シナリオ

|龍動鬼城魔怪演義《ロンドン・ウィアードテール》

#√仙術サイバー

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●ミスト・アンド・ダスト
 積層都市ロンドンの最下層はいつでも暗い。
 直上に建造された六層の|都市基盤《ファウンデーション》が天蓋となって陽光と月光とを遮り、上層から排出される諸々の塵芥が降り注いでいるからだ。
 欧州最大の積層都市の栄華の輝きと反比例して濃さを増しているかのような深く淀んだ暗がり。それがロンドンⅠの日常である。
 しかし、当時は植民地であった香港を経由して一早く仙術がもたらされたために雷素崩壊からの欧州復興を主導する立場となった英国、その首都ともなれば最下層であっても多くの人々が合法非合法問わずに住みつき、上層部顔負けの賑やかさを抱いている。
 底知れぬ闇と、それを塗り潰そうとする鮮やかさ。相反するものが同居しているのがロンドンⅠという街だった。

 |神楽火・國鷹《かぐらひ・くにたか》(幻葬のグノーシス・h00960)がゾディアック・サインから読み解いたのは、そんなロンドンⅠの|鬼城《ゴーストタウン》を元凶とする殺戮劇の到来である。

●ウェイト・オブ・フォース
「ロンドンのイーストエンドに、ライムハウスという地域があります」
 國鷹がそう言って指し示したのは、ロンドン市内を横断するテムズ川の北岸の一点だった。そこから東に指を動かしつつ彼は続ける。
「この地域に隣接する|鬼城《ゴーストタウン》、アイル・オブ・ドッグズで突如として大量の妖魔が受肉し、ライムハウスを目指して進行してきています。種別は『鬼顔妖魔』。人や動物の亡骸とインビジブルが融合したものです」
 妖魔妖術士の方には馴染み深い存在かもしれませんね、と一言添えてから、國鷹は|鬼城《ゴーストタウン》と|無法地帯《スラム》を隔てるように指を動かした。
「この辺り――カナリー・ワーフの周辺が迎え撃つのに適しているでしょう。大きな建物が多く、もし戦闘に巻きこまれそうな人がいても逃がす場所が十分にあります」
 ただし、鬼顔妖魔は壁や天井であっても支障なく這い回ることができる。奇襲には十分注意する必要があるだろう。
「√仙術サイバーは武強主義……強さを中心に回っています。従って、最下層にしか住めないような弱者を助けることはこの|世界《√》の掟からは外れる行いでしょう」
 ですが、と國鷹は言い置いて、一同を見回した。
「それでも守らねばならぬものがある、というのが俺の考えです。名誉も冨も得られない戦いですが、貴方達の力を貸してくれませんか?」

●ディープ・ブラック
 鬼顔妖魔の群れを倒すことができた後は、この妖魔大発生の原因を突き止めるために|鬼城《ゴーストタウン》の調査を行ってほしいと國鷹は言う。
「インビジブルが枯渇しているはずの√仙術サイバーの地表部において、大量の妖魔が受肉する程のインビジブルが存在していたというのは少々不自然です」
 すなわち、何者かが何らかの意図を持ってこの事件を起こした可能性が高い。その元凶を探し出し、可能であれば討伐してさらなる事件の発生を抑止する。それが今回EDEN達への依頼であった。
「アイル・オブ・ドッグズの|鬼城《ゴーストタウン》を目指して進んでも構いませんし、逆にライムハウスの|無法地帯《スラム》に向かっても構いません。ですが、分散して行動するのは避けたほうがいいでしょう。できれば皆さんで捜査の方向性を定めておいたほうが良いかと思われます」
 裏で糸を引く何者かが各個撃破を狙ってくるかもしれないのだから。そう話を結んで、國鷹は地図を折り畳んでいく。
「では、√仙術サイバーのロンドンへとご案内しましょう。√EDENの交通機関とは違ってすぐに到着できますのでご安心を」

マスターより

中村一梟
 EDENの皆様ごきげんよう、中村一梟でございます。
 √仙術サイバーから、積層都市の最下層を舞台にしたシナリオをお届けいたします。

●1章
「集団戦」フラグメントです。
 この章の終了時に分岐が発生するため、2章での行先に希望がある方はプレイングや雑談等で表明して頂けると助かります。

●2章A
「集団戦」フラグメントです。
 この分岐では【|鬼城《ゴーストタウン》アイル・オブ・ドッグズへ向かう】ことになり、その道中で出現する新たな敵と戦うことになります。

●2章B
「日常」フラグメントです。
 この分岐では【|無法地帯《スラム》ライムハウスへ向かう】ことになり、ロンドンⅠの最下層で暮らす人々から事件の情報を得るために行動することになります。

●3章
 2章での行動によって分岐します。

 各章のフラグメントと分岐の解説は以上になります。
 それでは、今回も皆様と良い物語を作れることを楽しみにしております。
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第1章 集団戦 『鬼顔妖魔』


POW 邪なる髪は鞭となり人を縛る
【頭部から生える髪の間】からレベル本までの【妖魔鞭髪】を生やす。自身の行動とは別に操作可能で、最大レベルmまで伸び、物を掴んだり、弱い攻撃や【妖力】による拘束が可能。
SPD その脚鋭きこと刃の如く
【蟹のような足】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
WIZ 妖群集まりて人を喰らう
事前に招集しておいた12体の【同型の小妖魔】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[同型の小妖魔]全員の反応速度が半減する。
イラスト 鹿人
√仙術サイバー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

綾織・つづれ
詳しい状況を知るためにも、スラムで現地の情報を得るのが必要だろう、と私は考えている。戦えない者への感傷めいた同情もあるがな。どんな生活であれ、日常が壊れるのは、よく無いものだ。
編まれ解かれ広がるは万色の糸をあらかじめ使用。
宵影織りのアリアドネに乗って戦場を移動、わざと目立つようにして小型の妖魔を集める。丁度良く集まったところで、ロープワークを生かし、糸で、切り裂き縛り、滅茶苦茶にしてやろう。蟹のような足は一本日本使えなくなれば、バランスも悪くなるだろう。絡め取った者同士をぶつけて気絶させるのも悪くない。

糸を切りたければ存分に切れ、妖魔よ。こちらのストックは無尽蔵にあるぞ?

