|M《マジカル》は突然に/『大人』の責任
……誰かを守れる人になるんだよ。
そう言った父さんは失踪して未だ帰ってこない。見知らぬ誰かより、まず私たち家族を守ってほしかった。
私はお父さんを信じているわ。
そんなことを言った母さんは親し気に知らない男性と歩いていた。話があるなんて言っていたけど、どうせ再婚の話だ。
どいつもこいつも、嘘つきばっかり。
道行く人々の無駄な暑苦しさも、能天気なクラスメイトも、何でも相談してねなんて言ってくる先生も、鬱陶しいだけ。
そして今も。私に『何か』を押し付けてこようとする世界は、秘密基地にいた私に、奇妙奇天烈な衣装と重くてギラギラのステッキを渡してきた。
子供のころ父さんと一緒に見ていた、日曜朝の魔法少女みたいに。
(今更、何)
買ってもらったステッキの玩具とよく似たそれが腹立たしくて。
地面に叩きつけようとしたとき。
――聞こえる、悲鳴。
「ほんと、ばっかみたい……!」
私は走り出す。私だけの、約束の為に。
●
「緊急! 緊急! 緊急事態です!!」
大声と共に空より飛来する銀色の影、アクセロナイズ・コードアンサー。
三度繰り返すほど泡を食った様子は、いつも以上の切迫性を感じさせた。
曰く。
√マスクド・ヒーローにて発生する現象、通称『|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》』。少年少女が突如として魔法少女に覚醒してしまうこの現象は、幾度かかの世界で確認されているものではあった。
しかし現在、それが過去に類例が存在しない程同時多発的に発生している。更に厄介なことに、生まれたての魔法少女の心を狙い未知なる脅威『デザイア・モンスター』までもが続けて発生するのだという。
此度星が示した少女もまた、魔法少女に覚醒する運命にある。
少女の名はカレン。少し冷めているが、現代のごく普通の中学生。
しかし、どうやら彼女には複雑な背景があるのだという。
「彼女のお父様は警察官であり、『戦隊ヒーロー』としての活動中に殉職しています。お母様は真実を打ち明けられぬままでしたが、お父様の同僚に諭されそれを伝える覚悟を決めた……ようですがその密談を運悪く目撃なさったようで」
仮面越しでもわかる声の沈みよう。
悪の組織プラグマとの戦いは決して√能力者間だけで行われるものではない。時として、こう言った悲劇も起こりうる。彼女はその被害者だ。
「ですが彼女はお父様と仲が良く、何よりその正義の心を受け継いでいた。魔法少女になるなどというこの奇異な現象を身に受けてなお、彼女は悲鳴を聞き、助けに走り出す」
まさに魔法少女の物語の始まりを告げるような展開。
しかし。
「そして彼女は殺害されます。これが、予知の全容です」
――最悪の、幕引き。
なぜ、いつ、それが起こるのかの全容もわからない。だが確かなことは、このまま事態を放置すれば一人の少女の命が喪われるということだけ。
「ゆえに! どうか、どうか皆様に手を貸していただきたい!」
声を聞き届けた√能力者たちの是非を伺う前に、銀色の仮面はまくしたてるように話し始める。
今少女――カレンは傷心のまま、|秘密基地《・・・・》なる場所に身を潜めているらしい。そして『魔法少女現象』の発生から時を置かず、彼女は悲鳴を聞くことになる。
つまり予めその秘密基地、とやらを探し当てれば、この最悪の結末を打破することが可能となるだろう。予知によれば、秘密基地は住宅地の中であると予測され、彼女の生活圏からそれほど遠くには行っていない。
「ですが、精神的動揺の大きい覚醒前に接触することは避けて頂きたい。別の場所に身を隠した場合、予知の観測外で『デザイアモンスター』が発生するおそれもある。そうなれば犠牲者の数は更に増えると断言できます」
――そして、最後に。
「未来ある娘さんの為に、ご両親は戦っておられた。彼女自身も正義のため戦おうとする善き心を持っている。この輝きを守るため、どうか、ご助力を」
銀の仮面は、深々と頭を下げた。
マスターより
いえし度宜しくお願いいたします、いえし度と申します。
皆様にご満足いただくべく、力を尽くさせていただきます。
●お願い
可能でしたら、マスターページにあります文章傾向、及びシナリオについての部分をご一読いただけると幸いです。
●シナリオについて
√マスクド・ヒーローにて発生しているという、少年少女が突如『魔法少女』になるという『|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》』に巻き込まれた少女・カレンを救助、同時に発生するとされる怪物『デザイアモンスター』の排除を行う任務となります。
また今回は分岐がございませんので、何卒宜しくお願いいたします。
一章・🏠『日常』
救助対象の少女が身を隠しているという『子供の秘密基地』を探すため、各々行動していただきます。
秘密基地は住宅地の中であると予測され、彼女の生活圏からそれほど遠くには行っていない、という予知を提示しておりますので、僻地を飛び回る必要はございません。
街を調査する、というのを想定していただければと思います。
第二章・👾『集団戦』
魔法少女の発生に呼応して現れる怪物『デザイアモンスター』が来襲します。
まだ力を十全に扱えない魔法少女を傷つけないよう守りながら戦っていただく必要があります。また、少女とコミュニケーションをとることも可能です。
第三章・『不明』
現在詳細不明です。
プレイング募集は断章掲載後から行う予定です。
皆様の参加を心よりお待ちしております。
35
第1章 日常 『子供達の秘密基地』
POW
パワーで解決できる行動
SPD
早さが足りてる行動
WIZ
頭を使った行動
√マスクド・ヒーロー 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵
真心・観千流アドリブ連携歓迎
え、接触しちゃダメなんです?
事前に多少距離を縮めておきたかったですが……星詠みが良くないことになるというならそうなのでしょう
では街に隠密状態になった量子天使の皆さんを送り集団戦術でカレンちゃんを探してもらいつつ、街の景色が持つ可能性をDiffusionで発露させ、Focusで遡るように欲しい情報をピックアップするハッキング+情報収集+学習力でお父様の情報と彼女の知らない彼女を取り巻く環境を詳細に把握しておきましょう
正しい情報がなければフォローもアドバイスもできませんからね
●
時刻は十時をまわった夜の街。
道行く人々の群れも疎らになる中で、一人の少女がコンビニエンスストアのイートインで通りを静かに見守っていた。
手元でスマホを触るごく一般的な学生――にも見える彼女は頬杖を突きながら自らの手元、いや瞳の中に集まってくる莫大な情報を処理し続けていた。
神秘金属片治療の出発点ともいえる技術によって再構築された、心清らかなる『天使』たち。その助力によって観測された無数の位置情報。並行して行う|可能性《・・・》の演算とそこから逆算して必要な情報のみを抜き取る作業。
凡そ現行のスーパーコンピューターでは到底為し得ない高度な並列処理をこともなげに片付け、大きい溜息と共に手元にあった甘いスムージーを一吸いするのは、|真心《まごころ》・|観千流《みちる》(最果てと希望を宿す者・h00289)。
本来ならば件の魔法少女の卵、いや今日孵ってしまう雛鳥たる少女・カレンと接触したいと思っていた彼女だったが――懸案された可能性を知り、不服ではあったが情報収集に徹することにする。彼女と言葉を交わすときに、正しい情報を持っていなければフォローもアドバイスも難しいだろうから、と。
そして捜索、調査という事案において彼女に並び立つものはそういない。
(……なるほど)
少女の捜索と並行して行った過去の情報、特に殉職した父親や、彼女の周囲に関する内容を探り終えた観千流は、目を細め俯いた。
彼女の周囲にいる人々すべてに怪しい点などなく、全員がただ人並みに善良で、優しい。一方でそんな人々の輝きが、カレンの中で渦巻く影をより深めてしまっていただけなのだ――ただ一つ、母と父が口裏を合わせ、娘を守るためについた『父親はただの警察官である』という嘘によって。
(『知らない』という不安が、彼女を孤独にしてしまったんですね)
やろうと思えば。
すべての未来や可能性まで観測することも吝かではないほどの能力を持つ観千流とは相反する悩みのようにも思える。だが、その一方で。
愛する自分の家族に『知らない』何かが、無量大数の彼方でもあり得ないが。もし、あったとしたら。果たして自分はすべてを疑わずにいられるだろうか?
詮無き思考。だが、決して少女の孤独を他人事とは思うまい。
早く見つけてあげないと。観千流は、細めた瞼を再び開く。
拡散する情報から可能性を手繰り寄せ暴き立てる|魔眼《め》を一等烈しく光らせ、観千流は雛鳥の行方を炙り出す――。
🔵🔵🔵 大成功
帆瀬・アスナ勝手に頑張って、勝手にいなくなる。残される側の気持ちも知らずに。
ふぅん、くだらないわね。まぁいいわ、未熟な魔法少女が哀れに頑張るなら見に行くのも悪くないわ。
とは言っても、秘密基地はどこかしら? そういうの詳しくないのよね。
とりあえずヤブレターを手伝わせながら、建物に挟まれた狭い道とか、公園の大きな遊具の影とかを探してみるわ。
√能力で追加でヤブレターの数が増やせそうならやってみるわ。なんやかんや物量作戦は強いものね。
※アレンジ歓迎
●
夜の闇の中で歩く制服姿の少女。傍目から見ると危なげに見える独りの姿。
そのままふらりとビルの隙間に消えた彼女は、見えぬ糸で手繰り寄せた不定形の身体にコミカルな顔のくっついた奇妙な生物を両手で挟み込み、囁く。
「さあ、行きなさい」
命令を受ければ一撃で、従順に従う小さな異形『ヤブレター』は、闇に紛れると秘密基地の捜索を行うべく飛んで行く。自身の髪を指先でくるりと巻きながら、|帆瀬《ほせ》・アスナ(テイルズノワール・h12191)は少し気だるげな息を吐いた。
彼女の目的は、未熟な魔法少女の藻掻きを間近で見るのも悪くない、そんな冷淡な思惑ゆえ。
とはいえ、探すことを願われた秘密基地、というものに対して彼女自身詳しい知識を持ち合わせていない。それゆえに、自身の力の根源たるドンヨリ族なる種族の力より生じる異形を集め、しらみつぶしの捜索を行っていた。
小粒を集めようというアスナ自身の思惑もあったが、一方でこの世界は妙に人の心が明るく、適当に集めたとはいえヤブレターたちの力は弱かった。
それはなぜだろうと、考えれば答えは自ずと限られる。
「ヒーロー、ね」
呟きが零れる。
事前に聞かされた魔法少女となるカレンの生い立ちに、アスナ自身も思う所がある。
(勝手に頑張って、勝手にいなくなる。残される側の気持ちも知らずに)
意識せずとも回顧される過去。喪失と失望の記憶、とうに過ぎ去ったことだと折り合いをつけたつもりでいても、それでも未だに払拭できていない感情が未だ彼女の中には燻っている。
アスナが手に入れた|能力《ちから》が、まさしく魔法少女であるのも奇縁か。一方でそれが多くの場合善玉とは一線を画す扱いをされる、闇のものであることも偶然と言えるだろうか。
彼女が手の中で弄ぶ宝石の中でどろりと泡立つような昏い輝きに、自分の表情が反射する。手元の暗がりの中で完全には移り切らぬその中で、僅かに跳ね返る彼女の口元に浮かぶのは、|笑み《・・》。
もし、彼女が希望ではなく絶望によって得た力を振るうことがあるのならば。その時は彼女と深く通じ合えるかもしれない。
或いは身に降り注いだ境遇に一切負けぬ燦然と輝く光になるならば、その時は――。
ふと、気付けば彼女の足元に一匹、小さなヤブレターが張り付いている。
彼女が創作の人員を増やすために自らの能力で呼び寄せていたが、どうやら遅れて現れたらしい。加えて、どうにも自分がらしくない考えを過らせたのも、そいつのせいなのだろうと。
「ちょうどよかった。あなたも手伝ってくれるのでしょう?」
指先で摘まみ上げたヤブレターに、にっこりと。慈母の如く微笑みかけてやれば。
小さな異形は、滝のような脂汗を流すのであった。
🔵🔵🔵 大成功
クラウス・イーザリー(魔法少女、か……)
何の力も持たない少年少女が突然戦う力に覚醒するなんて、良いことじゃない
子供は本来平和な場所で庇護されるべき存在だと思うから
覚醒自体を止められないなら、せめて力になりたいな
機械仕掛けの瞳を使い、呼び出した直後にすぐ透明化させて感覚共有
四方に飛ばしてそれらしき場所を探す
秘密基地というくらいなんだから目立つ場所には無いだろう
公園の遊具の中、建物の隙間、木々の影
そういった場所を重点的に探すよ
流れ込んでくる膨大な情報に頭がくらくらする
でも、この先の悲劇を回避するならやめている暇はない
うまく見つけ出すことができたら、事態が動くまで身を潜めておこう
●
ビルの屋上。
夜の街を見下ろすような位置で、絶えず捜索を行い続ける影もある。
「く」
一瞬掠めた鋭い痛み。それを構わず目を閉ざさないのはクラウス・イーザリー
(太陽を想う月・h05015)。痛みの原因は、彼の用いる|能力《ちから》にあった。
|機械仕掛けの瞳《オートマタ》。九機のドローンと五感を共有し、自らの一部の様にして扱う力。汎用的で強力ではあるが、使用には負荷が伴う。
何より、撹乱や包囲しての殲滅など、戦闘で短期的に用いるならば兎も角。今彼は街の広範囲に散らしたドローンの視覚聴覚を含めた情報と絶えず同期し、その上長時間ぶっ通しで使い続けているのだ。
いくらいくつもの戦場を駆け抜けてきたクラウスであっても、元は人間。技術でカバーできる面はあれど、疲労やダメージをゼロにはできない。
