古物屋【藍苺堂】

~歓談編~朧月夜の誘い

蓬平・藍花 3月31日18時

 まだ少し肌寒い春先の夜の事。
 どこからともなく風と戯れる桜の花びらが、はらりはらり――と舞っている開店を知らせる暖簾の片付けられた藍苺堂の店の前。
 雇われ店主の付喪神が小さく焔を揺らす蓮を模した燭台と、赤い半月盆に鎮座する徳利とお猪口二つを伴い縁台に腰掛けている。

 空の白む彼誰時はまだ遠い、そんな夜半過ぎ。
 付喪神は、ぼんやりと朧月夜を見上げている。

▼おやくそく
・知人通りすがり何方でも、先着お一人
・呑めても呑めなくても、どちらかが眠くなるまで楽しくお話ししましょ
・四月末くらいを目安に〆る予定
 一週間お返事がない場合も、おやすみの挨拶をさせていただきます
蓬平・藍花 3月31日18時
何をしても寝付けなくて。少し悩んでから選んだのは朧月を愛でながらの月見酒。寝間着の浴衣にニットカーディガンを羽織った姿で、夜更かしをする準備をする。

 ーーー桜も良いけど、春の朧月を見ながらも酒もオツだな
 そう笑っていた皺だらけの横顔を思い出したから。

 だから、一人で良かった。一人でも。
 なのに、そう思う反面。誰かと話したいな…とも思う自分に、小さく笑ってしまった。



(そんな時。気配か、足音か、声か⋯どれかは分からなかったけれど。なんとなく、気になった方へと視線を向ける。眠気に誘われるまで、誰かが付き合ってくれれば僥倖なのだけどーーなんて思いながら)
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ダゴール・トムテ 4月1日16時
(雲の厚いところが通りかかって、町の東側からひときわ濃い夜が滑るようにやってきた。それはにわか雨のようにすぐに西へ過ぎ去って、朧月の薄明かりは再び貴方に降りかかる。しかし――)
なんだあ?人形かと思ったら、鋏か。誰もいないと思って、うっかり歌い始めなくてよかったぜ。(過ぎ去った闇はひとつの影を置いていったようだ。いつの間にか、せいたかの妙な男が立っている)
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蓬平・藍花 4月1日18時
(暗い、昏い、吹き抜ける風のように通り過ぎた暗闇の後。気付けば『居た』―――そう表現するのが相応しいと思える男が言った『鋏』の言葉に。きょとり、と不思議そうなものをみたような顔をした後、小さく笑って)

 良き夜、ね…? 妖精さん(で、いいかな?と思いながら彼の被る帽子を視線を止めたまま、こてりと首を傾けて) もし良ければ…お話、しましょ?(目を細め、笑みを深める)
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ダゴール・トムテ 4月1日21時
ああ、御機嫌ようお嬢さん。(挨拶を返すも、妖精は貴方の目を見てはいなかった) それ――(細く長い指をついっと持ち上げ、盆の上の徳利を指して)分けてもらえるのなら、喜んで。(ちろりと灰色の舌が、唇を湿らす)
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蓬平・藍花 4月2日18時
…ふふ、勿論もちろん。どうぞ、ご随意に…?
 誰の為でもなく、用意したものだから…お粥はない、けれども…それで、良ければ…?(徳利に止まる視線に、楽しそうに目を細めたまま。半月盆に乗った内側に散らし桜の描かれた陶器のお猪口をひとつ、手に取り妖精さんへと差し出して)
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ダゴール・トムテ 4月3日10時
ふらりと立ち寄った身分で、そこまでの歓待は期待しちゃいないさ。(お猪口を受け取ると、酒器を挟んで縁台に腰を下ろす。月明りを受けるひっそりとした店構えを振り返って) ……ただの民家かと思ったが、こりゃ店か?
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蓬平・藍花 4月3日19時
…ん、古き良きもの…普段使い出来るのから骨董品まで…色々、売ってるよ~…?(店へと向けられた視線に、こくりと頷き。徳利を手に取り「どうぞ?」とお酌をしますよ言外に伝え)