 雷素崩壊が発生した当時、カナリー・ワーフは建設ラッシュの真っ只中だった。
 電気エネルギーの暴走によって様々な計画が頓挫し、仙術機械文明の誕生と共に再び再開発され、そしてロンドンの積層都市化が進むにつれてまた放棄された。
 再生と荒廃を何度も繰り返したこの地域は現在、完成したビルと崩壊したビル、そして建設途中のビルが入り混じるロンドンⅠ屈指のコンクリートジャングルとなっている。

 |綾織《あやおり》・つづれ(綾なす糸のシャトレーヌ・h02904)が妖魔の群れと遭遇したのは、そんな灰色の迷宮の外縁部だった。
(どんな生活であれ、日常が壊れるのは、よく無いものだ)
 つづれは僅かに頭を動かして後方――暗がりの中に灯る|無法地帯《スラム》のぼんやりとした明かりを見る。ジャンク品まがいの仙術機械を駆使してようやく人間の住処としての体裁を保っているそこにも、慈しむべき暮らしがあった。つづれが育った√EDENとは全く様相の異なる形ではあっても。
 彼女は再び視線を妖魔の群れへと向ける。甲羅に鬼の顔をつけた蟹とでも形容すべきそいつらは、大型の個体が√能力によって小型の個体を統率していると見えた。
 大型一体につき小型十二体。武強主義から取り残された人々にとっては絶体絶命の危機をもたらす存在と言えよう。
「熱病のように広がり襲う。運命から逃れる術は何処や?」
 呪文を囁く。暗闇と同じ色をした大蜘蛛の使い魔の背に乗って、つづれは鬼顔妖魔の一団を迎え撃った。
「糸を切りたければ存分に切れ、妖魔よ。こちらのストックは無尽蔵にあるぞ?」
 √能力『|編まれ解かれ広がるは万色の糸《ウィーヴァーズ・フィーヴァー》』を受けたつづれの糸が舞う。名刀の如き鋭さで切り裂き、あるいは数倍の太さの鋼索に匹敵する頑丈さで縛り、吊り。縦横無尽に街路を踊って妖魔どもを打ち倒していった。
 旋風が通り過ぎた後、つづれの周囲には他に動くものはなかった。だが、|鬼城《ゴーストタウン》のそこかしこにはまだ妖魔の気配がある。
 つづれは再び使い魔を駆って、次の敵へと向かっていく。その胸の内に、力無き人々への同情めいた感傷を抱きながら。
🔵​🔵​🔴​ 成功

楊・詩
√サイバーの依頼なので中華かと思ったら倫敦でした。
イヤでもある種当たり前の事象というか何というか……僕も√マスクドの中国(に拠点を構える黑社會もとい悪の秘密結社)で育ちましたし。
そういえば人生初倫敦なんですよね、だから何だって話でもありますけど。

敵は鬼顔妖魔、自在に這いまわる機動性と数が厄介と。
では、こちらも俊敏さで以て対抗します……変身。
(輪焔猫フォームに直接変身、口調も覚醒時仕様に変化)

ククっ。わしゃわしゃと這いまわってご苦労なコトだけど、キサマら如きにかかずらってやる積りは毛頭ないんだ。
(黑宝貝“旋焔双棍フレイムヌンチャク”をブン廻し、猫が如きスピード・身体能力で駆逐しにかかる)

 天穹を覆い尽くす人口の大地が作った暗がりに、|楊・詩《ヤン・シー》(人造邪仙/蛇竜怪人ミズチトーメンター・h06611)が降り立った。
 人生で初めて訪れるロンドン、せっかくだしとくるりと爪先立ちで一回転してみる。インビジブルの枯渇と共に見棄てられた都市は、詩が育った悪の野望が渦巻く黑社會に似ていなくもない。
 足元には灰色の霧。テムズ川から立ち上る水蒸気だろうか。顔を上げれば空中に無数の埃が漂っている。|上の都市《ロンドンⅡ》の基盤から落ちてくるものと、緩慢に崩壊していく|下の都市《ロンドンⅠ》の建物が吐き出したものと。視界を遮るほどではないが、それでもこの空間で暮らし続ければ|尋常の《マトモな》人間の身体は天寿を全うできないのだろうと知れた。
(悪の秘密結社に使い潰されるのとどっちがマシですかね……)
 あるいは、暗闇の中を這い寄る妖魔どもに殺されるのと。どの道を選んでも|袋小路《デッドエンド》が待っていることにある種の共感と憐憫を覚えつつ、詩は闇の中一歩踏み出した。
 彼女の様子を窺いながらじりじりと集まってきていた鬼顔妖魔が色めき立つのが感じられた。どうやら、詩を無力な獲物にすぎないと錯覚していたらしい。
(それでも自在に這いまわる機動性と数が厄介と)
 がさがさと耳障りな音を立てながら迫ってくる妖魔の群れを油断なく見据えつつ、詩は奇怪な燐光を放つ|密封小瓶《アンプル》を取り出し『ソードアトマイザー』へと装填した。
「では、こちらも俊敏さで以て対抗します……変身」
 硝子が砕ける小さな音に続いて怪薬変異刀が起動。詩の体組織――|怪性体細胞《モンス=セル》を強制的に活性化させる。
「ククっ」
 骨格が、筋肉が、神経が歪められていく例えようのない不快感に五臓六腑を撫でまわされながら、しかしそれでも詩は笑みをこぼしてみせた。
「わしゃわしゃと這いまわってご苦労なコトだけど、キサマら如きにかかずらってやる積りは毛頭ないんだ」
 暗闇の中に橙の火が灯る。詩が握り締めたそれは、名を『旋焔双棍フレイムヌンチャク』。
「廻る焔に猫が如き身のこなし、この|速力《スピード》についてこれるか?」
 |輪焔猫《カシャ》の写し身へと姿を変えた詩は音もなく地を蹴り、黑宝貝を振りかざした。
🔵​🔵​🔴​ 成功

