🌸或る少女の日々
妖たちの世界のとある森。一年中、櫻咲き誇る森の中。
その森の奥、ひときわりっぱな『夢一夜』の名を冠したその櫻の樹の根元には、
少女の死体が埋められているのだという。
それは、どうして、も、なぜ、も届かないほどのむかしの出来事。
ただの白く朱く染まったなきがらを、『夢一夜』は憐れんだ。
誰からも忘れ去られ、夢の世界の端にその存在を残すだけの少女。
たださみしげにぼんやりと、子守唄を口遊むだけの少女。
さて。
憐れんだ『夢一夜』は、彼女から過去を奪い去り、その存在だけを汲み取り――
|楽園《EDEN》へと放り出した。
体を失い、けれども新しい|じぶん《自我》を手に入れた亡骸の少女は、
夢と現を行き来しながらも、
『幽霊』を名乗り今日もうつしよを彷徨い歩く。
「どうか、わすれないで、おぼえていて」
「わたしが、ここにいたことを――」