【企画ノベルOP】雨と紫陽花と、空泳ぐ鯨
●ボランティア募集「あのね、ホエールウォッチングに興味ない?……鯨と言っても、鯨型のインビジブルなんだけど」
ベイヴィル・シャムロック(ぽんこつエルフ・h05174)は、√能力者たちを見つけると顔を輝かせて話しかけた。
なんでも、√ドラゴンファンタジーの日本……関東のとある寺に、中空を泳ぐ鯨が出現するらしい。
「これはゾディアック・サインじゃなくて、知り合いの住職さんからのお願い事なんだけどね。なんでも、紫陽花が咲く時期に雨が降ると、お寺の墓地から鯨の姿のインビジブルが何頭も現れるんだって」
その寺は庭園に紫陽花を植えており、梅雨の時期になると灰色の空に青や紫の彩りを添える。もちろん、紫陽花の名所なら他にも全国に点在しているが――その寺のひと味違うところは、紫陽花の開花時期に雨が降ると、鯨型のインビジブルが併設の墓地から現れるのだという。
「√ドラゴンファンタジーの一般人は竜漿のおかげでインビジブルをぼんやり見ることができるし、冒険者もいるからね。お花見とホエールウォッチングの両方で目を楽しませようと、この時期になるとお客さんが増えるらしいの」
そして、そんな観光客に向け、寺では手水舎に紫陽花を浮かべたり、鯨と紫陽花をモチーフにしたお守りを授与したりしているらしい。
「ただ、お客さんが増える分にはいいんだけど……大きなインビジブルを我が物にしようとやってくるお行儀の悪い冒険者なんかも来ちゃうらしくてね。牽制のために、寺の中を巡回してくれる√能力者のボランティアを募集してるってわけ」
ふふん、と得意げにベイヴィルは√能力者の顔を覗き込む。
「朝から夕方までの間、特に時間は指定なし。巡回用の腕章をつけてくれれば後は自由に境内を歩き回ってくれればいい。お給料は出ないけど、お土産に紫陽花色の琥珀糖をくれるって。……ね、観光しながら人助けもできちゃう。悪くない話だと思わない?」
お一人様が寂しい場合は私が付いていってもいいし、と笑いかけ、ベイヴィルは√能力者たちに寺の地図を配った。
「良かったらお誘い合わせの上ご協力くださーい! ふふふ、お花も鯨さんも楽しんできて!」
●しとしと雨に呼ばれて
雨雲が垂れ込めた、灰色の空の下。しっとり雨に濡れた墓石の間から、目を覚ましたかのようにゆっくりと鯨型のインビジブルが姿を現した。深い声で呼びかければ、仲間たちが後に続いて姿を現す。
さぁ、今年も紫陽花を見に行こう。そう誘い合うかのように、鯨たちは境内へ向かってゆったりと中空を泳ぎ始めた。

【リクエスト内容】は、ルートを「√ドラゴンファンタジー」に選択してね。
私やエレンと遊んでくれる場合は、シチュエーション選択を「マスターの√能力者との交流」にしてくれると嬉しいな!
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