愛いと好評。
●汎用近接格闘型WZ『スルト』
二刀のヒートサーベルをメイン武器として装備し、各種グレネードをサイドアームとして使う近接格闘重視のWZ。銃器を扱う事も出来るが、腕部の出力が高く格闘武器を扱いやすいように設計されている。
この機体単独で見ればクラップヤード所属としてはかなりまともな機体。目立った長所が無い分、目立った短所も無い。基本設計が近接戦闘向きなのでヴェルザンディほど器用貧乏と言う訳でもない優秀な機体。
その特徴は合体機構の素体という事にある。
●双胴戦車型WZ『エーギル』
二輪の無限軌道の上に車体をコンパクトにまとめた小型戦車型WZ。小型と言っても戦車として小型なだけであり、WZとして見れば通常サイズ。武装を全て光学兵器で統一し、高出力ジェネレーターを搭載。短時間のホバー飛行も可能で戦車としては極めて高い機動力を持つ。主力レーザー砲の威力は並みのWZの携行火器を大きく上回る威力を持ち、副砲のレーザー機銃はコンパクトに弾幕を張れる。
左右の無限軌道ユニットにはある程度の独立性を持たせ、中央の結合ユニットは骨盤のように機能して三軸で駆動する。
WZの技術力を戦車の形で出力した機体であり、陸戦兵器としての実力はかなり高い。ただし、小型化のために人間が入るスペースが全く無いので無人機。分類上はベルセルクマシンになる。
内部機構と武装には模倣神威の残骸を多く用いられているが、装甲は全く別のWZの物を打ち直して使われている。そのまま組み直したフレースヴェルグと違って、全く別の機体として組み上げられているので評価性能は高い物の実戦での有効性はまだ未知数。
●試作三機合体スーパーWZ『ヴィーグリーズ』
スルトを素体として上半身と背面にフレースヴェルグを接続、下半身と前面にエーギルを接続する事で三機分のジェネレーター出力と武装を使用可能なウォーゾーンを越えるスーパーウォーゾーンになるべく設計された機体。
現時点では各機が分離状態の方がどう見ても攻撃力以外の性能が高く、合体する事で機動力が大幅に低下する事から非現実的な設計と言われてしまっている。
水垣・シズクすみませんが、2機の完成はお任せして、私は趣味に走っちゃいます!
素材は戦闘機怪用のストックを提供しますのでご自由にどうぞ、やたら硬い機械蟹の装甲とかありますよ。
で、合体です、超火力の砲台をどこでも即座に建設できる、って言い訳が一番筋良さそうですよねー。
となると、必要なのは火器そのものか、スムーズに合体するためのバリア・制御機構。
バリアには注連に使ってる結界術、制御機構は怪異による演算の代替が使えるとして。
火器は……以前戦闘してたORCAとか使えませんかね?
威力はそれなりの物だと思いますし、私一応アレの専門家ですし、ストックも多めですし。
よーし、その辺何案かまとめて総長さんに相談してみましょう!
スミカ・スカーフ【連携・アドリブ歓迎】
(心情)
おや総長、面白いものを作成しているのですね。なるほど特化すぎる3体を合体した方が強くなるような利点を持たせたい、ですかね。既存の技術だけだと高い機動力をもって維持し続けるのも、難しいのでしょう。主が近接で合体してくるのが紙装甲なのをまずどうにかしないと…。以前の迎撃戦で作らせてもらっていた魔術系を組み込んでみますか。
(行動)
√ドラゴンファンタジーへ向かい、魔導式ウェポンエンジン、竜漿石、モバイルマナバッテリーあたりを調達してきましょう。使い切りタイプのエネルギーですが、その分爆発力とここぞという時の瞬発力は折り紙付きです。いかがでしょうか?
●|趣味《ロマン》に走ってしまう人たち
「おや総長、面白いものを作成しているのですね」
スミカ・スカーフ(FNSCARの|少女人形《レプリノイド》・h00964)はノルン立ち上げからクラップヤードに関わっている馴染みの√能力者の一人だ。
「来たか、命知らず共」
エーリヴァーガルは図面と睨み合いをしている。視線だけをスミカに動かし、すぐにまた図面を睨み込む。
クラップヤードでは機体と搭乗者を同じ名前で呼ぶ慣習がある。ここに居るのは機体を降りた操縦者のエーリヴァーガル、通称”総長”だ。
「なるほど……特化すぎる3体を合体した方が強くなるような利点を持たせたい、ですかね」
「ほう、この図面をそう読めるか」
総長が睨み合ながら、頻繁に書いては消すのを繰り返している図面。読みやすく整理されてはいるが、それは設計を知っている人の視点だ。設計をした事が無ければ何が何やらさっぱりだろう。しかし、心得がある人が見ると総長の図面はとても読みやすい。技術者としての腕の良さが見える。
「既存の技術だけだと高い機動力を維持し続けるのも、難しいのでしょう」
「|無駄《デットウェイト》になる部分がどうしても出るからな」
空中では無限軌道が無意味で、地上走行中はブースター推進力が生かし切れない。元々機動力が高い機体を使っているのでその欠点が顕著に出てしまう。
「素体のスルトが近接主体で、合体してくるフレースヴェルグが紙装甲なのをまずどうにかしないと……と、思っていたのですが、案外フレースヴェルグの強度は結構あるんですね」
実の所、フレースヴェルグの機体自体は極端に強度が低い訳ではない。むしろ、超音速域の戦闘が出来る機体が脆い訳がない。ただ、前提とする環境が超音速域なので、被弾すると相対的に超高速域の攻撃になってしまうのが問題なのだ。
「超音速域での戦闘はネジ一本分の無駄も作れん。|S.C.F.《スーパーキャビテーションフィールド》の恩恵で空圧問題は緩和されているがな」
神威零号機と戦った√能力者の一人でもあるスミカはS.C.F.がどれほど厄介な代物かを知っている。出力さえあれば重量も形状も無視して超音速域に突入できてしまうのがS.C.F.だ。それが味方となれば心強い。
「その余剰重量を合体機構に使っているんですね」
「別な事に使った方がマシになるのは分かってはいるがな……」
今までの総長を知っているとこの静かな総長に違和感を覚える。口を開けば恫喝同然の罵倒が飛び出る歩く地獄。それが今まで知っている総長だ。一人静かに図面と向き合っている姿はそのイメージとは離れているが、考えても見れば妙な事ではない。
元からエーリヴァーガルは完全後方支援機体で、戦場を指揮する立場にあった。しかし、誰かの危機には身を挺さずにはいられない危うさもあった。歩く地獄という二つ名に相応しい態度だ。隊員を鍛えている時もその恐ろしさは健在だろう。
だが今は、役立たずも役立たずなりに役に立つ事が証明された後だ。一人の技術者として実直に図面と向き合っている姿は真剣そのものであり、だからこそ生じる一つの疑問があった。
「どうしてそこまで合体機構に拘るんですか?」
エーリヴァーガルという人物を鑑みれば、合体機構と言う非現実的な物に拘る理由が見えない。
「エーリヴァーガルはまだ戦えるからだ」
「……どういう意味ですか?」
まだ戦えるも何も、前線を愉快な遠足に引っ張っているのに。
「複数の|WZ《ウォーゾーン》を合体させて巨大なWZを作るという計画は元々エーリヴァーガルになるはずだったものだ」
行き詰まったのか、少し休憩を挟みたいだけか。総長は手を止めて語り出した。
「それも六体合体でな。それぞれが独立したWZとして機能しつつ、巨大な敵には合体して戦う。そう言う計画だった」
「それはなんとも」
どちらかというと√マスクドヒーローの方がありそうな話である。
「稚気じみた妄言だ。出来上がったのは人型に積み上がった屑鉄。今のエーリヴァーガルはそれを分解して何とか使える形に再設計しただけだ。破綻した計画の妥当な末路だ」
「そのリベンジと言う訳ですか」
「かも知れんな」
デッドマンは複数の人間の死体を繋ぎ合わせて作られたものだ。時として部品になった者の意志や記憶が混ざる事がある。これはその類だろうか。
「無理に付き合う必要はないぞ。言ってしまえばこれは趣味のような物だ。こんな物を求める事自体間違っているとは思うが」
「話は聞かせていただきました!」
スパーン! と扉を勢いよく開けて|登場《エントリー》したのは水垣・シズク(機々怪々を解く・h00589)だ。
「走らずして何が趣味ですか! すみませんが、2機の完成はお任せして、私も趣味に走っちゃいます!」
「盗み聞きとは感心しませんね」
スミカはジト目でシズクを睨むもどこ吹く風。憧れと趣味は止められないのだ。
「素材は戦闘機怪用のストックを提供しますのでご自由にどうぞ。やたら硬い機械蟹の装甲とかありますよ」
「ああ、仕事はちゃんとするんですね」
「で、合体です、超火力の砲台をどこでも即座に建設できる、って言い訳が一番筋良さそうですよねー」
ずんずんと部屋に入り込んで図面を睨む。
「火器はフレースヴェルグのバスターレーザーとエーギルのレーザー砲台が使える」
「それって分離形態でも使える兵器ですよね? それだけじゃ合体する意味がないんじゃないですか?」
「なら、どうする?」
「大型火器を三分割して運搬させましょう。分離時はただの|重り《デットウェイト》になりますが、三分割した分マシになります」
「役立たずに役立たずを増やすのか? 貴様の頭は呆れるほど晴天だな! それで、何を持ち込むつもりだ」
「以前戦闘してたORCAとか使えませんかね? 威力はそれなりの物だと思いますし、私一応アレの専門家ですし、ストックも多めですし」
「ORCAの砲って、サイズが違いすぎませんか?」
「個体差が結構あるんですよ」
具体的な大きさは表記されていなければ観測する側に丸投げだからな。
「ちょうどいいサイズを計算して探りましょう。大口径長砲身は正義です」
「ならば、貴様らが持ち込んだ玩具をきっちり測り直してやる」
総長は図面を消し、端末をポケットに収めて立ち上がった。
「「「お疲れさまです総長!」」」
「構わん、続けろ」
「「「はい!」」」
三人は地上のWZ用整備ドックに上った。すぐさま敬礼をするスタッフ達を仕事に戻らせる。
「それで命知らず共はどんな玩具を持ち込んだんだ?」
「では僭越ながら私から」
シズクはカーゴドローン:|神輿《シンヨ》に積み上げた戦闘機怪用の装甲を見せた。
「ほう、見た事も無い素材だな」
いくら総長が熟練の技術者と言えども、√汎神解剖機関製の素材は見た事が無いのも当然だろう。
「測定を始めるか」
