【不共戴天】
その日は、殊更兄が不機嫌であったし、家も随分様変わりしたから印象的だった。犬にとって、あれほど黑家が不安定になったのは、長女が別の男と駆け落ちしてまさかこの家から逃げ出した時以来だった。双子の片割れを失ったまだ青い兄が、見たことも聞いた事もない様相で暴れていたのを覚えている。
今回は、そのような痴態を彼が晒すことはなかったが、代わりに、焼けた地面を見ている背中はまるで、火にあぶられたかのように熱を帯びていた。
黑家の敷地は広大だ。
そも、住んでいる国自体が大陸の部類である。いくら人間が住んでも集まるのは都市部ばかりで、自然の部分には人が寄り付かない。犬がすまう国の人間たちは、風習や迷信を幅広く独自の解釈で得ており、木々や花にも命があると信じて踏み入るようなことは避けていた。
だから、『当然のように』犬頭の妖魔人間たちはそこに住まう。
山のふもとに堂々と門を構え、庭の中にまで森が広がり、一族に成れなかった小狗たちがお互いを貪りあうか、獣と殺し合いをしていた。
長兄は、混沌としたこの庭自体を嫌っていない。
曰く、『噂は金になる』らしかった。犬には全く理解ができぬ兄の堂々とした確信のある言い分に、やはり我が長兄は賢い人なのだと妄信を深めさせる。
噂には背びれも尾びれもつくではないか、と悠々と語るように、森の手入れを時折末妹にやらせ、小狗たちに刺激を与えて騒がせたら、ほどほどの頃合いでまた、昏く静かな庭にする。
それを任されていたからこそ、――久しく家を空けていた間に、庭が4割ほど消し炭になっていたのには、犬もせっかく持ってきた主の一部を落とすほど驚いた。
もうすっかり、主だったもののことなど、どうでもよくなってしまうほど。
■
あの“襲撃”からどれほど経っただろうか。
主の見つからない犬が、いつまでも寝ているわけにもいかない。家のことを何かやらなければ、兄の怒りに触れて追い出されてしまうのだ。
だから、焼かれた庭を手入れしている。ずいぶん元の森に戻ったものだ。植林から新しい葉まで、用意するのは簡単でも根付かせるのが難しい。何せ、一度焼かれた土であるから、生き返らせるほうが大変だった。
気長に兄が待てばいいが、そういう性分でもあるまい。犬は、この家の尊厳を守るために立派な働きを与えられている最中だった。
***
【予約済】
🚷
黑・宵刃 4月29日10時(木に触れる。ここまで大きく育ったものを植えなおすのは大変だった。)
嗯, ずいぶんマシになってきました!
まったく、まさか庭に火を放たれるだなんて。|小狗《xiǎo gǒu》たちは何をやっていたんでしょう。
(|出来損ない《・・・・・》のことはよく知っている。まさに、最初はその立場だったからだ。)
(両親もきょうだいも、皆犬の貌と手足と体がついてくる。辛うじて人間の血が混じっているのは、二足で歩こうとする姿勢なもので、この犬ほどではなかった。必然、誰よりも体が脆く、誰よりも小さいと判断された|変わり種《エラー》として庭に放り投げられたことがある。今の地位にいるのは、家のしきたりに則って、三か月飲まず食わず、寝ずで追いかけた|裏切り者《長兄の片割れ》の首を手にしたからだ。)
(だから、いくら小狗とはいえあれほど役に立たないことがあっただろうか。)
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黑・宵刃 4月29日10時(悪戯の始末もできないようでは、何人か焼け死んだのも仕方ない。)
(そう、思って――|嗅覚《・・》が覚えのある匂いを嗅ぎ取る。何度も嗅がされた匂いだ。兄が“次現れたならば、必ず殺せ”と言っていた、その匂いだ!!)