 ―――春和酒、というらしいよ…?
 一応、燗向けのを…熱燗にしてきたのだけど……もう、ぬる燗くらいになってる、かも?(お猪口が差し出されれば、慣れた仕草で注ぐつもりの付喪神。「温かったら…ごめんね?」と悪びれなく微笑む)
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ダゴール・トムテ 4月4日11時
どうも。(酒を注がれ、お猪口を掲げると中身をひと舐め) hmm…いい温度だぜ。香りが口の中に広がって丁度いい。こんな薄暗い夜なのに杯の底まで見通せて、清水のようなのに柔らかな、面白い酒だな。(ちろりと灰色の舌が唇を撫でる)
アンティークがアンティークショップを?……っと。粗忽者なもんで気を悪くしたら失礼。一体どういう成り行きでそうなったのか訊いてもいいかい。お仲間に縁を結ぶのが好きなのか?
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蓬平・藍花 4月4日20時
ふふ…気に入って、もらえたようなら…なにより?(自分の分も注ぎ。お猪口を回し水面を揺らしながら、疑問を投げかけてくる妖精さんをチラリと横目で見、小さく笑い。一口分、お猪口を傾けてから)
 ――何故か、と問われれば……先代に、店を託されたから…かなぁ? でも…言われてみれば、未来の仲間になるかもな子達、を。大切に扱ってくれる相手へと…託す事が出来たなら。それは…素敵、と思ってるかも…?(独り言ちるよう話し、とても楽しそうに目を細める)
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ダゴール・トムテ 4月5日14時
へえ。そりゃアンタも、さぞ大切にされてたと見える。(幸福そうに語る横顔を盗み見て、ふっと笑った) ……そうだ。アンタの店って、こういうものも扱ってるかい?(妖精が右手をくるりと反すと、その上へ小さな木箱が現れる。留め具を外して開けば、中身はティースプーンのカトラリーセットだ。少し曇った銀色が、月光を反射して鈍く輝いている。整然と並んだ5本の隣に、ひとつぶんだけ空白があった)
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蓬平・藍花 4月6日01時
(笑みを含んだ隣からの視線に、嬉しそうに目を細め「そう、だね」と笑ってから。くるりと現れた木箱にキョトリ顔をし、顔を出したティースプーン達をジィ…と暫く見つめると、妖精さんを見てニコリ)

 素敵な子達、ね…? カラトリーの類、なら…色んな国、年代の子達…うちにもいるし。伝手もあるから、こういう子が…というの、あるなら。探す事も、可能かな…?(こてりと首を傾けてから、お猪口の中に映る朧月を見ながら在庫を思い出している)
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ダゴール・トムテ 4月8日14時
似たようなの、じゃ駄目なんだ。同じのが欲しい。こいつらとまったく同じ、世界にあと一本が。(スプーンたちに月光を浴びせながら、妖精は目を細める) 6本あったうち5本が無くなって、4本までは取り戻した。だが最後の一本が見つからねえんだ。見ろよ、こいつらの曇った顔を。何度磨いてもすぐこうなるんだ。兄弟と離れ離れでいることが、よほど辛いに違いない。
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蓬平・藍花 4月8日19時
…あと、いっぽん…(目を細める妖精さんの横顔を横目で見、語る声に耳を傾け。月明りを見に受けて尚曇る子達へと視線を落とし――どれだけ、戀しいのだろう…と。どれだけ独りは心細いのだろう、と)

 それは…見つけてあげないと、だね…(手にしていたお猪口を置き、触れないように指尺でサイズを測ってから顔をあげ)…うちにも、この子達に似た。揃いになっていない、ヒルデスハイムローズの子はいるけれど…どうかな。連れてきて、みようか。もし縁があれば――出会えるかも、だし…いなくても、探すお手伝い…しても、良き…?
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ダゴール・トムテ 4月9日15時
本当かい。(妖精は身を乗り出した。目深に被った帽子の下で、小さな瞳が爛と光る) まさかとは思うが、一度見せてもらってもいいかいお嬢さん。手を貸してもらえるのなら、非常にありがたい。
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蓬平・藍花 4月9日17時
(乗り出された身に、少しだけ吃驚した顔をしたけれど。爛と光る瞳を見つめ、優しい眼差しで口元を綻ばせてコクリと頷いてみせてから、立ち上がり)
 …妖精さんが気付かせてくれた事、あるから…ね。そのお礼も兼ねて。藍蘭堂店主・藍花。最後までお手伝い、させてもらいます…(丁寧に分離礼でご挨拶の後。「ちょっと、待っていてね…?」と踵を返し―――店の引き戸に手をかけた所で一度止まって、振り返り)

 …待っている間、吞んでいて…?(小さく手を振って、店の中へと入ってく)
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ダゴール・トムテ 4月10日15時
……気付かせて?(思い当たることもなく。呑んで待てと言われれば、手持無沙汰もその通りなので杯を乾かすに甘える) ――Let the lost children be guided…(妖精が左手で匙を取り上げ振るうと、夜闇の中に綿毛のような微かな灯りが現れた) ――And let the twilight be a light on the road…(囁くような鼻唄の旋律とともに、妖精の周囲へ|灯り《ウィスプ》が増えていく)
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蓬平・藍花 4月10日19時
(――暫くして。
 カラリ、という音と共に木製のカトラリーケースを手に戻り。妖精さんへと声をかけようと顔を上げた瞬間、視界に広がる幻想的な光にキョトン顔で足が止まる)

