🏙現日:集真藍とみ冬の君
早咲きのあじさいが、静かな雨に濡れていました。雨の季節に咲く花といえば、この国では一番に思い出されるものでしょう。
細雨の中を出歩く人の姿は少なく、控えめに整えられた公園の花庭を歩く影はないようでしたが――
。
月森・夜深 5月30日21時(異なる土地への|道《るうと》が視得るようになってからというもの、出歩くのは格段に楽になった。不可思議な霊力の満ちた土地を経由すれば、人の足ではとても日が暮れるまでに辿り着けないような場所をも、驚くほどの短時間で行き来できるのだから)
(此度立ち寄ったその街は、己の暮らす村に比すれば随分と人が多く――けれど、静かながらに雨の降る中を、ゆっくりと歩こうという者もなかなかにいないものか、足を踏み入れた公園にはほとんど人の気配はなく、静まり返った様相で)
(整えられたあじさいの花庭を抜ける道を、緩やかに歩んでいる――行く先に小さな四阿を目にして、まずはそこを目指すように足を向けていた)
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冷嶋・華子 5月30日21時(だからこそ、静々と雨降る今日の天気は行く分過ごしやすい。)
……梅雨らしい天気……そうよね、もう少しで六月だものね。
(ふぅ、と息を吐きつつ散策する。ぱらぱらと降る雨を、傘越しに眺めつつ──ふと傍をみれば、紫陽花らしきものが見える公園。)
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冷嶋・華子 5月30日21時──……
折角だし、立ち寄ってみるのもいいかしら。
(文字通り、「冷やかし」にいってみようと。……まずは公園内へ、そして偶々目についた四阿の方へと、ひやりとした空気を伴いつつ歩いていく。その折に、誰かと通りすがり、出逢うこともあるのかも)
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月森・夜深 5月30日21時(緩やかな足取りが止まったのは、歩み行く先に人影を認めたから)
(傘がなければ、雨の景色に紛れてしまいそうな白だった――ひとめ視た瞬間、己に生来備わった|性質《ちから》が、それが|常ならぬもの《・・・・・・》であることを知らしめる)
(別段、探ろうと意識したわけではない。生来|視えて《・・・》しまうだけのこと)
(向こうにしてみれば、己の姿は目立つものだったかもしれない。傘も差さぬ女が、蒸し暑いこの季節に関わらず、喪服を思わす黒を身に纏って歩いているのだから)
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月森・夜深 5月30日21時――よろしいですわ、杏珠ちゃん。
(口元を覆った黒い扇の向こうで小さく呟く声こそ届きはしなかったろう。けれど、視線を己へ向けていたのなら、空いた片手が何も無い虚空を撫でるように伸びたことは見て取れるかもしれないし)
(その手が、虚空から伸ばされた|無数の白い手《・・・・・・》をひとつひとつ触れているのだ、というところまで、視得るかもしれない)
(距離が近づくにつれ、ひやりとしたものを感じもしたけれど――それも気に留めず、会釈をひとつしてみせただろう)
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冷嶋・華子 5月30日22時(しとしとと降る雨の中を歩くのは、幾分涼しくて悪い気はしない。もっと欲を言えば雪にでもしてしまいたい心地だけれど……流石に公園に迷惑よね、なんて思ってた矢先)
…………あら。
(何処か青く色褪せ薄暗い雨の景色の中、はっきりとわかる黒い色合いの人が一人。)
(よくよく見れば、喪服のように見える和服をぴしっと着こなしている姿は、それだけが絵画に描かれたような鮮やか過ぎる違和感を放ってて)
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冷嶋・華子 5月30日22時(────更には、そのヒトが、人ならざる何かを侍らせているらしいのも、何となく「見え」「感じもした」。)
(白い手。……人の枠から外れた何か。霊の類……あるいはもっと、それより上位に属する何か?その辺にいるただの霊とは、違うような……そしてそれ以上に、何かひっかかりを感じる。)
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冷嶋・華子 5月30日22時(……と、そんなことを考えていれば、相手が会釈をしてきて。こちらも思わずといったように軽い会釈を返す。──声が届く程度には、近い距離。)
(……扇子を常々使う人、なんだか既視感があるわ……なんて思うのは、まあ、余談よね。思い浮かぶ顔をひと時記憶の隅に避けつつ)
……ごきげんよう。
貴女も紫陽花を見に?