(ざわりと、尻尾の毛が広がった。)
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リュラ・アンナスラ 4月29日10時(この前はとんだ失敗をした。√仙術サイバーの|最悪の家《・・・・》――忌まれる妖魔の血をより強く残そうとする家だなんて興味をそそる題材、常にネタに飢えてる怪奇作家が放っておくわけにはいかない。上手いこと記事にしてやろうと取材に来たのは良いけど、あんなに犬が放たれてるとは思わなかった!)
(私だってそれなり熟練の怪異狩り。木端の妖魔に負けたりしない。ただひたすら数が多くて片っ端から挽き潰して焼いて――夢中になりすぎて魔力が切れたから撤退したのさ)
(だから今日は上空からだ。あの庭を丸ごとスキップすればチャイムを鳴らすことくらいは出来るはず。取材を断られたら? そりゃあ実力行使でインタビューさ。燃えるね)
(と、思ってたんだけど)(庭に人間がいる。いや――犬の特徴? この家の関係者か? ともあれまずは着地といこう)
|こんにちは《Buon giorno》。邪魔するよ。
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黑・宵刃 4月29日10時(この混沌に満ちた身体からはいくらでも暗器が出てくる。素手で襲い掛かってもよかったが、獣の判断が道具を選ばせた。確りと握ったそれを振りぬくと同時に、重心は駆けだす足に乗せる。地面を蹴りだし――衝撃波を生む豪速で、あなたに襲い掛かる!!狙いは、まず、首から!)
(確信があった。この頭にも何度も刷り込まれた、灼けつく匂い!あなたは、この家を荒らした敵だ!)
|去去去,《しっしっ》観光地じゃありませんよ!
(犬が笑っているように見えるなら、それは間違いなく、最後通牒の|威嚇《合図》だ。)
(――直に喉から唸りだす。まるで闘争心にエンジンをかけたかのような低音の振動が、赤い瞳をぐらぐらと揺らめかせていた。)
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リュラ・アンナスラ 4月29日10時(自分が竜だってことに感謝するのは|戦闘の《こういう》ときくらいだ。動体視力に極めて優れた目、捕食者の眼差しは、人間であれば対処不能の攻撃も見切れるというわけさ――狙いは首か)
(とはいえ錬成は間に合わない。タイムラグはつきものだ。仕方ない)(翳した徒手より溢れる業火が、燃え盛る魔力のまま剣の形を取るだろう。完璧な剣ほどの強度とはなりえないけど、攻撃一つ受け流すには充分だ)
(斜めに構えたそれで君の刃を無理矢理に往なす――ちょうど、その速度によって生み出された力が地面に叩きつけられるように。本気じゃないならこれで充分、本気だったら……それはそれで面白い)
二回目の来訪者にとんだ歓迎だね。ここは躾のなってない犬しかいないのかな?
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黑・宵刃 4月29日11時(火は、――犬の警戒心を煽った。本能よりもっと奥、|何か《・・》が嫌悪を覚えている。ざわりと体の中が蠢いて、いなされた刃の勢いを、腹から生やした獣の腕で殺す。がりがりと地面をひっかきながら、体勢を低くしたまま地面に着地し、旋回する。犬の体があなたの正面に向いたとき、支えていた腕は獣の姿をとった。ちょうど犬と同じくらいの大きさである。|二匹《・・》があなたに向かって唸っていた。)
躾がなっていないのはあなたでは?
|私有地《なわばり》に勝手に入り込むほうがどうかしているでしょうに
(ざり、と獣らの靴と足がそれぞれ土を踏む。)
(まず、獣の足が飛び出した!)
しかも焼きましたよね?庭を。
兄さまは相当お怒りです。|文章可惜了,客人。《残念ですよ、客人》
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黑・宵刃 4月29日11時(【影穿】――ひとの体が黒い霧になり、森に溶ける。あなたに襲い来るのは獣のほうだ。この犬と同じ赤い瞳が煌々を携えて、無数の牙は昂ぶりを晴らす先に飢えている!)
(あなたがその獣に触れるとき、)
――|给我死在这里。《ここで死ね》
(黒い霧から、あなたを獣で挟むように腕が飛び出すだろう。その手に、匕首を握りながら!)
