4
迷走せし安寧を掲げ
●襲撃
√ドラゴンファンタジー、名の響く大冒険王国の海港にて。
無数に広がり置かれたコンテナ群。その中から、最初から場所を定めていたとしか思えないほど的確に、とある区画のコンテナがモンスターの一群に襲われた。
その光景を目にして生き延びた警備員曰く。突如として現れた黒い異形の一団は、迷いなくそのコンテナを破壊し、本来ならば大冒険王国の国防を担うはずであった竜漿武器のことごとくを奪い去っていったのだ。
それは、モンスターの行動にしては余りにも統率が取れすぎていたという。話によれば、モンスターの襲撃の折、その全容を少し離れた場から見ている黒甲冑の人間――否、あの雰囲気は人外であろう存在がいた。おそらく、それが今回の首謀者に違いない、と。
無謀に積荷を守ろうとしなかったが故に、己の命を確かな死から掬い上げた警備員はそう告げた。
併せ――あれは、過去。世界に安寧をもたらすために、聖剣を探し続けた勇者『ロード・マグナス』の、|怪物《モンスター》化した成れの果てではないか、とも。
●阻止を
「集まって頂けて感謝を。既に、大変な事態が起きている」
星詠みであるレスティア・ヴァーユは、集まってもらえた√能力者への礼と共に、即時本題へと話を切り出した。
「√ドラゴンファンタジー。大陸でも大きな領土を持つ、世界有数の大冒険王国において、モンスターの一団による大規模な竜漿武器強奪事件が起きた。その後、モンスターは何者かに『竜漿武器の装備方法』を認識し、極めて統制された指揮下によって、【大冒険王国の武力制圧】を目標に活動を開始している」
モンスターが統制の意志をもって動いている。これだけでも驚くべき事だが、更にそれらが確信的にダンジョン外へと赴き、冒険者達の興した冒険王国を制圧する――それが日常化するような事があれば、√ドラゴンファンタジーの平和は根底から崩れるであろう。
「今、竜漿武器を奪われ、そのタイミングで侵攻を受けている冒険王国は、武器強奪の報を受け、即座に『竜漿兵器奪還』に莫大な報奨金を掛けた。報奨金だけではない。モンスターによる国の侵攻は、膨大な一般人の血を流すことと同義であるからだ。今まさに、その呼びかけに応じた√能力者の冒険者や軍人などによる義勇隊が結成され、モンスターの大群と正面からぶつかり合っている」
星詠みは、何枚かの現地までの地図を取り出すと、地形が詳細に描かれた地図の一点を指し示した。
「今は、丁度非常に高所の崖が左右に展開された谷間にて、前衛同士が正面衝突している。――だが、戦況は思わしくない。その後衛に竜漿武器『妖精弓』を装備したモンスターが、前衛を援護しているためだ」
星詠みが指先で押さえられていた地図を小さく叩く。
「今回の依頼は、その敵軍の後方から襲撃を掛けて後衛を崩壊させること。ゾディアック・サインの予知の範囲によれば、左右の崖上はモンスターが移動するのも困難な難所であるから、そこからの攻撃は警戒しなくても問題は無いであろう。そして――今回の件には首謀者がいる。その首魁を、何としても仕留めてきてもらいたい。……何故冒険王国を狙うのかは分からないが……完全に倒さない限り、それが何度でも同じ事を繰り返すのは予想に難くない」
そこまで告げて。星詠みは『どうか宜しく頼む』と、一同に静かに頭を下げた。
これまでのお話
マスターより
春待ち猫この度は、数多くのシナリオの中からご閲覧頂きまして、誠に有難うございます! MSの春待ち猫と申します。どうかよろしくお願いいたします!
