デモ大会2 表彰式&エピローグ
煌々と輝く照明の下、大会の興奮も冷めやらぬまま、表彰式の幕が開けた。会場の中央、荘厳なステージが設けられ、そこには三つの表彰台が並んでいる。観客席にはなおも熱気が残り、選手たちの健闘を称える拍手と歓声が飛び交っていた。
プレゼンターを務めるのは、試合実証を行っていた少女――アストライア。彼女は純白のドレスに身を包み、誇り高き戦士たちを讃えるため、しっかりとマイクを握り締めた。
「それでは、表彰を始めます!」
その清らかな声が会場に響き渡る。
「まずは、第三位! 鋼鉄の闘技場での激闘を制し、見事にこの座を勝ち取ったのは……篠崎優菜選手!」
青い礼装に身を包んだ優菜が、静かに歩み出る。疲れり切った身体を支えながらも、その表情には満足げな笑みが浮かんでいた。観客の拍手がより一層大きくなる。
「篠崎選手の見事な機動戦術と、アップグレードコアを駆使した決定打は、まさに圧巻でした!」
アストライアがそう称えると、優菜は一礼し、メダルを受け取る。そして、壇上から見下ろす景色に目を細め、心の奥で戦いの余韻を噛みしめた。
「続いて、準優勝の発表です!」
観客の視線が舞台中央へと集中する。
「激戦を繰り広げ、最後の最後まで優勝争いを演じたのは……ワス・レ・ルナ選手!」
灰色の髪を揺らしながら、ワスがステージに上がる。彼女は静かに表彰台の中央へ進み、その目はどこか遠くを見つめているようだった。
「ワス選手の雷神咬と高機動戦闘は、多くの観客を魅了しました。決勝戦では熾烈な攻防が繰り広げられ、最後まで手に汗握る展開でした!」
アストライアがそう称え、銀色に輝くメダルを手渡す。ワスは軽く頭を下げると、メダルをそっと指先でなぞった。その視線の奥には、勝者への悔しさと敬意が入り混じっている。
そして、ついに最後の発表が訪れる。
「それでは、今回の大会の優勝者の発表です!」
観客席から歓声が湧き上がり、アストライアは誇り高く声を響かせた。
「圧倒的な質量と戦術で敵を蹂躙し、頂点に立ったのは……弔焼月・滅美選手!」
黒い外套を羽織り、静かに歩み寄る滅美。その眠たげな瞳はいつもと変わらぬままだが、その背中には確かに王者の風格が宿っていた。
「ティンダングルの絶対的な重圧とワールド・オブ・カタクリズム……どれも圧巻でした。堂々たる戦いぶりでしたね!」
アストライアが黄金のメダルを掲げると、観客は歓声を一層大きくする。滅美はそれを受け取り、少しだけ口元を緩めると、静かに呟いた。
「……ありがとよ。」
その一言が、彼の勝利を確かなものとする。
「以上をもちまして、バトルトーナメントの表彰を終了します!」
アストライアの声が響くと、観客席から割れんばかりの拍手が巻き起こった。戦いは終わり、それぞれの戦士が次なる戦場へと思いを馳せる。
光り輝くメダルの下、それぞれの心には新たな闘志が芽生えていた。
【エピローグ】戦士たちの凱旋
第一章:終焉の戦場、始まりの光
戦いの余韻がまだ漂うアリーナ。無数のスクリーンに映し出されるのは、戦い抜いた戦士たちの勇姿だ。
巨大な瓦礫の残骸に立つ弔焼月・滅美が、大型多脚WZ『ティンダングル』のシステムをゆっくりとシャットダウンする。眠たげな目をこすりながら、彼は低く呟いた。
「……終わったなぁ……。」
対戦を終えたWZたちが次々と回収され、パイロットたちは中央ステージへと集う。観客席からは惜しみない歓声が降り注ぐ。戦いを見届けた者たちが、名勝負に心を熱くし、戦士たちへ最大の敬意を捧げていた。
「フッ……見事な戦いであった。」
そう言いながら、M・ミヤモトが静かにステージに足を踏み入れる。彼の姿には威厳があり、まるで一振りの剣のような鋭さを感じさせた。