それでも、彼が我が身を削る思いをしながらでも捜索に全力を賭すのは。
(何の力も持たない少年少女が突然戦う力に覚醒するなんて、良いことじゃない)
――多くの一般的な人間が抱く、当然の倫理観。
しかし彼が発する言葉は、それとは少し重みが違う。
√ウォーゾーン。絶滅の危機に瀕した人類は、老若男女その一切が兵士として戦わざるを得ない過酷な世界。そこで彼もまた学徒動員兵として戦い続けてきた、『子供』の一人だった。死や喪失が当たり前の世界で、クラウス自身も少なくない別れと、喪失を経験してきた。
この|√《せかい》は、彼の故郷とは何もかもが違う。
だとしても、いや、だからこそ。誰かを助けたいという善良な動機の中で戦い抜き、成人と呼べる年齢になった今、彼は切に願うのだ。
子供が何かを犠牲に戦うことも、喪うこともあってはならないのだと。
九つの視点、九つの情報。人影のない公園や、廃墟といった怪しい場所を見定めつつ、他の√能力者が捜索していると分かればすぐさま別の地点へと移動する。捜索の網の目を細かく、カバーする場所を増やすために。
そして自分が捜索したすべてを漏れの無いように記憶し、他の能力者たちにも共有するべく記録しながら、彼はつぶさに目を凝らす。
先手を打てる悲劇ならば、持ち得る手札を迷わず切る。
手を伸ばせば間に合うのならば、必ず掬い出して見せる。
くらくらする思考に喝を入れるように固く掴んだ襟元に感じる、ペンダントと赤い宝石の感触が、彼を奮い立たせていた。
🔵🔵🔵 大成功
黒木・摩巳悲鳴を聞いて助けに向かうのは問題ないとは思う。でも、それで死んでしまうとなれば話は別。
まだ目覚めたばかりで戦い方もわかっていない状態で、プラグマと戦うのは危険です。
まずはカレンさんの助けになるように、彼女が動いたらすぐに駆けつけることができるように準備をしましょう。
秘密基地にいるとのこと。
子供が秘密基地を作る場所といったら、大人が普段出入りしないところで、子供が隠れられるスペースがあるところ。空き家や倉庫ですかね。廃棄物スペースもありそう。
正面から出入りするとは考えにくいので、裏口や壁の破れなどを探します。
まずは周辺を歩いて目星を付けておきます。
ゼロ・ロストブルー※アドリブ連携歓迎
ん?ここは…迷い込んだか。
何か起こっているのか…何かの縁だろう、協力させてもらうよ。
子供の秘密基地、か。
雨風は凌げ、ある程度の物を置ける広さはある場所だろうか?住宅地の中なら無人の家や物置、神社、公園…うーん、候補が多いな。
あまり危ない場所には無いとは思うが…はは、悩んでも仕方ないか。やれることをやろう。ひとまず、俺でも立ち入れそうな場所を中心に巡るか。
神社境内、公園の遊具内、橋の下…あとは勘が働いた場所にでも行ってみるか。
何かわかったら能力者達へ共有しよう。
空振りなら、そこは違うという情報になるしな。足で少しでも力にならせてもらうよ。
●
「失礼、少々お時間宜しいですか」
「ん? ええ、大丈夫ですよ」
一人の少女を救うため、動き始めていたのは決して√能力者に限らない。
夜がますます深まる中、一人のスーツ姿の女性が一人佇む男性に対して声を掛ける。
|黒木《くろき》・|摩巳《まみ》(ひみつのおしごと・h02923)。
√能力者ではないが反プラグマ組織に属する彼女は、組織のネットワークによって現在多発中の|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》についての情報をキャッチしていた。
そして、その一人が――構成員と交友のある殉職した戦隊ヒーローの娘となれば、動かないはずもない。自身もプラグマによって両親を亡くし、妹までもがその魔の手に掛かった摩巳にとって、この事件に対するモチベーションが低いことがあろうか。
子供が出入りすることができ、大人は立ち入れない場所。リストアップした候補地を歩く中……彼女が遭遇したのは、唐突に現れた一人の男性。
まさか、プラグマが嗅ぎつけてきたのか。
そんな疑念から隠し持った自動拳銃に手を駆けながら、男性に話しかける。
――そして、彼女が声を掛けたその男性というのが、少し遅れて|迷い込んだ《・・・・・》ゼロ・ロストブルー(消え逝く世界の想いを抱え・h00991)である。
他の|√《せかい》に頻繁に迷い込む彼は、度々、どころか頻繁に様々な事件に関わらざるを得ない状況に陥る。
そして今回も、その例に漏れない、ということらしい。
一見すればただの調査のようでありながらどこか剣呑さも併せた彼女の雰囲気にトラブルの気配を感じた彼は、穏やかな表情を崩さずに申し出ることだろう。
「もし何かお困りなら、自分にも協力させていただけませんか?」
●
数奇にめぐり逢い、行動を共にするふたり。
空き家や鍵のかかっていない倉庫、時に廃棄物を置いておくためのスペースまで。屋根があり、人気の少ない場所を重点的に捜索していく。
場所の選定は摩巳が事前に行った場所を主としていたが、実際の調査で想像以上の活躍を見せたのはゼロだ。
壁や窓の隙間などから侵入できるかどうか。簡単に侵入したとして、人が果たしてここに出入りした形跡があるかどうか。そういったものを科学捜査的なものではなく、その場にある証拠などから的確に判断する。更に記者である彼は伝達も明瞭だ。時間がない中でも極めてわかりやすい資料としてまとめ、共有する。
いくつかの会話を以て、二人は共に同じ目的を持つ者だとすぐに理解し合うだろう。
大人として、子供を守る。根底にある善性は共にあり、そして互いに『保護者』として生きてきたことも大きい理由の一つだ。
元は監視もかねて行動を共にした摩巳だったが、信用できるとなったゼロに対して、詳細な事態を告げるとゼロはふむ、と顎に手を添え考え込んだ。
そして調査の中で、一つ浮かび上がってきたものがある。
子供がいかに秘密基地などと言っても、結局は誰かの私有地であることが大半だ。
多くの人が善良であるこの世界、空き家や倉庫であっても人の目があった。組織の伝手で立ち入りや調査の許可を摩巳がスムーズに行えていたが、情報開示後はゼロも人当たりの良さを生かし世間話に交えて情報の収集を行っていた。
結果。
仲のいい親子がいたのを覚えている、という空き家の管理人がひとり。
聞き取りで行った簡易的な|似顔絵《モンタージュ》が、カレンと一致した。
――身を隠す、という目的だけでなく。
父親との思い出がもしかしたら鍵になるかもしれない。
遊園地? いやこの辺りにそういう場所はない。
公園? それでは逆に候補が広すぎる。
「神社、などはどうでしょうか」
ゼロが一つ、可能性を挙げる。
親子の思い出としてありえなくはないライン。そして何より人の目が少ないとなれば、そう言った場所も候補として十二分にありうる。
そうと分かれば行動は早かった、摩巳は早急に組織に連絡を取り、近隣で可能性のあるものを絞る。すると、片手で数えられる程度に絞られた。
無論それが空振りで終わる可能性もある、それでも、二人は止まらない。
戦う手段を知らぬ子供が、危険に晒されて良いはずがない。プラグマとの直接的な関連性については未だ未知、それでも傷ついた少女を見捨てることなどできようか。摩巳は停めていたバイクに跨った。
「ご協力ありがとうございます、ですがここからは私たちが――」
それは、途方も知れない巨大な悪と戦うがゆえ、|民間人《・・・》を巻き込むまいという配慮。
しかし、その一方で。
ゼロもまた、覚悟を固めていた。
放浪者であり故郷から弾き出された者。そして、元|√能力者《・・・・》である彼は、自らの目の前で起こっている問題から目を背けることができない。心根がそうであるから。そして、それと同じくらいに。
戦う『仲間』がいるのならば、共に立ち向かいたいと思っているから。
「いえ、俺も行きます」
手にしたスマホ。同じ戦場に立つ、違う視点と優れた|能力《ちから》を持つ、『仲間』たちに向けてメッセージを送る。
「きっと俺たち以外にも、|魔法少女《カレンさん》のために戦っている人がいますから」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
星宮・レオナ悲鳴を聞いて迷わず走り出せるカレンさんは良い人だと思う。
だからそんなカレンさんがお母さんの事を誤解したままって言うのは悲しい事だ、お父さんが何をして、どうなったかも知らないままなんて悲しい事だ。
それらをカレンさんが知る事が出来るようにする為にも、まずは秘密基地を見つける。
ロックビースト達を呼び出しての人海戦術。
こう言った時の『探索の心得』を思い出しながら、秘密基地というなら人目につきにくい所にある筈、そういった場所へロックビースト達を|探索《『情報収集』》に向かわせて、見つけたなら後は『目立たない』様にしながら、カレンさんを『追跡』するよ。
●
夜の街を走る影は他にもある。
「どこにいるんだ……」
額に浮かんだ玉の汗を拭いながら、辺りを見回す星宮・レオナ(復讐の隼・h01547)は呻くように呟いた。
奇妙奇天烈、理不尽と言ってもいい現象に巻き込まれた少女。彼女を探すためにレオナはひた走っている。
無論、無策などではない。彼女が手にした神秘の鍵より出る生命、ロックビースト。隼、蜘蛛、狼などの生き物たちがそれぞれの能力を生かし各地を巡回、秘密基地、そして一人彷徨う少女、カレンの捜索に当たっていた。
あまり、成果は芳しくない。夜が深まっているのと同時に、奇妙な空気が街に満ち始めているのを感じる。ただの勘違いか、それともこれが話に聞く『|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》』の予兆なのか。
急がなくてはと、逸るレオナの心中に抱かれた感情は単なる使命感というだけに留まらない。
悲鳴を聞いたら、迷わず助けるために身体が動く。そんな精神性を持つ少女のことを、レオナは尊敬する。同時に、そんな心優しい少女が――父や母のことを勘違いしている現状が、胸を引き裂かれそうなほどに痛ましい。
(母さんの事を誤解したままって言うのは悲しい事だ、お父さんが何をして、どうなったかも知らないままなんて悲しい事だ)
未だ尽きぬ自責の念。自分はヒーローではないと口にし続けるレオナ。その原因は多数あれど、家族への復讐心というものが決して少なくないのだろう。
ならばこそ、目の前で起こるかもしれない悲劇を止めるべく、彼女は走るのだ。
突如、腕時計にも似たモバイル形態の『マグナドライバー』が振動する。脚を止め、共有された映像の中には。
フードを被り、黒髪の内側に白と赤のインナーカラーが僅かに入った学生の姿がある。
「見つけた――!」
彼女こそ、今夜魔法少女になってしまう雛鳥、カレン。
信号を送った隼のロックビーストから送られた映像は生中継ではなく切り抜かれた一部分であり、どうやら一瞬姿を発見したものの、すぐに撒かれてしまったらしい。だが、彼女の姿が消えた付近の状況はわかる。
「……鳥居?」
他の能力者から共有された全体の地図や情報からすぐにピンとくる。街の中でも小高い地形になったその頂点付近には手つかずの自然と、今なお稲荷社がいくつか残っていたはずだ。
走り回った先で、今度は勾配の高い道を行かなくてはならない。
(けど、それがなんだ)
レオナは僅かに震えの来た脚と頬を叩き、再び駆け出す。
決意の炎は消えず、夜を切り裂き加速する。
🔵🔵🔵 大成功
架間・透空※アドリブ連携等歓迎
そんなの、絶対に見過ごすわけにはいきません。
なんとかして、助けないと……!
──彼女の、ご両親。そして、彼女自身の、心の在り方の為にも。
……私、全力で頑張ります!
まずは『子供の秘密基地』を探してみます。
時間が時間ですから、手あたり次第、とはいきませんよね。
ある程度アタリを付けていかないと。
と、いうわけで。
私より土地勘のあるであろう……
ここら一帯のインビジブルさん達に、聞き込み調査を開始します!
この、|鎮魂歌《レクイエム》を以って!
る~らら、るらら♪る~らら♪
鼻歌交じりに歌いながら、インビジブルさんとの情報収集活動に勤しみます。
──教えてください、あなたたちが知っていることを!
斯波・紫遠アドリブアレンジ大歓迎
コミュ力を倍に
僕も記憶のことや養父のことで色々言われたことがあるから気持ちはわかるかも
でも先ずはカレンさんの保護だね
そうすればお母さんとも話ができるのだから
カレンさんの家と学校の真ん中くらいを探そう
秘密基地って言ってるくらいだから人目につきにくい、または入り口が見つかりにくいところが怪しいんだよね
中学生だからそこまで悪いお兄さんお姉さんと仲良くないと思うんだけれど…まぁ、餅は餅屋か
悪い子として駄弁ってる彼らにカレンさんのことを聞いてみよう
知っているのであればカレンさんのお父さんの事件も聞いてみようかな
年が近いと僕とは感じ方や味方が違うかもしれないし
●
ついに手に入った核心的な情報をもとに、調査を行っていたすべての√能力者たちが里山に集いつつある。調査を行っていた中でも真っ先に辿り着いたのは、焦茶の色をした制服姿の少女。
銀の眼差しは、目の前に広がる木々に向かう。吹く風の中でも、瞬き一つないままに。
「ここに、カレンさんが……」
|架間《かざま》・|透空《とあ》(天駆翔姫ハイぺリヨン・h07138)。
彼女も、迷える魔法少女の雛を守るために立ち向かわんとした一人だ。彼女がここまでに辿り着くまでにも、紆余曲折があった。然し、それを語るには少し|時間《・・》が足りない。
(早くしないと――!)