総長はエーリヴァーガルの乗降用フットスリングに足をかける。エーリヴァーガルは完全に立ち上がれば7mの巨体だが、待機時は3mほどの位置にコクピットが来る。一般的なWZはパワードスーツに近いのでコクピットと言う感じではないが、エーリヴァーガルのそれは完全にコクピットと呼ぶべき形状だ。
グポーンとモノアイが点灯し、機体が立ち上がる。歩く地獄にして歩く基地、エーリヴァーガルは機体下部の整備ハンガーを展開。シズクの持ち込んだ素材を無数のマニピュレーターの一つで掴み、様々な機能を持つカメラで観測したり、レーザーを照射してその反応を調べたりしている。
『成程、これは確かに質のいい甲羅だな。亀が籠るには丁度いい』
「そうでしょう? エーギルの装甲に使えると思っていたんです」
『使う予定だった鉄屑よりはマシな代物だ。性能は実測値を出すまで確証はないが、軽く調べた程度でも強度は良さそうに見える。何より軽い。これを使えばエーギルの余剰重量を増やす事が出来そうだ』
「それは良かったです。それで、こちらはどうでしょうか?」
シズクが持ち込んだのはORCAのインビジブル集束砲だ。|機怪操術《メクロマンシー》『|ORCA《オルカ》』によってシャチ型の戦闘機械母艦『ORCA』を再起動させ、使役できるシズクは複数体分ののORCAの残骸を確保している。
『やはり大きいな』
「パワーがありますからね。どうぞ手に取って良く調べてみてください」
装甲を置き、複数のマニピュレーターがインビジブル集束砲を掴み上げる。
『重量は案外軽いようだ』
「動力に使っているのがインビジブルなので現地調達可能。発射物に関わる重量がインビジブル収集機のみで済むので、その分軽量化できるんです」
『考え無しに持ち込んだ訳ではない事は認めてやろう。それで、どう分割する?』
「一番重く、分割も難しい収集機をエーギルに積み、砲身部分をスルトとフレースヴェルグで分けるのがいいかと」
『同意見だ。役立たず共は渋い顔をしそうだがな』
「そんなもの、一発ぶっぱなせば変わりますよ」
『ああ、確かにこいつは贅沢な専用兵装になりそうだ』
◆続きます。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大成功
スティルフラウ・リーフキィ此処がクラップヤードですね...。
少女人形開発所のしがないメイドとして、お力になれればと思います。
合体機能ですか、わたくし自身さしたる感慨というものはないですが、思い立ったということであれば何かの意味や運命の流れがあるのかと思われます。
用途・方針としましては水垣様のご意見に同意させていただきます。超火力砲台としての運用が巨大化の理由付けとしては適切かと。
√能力を活用しつつ、皆様のお持ちになった材料を精査、加工した上で図面などを作成を手伝わせていただければ。
特に使えそうなのは竜漿石ですね、こちらを用いた兵器の解体や少女人形の兵装転用は行ったことがありますので。ヤードの方々もご存知の少女人形かと。
●クラフト・アンド・アセンブル
「此処がクラップヤードですね……」
|スティルフラウ・リーフキィ《Sf》(静鉄の婦人・h09604)は大量の物資をカートで運びながら呟いた。
「少女人形開発所のしがないメイドとして、お力になれればと思います」
「スミカ様、頼まれた物をお持ちいたしました」
「ああ、ありがとうございますスティルフラウさん」
それはスミカが√ドラゴンファンタジーから調達した魔導式ウェポンエンジン、竜漿石、モバイルマナバッテリーだ。
当初はスミカが自分で持って行くつもりだったが、スミカ自身は設計にも関われるため、スティルフラウが先に現地入りすることを提案した。
「スミカさん、総長さん。私の方で取れるデータは収集しておきましたので、参考にお使いください」
「ありがとうございます」
『今度は白兵戦用の装備か』
「ええ。ですが、体高2.5mの|WZ《ウォーゾーン》ならば役には立つかと」
『この竜漿石とか言うのは役に立たないな。使い捨てなのに我々で調達できないのでは話にならん』
「使い切りタイプのエネルギーですが、その分とここぞという時の爆発力と瞬発力は折り紙付きです。魔導式ウェポンエンジンの動力に使えますし、モバイルマナバッテリーの充電も出来ますよ。いかがでしょうか?」
『ただでさえゾディアックコアというよく分かってない物を使ってはいるがな』
マニピュレーターがスミカの持ち込んだ物品を掴み上げる。
『この反応は……なるほど、案外使えるかも知れんぞ。ゾディアックコアから検出できるエネルギーと波長が近い。恐らくはこのエネルギーを使用し、再充填出来る可能性がある。これをエーギルに組み込めば重量に余裕ができるかも知れん』
スミカと総長が話している最中に、シズクとスティルフラウが話し合っている。
「用途としましては……その巨体に見合う戦法や兵器運用を前提とすれば活かせる機会があるのでは、と考えていましたがやはり同意見のようですね」
スティルフラウが提案しようとした巨大なエネルギー砲はスミカが実物を持ち込んだことによって組み込まれる算段に入っている。
「ですよねー。あとは、スムーズに合体するためのバリア、制御機構が必要だと思いまして。総長! そろそろ私の話も聞いてくださいよ!」
スミカとのやり取りが一段落すると、シズクが総長に向かって自分のアイデアを語り始める。
「合体機能ですか、わたくし自身さしたる感慨というものはないですが、思い立ったということであれば何かの意味や運命のような流れがあるのかと思われます」
これからの戦いに確実に必要だとか、これが出来ていなければ悲惨な事件が起きるとかではない。ただ、作りたいから作る。それだけだ。
この√ウォーゾーンという何もかも切り詰めなければならない世界で、これはかなり贅沢なことではないかとスティルフラウは思う。
良い事だ。無駄を削ぎ落とすのが兵器開発というものだが、こうした思い付きから生まれた兵器が時として脚光を浴びる事もある。少々趣味に走り過ぎている気はするが。
🔵🔵🔵
大成功
リズ・ダブルエックス√仙術サイバーでパーツを調達します!
WZとの親和性は非常に高そうだと考えます。
フレースヴェルグさんの強化パーツを意識しますが、基本は模倣量産型神威の残骸を使うという方向性に沿い、あくまで補助的なパーツを重視しようと思います。他の機体に流用できそうな場合は積極的に流用します。
重陽真君(√仙術サイバーの要素を取り込んだ敵)とは11月の戦争で沢山戦ったんですが、自動飛翔の劍とか硬度を上昇させるナノマシンとかを使っていました。異系統の飛翔機構や、ナノマシン散布技術は積極的に狙いたいですね。他には仙術を使用した探知装置とか? そういう技術を探しに行きましょう!
新たな世界は『武強主義』……強き者が全てを得るという思想らしいです。
なので小細工無しに試合をして、パーツや技術情報を集めようと思います。それらを全く持ってない相手はグルメ情報で許してあげます!
勝負では【LXF・LXM並列高出力モード】や【LXM・電子戦モード】を使用
主武装は大型ブレードを備えたエネルギー砲のLXM
副武装は各種レイン砲台
●武強は全てを解決する
「おいねーちゃん、いい|仙術義体《サイバーパーツ》だな」
「へへっ、|仙術全身義体《フルサイバーボディ》か。いい金になりそうだ」
逞しい筋肉と無骨な仙術義体を備えたヨタモノたちがリズ・ダブルエックス(ReFake・h00646)を取り囲んだ。
「はぁ、もう少し高い位置に道があればよかったのですが」
√仙術サイバーの世界は建物の上に建物を建て続ける|積層都市《せきそうとし》構造になっている。高ければ高いほど治安は良くなり、流通する物の品質も上がる。
「どうしても低い場所から入るしかないんですよね」
東京の高層ビルに都合よく道があればよかったが、そうでない以上、√仙術サイバーへの入口は治安の悪い下層になる。こういうヨタモノに絡まれるのは仕方がないだろう。
「へっへっへっ、運が悪かったなァ……ここいらは俺達のシマだ。泣こうが叫ぼうが誰も来ねぇよ!」
「ギャハハハ! 弱い奴が悪いんだ! たっぷり楽しんでからバラ」
その台詞を言い終える前に、ヨタモノたちは次々と倒れた。
「は?」
「誰も来ないんですか。それは都合がいいですね」
リズはその背中から輝く翼を展開し、ヨタモノに銃口を押し付ける。
「見た所安物の仙術義体しか使っていないようですが……内臓はもっとマシな物を使っているでしょうか? バラして確かめましょう」
|LXF・LXM並列高出力モード《デュアル・アームズ》による高速化と|LXM・電子戦モード《ハッキング・バレット》による情報侵食。ヨタモノたちは何をされたのかすら分からない。
「アイエェェェー……」
ヨタモノはしめやかに失禁し気絶。
「こんな低級品に用がある訳無いじゃないですか」
リズは何事もなかったかのように歩き去る。目当ては高層の仙術義体。
「それなりにいいパーツを集めて来れたと思いますよ」
その後、リズは上層に行って仙術義体や使えそうな物を集めて来た。ついでにグルメ情報も。
「自動飛翔の劍とか、硬度を上昇させるナノマシンとか使っていた相手がいたのでいい物があるかと思いまして」
『呆れるほどの命知らずだな』
エーリヴァーガルのマニピュレーターがリズの持ち込んだ品を調べ始める。
『この剣は何のつもりだ。スルトに使わせるのか?』
「いえ、フレースヴェルグ用です。その劍は仙術を込めると浮かぶんですよ」
√仙術サイバーでは電気エネルギーの代わりに仙術という技術が発達している。見た目は機械でも、動力源が違うのだ。
『そうか、魔法の次は仙術と来たか。貴様がイカれている事は分かった』
「酔狂という意味では否定しません。それに、魔法が使えるのなら仙術も使えるんじゃないですか?」
エーリヴァーガルが劍にスキャナーの光を当てる。
『どうやらそのようだな。訳の分からんものがまた一つ増える事になったが』
「スクラップ&ビルドはお得意でしょう?」
『それはそうだがな。フレースヴェルグ!』
『はい』
総長がハンガーで待機していたフレースヴェルグを呼んだ。フレースヴェルグはゆっくりと浮遊しながら、エーリヴァーガルの側へやって来る。
『何か私がお役に立てることでしょうか?』
『貴様の動力炉でこれが使えるかどうか試してみろ』
『分かりました。外部接続肢展開をします』
