【個】雨上がりの空には
メゾン・ド・エデンの、ある日の昼下がりのこと。先日、√ドラゴンファンタジーで、|彩玻璃花《コロラフロル》を見に行った時。今度、話したいことがあると伝えて──
──ようやく、話しに行こうと思ったから。
普段は屋上や中庭、あるいは自分の部屋に籠ることが多い中、今日は部屋から出て、お隣さんの……同じ南棟の、409号室に向かう。
ꕤ𓈒𓂂◌𓂃𓂂ꕤ*.゚
#蓼丸・あえか
#水藍・徨
🌈口を閉じる☔

(父が「おでかけ」をすると言っていたので、お茶をしながらのんびりと待っていた。)
(暑いくらいに晴れた日。空調の効いた室内に──ノックの音が響く。)
あら。(瞬いて)こうくん?
こんにちは。こうくんから来てくれるの、嬉しいわ。
待ってて、今開けるわね。
(程なくして開かれた扉。覗いた部屋は、白を基調に華やかな調度。)
(玄関脇では立てかけてある愛用の傘の元、きら、と彩玻璃花のマーカーが光る)
いらっしゃい。どうしたの?
(屈託なく、尋ねた。)
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(外は少し暖かかったからか、ひやりとした風が吹き抜ける)
(ふと、視線を向けたら、アンブレラマーカーが寄り添った傘を見かけた。あなたの声に、現実へと引き寄せられて)
あ、はい、えっと……その。
……今日は、あえかに、話したいことが……
(話したいことがある。最後まで言えずに、口ごもってしまう。これから話すことを考えたら、なんだろう。■い?)
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(話したいこと、と言われて首を傾げるも、口ごもった様子にまっすぐ向き直る)
(ためらうのは、きっと大事なことだから。かもしれない。なら。)
こうくん、あがって?
(ふわ、とほころぶ。)
いっしょに、お茶にしましょう。
お話には、飲み物やおいしいものが寄り添ってくれるの。
(どうぞ、とチェック柄のスリッパを置く。)
(きみがあがってくれるなら、まるで絵本の世界を切り取ったみたいな部屋に通されるでしょう。)
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(優しい笑顔に、さっきまで燻っていた心が解かれる)
……は、はい。
(ゆっくり頷きを返してから、チェック柄のスリッパを履いて……絵本の世界のような、あなたの部屋を見る)
わ、ぁ……
(その素敵な部屋に、|■《楽》しいと思う、自分がいた?)(また、違う変な心地に首を傾げる)
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(随分と少女趣味の部屋だから、きみには少しくすぐったいかもしれない)
(でも──■しい、と思ってくれたなら──それは。)
(椅子をきみに勧めて、キッチンに立つ。かちゃかちゃと澄んだ音を鳴らして、紅茶の支度。電子ケトルでティーポットとティーカップを温めるところから始める、丁寧な淹れ方だ。)
ちょっと待っててね。
お部屋が涼しいから、あったかい紅茶がいいわね。
おなかをあっためると、ほっとするから。
(じきに、アップルティーの芳香が漂うだろう。カップ&ソーサーがテーブルに置かれて、湯気の立つ紅茶が注がれる。大きな缶が開けられて、中に敷き詰められたクッキーが今日のお茶菓子。)
どうぞ、こうくん。めしあがれ。
──僕も、いただきます。
(ほほ笑んで、りんごの香りの紅茶を口に運ぶ。うん、おいしい。)
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(勧められるまま、椅子に座って……あなたが準備する様子を見守る。自分が手伝ってもいいけれど、よく分かってないから、余計に時間がかかりそうで)
(少し、そわそわしてしまうけど……ほんのりとりんごの香りが漂って来た頃には、そんな気持ちも消えていく)
あ、ありがとう、ございます。……すみません、手伝えず……
いただきます。
(お茶をしたのは、これが初めてではないけれど)
(アップルティーを一口飲む。熱くて、でも美味しい)
(ほっ、と一息ついて)
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(■い、|■■《不安》、■■、■だ、|■《嫌》われたくない)
(黒い線みたいなものが、ふわりゆらりと少年の周りを漂い、絡みつく。振り払えばまだ切れそうな、柔らかい糸のようで)
(感情を具現化したような、そんなイメージが持てるだろう)
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ううん、お茶の支度はね。僕がしたいからしてるの。
そうね、じゃあ今度、こうくんのお部屋に遊びに行った時に、こうくんが淹れたお茶を飲んでみたいわ。
(こぼれた吐息は、おいしい、と物語ってくれているようで)
(思わずほころんでしまう。)
クッキーもね、朝焼いたばかりのだから食べてね。
全部お薦めだけど、ココアクッキーは会心かも。
(──話を、促すことはしなかった。)