既に予知に語られた|時刻《タイムリミット》までもう間もなく。昇る月は天頂へと向かい、振り返れば見下ろす街並みの灯りも消え始めている。
残る候補は片手で数えるほど。それを、どう絞るか。
透空は、深く、息を吸った。
|Rue《る~》 |la《ら》 |la《ら》, |Rue《る》 |la《ら》 |la《ら》。
ハミングと共に紡がれる彼女の独唱を、騒ぐ風やざわめく木々までもが傾聴する。胸の前で組んだ手が示すは鎮魂と祈り。『|親愛なる隣人とともに《ハイペリヨン・チャネリング》』、呼び声は歌に乗せ、ただ揺蕩う魚影に生前の姿を与える。
――彼女の呼び声に応えしは、スーツ姿の男性。白髪交じりの赤い髪に、穏やかな顔つきの彼は、少しばかり驚いたように目を見開いたが、自身の姿をあらため、納得したように頷いた。
呼び出された人物に、透空は問おうとするだろう。
この辺りで、女の子を見ませんでしたか。或いは、昔親子二人で神社に通っていた話に聞き覚えはありませんか、と。
実体化したインビジブルの男性は言葉を話すことはないが、すうと導く様に歩き出す。彼を追っていけば、やがて参道と思しき鳥居が見えてくるはずだ。鳥居の左右には年季の入った稲荷の像が飾られている。
――だが、しかし。
「……そんな」
鳥居の奥、階段が続くはずの道には焼けた倒木が倒れ、進むことができない。
インビジブルもこれを知らなかったのか、ただ倒れた木を見つめ立ち尽くすばかり。
折角足取りを掴めたのに、どうすれば、と透空が甲が白むほどに手を握り締めた直後。
「あーそっすそっす、ココすよ」
●
無数の足音と、人の気配。はたと振り返った彼女が見たのは、制服をだらしなく着崩し、耳にはピアス、首にはシルバーと、どうみても|ガラの悪い《・・・・・》雰囲気の高校生と思しき年代の男たち。
一体、何が。そう思った直後その群れの中から一人様子の違う男が歩み出る。
「道案内までしてもらって悪いね」
淡い紫の長い髪で片目を隠した、学生の中で一人成人済みの男性。ぱっと見る外見だけで言えば大学生程度に見えるが、所々の所作にすら隙の無い立ち振る舞いは『大人』としての年季を感じさせる。
一瞬、金色の瞳で透空を見れば、柔和に微笑んで彼は言う。
「あ、彼女にも最初から教えてあげて貰ってもいい? 彼女も、あー……|同僚《・・》みたいなもんだからさ」
そう言った彼が透空に、不良少年たちから隠すようにして差し出す名刺には、『清水音羽事務所調査員兼事務・|斯波《しば》・|紫遠《しおん》(くゆる・h03007)』――と、名が刻まれていたのだった。
曰く。
少年たちは近所の高校の所謂ちょっとした不良。喧嘩も酒もクスリもやらない、だが深夜に屯してつるんでいた。
最近、別の学校のバカが人目につかない神社で煙草をふかして、火の不始末で木を倒したなんて話を聞いた。そこは昔から火伏せ・厄除け・安全祈願の神社で、警官や消防団なんかがよく参っていた。皮肉だな、と仲間内では笑っていた。
補導とはいかないが、頻繁に夜見回って顔を合わせる、お節介な警察官のオジサンもそこのお守りを持っていたから、知っていた。
……だが、数か月前からそのオジサンの姿を見かけなくなり。
代わりに、黒髪にインナーカラーをいれた中学生の女子が、山に登っていくのをみるようになった。
「ココ、ちょっと先にハイキングコースみたいなのがあって、その横道から神社まで直でいけるんすよね。けど流石に暗いんで明日とかの方がいいっすよ」
最後にそう言って、少年たちは立ち去っていく。それを紫遠は手を振って見送り、流れで話を聞き終えた透空もまた緊張気味に頭を下げて。
彼らの姿が見えなくなったところで、二人は互いに頷き合った。
●
とっぷりと夜が暮れた山道を、二人はひた走る。
春を待ち望み僅かに顔を出す緑を縫い、今なお乾いた空気の中で枯れた枝が割れる音を置き去りに。
透空は願う。魔法少女になるという少女、そして彼女を愛した両親。彼らの心の在り方のためにも。自分が|欠落し《うしなっ》てしまったものを、これ以上誰かが喪わないためにも。この手が、届いてほしいと。
不良少年たちが去るのとほぼ同時に、消えてしまったかのインビジブルの男性にも、託すように、頭を下げられたのだ。ここまで繋いだバトンを、落とすわけにはいかないと。
……そしてその少し後ろから追う紫遠は、タブレットを開く。
彼自身も、|欠落し《うしなっ》たもので思い悩んだことはあった。言葉なくとも周りからの視線、感情に振り回されたこともある。それでも養父、時間、様々なものが傷を徐々に塞いでくれる。きっと彼女もそうなる、人に手を差し伸べられる強さがあるならきっと。だからこそ、少女の未来を明日に繋げなくては、と。
しかし、奇妙なことがある。
他の√能力者達からの情報を纏めている中で引っかかった|記憶《モノ》。
少女カレンの顔写真。特徴的な黒髪に、赤と白のインナーカラー。
そして、赤髪の父親と、白髪の母親。
視界の端に映った、恐らく前を行く少女が能力によって呼び出したインビジブル。その姿がその片方によく似ていたような気がしたが。
(いや――まさかね)
――そして、どれほど走っただろう。雲間と木々の傘が取り去られ、冴え冴えとした月光に照らされた小さな境内が突如として現れるのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『デザイアモンスター』
POW
クレイヴィング・ダークネス
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【欲望のオーラ】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【欲望のオーラ】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
SPD
ロンギング・アーム
【他のデザイアモンスター】と完全融合し、【巨大化した腕】による攻撃+空間引き寄せ能力を得る。また、シナリオで獲得した🔵と同回数まで、死後即座に蘇生する。
【他のデザイアモンスター】と完全融合し、【巨大化した腕】による攻撃+空間引き寄せ能力を得る。また、シナリオで獲得した🔵と同回数まで、死後即座に蘇生する。
WIZ
ヒュプノシス・デザイア
半径WIZm内の任意の有機物・無機物全てに【欲望のオーラ】を注ぎ、WIZ×1時間活動可能なエネルギーを与える。注ぐ[欲望のオーラ]を1体(人物・武器・乗騎等)に集中すると、対象を【デザイアモンスター】化して硬度強化と【暗黒】攻撃能力を与え、意思を抑え付けて術者の為に戦わせようとする事ができる。
半径WIZm内の任意の有機物・無機物全てに【欲望のオーラ】を注ぎ、WIZ×1時間活動可能なエネルギーを与える。注ぐ[欲望のオーラ]を1体(人物・武器・乗騎等)に集中すると、対象を【デザイアモンスター】化して硬度強化と【暗黒】攻撃能力を与え、意思を抑え付けて術者の為に戦わせようとする事ができる。
●
山にひっそりと佇む神社。愚か者が起こした火の不始末で境内への道が閉ざされ、参詣者が少なくなったことで落ち葉などが酷いありさまだったこの場所を、夜毎掃除するのが、中学生|篠杜《しのもり》・カレンの日課になっていた。
掃除は嫌いではない。
父との思い出の神社ならば、苦であろうはずもない。
――どうして。
単調な作業な中で、何度も反芻する疑問。どうして自分の父が、命を奪われなければならなかったのか。せめて父と、最後に話ができていたのなら。頭の中で様々なもしもが加速する。
何よりも。
――もし、奇跡のような力があれば。
失った父を、取り戻せたのかもしれないのに。
少女が微かに、そう考えた刹那。
突如天高く昇った月から降り注ぐ光が一際強く輝いたかと思えば、光の柱が少女の身体を包み込む。柱の内に呑み込まれた少女の身体に、光の帯が張り付いたかと思えば、キラキラという謎の効果音と共に身に着けた制服は全く別物に変わっていく。
赤いスカート、白いブラウス、一方でそれらにつけられた飾り紐や装飾は巫女の千早にも似ていた。
「え、は……? なにこれ、コスプレ?」
突然、意味の分からない変身バンクを経由して着せ替えられたことに戸惑いの声を上げるカレン。すると間を置かず、待ち構えていたかのように、夜の山を絹を裂くが如き悲鳴が木霊する。
カレンがはたと顔を上げる。声のありかを探すようにあたりを見回すが、悲痛に助けを呼ぶ声が二度、三度と繰り返されるばかり。
そして。社の影、本殿の軒下、狛犬代わりの稲荷の像の影から続々と、奇形の怪物たちがその姿を見せる。
不格好な電飾、縺れた樹木、或いは未知なる何体生物。その全ての要素をごちゃまぜにしたような『デザイアモンスター』は、魔法少女として目覚めた少女を見つければ、その腕を伸ばした。
「今の声、あんたらのせい? なら私が……」
カレンは、震える足を抑えながら、それでも眼前の怪異たちに挑みかからんとする。ことだろう。だが、彼女は目覚めた手の力を万全に振るうことなどできはしない。
ここから先は、予知にも見通せなかった未来。
決意に逸る雛鳥を護るための戦いが、始まろうとしていた。
架間・透空※アドリブ連携等歓迎
ッ……急がないと!カレンさんが危ない!
──変身、解除ッ!
女子中学生から、怪人の姿に戻り…
決戦気象兵器を起動し、風を纏います。
急いでカレンさんの下へ!
カレンさんを囲むデザイアモンスターさん達をこちら側に引き寄せる為、
まずは大気中の水分を凝縮したウォーターカッターで牽制します!
勿論、カレンさんに命中せぬよう、細心の注意を払いながら……彼女を風の壁で守ります!
必要があれば、カレンさんを庇うようにして、立ち塞がります!
彼女の事、絶対に守ってみせますから!
モンスターさん達が欲望のオーラを注ごうとするのなら好機です!
その隙を付いて、脳天に|下降流突風《ダウンバースト》を叩き込みます!
帆瀬・アスナヤブレターの報告で現場に向かうわ。
あんな光出されたら私でも気づくし、それに他の√能力者に出遅れてるし。
で、ヤブレターの中で最初に見つけたのはアナタ? へー、さっきの。それじゃご褒美。
√能力【大型ヤブレター召喚】使用
ヤブレターを巨大化させるわ
それでアレが星詠みの言ってた子
死なないようにせいぜい頑張ってね〜(ヤブレターの上から手を振る)
さて、ヤブレターさっき見た私の暗い心も、カレンの今の恐怖心も好きなように取り込むといいわ。
その代わり、しっかり活躍しなさい。あんなちんちくりんな怪物にやられたりしたらどうなるかわかってるわよね。
デザイアモンスターをこっちに引き寄せてからぶん殴らさせる。
※アレンジ歓迎
●
ぐねり、ぐちゃり。
奇妙な動きで以て、腕にも見紛う魔の手を魔法少女は振り払わんとする。
だが杖の振り方もわからぬ彼女に、神秘の力は未だ微笑まない。
ならば。
「――変身、解除ッ!」
|暴風《かぜ》が吹く。森の|中《・》からの息吹はそのままデザイアモンスターを跳ね飛ばし、少女を守る様に立ち塞がる。
|架間《かざま》・|透空《とあ》(h07138)。いや、今の彼女は『|天駆翔姫《ハイぺリヨン》』。
黒紫を八つ裂きにする白き翼の異形、自らの力を惜しみなく使うための形態。そして、少女を守るため、全力を賭す彼女の覚悟の表れだ。
深く身を屈め、胸の亀裂の中央に位置する水色の宝珠に力を籠め、解き放つ。薙ぎ払われる一直線の水は強烈な水圧によって対象を裁断する刃となって、触手の怪異を上下に割った。
うじゅり、とした触手の動きが止まり、油のような体液を流して地面に崩れ落ちる怪物も少なくない一方で、柔軟な身体を活用して身を屈め一部と泣き別れになっただけで済むものもいた。
(数が、多い――!)
注意を引ければ御の字、あわよくば一網打尽。そんな腹積もりで透空が繰り出した技だが、倒れた数よりも続々と湧き出す数の方が多い。下手をすればその重量で崖でも崩れるのでは、そうと錯覚するほどに。
攻撃を受けたものの注目は、透空に集まる。一方で背にした少女には別のデザイアモンスターが迫る。このままでは、どうする。
そんな彼女の葛藤を引き裂くのは――反響する、新たなる|怪物《モンスター》の鳴き声であった。
「ヤ~~ブ~~レ~~タァ~~!」
山からぬっと顔を出した戯画的な図形で構成された顔。眦が下がり気味で不服気にも見えるはずが、一方でどこかニヤケ面にも見えるのは気のせいか。ともかく突如世界観がポップに塗り替わったと同時に、振り被られた巨大な握り拳が湧き出る触手どもの一角を文字通り、ぺしゃんこにしてみせた。
「こら、よく狙いなさい。触手以外を壊したらお仕置きよ」
やわい巨人の頭をぺちぺちと叩きながら。夜空を背景に足を組み腰掛けるは、|帆瀬《ほせ》・アスナ(h12191)。いや、制服から暗夜の如きドレスに身を包んだ彼女は闇の|魔法少女《・・・・》『テイルズノワール』。
唖然とする透空とカレンを見ると、くすりと笑い彼女はひらひらと手を振った。
「こっちはこっちでやらせてもらうわ、死なないようにせいぜい頑張ってね〜」
そのまま、彼女は腰掛けたまま下で蠢く怪物たちを見下ろした。悪意も何もわからない、ただ醜くセンスのない怪物たち。ヤブレターの方がよほどセンスがいい。ならば、お片づけをしてやらなくてはなるまい、と。
自分の暗い心を勝手に引きずり出した分きりきり働け、そう言わんばかりに杖で小突いてやれば、巨大ヤブレターは更に眦を下げ、意気揚々と吼えるのだった。
「ヤ~~ブ~~レ~~タァ~~!!」
●
山肌を削らないようにするためか、黒いオーラでにデザイアモンスターどもを手元に引き寄せては、バッチンバッチン蠅の如くに叩き潰す巨大生物(?)を前に唖然とする透空と、カレン。
「――気、遣わなくていいよ」
先に口を開いたのはカレン。
気持ちが逸っていた。助けを呼ぶ声のことは心配だったし、奇妙な変身に動揺もしていた。自分だけしかいないなら、という使命感じみたものにも突き動かされた。
けれど目の前で行われた文字通り規格外なスケールに、彼女は一周回って冷静になった。
それに目の前の白い、天使みたいな姿の相手が、自分を風で包んでいたのが分かったから。そしてその風に乗った香りの中に、なんだか懐かしいものを感じたから。
だから。
「お願い。お願いします」
――私は、後回しでいい。
助けを呼んでいた子を、助けてあげて欲しい。
……それを聞いた時の透空の心中はいかばかりか。
只、確と頷いて。彼女はその背に翼を広げ、羽搏いた。
夜空を切り裂く白い影へ、己を蹂躙する巨躯の怪物へ。触手の怪物たちは腕を伸ばす。千切れ、潰れた仲間の死骸に再び欲望のオーラを注ぎ込み、より固く、より強く蘇らせるために。或いは死骸をかき集めて融合し、自分たちの受けた攻撃かそれ以上のものをぶつけてやるために。
天気予報をお伝えします。本日の|夜《・》の天気。暴風警報、発令中です。
山に鳴り響く警告、唐突にアナウンスされた気象情報。然し怪物たちにそれを理解する脳はない。ゆえに、逃げることも対策することも叶わない。
どう、と。
強烈な突風によってガタガタと、神社が揺れた。軋む音を立てるのは石畳。次々に、地面にあった落ち葉が、続けて転がっていた小石が、そしてデザイアモンスターが。
強烈な上昇気流によって次々と、晴天の夜空に吹き飛ばされて行く。僅かに空に掛かっていた薄雲を消し飛ばすほどの気流は、そのまま怪物の群れを『ちょうどよく』押し固める。
――ぐるぐるぐと肩を回してパンチを溜める巨大なヤブレターと、下から上に巻き上げた風をそのまま内に吸い込み一気に地面へと叩きつける準備を整えた|天駆翔姫《ハイぺリヨン》。
白と黒とが、交錯すれば。束になった触手ははじけ飛ぶ。その飛沫は細かく散って雨となり、粒は空中で結晶化すると脆く崩れて月光に反射しさらさらと屑になって消えていくだろう。
まるで、星が降るかのように。
そして、降る輝きの中でカレンに駆け寄り。その手を握るのは。
「――もう、大丈夫ですよ」
――銀の瞳に、藍色の髪をした、歳の近い少女の姿。
架間透空は、告げる。
「私たちが、絶対に守ってみせますから!」
一方で彼女たちのやり取りを眺めながら。拗ねるように、或いは愉しむように。ふ、と鼻を鳴らしながら、黒衣の少女は、目を細めるのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
真心・観千流アドリブ連携歓迎
お父さんを取り戻したい……か
犯人に銀の弾丸を撃ち込めば本当に戻って来るかもしれないけど、さてね
敵の√能力に対して早業+カウンターで割り込みマテリアルとGazaerを通した情報収集+学習力で敵の量子構成と弱点を解析
二倍になった能力で敵の可能性を読んで攻撃を回避しつつ干渉弾頭で敵の量子を分解し融合を妨害すると同時に核となる部分を破壊
後はNQボディの気体化で敵をすり抜けカレンさんの前へ、量子固定属性攻撃で空気の壁を作って保護します
始めまして篠杜・カレンさん
私は真心・観千流、貴女のお父さんの間接的な知り合い
知りたいことがあるのでしょう?目の前のこれを片付けたらゆっくり話しましょうか
斯波・紫遠アドリブ共闘大歓迎
フォロー念頭に置く
カレンさんの安全優先
勇敢なのは素敵だけれど、アレが怖いだろう?