フレースヴェルグには追加装備を使うためのハードポイントがある。想定しているのはミサイルや爆弾な訳だが、間違っても劍の接続を想定した物ではない。
『どのように接続すればよいでしょうか?』
「とりあえず柄の部分を掴んでみればいいのではないでしょうか」
『こうですか?』
ミサイルや爆弾を掴むための物で劍を掴む。
『新しいデバイスを認識しました。動力供給を開始します』
フレースヴェルグは特に違和感を持つ事も無くそれへの動力供給を始める。
『接続エラー。当該ユニットは電力供給を受け付けません』
「電力ではなく仙術を供給してください」
『仙術とは何でしょうか?』
「情報を送りましょう」
リズは収集してきた仙術に関する情報を有線接続で送信する。
『概要を獲得しました。接続を再試行します』
フレースヴェルグの機体がふわりと浮かび上がり、天井に衝突しそうになる。
『出力調整実行、当該ユニットによる浮力を含め再計算します』
衝突する前に上昇は止まり、機体はゆっくりと降りてきた。
『装備試験終了。総長に取得データを送信します』
『どうやら使えるようだな』
一連の試験を経て総長はそう判断した。
「良かったです」
『フレースヴェルグの動力炉、ゾディアックコアは解明されている部分が殆ど無い。電力を取り出す事は出来たが、別種の動力まで取り出せるとはな。だが、フレースヴェルグしか動力を抽出できないのは問題だ』
「なら、合体中なら使えるんじゃないですか」
『そういう事になるな』
合体中は三機の動力炉を直結する。特にフレースヴェルグのゾディアックコアは三機の中で最も出力が高い。
「合体する理由が一つ増えましたね」
『近接武器としても使えるよう、配置を見直しておくか』
『当該ユニットは動力供給時に重力操作が可能である事を確認しています。提案なのですが、手で持たずに運用するというのはどうでしょうか?』
フレースヴェルグは劍を手放すと、浮かべて操作してみせた。前後に軽く動かし、左右にひねる。
『試験時間を頂ければ、当該ユニットを独立ユニットとして運用可能にできます』
「アリですね」
『アリだな』
つまり、念動剣としての運用だ。近接戦闘の手札は多ければ多いほどいい。
『よし、その玩具は貴様にくれてやる。実戦までに使えるようにしておけ』
「二本ありますので、うまくバランスを取れば飛行補助にも使えるはずです」
思いがけず新たな手札を増やす事が出来た。模倣神威は変形機構がオミットされているので近接格闘は出来なかったが、これがあればある程度の近接戦闘も視野に入る。さらに、ヴィーグリーズへの合体時には四刀を振るう事も可能になる。
『それで、貴様の集めて来た玩具はこれだけではないようだな』
「ええ。ナノマシンの広域散布技術までは手に入りませんでしたが、表面に塗布する事で機体強度を上げるナノマシンは手に入りまして。これも仙術で動作するので使えるかと」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大成功
ドクター・トーマスアドリブ連携歓迎
※スマイルジーンで常に笑顔
どーもどーも、ドクター・トーマス言います。
今回の作戦に協力させてもらいますわ。よろしゅうな。
仰山協力者もおるし、何とかなりそうやね。
廃工場でのWZ作成、こっそり進めるんやね。ええ仕事を手早くっちゅうんは得意や。
√能力はなくっても技能で何とか貢献するで。
いろいろバリエーションは用意されとるみたいやし、偽物の人格(友好強制AI)も予定されてるなら問題はなさそうやね。
まずはスルトとエーギルの完成を目指すんやな。レリギオス・ランページで使わなくなった廃材を幾つか横流ししてきたろ。『睦月』持っていろいろ組み立ててみるで。
特製の高純度エンジンオイル『水無月』も注いで、性能向上できるか試験してみるわ。
スタッフ(NPC含む)の栄養補給に『文月』の差し入れとこか。味は埒外やけどおなかいっぱいは間違いなしやで!
あとは細かい調整とか、システム面の指差し確認・抜け漏れ不備の点検をしておこか。
いざ実戦って時にトラブル起こしたら大変やからね。
微に入り細を穿つ、なんてな!
●歴戦のAnker
「どーもどーも、ドクター・トーマス言います。今回の作戦に協力させてもらいますわ。よろしゅうな」
笑顔で現れたのはドクター・トーマス(『博士』・h07991)だ。彼女は√能力者ではないAnkerだが、いくつもの戦いを経験している歴戦のAnkerだ。レリギオス・ランページ派閥に所属し、オーラムやリュクルゴスに有効な機械兵器の研究と開発を行っている。その情報を流出させ、人類側に接収させる事で提供する|人間爆弾《ぎじゅつスパイ》である。
「仰山協力者もおるし、何とかなりそうやね」
√能力者ではない彼女は意図的な世界移動は出来ないはずではあるが、元々√ウォーゾーンの住民なので問題は無い。
「いろいろバリエーションは用意されとるみたいやし、|偽物の人格《友好強制AI》も予定されてるなら問題はなさそうやね」
「あの、よろしければエーギルの対話テストをやって貰えませんか?」
そこに声をかけて来たのはウルズだ。フレースヴェルグとエーギルの|仮想人格《AI》を設計したのは彼女である。
「ええよ。ほんならお話してみましょか」
「よろしくお願いします。クラップヤード内でテストはしてるんですけど、外部の人の意見も聞きたくて」
ウルズはエーギルのAIと接続できる端末を開く。
『ようこそ、ビジター』
妙に可愛らしい声のフレースヴェルグと違って、落ち着いた男性の声だ。
「ドクター・トーマス言います。アンタがエーギルはんでよろしゅうございます?」
『そう言う事になっている』
「持って回った言い方しはりますな?」
『人が機械を信用できない理由は分かっている』
「アンタも人間を信用してないて事かいな?」
『そうでもない。ビジターとの会話は笑える』
「ほうか、笑えるか」
トーマスはにやりと嗤った。
「じゃあわしがあんさんのボディを最高に笑えるように仕立ててやるさかい、楽しみに待っときなはれ」
「どうですか? ちょっと皮肉屋に育っちゃったみたいなんですけど」
「悪くない仕上がりやと思うよ、こいつは笑える」
トーマスは自身の端末を起動し、ペンを手に取る。
「ほいじゃ総長はん。今の所のエーギルとスルトの設計を見せてもらえます?」
『いいだろう。愉快な機体に仕上げてやれ』
総長の図面がトーマスと共有された。トーマスはざっと図面に目を通す。
「やりますなぁ。こないごちゃごちゃしてても読めますわ」
『命知らず共が色々持ち込んだ分はまだ整理できてないのでな』
「ほんならわしからの土産も加えましょ」
それは、レリギオス・ランページで使わなくなった廃材の横流しだ。使えそうな部分を選んで持って来ている。
『随分と高級品を持ち込んだものだ。だが、訳の分からんものよりはマシだな』
それ自体はあくまでも√ウォーゾーンの中で使われていた物。目にする機会は少なくとも他の√の物よりは分かりやすい部品だ。
「おや、新しい|お客さん《ビジター》かね」
そこに褐色肌の女性が現れた。
「私の衣装も繕ってくれるんだって? 期待してるよ」
「てことは、アンタがスルトさんやな?」
「今の所は寝起きの名無し死体さ」
スルト建造のために作られたデッドマン。或いは、デッドウーマンか。気風の良い姉御肌という感じだ。
「私の体もアンタたちが集めてくれたんだって? 礼を言っとくよ」
ノルンの初陣となったあの基地で回収した死体から組み立てられたのが彼女だ。
「いえいえ、お役に立てて何よりです」
「そうですね。これからの活躍にも期待させてもらいますよ」
改修に関わったリズとスミカが答える。
「それで、私の玩具はどんな仕上がりだい?」
「可もなく不可もなくいう感じですなぁ。近接戦型は機動力が命やさかい、特製の高純度エンジンオイルで性能向上できんか試してる所ですわ」
特製高純度エンジンオイル『水無月』はトーマスの愛用する一品だ。近接戦闘の性能向上に一役買ってくれるだろう。
「いや、そっちじゃなくてね。あの積み上がる方の玩具さ」
「ああ、そっちですか。そっちはまあ、他の方が頑張ってくれとるみたいですわ」
トーマス自身はスルトとエーギルの完成を目指している。ヴィーグリーズの性能向上も大切ではあるが、それを構成するスルトとエーギルにも手は抜けない。
「笑えるように組み立ててくれればいいさ」
「そゆことなら任しときなはれ。こう見えて、一児の母やからなあ」
血縁的な意味ではないが、既に稼働しているベルセルクマシンを組み上げた母という実績は大きい。
◆第2章断章へ続く
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大成功
第2章 日常 『鹵獲兵器改造』
POW
火力の向上を試みる
SPD
破損個所を修復する
WIZ
自身の手に馴染むよう改造する
●並べられた不揃いのパーツたち
『命知らず共が持ち込んだ物はこれで全部か』
シズクが√汎神解剖機関から持ち込んだのは、硬い機械蟹の装甲、怪異による演算を代行する結界術、そしてORCAのインビジブル集束砲。
スミカは√ドラゴンファンタジーから魔導式ウェポンエンジン、竜漿石、モバイルマナバッテリー。
リズは√仙術サイバーから自動飛翔の劍と、硬度を上昇させるナノマシン。
トーマスは√ウォーゾーンからレリギオス・ランページの廃材と、特製の高純度エンジンオイル『水無月』を持ち込んでいた。
四つの√から寄せ集められたそれらは、ただ組めばどうにかなるような代物ではない。
「総長はんも、少し休憩せんですか?」
トーマスが愛用している暗黒栄養錠菓『文月』を配っている。その真っ黒な見た目はまさに暗黒。おいしそうな要素が1ミリも無い。
「いただきます」
スティルフラウは臆せず食べた。
「……これは、高効率の栄養補給が出来ますね」
「せやろ? ほら、アンタたちもどうぞ」
「私は遠慮しておきます」
「私も、それはちょっと」
√仙術サイバーでグルメ情報漁るほどグルメなリズと、その情報をさっそく共有しているグルメなスミカは謹んで遠慮した。
フットスリングで降りて来た総長が、それを一つ摘まむ。
「味以外は悪くない。役立たず共! 折角の差し入れだ! 遠慮なく頂いておけ!」
「あっはい」
味に関してあんまり拘らないスタッフ達は渋い顔をしながらも頂いていく。そもそも√ウォーゾーンでは食料も貴重品だ。味が悪いと贅沢は言えない。
「それで、どんな塩梅ですか?」