鴉丸・雷雨
SPD ※アドリブ・連携歓迎

「ふーん……ならスラムの方に行くとするか」

頭を使うのは苦手なので直感で即決すると【戦術重二輪「スレイプニル」】(要はデカいバイク)を駆って現場に向かう。
自分も決して育ちがいいとは言えないだけに、困窮した者達の助けになりたい、という程度の心情だ。

「蟹か……しばらく喰ってねェなァ」

スレイプニルを大型の個体へ向けて一直線に走らせ、そこからシートを蹴って飛び上がると空中でその目を赤く閃かせ、使用√能力による蹴撃を見舞う。
そこからさらに電磁物理刀「マゴロクE」で大型個体の体表を疾走しながら【切断】で滅多切りに(相手の攻撃は【激痛耐性】で耐える)。

「好きなんだよ、蟹の殻剥くの」

 闇の中、鋼鉄の風が吹く。
 カナリー・ワーフ北部を横断する|A1261幹線道路《アスペン・ウェイ》を、戦術重二輪「スレイプニル」に乗って疾走する|鴉丸・雷雨《からすま・らいう》(|髑髏鴉《SKULL RAVEN》・h07883)。|鬼城《ゴーストタウン》から|無法地帯《スラム》へと侵入しようとする一際大型の鬼顔妖魔に狙いを定めて、彼女は『スレイプニル』を限界まで加速させた。
 エンジンが狂暴な高音で嘶く。気づいた妖魔が身構えて、その背の鬼面が雷雨を正面から睨み返した。薄紅色の胸脚がアスファルトを割って踏みしめる。
「蟹か……しばらく喰ってねェなァ」
 妖魔の脚の形状を見てそんな風に呟きつつ、雷雨は『スレイプニル』のシートを蹴って跳躍した。空中で蹴撃の態勢を整える。
「イナズマァァ……!!」
 唱える声と共に、雷雨の瞳が赤色に輝いた。それは凶事もたらす大鴉の炯眼。
「ドラァァイヴッッ!!」
 赤の眼光に電光の紫が重なる。鉄鎚の一撃と化した雷雨の身体が宙を翔けて、鬼顔妖魔の背甲を打ち砕いた。
 鉄骨のような妖魔の脚が回転しながら吹き飛んでいく。紫電の焦げ跡を地面に刻みつつ着地した雷雨は、すぐさま電磁物理刀「マゴロクE」を抜刀。
 鈍く耳障りな音を立てて、抜き放った刃が鋭い脚の一撃を受け止めた。鬼面の三分の一ほどを喪って隻眼となった妖魔が驚愕したように動きを止める。
「好きなんだよ、蟹の殻剥くの」
 その隙を見逃す雷雨ではない。彼女は刃を返すと妖魔の甲殻に切っ先を突き立て、高周波振動システムを起動。まるで厚紙を切るように装甲を断ち割っていく。
 間もなく鬼顔妖魔が活動を停止し、頽れた。それを見届けてから、雷雨は西の方角へと顔を向ける。
 ライムハウス|無法地帯《スラム》。見棄てられ困窮してもなお諦めない、野心と活力で満ちていることが遠方からでも感じられた。
「ふー……じゃあ|スラム《あっち》の方に行くとするか」
 しぶとく力強く生きている人達の助けに、少しでもなれれば。直感に従って、雷雨は自らの足跡との共通点を探すように西へと進んでいった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

眞継・正信
ルイ君(h05291)と同行・アドリブ歓迎

力無き人々が辛酸を舐める√だとは聞いていたが、実際にこうして他√から救いの手を差し伸べられねばならぬのだね。
どの√であっても哀しみの涙は少ない方が良い。ああ、守らねばならぬものはあるとも。

妖魔……インビジブルが受肉した存在か。なかなか興味深いが、今はその牙を止めねばならないね。
【夜影の茨】で動きを戒めれば壁や天井に這い移ることも出来ぬだろう。逃げ遅れた者が居れば避難を促し、犬型の死霊「Orge」にはその介添えを命じよう。
攻勢はルイ君に任せよう。幾度となくこうして共に戦場に立ったが、今日はいつになく闘志に満ちているね。帯と共に舞う姿は苛烈の一言だ。
ルイ・ラクリマトイオ
正信(h05257)さんと
アドリブ歓迎

