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ちょこっと、一回休み

#√妖怪百鬼夜行 #ノベル #バレンタイン2026

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 黒猫亭では、二人の少女によるのんびりとした時間が流れていた。
 ころころ、とサイコロの転がる音。とんとん、とコマを進める音。がやがや、とラジオの響く音。
 それは普段と変わらない、友人と過ごす穏やかな一日。

 春はもうすぐ、と噂では聞くが寒いものは寒い。まだコタツを手放すことはできない。夜久・椛(御伽の黒猫・h01049)と雪代・千景(雪風の如く・h09248)はぬくぬくと身体を温めながら、すごろくで遊んでいた。
「一、二、三、四……なになに?」
 コマを置き、すごろくのマスに書かれたテキストを覗き込む椛。
「『バレンタインの日。家族からチョコをもらう。一回休み』……? えぇ、なんで一回休み?」
「ゆっくりしろっていう、リア充イベントなんですよきっと」
 そうなのかな、と尻尾のオロチとともに微妙そうな顔を浮かべる椛に、はは、と千景は笑う。
「昔のすごろくって、なんか理不尽なイベント多いですよね」
「ね。よく分かんないことでお金取られたり、唐突に増えたりね」
 そう言いながら、籠に積まれたみかんに手を伸ばそうとしたが、ふと、椛の手が止まる。ラジオでちょうどバレンタイン特集の話題が流れ始めたからだ。千景も同じくして、ぴくりと反応する。
「やー、そう言えば、今日もバレンタインでしたね」
「ん、今日は何処も賑わってるみたいだね」
 募ったお便りを読むラジオパーソナリティの陽気な声。その内容は、聴いているだけで甘ったるいったらありゃしない。
「私たちは自宅でのんびりって感じだな」
 オロチの言葉に、椛も千景も頷いた。外に出たところで寒いし、予定も特にない。それなら暖かい部屋に籠っていた方が断然いいのだ。

 だけど、と、椛はコタツから脚を出して立ち上がる。
「バレンタイン用のチョコ、実は用意してあるよ。千景ちゃんの分も有るから、持ってくるね」
 そう言い、椛が背を向ける。それと同時に千景と目が合ったオロチは去り際に、
「ちょいと、変わり種だが……まあ、味は保証するぞ」
 と、言い残した。
「変わり種のチョコですか……」
 ……ああ、言えなかったな。変わり種じゃないかもしれないけど、自分もチョコを用意してきたってこと。

「おまたせ。せっかくだから、ついでにお茶も用意してきたよ」
「ありがとうございます。……では、私からのバレンタインも」
「あ、なんだ。お互いに用意してたんだね」
 ふふ、と笑いながらお互いに用意してきたものをコタツの上に置く。遊びの合間の休憩タイムだ。
「という訳で、ボクが用意したのはコレ」
 お皿の上に並べられていたのは、たい焼き。まだほんのりと温かい。
「中にはあんこの代わりに、ガナッシュ風味のチョコクリームが入ってるよ。尻尾まで詰め込まれてて最後まで楽しめるよ」
「……たいやき。なるほど、確かに変わり種ですね」
 でも見た目は愛らしい。ではさっそく、と千景は一匹を手に取り齧る。
 外は少しカリカリ、中はふわふわの生地。そしてぎっしり詰まったチョコクリーム。口の中は幸せでいっぱい。
「うん……いいですねー、とても美味しいです。まろやかなチョコクリームが何とも言えないです。お茶にも合いますねー」
「でしょ。他の味も美味しいから、次は別のたい焼きも用意してあげるね」
「おー、それはもう、是非とも是非とも」
 満足そうにする千景の様子を見ながら、椛もたい焼きを一匹かぷり。チョコクリームが溢れそうになった。

「それでは、次は私ですね」
 たい焼きを食べ終えた千景は、白い箱を開ける。その中から現れたのはテリーヌショコラ。見るからに美味しそうであることがよく分かる。
「この間、お店で食べたのが美味しかったので、買ってきました」
「流石千景ちゃん。お洒落なものを選ぶね」
 食べやすい大きさに切り分け、お皿の上に乗せる。いただきます、とわくわくしながらまずは一口。
「ん……これは確かに、濃厚なチョコの味。なんというか、至福を感じるというか……」
「そうなんです、濃厚で美味しいですよねー」
 これでもかというほどのチョコの味。だけど口溶けはとても良く、なめらか。
 いつまでも楽しんでいたいと思える甘い味に、二人の頬は自然と緩む。まだこれがたくさんあると思ったら、飛び跳ねるほど心が躍った。

 椛と千景。二人の顔を交互に見やり、オロチは頷く。
「ふむ、たい焼きとテリーヌショコラ。どちらも異なる方向性のものだが……友人と美味を共有できるというのは良いな」
 外に出て洒落た場所に行った訳でもない。いつも通り、家の中でだらりと遊んで、その休憩にチョコを食べただけ。
 特別だけど、特別じゃない。他愛ない会話もまた、かけがえのないものだと思えて。
「こうしてのんびりするお茶会も、良いものだな」
「ん、とっても和やかな感じ」
「私も、こういうのは好きですよー」
 そんな、ちょこっとした時間が過ぎてゆく。すごろくの一回休みも、今なら許せる気がした。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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