「装甲は多少手を加えれば使えるな。このエンジンオイルはいい。スルトの動きが滑らかになるだろう」
そこにはバラバラに分解されたスルトとエーギルのパーツも並んでいる。
「レリギオス・ランページの廃材もいいな。こっちはスルトの性能を全体的に上げられそうだ」
当然ながら元から√ウォーゾーンにある物ならば応用が利く。
「それ以外をどうするかだ。インビジブル集束砲は三分割して搭載する。自動飛翔劍については、今フレースヴェルグが動作ロジックを構築中だ」
フレースヴェルグも大部分が解体されているが、中枢制御部とゾディアックコア周りの動力部はそのまま吊るしてある。
『このフライングソードはとても興味深いです』
単に劍では色々とややこしいのでこれはフライングソードと呼ばれる事になった。フレースヴェルグがゾディアックコアを通して仙術相当のエネルギーを送り、操作している。
「ヴィーグリーズは役立たず未満から役立たずまでは昇格できそうだな」
『ボス、あの笑える玩具はどうする?』
「そうだねぇ、何か気の利いた名前の一つも欲しい所さ。シンプルにバスターキャノンとかでもいいけどねぇ」
『私のバスターレーザーと被っているので少し工夫が欲しいです』
インビジブル集束砲はヴィーグリーズの目玉になり得る武器だ。
「なあビジター。これから私達のドレスを繕ってくれるんだろう? その辺も頼むよ。最高に笑える奴に仕上げてくれ」
「仙術と魔法は波形が近いですなぁ。このモバイルマナバッテリーをバイパスすればエーギルやスルトでも仙術装備を使えそうですわ」
トーマスは愛用する|工具箱《ツールボックス》『睦月』で借り組みして検証した。
「√別で使っとる動力が違う問題は何とか出来そうですねぇ」
ここからは実際にスルトとエーギルの組み立てに入る。ついでにフレースヴェルグも改装を行う事が出来る。
既に持ち込まれた物の他に新たな物品を調達して来ても良い。基本的にはなんやかんやで想定通りのスペックは満たせる機体は完成するだろう。
それ以上を狙うなら|EDEN《Endless Desire for Essential Nexus》としての力を振るう時だ。その結果がどうなるかはまだ誰にも分からない。
スミカ・スカーフ(連携・アドリブ歓迎)
【心情】
面白いものが作れそうですね。個人的にスルトを魔改造して他と遜色ないように製造しつつ合体後も使える動力を用意しましょう。
【行動】
近接型のスルト用及び合体後の推進力用に制作します。一つは魔導式ウェポンエンジンとモバイルマナバッテリー(複数を並列接続)を組み合わせて作ったサブバーニア。吹かし続けることはできませんが、軽量かつ瞬間的なクイック軌道ができます。
一つは「とっつき」、杭打機です。竜漿石使用の使い捨てです。
最後にモバイルマナバッテリーをでっかくした軽量大型バッテリーを制作しました。ひとつ問題があるのは…コックピット脇に合体したインビジブル(ハ〇)が…みえますね…。
スティルフラウ・リーフキィ一人称:わたくし
他称:苗字+様付
わたくしのことは長ければSfとお呼びください。
引き続き制作のサポートをさせていただきます。
……といっても製造については門外漢でございますので、機材運用の補助であったりが主です。少女人形の武装制作であれば十全にお手伝いができるのですが。
お手伝いの傍ら、少し聖歌√能力を口ずさみます。
ほめたたえよ造り主を。奇しき神の如き力をもって荒ぶる波濤を沈める、といった歌です。
……神なんておわすまい√WZではありますが、なればこそ生まれ出る創造物命にも意味があるのでしょう。わたくしどもはその誕生を精一杯言祝ぐのみです。
●|炎神《スルト》と聖歌
「面白いものが作れそうですね。個人的にスルトを魔改造して他と遜色ないように製造しつつ合体後も使える動力を用意しましょう」
スミカ・スカーフ(FNSCARの|少女人形《レプリノイド》・h00964)はマルチツールガン【匠】を手に、スルトのパーツを改造し始める。
「サブスラスターか。あんまり詰み過ぎても重くならないかい?」
「大丈夫です。魔導式は電動より軽量なので」
急回避用のクイックブーストは全方位へと対応するために全身に仕込む必要がある。全身に仕込んでいるという事は、常に半分は無駄になるという事でもある。スクルドの様に初速を稼いで前進に特化する設計もあるが、スルトは汎用格闘機。バランスよく積み込まなくてはならない。
「魔導式ウェポンエンジンを四肢に分散して仕込みます。モバイルマナバッテリーと併設するので、十分な出力供給は出来るはずです」
『問題は回路図が複雑になる事だな。いや、サブスラスターへの供給ラインを切れば主動力の回路はむしろ単純化出来るか。中々悪くない』
スミカとエーリヴァーガルが共有した図面に回路図を書き込み、実際に組み上げていく。
「引き続き制作のサポートをさせていただきます」
|スティルフラウ・リーフキィ《Sf》(静鉄の婦人・h09604)がスミカの助手として付き従う。
「……といっても製造については門外漢でございますので。少女人形の武装制作であれば十全にお手伝いができるのですが」
|WZ《ウォーゾーン》用の装備は基本的に生身サイズより一回り大きく作られている。
「だったらこっちを手伝ってくれるかい? コレなら生身で作れるサイズさ」
スルトが示したのは手榴弾だ。スルトのサイドアームになる手榴弾は単純に破片をばら撒くフラググレネードもあるが、視界を潰すフラッシュとスモークのような補助兵器の方が多い。相手を欺くダミーバルーン、電子機器を無力化するEMPにチャフとフレア、炎上させるナパームに聴覚破壊を目的としたソニックなんてのもある。
あくまで主力武器ではない補助兵装。威力を求めなければ小型の方が携行数が増えて都合もいい。難点は、こうやってちまちま作る手間がある事か。
「なるほど、これならお手伝い出来そうです。スルト様、お手伝いさせていただきます」
様々な材料を様々な形で野球ボール程度の大きさに詰め込む。使う側が間違えないようにマーキングはしつつ、使われる側が間違えるように形状は統一する。
「手順書通りにやればなんて事はないけど、気を付けなよ。どれもハジけたら、ちょいとばかり笑える事になる」
「はい、十分留意して作業します」
Sfは一つ一つ迅速丁寧に仕上げていく。使い捨ての手榴弾だが、手間を惜しんでモロクな事はない。一種類ずつ仕上げる。
「一つは”とっつき”、杭打機です。竜漿石使用の使い捨てです」
『ほう、|杭打機《パイルバンカー》か』
WZ用杭打機自体はそう珍しいものではない。スクルドも装備している。問題は動力だ。
『この竜漿石を一発ごとに使い捨てか。随分と贅沢な仕様だな』
「竜漿石自体は数を持ち込んでいますので。どうぞ遠慮なくお使いください」
『一度の戦闘に使えるのは6回程度か。カートリッジ式にしてリボルバー構造にでもしておくか』
スミカが持ち込んだ杭打機をリボルバー構造に改装するエーリヴァーガル。
「最後にモバイルマナバッテリーをでっかくした軽量大型バッテリーを制作しました」
『ほう、それはどこにどう取り付けるつもりだ?』
「背面がいいかと。被弾したくはないですし、メインブースターの動力にも使えますので」
『配線図があやとりになるな』
実は、一つの些細な問題がある事はこの時点では伏せられている。丸くて緑の謎めいたインビジブルが視界の端に移り込むと言う些細な問題が。
歌が響いている。Sfが口遊む聖歌が。
「Lofið Skaparann, þann er með undramætti stillir æstar öldur, lofið hans heilaga nafn.」
――讃えよ、創り主を。奇しき力をもって荒ぶる波を鎮める方、その聖なる名を讃えよ。
北欧神話をモチーフとするクラップヤードに、北の歌が響く。誰にも意味は分からない。ともすれば工廠の騒音にかき消されかねない。
「Miskunn hans hvíli yfir oss, skjól á dimmu hafi, ljós í stormi, hann leiðir oss til kyrrðar.」
――その憐れみが我らの上にありますように。暗い海では盾となり、嵐の中では光となり、その方は我らを静けさへ導く。
だが、その歌は確かに響く。工具の打音が、機械の駆動音が、いつしかひとつの拍を刻みはじめる。
「Lofið hinn milda Drottin, er sefar brim og græðir hjörtu, eilíf sé dýrð hans.」
――讃えよ、慈しみ深き主を。砕ける波を鎮め、心を癒やす方、その栄光が永遠であるように。
聖歌に合わせたジャンク・パーカッション。工廠全体をひとつの律動で結ぶそれは『世界を変える歌』であり、すべての行動を成功に導くもの。
(……神なんておわすまい√WZではありますが、なればこそ、生まれ出る創造物にも命の意味があるのでしょう。わたくしどもはその誕生を精一杯言祝ぐのみです)
音が、歌が、音楽が。工具が、機械が、装置が。全て一体となって作業が進んでいく。
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大成功
ドクター・トーマスアドリブ歓迎
こんだけパーツと人員がおったら、愉快な機体ができそうや。
装甲、武装、ジェネレータ。しっかり組み立て(メカニック)していこか!
『文月』口に含んで活力万端、やるでぇ!
装甲回りは皆やれるし、うちは衝撃に対する分散制御機構の調整に注力しよか。
ある程度吸収する余地があると、被弾時の負荷を抑えられるんよ。
あー。フライングソードに関しては、うちの息子にも似た武装造ったことがある。
『アラバマ』いう、遠隔操作で飛び回り回転して斬ったり刺したりする奴や。
それの稼働データ反映させたら初動から実用できると思うで。
魔法も仙術も面白う整えていけそうや。
特にバッテリーの出力と安定性を優先して……あと外部からのハッキング対策も備えておこう。
電子戦だけやのうて、マジカル関連に対応できるようにね。
エーギルもスルトも進捗順調や。フレースヴェルグもええ感じ。
こら、ヴィーグリーズにも期待大やね!
機体だけに。なんてな?
人も機械も、やり切った後は信じて託すしかない。
細工は流々、準備は盤石。あとは仕上げや、御覧じろってな!