(半分興味本位、声をかけてみる)
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月森・夜深 5月30日22時(心配はない、というようにひとりひとりの手を軽く握ってやれば、“杏珠ちゃん”と呼ばわる|それ《・・》は落ち着いたようで――不安がるように伸ばされていた手は鎮まるように女の足下に蟠る)
(それは、嘗てとある|神性《・・》に捧げられた命の集合体のようなものだ。かの|神性《・・》の権能に影響され、魂の断片しか世界に遺せなかった者たち――其の権能の残滓を微かに宿しては居ようが、基本的には無害なものだ)
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月森・夜深 5月30日22時御機嫌よう、お嬢さん。
ええ、あまり足を運ばない土地なものでございますから――わたくしの故郷にも幾らかは咲いておりますが、このように美しく整えられた場所は珍しいものですから、つい、足を向けてしまいました。
(口元を扇で隠すのは、巫女にして村長であるという己の身の上を鑑みた、立場上の嗜みだ。けれど声は不足なく、相手へ届くだろう)
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冷嶋・華子 5月30日22時(……幾数もの手。凡そ人としての正しい形からは逸れてしまった、魂の残滓……そう呼ぶべきものだろう、か。)
(経験則上、ああして人の形を無くした命なきものは理性を失ったり攻撃性を発露しがちだという印象があるが……あれは少なくとも、その枠組の中から外れてる。御するものが優れているのか、それともああいう形になった経緯の方に理由があるのか、はたまたその両方か────)
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冷嶋・華子 5月30日22時……、あら、お嬢さん、なんて久々に言われたわ。
(ふと掛けられた声に、ふふと笑う。……よく考えればどちらかというと歳下のヒトたちとの係りが多いからか、そんな呼ばれ方をしたのは本当に久々だ。……例外はといえば、某医師兼カムガリが少し年嵩が上なくらい──)
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冷嶋・華子 5月30日22時───……(微かに感じた引っ掛かりと、何かが繋がったような。)
……そう。足を運ばない……というなら、結構遠くから来たのかしら?
ちゃんと手入れされてて綺麗よね。
わたしもなかなか見る機会がないから、ふらっと立ち寄ってみたくなって。
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月森・夜深 5月30日23時ええ、普段は生業がありますゆえ、里から外へ出る機会が少ないのです。
(見るに、まるで冬が形を成したような。そんな彼女の姿を目にして、微かに目を細めた――貴方に害意はない。ただ、探るような色は僅かに見えたかもしれない。生来持つ力の故か、境遇の故か、目に見える全てを値踏みする癖があるというだけだ――己にとって友好的なものであるか、そうでないか)
(蟠るように足元に在る|それ《・・》は、女のそばにただ付き随うようにそこにあるだけだ――外界に影響を与えられるほどの自我も存在も残らなかった残滓は、集合体と成すことで辛うじて、その存在を保たれているのみだ)
そうですわね――とても美しくて、息を呑むほどですわ。
自然の威容も美しいものですが、こうして人の手で整えてこその美しさというものもあるものでございますね。
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冷嶋・華子 5月30日23時あら、大変そうね……
貴女|も《・》仕事柄、自由に外出できないクチなのね。
(目を細め、何処か測るように眇める彼女の様子を見ても、特に気にする事はなく。)
(──わたしの異様さで一番わかりやすいのは、肌身を通して感じているところでもあるだろうが、近づくほどにひやりとした冷気が強まるというところだろう。それ以外で言えば視る者の眼によるのだろうが、通常の人間ではないことも察せたり、本当に眼が良いのであれば──貴女と同じように、幾つかの霊──それも「悪霊」や「祟り」と呼ばれうるもの──の、残滓めいた気配すら感じ取れるのかもしれない。)
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冷嶋・華子 5月30日23時……そうね。
こうして綺麗なものを創れるというところが、ヒトの好きなところだわ。
──そういえば、「生業」ってどんなものなのかしら。
ちょっと興味があるわ。
……ああでも、一方的に聞くのは不躾よね。
答えなくても勿論いいし……
或いは、貴女が聞いてみたいことがあれば、私に聞いてみてもいいわ。
(わたしが尋ね貴女も尋ねるならイーブンでしょう、と。そんな屁理屈のようなものを言ってみる。)
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月森・夜深 5月30日23時あら、つまりは貴方も?