武強主義、ですか
強さに限らず、高みを求め己を研ぎ澄ますことは大切なことかと思いますが、その力で弱きを助けないのは…恐ろしいことのように感じてしまいます
拭われない涙、救われ・掬われない哀しみに溢れた世界なのでしょうか

世界に対し憂いの視点を持つが、戦闘には切替えて臨む

「真昼の星の物語」を使用
正信さんに贈られた絢爛帯での攻撃に、アクセルシューズによる足技を織り込んだ攻撃を組み立て、敵を翻弄する

今までも、贈り物を戴いてきましたが、武器を贈られたのは初めてのことで
まるで、戦場でも隣に立つことを望まれているような気がして…その想いに、少しでも応えたいのです

 小型鬼顔妖魔、二十四体。それらを√能力によって率いる大型鬼顔妖魔、二体。
 |眞継・正信《まつぐ・まさのぶ》(吸血鬼のゴーストトーカー・h05257)と|ルイ・ラクリマトイオ《涙壺のルイ》(涙壺の付喪神・h05291)は、じりじりと包囲網を縮めてくる敵と対峙していた。
 前方にルイ、後方に正信という配置。対する妖魔達は凹型の陣形をもって二人とその背後の建物とを包囲している。
 ちらり、とルイは正信を振り返った。厳しい表情で正信は首を振る。それでルイは、彼らが彼らの目的を完遂するためには今しばらくの時間が必要であることを認識する。だがしかし、ただ逃げ回って時間を稼ぐこともできそうになかった。この場を退けない理由が二人にはあるのだ。
 ならば、とルイは一歩前に進み出た。妖魔どもが動く。一挙に包囲網を縮めて数で圧殺する企図が見える。
「ヒトの想いは真昼の星、目に見えなくとも、絶えず光を放つもの」
 声が朗々と、霧と塵芥にくすむ空気を震わせる。|涙壺《ルイ》に刻まれた幾百もの言の葉の連なり。その名を『|真昼の星の物語《カタチナキアイノオハナシ》』。
「それに気づくと、世界は変わる……このように」
 灰色混じりの暗闇を、ルイの√能力が塗り替えた。清澄なる青。この積層都市においてはごく一部の――頂に近い場所でしか見えぬもの。それを下地に星が瞬く。かつて彼に注がれた|涙《心》の数と同じほどに。
 目が眩んだかのように、妖魔達が動きを止めた。その間隙を突いてルイは身を躍らせる。右手が翻ると共に、一条の絢爛たる帯が舞った。
 ルイ自身の妖力を宿して大蛇の如くうねるそれは【早駿賦】。背後に立つ男からの贈り物であった。どこか優美な軌道で小型妖魔の隙間を駆け甲殻類のような脚を絡めとっていくや、次の瞬間妖魔どもの身体が空中へと跳ね上げられる。
(あなたが、戦場でも隣に立つことを私に望むなら……)
 間髪を入れずルイは地を蹴った。爪先に仕込まれた刃がぎらりと光る。
「……その想いに、少しでも応えたいのです」
 その呟きが老吸血鬼に届いたかは定かではない。確かなことは、ルイの両脚が宙に二度弧を描き、小型妖魔の鬼面が悉く断ち割られたことであった。
「――」
 蒼穹を背景に空中闘舞を披露するルイの姿に、正信は感嘆の息を漏らした。彼と共に戦場に立ったことは幾度となくあれど、このように闘志に満ちた戦いぶりを見せたことは何度あったか。
 それはおそらく……否、ほぼ確実に彼ら二人の背後にあるもののためだろう。ならば正信自身も、力を賭してルイの奮闘に応えねばなるまい。
「影よ、絡め取れ」
 √能力『|夜影の茨《ロンブル・デピーヌ》』を発動。星々の狭間から闇色の茨が伸びて、大型の妖魔を拘束し、引き倒す。
「インビジブルが受肉した存在か。なかなか興味深いが、今はその牙を止めねばならないね」
 正信は上方へと視線を投げた。それだけで意図が伝わる。矢のように降下してきたルイの蹴撃が、鬼面妖魔を打ち砕いた。
 二人の連携は数分と経たぬ内に残る妖魔も討ち果たし、そうしてロンドンⅠの|鬼城《ゴーストタウン》が薄闇を取り戻す。
「拭われない涙、救われ……掬われない哀しみに溢れた世界なのでしょうか」
 暗がりに半ば身を沈めながら、ルイが憂いの声を吐く。高みを求め己を研ぎ澄ますことは大切なことだ。だが、その力で弱きを助けないことを是とする武強主義がこの√では正道とされているのが、ルイには恐ろしく感じられていた。
「力無き人々が辛酸を舐める√だとは聞いていたが、実際にこうして他√から救いの手を差し伸べられねばならぬのだね」
 応じる正信の声色も、感慨と呼ぶには重すぎる調子で闇に響く。
「どの√であっても哀しみの涙は少ない方が良い。私もそう思うよ。だが……」
 やもすれば、その姿勢はこの|世界《√》においては善ならざるものと見做されるのだろうか。人々は四端の情すらも失ってしまったのだろうか。
 勝利とは程遠い沈黙に落ちる二人の間に、建物から飛び出してきた影が割りこんでくる。正信が使役する犬型インビジブル『|Orge《オルジュ》』だ。
 勢いよく尾を振る大型犬の後ろから、一人の女性が姿を現した。カナリー・ワーフへとやって来た正信とルイが妖魔に追われている彼女に行き会い、手近な建物の中に避難させたが逃がし切ることはできず、次善の策として敵を迎え撃った、というのがこれまでのあらましであった。
 彼女は何度も頭を下げると、お礼をしたいから居住する|無法地帯《スラム》まで来てほしいと言う。二人は彼女の申し出を受け入れ、ライムハウスへと向かうことにした。
 先導して歩き出す女性。その後ろ姿はどの|世界《√》の住人とも違わないように見える。であるならば――。
「ああ、守らねばならぬものはあるとも」
 正信の呟きは、|鬼城《ゴーストタウン》を満たす暗闇の中を転がっていった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