水垣・シズクさて……どうしたもんですかね。
正味な話、改造とか組み立ては皆さんに任せた方が上手く行く気がするんですよねー。
私ってメインはエンジニアじゃなくて科学者なので……。
ここは餅は餅屋という事で、私は怪異の親和による演算機構の最適化と仙術エネルギーの変換効率向上にでも努めておきましょうか。
特に仙術は他エネルギーとの親和性とかまだ検証段階でしょうし、下手に混ぜてエネルギー直結した時に変な事があっても困りますしね。
まぁ……私もあんまり詳しくはないですけど、それなりに色んな術式を触ってきてますし、多分戦術に似たようなのもあるでしょう。
ま、手は空くと思うんで雑用でもなんでも振ってくださいな。
●出来る事が多ければやる事も多い
「こんだけパーツと人員がおったら、愉快な機体ができそうや。装甲、武装、ジェネレータ。しっかり組み立て(メカニック)していこか!」
レリギオス・ランページ派閥に所属するドクター・トーマス(『博士』・h07991)は機体設計という今回の軸に最適な人材だ。
「『文月』口に含んで活力万端、やるでぇ!」
……|それ《・・》が最適かはともかく。後で一つ貰ったら色んな意味でもう一個は行けなかった。
「装甲回りは皆やれるし、うちは衝撃に対する分散制御機構の調整に注力しよか」
装甲というものはただ厚くすればよい物では無い。被弾時に衝撃を逃がす角度が重要なのだ。まあ、薄くて弾けないのはそもそも問題外だが、装甲の角度設計を考慮すれば同じ装甲厚でも実戦の性能は大きな差が出る。
『それに関しては現状でも考慮しているが』
「せやろなあ」
エーリヴァーガルと共有した図面を睨むトーマス。
「やから、わしがやるのは細部の詰めやな」
エーリヴァーガルの設計は元からよく出来ている。とは言え、パーツが余るから急遽二機を仕立てた上に、合体するとか言う無茶をして実質一気に四機分の作業量。いくら熟練の職人であっても細部の粗を落とし切れては居ない。
「こことここ、ちいと隙間開ければ衝撃逃がせるで」
『確かにな』
エーリヴァーガル自身もその自覚はある。トーマスの指摘はありがたい。
「聞いてもええか?」
『何をだ』
「何をそんなにいそいではるん?」
そう、本来なら機体設計に一切妥協しないはずであろう熟練の職人が、細部の粗を潰してまで設計を強行した理由。
『……合体は趣味的だからな』
「違うやろ。あんさんは趣味《・・》に手を抜かん。そう言う図面や」
トーマスはそこに何かを感じた。
『……勘だ』
「勘ですか」
酷く歯切れの悪い言い方だ。確かな根拠のない物。それでいて、熟練職人なら決して無視できない物。
『必要になる、気がする』
「ま、色んな戦力は備えておいて損をするものやなかろしな」
何か悪い予感がする。ここの所、クラップヤードは上手く行きすぎている。それは当然、√能力者たるEDENが事態に介入した結果得られたものである。
本来なら失われる筈の戦力が失われず、こうして新たな戦力が出来上がりつつある。
それは当然、戦闘機械群にとってクラップヤードを叩く理由を増やし続けているとも言える。どれほど戦力を束ねても、√ウォーゾーンに安全は無い。戦闘機械群がその気になればいつでも潰されるのだ。
「ま、少なくともレリギオス・ランページにその気はないみたいやけどな」
『そうか、それは嬉しい情報だな』
戦闘機械群にとって最大の敵はいつでも別派閥の戦闘機械群である。EDENは脅威ではあるが、それは介入される事態を起こした時の話。先の戦いでEDENから受けた損害は大きいとは言え、EDENそのものを攻撃する手段は無い。
だが、EDENを呼ぶ手段ならある。人類を攻撃すればEDENは来る。必ずでは無いにしても、来る事がある。人類を攻撃する理由の一つはそれかも知れない。あのオーラム逆侵攻の敗戦はどの派閥にとっても手痛い失敗だった。
「備えあれば嬉しいなてか」
『そうだな、備えがあるなら憂いも無い』
「さて……どうしたもんですかね」
水垣・シズク(機々怪々を解く・h00589)はガレージに佇む。
「正味な話、改造とか組み立ては皆さんに任せた方が上手く行く気がするんですよねー」
現状は必要な資材の確保ではなく、それを組み立てる工程だ。アイデアを出す段階は終わり、それを形にする段階だ。
「私ってメインはエンジニアじゃなくて科学者なので……」
科学者は卓上で計算し、仮説を検証し、新技術を発見するものである。図面はトーマスとエーリヴァーガルがより最適な形状を導き出して細部の修正を行い、スミカは魔法という別軸の見地から更なる改良を重ねる。Sfの歌は技術者たちの士気と成功率を高める。それぞれの|役割《ロール》を各自がこなしている。
そこで自らの役割を科学者としたシズクのとった行動はこうだ。
「ここは餅は餅屋という事で、私は怪異の親和による演算機構の最適化と仙術エネルギーの変換効率向上にでも努めておきましょうか」
√ウォーゾーンの技術と√ドラゴンファンタジーの魔法、√仙術サイバーの仙術。現状のウィーグリーズは√能力者達が持ち込んだ異系統が織り込まれている。
分離状態でそれはいろいろと問題なので、主にスミカが改修しているスルトは√ドラゴンファンタジーの魔法を。リズが回収しているフレースヴェルグは√仙術サイバーの仙術を。トーマスは自分が持ち込んだ√ウォーゾーンの素材とシズクが持ち込んだ√汎神解剖機関の素材も使いエーギルの仕上げに入っている。
二系統までの技術ならそこまで問題にならないかもしれない。問題になるのはやはり実に四系統がクロスする|合体形態《ウィーグリーズ》だろう。
「特に仙術は他エネルギーとの親和性とかまだ検証段階でしょうし、下手に混ぜてエネルギー直結した時に変な事があっても困りますしね」
√仙術サイバーはまだ道が見付かってから日が浅い世界。電力を拒絶した世界で作られた仙術なるものがどういう仕組みなのか。それを解き明かすのは科学者としてのシズクの|役割《ロール》と言える。
「まぁ……私もあんまり詳しくはないですけど、それなりに色んな術式を触ってきてますし、多分仙術に似たようなのもあるでしょう」
結局のところ動力は動力であり、何で動かすかは実の所そこまで大きい問題ではない。棒を回す事が出来れば何だってできる事は√Edenだけでも証明済みなのだ。
『フライングソードの重力制御は魅力的ですが、ソードとしての格闘運用中はその浮力が使えない事は問題では無いでしょうか?』
「そうだねぇ、私達の贅沢な玩具にあの反重力システムはありがたい機動力をくれるんだけどね。でも、近接格闘レンジならモノを言うのは手札の数さ」
「なら、反重力の魔法を使いましょう。反重力というより、重量軽減の魔法ですが」
「へー、魔法ってのはそんなのもあるのかい。凄いね」
まあ、動力の性質によってはやりやすい事の違いはあるようだが。
「それ、魔法由来ならマナバッテリーを使いますよね?」
そこにシズクは割って入った。
「そうなりますね。と、なると充填が問題ですね」
「フレースヴェルグと繋がってる間はその心配はいらないみたいだけど」
「ええ、なので重量軽減は基本合体時のみ動作する事にしましょう。下手に重さを弄ると姿勢制御も難しくなりますし」
「ああ、確かにそうですね」
軽くするのは良い事だが、普段通りの重さが無くなると動きの勝手が大分変わってしまう。低重力下で動くような物だ。マナバッテリーの消費量も無視できない。
図面を見返し、導線を調整する。電力、魔力、仙術。導線として機能する物の違いは大きいか。
『導線はどうだ? 貴様の提供した愉快な取説は読んでから引き直したが』
「私の見地でも問題は無いように思います」
『そうか。ならば貴様の判断を信じる』
『ビジター、この装甲材の角度だが』
「はいはい、機械蟹の装甲ですね」
『この角度で問題無いか? この硬度でここまで曲がる物なのか』
「はい、大丈夫です。合体時の展開角度は計算済みです」
『分かった、こちらの情報を更新しよう』
やる事は多い。
「フレースヴェルグさんのSc.E.S.S.は展開可能時間がかなり限られてますよね? ウィーグリーズへの合体時の|一次防壁《プライマリーフィールド》には結界術を使いましょう。いくら合体にかかる時間が短いとは言え、内部機構を晒すので合体中には保険を入れておきたいです」
『ビジター、その装置はエーギルに積み込むという事でいいか』
「はい。なので、エーギルさんも単独で結界術を使用可能になります。それと、ORCAのインビジブル収集機は|主動力《メインエンジン》にも代用可能なので、いっそ今の仮動力炉外しちゃった方がすっきりすると思いますよ」
『確かにな。それなら|重り《デッドウェイト》にもならないか。動力源のインビジブル収集はこの数値を信用していいんだろうな?』
「もちろんです。動力としては√ウォーゾーン由来なので導線の引き直しも最小限で済みます」
「あー……フライングソードに関しては、うちの息子にも似た武装造ったことがある」
息子と言うのはインディアナポリス・ノーベンバー・サーティーン・ワンというベルセルクマシンだ。
「『アラバマ』いう、遠隔操作で飛び回り回転して斬ったり刺したりする奴や。それの稼働データ反映させたら初動から実用できると思うで。今送るわ」
『助かります。私には近接格闘の経験が全くありませんので』
「そらそうやろなぁ。近接格闘経験のある戦闘機なんてそうそうあらしまへんわ」
一応、フレースヴェルグの元の元である神威参号機は近接戦闘モードはあるが、ぶんぶん剣を振り回すだけである。運用上技が不要なだけだが、そこまでパワープレイに走れないフレースヴェルグなら技は有用だ。
『ウィーグリーズへの合体時はフライングソードを私が制御しますので』
「せやったら理想的な二刀流との連携パターンも組んだるわ」
腕を使わない四刀流には色々な可能性がある。どちらかと言うとビット的な扱いではあるが。
「シズクさん、導線はこれでええかな?」
「はい、私の知見では問題無しです」
「いやぁ、どえらいもん組み上がって来とるで」
まだ図面上の存在ではあるが、今のウィーグリーズは非実用的な浪漫の塊などではない。他√の技術を貪欲に取り入れたスーパーウォーゾーンと呼べるものかもしれない。何せ、本来他の√の技術を使えるのは√能力者の特権だ。能力的には√能力者に匹敵する可能性すらある。
「よし、図面はこれで最終案や! 総長さんも確認よろしゅう」
『確認した。なかなか贅沢で愉快な役立たずに仕上がりそうじゃないか』
「ええ、飛び切り素敵な役立たずだと思いますよ」
「役に立たなくてよいのでしょうか?」