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リュラ・アンナスラ 4月29日11時|断る《Rifiutare》。
(折れた炎の剣に、今度はちゃんと魔力を流したさ。弟ほどに魔術の才覚も膂力もなく、妹ほどの身のこなしも魔力もない。代わりに小器用になるのは当然のことだ。どうやら純然たる|人間《・・》じゃないらしい君の遣り口を前に、赤い両手剣を構える時間を稼げただけで充分さ)
(面妖な術を使うね。この世界は実に面白い――だけど、)(怪異狩りってのは、そういうのを相手に大立ち回りをする職なんだ)
(致命傷さえ喰らわなきゃ良い。胸に竜鱗、首と頭に剣を翳し、もう片方には炎の防壁。他のどこを狙われようが関係ない――散った|赤柱石《レッドベリル》の如く煌めく血液まで私の武器だ。むろん、)(傷も塞がる。魔力があればね)
その節の非礼は詫びよう。だけど仔犬共の躾くらいしておいてくれない? チャイムを鳴らす権利さえ貰えなかったのはこっちも一緒だ。
(――火炎が盛る。霧の足許、飛び散った私の血から)
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黑・宵刃 4月29日11時(致命に至らないのは、面倒だ――あまり庭も燃やしたくはないというのに。まったくこの炎が忌々しい。犬の攻撃は、どちらも明らかに炎に勢いが殺されていた。しかし、犬の咢はあなたの腕を嚙みちぎらんと牙で抉るだろうし、放すことはないだろう。霧から体を出した――人の形のほうは、砂を蹴り上げて火炎を避け、足の惰力に任せてそのまま跳ねる。あなたから距離を取った腕に握った匕首を、今度は逆手に握った。)
|烦死了《うるせえな》――
(無貌の霧が、――犬からあふれ出す。あなたに食らいついている大きな犬からもだ。)
|連絡手段《コネクション》もない人間が来るような場所じゃないって言ってるんですよ!
|你他妈听不懂吗《理解できねえのか》!? 啊!?
(【无貌】が、構えている。黒い霧に包まれた貌が、影に塗りつぶされた。――赤い瞳だけが、あなたを注視している。その赤が、霧の広がりとともに増えていく!)
(無効票)
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リュラ・アンナスラ 4月29日11時(君が昂れば昂るほど笑みも深くなろうものだ。君にはいたく楽しげに見えたことだろう。心に這い寄る|混沌《CHAOS》の気配、背筋を逆撫でする抗えない死の恐怖、生存欲求が掻き乱されて張り詰める神経。自然、視野狭窄に陥る視界に赤だけが明滅してる。この身に満ちる、期待なき私を楽しませてくれる唯一絶対の|危険《スリル》が、今目の前にある!)
……ゾクゾクするね! 家の取材よりも君自身に興味が出て来たよ!
(構えた剣に汗が伝う。仕掛けるならばこちらからだ。激痛も危難もアドレナリンを生んでくれる。それが術中に踏み込むことであっても、その方がずっと|恐ろ《たの》しいからね!)
(愚直に切り込もう、そう――君が望む通り、|畏れ《・・》に我を失った獲物の動きで!)
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黑・宵刃 4月29日11時(狙うのは、貌――いいや、それではいけない。)
(犬は、畏れを失ったあなたの狂乱に手ごたえを感じるとともに、冷静を得た。あなたの貌は残さねばならない、兄がそれを望んでいる。その首を差し出して来いと、言いつけられている!)
(勅 令 で あ る !)
(零れた舌打ちは、無意識のものだった。)
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黑・宵刃 4月29日12時(暗殺者としての適性は高い。あなたが笑うならば、どんどん犬の頭は冷えていった。相手が無防備だからだ。なるべく、手数は少なく、確実であらねばならない。)
(握った匕首が、あなたの喉を縦に割いただろう。)
(地面を這うように、身を伏せた。刃を立てて、あなたが切り込んでくる流れに合わせて、――そのまま、腹まで鋼が滑って行ったはずだ。)
|混蛋《クソ野郎》、こっちは興味ない。
(霧が体の中に戻っていく――わずかに見える首元の地肌、赤い瞳と無数の牙が蠢いた。)
(犬の中でまだ勝利の核心はなかった。派手に血を浴びたものの、それが生命の喪失を意味するとも思えないのだ。明らかに人でないの何かの姿をしているあなたの、首を切り取るまでは安心できない。――それに、)
(この家の庭を、あれほど燃やした無礼者が、この程度か?)