●シナリオについて
この度は、竜漿武器を強奪しそれを取り扱うモンスター群との戦闘、ならびにこの事件の首謀者の討伐が目的となります。
※今回の敵は、強奪した竜漿武器を駆使してきます。名前の挙がる竜漿武器の特性については、ワールドガイドの√ドラゴンファンタジーにおけるアイテム武器を参照して頂ければ幸いです。
●シナリオ進行について
第2章以降は、必ず断章を投下致します(第1章の断章はございません)。
それにあわせ『プレイングの受付期間』を設けますので、タグをご確認の上ご参加いただければ幸いです。
※通常、サポートを問わず、受付期間外のプレイングは流させていただきますが、プレイングの受付期間に再送を頂けます分には大歓迎です。
※シナリオの進行状況は、都度タグにてご報告いたします。大変お手数ではございますが、ご確認いただければ幸いでございます。
○受付期間内に青丸分の参加者様がいらっしゃらなかった場合はゆるゆる進行といたしまして、期間以降の参加者様がいらっしゃるか、サポート様のご助力によって進行を行わせて頂きます。
それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしております。
よろしくお願いいたします!
24
第1章 集団戦 『選定の天使』
POW
選定の光矢
【弓】から【光の矢】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【昇天】して死亡する。
【弓】から【光の矢】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【昇天】して死亡する。
SPD
厭われし楽園
知られざる【失楽園戦争での記憶】が覚醒し、腕力・耐久・速度・器用・隠密・魅力・趣味技能の中から「現在最も必要な能力ひとつ」が2倍になる。
知られざる【失楽園戦争での記憶】が覚醒し、腕力・耐久・速度・器用・隠密・魅力・趣味技能の中から「現在最も必要な能力ひとつ」が2倍になる。
WIZ
セレスティアル・セレクト
神器「【天意の弓】」に変身する。自身では動けなくなるが、これを使用して攻撃する者はダメージを2倍し、状態異常【光輪による捕縛】を付与できるようになる。
神器「【天意の弓】」に変身する。自身では動けなくなるが、これを使用して攻撃する者はダメージを2倍し、状態異常【光輪による捕縛】を付与できるようになる。
ウォルム・エインガーナ・ルアハラール・ナーハーシュわざわざ安全な場所を教えてくれるとは、優しい星詠みさんだね、ヨルマ
では行こう。我々の教会が無い√ではあるが、人は人。私は人の神と定義されたのだからね
それに、生き残った人々が新たな信者になってくれるかもしれない
「鱗」を使って、一度異界を通ることで崖を上る工程を飛ばして崖上に行こう
|眷属《こども》を創り出し、崖下へ
蛇の姿で崖を降りたら、天使の姿に変身して紛れ込みなさい
そして内から弾けるように爆発するんだ、周囲に疑心暗鬼を撒き散らしながらね
死に際に一言「裏切者がいる」と叫ぶのを忘れずに
彼らに自分に弓を向ける幻影を見せてあげよう、精神を疑惑で汚染しよう
君達の生命力も魔力も、私が有効活用するから安心おし
●疑心暗鬼が牙剥く先に
敵と味方がぶつかり合う戦線後方。ウォルム・エインガーナ・ルアハラール・ナーハーシュ(回生・h07035)は、前線を維持している冒険者――√能力者と現地の軍人たちの姿を目に留めていた。
人側の戦線は善戦している。だが、それを苦しめているのは、後衛――竜漿兵器「妖精弓」により、無尽蔵に生み出される矢を雨のように降り注がせている、中空に羽ばたく「選定の天使」の姿であった。
左右の崖は高すぎて、的確に狙いを定めるには困難と判断したのであろう。セオリーである左右高所襲撃を敢えて避け、選定の天使たちは自らの翼で後衛の中空に陣を敷いていた。