それは正常なことだから大丈夫
ここは僕らに任せて
カレンさんの手前あまり炎は使いたくはないけれど…背に腹は代えられないな
最速で仕留めていこう
引き寄せの能力を逆手に取って接近戦へ
範囲攻撃をのせて巻き込めるだけ巻き込んでいく
カレンさんが狙われるならオーラ防御で対応
アリスさんには煙雨で援護射撃をお願い
囲まれて孤立するのは流石にしんどいからね
力の抜き方も前より上手くなったんだから大丈夫
さぁ、燃えるまもなく崩れてしまえ
●
一度、全滅されたにもかかわらず。再び響く悲鳴。
呼応するようにまたも現れ出るデザイアモンスター。実に都合がいいものだ。或いは、どこかで予知にない別の魔法少女が覚醒でもしているのか。
偶然にしては出来過ぎている。全てを悲劇で終わらせんとするかのように。
だが、そんな運命を――引き裂く力を持つ者が、この場所には集っているのだ。
ミチミチと、満員電車もかくやという群れの中ではなから互いに結び付かんとした触手の怪物は、その寸前でばらばらと解けて消えていく。先程は血が流れ、それが輝く塵となる、というプロセスを踏んでいたというのに、今回は根本からバラバラにされてしまったかのように唐突に、その身体が崩れたのだ。
腕のみが崩れたもの、核を砕かれその全身が徐々に消えていくもの。どちらにせよ邪魔くさい怪物の群れを幽霊の如くすり抜けて。然し確たる実体を持ちながら。呆けるカレンに話しかける、少女の姿。| 真心《まごころ》・|観千流《みちる》(h00289)は静かに語り掛ける。
「始めまして篠杜・カレンさん」
彼女は言うだろう。自分は、お父さんの間接的な知り合いであると。
それを聞いた彼女の目の色は変わる。驚愕、疑念、何より強い衝動に。
勢いのまま肩を掴もうとするカレンの手を、先んじて観千流は握る。すると彼女の周囲には不可視の護りが築かれるだろう。元々あった白き風の護りの更に外縁を包み込むのは同じく分子で構成された、観千流のみがすり抜けることのできる障壁だ。
「目の前のこれを片付けたらゆっくり話しましょうか」
どこか超然とした様子で微笑みを浮かべ、再び彼女は怪物の群れへと身を投じる。触れることも叶わない触手たちは何が起こったのかわからぬまま、塵に還されていくことだろう。
目の前で活躍する奇妙な力の持ち主たち。しかしそれでもまた怪物の中に向かおうとするのならば、無意識に手を伸ばしてしまう魔法少女、カレン。
しかしそれを、横から諫める者もいた。
「ストップ」
大人の落ち着いた声色。見上げれば、触れるでもなくそっと手を柵のように差し出している、紫髪の男性。その手に持つのは、抜身の日本刀。
武器のことを差っ引けば、着こなしといい雰囲気といい、それこそお洒落な年上の男性くらいにしか見えない。が、薄々分かっている。
あの怪物たちがうじゃうじゃと湧き出す中でここに辿り着いている時点で、彼もまた只者じゃないのだろうと。
「怪しいものじゃ……いや、まあ、いいか」
どうにか気の利いた言葉を、と思ったあと少し悩んだ後、それはいいかと頬を掻く。こんなわけの分からない状況に置かれて、命を狙われて。そしたら突然助けに来る同じ位わけのわからない力を振るう人々。戸惑うどころかパニックになってもおかしくないのに、少女はこれほど冷静だ。きっと彼女も強い子なのだろう。
当時の自分だったら、とありきたりな連想をしかけてしまい。少しだけ乾いた笑いを浮かべてから。
「ここは僕らに任せて」
|斯波《しば》・|紫遠《しおん》(h03007)はそう言って、カレンの視界に入らないよう背後に回る。こそこそと近づこうとする怪物どもに、相対するように。
●
光の瞬きが山の表面で浮かぶ。奇怪な鬼火として後に語られるそれらは、二人の異なる異能によるものであった。
地より放たれ微かに残るそれは、『炎』。
元は火の不始末により回り道をさせられたが、然し自身の最大の武器はコレだと。紫遠が宿すは彼に憑く狗神の炎。|業火絢爛《ゴウカケンラン》――とはいえ技の名に反し、今宵振るう二振りに纏うそれは轟々と燃え盛るようなものではない。
薄く刀身が放つ微光であった。
ぐん。と。掴まれ引き寄せられるような動きで迫る怪腕の横薙ぎが紫遠へと迫る。それに向けてぐるりと剣舞の如き動きで回れば、両手の二刀が肥えた樹を野菜でも斬る容易く切り裂いた。泣き別れとなった腕の先は、切断面より侵入した白炎によって内側から焦がされ、腕の外へと燃え広がることなくザラザラと炭になって消えていく。
そして、当然。内から焼かれるということは、本体と繋がる根元も同じ。
蚕食する毒の如き性質を付与された炎が燃え広がる前に、根元から切ってさっさと逃げ果せようとすれば。
「そこ、危ないよ?」
よろけるような後ろ飛びで突っ込んだ先には、紫色の濃霧。
あれと気付いて身震いすれば、サイコロステーキよりも細かく刻まれ、そのままどちゃりと地面に積まれる触手|だったもの《・・・・・》。
どこかで助けを呼んでいる人物のことも気がかりだった紫遠は、自身をサポートするAI、『Iris』に依頼しレーザーによる包囲網を敷いていた。一定領域外から出ようとすれば、文字通り霧に撒かれて神隠し。
また、効率的に処理するために敵の融合を敢えて見逃し、引き寄せようとする敵にワザと引っ張られ、そのまま刀と脇差で以て触れたものを炭化させる炎を内側で燃え上がらせる。死後炭から甦ろうが、燻る炎が消えることはない。死した傍からまた黒々と焼け死ぬだけだ。
……火伏の神の御前、しかも巫女っぽい魔法少女になったカレンの前で使うのも忍びなく、遠巻きの敵を倒そうと思った紫遠だったが、彼女から離れたところにもこれだけぞろぞろと群れをなしていることに違和感を覚える。
(……なんか、伏兵というか。隠れてるつもりなのか?)
僅かに思索を巡らせた直後、より激しい光に驚き、振り返った。
さて、もう一つの光。それについても語らなくてはなるまい。
こちらは――既存の概念で表現するのも難しいが、強いて言うのならば、『弾丸』。
「――解析、完了」
遍く未来をも見通す魔眼『√Gazer』。観測によって確定する特性を有する極小の粒子、『ナノ・クォーク』を利用する神の瞳。攻撃の予兆を見抜くことなど容易く、更に推論であった敵の核に対する攻撃手段などの検索も完全に完了した今、真心・観千流を止められるものはいない。
存在の核である中央部に存在する『欲望のオーラ』の源泉と思しき極彩色の空間。エネルギーと呼んでいいかも怪しいモノを生成する炉の役割である部位へ、観千流が手にした銃に籠めた弾丸を叩き込む。
『固定』の弾丸で動きを制限するそれが縛り付けたのはオーラそのもの。生成の根源を堰き止め、絶えず流れる光を抑えこむ。そして『分解』の弾丸は停止したオーラの姿なき根源を暴き立て、諸共消し去る。
レベル3兵装、|悲劇砕く銀弾の守護者《マキナ・シルバー・ガンナー》。その本懐は、ここまでの動きを補助した能力の倍加以上に――彼女が手にした『銀の弾丸』にある。
(犯人に、|これ《・・》を撃ち込めば本当に戻って来るかもしれないけど)
一連の事件を『起こる前』に解決するという離れ業。可能性の逆行という神もが憚る因果干渉。大団円で終わらせるために、これを撃つことを彼女は躊躇うまい。
――だが。
「今は、この場を切り抜けましょう」
夜は、まだ終わらない。闇は深く、|欲望《デザイア》はまだ尽き果てない。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
黒木・摩巳【POW】
いよいよカレンさんが目覚めて魔法少女になり、デザイアモンスターに襲われるという予知が実現する時が来たのね。
このまま単独で襲われれば実力的にも数的にも明らかに不利。
しかし、そうはさせるものですか。
まずはカレンさんの安全の確保から。戦おうとする少女を一旦抑えて、能力者達に戦いを委ねます。能力者達がどう戦うか、実戦で見て勉強という形になりますが、それが一番手っ取り早くはあります。勢いだけでは勝てないので。
かくいう自分も√能力を保たないので、武器は重ショットガン。
√能力が無くても能力者の動きを読みながら、敵の牽制をしたり、視野を広くして周辺警戒したりと、やれることをしていきます。
ゼロ・ロストブルー※アドリブ連携歓迎
彼女が…確認をしておこう、君は戦いたいか?
自身の強さを自覚すること、ギリギリの賭けもできるから。
何ができるかを考えること、相手がされて嫌なことは何か。
その為に、今はよく見て学ぶこと。
武器があっても、慣れないうちは自分に牙を剥くからな。
どうやって戦うのか、そして、誰の為に、何の為に戦うのか…幸い、お手本になる人達がここ多くいるよ。
双斧に祈りを捧げ…大きく薙ぎ払う。遠くの敵へは石を投げ注意を引き、咄嗟の際は斧を投擲する。
大きい敵は、回転と体重を乗せた一撃を。
はは、まぁ…俺の戦い方はあまり参考にならないか。
そして、戦った後に残るものは何か。それらをしっかり見ておいてほしい。
●
数多の能力者たちが彼女を守るため自ら持つ力を全霊で振るう。
嵐のようだ……という比喩すら些か手ぬるく感じるほどの中で。『大人』である二人が、少女の傍へと駆け付けた。
「怪我はありませんか? もう、大丈夫ですからね」
武器を手にしながらも、決してそれを少女が不安がる様には構えず。|黒木《くろき》・|摩巳《まみ》(h02923)はカレンへと近づいた。
かっちりとした黒スーツに束ね髪、眼鏡。仕事のできる大人の女性として凛とした強い姿を崩さないが、然し少女を安心させるため向ける微笑みは妹を持つ姉としての優し気なものであった。
ともに現場に駆け付けたゼロ・ロストブルー(h00991)は間に合ったことに安堵の息を吐きながらも、一方で魔法少女へと近づく。
――彼女が、どのように考えているのか、その意志を、見定めるために。
「君は、戦いたいか」
摩巳は、少しばかり眉を顰める。今は色々と動揺している事だろう、もう少し落ち着いてから問う必要があるだろうと。一方で、問いを受けたカレンは一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに表情が変わる。年相応な、少し斜に構えたような雰囲気もあったが、その根底にあるのは――自嘲。
「怖いよ」
素直に、吐き出す。
「助けを呼ぶ声が聞こえた時は咄嗟に動けたよ。けど冷静になっちゃったら、もうダメ。目の前で嵐が起きたり、銃とかがバンバン撃たれたり、でっかいモンスター大戦争みたいなのとかさ。アニメとか漫画で見たのとかわんないのに、こんなに怖いんだ」
普通の、中学生。
抱えた苦悩は|√《せかい》特有のものだ。しかし『普通』の尺度も|√《せかい》によって異なる。戦いに身を置かなければいけない子供も、戦いなど知らず生きる子供もいる。
彼女は後者。ただそれだけだ。ならばこの恐怖も、当然のものでしかない。
「だから」
それでも、と。彼女は顔を上げる。
「怖がるのは、今だけにしたい。私ができることが何かなんて、わかんないけど。けど、できたかもしれない何かに、後から気付くのは――イヤ」
――少女の回答に、摩巳は少しだけ切なげに微笑む。
判断は正しい。
カレンの志は立派だ。何かの力に目覚めてしまった自覚を持ち、そして今の自分の怯えや怖れを正しく理解し。その上で、確かに『戦うもの』になろうという覚悟を固めている。その背中や在り様は、彼女が所属する中で見てきた組織で、戦隊、或いはそれに類する組織で働いている人々の姿にも重なる。ヒーロー、そう呼ばれる人々の背中と。
その一方で、そうして見送った背中が二度と帰ってこないことも一度や二度ではなかった。ゆえに、彼女がむしろ感情に寄り添ってしまうのは――話題にしか上っていない彼女の母親だろうか。
巨大な脅威に立ち向かって、二度と帰らぬ愛した人。その子供もまた何かに立ち向かおうとしている。愛に根差した一つの嘘が、翻って子を想う母への試練にもなりえるのかもしれないというのは、なんという運命なのだろう、と。
ゼロもまた、考え込んでいた。
戦うこと、立ち向かうこと。その全てが彼にとって自然なことであったから。生き残るために戦い、未来を掴むために戦った。生きとし生けるものは大なり小なり戦っている。
過酷な|√《せかい》で培われた部分も往々にしてある。数多の世界に迷い込み、それぞれの世界で起こっている様々な問題に立ち向かう中で見出した思いでもある。
だからこそ、突発的な全能感などではなく『覚悟』を持った決断ならば止めることはできないだろう、と。
そう。何のために戦うのかというのは極めて重要だ。誰の為に、何の為に戦うのか。きっとそれを見つけることができれば後悔や恐怖を踏み越えていけると。
カレンはその部分に置いて間違いなく「戦士」の素養を持っている。
ただ、それを教えるには――まだ彼女の抱く想いは若く、そして脆く見えた。
●
「!」
先んじて見つけるのは、摩巳。倒れたデザイアモンスターの死骸。散った破片になって消えていく中、完全に消えてしまう前に切り離された触手の一部がぶじゅぶじゅと泡立ち、再びその身体を再構成し始めている。それも、一体二体ではない。
ぞろ、ぞろと。未だ執着深く魔法少女を狙う怪物たちは、覚束ない足取りながら腹の毒々しいオーラを垂れ流す。このまま放置すれば、再び触手共は再生する。
「カレンさん、下がって!」
鋭く声を飛ばし、手にした重ショットガンを撃つ。細身ながら訓練を欠かさぬ彼女の射撃能力と、整備された武器。そして籠められた金属装甲すら簡単に貫通する徹甲弾によって再生しかけの怪人の半身が吹き飛ぶだろう。
続けて二発、三発と撃ち込めば、怪物が二度と立ち上がることはない。すかさず弾倉を交換し、なおも近づかんとするものに対しては回し蹴りを浴びせたのちサイドアームの自動拳銃でよろけたところを、ショットガンで破壊する。
緊急時に見せた技もあったが基本的には近づく前に対処ができている。火力は十分だ。
だが、殲滅力が足りない。一体を倒す間に二体目が、二体目を倒す前に三体目が立ち上がる千日手。このままでは、弾薬が尽きる方が早い。
く、と息を漏らす摩巳の隣を――青い影が駆け抜けてゆく。
「戦うならば、よく見ておくんだ」
そう言葉を残したゼロは、手にした双斧を振り被り、地面に叩きつける。ドン、という衝撃と共に大地が抉れ、全開しかかった触手の胴体は真っ二つに引き裂かれ、うちに流れた油の如き体液が噴水のように吹き出した。
浴びる間もなく駆け出した彼は死骸を蹴倒し奥の触手のバランスを崩させている間に、よろけた傍の一体を片手の斧で刈り取り、少し先で少女の方に迫らんとしていた一体へもう片方の斧を投擲する。
圧倒的な膂力によって振り抜かれた腕が風を切る音は、鈍重な射出音も同然。投げられた斧は狙いの一体目を貫通し、更にその奥にいたもう一体に突き刺さる。
斧を取るべく駆け抜ける中でも、バランスの悪い触手の二足の健を見抜いて断ち切り、注意を引けていない相手には投石で注意を引く。その投石も彼のパワーで投げれば『ごしゅ』と嫌な音とダメージを与える立派な武器だ。
そして死骸から引き抜く勢いのままに半円の軌跡を描いて振るわれれば、背後から迫った三体を纏めて両断せしめるだろう。
長い息を吐き。斧の刃を血払いしたのち祈りを捧げ、目を開けば。
――自分を見て唖然とする二人を前に、ゼロは乾いた笑いを浮かべるのだった。
「はは、まぁ……俺の戦い方はあまり参考にならないか」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
クラウス・イーザリーレギオンスウォームを使用
走りながら周囲に飛ばし、カレンと他に襲われている人の位置を確認
一番危ない状態の人のところに向かいつつ、他のレギオンにはレギオンミサイルで攻撃させて時間稼ぎ
襲われている人のところに辿り着いたら魔力兵装を槍の形に錬成し、薙ぎ払いで蹴散らす
「ここは任せて、逃げて!」
強めに声を掛けてレギオンに先導させて逃がそう
最終的にはカレンと合流
「襲われていた人たちはもう大丈夫だよ。安心して」
正義感が強いと聞いているから、まずは他の人たちが無事だということを伝える
あとは彼女を守りながら残りのモンスター達を倒す
必要なら庇いつつ、レギオンで援護射撃をしながら魔力兵装で攻撃
※アドリブ、連携歓迎
星宮・レオナ連携アドリブ歓迎
時間がない、変身!!