「月は冴え、剣は冴ゆ……。皆、それぞれに輝いていたな。」
第二章:女王の誇り、機械仕掛けの魂
篠崎優菜は、整然とした歩調でステージへと進む。彼女の瞳には、まだ戦いの余韻が宿っていた。WZ『モナーク』と共に戦場を支配した誇りが、その姿勢からも滲み出ていた。
「戦果に加えてあげましょう。」
彼女は静かに呟くと、他のパイロットたちへと視線を送る。
「……良い戦いでした。」
その言葉に、イザリ・ファクトリアがにっこりと微笑む。
「ええ、非常に興味深いデータが取れました! 皆さんの機体の挙動、全て記録しましたので!」
「データだけじゃなくて、戦いそのものも楽しめていたんじゃない?」
横から声をかけたのはワス・レ・ルナだった。豪快な笑みを浮かべた彼女は、戦闘時の荒々しい雰囲気とは打って変わって、清々しい表情をしていた。
「ギャハハ! 最高だったよ、みんな!」
第三章:戦場を駆ける星々
マキ・タカミネは、空を仰ぎながら柔らかく微笑む。
「アストライア……今夜の星も美しいですね~」
彼女はそう呟くと、そっと戦友たちへと視線を向けた。
「この戦い、皆さんとの絆が星々に刻まれましたね~。」
ワス・レ・ルナはその言葉に頷きながら、イザリ・ファクトリアの肩をバシッと叩いた。
「オマエのドラギニャッツォもよく動いてたじゃねえか!」
「当然です! 計算通りのパフォーマンスでした!」
「だが、計算を超えるものこそ、戦いの妙味です。」
M・ミヤモトが静かに言葉を添えた。
「我が剣技も、計算では測れまい?」
彼の言葉に、篠崎優菜がクスリと微笑む。
「ふふ、確かに……。でも、私は計算で勝てると信じています。」
第四章:決戦を超えて
弔焼月・滅美が、欠伸をしながら呟いた。
「……んー……いい試合だったな。俺のティンダングルも、満足したみたいだ。」
彼の言葉に、仲間たちは互いに微笑み合う。
「勝った者も、負けた者も、それぞれに意味がある。」
M・ミヤモトは静かに言葉を紡ぐ。
「刃交えた者同士、互いを讃えようぞ。」
「ええ、素晴らしいデータ収集と、貴重な経験になりました。」
イザリ・ファクトリアが微笑みながら答えた。
「モナークの記録に、皆さんの勇姿を刻んでおきます。」
篠崎優菜が凛とした声で言う。
「ギャハハ! またやろうぜ! もっと派手にな!」
ワス・レ・ルナが拳を突き上げると、観客席から大歓声が巻き起こる。滅美は眠たげな目を細めながら、軽く肩をすくめた。
「どの戦いも……眠くなるような戦い・・・ではなかったぜ。」
彼の呟きに、ワス・レ・ルナが豪快に笑う。
「ギャハハ! デカブツの踏み潰し、マジでヤバかったぜ!」
「連覇おめでとうございます! 団長ーー」
イザリ・ファクトリアが満面の笑みで拍手を送る。
「勝利は実力の証ですね。」
篠崎優菜が静かに頷き、滅美を見据える。
「フッ……勝者に相応しき実力。」
M・ミヤモトは鋭い視線を送りながらも、どこか満足げな表情を浮かべていた。
「次こそは、貴公の巨体を斬り伏せる。」
「……そのときは、またよろしくな……。」
滅美がぼそりと呟くと、仲間たちは笑みを交わした。
そして戦士たちは、格納されたそれぞれの機体の元へと戻っていく。機体に手を置き、戦いの日々を思い返す。
「アストライア……また新しい戦いが来ますね~。」
マキ・タカミネが、星を仰ぎながら微笑む。
「この経験が、また次の未来へと繋がるのです~」
やがて、花火が夜空を彩り、歓声と共に幕が下りる。
戦いを終えた戦士たちは、それぞれの道を歩む。
また新たな戦場で、再び刃を交える日まで――。
(終わり)