(匕首の切っ先はまだあなたを見つめている。あなたを食らっていた獣も、犬の足元まで戻ろうとしていた。)
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リュラ・アンナスラ 4月29日12時(死ぬ、のだろうな)(|私が人間であれば《・・・・・・・・》)
(舌打ちののちに突き立った刃は確実なものだった。成程戦い慣れてるものだ。激痛の中で冷静な思考を保ったまま、昏くなる視界に身を任せて煌めく銀の切先を見詰めてる)
(私はマゾヒストじゃないし、サディストでもない)(ただ――この世で私を楽しませてくれる数少ない娯楽の一つを、そう簡単に終わらせるのはつまらないし)(生存本能を掻き立ててくれない戦いなんて、微塵の価値もないだろう?)
(なに、待ってるだけさ。失血には強いけど、魔力に傑出してるとはいえないこの体で、君と楽しく|戦い《あそび》続けられるように)
(臓腑と一緒に溢れ出した返り血を、君は浴びただろう。これほど溢れてるんだから、一滴くらいはね。乾いた唇で、血液に塞がれる声を絞り出す)
……|それは残念《È un peccato》。
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リュラ・アンナスラ 4月29日12時(――たっぷり地を染めた血液が全て炎と変じて爆ぜる。むろん|私ごと《・・・》)
(爆炎を振り払う掌と共に君の前に現れた私に、つけられた傷は残ってない。血を使えば省エネルギーで大規模な術式を使えるとはいえ、回復まで含めてかなり魔力を消耗してしまったな。明白な攻撃に転じたのは、即ち私の余裕が表情ほどにはないと判じたからだ)
こんなに楽しい戦いなんか滅多に出来たものじゃないのに。
服の弁償くらいしてくれるんだろうね。金はたんまりあるって聞いたけど。
(火焔纏う剣を構える。人の形に押し込められたといえど|竜《わたし》を|殺せる《・・・》だけの力! 実に素晴らしい! まだまだ|戦い《あそび》足りないね!)
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黑・宵刃 4月29日12時(魔術は、この犬の知る世界であるならば、最も近くて遠い。)
(|魔術《ファンタジー》を再現するのが|文明技術《テクノロジー》だ。)
(武の社会において発達した武器たちには、魔法めいたことを可能にする優れたものがいくつもある。しかし、どれも技術の集合体だ。駆動するモーターの音、走る電気の回路、振動、ささやかな気配がすべて犬にとっては感知できるものだった。)
(となると、魔法というのは――)
――がッ、(爆発した!?)ァ、あ啊啊ッッッ!!
(完全に“感じ取れない”――不意打ちだった!)
(派手に血を浴びていた!それが、爆ぜている!)
(身体が吹き飛ぶほどの火力に、犬の全身が|波打った《・・・・》。まるで、その体自体が油であるかのように、派手に燃え上がる!混乱する体が地面をもんどりうって、どうにか火を消そうとしていた。あなたを見る赤が、怨みに満ちている!)
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黑・宵刃 4月29日12時(――無傷であることを確認して、犬の口から怒声が出るはずが、血の代わりに先に、炎が溢れた。)
|别小看我,《ナメるなよ》蜥蜴ッッッ!!!
(身体を|燃やしながら《・・・・・》も、怪物の咢が、怪物の瞳が、怪物の腕が計三十七――燃やされた犬の体から溢れてあなたに襲い掛かる!よく燃えるだろう、よく痛むだろう、だが!それを凌駕するほど、兄からの命は絶対だ!炎を喰らっている。黒い中身を燃やしながら、あなたの体を嚙み砕かんと、混沌の質量が襲い掛かる!)