(あくまでも、彼のペースで)
(話すのが難しいことならば)(頭の中での組み立ても、心の準備もあるだろうから)
(ゆったりと、紅茶を口にしながら、待つ。)
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(だから、きみが思い切って)
(話を切り出してくれた時は──とても、嬉しかった。)
うん。
(聞いている、と示すように)
(ふわり、黒い糸が彼の周りにたゆたう。繊細で、やわらかい、心のうちのように)
(糸巻きがあれば、くるくると巻いて、大事に置いておけるのにね。)
大丈夫よ、ここにいるから。
(ここにいて、ちゃんと。聞いてる。さいごまで。)
(──あなたを。)
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分かり、ました。
(お茶の入れ方、覚えてるかな)(そんなことを思いながら、ココアのクッキーにも手をつけて)
(サクッとした食感に、ココアのほろ苦い風味が、ほんのり感じる)
(聞いてくれる。ちゃんと言えるだろうか)
(そんな|■■《不安》があれど、美味しいと感じるクッキーだからか……線は、少し消えて)
(ゆっくり、口を開く)
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……、僕、僕は。人間災厄で、|想像の創造《ディミウルグ》と呼ばれてました。
想像した物を、現実にする力で……僕は、√汎神解剖機関の、ある管理機関に、保護されていました。
(それは、あなたに話したこともある部分だろうことで)
……僕は、(■■■。)
僕、は……(だから、■け■だって)
(あぁ、やっぱり。言おうとするととても|■《怖》い。)
(──代わりに、全部話してくれる人がいたら良いのかな)
(なんて、想像してしまうくらいに…………)
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(想像の創造──言葉遊びみたいだ、と思った)
(前に、あなたが話してくれたこと。管理されていた人間災厄。)
(そうと聞いても全然、自分の中ではこうくんはこうくんだった)
(だってほら、懸命に言葉を選ぼうとするほど、こんなにも優しいのに)
(だから)
魔法使い?
(Whisp、つい口を付いた。)
(明るい響きだったかもしれない。)
(と、と。口をふさぐ。遮っちゃったかしら。)
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(囁く声に、何処か、擽ったさを覚えて)
え、あ……魔法、使い……
(つい、言葉を復唱する。そういえば、最初に会った時もそう言ってくれたかな)
魔法使い……そう『違いますよ』
(二つの声が響く。一つはもちろん自分の声だ)
(ふと、もう一つの声の方へ視線を向けると……自分が腰掛けている椅子の隣に──もう一人の|自分《水藍・徨》が、創造されているのが分かるだろう)
(もう一人の自分は……まるで、機械のように語り続ける)
0

『僕はその管理機関で管理されていました。薬を飲んで、研究され続けて』
待っ……待って……
『僕は、その時に人を殺したのです。それなりに仲の良かった、四人の子供を』
あ……
『人殺しです。僕は、化け物なんです』
『だから僕は、あの|彩玻璃花《コロラフロル》の時、邪魔する存在は殺さなきゃと思ったんです』
『必死に抑えてましたけど、奪われるなら先に奪ってしまった方が良いでしょう? だから──』
──っ!!
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(ガタン、と椅子から立ち上がり、声を荒らげたかと思うと)
(そのもう一人は、煙のように消えてなくなる)
…………ぁ
(はっ、と気付いて、あなたの方を見るだろう)
(フードが後ろにズレて、怯えたような金色が、あなたを見る)
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(──その声。そこに。もうひとりのあなたを見た。)
(彼は)
(そういった装置のように語り掛ける)
(むかしばなしを語り)
(痛みを語り)
(まるで自責のように語り)
(心の切っ先を語る)
(そうして)
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(強い声で、あなたが吼える。)
(たちまち、夢か幻のように、彼は消えて)
(後には、怯えたまなこのあなたがのこされた。)
──こうくん。
(ゆっくりと席を立つ。)
(近寄ったら怖がらせちゃうかな。)
(でも)(数歩歩み寄って)
ありがとうね、話してくれて。
……こうくんは。
自分のことを許せてない?(尋ねる。)
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あ、あ……
(言えなかったことを、"もう一人"が言ってのけて)
(あまりの呆気なさに、何を言うべきかも真っ白になって)
あえか……その、僕……
(逃げたい。でも何処に? 今此処を離れたって、どこに行けばいいんだ?)