 …ぇ…? ウィルオウィスプ、かな…すごい…
(独り言ちながら自然と零れる笑みをそのままに、妖精さんの隣まで歩を進め。そのものが年代物にみえるケースを開ければ――そこには様々な年代の、薔薇を模したティースプーンだけが並んでいる)

 薔薇のモチーフ…人気があるから。一揃えになれなかった子達だけで、纏めてあるんだけど………どう、かな?
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ダゴール・トムテ 4月11日11時
(声が聞こえると、鼻唄を止めて振り返った。周囲に集まっていた灯りたちも、はたと消える) おかえり。見せてもらってもいいかい。(妖精は箱を覗き込んだ。右から左に視線が動き、折り返してもう一度右に戻ってくるまで、黙ってスプーンを検めている。やがて顔を上げて、) ……素敵なコレクションだ。誰にも個性と歴史が輝いている。それに……ひとつも曇っちゃいない。(残念そうに笑った)
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蓬平・藍花 4月11日19時
(途絶えた鼻唄と共に去った灯火を少し残念に見送って。ケースの中にいる子達を確認する様子を静かに眺めていたけれど…想像通りの結果に、残念そうに視線を落としてから顔をあげ)
―――また、他の子。探しておく、から…暇な時にでも、覗きにきて? 次は…妖精さんの好きそうなもの、も。用意しとくから…ね?(元いた場所に腰を下ろし、ケースの蓋を閉めながら。こてりと首を傾けて、小さく笑う。でも、妖精さんの好きな物…なんだろう?)
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ダゴール・トムテ 4月12日11時
好きそうなもの?へえ、なんだろうな。リクエストしてもいいんだが、敢えてお任せしておこうか。kec-kec-kec… 答え合わせができた方が、面白い。(言葉の途中、妖精は板を叩くような奇妙な音を発した。彼の様子を見ていたのなら、どうやら笑ったのかもしれないと気付くかもしれない)
しかし、参ったな。酒をご馳走になって、探し物をしてもらって。どうにも今晩は貰いすぎた。オレは天秤が自分の方へ傾いてるのが好きじゃねえんだ……(自分のカトラリーケースを仕舞うと、帽子を目深に被りなおす) 藍花だったか?何か願い事を言ってみな。この妖精さんが力になるぜ。
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蓬平・藍花 4月12日22時
(言葉の途中に聞こえた不思議な音が、妖精さんから奏でられた音だと気付くと。楽しい時の音?声?と首を傾けてから)
 ――ぇ…ぁ…うん、頑張って考える…ね?(こくこく頷き。お願い事という言葉には、手にしてケースを横に置き。お猪口を手に取り、試案顔で中身を飲み干し)