(無効票)
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リュラ・アンナスラ 4月29日12時竜を蜥蜴呼ばわりとは、偉いものだね、|混ざり物《Bastardo》。頭の血を抜いてあげようか。
(妖魔? そんなもんじゃないだろう、君。まして|妖魔人間《・・・・》だなんて信じられたものじゃないな。しかしその体が炎に弱いことが分かったのは朗報だ。私の最も得意な魔術――|燃やす《・・・》ことにかけては妹にも負けないよ)
(未だ盛る血液の炎を手繰る。炎の防壁、或いは目晦まし。君が何に頼って知覚してるんだか知らないけど、燃え焦げるにおいと目も眩む火焔の立てる派手な音は、どれを利用してるにせよ幾らか役を成すだろう)
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リュラ・アンナスラ 4月29日12時(詠唱するには充分な時間だ。術陣を省略するための難燃性の紙を持って来ておいて良かったね!)
――火力が足りないなら、もう少し派手に燃やしてあげよう。
(|怪物《きみ》の前に弾かれた紙を見たかな。何が書いてあるか分かった?)(炎を生み出すよりも、今ある火種を強力にする方が簡単なんだ。誰にでも分かる話かもね。即ちこれは、)
(君の周辺の温度を|極限まで高める《・・・・・・・》術式だ)
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黑・宵刃 4月29日13時ぎ、ィ゛ッ――――!!
(おおよそ人の喉から出ているとは思えない悲鳴が漏れる。)
(甲高い周波数は犬の悲鳴のリズムではあるが、明らかに耳を貫くような音だ。あなたが推定するとおり、この|犬《・》は数多く産み出されたが故の、|不純《バグ》である!しかし、正体を知り得ないのだ!)
(耳が使い物にならない。爆炎で鼻腔も焦げている、眼は元から頼っていない――体の復元は、きょうだい誰もより遅い!燃え盛る、炙られる、|怪物《いぬ》はそれでも、真っ黒な体が人の形を辛うじて保とうとする中、叫んだ!)
――ッ、祖を愚弄するなァ゛ッッ!!!!
(乾いた喉から出たのは、|かろうじて《・・・・・》人の言葉だった。)
(あなたがこの身を混ざりものだと言ったのだ。)
(赦しはしない、許しはしない!!赤い瞳に宿る執着が、明確にあなたへの殺意に制限される!!さらに黒い獣の腕が体から生え、あなたの胴体を掴みにかかった!)
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リュラ・アンナスラ 4月29日13時よく吠えるね、駄犬め。
(手を変え品を変えよくぞここまで攻撃手段があるものだ。燃え盛る剣が火勢を失う前に――残り少ない魔力が尽きる前に、決着をつけなくちゃ)
(流石にもう傷を塞ぐだけの力は残ってない。回復魔術はそこまで得意じゃないんだ。消費の激しい行動は避けたかった。千載一遇の機、見据える先の腕は|躱す《・・》んじゃなく、叩き斬る!)
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リュラ・アンナスラ 4月29日13時(――焦ったか、)(いや、焦りなんて大概感じては――ああ、いや、そうか)
貧血だな。
(血を使いすぎたって、それだけだ)(凄まじい膂力に骨の拉げる感覚がする。鱗を呼び出したのも殆ど役には立ってないらしい。血液が零れたお陰であと一回くらいは傷も何とかなろうけど、まずもってこの状況を逃れる術があるものかどうか――)
やっぱり君、|妖魔《・・》じゃないだろ。
(見下ろす腕へ、零れるのは感想一つだ)
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黑・宵刃 4月29日13時(この犬が、いくつかの交流から理解したことがある。)
(犬は、犬のままだと人の社会に溶け込めない。指示を待ち、立っているだけでは輪に馴染むどころか浮くだけで、最初こそ皆受け入れようとするものの、その異質さに皆が退屈し、離れていく。この犬に強く在った分離不安が、犬に『適応』を促した。)
(使命はこの身体を何より満たしている。血よりも、内臓よりも、――脳すらも、超える。)
(“使命を果たせ”。)
(聞こえていない耳から、誰かの声が聞こえた。)
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黑・宵刃 4月29日13時(燃え盛る体で果敢に飛び込んでいたのは、ずっとこれを狙っていたからだ。)
(攻撃手段が炎であることは、過去からわかっていても、その度合いや程度は小狗たちから聞き取れない。彼らは怯えこそ反応してみせても、言葉を知らないのだ。だから、“いつくるかわからない相手”には、まず己の身を切るしかない。)
(適応した。呼応した。社会に溶け込んだ。――生きるために得た手段は、『|模倣《コピー》』だ。)
(あなたの振り下ろす力と、火力がそのまま、あなたに返るだろう!【抄袭】!)