「わざわざ安全な場所を教えてくれるとは、優しい星詠みさんだね、ヨルマ」
ウォルムは敵の陣を目に、星詠みが『左右の崖上はモンスターが移動するのも困難な難所である』と告げていたのを思い返す。それは言わば、そこが完全な安全地帯となっているという証左でもあった。
先ほど、ウォルムが名前を呼んだ、日常では人の姿を取っている変幻自在の巨大な黒蛇「ヨルマ」が、今は子供の姿で頭を撫でられ幸せそうな表情をしてみせる。
「では行こう。我々の教会が無い√ではあるが、人は人。私は人の神と定義されたのだからね。――それに、生き残った人々が新たな信者になってくれるかもしれない」
ウォルムはとある存在に『かみさま』として定義された厄災である。故に、遍く人の子は救うべき対象だ。
この世界には、現状√EDENのように教会こそないが、依頼を通して神自らが布教活動も行っている。今回も、生き残った人々の信仰を集める事も不可能ではないかも知れない。
杖をつき、ゆっくりとウォルムが一歩、足を前に進める。ヨルマもこくりとひとつ頷いて、その傍らに寄り添うように歩き始めた。
数歩ほど進んだウォルムの歩く先、空間に蛇の鱗のような亀裂が入る――その開かれた異界への門を通り、縦横も分からぬ世界を抜けて戻った先。ウォルムは敵も味方もいない、眼下の見晴らしが非常に良い崖上へと辿り着いていた。
「ここであれば良さそうだね」
確かに敵にとっては矢を射掛けるには不安要素しか無い距離。しかし、ウォルムが成そうとしている事――純粋に、敵味方を見極めるだけならば、これで十分。
『おいき、私の|眷属《こども》たち』
ウォルムが言葉と共に、とん、と杖先を地面に突く。
瞬間、√能力【|愉快な仲間たち《スパイス》】によって、地面から湧き上がる様に現れた四十体弱にわたるウォルムの眷属蛇が、一斉に土色の迷彩色を纏うと、滑るように崖を駆け降り始めた。
眷属蛇たちは降りた先にある敵陣の足元に紛れ込むと、極めて自然な形で選定の天使の姿に変化して、一見後衛の陣に増援が来たかのように頭数を増やしていく。
それを、目の良い味方陣営が察知し、増援の警告を叫ぶその前に。
うまく選定の天使に化け、味方に矢をつがえていた眷属蛇の一体が、突然その腹部を激しい音と共に破裂させた。
今まで圧倒的優勢であった選定の天使達が、理解できない光景を前に目が釘付けになる。弓をつがえる手を止めて、天使が落ちたモノを見つめる先――それは叫んだ。
『裏切り者がいるぞ!!』
それは、最後に眷属蛇へと戻る前にその姿を掻き消した――最後、ウォルムの√能力による【疑心暗鬼】を撒き散らして。
「――!!」
選定の天使達の表情が凍り付いた。その隙をウォルムは見逃さない。|人間災厄《神》の威のひとつ、実体と現象すらも伴う幻『虚現』が、更に敵陣の真っ只中へと選定の天使を模倣した幻を現出させ、自陣に矢を放とうとする――それは、敵の精神を一瞬で疑惑へと汚染させ、
――場は、一瞬にして大混乱に陥った。
選定の天使の一体が、その幻に矢を放つ。それは掻き消えるように貫通した反対側の天使に突き刺さる。響き渡る絶叫と共に、今度はそれを目にした他の天使が、相手を殺した本当の仲間に弓をつがえ――地獄のような疑心暗鬼の混乱は、怒濤の波の如く波及した。
そして、場に流れる血と弓として使われている魔力エネルギーは、敵の上空にうっすらと開いた世界の裂け目『鱗』に、全て呑み込まれ吸収されていく。
敵の後衛が大きく荒れている事を察した味方の冒険者達の勢力が、慌てて自陣の立て直しを行っていくのが、ウォルムの目に映し出された。
その光景を目に留めながら、悪くない成果だとウォルムは静かに頷いた。
「うん、悪くはなさそうだね……君達の生命力も魔力も、私が有効活用するから安心おし」
ウォルムは、この依頼には『首謀者』の存在がほのめかされていたのを思い起こす。