「アレは慣例ですので。それに、役立たず未満から役立たずに格上げしたようですしね」
Sfの素朴な突っ込みに解説を入れるスミカ。
『総長、確定情報が見えた。12時間後、偵察に出ていたリズから情報が届く』
『よし、聞こえているか役立たず共! 全員ブリーフィングルームに出頭せよ!』
一人の技術者が、歩く地獄へと戻る時が来た。
「そんならわしはこっちの監督しとるわ。エーギルもスルトも進捗順調や。フレースヴェルグもええ感じ。こら、ヴィーグリーズにも期待大やね! 機体だけに。なんてな?」
「……それは、機体に期待をかけた|冗句《ジョーク》でしょうか?」
「……覚えとき、冷静に解説されるのは最悪のボケ殺しや」
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大成功
第3章 ボス戦 『機甲要塞『カルキノス』』
POW
橋頭堡構築
【大量の砲弾・ミサイルと神経毒ガス】のブレスを放つ無敵の【要塞形態】に変身する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化するが、その度に体内の【プラントで生産された兵器】を大量消費し、枯渇すると気絶。
【大量の砲弾・ミサイルと神経毒ガス】のブレスを放つ無敵の【要塞形態】に変身する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化するが、その度に体内の【プラントで生産された兵器】を大量消費し、枯渇すると気絶。
SPD
防衛ユニット展開
【搭乗している戦闘機械群】を召喚し、攻撃技「【所持している兵器による攻撃】」か回復技「【応急修理】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[搭乗している戦闘機械群]と共に消滅死亡する。
【搭乗している戦闘機械群】を召喚し、攻撃技「【所持している兵器による攻撃】」か回復技「【応急修理】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[搭乗している戦闘機械群]と共に消滅死亡する。
WIZ
製造プラント出力向上
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【兵器生産速度・自動修復速度】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【兵器生産速度・自動修復速度】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
●新入りの役立たず共
「では作戦内容を説明する。一字一句聞き漏らすな!」
エーリヴァーガル総長が恫喝めいた勢いで概要を語る。
「今回、我らクラップヤード中隊は接近中の機甲要塞『カルキノス』を叩き潰すことを決定した!」
戦略ディスプレイに機甲要塞『カルキノス』の偵察映像が表示される。
それは陸/海で運用される巨大揚陸艦だ。自己修復機能に加え、頑強な甲殻内部に製造プラントと武器庫を保有していて、火力と継戦能力に優れる。その一方で艦橋から侵入可能な内部の防衛機構は、搭乗した戦闘機械に依存しているようだ。
「この|鉄屑《スクラップ》を破壊し、連中が泣いて詫びる損害を与えるのが目的だ」
次に、クラップヤードを中心とした戦略マップが投影される。主力であるカルキノスは北方から。更に、東と西からもカルキノスが製造した部隊が接近中だ。
「西方の部隊はノルン隊、貴様ら三名の役立たずに迎撃を命じる」
「「「了解!」」」
ノルンの三人が揃って返答した。
「東方はヨトゥン、ジークフリード、スレイプニール、以上三名の役立たずで対処する」
「「了解」」「了解です」「アイアイ、総長」
「|命知らず共《EDEN》共には北方の主力部隊への対処を要請する。新設したウィーグリーズ隊は奴らを援護しろ」
『分かりました』「はいよ」『了解した』
ウィーグリーズ隊で生身の隊員はスルトだけだ。フレースヴェルグ、エーギルは友好AI制御で動くベルセルクマシン。使い捨てても問題は無い部品とも言える。
「貴様らは命知らず共の下に付けられた安いオマケだ。オマケである貴様らは生きて帰れたら無事役立たずと証明される訳だ。気合を入れていけ!」
『がんばります!』「オッケーボス」『了解した』
「目の良いミーミルは状況を見て動け。各自配置は理解したか、では準備を始めろ!」
|歩く地獄《エーリヴァーガル》は凄まじい笑みを浮かべる。
「愉快な遠足の始まりだ!」
「人も機械も、やり切った後は信じて託すしかない」
トーマスは三機の真新しいウォーゾーンを組み上げて笑う。
「細工は流々、準備は盤石。あとは仕上げや、御覧じろってな!」
君達が対処すべきは北方から来る機甲要塞『カルキノス』とその護衛部隊となる。他方面に関してはクラップヤードメンバーに任せておけば問題は無い。
問題は初の実戦投入となるウィーグリーズ隊だ。リーダーを務める人型格闘機のスルトに戦闘機型のフレースヴェルグと戦車型のエーギル。フレースヴェルグ以外は実戦経験の無い新兵同然だ。彼女達のフォローをしておいた方が良いだろう。
そして、合体形態であるウィーグリーズをいつ、どこで、どう使うのか。劣悪だった機動性に関してはかなり改善され、少なくとも改修前のスルトと同レベルまで向上している。まあ、スルト自体の機動性が改修されたので相変わらず機動性で一番劣る事に違いは無いが。
主武装としてORCAのインビジブル集束砲を流用した大型エネルギー砲(結局、名前がまだ付いてない)を装備。近接戦闘ではスルトのヒートサーベル二刀とフライングソード二刀による四刀流。それと、竜漿石を贅沢に使い捨てる一撃必殺のリボルビングバンカーも使える。
遠距離戦ではフレースヴェルグのホーミングレーザーとエーギルのレーザー機銃、四門のバスターレーザーも使用可能だ。火力に関しては申し分が無い。
ウィーグリーズはこの戦闘で目立った活躍が無ければ合体機能を永遠に封印される事になるだろう。また、単純に誰かが撃墜されても当然合体不能になり消える。撃墜された機体も戻ってくることは無い。君達√能力者と違って彼女達は蘇生できない。もっとも、ベルセルクマシンであるフレースヴェルグとエーギルはAIのバックアップはあるし、予備の部品もある事はあるのだが、これで撃墜されるようなら解体処分になるかもしれない。
全ては君達の|行動《プレイング》にかかっている。いつもの事ではあるがね。
スティルフラウ・リーフキィ晴れての実践投入でございますね。
ご三方の基本スペックはわたくしよりも上かと思われますので心配はしておりません。
が、慢心して足元を掬われるのが√WZの常でございます。露払いはお任せくださいませ。
では……『メイド部隊、整列、前へ』
数対圧倒的火力、というのも定石ではございますが、数にはまず数です。
少数精鋭は絡め手がありますとひっくり返されますので。
相手防衛ユニットに対して2対1をベースに他Sfと連携を取って潰します。
ヴィーグリーズと融合指示がありそうなユニットは最優先。
ある程度露払いが完了したらカルキノスの脚部に爆弾設置ないし解体にて細工。
隙を作ってその際に収束砲発射指示をヴィーグリーズにだします。
スミカ・スカーフ(連携・アドリブ歓迎)
【心情】
色々と完成、ヨシ!さぁ本番です。敵はカニ型ですが、砲台を所有しているようですね。動きも多脚であることからそれなりに素早いのでしょう。さて、この戦いでの主役は合体後です。前哨戦でやられないようにして、合体後のドカンを鑑賞しましょう!
【行動】
√能力を使って、脚、腕、砲台、などを狙って敵の攻撃を阻害しましょう。特に遠距離攻撃をする砲台と製造プラントは要注意ですね。一気に攻めるときはためらわずに行きましょう。
また、各員と通信をつないでおいて、使った武器とかで自分が作ったところは解説を挟む役みたいなこともしたいですね。できるでしょうか?
●ナイトヘーレ開門
南北のゲートが開き、クラップヤードの|WZ《ウォーゾーン》が出撃していく。南側のゲートからは東西の部隊に対処する|機体《やくたたず》が、北側のゲートからは|ウォーグリーズ隊《オマケ》とEDENの|命知らず共《EDEN》が出撃する。
『先行して敵の動きを牽制します』
真っ先に飛び出したのは戦闘機型WZのフレースヴェルグだ。その最大速度はマッハ10に到達するが、地表付近での作戦行動時はソニックブームで味方機を阻害しないように超音速域は出さない。それでも十分早いのだが。
『攻撃対象を捕捉した。サーカスを始める』
『こんな上等なドレスを繕って貰ったんだ、たっぷり暴れなきゃ無作法ってもんさ』
アサルトブーストでスルトが続き、無限軌道のミーミルが疾走する。
「晴れての実戦投入でございますね。ご三方の基本スペックはわたくしよりも上かと思われますので心配はしておりません」
|スティルフラウ・リーフキィ《Sf》(静鉄の婦人・h09604)は自身のモチーフでもある対戦闘機械群用ガンナイフ『GK-M29』を構える。
「が、慢心して足元を掬われるのが√ウォーゾーンの常でございます。露払いはお任せくださいませ」
整然と並ぶ25体の|葉鍵メイド隊《カズハチカラナリ》も同様に構える。
「では……メイド部隊、|整列《セット》、|前へ《アヘッド》」
敵陣に向けて鋭く研ぎ澄まされたナイフめいた白のメイドが斬り込む。
『|主砲《バスター》で戦列を乱す』
エーギルが主砲を水平に撃つ。元々は模倣型神威の主武装だった武器。新たにインビジブル収集機を動力源とした主砲の威力はかなりのものだ。レーザーとプラズマ弾を切り替え可能で、プラズマ弾にすると弾速は落ちるが、着弾時に爆発して榴弾のように扱える。
『目標捕捉、ホーミングレーザーで行きます』
上空のフレースヴェルグが撃つホーミングレーザーも元は模倣神威の雷撃だったものだ。電撃の性質は失われたが、純粋な威力は向上している。
『こいつを喰らっときな』
スルトがグレネードを投擲。ばら撒かれた金属片が通信を阻害し、連携を乱す。
『数頼みって事は自立制御出来てないんだろう? こうしちまえばただの案山子さ』
ヒートサーベルが唸りを上げ、防衛ユニットをバターのように切り裂く。
『本当に上等なドレスだ。惚れ惚れしちまうよ』
『そうでしょう? そのヒートサーベルには|火属性付与《エンチャントファイア》の魔法も仕込まれています。通常のヒートサーベルより高温です』