(あなたが勢いよく吹っ飛ぶのを眺め、火をまるで両手で割くようにして現れる犬の服は焼けている。防刃防弾、耐熱――様々な機能を誂えた服さえ、犬の胸元から腹部までを晒すまで焦げてしまっていた。しかし、その体は――女の柔肌でない。黒い体に無数の赤い瞳と、咢が蠢いている。あなたの確信をあざ笑うように、肯定するように)
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黑・宵刃 4月29日13時|再说一遍,我没听见《もう一回言えよ、聞こえなかった》。
(無傷だ。)
(あなたを『完璧に模倣した』炎を連れて、犬はあなたを見下ろしている。)
(長躯が、あなたの首を今度こそかき切ろうとしていた。すぐにそうしなかったのは、まだ隠し玉があるのではないかという警戒からだ。)
(無効票)
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リュラ・アンナスラ 4月29日13時は、ははは――。
(|それ《・・》でまだ冷静だとは。だけどその冷静さを、君は恨むべきだ)
(回復して剣を握ろうかと思ってたんだけど。|やめ《・・》だ。怪異には怪異、悍ましき怪物には悍ましき怪物が似合いだろう。今すぐに首を刎ねてれば、君は人間の柔肌を引き裂く労力で済んだのに!)
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リュラ・アンナスラ 4月29日13時(君のつけたお誂え向きの傷痕が開く。|裏返る《・・・》ように)
(竜漿が十全といえる状況じゃないが、さりとて体を維持するくらいは何らの問題もない。巨大な両翼を広げた巨大な緑の蛇竜が吼える。甲高い唸りが空を揺らすだろう。ガラガラヘビと人間が呼称するそれに似た尾が大きく警戒の音を立て、毒を宿した牙で、その身を抉らんと飛び掛かる!)
(無効票)
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黑・宵刃 4月29日13時(竜になった――あまりに大きい、視界に入れるより先に、)人の庭だって言って――(突撃を喰らう!)
(反射で体をかばう様に獣の腕がその咢を受け止めたが、明らかに体重で不利だ!体が浮いたとき、犬は心底この身体が恨めしい。きょうだいのように獣の身体であったなら、こんなことにはならないだろうに――背中で木々を打ち破りながら、どうにか致命だけは避けようとして炎と腕で抵抗している。)
ぐッ、ぎぎ、ぎッ――(腹に、)(牙が、)(触れる――!)
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リュラ・アンナスラ 4月29日14時素直に通してくれれば――。
(ノイズ交じりの、辛うじて人の声の形を保った竜声は楽しげだろう)(蛇の飛び掛かる威力を殺せるとは! やっぱり妖魔じゃないな君! |これ《・・》が|ただの《・・・》妖魔人間だなんて器なものか!)
――こんなことにはなってないんだけどね!
(翼についた爪と、殆ど筋力ばかりのしなる躯体を制御する。生憎この鱗は炎に強いんだ、自分の力で焼かれないように。竜漿の感覚からして一撃でもまともに喰らえば気絶するのは目に見えてるが、)(尻尾巻いて逃げ出す選択肢がない以上、死のうが殺そうが突き立てるまで!)