(思考が回る。延々と回る。時計の歯車のように、でも進むことなく、空回りするように)
(ありがとう、話してくれてと、あなたの声が聞こえた)
(自分のことを許せてない? それは……)
……分からない、です。何も。
(空っぽの心には、|■《怖》いも、|■■《恐ろ》しいも存在しないのだから)
でも……でも…………
(ぽたり、ぽたりと金色から溢れるものがある)
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あ……
(涙が次々に溢れてくる。違う。もっと言いたいことがあって)
僕は、僕は、化け物、です……でも、それを言ってしまったら、ううん、これから、あえかを、……あえかを、|傷つけてしまうと思って……
(|■《怖》がらせてしまう、そういう言葉が上手く出てこなくて)
ごめんなさい……僕は……
(言葉が出てこない。視線が下を向いていく)
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(もうひとりの彼も、きっとあなたなら)
(まるで、懺悔みたいだ、って思ったから)(そう訊いたの)
(逃げ場を失った子どものようで)
(途方に暮れたようで──)
(きんいろから雫がおちる。)
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(思わず、手を伸ばした。)
(濡れた頬を、指の背で拭おうとするけれど、ゆるされるかな)
僕にとって、やっぱり、こうくんはこうくんなの。
でもね、こうくんが自分をそう思ってやまないなら。
そう思ってしまう心も否定せず、ひっくるめて大事にしたいと思うの。
たとえ、ひとからどう言われても。
やっぱり、自分を責めるように思ってしまう時はあるから。
でもね。いつか、自然に。
そう思わないようになる日は来る、と思うの。
──大丈夫、傷つかないわ。
(魔法少女は強いのよ、なんて少し明るい声で。)
だから、謝らないで大丈夫よ。
(ここには、なんにも悪いことなんてないんだから──少なくとも、僕は、心で思うの。)
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(あなたの手が、頬に触れる)
(ぴく、と反応するが、大人しく拭われて……そう、その手が温かいからか、どうしてか、救われる思いがする)
……ありがとう、ございます。あえか。
(僕は、僕であることを認めてくれる。僕は化け物だけど、もう二度と、"彼ら"のような、惨劇を起こさないと誓おう)
絶対、あえかを傷つけない。……約束、します。
(自然と、その決意が言葉に出てきた)
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(きっと友達四人をなくしたことも、よほどの理由があったのだろう。)
(奪われる前に奪おうとしたことだって、懸命さだ)
うん。僕も、傷つかないわ。
──こうくんの大切なものが奪われないように、僕も、きっと守るから。
(そうすれば、誰も手にかけなくても、よくなるから。)
(やくそく、と小指を差し出した。)
(🌈口を閉じる☔)
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(四人のことを話すのは、まだ思い出せていないから、先の話になる)
(視線を少し上げて、約束の小指を見て)
(あぁ、そうだ。そうしよう。)
はい。ありがとうございます……
(そっと、僕も小指を絡めて、何処かでしたことがあるような、そんなデジャブを感じる)
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(『それじゃあさー、お互い悪いことしないって指切りしようよ?』『おっ、いいな賛成ー』『ちっ、なんでこいつと』『まぁまぁ、良いではないですか』)
(『ゆーびきーりげんまん!』『うーそついたらはーりせんぼん』『のーます』『ゆびきった』)
(子供達の声が、もしかしたらふんわりと聞こえてきたかもしれない)
(🌈口を閉じる☔)
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(絡めた小指から、ぬくもりが伝わる)
(やわく結んだ小指同士を軽く揺らして)
ゆーびきーりげーんまーん……
(どこかなつかしい、決まり言葉を口にして。)
(そのことばが、ふと、だれかのことばと重なる)
(顔を上げても誰もいない)
(けれども)
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(目の前にいるあなたの他に、人はいなくて)
(だから感じる)
(きっとこれは、あなたの記憶なのだろう)
(あたたかい、大切な)
うーそついたらはーりせんぼん。
のーます。
──ゆびきった。
(そっとハミングを重ねるようにして)
(指をやわらかく離した)
(はなしても、ここにいるように。)
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