しかし、この戦況を一望出来る崖上に立っても、ここに首謀者の影は見当たらない。
ならば、今は、そちらに備えて力を蓄えるのみ――それは確かなまでに正しい選択と言えるものだった。
🔵🔵🔵 大成功
クラウス・イーザリー槍の形に錬成した魔力兵装を手に光輝の翼を使って飛翔状態になり、後方から天使達を強襲
高速で飛んで狙いを定め辛いようにしながらレイン砲台のレーザーで射撃を行い、接近して槍で薙ぎ払う
「君たちの思い通りにはさせないよ」
後方からの射撃部隊を潰せば、前衛が楽に戦えるようになる筈だ
飛翔状態を保ったまま戦い、徐々に加速して囲まれないように飛び回って撹乱しながら攻撃
撃たれたら魔力の盾を展開して魔力防御で凌ぐ
身体が少しずつインビジブルになっていくのはちょっと気味が悪い感覚だけど、気にせず戦い続ける
少しでも被害を減らすことができるなら、このくらい何ともないよ
●今、自分にできること
敵陣後衛に混乱が生じている。後衛からの援護が、波のように揺らいで以来、確かに少なくなっている。異変が起きているのは明らかだ。しかし、敵陣前衛に、眼前から背後を振り返ってまでそれを確認する余裕はない――。
後衛は他の√能力者によって、蜂の巣を突いたような騒ぎとなっていた。このまま壊滅してくれれば、戦況としては非常に楽になるとも思われたが、さすがにそれほど甘くはないのか、少しずつではあるが混乱が収まりゆく様子が目に入る。
「……もう始まってるね。急がないと」
戦場に到着し、状況確認のために僅かな様子見をしたクラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)が呟くように言葉を零す。
その言葉は未だ、敵には届かず、気付かれない程度の距離にある。
しかし、それは――敵陣への確かな宣戦布告だった。
次の瞬間、敵陣後衛の更に後ろから、突如、陽光にも似た光が膨らみ、爆ぜるように周囲を鋭く刺し照らす。
敵である中空に陣を敷く【選定の天使】の何体かが振り返る。そこには、√能力【|光輝の翼《ルミナスウィング》】によって、背中から柔らかな光の翼を携えたクラウスの姿があった。
クラウスは、その手より湧き零れる魔力から、魔力兵装として形取られた、頭身に近いほどの巨大な槍を力強く構え持つ。
眩しく溢れ湧き立つ光に天使の数体が気づいて、そちらの方へと振り返る。
だが――戦闘に於いて、その反応はあまりにも遅いものだった。
群れをなした天使には、既に矢をつがえる間すらも与えられなかった。
――中空で、陣を保持する敵陣後衛へと、風穴を開けるよう鋭い一筋の閃光が駆け抜ける。衝撃波すら感じるほどの勢いで飛翔したクラウスの、魔力によって立体化した煌めく槍に、選定の天使たちは、あるものは弾き飛ばされ、あるものは完全に貫かれて身体すら維持出来ずに霧散していく。
「次――っ、」
敵陣営にその身を敢えて抉り込み、クラウスは大地に足を触れる事なく、能力の強化条件となる次のインビジブルを視界に捉えて、更に上空へと飛翔した。
攪乱を交え、本来の目的地ではなく、いくつかのインビジブルを経由し飛翔跳躍を繰り返す。
一瞬前までクラウスがいた場所を、天使の弓矢が目標を突如喪失したかのように、次々と虚空へとすり抜けていった。
そして、クラウスは後衛に陣取る選定の天使達よりも、更なる上空にて身を翻して立ち尽くす。次の瞬間、クラウスが軽く片手を動かすと、それに合わせて一斉に配置された『レイン砲台』から、凄まじい数のレーザーが選定の天使達に降り注いだ。
混乱がまだ残る戦場に容赦無く降り注ぐ熱光。天使達は逃げ惑いながらも、尚も上空を飛翔するクラウスを墜とそうと、己の√能力によって速度や器用さを跳ね上げながら、必死になって矢をつがえる。
「――君たちの思い通りにはさせないよ」