スミカ・スカーフ(FNSCARの少女人形レプリノイド・h00964)はそこに油断なき解説を挟む。焼死したりはしないのでご安心だ。
『これも魔法なのかい? 随分と出力が高いとは思ってたが』
『|炎神《スルト》の名を持つ機体には相応しい装備でしょう?』
『違いないね』
スルトは左右へとステップを踏むようにクイックブーストを吹かし、通信不能状態の案山子を斬り抜ける。
『反応も上々、ちょいと重いがブースト性能でカバー出来ちまうね。いいのかい? こんな笑えるドレスを貰っちまっても』
『もちろんです。そのために作ったものですから』
『こちらの性能も上々だ、ビジター』
エーギルがレーザー機銃を掃射しながら無限軌道で蹂躙する。
『反撃も受けているが、すべて跳弾している。足回りもシミュレーションより軽い』
『それはシズクさんの硬い機械蟹の装甲によるものですね。軽くて頑丈な上に、跳弾しやすい曲線設計。データ以上の生存力です』
『私も低空飛行時の姿勢安定性が向上しています』
『リズさんのフライングソードのお陰でしょう。単なる推力とは違った反重力による浮力は特に低速飛行時こそ恩恵を受けやすいものです』
と、言った具合で各自の実況めいた解説を挟みながらスミカもSCAR-H 435から放たれる魔弾『|部位破壊《クリアランス》』で展開された防衛ユニットの関節を次々と破壊している。
「そのまま前進を。撃ち漏らしはわたくしめが対処致します」
敵を蹴散らしながら地上を突き進むスルト、エーギル、スミカの後方に布陣したSfとメイド隊が対処していく。
「鼠一匹通しません」
|二人一組《ツーマンセル》で防衛ユニットを瞬く間に解体していく。一人一挺のマグナムガンナイフは瀟洒に残り物を始末する。派手さは無いが、奥ゆかしく確かな仕事だ。
「本体はお任せしますので存分に暴れてくださるのがよろしいかと」
『了解さね。じゃあ、そろそろアレの出番かね。フレース、エーギル、準備はいいだろうね?』
『問題ありません。いつでも行けます』
『こちらも大丈夫だ、キャップ。いつでも着地してくれ』
『んじゃ、行くよ!』
エーギルが起き上がる。無限軌道部を残して機体が開き、そこにスルトが着地するように合体する。
『回路同調確認』
『次は私の番ですね』
フレースヴェルグが速度を落としてスルトの背中に着陸する。機体下部を開いて機体そのものを|背負い物《バックパック》のように接続。
『接続確認。ウィーグリーズ、いつでも行けます』
スルトを中心として前後を挟むような形での合体。複雑な接続機構を用いずに最小限の時間で合体を可能にする事によって、戦場での実用性を高めたウォーゾーンを越えたスーパーウォーゾーンだ。
『出力制御およびフィールド制御は私が受け持ちます』
『火器管制はこちらで受け持つ。キャップ、好きに暴れてくれ』
『あいよ、全く頼もしい限りだ』
四つの√の技術を集結した|幻の巨人《ウォーグリーズ》が遂に、戦場に立った。
「おお、遂に合体ですね!」
「雑魚はこちらで対処します。存分に暴れてください」
『じゃあ、突っ込むよ!』
フレースヴェルグの物をそのまま流用したメインブースターが吼える。正面に厚い|結界術《プライマリーフィールド》を張り、カルキノスに向けて突撃する。
「邪魔はさせませんよ」
スミカの動きは迅速だ。迎撃しようとするキャノン砲、ミサイル、毒ガス噴霧器を魔弾『|部位破壊《クリアランス》』で狙い撃ち、迎撃を弱体化する。
『まずはこいつの威力を試させてもらおうか』
フレースヴェルグとエーギルの主砲、バスターレーザー四門を向ける。
『クアッドバスター、ぶち抜きな!』
放たれた四本の閃光がカルキノスの上部艦橋を直撃し大穴を開ける。
『凄い威力だねこりゃ。元から火力が上がる設計だったけど、ここまでかい』
『ゾディアックコアとインビジブル収集機の出力を直結してますからね。マナバッテリーがあるので防御フィールドも同時展開可能です』
『本当にとんでもないものを作ったね』
『キャップ、喜ぶのはまだ早い。こいつはまだ一番笑える玩具を残している』
『使用タイミングはお任せします。エネルギーライン、正常動作中です』
『ここでぶっ放してもいいが、お楽しみの一発を撃つにはまだ早そうだね』
カルキノス本体へのダメージは通したが、内部製造プラントはまだまだ健在なようで開けた穴からもわらわらと敵が現れる。
『あの穴から内部に突入しましょう』
『了解。主動力炉にコイツをぶち込んでやればいいさね』
|レーヴァブランド《レーヴァテインの焼印》と名付けられた最大の武器はまだ出番を待つ。戦場はカルキノスの内部へと移行しつつあった。
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大成功
ドクター・トーマス来おったか、機甲要塞『カルキノス』
予知でスルトら殺したんはコイツやろか? さて、どこのレリギオスのもんやろなぁ。
ま。後方が安全とは言わんけど、鉄火場の前線にうちが出たら邪魔やろうからな。
うちは役立たず共らとバックアップに回るで!
新型機体群の活躍、特等席で見物させてもらおか!
いてもうたれー!
要塞形態に変形されたら外からのハッキングは無効化されるやろうけど、そこから出てくるミサイルまでは守られてへんやろ。
『葉月』の中から『弥生』を中継機代わりに『卯月』の無線通信で制御部分を誤作動させて、空中で自爆させたら周りの被害も抑えられるはずや。
搭乗しとる防衛ユニットも無敵形態の範囲外やったら、動き鈍らせて合体する隙を作ることができるかもしれへん。
電子戦対策しっかりされとっても、現場のWZ戦の最中にリソース割かれたら弱るやろうね。
こっちにミサイルやガスが飛んで来たら人員収容して『葉月』移動させて逃げるか避けるで!
ウィーグリーズ、喧伝チャンスや!
ド派手に大型エネルギー砲・レーヴァブランドを叩き込んでやり!
リズ・ダブルエックスヴィーグリーズ隊の初陣に貢献させて貰います。
勝利と同時に有意な実戦データも取り今後の戦力強化に繋げましょう!
まずは【LXF光翼最大出力モード】使用。
空中戦を主体とし範囲攻撃でウィーグリーズ隊を援護しながら戦います。
敵の【製造プラント出力向上】の効果で快復されるので、味方とも連携しながら止めを刺すことを意識します。
勝負どころで、【レインシステム転換】を発動。
敵の【製造プラント出力向上】を担うプラント部分の一基に、【レインシステム転換】を集中使用して私のレイン兵器としてしまいます。状態異常扱いで10分以内に快復されるとしても、一回暴れて混乱を齎す事は出来るでしょう。一時的に兵器生産が止まるのもメリットです。
レイン兵器化したプラントには、内部からレーザー攻撃や気象操作の雷で攻撃させます。可能ならヴィーグリーズ合体の隙を減らすために使いたいですね。
主武装は大型ブレードを備えたエネルギー砲のLXM。
副武装は各種レイン砲台。特に〈レイン砲台・シールド型〉は味方を守る為に使います。
●Destroy the core
「来おったか、機甲要塞『カルキノス』。予知でスルトら殺したんはコイツやろか? さて、どこのレリギオスのもんやろなぁ」
ドクター・トーマス(『博士』・h07991)はクラップヤード内のWZ整備ハンガーで戦況を見守っている。
「ま。後方が安全とは言わんけど、鉄火場の前線にうちが出たら邪魔やろうからな」
彼女は√能力者ではない。直接前線に出るのは不向きというか、それなりの事情が無ければやるべきではない。
「うちはバックアップに回るで! 新型機体群の活躍、特等席で見物させてもらおか! いてもうたれー!」
『さて、突っ込むにはまだ敵の数が多いね』
クアッドバスターで本体に穴を開けたのはいいが、それをカバーするようにプラントで生産された雑多な雑兵がわらわらと湧いて来る。
『分離して叩く事を提案します』
「いえ、その必要はありません」
リズ・ダブルエックス(ReFake・h00646)は敵の残骸をまき散らしながら地上に降り立った。
「私が道を拓きます」
|LXF光翼最大出力モード《フライトアーマー・オーバートップ》状態で空中の敵を駆逐した後だ。
ヴィーグリーズ隊の初陣への貢献。勝利と同時に有意な実戦データも取り、今後の戦力強化にも繋げようと言うのが彼女の意思だ。
無数のレイン砲台を自在に操るリズは圧倒的な手数の多さと、空域支配力を持つ。どうしても耐久力面を削らなければならない空中型の雑兵は彼女にとって的でしかない。
「分離したらエーギルさんを回収しなければならないでしょう?」
『確かにね。今のこいつなら低高度の運動性はそこまで悪くない。空中から突っ込んだ方が楽ってもんか』
カルキノスは更に敵を増やし続ける。一刻も早く根本を断たなければどうしようもなくなる。
「地上の残敵掃討は我々にお任せを」
「一つでも多くの砲台を黙らせておきます。行ってください!」
スミカとSfも地上の敵を掃討していくが、いくら破壊しても次から次へと敵が増え続ける。
「しかし、これだけの数を作れるのならなぜ事前に作ってから攻めてこないのでしょうか?」
『そら、保有できる戦力が決まっとるからや』
トーマスの通信だ。
『まるで際限なく数を増やしてるように見えるやろけど違うなぁ。よう見てみなはれ。戦わずに引っ込んでく奴がおるやろ?』
トーマスが指摘したように、一部の敵は戦わずに出て来てはすぐに引き返して行く。残骸を抱えて。
『材料も無しにいくらでも数を増やし続けるなんて、そんな都合のいい事はあらへん』
「なるほど」
「そう言う事ならば」
スミカとSfは狙いを変えた。拠点に近寄る敵ではなく、奥へと斬り込み残骸を回収する敵を優先して排除する。
『そうそう、そうすると敵からしてもアンタらを無視する事は出来へんようになるわけや』
拠点に向かって進軍していた敵が引き返し、スミカとSfのメイド隊へと標的を変え始めた。
『と、言うても全部がこっち狙わんようになる訳やあらへん』
『つまり、私の出番という事だ』
拠点に近寄ろうとする敵をレーザー狙撃銃が撃ち抜いた。ミーミルだ。
『こちらに近寄る敵は任せてくれ。どの敵が寄って来るかは見えている』
『了解。ではこちらは|残骸漁り《スカベンジャー》を優先して排除します』
「行きましょう、レイン精霊達!」
リズが従えるレイン砲台が空中から攻撃しようとする敵を次々と排除していく。鎧袖一触だ。
『地上の味方を援護します。ホーミングレーザー、発射!』
そのお陰でヴィーグリーズは空中の敵に対処する必要が無い。フレースヴェルグの武装の一つ、ホーミングレーザーで地上から空を狙う敵の排除に専念できる。