第2章 日常 『スカベンジャー』


POW 一宿一飯の恩義に従い、用心棒を買って出る
SPD 使えそうなジャンクを掘り出し、金品に換える
WIZ 周辺地域の情勢を調べる
イラスト 仁吉
√仙術サイバー 普通5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

●ダーク・ウォーター
 ライムハウスは|ロンドン中心部《シティ・オブ・ロンドン》の東、テムズ川北岸に位置している。
 第二次大戦前まで|中華街《チャイナタウン》があったこの地域は、ロンドンの水運の要の一つであった。だが、戦火からの再建途中で発生した雷素崩壊、そして積層都市建設によってここはもはやロンドンにとって必要な場所ではなくなり、|無法地帯《スラム》と化してしまったのだ。
 だがそれでも、この街から人の気配が途絶えることはなかった。ライムハウス・ベイシンというマリーナの|船上居住者《ボート・ピープル》を始め、様々な事情から積層都市の「普通」からこぼれ落ちた人々が暮らしている。
 アイル・オブ・ドッグズの|鬼城《ゴーストタウン》に潜む簒奪者の正体や居場所を探るため、この|無法地帯《スラム》の住人から情報を得ることにしたEDEN達。
 言葉と行いで信頼を得るか、金銭で贖うのか。あるいは、簒奪者が|鬼城《ゴーストタウン》に向かう際に残した痕跡を探し当てるのか。
 暗闇にテムズ川の流音が響く中で、第二幕が始まった。
鴉丸・雷雨
POW アドリブ・連携歓迎

前回戦った鬼顔妖魔の残骸をスレイプニルで運んでくる。
信頼性のある情報を手に入れるには、当然ながら信頼を得なければならない。
となれば、同じ釜の飯を食うのが手っ取り早い。
──というわけで、使用√能力で鬼顔妖魔の残骸の「隙」を見つけ出し、電磁物理刀でぶつ切りにすると住人に借りた大鍋に放り込み、市場で調達してきた安いジンと各種スパイスで煮込む。そこへ自前のインスタント麺をはたいて煮込みラーメン……のような汁物にする。

「タダ酒タダ飯だ!ただちょっと聞きたいことがあるんで、食いながらでいいから話を聞かせてくれ」

(子供にはエナドリ)
(得た情報はこちらに来た仲間たちにも共有します)

 火にかけた四川鍋の中で、ぐらぐらと|湯《スープ》が煮立っている。
 |鴉丸・雷雨《からすま・らいう》(|髑髏鴉《SKULL RAVEN》・h07883)はその中に自前の即席麺を放りこんでいく。ややあって、ありあわせの急ごしらえにしては食欲をそそる拉麺――のようなものが出来上がった。
「さあ、食ってくれ! オレの奢り、タダ酒タダ飯だ!」
 調理に使った余りの|蒸留酒《ジン》の瓶を振ってみせながら雷雨が呼ばわると、匂いに釣られた住民達が半信半疑といった表情ながら集まってくる。
「オレはお前の信頼を得たい。となれば、同じ釜の飯を食うのが手っ取り早い、違うか?」
 明け透けにそう言う雷雨を中心に、数人が輪を作った。彼らの全員に椀が渡り、各々のペースで箸を進めていくのを見ながら、雷雨は再び口を開く。
「ちょっと聞きたいことがあるんで、食いながらでいいから話を聞かせてくれ」
 前置きに続けて、雷雨は自分達がここへ来た理由を告げる。アイル・オブ・ドッグズの|鬼城《ゴーストタウン》に大量の妖魔を生み出している何者かがいて、彼女達はそいつを討伐すべく訪れたのだと。
 雷雨の話を聞いた住民達の反応はしかし、劇的なものではなかった。恐慌も狼狽もなく、淡々と「じゃあどこに逃げれば生き残れるか」と話し合いが始まる雰囲気。それで雷雨は、このように強者が|無法地帯《スラム》の生命を収奪していくのがそう珍しいことではないのを知った。
「……」
 名残惜しそうに空の鍋を見つめる子供に|栄養機能飲料《エナジードリンク》の缶を手渡してやりながら、雷雨は再度訊ねる。
「知らねェか? |鬼城《ゴーストタウン》に何がいるのか」
 √能力者に立ち向かうという選択肢を持たない住人達は顔を見合わせるだけだ。だが、かしゅ、とプルタブが開いて炭酸ガスが噴き出す音と共に、子供の声が投げこまれた。
「見たよ! でっかい黒いパンダがいたんだ!」
🔵​🔵​🔴​ 成功

