【ノベル企画】|黙《しじま》の葬列
●参列者曇天は未だ泣きもしない。
強い風が吹いていた。雲はうねり、流れている。けれども途切れることはなく、空を覆い隠したままだった。
薄いあかりが今を昼間と告げはする。けれど野原の低い草木は少しばかり彩度を失ったまま、風に踊らされながら沈黙を保っていた。
その中に、黒い点を打つように並ぶ人影が見える。誰しもが一様に声を発することはない。沈黙を黒く広げるように暗い衣服に身を包み、俯く顔をヴェールの向こう側へ隠している。
知っている、知らない、掴みきれない誰かの影のようだ。
ただ、その手に持つ一輪の白薔薇だけが、瑞々しく咲き誇っていた。
一歩。一歩。少しずつ皆が進む。
だから急ぐ必要はない。順番は必ずやってきて、あなたの番は必ずくるだろう。
駆け抜ける風の声だけが耳元で囁く。その意味を聞き取れることはない。意味などそもそも、有りはしない。慰めのように聞こえるのだって、きっと幻だ。
長く短い時間が過ぎたならば、辿り着く先には棺がひとつ。飾り気のない黒塗りをして、蓋は開いている。
覗き込んだ先では安らかに眠る姿が見えた。膨らまぬ胸は呼吸をすでに止めていることを知らせている。真白い花に囲まれて、閉じた瞳は開くことはない。
見覚えのある――自分自身の姿だ。
驚く必要なんてない。ここにいる誰しもはみんな、己の葬列をしているのだから。
手にした花を棺へと入れる。
途端、くらりとした酩酊に襲われて気がつくだろう。
これは、夢なのだと。
●Restart
「自分が死ぬ夢って見たことあるかしら?」
手にした煙管を吸って、煙を吐き出す白い男――僥・楡(Ulmus・h01494)は澄ました顔でそう告げた。やわい花の香りの紫煙はあたりに漂って、すぐに溶けていく。
壁一面が雑多なまじない道具で溢れている古く狭い|店内≪Elm≫。年季の入った小さな木製のテーブルを挟んで、彼は対面に座るあなたへと小さな箱を差し出した。
艶のない黒色に模様はない。封をするように白薔薇の封蝋がひとつ。未開封だとは知れど、中身は何も分からない。
「縁起でもないように聞こえるわよねぇ。でも現実じゃないなら、そう悪い意味でもないのよ」
古きを捨て生まれ変わる。過去のしがらみか解き放たれ、前に進む深層意識がそうさせるのかもしれない。
「とはいえ夢なんてなかなか自在に見れるものじゃないわ。けどこの箱を枕元に置いて眠ればあら簡単。自身の葬列に並ぶことができるの」
胡散臭い話でしょう、と白い男は煙を吐いて笑う。
効果は一度きり。封は起きるまで開けてはならない。そして導かれる眠りの底、夢は決まって草原での葬列から始まる。
「手にした花を自分に供えればそこで目が覚めるわ。もしくは、列から外れることでも」
自己の決別をしようとしまいと自由だ。奇妙な箱が見せる夢に葬儀の完遂などという強制力は無い。
「箱は起きれば封が落ちているから、開けてみるといいわよ。その時まで何が入ってるかは分からないけれど……出てくるのはアナタに縁のあるものがあるかもしれないわ」
目の前の小さな黒は沈黙のまま、中身を見せることはしない。試しに小箱を楡が振って見せても音はしなかった。
もし眠る前に開けたらどうなるのか。その疑問に答えるように彼は煙と共に言葉を吐き出す。
「空っぽのまま、なぁんにも無いわよ」
一体何が形を作っているのかしらね。
面白がるように笑う男の、花の香りも薄らと掴めはしなかった。
「さぁ、お一つ如何? 今ならお安くしておくわよ」
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▼形式
ノベル+アイテム設定でお届けいたします。
舞台はOPの参列の様子を参考にしてください。
▼人数
おひとり様ずつお眠りください。
▼発注文
プレイングを書く場合と同じ形がお勧めです。
何を思って葬列に並び、自身を見るのか。もしくは列から逸れるのか。
アイテム形状(下記の分類内)の指定がある方はどこかに記載をお願いします。
※フルお任せは推奨しません。
(何書かれてもいいよ!という場合はどうぞ)
▼アイテム種(下記からお任せ/指定はどちらでも)
【手袋】【ヴェール】【手記】【偽物の臓器】【遺留品】【ジュエリー】【思い出の写真】
※設定のみです。実物の発行は致しません。
▼文字数
★1.5で受付致します。
〆切など分で+していただくのは構いませんが、文字数は上記内になります。
▼発注合言葉
発注文の頭に【葬列】をお付けください。
▼受付形態
恒常ノベル企画となります。
イベント枠で投げていただいても構いません。
※再送が発生する可能性があります。
※いずれにせよ執筆の確約は出来ません。
※頂いたものが書けない場合はSNSでお知らせします。

【追記】
▼発注文について
・キャラの説明+プレイングで半々ぐらいだとアドリブなどが多くはいります。
・プレイングで全部!となるとアレンジいれつつ基本忠実にな流れとなります。
お好きな方でよろしくお願いします。
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