マグナドライバーにキーを叩き込んで、マグナファルコンへ変身する。
空中へ跳躍すると同時にファルコンウィングを展開して、空中を高速移動、デザイアモンスター達へこちらに注意を向けさせる為の【牽制射撃】、同時に腰のミスティドライバーにキーを叩き込んでチャージ開始。
完全融合したデザイアモンスターに向けて、空中からの加速と怪力を乗せた蹴りの一撃を叩きこんむと同時に蹴りの反動を使って、跳躍、|次が本命《2回攻撃》!!
【Full Charge!!】の音声が流れたと同時にファルコン・グランツァを叩き込むよ。
悲鳴を聞いたけど、それらしい人はいるのかな?
まさかデザイアモンスター?
●
魔法少女が危機に陥っている。勿論、ここに集まったのはその目的の為だ。
だが同時に不気味な予知に対する『先手』を打たんとする者がいた。
「く」
眉を僅かに顰め、クラウス・イーザリー(h05015)は湧き出すデザイアモンスターの群れと戦い続けていた。
レギオンスウォーム。半径五十メートルの範囲内に展開した小型ドローン『レギオン』を思念操作しながら、槍を用いて敵を蹴散らすクラウス。月光の下振るわれる青き輝きの槍刃は下卑たる欲望を垂れ流す触手の怪異を薙ぎ払い、その数を着実に減らしていく。一方で、クラウスの焦りは募るばかりであった。
(見つからない……!?)
そう。
彼が探していたのは、助けを求める何者か。魔法少女・カレンが助けるべく飛び出すきっかけになった原因、その声の主が見つからないのだ。
戦闘区域は限られており、その中で神社の境内からも聞こえる範囲となればさほど探知は難しくないはずだ。彼の周囲を飛び交うドローンにもセンサーが取り付けられ、捜索を継続している。だというのに救助者の姿は影も形も見当たらないのだ。
何か漏れがあるのか、そう思い更に展開するドローンを増やそうとしたところで。
クラウスの視界が、捻じれる。
捜索の為に用いた神経接続、併せて今回思念操作で運転し続ける小型ドローン。蓄積された疲労は尋常ではなく、そこから更に負荷を強めようとしたつけが足に来たのだ。
ぐじゅり、うじゅり。
倒しても倒してもなおしつこく湧き出る異形の触手。輝きを支えに、再び槍を構えるクラウス。
然し、突如深紅の閃光が空から降り注ぐ。
派手な銃声と共にバラまかれたエネルギー弾は羽の形状を取ってデザイアモンスターどもに突き刺さり、高熱と爆炎が怪物たちを薙ぎ払う。
はっと上を向けば、そこには機械的なパワードスーツにも似る、赤き隼を模した戦士が舞い降りた。
「――どうにか、間に合ったみたいだ」
空より飛来し少女の窮地を救わんとするは、星宮・レオナ(h01547)。いいや、今の彼女は神秘の鍵より出でし反逆の翼を纏う者、キー・アクセプター『マグナファルコン』である。
山中を駆ける中で戦闘が始まっていることを知ったレオナはマグナドライバーに変身の|鍵《・》となるミスティカ・キーを叩き込み変身。空を舞い、戦場全体を観察しながら、魔法少女たるカレンが多くのEDENに守られているのを確認し、戦場全体を俯瞰したのち、ここに駆け付けててきたのである。
「ありがとう、助かったよ」
「気にしなくていい。けど――妙だ」
礼を伝えたクラウスに頷くレオナだが、その声は暗い。
――広く全体を見通す空中移動。巨大な存在に乗って戦っていた|仲間《子》に比べれば低いため、細かな戦場の仔細も見通せる。そんな中で、生まれた疑念。
森には木々があるとはいえ枝葉が茂る夏に比べれば視界は通っている。戦場全土を見渡した彼女には、この場所に|カレン以外の一般人はいない《・・・・・・・・・・・・・》、そう思えてならないのだ。
となれば、悲鳴は偽り。魔法少女を狙い、そんな真似をするとすれば。
「まさか、デザイアモンスターが?」
「考えてもみなかったけど……確かにそうかもしれない」
クラウスも、同意する。
最初から救助者などいない、そう考えればここまで緻密な捜索を行ってなお一切の手掛かりがない理由にもなる。
しかし悪いニュースというばかりでもない。もし救助者がいないのならば、残るデザイアモンスターさえ倒してしまえば任務は達成だ。既に再出現の間隔もかなり長くなり、数も減っているのだ。このままいけば。
そんな二人の思いを嘲笑うかのように。
『|少女《・・》』の悲鳴が、木霊する。
「まさか、カレンさん!?」
「大丈夫、彼女は無事だよ。声紋のデータと一致しな――」
その瞬間クラウスと接続したすべてのドローンが一斉にけたたましい|警報《アラート》を鳴す。脅威を示すグラフが急激に増大し、捜査の情報が一斉に戦況分析に塗りつぶされた。
……二人の前で、もう何度目かわからぬデザイアモンスターたちの再出現。だが、どうにも様子が違う。
その数は十体前後。これまでの数に比べれば出がらしのようなものでしかない。しかし集まったそれらは一体に自分たちの生成できるすべての『欲望のオーラ』を流し込み、力を集められた一体はその腕だけでなく、枯れ果てた死骸をも吸収してどんどんと膨らみ、巨大化していく。
そして、高さ五メートル近い巨躯となった異形の触手は、その身体をぶるぶると震わせ身体を形作る螺旋の触手を擦り合わせ耳障りな咆哮のまねごとを行うだろう。
――ここから腕を振り下ろせば、カレンさんが守られたとしても神社には大きな損害が及ぶ。山が崩れればその下にある市街地にも被害が出かねない。
少女の住む街、少女の父との思い出の場所。
その命運がきみたちに託される。
「ボクに、やらせてもらっていいかな」
「わかった、援護するよ」
クラウスは槍を構え、レオナは翼を広げた。
●
巨大化したデザイアモンスターは通常時以上に動きが鈍い。一方で上昇した防御力、そして死亡後に即時再生する能力が厄介だ。
敵方にはここまでの戦況で優勢となる要素はない、しかしだから一発で済むと考え万が一再生した場合は非常に厄介だ。
それを理解しているからこそ、レオナは最大火力を叩き込むことに全神経を注ぐ。相対する。相対する頭とも顔とも言い難い、黄色い斑点が目のように縦に並ぶ不気味な顔を前に、彼女は腰に巻かれたデバイス、『ミスティドライバー』へ鍵を突き刺した。
『UNLOCK!』――電子音と共に始まるカウントダウンを聞きながら、その時を待つ。
「!」
突如、緩慢に腕を持ち上げるばかりだった異形の目から、どす黒い光線が放たれる。闇の力による、暗黒攻撃。どうやらレオナが充填し始めた力の予兆を嗅ぎつけたのだ。
く、と彼女は息を漏らし飛翔する。翼から散る光へと追いすがる様に続く十本のレーザー。
だが、逃げる彼女を援護する軌跡も現れる。
ミサイルとチャフによって光線の軌跡を逸らし、中には自ら盾となって爆炎を上げながら防ぐものもいる。それらは全て、地上からコントロールするクラウスのものだ。
更に同時並行で行うセンサーによる解析。そして、その結果が出る。
「――生物的な肉体と植物的な外骨格、それらが発生している腹部のエネルギー体の直上。物理的ダメージで最も効果的なのはそこだ!」
クラウスからの指示を受けたレオナは、落下を開始する。既にレーザーは全て消えた。二射目を構える予兆はあるが、もう追いつけはしない。
「ハァッ!」
鋭いキックが放たれ――ばゆん、と。弾性のある触手の身体にはじき返される。
にまり、と。黄金の目が歪んだ錯覚。
だが。
「鈍いね――次が、本命!」
『Full Charge!!』腰につけたベルトから声高に叫ぶ声と共に、怪人に刻み込まれた赤き翼の紋様。一撃目はマーキング。対象を、示すための。
「これで決まりだッ!」
舞い散る光の羽の軌跡を舞わせ、放つは悪意を刈り取る隼の一撃――ファルコン・グランツァ。
そして地上より天へと打ち上がる裁きの長槍。地上から最大まで充填した魔力兵装の大槍を投擲し、邪悪の根源を穿ち貫かんとする。
赤と青。二つの力が交差し、激しい光がカッと、山を包んだ。
●
神社の境内。既にこの場に集まった√能力者たちが魔法少女の下へ集う中。
巨人を打倒した二人が集ったことで、欲望振り撒く怪物が全て討ち果たされたと証明されるだろう。
魔法少女防衛戦は、完全勝利と相成ったのである――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『闇堕魔法少女『ロゼ・クローバー』』
POW
火炎術式『インフェルノ』
【基礎魔法『フレイムアロー』の乱れ撃ち】による牽制、【障壁魔法『ファイアウォール』の包囲】による捕縛、【爆熱魔法『メギドスマッシュ』の大火球】による強撃の連続攻撃を与える。
【基礎魔法『フレイムアロー』の乱れ撃ち】による牽制、【障壁魔法『ファイアウォール』の包囲】による捕縛、【爆熱魔法『メギドスマッシュ』の大火球】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD
氷結呪術『アブソリュート・ゼロ』
視界内のインビジブル(どこにでもいる)と自分の位置を入れ替える。入れ替わったインビジブルは10秒間【術者の意のままに動く「絶対零度の空間」】状態となり、触れた対象にダメージを与える。
視界内のインビジブル(どこにでもいる)と自分の位置を入れ替える。入れ替わったインビジブルは10秒間【術者の意のままに動く「絶対零度の空間」】状態となり、触れた対象にダメージを与える。
WIZ
電撃魔法『サンダーストーム』
【戦場を切り裂く稲妻】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
【戦場を切り裂く稲妻】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
●
「えっと……あの、皆さんありがとうございました」
――集まった√能力者たちに、魔法少女となった篠杜・カレンは頭を下げる。ふりふりした衣装も、杖も、どうやら慣れてきたらしい。
年頃らしい気恥ずかしさからか、お礼をいうのにも照れが見えるが、一方で全員の顔と目を見て頭を下げようという真摯さが見受けられる。
「私、どうなるかと思ってました。けどこれで|亡くなった《・・・・・》父さんとも、父さん、とも……あれ?」
言いかけた台詞の途中。少女が、頭を抱える。
何かがおかしい。
「なんで。父さんは――まだ、帰って来てないだけで――」
彼女はなぜか知っていた、父がもう既に帰らぬ人であることを。神社に入ってから、唐突に知っているかのように思考していた。
大人への疑念。初対面の君達の言葉を素直に受け止められるこの少女が、なぜよく知った大人たちや周囲の人々を信じず、ここまで孤立を深めたのか。
「私、約束だから――だから、父さんが|いなくなった分《・・・・・・・》、頑張らなきゃって……!」
『少女』の、悲鳴。
助けを呼ぶような、悲痛な叫び。
はたと振り返ればその先には、傷つき、血を流した人影が一つ。
慌てて駆け寄ろうとするカレンだが、すぐさま、その足は止まる。
眼前の存在は――一般人ではない。巻き込まれた被害者などではない。
「……あーあ、バレちゃった」
つまらなさそうに。
呟いた『少女』の足元から廃油の如き染みが広がると、それが身体を包み込む。そしてやがて黒く染まった昏い眼差しを持つ、『魔法少女』が現れた。
「新しい『魔法少女』が沢山。絶望させたい『魔法少女』が沢山。なにも救えないのに、なにも守れないのに、それを教えてあげたかったのに」
杖を振るう、心無い無機質な瞳は然し突然に目覚めてしまった魔法少女に向けて、歪な笑みを浮かべた。
「知りたかった本当を知りながら、さっきのヘンテコに潰されてれば楽だったのに。もっと苦しくなるよ。もっと痛くなるよ」
――今回の事象とは因果関係がない、悪に堕した魔法少女。歪な執着の矛先が、突如として巻き込まれた彼女に向かった結果。それが、この事件の真相。
ただ、その全てを聞いて。
魔法少女カレンは、杖を突く。
「――お願いが、あるん、です」
狐火が、灯る。
「あの子もきっと、苦しんだんだと思います。だけど」
苦し気に。思いの丈を、吐き出すように。
「戦いの中で、辛い思いをしたり、傷ついたりするのを見るのは、もう、イヤ」
神社を包み込む清浄の気。敷かれる五芒の陣が生み出すのは厄を祓う神域。
「ワガママ、言わせて。私に、みんなを手伝わせてほしい。それで――あの子を、|斃し《たすけ》てあげて」
――子供を戦わせる大人はいない。誰かがそう言った。
けれど覚悟を以て進む子供の背を押すのもまた、大人の責任。
幕は既に上がった、|清算《フィナーレ》が、始まる。
●
仮称『魔法少女カレン』の能力
・火伏(炎への耐性が上昇する。また、炎を扱う攻撃の精度が上昇する)
・無事祈願(√能力に記載された『死亡』のデメリットを一度だけ帳消しにできる)
上記効能を活用したプレイングには多大なプレイングボーナスを付与します。
また、上記の効能はざっくりとしたものです。適用される効果の部分を独自解釈したプレイングに関してもボーナスを付与します。
真心・観千流アドリブ連携歓迎
そう、でも少し言葉が間違ってるわね
そこまで覚悟があるのなら『斃させてほしい』じゃない?