ルイ・ラクリマトイオ
正信(h05257)さんと
アドリブ歓迎

「情報を集める…ということでしたら、この子たちが役に立つでしょうか」

《おはなしあつめ》を使用
一体は通訳と情報整理役として傍に残し、残りは街の路地や水路へ散らし、
怪しい痕跡や簒奪者に繋がりそうな噂を収集させる

助けた女性を送り届けながら礼を述べ、話を聞かせてもらう

「この街のこと……差し支えなければ、教えていただけませんか」

詩霊が集めた噂と女性の話を擦り合わせ、信憑性を見極める
街や鬼城に詳しい人物がいれば紹介を頼み、同じように話を聞く

「一つひとつは小さな言の葉でも、繋ぎ合わせることで見えるものがあるでしょう」

得た情報を整理し、合流後に正信さんに共有する
眞継・正信
ルイ君(h05291)と同行・アドリブ歓迎

無事に助けられた人がいることは喜ばしい。怪我などしていれば「医術」で手当てを施そう。
その合間に日々の暮らしや妖魔の情報など、彼女の話を聞かせてもらおう。

さて、こうしたスラム街を訪れるのは初めてになるが……私にとっては馴染みのある、瘴気に似た空気を感じるね。被害が既に出ているだろうことは痛ましいが、そのぶん話も聞きやすいだろう。
ルイ君と二手に分かれ、【ゴーストトーク】で鬼顔妖魔の犠牲者達を中心とたインビジブル達に、鬼城の情報を聞けないか試してみよう。何故あなたたちが襲われたのか。どういった者がそれを企んだのか。
悔いを晴らす為にも、教えてもらえないかね。

「この街のこと……差し支えなければ、教えていただけませんか」
 |眞継・正信《まつぐ・まさのぶ》(吸血鬼のゴーストトーカー・h05257)は犠牲者を出さずに済んだという静かな喜びを胸に、|ルイ・ラクリマトイオ《涙壺のルイ》(涙壺の付喪神・h05291)が|無法地帯《スラム》の|船上居住者《ボート・ピープル》だという女性と話しながら少し先を行くのを眺める。
 カナリー・ワーフを離れてしばらく。暗がりの向こうに明かりが見えてくる。だが、正信の目にはその灯が霧と塵以外のもので霞んでいるように見えた。
(こうした街を訪れるのは初めてになるが……馴染みのある空気を感じるね)
 それは悲哀と辛苦の痕跡。あるいは瘴気と呼ぶべきもの。その気配に正信は、自分達が来訪する前に命を落とした人々の面影を感じ取る。
 前を行くルイもそれを感じ取っているだろう。なんとなれば、悲哀の気配に関しては自分よりも彼のほうが敏感かもしれない、と正信は思いながら、少し足を速めて二人に近づいた。
「失礼、レディ。もしよければ、他に妖魔の情報や貴女の日々の暮らしについて教えてもらえないかね。今後妖魔共を狩り立て、犠牲者の悔いを晴らす為にも」
 正信の問いに、女性は手首に巻かれた包帯を撫でつつ頷く。そうして道すがらに彼女から聞き出した情報は次のようなものだった。

 鬼顔妖魔の大群が湧き出したのは数日前。
 それに前後して黒服の男と、大きな二足歩行の獣がアイル・オブ・ドッグズに向かうのを見たという噂が立った。
 様子を見に行った人はいるが、誰も帰ってこなかった。

 無事スラムに到着し、女性を住居――上にバラックを載せた一隻のボート――へと送り届けた後、正信とルイは二手に分かれて情報収集を開始した。
 正信は『ゴーストトーク』を用いて「過去」からの調査を担当。そしてルイは。
「ひとつひとつは小さな言の葉も、連ねればやがて物語に……力を貸していただけますか?」
 ルイの詠唱と共に、彼を取り囲むように九体の『|青蓮の詩霊《おはなしのこ》』が顕現した。
「一つひとつは小さな言の葉でも、繋ぎ合わせることで見えるものがあるでしょう」
 詩霊のうち八体が散っていく。残る一体は主に付き添い、その同時通訳能力で聞き込みを補佐、そして地図上に目撃証言のポイントをマーキングしていく。
 そうして完成した地図に、正信が死者から得た情報、そして他のEDENが得た子供達の証言を加えて、ついに二つの事実が判明した。

 一、黒服の男達は今|鬼城《ゴーストタウン》にはいない。
 二、だが簒奪者「大逆獣『クロシロパンダ』」がそこに住みついている。

 であれば、結論はひとつ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『大逆獣『クロシロパンダ』』


POW 黒白無限弾をかわせようか!(いやかわせない)
攻撃が外れるまで、近接範囲の敵をWIZ攻撃「【黒昏覇王弾】」とPOW攻撃「【白陽九星掌】」で交互に攻撃し続ける。
SPD 「「「命奪五獣拳!」」」(大声)
敵に攻撃されてから3秒以内に【超高速の突き】による反撃を命中させると、反撃ダメージを与えたうえで、敵から先程受けたダメージ等の効果を全回復する。
WIZ 陰陽大逆波に耐えられようか!(いや耐えられない)
半径WIZm内の任意の有機物・無機物全てに【陰陽大逆気】を注ぎ、WIZ×1時間活動可能なエネルギーを与える。注ぐ[陰陽大逆気]を1体(人物・武器・乗騎等)に集中すると、対象を【グレートクロシロパンダ】化して硬度強化と【巨大衝撃波】攻撃能力を与え、意思を抑え付けて術者の為に戦わせようとする事ができる。
イラスト 青空皐月
√仙術サイバー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

●犬ヶ島の決闘
 アイル・オブ・ドッグズ。テムズ川が大きく蛇行した地点にできた、三方を川に囲まれた半島である。
 カナリー・ワーフ|鬼城《ゴーストタウン》のすぐ南にあたるここで、一体いかなる計画が実行されたのか。それを類推することは叶わず、今そこには唯一匹の大逆獣だけがいた。
「ほう、汝らがあの妖魔どもを鎧袖一触したと? それは超常――いや、重畳!!」
 すっくと立ちあがったクロシロパンダの体躯はジャイアントパンダの平均体長よりも一回り大きく、二メートル半にならんとしている。
「かかってくるがいい。我が武の糧としてやろう!!」
 パンダの獅子吼が、霧と塵に霞むロンドンⅠに響き渡った。
継萩・サルトゥーラ
中村一梟マスターにおまかせします。かっこいい継萩・サルトゥーラをお願いします!