天使達による竜漿兵器『妖精弓』による、魔力で生まれた弓矢の一斉砲火。
しかし、クラウスは瞬時に魔力から錬成して自身に張り巡らせたマジックシールドで、そのことごとくを打ち払った。
このまま、確実に射撃部隊を潰せれば、この世界の冒険者や軍人達でも、上手く前線を抑え込めるであろう――クラウスの思考に、そのような事実に基づく観測が浮かんだ瞬間、
「……ッ」
クラウスに、まるで世界が回るような目眩が襲った。
内部魔力の使い過ぎによる貧血に近しい症状が、クラウスから一時の判断能力を奪っていく。影響はそれだけでは無い。――√能力の影響により、クラウスの身体は少しずつ、しかし確実にインビジブル化し始めていた。
ふと目を向けた自分の片手は、今や『血が通った肉』と呼ぶには存在感があまりに希薄な状態にまで透き通っていた。
まだ肉体のみだが、心にはうっすらと気持ちの悪さが積み重なっていく。痛覚も無い、不調も一切無い。ただ、このままでは、いつか少しずつ擦れて薄れて消える瞬間が、静かに、だが確実に待ち構えていることだろう――。
人によっては恐怖と喩えるであろうその現象を、クラウスは状況が許すわずかな合間に一拍それを見つめて。
そのまま――原因である√能力を解除することなく。まだ戦闘の意志がある敵へと距離を詰めて、己が手の槍で更なる敵を薙ぎ払っていた。
「少しでも被害を減らすことができるなら、このくらい何ともないよ」
√ウォーゾーンで生きてきた経歴、そしてそれまでの生き筋が、クラウスをこの行動に駆り立てる事を躊躇わない。それに応えるように、敵は更に数を減らしていく。
――自己の『希望』はそもそも欠損していた。自己愛を語るには、喪うものが多すぎた。
そのようなクラウスに、今の己に出来る事があるならば。
それはこの手で障害を払い続け、可能な限りの『人の未来』を示すこと――ただ、それだけだった。
🔵🔵🔵 大成功
ジョーニアス・ブランシェ連携アドリブ大歓迎
全くモンスターも軍隊紛いの行動をするとは世も末だ…いやこの世界では当たり前か?ともかく、後衛の弓部隊ならまとめて叩いた方が効率的だろう。
ガンライフルを中遠距離実弾用に調整する。現場の弓部隊を見て、ものすごく嫌な顔をしながら戦闘開始だ。
制圧射撃と援護射撃を交互に繰り出しながら、放熱バフを味方に付与できるぎりぎりの着弾地点を戦闘知識とスマートグラスに入力したデータで計算し、味方に叫ぶ。
『バフつけるぞ!今の距離を着弾まで維持してくれ!こいつを食らえ!』
一掃できるとは思わないが、それなりのダメージを敵集団に与えることはできるはずだ。制圧射撃を続けながら反撃にはジャストガードで凌ごう。
●戦況を変える一手
「ったく、全くモンスターも軍隊紛いの行動をするとは世も末だ……いやこの世界では当たり前か?」
敵の後方から様子を見ていた、ジョーニアス・ブランシェ(影の守護者・h03232)は、その圧倒的なまでに統率されたモンスターの一群に、ぼやかずにはいられなかった。
それは群れと呼ぶよりも、完全な隊列にも近かった。目に入る限り、前衛を防御力の高いモンスターが抑え、その背後にて飛翔して中空に滞空する【選定の天使】達が後衛から矢を射掛けるスタイルだ。
「……」
白くしなやかな羽と少年の姿をした、世間一般では『天使』と呼ばれるモンスターが空を飛んでいる。それをまじまじと目にしたジョーニアスは、思い切り苦虫を噛みつぶしたような顔をした。思うところがあるのだろう、むしろ苦虫の方がまだ美味いと言い出しかねない表情をしつつも、
「ともかく――後衛の弓部隊なら、まとめて叩いた方が効率的だろうな」
何とか眼前の戦場を前にして、言葉とともに思考を切り替えていく。
視界を遮る左右の崖は、手段がない限り登ることは叶わない。ならばと、ジョーニアスは傍らにあった、崖から転がり落ちて来て年月の経っていると思われる大岩の影へと一旦身を隠した。
