アストライアの格納庫

ss:夏の世の夢

マキ・タカミネ 8月1日21時

夜の帳が降り、風も止んだ蒸し暑い室内。
カーテンの隙間から漏れる街灯の光が、床にぼんやりと三角形の影を描いていた。

「……ん、冷たい?」

無意識に伸ばした前脚の先が触れたのは、ひんやりとした布地。
その三角柱の物体は、布団の端に、まるで自分でそこに現れたかのように横たわっていた。

手触りは――氷の気配を含んだ、滑らかな冷感繊維。
それは、肌に貼りつく熱気を吸い取るように、じんわりと優しく、しかし確かに「冷たい」。

その形は奇妙だった。
一般的な抱き枕のように柔らかい楕円ではなく、斜めに尖った角を持つ長い三角柱。
その鋭い角度は、まるで空間を裂いた“裂け目”そのものを模しているかのようだった。

表面にうっすらと浮かぶ銀の糸の刺繍。
それはただの装飾ではなく、ある視点から見ると、目にも似た歪な文様が現れる。

――誰かが、見ている。
だが、殺気は感じなかった。

「おかえりなさい……また角から来たの?」

まだ幼げな少女が、貴方にそっと身を寄せる。
たしか……前にどこかで会ったような……
ああ……なにか前に……トーナメントでの勝利の祝福を与えてくれた……
アスト……ライア……っていったっけかな……

三角柱の内側に仕込まれた冷却ジェルが、じんわりと腕と胸を冷やしてくれる。
ふぅ、と熱を逃がすように息を吐きながら、彼女は貴方の隣に体を横たえた。

部屋の隅――ちょうど直角の陰に、あなた達の影は自然と溶け込んでいる。
まるで“角”を渡って、この世界へ来たかのように。

「……また夢を追って、角の先に帰っていくんでしょ」

眠気と共に、わずかに囁いたその言葉に応えるように、
ひんやりとした風が、頬を撫でていった。
……いや、少女が撫でてくれたのかもしれない……

夏の夜。
ティンダロスの猟犬は、ただそこにいる。
静かに、冷たく、やさしい存在が、ただ寄り添っているのを感じながら――