アドリブ歓迎。
「やったろうじゃないの!」
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ」

√能力は指定した物をどれでも使用ます。
戦うことが好きで好きで楽しく、戦闘知識や勘を活かしてハデに行動します。
楽しいからこそ冷静でいられる面もあります。
多少の怪我は気にせず積極的に行動しますがヤバいときは流石に自重します。
仲間との連携も行えます。
軽口を叩いたりやんわりと皮肉を言ったりしますが、他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!

「さぁ始めようか!」
「応! 黒白無限弾でお相手仕る!!」
 継萩・サルトゥーラ(|百屍夜行《パッチワークパレード・マーチ》・h01201)と大逆獣の咆哮が重なる。
 継萩が放つ一手は『ガンファイア・コンビネーション』。対するクロシロパンダは黒昏覇王弾。共に最初の一撃を起点として連続攻撃を放つ構えだ。
「我が一撃、汝にかわせようか! いや! かわせまい!」
「躱せないかどうか……やったろうじゃないの!」
 継萩が引金を引く。大口径弾の三点射。クロシロパンダに命中。だが、簒奪者の放った黒色の闘気弾もまた継萩に炸裂する。
「――!」
「――!?」
 着弾の衝撃でのけぞる一人と一匹。しかし彼らはどちらも倒れず――第二撃。
「白陽! 九星しょおぉ!」
「よく喋るパンダだ!」
 クロシロパンダの掌底撃が継萩に命中。走る自動車と激突したかのような衝撃――だが|彼《デッドマン》は倒れない。至近距離で放たれたフルオート射撃が乱撃打となって大逆獣を打ちのめす。
「まだまだ――!」
「焦んなや、楽しいのはこれからだ!」
 連続攻撃と連続攻撃、二つの√能力による真っ向からの打ち合い。
「……くっ。やるではないか、人間!」
 クロシロパンダの巨体がぐらりとよろめいて、これ以上の正面激突は不利と悟った大逆獣は継萩の間合いから離脱するのだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

鴉丸・雷雨
SPD アドリブ・連携歓迎

まず【燃料電池用カートリッジ】首筋のポートに差し込んで、燃料電池用の電解質を補給。

「何から何まで暴力で解決する気はねーが、これはアンタを倒さないと事件が終わらねぇ流れかな」

八相に電磁物理刀を構えつつ左眼の【人工複眼ユニット】を起動し、【情報収集】でクロシロパンダの気脈・経絡の流れを読む。
そしてすれ違いざまにそのエネルギー経路のボトルネックに斬撃を撃ち込み、相手の気の流れを乱す。
これを使用√能力として相手の√能力を一時的に封じ、その隙に√能力に依らない近接戦闘に持ち込んで【切断】で斬りまくる。また、相手からのダメージは【激痛耐性】で耐える。あとの描写はお任せします。

 転がるようにして逃げていくクロシロパンダ。|鴉丸・雷雨《からすま・らいう》 (|髑髏鴉《SKULL RAVEN》・h07883)はその隙を逃すまいと追撃を選択。
 義体駆動用電解質が充填されたカートリッジを取り出し、首筋のスロットに挿入。高圧縮された燃料が身体の隅々まで巡り渡っていくのを感じながら、雷雨は大逆獣を睨みつける。
「何から何まで暴力で解決する気はねーが、これはアンタを倒さないと事件が終わらねぇ流れかな」
 手には『マゴロクE』――八相の構え。左眼の機械複眼を起動――気脈および経絡解析モード。
「行くぜ――!」
 電霊駆動型サイボーグが地を蹴った。瞬く間に近接距離へ。体勢を立て直したクロシロパンダが腰を落として構える。
「例え剣であっても、我は退かぬ! 揺らがぬ! 打ち破る! 黒昏覇王だぁん!」
「やらせるか!」
 闘気が渦を巻く。それが収束していく一点を狙い澄まして、雷雨は刃を叩きこんだ。経絡が乱れたところに雷雨の『|√能力相殺機構《ルートキラー》』で触れられて、クロシロパンダの陰陽の仙力が螺旋から拡散へと転化してしまう。
「ぬぅ、行雲流水!?」
「意味がちげーよ!」
 律儀に指摘を入れつつ、雷雨は刃を振るう。嵐のような斬撃の連なりは、確実にクロシロパンダの体力を奪っていった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ルイ・ラクリマトイオ
アドリブ・連携歓迎

黒幕とまみえることは叶いませんか…
この街の悲しみを断つことを思えば、鬼城を進んでいた方がよかったのかもしれません。
ですが、あの時彼女を送り届けたことは間違いではなかった…とも、思っているのです。