 妖精さんのお名前、を聞くのは…ちょっと代価には、大きい? …うーん… ぁ、果物が食べたいな。妖精さんがくれるフルーツって、美味しそう…じゃない?(暫く独り言ちてから、へらりと笑ってお願い事ひとつ)
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ダゴール・トムテ 4月13日00時
……。(格好つけた言い回しで大仰に振る舞っていた妖精は、がくりと肩を落とす) オレってそんな大したことなさそうに見えるかい?いや、欲がないのか。鋏の精だものな。(こほんとひとつ咳払い。右手をくるりと返せば、真っ赤な林檎が現れる。袖で磨いたつやつやのそれを、貴方の前に跪いて差し出した) どうぞお嬢さん、毒入りではないのでご安心を。妖精トムテ、”舌なし”のダゴールをお見知り置きあれ。
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蓬平・藍花 4月13日20時
(がっくりした姿に「どうかした?」というようなキョトン顔で首を傾ける付喪神。くるりと林檎が現れると、初めてマジックをみた子供のように目をキラキラさせてながら、満面の笑顔で宝物を貰ったように受け取って)
 ありがとう…とっても、綺麗で。おいしそう…♪ それに…お名前まで教えてもらえるなんて…大盤振る舞い、だねぇ? ふふ、ダゴールくん、改めて…良き隣人として、仲良くしてね。―――でも…(舌、あるよね…?味がしない、のかな?と思いながら、こっそりとダゴールくんの口元ちらり)
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ダゴール・トムテ 4月14日11時
妖精にだって名乗る名前くらいあらあ。どうした、オレの通り名が気になるのか?(ちろりと舌を見せびらかす。長いそれは、石のような灰色をしていた) あるにはあるんだぜ。今は飾り物で、お喋りするくらいにしか用を為さない役立たずだけどな。
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蓬平・藍花 4月14日12時
…ん~…妖精さんに名前、聞くのダメなんじゃ……あれ…教えるのが、ダメ…だった?(むむ?と記憶違い?と首を傾けながら眉間に皺を寄せていたけれど。ちろり、と覗いた灰色の舌には顔をキョトリとさせてから。自分の手の中にある林檎をみて、縁台の上のお猪口をみて、ダゴールくんに視線を戻して)
―――これは、中々難易度の高い宿題…自分に課したんだ、ね…ボク。味、濃くすれば…少しは分かるの、かなぁ…(しょんぼり)
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ダゴール・トムテ 4月14日15時
”名前当て”のことを言ってんのか?もしくは魔女かなんかと勘違いしてんのか。どっちにしろ、そういうのは悪い妖精のやることだ。オレは自分の名前は自分で守ってるし、アンタの名前をどうこうするつもりもない。もし藍花が名前を盗られても、なんとかしてやるから心配いらねえよ。kec-kec-kec!!(口元を隠して、また奇妙な笑いを鳴らした)
ああ、気にすんな。なくなったのは”甘味”だけなんだ。けど、甘さを感じられない舌に価値なんてあるかい?まるで色のない世界みたいだよ。だからその林檎は、アンタには丁度よくてもオレにはちょいと酸っぱすぎるな。(ウエーッと舌を出し、うんざりした顔でおどける妖精)
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蓬平・藍花 4月15日13時
(不思議な笑い声をする妖精さんに、名前当てと言われて納得し、心配いらないいう言葉に素直に安心した自分が少し不思議で)…ふ、ふふ。ダゴールくんがいれば大丈夫、と思えちゃう…不思議ね? 頼りにしてる。(少しだけ笑ってから、甘味がない世界を想像して悲しい顔)――甘い、わからない…の? いっぱい甘くすれば、というものじゃないんだねぇ…スプーン探し、以外でもお手伝い出来ればいいけれど…甘いが美味しいに戻った時に、世界で一番甘いおやつ。プレゼント、くらいしか思いつかないや(うーん)
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ダゴール・トムテ 4月15日16時
アンタからこれ以上貰う気はねえよ。他人に渡す親切よりも、自分の願いを膨らませておくんだな。アンタが欲深い方が、オレにとっても都合がいい。(意味深に笑って、妖精が立ち上がった。月を隠すほどの長い影が貴方へ覆いかぶさる) まあ客人として?茶菓子を遠慮しない程度の礼儀はオレだって心得てる。ちゃんと用意しとくんだぜ。……できれば甘いもの以外で。
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蓬平・藍花 4月15日18時
…欲深、く…?(自分を覆う――長い、影。闇そのものみたいな…嗚呼、きっと。瞬きひとつでもしたら、もう居ないんだろうなぁ…そう思ったけれど。貰った林檎を抱きしめるように持ち直して)――じゃあ、うん。次に会えるのを楽しみにしてる、ね。これなら…キミにしか叶えられない、毎回できるお願い事…でしょ? 甘くないもの、作って待ってるネ…(そ、と瞼を閉じて小さく笑う。闇の随から覗く灰色にもう一度会えるように願いを込めて)
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ダゴール・トムテ 4月17日14時
(瞑目する貴方の頬を、ぬるい夜風が触れていった。返事はなく、瞼に微かな光を感じて目を開ければ、朧月の明かりに照らされる影は貴方の他になく。しかし底の濡れたお猪口と、紅い林檎だけが確と残されている)

(風に耳を傾ければ、微かに聞こえただろう。遠ざかっていく奇妙な音が)

――kec  kec   kec …
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蓬平・藍花 4月17日18時
(そぅ、と瞼を開けた先に広がるのは朧月。元から誰もいなかったように広がる夜の闇。だけど確かにいた名残は此処にはあって。耳に届いたのは独特な笑い声か、風の音か…)

 ―――夢…でも、みた気分、ね?
(誰にでもなく独り言ち。ちらり、と隣に座るカラトリーケースを見つめ…小さく笑う。夜も更けて。あのどうしようもなく感じていた郷愁の欠片は遠ざかっている。もしかしたら幸運の妖精さんが連れて行ってくれたの、かも?)

 …起きたら、妖精さんの好きなもの、調べてみようかな
(付喪神はそう呟き、月見酒の名残と彼の名残を全て抱えて家へと帰る。その口元は楽しそうに緩んでいた)

【〆】
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