そして、ジョーニアスは装備している己の愛銃とも呼べる可変式ガンライフルの射程を数百メートル単位の中距離へと調整した。
敵数は、減ったとは言え未だ少なくはない。これら一体一体を丁寧に仕留めていてはきりが無いというのは、即座に判断がつくところだ――ならば、もう弾は『散らした』方が敵を倒すには効率が良い。
ジョーニアスは、中空に浮かびながら遊ぶように人間側の陣営に攻撃を仕掛ける天使たちへ向け、隠れ場が存在しないことを逆手に取って片っ端から鉛の弾を撃ち放った。
それからジョーニアスは、選定の天使本体への射撃と、それらが人陣営側へ放つ魔力の矢も、援護射撃の一環として、どちらも徹底的に撃ち潰していった。
だが、効果はあるものの続ければ続けた分だけ。天使達の敵視が、確かに己達の背後に存在する敵――ジョーニアスに向くのは、もはや必然とも言えた。
ジョーニアスの元に、鋭く強い魔力が籠められた一撃が飛来し、咄嗟に大岩へ身を隠す。矢を受けた岩に罅が入る。いつ崩れるかは分からないが、それでもその刹那に生まれた敵の隙を狙って、ジョーニアスは更にピンポイントで敵の羽を撃ち抜いた。
他の√能力者の影響もあって、敵が浮遊する後衛はかなりの崩壊の様相を呈しているが、まだ敵前衛は実質手つかずで残ったままだ。
「あと一手がほしいな……っ。――これなら!」
脳裏に浮かんだ、その『あと一手』は戦況を確実に変える――それを確信したジョーニアスは、あと一撃も耐えられるか分からない瓦解寸前の岩に隠れた瞬間、スマートグラスを装着して周囲の情報をホログラムで一斉表示させた。
これからの攻撃が、敵に与えるダメージ、それによる味方への影響、様々な可能性を一斉に調べ上げ脳内に纏め上げ、そこから弾き出した結論により、ジョーニアスはガンライフルをそれに最適な形へと組み上げ直す。
そして、岩陰から飛び出したジョーニアスは、敵に向かいダッシュで距離を詰め、味方陣営に向けて全力で叫んだ。
「バフつけるぞ! 今の距離を着弾まで維持してくれ!」
距離を詰めて、それでも届いたか分からない声。しかし、選定の天使達はざわめき、その違和感は確かに味方の所まで行き着いた。
『こいつを食らえ!』
ジョーニアスの√能力【|Elementis Pluvia《エレメンティス・プロヴィア》】が、一番前線に近いところにいる天使に直撃し、その身体を弾丸ごと爆裂四散させた。炸裂した弾丸は着弾先で更に破裂し、無数の敵を巻き込みながら強力なダメージを与えていく。同時に√能力によって放たれた熱は、味方の武器に赫々たる色を宿し、剣ならば、一振りでその傷に放熱からなるダメージ重ね、武器としての戦闘能力を大きくに跳ね上げた。
敵陣の後衛は、既に壊滅的状況だった。
未だ残敵がいないわけではないが、他の√能力者の戦いも含め、もはや何を攻撃していいかも分からない状態で右往左往している存在が殆どだ。
「よし、これで一掃できるとは思わないが……」
ジョーニアスが、掛けていたスマートグラスでこの土地の戦況そのものを観察する。見れば、この戦線はモンスター側の後衛はほぼ壊滅。人類側にかなりの優位が見て取れた。
あとは、後衛をこのまま壊滅にまで追い込めれば、この戦闘での勝利はほぼ確定できる。
勝利は、後少し――こちらの手の届くところにまで迫っていた。
🔵🔵🔵 大成功
アダン・ベルゼビュートアドリブ歓迎
都度、許可を得る必要は無いが……
何を言わずに向かった時の方が恐ろしい故な
相棒も問題無いと判断した以上
本日は派手に、盛大に暴れる事としよう!
√能力:壊滅の咆哮
何体、何十体居るのかは知らぬ
しかし、星詠みの言葉通りならば
弓兵共は後方に屯しているのであろう?
ならば、話は単純だ
其の一切合財を、俺様の『砲影』を以て撃滅する
フハハッ!どんな能力を上げたとしても!我が影武装から逃れられると思わぬ事だな!