今はまず、放置すれば街の脅威となるであろう敵を、退けましょう。

「想蓮飛」使用。
象牙の肌に蓮を咲かせつつ上空へ。
敵の反撃を警戒して距離を保ち、急降下のヒットアンドアウェイで攻撃。
翔天足による急降下の踏みつけを主軸に、接触の瞬間に絢爛帯を走らせて体勢を崩し、そのまま離脱する。

グレートクロシロパンダが出現しても、本体を優先して攻撃する。
眞継・正信
アドリブ・連携歓迎

ふむ、黒幕……とやらには手が届かなかったか。今はひとまず、このパンダ氏を倒さねばなるまい。

あちらは有象無象を【グレートクロシロパンダ化】するというのに、私の手の内にあるものと言えばお前だけだ、「Orge」。しかし期待に応えてくれると信じているよ。
【血の猟犬】と化したOrgeを前面に出し、【陰陽大逆気】で複数の対象をパンダ化させたならば範囲攻撃で動きを抑えさせ、一体のみならば私との連携で対抗させよう。懸念と言えば、Orgeのパンダ化だが……お前の意思は彼に抑えつけられるようなものではあるまい。
「インビジブル制御」でOrgeを支えながら、私自身は「闇に紛れ」て狙いから逃れよう。

 |ルイ・ラクリマトイオ《涙壺のルイ》(涙壺の付喪神・h05291)は大逆獣を焦点から外さぬようにしながら、慎重に周囲を窺った。
(黒幕とまみえることは叶いませんか……)
 |この街《ライムハウス》に降りかかる悲しみを断つという一点だけを見れば、あの時踵を返さずにカナリー・ワーフの|鬼城《ゴーストタウン》を突破し「黒服の男達」とやらを押さえるべきだったのかもしれない。だが、それは「武強の正しさ」だ。ルイ達があの|船上居住者《ボートピープル》の女性を送り届けたことも決して間違いではない。彼らは「武強主義」という摂理に道を譲るつもりがないからこそ、ここに来たのだから。
「クク……どうやら我が力に恐れを成したらしいな。構わぬ構わぬ。脱兎の如く疾く去るがいい」
 クロシロパンダの傲岸な声がする。彼がこの妖魔大発生にいかなる形で関わっていたにせよ、放置すればいずれライムハウス|無法地帯《スラム》に牙を剥くのは明白。
(ならば――退けましょう)
 ルイの視線がクロシロパンダを射貫かんとする。簒奪者はその青色の瞳に断固たるものを感じ、身構えた。
「来るか。ならば先手を譲ってやろう」
 傷ついて尚揺るがぬ不遜。それは己の力量に抱く絶対の自信――武侠が武強たる所以。
「……想いを、空へ」
 睦言のように囁く。ルイの内にかつて注がれた「|心《ちから》」が逆さまの重力となって、彼の身体を上空へと運ぶ。
「上だとぅ!?」
 クロシロパンダの驚愕を置き去りに、ルイは暗闇に塞がれた天頂を目指して翔ける。高度が上がるにつれて彼の肉体が変質していく。
「だが! 我が命奪五獣拳の構えを打ち崩すことはできぬ!!」
 どしりと両後脚を踏み締め、大逆獣がルイを仰ぎ見る。
「華は、地に」
 くるりと身を翻し、ルイは下降へと転じた。重力を味方にしてさらに加速。象牙のように滑らかな硬質へと変じた肌のそこかしこで青い蓮華が咲いては散り、蒼穹色をした彗星の尾となった。
「あの街に手を出すことは許しません」
「何を! そんな権利が汝にあるのか!? 否、無い! 唯我独尊、唯我独強!」
 暗闇を震わすクロシロパンダの咆哮。その目は正確に高速で急降下してくるルイを捉えている。繰り出される拳は狙い違わず彼を打ち砕くだろう。
「フフ……勝った!!」
 大逆獣が『命奪五獣拳』を繰り出さんとした、まさにその瞬間。
「行きなさい」
 血の香りと共に告げる声がして、暗闇の中から青ざめた色をした疾風が飛び出した。クロシロパンダの後脚に噛みついたそれは、|眞継・正信《まつぐ・まさのぶ》(吸血鬼のゴーストトーカー・h05257)に従う『|Orge《オルジュ》』に相違ない。
「なんとぉっ!?」
 反撃の態勢を完全に崩されたクロシロパンダ。ルイは正信の存在を傍らに想いつつ、蹴りを決める。
「ぐわぁっ!!」
 一筋の槍と化したルイの蹴撃に胸郭を穿たれ、大逆獣は震える苦鳴を吠える。その隙を逃さず、死霊犬がクロシロパンダの喉笛に牙を突き立てた。
「――かっ! お……陰陽……大逆波……!!」
 頸椎を噛み砕かんとする『Orge』の身体を掴み、クロシロパンダが陰陽大逆気を流しこむ。灰色の毛並みが悶えるよう波打つが、顎は離さない。
 ルイの心中に正信の意志が重なりあった。渾身の力をこめてグレートクロシロパンダ化に抗う正信の手にそっと触れようとするかのように、ルイは手を伸ばす。
 その手から唐花模様の帯が伸びて、死霊犬を抱き止めた。大逆獣の仙力と想いの力が拮抗する。
「ばっ――かっ――なっ……!」
 鈍い音がして、グレートクロシロパンダの気息が絶える。頽れる熊猫の巨体。役目を終えた死霊犬の姿が解けて消える。
「――!」
 ルイは身を翻すと、正信がいる暗闇の中へと飛びこんでいった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

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