天体式羅紗魔術を起動、カレンさんの炎を扱う攻撃の精度が上昇する支援も合わせてカウンター+ハッキングで敵の術式を乗っ取るという形で敵の行動を失敗させましょう
そうして奪った『インフェルノ』の操作権は学習力+早業+炎属性攻撃でサクッとマニュアルを作ってハッキングでカレンさんにパス
能力的に相性は良いでしょう、ガイドも付けたから使ってみなさい
戦う覚悟を決めたのなら他人に任せきりじゃダメよ
手伝いはしてあげるから、前に一歩踏み出しなさい
帆瀬・アスナへー、諦めて奪える側に回れば楽になると思ったんだ。
暗い心、歪んだ正義。私の力・魔法との相性はいいけれど、私自身はあまり好きじゃないわ。
くだらないわ。勝手に私を助けて居なくなった私のお父さんや、目の前に居るのにお父さんを助けられなかったへっぽこなヒーロー達なんかよりも、とてもとてつもなくくだらないわ。
エネルギーバリアを貼ってフレイムアローをガード、少々力技だけどそのまま突進でファイアウォールを突破しましょう。
√能力【ネガ『マッチ売りの少女』ドレス】 使用
でこっちの|貴方《魔法少女カレン》も炎の魔法が得意なんですって。それじゃあ、このマッチの炎も貴方が使ってみる?
※アレンジ歓迎
●
「ふふふ、残念。残念ね」
声色は明るく、悪意に満ちた思惑を見抜かれたというのに厭に上品で優雅な声色。だというのに口調は子供のように無邪気だ。
壊れている。毀れている。だが、淀んだ眼差しはただ一人、魔法少女として力を振るうカレンに注がれる。
ロゼ・クローバーが杖を掲げれば、握り拳大の火球が風船のように膨らんでいく。すべてを呑み込み焼き尽くすために。彼女の思い出諸共に、少女を焼き尽くさんがために。
「くだらない――とてつもなく、くだらないわ」
嘆息、軽蔑、心底からの唾棄を込めて。
割り込む様にして伸ばされた巨大な腕が、業火の毬を握り潰した。黒い巨躯が天を覆い、月光を隠す。片腕が魔法少女をそのまま殴り飛ばす合間、もう片腕から飛び降りるのはカレンと同じく華美なドレスを纏った少女。
テイルズノワール、|帆瀬《ほせ》・アスナ(h12191)。彼女は後ろで魔法の力に芽生えたてな雛鳥が向けてくる、驚きと|憧憬《・・》の視線に鼻を鳴らしながら歩を進めた。
ふたを開けて出てきた、堕ちた魔法少女。語る言葉、その性根、何よりその淀んだ目と空虚な心。砕けた心が戻るものではないと知っていても、それでも思わざるを得ない。
「諦めて奪う側に回れば楽になると思ったんだ?」
勝手に私を助けて居なくなったアスナの父。目の前に居るのにお父さんを助けられなかったへっぽこなヒーロー。今でもどちらにも抱く複雑な感情。けれど確かに言えることがある。
眼前でへらへらと笑う『魔法少女くずれ』は、その誰よりも――くだらない。
暗い心、歪んだ正義、それらは彼女の糧となる。同時にそれは彼女にとって気に入らないもの。だから、叩き潰すことに一切の容赦が必要ないと。
くるり、と回れば纏う衣装の|色彩《いろ》が変わる。夜闇のドレスに灯る小さなマッチ。小さな火種は藁に焚べたが如く燃え広がり、黒と赤の輝きを散らした。
|異譚《ネガ・テイルズ》。御伽噺の歪んでしまったカタチ。その中でも『マッチ売りの少女』を象るその形態は、奇しくも同じく火を操る業である。
「暫く遊んであげるわ。火遊びも一人じゃ退屈でしょう?」
「新しい子? ふふ、なんだ、初めから言ってよ」
ゆらり、と。巨躯の怪物――アスナの操るヤブレターに吹き飛ばされたというのに、平然と。立ち上がってケタケタと笑うロゼ・クローバーは再び杖を振るった。
獲物が増えたならもっと火力を増さなくちゃ。そう言わんばかりに。
けれど。
「……あら?」
走る|歪み《ノイズ》。超常の論理で作用する術理である魔法が、外部から妨害されている。だが当人がその違和に気付くことなどなく、首を傾げながら、繰り返し、繰り返し、杖を振るい続けるばかり。
玩具が壊れたことを理解できない子供のような姿に、カレンが眉を顰める中。
「少し、台詞が違うんじゃないかしら?」
差し出される、紙の束。顔を上げれば|真心《まごころ》・|観千流《みちる》(h00289)がカレンの傍に立つ。守る様に立ち塞がるというよりも、どこか指導員のように少女の傍で腕を組む彼女は――既にすべての仕込みを終えていた。
|レベル1兵装・羅紗星図《ミスティック・スターホイール》。星の並びに文字を重ねた天体式羅紗魔術という埒外の大魔術。数日という長大な準備時間を用いるそれは、然し彼女の持つ可能性の演算と、確立を収束させ引き寄せるナノ・クォークを以てすれば今、この瞬間に備え用いることなど造作もない。
そしてその『魔術』が引き寄せた結果は、敵の魔法の失敗。しかし観千流の狙いはその|先《・》にこそある。
カレンの手にした書類に記された説明書のような文面。それらは、今まさしく狂える堕ちた魔法少女が使おうとしていた、火炎術式『インフェルノ』について。
術式への|干渉《ハッキング》。その根源を模倣し簡易に習得可能な範囲かつ威力性質を最大限引き継いだ調整版。それを、魔法少女に与えたのだ。
意図は――ただひとつ。
「それくらいの覚悟があるのなら、『斃させてほしい』じゃない?」
柔く目を細め、微笑みながら。観千流は静かに告げる。
戦う覚悟を持つのなら、自らの手で|決着《ピリオド》を打て。それは、これまで普通の女子中学生として生きてきた相手には厳しい言葉にも聞こえる。
それでも戦うという意志を見せたのならば。願いを他人に任せず、自分の手で掴む必要があると。
「――、やる。やってみせる」
深く息を吸い、渡されたテキストを意識しながら。
堕ちた魔法少女へ。自分を迷わせた相手へ、カレンは火球を放った。
しかし。
「もう、もう、もう!」
ブンブンと杖を振り続けたロゼ・クローバーはその一撃を跳ね飛ばした。苛立ち交じりに再度描く軌跡が宙へ残ったかと思えば弓弦を象り深く反ると、四方へと炎の矢を放つ。基礎魔法と銘打たれたそれは、けれど明確に、森を、社を、そしてこの場に集まった人々を焼き殺さんとする殺意の一撃。
(威力は十分だった。私の補助とカレンさんの適正もあった。けど上回られた。これは――)
隣でその経過を観察していた観千流は顔を顰めた。
「く、ぅ……!」
(『助けたい』。尋常ならざる様子を見て、解放してあげたい、という意味で倒してと言ったみたいだけど。まだ、心の奥では諦めきれていない)
それを覚悟が足りない甘さと呼ぶべきか。
はたまたただの女子中学生として以上の優しさと呼ぶべきか。
どちらであっても少女自身の命が危険に晒されていることは間違いない。それでもその意志を曲げられなさそうな頑固者に、どうしたものかと目を閉じた観千流。
「殺さなきゃいけないの! 燃えて、燃えて!」
どこか狂気的に笑いながら、再び巨大な業火を呼び寄せるロゼ・クローバー。
一方で、同じく楽し気に。そして満足げに笑うもう一人の少女。
「そう、そうよ! それでいいの!」
ぱっと擦れば幻灯が爆炎を模す。黒炎の矢は堕した敵へと殺到し、動きを妨げながら自身に迫る殺意の矢は翻すドレスが生み出す不可視の壁が防ぐ。同時に、射線に入りそうなカレンへの攻撃も全て、彼女がはたき落としていた。
喜悦に満ちた声を上げるテイルズノワール。それは、決して戦いが有利だからでも相手から注ぎ込まれる力の濃度に上機嫌なわけでもない。
――背後で顔を歪める、篠杜カレンの葛藤。それにこそ、彼女は喜んだ。
誰かの為に自分の犠牲を顧みない愚かさ。誰かを助けようとするためにもがき苦しむ姿。けれど、決して、決して諦めない頭の固さ。
「本当にくだらないわ」
あは、と。笑う。妖艶に、愉快に、そして、ほんのわずかに寂しげに。
「けど、それがヒーローなのでしょう?」
絶望に流されるのではなく、自分の未熟を知りながら抗う馬鹿者の方が、ずっとずっと好ましい。
だから。
「貴方、炎を使うのが得意なんでしょう?」
ぱっと投げ落とした、一本のマッチ。それは風に流され、力を吸われてまた小さくなったヤブレターのトスを経て、カレンの手の中に納まった。
「――幻に焼かれるか、それとも掴み取るのか。精々愉しませて頂戴」
●
突如宙へ舞ったロゼ・クローバーは障壁として何かを守るための魔法を、上から押し潰す炎の絨毯として放った。燃える海が空から降り注ぐ中――その中へ果敢に飛び込むテイルズノワール。ドレスが帯びた護りの力で以て、強引に突っ切る力技だ。
無論、それは無傷で果たせるようなものではなかった。同系統の力で以て打ち勝とうしても、ブレーキの壊れた相手が放った技に身を晒せば、肌には傷が、ドレスには焦げが残る。
けれど。
「何を、怖がっているの?」
愉快で仕方がない。狂気を振り撒く壊れた相手が、今、明確に怯えているのだから。
「う、ううううう!!」
恨みがましくもう一度炎の矢を放たんとするロゼ・クローバーを。
「い、っけぇぇッ!」
白炎の矢が、貫いた。
テイルズノワールに託された相手の√能力を再現するマッチ。それと、模倣された攻撃の炎魔法。それに自らが持つ火伏のバフを合わせ放った一撃は、色を変え、浄化を齎す白き輝きへと変じた。
「まったくもう――!」
そしてその立役者は、真心・観千流である。
――先程のデザイアモンスターとの戦いの中で生成された、総ての結末を大団円に書き換える、因果遡行の『銀の弾丸』。カレンはその効果を、自分ではなく――敵の為に使いたいと言い出したのだ。
少女の眼差しに押し切られ、急増で魔法の|素材《アセット》を組み替え、バランスを調整し、四苦八苦して産み出されたのがコレである。
観千流自身が使用するより効果は遥かに弱くなる。それでも頷くよりほかになかったのは。
(――|最良《グッド》な結末が欲しいのは、私だって同じです!)