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黑・宵刃 4月29日14時(こんな巨体になれればよかったというのに!)
がぁ、アッ(腹に牙が刺さる!)(どす黒い血が弾けるように溢れ)あ゛ッ――!!(目がぐるりと回る、失血量が多すぎるのだ。全快したとはいえ、毒牙に貫かれた身体に、それを濾過する力が残っていない。)
っと、ォ゛す、かよ゛ッ
(犬は、それでも、まだ、体中の黒が蠢いている。まるで『この身体に死なれては困る』と誰かが操っているようだった。腹を毒牙に貫かれて、貌に血管が浮き出ていても、赤い眼は光を失っていない!体が黒い霧を産もうと、|また《・・》体が揺らめく!血の混じる煙を噎せながら、犬は吠えた!)
|我要斩下你的首级!《その首、切り落としてやる!》
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リュラ・アンナスラ 4月29日14時|しぶといな《Avere il cuoio duro》。
(致命の溶血毒のはずだ。とはいえ竜の獲物に対してのものとすれば、生きてるのかそうでないのか、中に|何《・》がいるのかも分からない君に効きが悪いのも当然か――)
(参ったな。このまま霧に囲まれれば今度こそ対処が出来ない。かといってこの牙を引き抜くわけにはいかない、まだ産生した毒を全部注ぎ切ったわけでもないのに!)(しなる尾を揺らす。正確な状況把握が出来るような探知能力がないのばかりがネックだけど、僅かな風切り音でも聞き分ける耳があるんだから、どこから何が来ようと撃ち落としてやるとも!)
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黑・宵刃 4月29日14時(霧、に――)
(霧になって、一度身を隠せばいいと思ったのだ。それから、いくらでもあの太い首を掻き切る手段を講じればいい。暗器にはまだまだ予備がある。しかし、手から匕首が滑り落ちた。)
(滑り落ちてしまった、)
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黑・宵刃 4月29日14時ッ、ぎ、……ッ!!!!
(事実、霧になることはできた。それでも、体はもう立つこともできない。その大きな体から逃れて、地面に転がっただけだ。どうにか身を起こそうと、舌を出して息を促しながら、黒い髪にも白い肌にも砂と小石をはりつけて、身もだえしている。)
(身体は『毒』に適応しようとしていた。この犬のあずかり知らぬところであるが、『中身』はそれを調べ始めている。激痛が興奮によって抑えられているうちに、どうにか制御しようとしているのだ。身をよじり、転がり、膝で起き上がろうにも、上体が起きてこない。這いつくばる犬のように、惨めな格好だっただろう。それでも、額をどうにか地面に擦り付けて、起きようとしていた)
(――すべては、勅令のために!)
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リュラ・アンナスラ 4月29日14時(まだやる気か、忠犬め。体を維持するための竜漿が足りない。人間の体に戻れば間もなく貧血で動けなくなるだろう。そうなれば――)(君でなくても首を取れるようになってしまう)
(竜の唸りが喉から漏れる。毒そのものに効力はあるらしい。こうなれば、のたうち回るその体を筋肉の身で作り上げられた体躯で締め上げて、毒を注ぎ込んでへし折ってやる)(飛び掛かる動きは制御した。牙を突き立てるのじゃない、小さく脆弱な人間によく似た、人でない体を、締め付ける蛇の体躯で絡め取るために!)
(無効票)
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黑・宵刃 4月29日14時(犬の体を締め上げようとするあなたの体を、『より太く、より強い』黒い何かがはい回るだろう。事実、あなたはその犬を締め上げた。体はひしゃげ、簡単に『中身』が出ただろう。そう、|中身《・・》をあなたは、出してしまった。)
(それは、|伏行之混沌《“Crawling Chaos”》である。)
(それは、|この犬《・・・》である。)
(それは、|あなた《・・・》である。)
(あなたの体は、強大な蛇がごとく、何かに締め付けられる。頭を探しても、それに|頭《かお》などないのだ。あなたは、それを知るだろうか。)
(犬の貌を見てみてもいい。)
(同じく、黒く塗りつぶされた貌に、出鱈目な瞳と牙が浮き上がっているだけだ。)
、 ?
