シナリオ

ショコラ・ラプソディ

#√EDEN #ノベル #バレンタイン2026 #挿絵あり

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 ソワソワとしながら、|日南《ひなみ》・カナタは部屋の中を落ち着きなく往復していた。
 普段は異能捜査官としての慌ただしい日常が染み付いた部屋だけれど、今日は綺麗に片付けられてる。
 控えめなノック音が響き、カナタは慌てて返事をした。

「は、はーい。開いてるよぉ」
「カナタン、入るよ」

 ドアを開けて現れたのは、|十六夜・宵《いざよい・よい》だ。
 その両手には、沢山の荷物を抱えている。
 
「宵ちゃん!」
「わわっ、カナタン、危ないよ」

 弾かれたように駆け寄ったカナタを、宵はくすくすと鈴を転がすような声で受け止める。

「今年のバレンタインは一緒にチョコを作ろー! って事で……レッツ・クッキングなんだよ!」
「うん、今日は僕が先生なの!」

 テーブルの上には、道具と材料が並べられ。最後にエプロンの紐を結び合ったら準備万端。

 まずは板チョコを刻み、湯せんにかけるところから。カナタの隣に立ち、宵が手際よく指示を出す。

「まずは湯せんから。鍋の底から泡が出始めるくらいまであっためてね」
「はーい、宵ちゃん先生!」

 濃厚なカカオの香りがふわっと広がり、密室の温度をじわりと上げていく。
 カナタはおっかなびっくり、慎重にヘラを動かす。

「ゆっくりかき混ぜてね。そう、上手だよ、カナタン」

 だが、背後から覗き込む宵の吐息が耳元にかかった瞬間、カナタの手元が狂った。

「え、何……って、うわ」

 ボウルを支えていた指が鍋の縁に触れ、カナタが飛び上がる。その拍子に、溶けたチョコがピチッと彼の頬に跳ねた。

「あ、熱っ……! 顔についた! ひぃぃ~~
「カナタン! 大丈夫?」

 あわあわするカナタの顔を覗き込み、宵は慌ててハンカチを取り出すと、彼の顎にそっと手を添えた。ぐい、と引き寄せられ、至近距離で二人の視線が真っ向から絡み合う。
 頬を拭うハンカチ越しに、宵の指先の柔らかな体温が伝わってくる。ふわりと、チョコの甘さとは違う、宵自身の清潔で甘い香りが撫でた。

「…………近い、ね」
「……カナタンがチョコ、飛ばすから」
「俺のせい!?」

 慌てたカナタが声を上げると、宵はくすっと愛おしそうに笑って、仕上げにもう一度だけ頬を拭った。
 その宵の頬も、冬の寒さのせいではない淡い桜色に染まっている。
 拭き終わっても、顎に添えられた指先はすぐには離れなかった。静まり返った部屋に、カナタの心臓の音だけがトクトクと、うるさいほどに響く。

「……よし、きれい」
「あ、ありがと……」

 指先が離れた後も、頬には宵の体温と甘い余韻が居座り続けている。
 照れを誤魔化すように、二人は次の工程へと移ってく。溶かしたチョコを型に流し込む作業だ。
 選んだのは、手のひらよりも大きなハート型。慎重に傾けたボウルから、とろりと艶やかなチョコが型を満たしていく。その甘い光景は、今の二人の充足感そのもののようだった。

「おおお! いい感じ?」
「うん。とっても上手。完璧だよ、カナタン」
「よーし、早く固まって美味しくなって、帰っておいで~」

 祈るように冷蔵庫へ収めて、あとは固まるのを待つだけ。一仕事終えて「よしっ」と宵が小さく手を叩いた。

「固まるまで、お茶にしよっか」
「いいね! 宵ちゃんとティータイムだ」
「ふふん。実はね……ちょっと奮発して色々調べて、とっておきのお茶とお菓子を用意してきたんだ」

 宵が用意したオランジェットと爽やかなニルギリの紅茶で。穏やかな雑談を交わすだけで、部屋の空気はどこか軽やかに弾んでいく。

 やがて、冷蔵庫から取り出されたのは、しっかりと固まった二つの大きなハート。

「おおおお、すごい!  感動なんだよ!」
「ふふ、本当だね。じゃあ、メッセージを書こうか」

 カナタは迷いのない手つきでチョコペンを走らせた。
 書き上げたのは『宵ちゃんLOVE!』という直球の愛。更にその下に『ごでぃば』と書き足した。

「見て見て、宵ちゃん!  これで一気に高級感が出たでしょ。えっへん!」
「ふふっ……!  カナタン、それ完全にブランド名」

 宵は笑いながら、自分もペンを寄せる。
 ゆっくりと、慈しむように。『……カナタン、大好き♡』という、真っ直ぐな言葉。

 作り方はシンプルでも、ここにあるのは世界中のどんな高級ブランドより贅沢な贈り物。
 二人は照れくさそうに、互いの想いを交換しあった。

「カナタンだーいすき!!!」
「えへへ、宵ちゃんありがう!  これ、一生の宝物……いや、家宝にするから!」
「食べなきゃダメだよ?」
「うん! 大事に、大事に、食べるね!」

 貰ったチョコを大事そうに掲げ、はしゃぐカナタ。
 宵はその眩しすぎる姿を愛おしそうに見つめ、そっと彼の袖を掴んだ。

「……カナタン、ありがとう」

 甘いの香りに誘われるように、どちらからともなく肩を寄せ合った。ふわりと伝わる体温が、触れ合う場所から心まで溶かしていく。
 ​二人のバレンタインの日は、まだ始まったばかり――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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