そして、見事に命中した、その一撃。
その効果は。
「あ、あ、あ……!」
ロゼ・クローバーの中にあった、『善意』の再燃。
狂乱の只中にあるものとは違う、僅かな正気の光が、かえって堕ちた魔法少女を苛む。
壊れた破片が、再び、繋がり始めた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
ゼロ・ロストブルー※アドリブ連携歓迎
はは、凄いな。
君の力(火伏)を頼らせてもらうよ。
よし、やれることをやろうか。
この場所で炎魔法…彼女の大切な場所が燃えるのは避けたい。
立ち位置に気をつけ、魔法は双斧の側面で受けるか叩き落とすのを試みよう。
木等に燃え移りそうなら、その部分を切り落とし延焼を防ぐよ。
さて、あとは…
他の人が狙わてたら石を投げたり、首へと斧を投擲したりで気を逸らそう。
斧を投げた時は投擲と同時に距離を詰め…手首を狙い攻撃
…傷ついたりするのを見るのはイヤ、か。
今後、君自身が傷つく事や、この敵のようになる事もあるかもかもしれない。
…だからどうか、如何なる困難も笑って跳ね除けられるよう、今以上に強くなってくれ。
黒木・摩巳最初から諦めていては始まらない。
だから、カレンさんが自分にできることを少しずつでも進めていくのはいいことだと思う。
でも、今回の相手はなかなかの強敵。
むしろ手助けしてもらわないと突破できそうもない。
今こそカレンさんの目覚めた能力をどう活かせるか考えないとね。
手持ちの武器では重ショットガンが使えそう。
ショットガンでロゼを牽制していると見せかけて、照明弾を発射。
この弾をカレンさんの火伏の効果で軌道を操作してもらって、死角から一撃を喰らわせていこう。眩しいから、目眩ましの嫌がらせにはなるでしょう。
ロゼがひるんだ隙に他の攻撃が当たればOKね。
クラウス・イーザリー「……わかった。俺たちに任せて」
「君の力、頼りにしているよ。ありがとう」
闇に堕ちた魔法少女すら助けたいと思うなんて、本当に真っ直ぐで強い子だ
少し眩しいな
火伏の力を借りながら極月を使用
剣の形に錬成した魔力兵装を暴走形態に変え、恐れずに真っ向から斬りかかる
相手からの攻撃は魔力防御である程度防ぐけど、凌ぎきれなくてもカレンの力があるから大丈夫だと信じてる
できるだけ攻撃に集中して早く斃すことを意識しよう
力に目覚めた魔法少女たちはもう元に戻らないのかな……
もしそうであるなら、急に戦う力を得てしまった彼女の道行きが少し心配ではあるけれど
強く優しい今の心を持っていれば、きっと大丈夫だと思う
●
『善意』を呼び起こされた悪の魔法少女は目に見えて精神の均衡が崩れている。それは突くべき隙であり、同時に虎の尾。
「まだ、足りないならもう一回――!」
カレンはそれに気づかず再度、白炎を放ってロゼ・クローバーを『助けよう』とする。しかし。
「う、ァァァ――ッ!!」
狂乱と共に制御を放棄した炎矢が四方八方へと撒き散らされる。最早何かを狙ったとかではなく、溜め込まれた感情が爆発するのに合わせ、更に激しく魔法が燃え盛る。
攻撃を中断し、『火伏』の力に集中するカレン。
だが、それを以てしても――僅かな火種が木々に、鳥居に、降り掛かる。
「おっと」
社へと迫った、炎の矢。それが|ばちん《・・・》と何かにぶつかり弾かれる。
――投げられた、石。ありふれた、その辺に転がっているただの小石が、魔法によって作られた炎を打ち消しているのだ。
「流石だね。君の力のお陰だ」
そう言って手の中で他にも拾い上げた小石を手に、柔らかい微笑みを浮かべている人物こそ、ゼロ・ロストブルー(h00991)。先程少女を守るため剛腕を振るった、斧を握ったルポライターである。
√能力を喪失している身でありながら鍛錬と経験を以て怪物を両断せしめる彼の膂力と、投擲に適した形状とは言い難い斧を正確に敵の急所へ叩き込むコントロール能力。その合わせ技によって、少女が魔法によって展開した『火伏』の領域内にある小石を投擲し、敵の炎が建物や山林に延焼するのを防でいた。
同時に。
投げているのは片手。もう片方の手には先程も手にしていた青く透き通った刃を持つ手斧が握られており、その刀身の側面でカレンへと向かい来る炎を叩き落とす。ヂ、という鈍い音を鳴らしながら消える焔は、刃に焦げ跡すら残せない。
「――しかし、難敵ですね」
同じくカレンの傍に立ち、眼鏡のブリッジを押し上げたのち、手にした重量のあるショットガンを構える女性|黒木《くろき》・|摩巳《まみ》(h02923)。
刺激することも得策とは思えない情緒の不安定な相手。牽制の意味を込めて放ったショットガンも炎の障壁に閉ざされて弾丸が融け落ちた。
√能力、観測したことはあったが実際に相対したときこれほどに無法な力を発揮するとは、と。
同時に庇う形となっている背後の魔法少女の能力についても考えを巡らせた。この窮地を脱するのであれば、少女の持つ『魔法』の力の活用は必須。しかし、今手持ちの武器の中でそれらを有効に使うことができるのはどれか。
……この戦場は、厳しい。過酷だ。
(けれど、最初から諦めていては始まらない)
隣で汗ばみながら、魔法少女を見つめ続ける少女の横顔を見、摩巳は思考をめぐらす。当初は保護を目的にしていたが、今彼女は自分の出来ることを見つけ、その役目を熟している。ならば考え出さなくてはならない、この場所で、自分だけができる一手を。
「ゥゥ、う、う……!」
悪寒。
一瞬の間に熱を持って乾いた空気が喉を張り憑かせる。ロゼ・クローバーの杖の先から生まれた巨大な業火が、一定のリズムで脈動すると同時に――|縮んでいく《・・・・・》。
力が弱まっているのか、否。寧ろ圧縮されたそれは恒星のソレにも似た眩い輝きに近付いていくことだろう。さながら爆弾。堕ちた魔法少女は、あろうことかそれを自分の腕に抱え込もうとした。
「あの子、自爆するつもり!?」
摩巳が言えば、カレンは飛び出そうとする。慌ててそれを摩巳は止め、ゼロも踏み込もうとする。然し、再び放たれた熱風が二人を押し戻す。
このままでは。
そんな絶望的な状況を裂いたのは――『蒼』。カレンの魔法によって、ここまでに蓄積してきた頭痛と疲労の癒えた、クラウス・イーザリー(h05015)である。
冴え冴えと輝く月光の如き光を手に、堕ちた魔法少女に肉薄すると軌跡が杖を狙う。狂乱しながらもなお反射的に防ぐロゼ・クローバー。不意打ちに動揺したことで制御が甘くなった凝縮された業火の球を天へと弾き飛ばした。
「ゼロさん!」
「わかっ――た!」
鋭く名を呼ばれたゼロが小石を捨て、自身の得物である対斧を交差するように投げれば、弧を描いた二つの刃の軌道が交わる一点で火球が三つに分かたれ、同時に夜空を巨大な花火が爆ぜた。
美しく散る赤い火花を背景に、その直下では息もつかせぬ攻防が続く。
杖を操り至近距離からの魔法を放たんとするロゼ・クローバーに対して、暴走させた蒼白の魔力を押し留めながら、余剰に溢れる魔力を自身の速度に転換し機動力と攻撃力を両立させた連撃で以て体力を削る。気を抜けば周囲にまで影響を及ぼすほどの力の放出――|極月《ゴクゲツ》が、敵の火元を抑え込んでいた。
……息を呑むほどの、戦い。
しかしその一方で、カレンは疑問を抱いた。
クラウスが、ロゼ・クローバーを倒す様子が見えない。
相手の動きは精彩を欠いている。トドメなら、簡単に刺せてしまいそうなほどに圧倒していた。なのになぜ。
「君のためだ」
先程投げた斧が手元に戻ってくるのを掴み取り、疑問に答えたのはゼロ。
敵たる魔法少女も助けたい。そんな希望を果たすため、彼は当初行うはずだった早期撃破の目的を棄て、今時間稼ぎを行っているのだ。次の一手まで、敵が動かぬように。
傷つく姿を見たくないと語ったカレン。だが、それを彼女一人で成し遂げることは難しいだろう。現実的な、力量不足がゆえに。
だがこの場に集まった人々が辛うじて、不足分を埋めてくれている。今彼女が操る白炎もそのひとつ。しかし、それも決して無傷で手に入れられたものでもない。
戦うのならば。自分自身が、誰かが、傷つくことになる。理想と現実に打ちのめされれば、善意が目覚める前のロゼ・クローバーのようになることだって、ある。
「だから、強くなるんだ。この戦いの中を糧に、どんな困難も笑って乗り越えられるように」
後悔の無い戦いはきっと少ない。だからこそ、彼は願い伝えるのだ、強さを。
そして、共に隣に立った摩巳は少女の汗をハンカチで拭った。
「難題を前に、傷が避けられないこともあるの」
厳しい台詞であるようだが、一方で見せる表情は柔らかく、口調に乗せる感情も穏やかだ。それはきっと理解してくれるだろうという信頼ゆえであり、同時にどうか聞いて欲しいという願いでもあった。
彼女の持つ想いはきっと、彼女の父と同じものなのだろう。我が身を犠牲にしかねないようなもの。実際に自分が得られた権利を一つ、かなぐり捨てているのだから。
その上で、自分にしか、伝えられることがあるとするならば。
「自分の傷もきちんと恐れてほしい。きっと、あなたの帰りを待っている人がいるから」
二人の大人が伝える、二つの言葉。
それを受け止めた少女は、固く、固く拳を握った。
覚悟を、決めるように。
●
指先が冷えていく。
握り続けた魔力兵装は実体らしい実体を持たない。だが、自らの魔力を形にする都合上実物以上に『握る』実感をイメージできなければ解けてしまう。
炎を押し留めんとして戦い続けるクラウスは、熱を相手にして、先に|冷たさ《・・・》を感じる矛盾に、口角を歪める。皮肉だ、と。
一分以上、この死闘は続いている。疎かになった防御をカレンが用いる『火伏』によって賄うという戦略は、彼の想定以上に噛み合っていた。相手も使う魔法を変えて来るか、という懸念もあったが、動揺の見られるロゼ・クローバーは執着するかのように焔ばかりを用いてきた。
同時に。
闇に堕ちた魔法少女すら助けたいと思う心根は、彼にとって眩しく映った。だからこそ、その心意気を叶えたいと、そう思う。
そして同時に。
平穏から突然切り分けられ、力を得てしまった魔法少女。彼女がその力を手放すことができるのかすら、定かではない今、その道行はきっと容易いものにはなるまい。
強く優しい今の心を持っていれば、きっと大丈夫だと信じると共に。
その心を持ち、善くあらんと願い続けるのであれば。それを助けるものが必ず手を差し伸べると示さんがために。その背で、少女に希望を与えんがために。
クラウスは、剣を再び固く握り直す。湧き出す魔力によってより鋭利に強く輝く、蒼き剣を。
「――!」
突如。
クラウスは切り結んだロゼ・クローバー至近から、離れる。
ここにきて距離を話したのを好機とみて、これまで何もさせてもらえなかった鬱憤を晴らすように。或いは自分を追い詰め続けた恐怖の対象を消し去るために。杖が円を描き、そこから夥しい炎が……うまれることは、なかった。
「ゥ、あッ」
予兆なく強烈な光が迸り、堕した魔法少女の視界を奪った。
白に染まる視界の中で――どすんと。走る衝撃。
肩、手、その二つに食い込んだのは、針のような鋭い痛み。直後揺れていた不安定な黄金と赤の瞳から、ふぅと力が抜けた。
「今よ!」
「ゼロさん、クラウスさん――お願い!」
二人の声が、飛ぶ。
摩巳とカレンによる、連携。時に火を防ぎ、時に火を強める力。その可能性を拡張し、燃焼する照明弾を火の塊と捉え、徹甲弾に擬態させ『火を弱めた』状態で射出した後、一気に『火を強める』ことで突然現れたかのように見せかけた目晦まし。
その間に、摩巳が放ったのは――自動拳銃に装填した特殊弾頭。アンプルと注射器に似た気候を炸薬によって打ち出し注入する、麻酔弾。主に非殺傷の鎮圧に用いられるそれを打ち込み、隙を産む。
そこを突くのが、名を呼ばれた二人だ。
「合わせるよ、クラウスくん」
「わかりました――カレンさん、俺たちに任せて!」
双斧、そして蒼剣。その二つに灯る、『白炎』。
さながら聖火を繋ぐかのように、ゼロの斧に|付与《エンチャント》された白の炎を、次はクラウスが魔力として取り込み自身の剣を、燃やす。
晴天を横切る一筋の雲のように。蒼へと宿った白は、胡乱な眼差しのロゼ・クローバーへ、吸い込まれて行く。
三刃一閃。
願いと祈りを込めて放たれた二人の手にした武器は、闇に堕した魔法少女の身体ではなく、そこに流し込まれた悪意をこそ、切り裂いてみせた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
架間・透空ありがとうございます、カレンさん。
──いきます。
変身、かい……否。
カレンさんの、願いを思い起こす。
目の前のあの子を……『魔法少女』を、助けて欲しいと。
なら、私に。
怪人じゃない私に、できることは……
──想いを籠めて、歌を奏でる。
届けよう……あの子の心に、歌を!
……歌と共に熱く昂る、胸の鼓動が教えてくれる。
私たちは、ひとりじゃないって。
たとえ心が悪に染まろうとも、何度間違えようとも。
変わることはできるんだよ、って。
それを今、証明してみせます。
怪人の、私の手で!
──変身ッ!
架間・透空から、「|天駆翔姫《ハイぺリヨン》」に、姿を変える。
カレンさん、否……「魔法少女カレン」の力をお借りして。
高鳴る鼓動と共に、突き進む!
稲妻も炎も、へいきへっちゃら。
だって、私には。
私たちには、一緒に支えてくれる『仲間』がいるから。
あなたが何故こんなことをしたのか、私はまだ……何も分かりません。
でも、困っているのなら。
苦しいって、心が叫んでいるのなら、教えてください。
「人」として……あなたの力に、なりたいんです。
斯波・紫遠アドリブ共闘大歓迎
フォロー念頭に置く
前の僕なら協力してもらうことに難色を示していたかもね
カレンさんを危ない目に合わせるつもりは無いけれど、いざとなったら逃げると言う選択肢を頭の片隅に置いて欲しい
君を親御さんのもとに返すのも大人の仕事だからね
若い子が頑張るって言ってくれているんだ
僕らもいいところ見せないとね
√能力の速度を活かして撹乱
矛先をカレンさんへ向けられない為にも鬱陶しく逃げ回ってみせよう
たまに√レインで雷の相殺を試してみる
そうすれば俄然余所見しにくくなるでしょう?