(ノイズ交じりの声が、あなたに何かを、問うた。)
(まるで、感想を聞くかのように。)
(無効票)
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リュラ・アンナスラ 4月29日15時何が|妖魔《・・》だ、|お前《・・》――。
(|竜《わたし》が怪物で良かった。こんなもの一度見たら忘れられやしないだろう。この世の全てを狂気に蝕まれたら、私は一番に儲かる副業を捨てる羽目になる)(締め上げられる肺腑が息を忘れる。無秩序の塊を脳髄に直接叩き込まれる。|直視してしまった《・・・・・・・・》ものを、)(私が化け物だから、処理しきれるだけだ)
(何で|こんなもの《・・・・・》をたかだか番犬みたいに庭に放り出してるんだ! この家には目が節穴の奴しかいないのか? 一度武器を交えただけで中身を吐き出す、この――悍ましき|神の一柱《・・・・》なんぞを!)(だから、)
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黑・宵刃 4月29日15時(にい、と音を立てるかのように、笑う。)
(誰が?|あなた《・・・》が。|この犬《・・・》が。|世界《・・》が。)
(まるで紙屑かのように。)
……ッ、げッ、ふっ、ん゛ぐ、ッ……は、ッ……!!
(目覚めた時には、地面に転がっていた。それから、|息を吹き返した《・・・・・・・》かのように、肺に満ちていた血を吐き出している。あたりはすっかり暗くなっていて、犬はまだ自分が人の形をしているのかもわからない。とりあえず、生きているらしい。それもまた、不思議だった。)
(――そうだ、|失礼な客《ターゲット》と殺し合いになって、それから、どうしたのだったか。体を起こす力がない代わりに、とりあえず仰向けだった体を横にする。)
(闇に慣れても大して利かない目にも映る。大きな影がある。血の香りがする。)
|哈哈,如何?我已经取下你的首级了。《はは、どうだ。討ち取ってやった》
(それにしても、)
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黑・宵刃 4月29日15時(こんな死に体の己に、小狗が誰も、寝首を掻きに来ないとは。犬は不思議そうに周囲を嗅いだが、自分とこの血のにおいしかしない。しばらくして、ようやく体を起こそうとして、やはりバランスが取れない。毒が抜けきっていなかった。何度か噎せて、鼻から血を噴き出して、体をぶるぶると震わせる。体から生える獣の腕すら、よろよろとして頼りなかったが足を増やして重心を分散する分には十分だ。)
(兄の下に、この蛇の首を届けなくては。よく顔が、――顔だけが残ったものだ、と。)
(そういえば、最後に何と言っていたっけ。犬は、あなたの首を獣の腕に乗せながら、ぼんやりと考える。)
(いつもなら短期記憶は覚えていられない。その場しのぎのことはできても、会得するには二回ほど申し付けられないと頭に入らないからだ。ただ、今だけは何故か、思い出そうとすれば明瞭に浮かぶ――)
0
黑・宵刃 4月29日15時(そう思いたいのだ。)
(犬は、なぜ自分だけ皆と姿が違うのかと疑問に思うことは多かった。特に、人間の体が思春期にさしかかったころだ。明らかに周りの小狗に比べて体が小さく、体は脆い。しかし誰よりも手先が器用で、ただただ、便利すぎた。)
(この身体を、生命を、便利だと認めてもらえたのだから、この家族に属している。これほど幸福なことはなく、間違いなどない。)
(――ないはずだ。)
(“使命を果たせ”。)
(脳に響いたあの、誰とも言えない声もまだこびりついている。)
谨遵吩咐。
(月下に一礼する。それに何の意味があるかはわからない。ただ、体がそうしろというから、犬は首を垂れた。)
(蛇の首を、屋敷に連れて往く。)
(その首を見た長兄が、『お前を祖に会わせてもいい』と言い出したとき、はじめて犬はあなたに感謝した。)
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