【範囲攻撃】【なぎ払い】【部位破壊】
嗚呼、念の為に
粉塵や倒される味方を影にして、
伝達を優先にしようと動く者は即座に撃ち抜く
【暗視】
……此処迄、派手に動けば気取られそうだが
其れは其れで楽しみが増えるか
●只、総てを殲滅せよ
アダン・ベルゼビュート(魔焔の竜胆・h02258)は、歩みながら己が身を振り返りつつ、少し前の過去を振り返っていた。
現在、相棒である人物の家に療養を兼ねて居候している身であるが、その外出については特に定められたものではない。しかし、だからと言って、無言で依頼に向かった場合、己の有事には間違いなく大惨事となり、誰も幸せにはならないだろう。
「……」
親友でもある相棒との付き合いは長く、既にその光景は目に浮かぶように見えていた。故に今回、親友から『問題ない』という言葉を得たアダンは、今日は久方振りの単独戦闘とばかりに、意気揚々と戦地に赴いた――のだが、
薙ぎ倒された死体。
熱波による攻撃痕。
挙げ句の果てには、互いに弓矢を向け殺し合う【選定の天使】の姿。
星詠みの話に聞いていた敵の後衛は、既に壊滅寸前状態と化していた。
「……ふむ、若干到着が遅れたか?」
これが他の√能力者の成果であることは容易に想像がついた。なかなかに錚々たる結果であろうとも思われる。
しかし――これでは、残されているのは戦闘も何もない、あまりにも気の乗らない残敵処理のみ。
「仕方あるまい、早々に……」
アダンが嘆息と共に呟いた、瞬間。不意に――その背後、遠くから無数の気配が波のように迫ってくるのを感じ取った。
今はまだ、きわめて小さな影だったが、その数は決して少なくない。白い羽根に、掲げられた光を宿す矢を携えた弓は、√ドラゴンファンタジーにおける竜漿兵器【妖精弓】だと見て取れた。
「――ほぅ?」
アダンの瞳が細まり、唇が思わず弧を描く。
一直線にこちらに迫り来る、その気配と数は明らかに味方のものではない。あれらは、ほぼ確実に敵の増援であろう。今はまだ遠いが、あの数が攻撃射程に入れば、戦力的にはこちらを押し潰し、後衛の増強とするには余りある。
まだ互いの姿は、遥かに遠く。しかしアダンへの殺意は溢れんばかりに伝わって来た。敵は間合いに入り次第、容赦無く矢を射掛けてくるであろう。
「ハッ!! そう来たか、上等!」
アダンは極めて愉快そうに、己への殺意を一笑に付した。
「それならば、話は単純! ――其の一切合財を、俺様の『砲影』を以て撃滅するまで!」
アダンの影が、大きく揺らめく。闇色の影は一瞬にして立体として揺れながら、見る間に硬質の物体が組み上がるように、ひとつの存在として形を成していた。
それは『砲影』と呼ばれた漆黒の砲台――それは大戦にて活躍を示した、歴史に残る伝説の8.8cm高射砲をベースとしたものであり。
『咆えよ! 俺様の道を貫く為、貴様らの総てを撃滅してくれよう!』
【|壊滅の咆哮《フグーズ》】――大地に高射砲でありながら水平に近い角度で据えられた砲影は、アダンの猛る声音と共に√能力を宿し、妖精弓も届かぬその射程から漆黒の砲弾を発射した。
「さあ、本日は派手に、盛大に暴れる事としよう!」
「――ッ!?」
選定の天使達も、まさかその距離から攻撃が仕掛けられるとは全く思ってもいなかった。しかも、その中の一体を貫き着弾した瞬間、弾丸は爆発霧散し、周囲に舞う影の塵となって、その場の視界を瞬く間に奪い尽していく。
選定の天使達は驚きに足を止め――或いは、急ぎアダンを仕留めようと各自が自己の能力を強化して、こちらに迫る。
「フハハッ! どんな能力を上げたとしても! 我が影武装から逃れられると思わぬ事だな!」