相手の攻撃が雑になったタイミングで一気に距離を詰める
射程圏内に入ったら蘭蝶で魔法少女を捕縛
カレンさん、アシストお願い
カレンさんの力はこれだけ凄いんだと自覚してもらうためにも一撃で
初対面で、しかも敵であるキミのことを案じてくれる心優しいお嬢さんからのオーダーだ
ちゃんと改心しておいで
アリスさんには煙雨で援護射撃を依頼
出来れば僕よりもカレンさんたちの安全を優先に展開してほしい
●
浄化の白炎をかき分けて、『魔法少女』は姿を現した。黒い装いに、歪な笑顔を浮かべたままで。
「ありがとう、素敵なあなた。まるで夢から醒めたよう」
そして、再び、杖を振るう。方陣から放たれるは、雷光。
「これで迷いなく――あなたを殺せるわ!」
これまで執拗に火炎を用いた相手が突如異なる力を行使した。雷が当たった場所が燃え上がる、という余波への対抗策はあれど十全とは言い難い。
明確な害意を伴い地面を奔った電撃が、カレンの傍に迫った刹那。
紫雨の雫が、黒色の電撃を貫く。
先程まで晴れた空から雨が降る。狐の嫁入りか何かか。
否、否。
「うん、できるものだね」
口ではそんなことを言いながら、予め予期していた通りに。手元で操作するのは決戦気象兵器『レイン』。彼の操る薄紫の光は細糸にも似て、地に注ぎながら石畳に傷が残らぬように威力を減衰させる計算と、敵の行使する雷撃の一手目を確実に潰し、繋がる二手目を塞ぐ。
|斯波《しば》・|紫遠《しおん》(h03007)は腰に提げた日本刀の柄へ手を掛けると、少女|たち《・・》を守る様に立ち塞がった。
「じゃ、最初はちょっとだけ、カッコつけさせてもらおうかな」
言うが早いか。或いは言葉が置き去りになったのか。
低い姿勢で以て四方を自在に駆けるその足に宿るは白。だがそれは、魔法少女が発生させていたものとは寧ろ真逆。祓い清めるものではなく、恨み焼き尽くす宿怨の呪炎。
然し此度それが、彼の魂にまで食い込むことはない。
何しろ火伏によって火災を防ぐ力と、安全祈願の『死』への耐性という魔法の効果が適用される範囲をベン図で重ねた中心点、両取りでもって彼は心置きなく狗神の炎を操っていたから。
当然、爛れる程の痛みを感じなければ動きのキレも言わずもがな。
追いすがる稲妻を躱しながら、漆黒の雷は居合によって断ち切られる。敵の攻勢は激しいはずが、一度たりともその刀身を視界に捉えることは叶わない。
「こんなの魔法も形無しだわ」
「褒め言葉だと思っておくよ」
冷や汗を流すロゼ・クローバーに対して微笑を浮かべ、紫遠は軽口交じりと同時に手元のタブレットに一瞬目を遣る。
――示された情報に「やはりか」と僅かに眉を下げながら、一層の加速を見せた。
できる限りの時間を、稼ぐために。
●
「ハァ、っ……」
初めて使う、魔法という未知の力。
それに伴う疲労も、当然初体験。カレンの息は上がり始め、同時にとめどない汗が滴る。
まだ、足りないのか。彼女を、救うには、と。
――額から垂れた汗で滲んだ視界を拭えば、目の前には差し出された手。
顔を上げれば、そこには一人の|少女《・・》が立っていた。自分と同じくらい、いや少し年上か。白銀の眼差しは、穏やかながら決意に燃えている。
|架間《かざま》・|透空《とあ》(h07138)。魔法少女はその手を取ることができない。現状を打破する策を、カレンには思いつかなかった。
多くの人々に、支えられ、発破をかけられ。それでも、状況は寧ろ悪化しているようにさえ思えたから。
「大丈夫です」
透空は言う。決意、覚悟――彼女以上に明確な、確たる思いがある。
倒すのではなく、助けるために。何をするべきかは彼女の中で固まっていた。
だからこそ。
「私と、一緒に――歌ってくれませんか?」
歌う。雷飛び交う戦いの場には似つかわしくない頼み。けれど、それでも。
「――うん」
濁った心の雲を裂くような彼女の瞳に吸い込まれるように。
カレンはその手を掴んだ。
深く、深く息を吐く。
自らが向かう道の為に。掴むべき夢の為に。少女の願いの為に。
「変身!」
彼女の声が心臓の拍動と共鳴する。胸に生まれた青き宝珠は、然し白き外殻ではなく煌めきとともに広がる繊維を象った。黒のリボンでブローチになった宝石を中心に、フリルとドレスが彼女を飾る。ばさりと広がった藍色の髪は、済み渡る空色へと変わり。結ぶリボンは黄色の翼。
荒天を突き破り、昏き夜空の果てでも輝く|一番星《Prima Stella》。
|天駆翔姫《ハイペリヨン》、|再誕《リジェネシス》。
与えられた|怪人《ちから》ではなく、抱き続けた希望の具現。
石畳の上で踵を鳴らすと、透空はカレンと頷き合い、そして走り出した。
心に歌を、届けるために。
●
「本当に今日は、豊作ね!」
先程の変身を見れば、そうか彼女もまた魔法少女だったのかとでも言いたげに。
向かい来る透空に向けて、ロゼ・クローバーは魔法を放つ。
黒く茨の如き雷光は――だが、少女の身体に命中にしたにもかかわらず、動きを止めることはなかった。
高鳴る鼓動、弾むリズム。歌う想いは止まらない。
この声が届くまで、彼女は決して止まらない!
飛んで、ステップ、ターン。さながらダンスのように。いやむしろ、この場所を舞台に塗り替える。命を奪うための攻撃ですら、ライブの演出家のように。はじける笑顔は全力で、聞かせたい人へ真っ先に。
揃う声は、二人分。軌跡をなぞる赤い光は今なお変わらぬ願いを抱くカレンのものだ。
「困っているなら、聞かせてください! 私が、いえ、『私たち』が! あなたの力になります!」
一人ではきっと、この場所に来ることすらできなかっただろう。
一人ではきっと、こうして新たな姿で歌うなんてしようとしなかっただろう。
この場につとったEDENの仲間たちが。彼女に声を掛け、信じ、その手を取ってくれた魔法少女が。その全員ならば、きっとその闇を晴らすことができる。
心が悪に染まっても、何度間違えようとも、きっと変わることができる。
人として、怪人として。彼女はそのどちらも知っているから。
自分だけじゃない。魔法少女カレンの願いも背負い、彼女は、手を伸ばす。
差し出された、その手を。
ロゼ・クローバーは静かに見つめ――儚げに、微笑んだ。
「本当に、素敵」
そして伸ばす――その、杖の先を。
同時に交錯した視線が、透空の中へと彼女の感情とその内心を詳らかにするだろう。
「|だから《・・・》、私はあなたたちを殺すのよ」
「!」
歌が、止まる。
ここまで近づけば最早逃げ場はないだろうとばかりに、充填された雷撃を以て蒼天を焦がさんとする魔法少女。
「――すまないね」
|ふわり《・・・》。
舞う、白に紅色にも見紛う濃く艶やかな紫。花弁にも見紛うそれは、蝶の群れ。
放たれる寸前にその四肢を固められたロゼ・クローバー。
警戒の視線を外した紫遠によって放たれた『蘭蝶』。経た年月を感じさせぬ鮮やかさをもちながら、然し振り撒く呪詛と香りは成熟したそれだ。
ただ、静かに。蒸せぬ煙の代わりに、息を吐く。
(初対面で、しかも敵であるキミのことを案じてくれる心優しいお嬢さんだ)
告げようとした。けれど、口には出さない。
既に分かっている、レインによる射撃の傍ら敵の分析を同時並行で行っていた彼と、彼の手にする端末のAI。だからこそ、『これ』が最適解だと判断した。
「カレンさん、力を借りるよ」
静かにそう告げ、深く、深く姿勢を屈めると共に、鞘から溢れ出す白炎。
狗神の用いたそれではなく、少女の祈りが生み出した浄化のそれのみを刀身に纏わせ、自身の強化には宿怨の熱を点して。
――居合の刃が、黒衣の身体を断つ。刃が身体を通ることはなく、ただ、白い残光だけが確かに届いた。
「――!」
断ち切られた敵の姿に目を見開くと同時に祈る手の中に感じた違和に、目を落とす。
先程使ったはずの、『銀の弾丸』。それが再び、カレンの手の中に握られていた。
透空が再使用の対象に選んだ√能力は、因果を巻き戻すための弾丸。けれど、どうして一度使った『それ』だったのか。
|夜明け《おわり》が、迫る。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
星宮・レオナ連携・アドリブ歓迎
ボク自身子供の側だから、カレンさんを止めようとしても説得力が無いから、これだけは守ってほしいな。
もしこの先、魔法少女として戦うことがあっても、何が何でも死なない事。
カレンさんが死んだら泣く家族がいる事、忘れちゃ駄目だよ。
自分にはもう無い物だけど、そこは口にしない。
【リミッター解除】からの【高速移動】で【残像】を生む事で、入れ替える位置を絞らせない。
複数の位置に同時は無理だろうからね。
そしてミスティドライバーに炎の力を宿したブレイズキーをセット、チャージ開始。
【牽制射撃】を加えながら接近して、|炎の力《【属性攻撃】》を加えたファルコン・グランツァを叩き込む。
●
既に、ロゼ・クローバーは膝をついていた。
満身創痍、最早戦うことも難しいだろう。そんな相手に、カレンは駆け寄ろうとする。もう、これで和解できるはずだと。
「ダメだ」
しかし――それを制する者がいる。
星宮・レオナ(h01547)。走り出そうとするカレンを止め、そして告げるだろう。
「彼女は、正気だ。だから、カレンさんの敵になろうとしているんだ」
相反する言葉。
正気なら、戦わなくていい。敵ならば、まだ助けられる方法があるのではないか。
「ふふ、もう、無粋ね」
――ロゼ・クローバーは。諦めたように口を開いた。
夢から醒めたようだと口にした。だが今こそが彼女にとっては夢のようなもの。善性を取り戻す白炎による数奇な偶然によって、今のロゼ・クローバーがいる。
一度死し、再び肉体を取り戻すころには、また狂う。
そうでなくとも、この夜が終わればまた割れた意識は狂気に堕す。
「――あなたを殺そうとしたのも、あなたを傷つけるような真似をしたのも、ただ『魔法少女』だから。狂った私の壊れた執着。理由も何も、あったものではないわ」
カレンは、押し黙る。
そしてレオナもまた、口を閉ざす。
√マスクド・ヒーロー。いや、この|√《せかい》だけに留まらない。不条理は溢れており、理不尽な悲劇は後を絶たない。その全てに明確な理由などはなく、そしてそれが降り掛かることにも、一から百まで理由が用意されていることなど、ない。
「この心が一夜の夢ならば、せめて」
悪に墜ちたら、こうなると。狂気に身を任せれば、こうなると。反面教師になり。
後顧の憂いの必要ない|敵《・》として討たれたかった。
それが、中途半端に目覚めてしまった魔法少女の|先輩《・・》としての責任だと。
●
――歯を、噛み。
俯くカレンの額を、ぱしと指が打った。
レオナが、少女にデコピンを食らわしたのだ。
「顔を、上げて」
言われ、少女が顔を上げた時、既にそこには背中だけがある。
揺れる束ねられたその向こうで、どんな表情を浮かべているのか。ただ、はっきりとした声だけが届く。
「魔法少女として戦うのならば、死んじゃ駄目だ」
伝えなければ、ならないと。
死ぬだけじゃない。傷つくだけでも悲しむ人が彼女にはいる。ならば、目の前の相手を助ける優しさと同時に、そんな――自分の為に涙を流してくれる人を傷つけないようにしなくてはいけないんだと。
ならば、あなたは。
そんな言葉を、少女は呑み込んだ。決して顔を見せないレオナのその奥へ踏み込むのは、きっと無粋だと思ったから。
「そして、もう一つ」
レオナは腰に巻かれたベルトのバックルへ、炎の意匠を持つ鍵を叩き込んだ。
「君の力と優しさは、無駄なんかじゃない」
――不条理は溢れており、理不尽な悲劇は後を絶たない。
自分は怒りに身を任せた。彼女は、きっと違う決断ができるのだろう。
今回だってそうだ。助ける、救う。その解釈は難しい。けれど今、目の前に立ち塞がりながら。氷を操る『魔法少女』の表情に、陰りや後悔はない。
だから。
「見ていてくれ。ボクたちの、戦いを」
錠が開かれ、炎が身を包む。赤き隼が揺らめき、山の彼方から薄く夜闇が白み始める中で、その輝きは暁の如く覚悟に燃え上がる。
マグナファルコンは、|飛翔《と》んだ。
ロゼ・クローバーの姿が白き影と共に消え、そして飛翔したレオナを呑み込むように出現する絶対零度の領域。朝霧にも見紛うその中で、赤い人影が呑み込まれ消え失せる――。
「――!?」
|ことは《・・・》、|ない《・・》。
残像。目にも留まらぬ圧倒的な機動力を以て生み出された幻影。それらはそのどれもが燃え盛り、審議の判別がつきにくいだけでなく、消える寸前まで零度の空間と対抗し着実に相手が魔法を維持するためのリソースを削り取る。
リミッターを解除した出力。それと同時に。
「――本当、本当に……バカ、みたい……!」
眦に涙を溜め、唇を噛み、それでも杖を握って。
決して目を逸らさずに、祈りを続ける、一人の魔法少女がいたから。
鳴り響く快音、【Full Charge!!】という機械仕掛けの声。
一分間という短くも、長くも感じられる間を逃げ切った隼は、その翼を大きく広げた。
「さあ、見せてみなさい! あなたたちの力を!」
満足げに。気品を漂わせた笑みを浮かべ、闇堕魔法少女『ロゼ・クローバー』は、その名の通りに繰り出さんとする技を受け止めんとするだろう。自らと燃える隼の間に零度の領域を障壁のように移動させ、一撃を真っ向から受け止めんとするかの如く。
「これで――決めるよ!」
長い夜が、終わりを告げる。
マグナファルコンの翼が羽搏き、そしてそのまま落下する。鋭き鋭角を描きながら翼を丸めて空気をいなし、確実に地上の獲物を刈り取る狩人の一撃。
|必殺技《フィニッシュムーブ》、ファルコン・グランツァ。
夜明けの日差しと共に、差し込む光。
交錯の瞬間、世界は無音となった。
倒れ伏した一人の|少女《てき》は天へと手を伸ばし。消えかかる空の星へ、ただ満足げに微笑むのだった。
●
こうして、EDENたちの活躍によって一人の少女が救われた。
夜が明け、朝帰りとなった少女を母親は涙ながらに抱き締め、謝罪し、真実を打ち明け――それはそれとして説教もするだろう。
紆余曲折はあったが、しかし。
父親とのことにも、きっと彼女は向き合っていけるはずだ。
クラスメイトや教師との関係に関してもいわずもがな。これまでの態度や諸々のことも、本人がどうにか変えていけることだろう。
だが、同時に。少女は『魔法少女』として今後も生きていくことになる。
突然の出来事によって与えられてしまった力の使い方や、これからも発生するであろうデザイアモンスターのこと。
それに、君達√能力者に関することや、父の死の原因である『プラグマ』に関しても知っていかなくてはならなくなる。
多くの試練、多くの迷いや葛藤が降り掛かる事になるだろう。
それでも、少女は――|篠杜《しのもり》・カレンは立ち向かってゆくのだろう。
あの日、父との思い出の場所で自分を守った人々の優しさと、強さが。
そしてあの日自分が手を伸ばし、そして自分を導いた先輩の魔法少女の姿が。
彼女を成長させ、一つ『大人』へと成長させたのだから――。
🔵🔵🔵 大成功