ノベル企画【水光接天】
【導入】そこは何処か、とても高い場所。
限りなく空に近い水場では、緩やかな時が過ぎ去っていく。
限りない水場は海のように限りなく、何処か光風明媚な自然をも感じさせる。だが、誰かが作った不思議な場所であるのかもしれない。
水と空の楽園。この場所に名付けるのなら、その言葉が似合う。
溢れる水は現実感を溶かす美しさ。
流れの裡にて季節を問わずに咲いた幾つもの花を抱き、緩やかに流れていく。
儚く、繊細に、まるで透き通るような雰囲気が満ちている。
神秘的で、夏という現実を忘れてしまうような夢の心地を憶えさせる。
場所によっては柔らかく浮き上がったり、膝までの浅瀬の場所もあった。水に浸らずとも、景色を堪能できる木々と花の咲く
――ああ、見れば地平線まで水が流れていた。
地平線の向こうで空と水が交わり、互いの光を結んでいた――
水光接天。
光に照らされた水面が、限りなく空まで続くような様を歌う言葉。
時間によって水と空の風景は姿を変える。
青空の時間帯ならば、まるで蒼穹の裡に抱かれるような爽やかな心地を抱くだろう。緩やかな水の流れに身を任せて、夏空の青さと光を冷たい水に抱かれて感じられる。
黄昏の時はまさに神秘。
儚げな赤橙に染まる水面が揺れる。それは、まるで大きな花びらに抱かれているかのよう。優しく、穏やかに、一日の終わりを告げる斜陽の優しさが揺り籠めいた安堵と切なさを募らせる。――誰の手を、握りたくなるような暖かくて切なげな情景。
夜は一際に美しい。
星空の輝きは水面に落ちて、水面もまた無数の星彩を宿す。
きらきら、きらきらと輝く空に、水面。月光もまた水面を神秘的に照らし、目を細めてしまうような美しい輝きを当たりに溢れさせる。此処は空だった。此処は水の裡だった。だが、同時に星空に包まれる幻に満ちていた。
そんな場所で緩やかな夏休みのひとときを過ごすのは素敵だろう。
夏の暑さを忘れる涼やかな水の中で、空と一緒になったような感覚を抱くのはそうない体験なのだから。
もしもふたりで。或いは大切なひとや友人とであれば、記憶にも鮮やかに残るかもしれない。流れるばかりの花を、指で愛でてもいいだろう。でも、その指さえも誰かの手を握る為にあるなら――幸せの吐息が零れる。
水に潜るのもまたひとつの戯れ。こんな景色なのだから、空に潜るような錯覚という夢に浸るというもの。
だが、同時にこんな場所だからか――ふと、あなたは過去の幻影を見るかもしれない。
神秘的な場所は、霊魂や記憶の残滓をも浮かび上がらせるのだろう。
それはあなたを裏切らない。あなたの望む事を教える、昔の誰かであるかもしれない。
ただひとついうのでれば。
空と水。そのふたつが結ばれた場所で。
あなたは何をしてもいい。ただ、美しい中で、記憶を結ぼう。
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【解説】
細かい所はおきまして、地平線の向こうまで水の溢れる幻めいた場所でのひとときの為のノベル企画です。
場所の詳細は問いません。高い空に近い場所であるようですが、√ドラゴンファンタジーの何処かかもしれませんし、√百鬼夜行の奇妙建築の見せる幻かもしれません。√汎神解剖機関の神霊の神秘の見せるものかもしれませんね。
そういうどの世界かは定めておらず、水と空の光の接する場所での一時をご自由にお過ごしください。それぞれ別の方がリクエストで違う世界を指定された場合、それぞれのリクエストの世界での、似たような場所として書かせて頂きます。
どのように過ごすかはリクエスト文で、一般的に問題ないと判断したものでしたら大丈夫です。(強いていうならギャグ関係は苦手かもしれませんが……)
ぷかりと水に浮かんで、空に抱かれるような気持ちを友達と、でも。
黄昏の中で誰かを思うのもよく、星空の時間帯であればあたりを満たす光と戯れることもできるでしょう。
また、限定的に既にいない誰かに問い掛ける。というのもありです。
ノベルだからこそ、シナリオの概要に従っているのでは出来ない自由な過ごし方というもので書かせて頂きます。自由な発想と、参加されるキャラクターさまらしさでリクエストして頂ければ幸いです。
★の量、文章の長さは問いません。ご自由にどうぞ。
それでは、よい夏の思い出をお過ごしくださいませ。