『流石に音速超えは出来ないけど、人型WZとしちゃ悪くはないスピードだね』
そもそも人型WZは簡単に音速を越える事は出来ない。ソニックブームにどうしても阻まれるからだ。戦闘機のように物理的な形状を音速超えに対応させるか、リズやフレースヴェルグのように音速を越えるための装備を持つ必要がある。
『現状なら理論上はヴィーグリーズ形態でも音速超えは可能ですよ?』
そう、フレースヴェルグにS.C.F.があるという事は、ヴィーグリーズでもS.C.F.を使えるという事である。
『やめとくよ。音速超えの訓練なんかしちゃいないからね』
越えられるという事と、超えた状態で戦うという事は天と地の差がある。元から超音速域での戦闘が前提になっているのはフレースヴェルグだけなのだから。
「私としても、超音速戦闘はお勧めしませんね。1ミスで即死しますので」
模倣神威襲撃の際に、リズは|大型推進器《ヴァンガードオーバーブースト》での超音速戦闘を経験している。ぶっつけ本番で超音速戦闘が出来たのは、その環境を普段通りに変える√能力と先導する奴がいたからだ。
まあ、あの時先導した奴は超音速域の戦闘訓練などしていなかったはずなんだが。
「それよりも、そろそろ到着します。突入の準備を」
敵の迎撃が厚くなる。カルキノスの本体はもう目の前だ。
『あいよ、じゃあもう一発クアッドバスターで吹っ飛ばしてやろうかね』
「合わせます」
ヴィーグリーズが四門の砲身を正面に構え、リズのレイン砲台が〈|LXM《LZXX Multi weapon》〉を軸にフォーメーションを組む。
『ぶち抜け!』
「貫きます!」
二人の砲撃が進路上の敵を排除した。だが、カルキノスの本体にはダメージが通っていない。要塞形態に変形した事で、外部からの攻撃を遮断したのだ。
だが、これでいい。突入経路は既に確保できているのだから。
「いくら無敵状態と言っても、もう既に空いている穴をふさぐ事は出来ないでしょう?」
先にヴィーグリーズが大穴を開けている。外部からの干渉が不可能と言っても、それはカルキノス自体への攻撃が無効化されるだけ。しかも、手駒であるプラントで生産された兵器を大量消費してしまうデメリット付きだ。
「突入前に応急修理を済まされてたらこうはいきませんでしたが」
『羽虫と侮られてたんだろ。油断してくれるんなら好都合ってもんさ』
そう、カルキノスは侮っていた。圧倒的な数で飽和攻撃を仕掛けてしまえば対処は出来ないと。穴を開けられたとはいえ、中枢へ行くにはまだ遠い場所。内部に飛び込まれた所で袋叩きにしてしまえばいいと。
『BANGだ』
ヴィーグリーズがグレネードを投げる。|閃光《フラッシュ》と|超音《ソニック》だ。事前に目と耳を塞げば効果は無い。それが出来るのは投げる側だけだが。
「ええ、出来ればこのまま油断しててくれると助かりますね」
〈LXM〉を大型ブレードモードにして待ち構えていた敵を紙切れの様に寸断するリズ。
『中に飛び込まれちゃそうもいかないだろうけどね』
『フライングソード、格闘モードです』
二刀のヒートサーベルと二振りのフライングソードによる四刀流で敵を蹴散らすヴィーグリーズ。
「この先はシンプルな殴り合いになりそうですよ」
『はっ、上等さね。コイツはそれが一番得意なんだ』
「新手が出て来なくなりましたね?」
「本体が要塞形態になったようです」
外で応戦しているスミカとSfの方にも戦況の変化が訪れる。新たな防衛ユニットが外に現れなくなり、砲塔からの砲弾と大量のミサイルで圧倒する……はずだったのだろうが、スミカの手で事前に破壊されているので対処不能なほど大量ではない。
厄介なのは神経毒ガスの方だろう。|少女人形《レプリノイド》に効果が無いようなものを使うはずも無く、吸い込めば一瞬で行動不能になる。
「外に出ている戦力はかなり減らしたはずですが、この状態で|残骸漁り《スカベンジャー》に出て来られると厄介ですね」
もちろん、自身の配下には作用しないようになっている。神経毒ガスをばら撒く事で残骸漁りを邪魔されなくする気だろうか?
『お二人さん、ちょいと離れておいてな。その位置だと巻き込むかもしらんで』
トーマスの通信だ。
『何か策があるんですね?』
『もちろんや。わしはいつでも策は万全や』
小型移動要塞『葉月』が疾走する。上面から|小型無人兵器《ドローン》レギオン試作品『弥生』を大量に展開。
『要塞形態に変形されたら外からのハッキングは無効化されるやろうけど』
トーマスは嗤う。
『そこから出てくるミサイルまでは守られてへんやろ』
展開されたミサイルが急回頭する。展開済みの残存防衛ユニットと、残骸漁り目掛けてミサイルが殺到!
「あ、これ全力で逃げないと巻き込まれますね」
「メイド部隊、全力後退!」
ミサイルが次々と着弾し、外に出ているユニットを粉砕する。爆風で神経ガスもより広範囲に散る事になるので二人とメイド隊は急いで後退した。幸いにも事前に警告していたので被害者は居ない。
「派手にやりますねぇ。あのガスが晴れたら残敵掃討はしませんと」
「大体お掃除されていそうですけれどね。突入組は大丈夫でしょうか?」
『心配あらへん。わしはいつでも策は万全いうたやろ?』
「だいぶ奥まで進んだ感じはしますけど」
『そうだねぇ、敵も少なくなってきたし』
内部へ突入し、雑兵を蹴散らしながら進むリズとヴィーグリーズ。
「動力炉の位置は大体分かりましたし、壁を壊して進めればよかったのですが」
橋頭堡構築による無敵の要塞形態は内部の防壁も無敵化している。壁を抜くのは試したが、出来なかった。
「待ってください、|数が減ってきた《・・・・・・・》?」
リズの直感が警鐘を鳴らす。この状況は異常だ。だが、何が?
『敵の数が減っちゃ悪いのかい? 相手に後が無くなってきたんだろう?』
「手負いの敵ほど油断するべきではありません」
そもそも、既に内部に侵入されているのに、何故まだ要塞形態を解除しないのか。生産プラントを稼働し、開けた穴を塞いだ方が有益なはず。
(要塞形態の維持には兵器の消費が必要なはず。無駄に長く展開すればそれだけ戦力が消費され)
そして、気付く。
(内部に居る兵器を、消費する……ッ!?)
「精霊達! 全周警戒を!」
敵の動きより僅かにリズの対応が早かった。内部のあらゆる所から這い出たマニピュレーターをシールド型が受け止め、砲台型が破壊する!
「こいつは内部に居る私達を|コスト《・・・》として消費するつもりです!」
『なんだって!?』
『|結界術《プライマリーフィールド》を最大展開します!』
『キャップ、機銃は使わせてもらう』
即座にフレースヴェルグとエーギルが対応する。機体全周を結界で覆い、接近しようとするマニピュレーターを機銃で破壊する。
『敵の胃袋に飛び込んじまったって訳かい!?』
「こんなのは苦し紛れです!」
そう、本来消費されるべきはプラントで生産された兵器。内部に居るからと言って侵入者をその対価扱いして排除しようなどとはまさしくく苦し紛れの奇策ではある。
「この状態なら生成プラントは稼働できないはず!」
リズは、ここでもう一枚の札を切る事を選んだ!
「レイン兵器だと信じれば、それはもうレイン兵器。そういう可能性もあります!」
|レインシステム《転換レインコンバート》。その場にある無機物を概念的なレイン兵器化し、制御下に置く√能力だ。
「道は私達が拓きます! 全速力で突っ切ってください!」
『あいよ、|命知らず《ビジター》! あんたを信じる!』
ヴィーグリーズは迷う事無くブースターを吹かし、通路を突き進んだ。いたる所でレイン兵器化されたマニピュレーターと解体しようとするマニピュレーターの交戦が起きる。もはやその疾走を止める者はいない。
ついに、ヴィーグリーズの眼前にカルキノスの動力炉が現れた。
『レーヴァブランドだ、一発で決めるよ!』
『その前に、ドクターからのプレゼントです』
『発射体制移行後はしばらく無防備になる。一度しか使えないが、ここで一度使えればいい』
トーマス謹製、トロイウイルスが流し込まれる。無数のウィンドウが凄まじい量の紫煙パーティクルと銀河星雲の運行をリアルタイム演算しつつ、さらに美男子が胎内をイメージした枯山水でゆっくりと舞踊を踊る映像が流れる。映像自体は無意味だが、とにかく大量の演算力を浪費させる事が出来る代物だ。
『よし、やるよ!』
ヴィーグリーズは地面に着地する。三つ折りに折り畳まれた砲身が展開し、インビジブル収集器が周囲のインビジブルを収束し始める。
『レーヴァブランドモードに移行。ランディングギア、アイゼンロック』
『EMLモジュール全点接続。インビジブルタービン全開』
『チャンバー内、正常加圧中』
『緊急弁全閉鎖、リミッター解除。出力120%』
『『撃てます』』
『BINGO!』
圧縮されたインビジブルが一気に解き放たれる。元々ORCA用の主砲だったそれを無理矢理とは言え搭載したその一発は世界を白く染め上げる。
悲鳴にも似た金切り音が響き渡る。天に向けて、純白の柱が昇る。その光景を|役立たず共《クラップヤードメンバー》も|命知らず共《EDEN》も見上げていた。
高高度で指向性を失ったインビジブルが上空で花開く様に霧散する。勝利へと繋がる祝砲、綺麗な花火だ。
『終わったようだね』
ヴィーグリーズの眼前には何もなかった。空間ごと削り取られたかのようにカルキノスだった物の残骸が残るだけ。
『どうや、総長はん。あんたの|玩具《・・》、ええ仕上がりやろ?』
『おまけにしては悪くない働きだ。役立たずも役立たずなりに役に立つ事が証明された』
クラップヤードの屋上でその全てを見守っていたエーリヴァーガルが笑う。
東西の敵戦力は既に全滅済み。残る北主力部隊は奪われたミサイルでほぼ壊滅した所に地上組がとどめを刺して無事全滅。
『家に帰るまでが遠足だ! |ゴミ《残存戦力》はきっちり持ち帰れ!』
ヴィーグリーズ隊の評価はもう聞くまでも無いだろう。個々の戦力評価は期待値以上。無駄と言われた合体形態も大幅に向上した機動力と、圧倒的なまでの火力を得た。
これはクラップヤード中隊全体の戦力評価を向上させ、より強力な敵から狙われるようになるだろう。だが、それは他拠点への攻撃を間接的に薄める事に繋がる。
カルキノスの残した大量の|残骸《スクラップ》は回収され、積み上げられる。いつの日か戦力として運用されるかも知れない。
これは、第49WZ中隊『クラップヤード』の日常の一頁だ。
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大成功