しかし、√能力により無限連射と化した高射砲は着実に敵数を減らしていった。併せ、影の塵により回避力と的中力の落ち切った弓など、何の役にも立つ事はなく――砲弾の雨から抜け出して迫った敵は、アダンから放たれた、飛距離に従い分岐して蠅の翅翼のように広がる『羽影』の黒き閃光に、次々に灼き千切られていく。また、奇跡的にも生き延びて逃げ切るようにアダンの至近に飛び込んで来た敵も、皆その影から成る『鎌影』によってその首を弾き飛ばされた。
敵後衛、増援を含めて完全壊滅。
それを察した敵前衛も、まるで麻の布がほつれ穴だらけになるように、一気に崩壊し始めた。
戦意を無くして、逃げ出し始めた敵の追撃は己が心に反する。それらを敢えて見逃しながら、アダンは周囲を見渡した。
「……此処迄、派手に動けば流石に気取られそうだが。其れは其れで楽しみが増えるか」
ここまで総崩れになれば、これを指揮していた者は黙ってはいないだろう。少なからず動きがあるはずだ。
次に来るのは吉報か凶報か。アダンは静かに、だがその双眸に鋭い光を宿して待ち構えた。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 冒険 『白線以外を踏んではいけないダンジョン』
POW
パワーで解決できる行動
SPD
早さが足りてる行動
WIZ
頭を使った行動
√ドラゴンファンタジー 普通7
●
敵軍とも呼べるモンスターの一群は、もはや戦意を無くして完全な烏合の衆と化していた。
敵が、散り散りに崩れ敗走を始める。それを追い掛けるようにして、一際早く敵の群れを抜けた味方陣営の一人が、√能力者達にとある報をもたらした。
「敗走する敵の一群の方角から、首謀者がいると思われる場所が特定されました! 場所は現在位置より南東にある、既に放棄された廃倉庫一帯です!」
味方の軍人らしき人物が差し出した地図によると、それはこの絶壁となっている山間の向こう――然程遠くない場に存在していた。
だが、この巨大な崖に始まる山々が、自然の障害となっており軍勢として責めるには双方が大きく迂回をしなくてはならない。敵が、この山間を進軍してきたのもその影響であろう事は想像に難くなかった。
「実は――この崖の近くには山を抜ける洞窟が存在しているのですが……」
軍人が、非常にもどかしそうに告げる。
「そこは、溶岩地帯に特殊な岩盤で構成されたダンジョンなのです。一見は地下都市のように見えますが、コンクリートの灰地を踏むと、あるものは溶岩に飲まれ、あるものはその溶岩に泳ぐサメやワニが飛び掛かってくるという――何が起こるかは想像もつかぬ奇異と珍妙極まりない場所で、とても多数では移動出来る場所ではありません」
その話を聞けば、敵モンスターですら近道であろうとも、そこを避けた理由には納得するものがあった。それが軍と同じ隊列をなしているなら尚のことであろう。
「あなた方ならばそこを潜り抜け、敗走した敵が山を迂回して戻り再編成される前に、敵の首謀者の元へ辿り着けると思われます……!どうか、先に首謀者を抑えていただきたい!!」
味方の軍人は、そう告げて√能力者達を、その洞窟まで案内してくれた。
確かに目につく範囲、そこはまるで人が住んでいるかのような地下に生まれた都市のような光景が広がっていた。
「よろしくお願いします! 我々も、迂回路ながらも急ぎ体勢を立て直し、武器の確保と共に後を追います! 今回の首謀、モンスターと化した堕落騎士『ロード・マグナス』を何とか……!!」
そうして――味方の願いを受け取って。√能力者達は先手を取り、敵首魁であると耳にした『ロード・マグナス』への直接対決を目指して、地下都市ダンジョンへと足を踏み入れたのであった――。
MS:
都市内には道路と呼べるものが走り、視界には、常にどこかしらに繋がる白線が引かれています。
そのため手段はなくとも、それを辿れば出口へはいつか辿り着けるようになっていますが、慎重に進むかショートカットを狙うか、進み方は様々です。
参加者様の素敵なプレイングを心よりお待ち申し上げております。