(口元を隠したまま、緩く首を傾げてみせる――相手を具に見つめていた目を細めたのは、その身の奥底に感じられる常ならざる気配の根源を微かながらに視て取れたから)
(そのまま、目を伏せた。それ以上探るべきではないと感じたから――|悪しき《・・・》と呼ばれるに近いものを有する存在に深く触れることが、ただびとの心身にどのような影響を及ぼすかということを、身をもって知っている)
あら、ヒトの、などと仰るということは……貴方は必ずしもそうと呼ばれ得るものではない、ということでございましょうか?
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月森・夜深 5月30日23時――失礼いたしましたわ。
どうにも、気になったことを留めておけぬたちでございまして――では、今の非礼をわたくしの問いの代わりとしてくださいまし。
(さて、何をどれくらい話そうかしら――というのを、少しばかり勘案して、)
さして大きくはない村の、まとめ役のようなものをしておりますわ。
日々のつとめの関係もございますが……なにぶん、移動には不便な土地柄でございますので、というのも正直なところでございますね。
近々に少し、そのあたりの事情が改善いたしましたので、様々な土地を巡っている、といったところでございます。
(とはいえ、表面的なことだけを話す分には、特段に構うまい。そのまま話しても問題はないだろう、と判断した)
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冷嶋・華子 5月30日23時ええ。あまり勝手に出歩いたりはできなくて。
(……と言う割には、許可なくふらりと外出をしたり、面倒な手続きなどを|管理官《世話役》に押し付け勝手に出掛けたりなども良くするのだが。)
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冷嶋・華子 5月30日23時……どの視座でわたしを見るか次第、かしら。ね。
(目を逸らすように、傘を伝う雨粒を見つめつつ。……冷えて凍った雨粒が地面に落ち、ぱらりと音を立てたあとに、雨に濡れそのままとけてゆく。)
こんなわたしでもヒトだと言ってくれるヒトもいるし、ある種の定期としては「人間」ね。
──ただ、わたし個人としては「違う」という認識。
(命なきモノをヒトと呼べるかと言えば、わたしとしては否だ。)
非礼とは特段思わないけれど、貴女がそう言うなら。
満足いく回答になっていたならいいのだけれど。──……
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冷嶋・華子 5月30日23時まとめ役……村長のようなもの、かしら?
通りで、佇まいも着こなしも凛としてる訳ね。
(くす、と笑って)
……ふぅん。「移動には不便な土地」……ね。
もしかして、車や他の乗り物でどうこうという話じゃなくて、かしら?
(従えるモノからしても、どう考えても√能力者だろう。であるなら、√移動に絡む話だろうか、と推察した。)
何にせよ、こう言っていいのかわからないけれど……息抜きがしやすくなったなら、何よりね。
ずっと同じところにいると、気が滅入ってしまうもの。
(これについてはわたしがそうと言うだけだけれど。)
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月森・夜深 5月31日00時そうなのでございますね?
ふふ、では奇遇であった、ということでございましょうね。自由に動けぬ者同士、こうして余所の土地で巡り会うというのですから。
(扇の向こう側で漏らした笑声は微か。伏した視線でふたたび彼女を見遣り、瞳は緩い弧を描く)
……成程。理解いたしましたわ。
確かに、わたくしにしてみれば、貴方は山を閉ざす冬のような御方でございますが――ええ、とはいえ、このようにお言葉を交わすことができるのならば、其をヒトである、と判断することもありましょう。
(口に出した通り、己の視点から見れば、後者である――生来からあらゆるものが視得たがゆえ、女の目からしてその線引きは厳密で厳格だ。「人間」と呼べ得る者の定義は、酷く狭い)
(けれど別段、だからといって扱いが変わるわけでもない。己にとって世界の定義はヒトであるか否かではなく――己の目的の障害になるかならないかだけだ)
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月森・夜深 5月31日00時ふふ、お気遣いに感謝申し上げますわ。
そう仰ってくださるとわたくしとしても、心のつかえが取れた心地でございます――ええ、余人の立ち入らぬ山々に臨む土地でして。
正に、貴方の仰るような方法で彼方此方を行き来できるようになるまでは、偶然の導きに頼るほかありませんでしたの。
(口振りから、おそらくは|同類《・・》であるのだろうと察された。ゆえにそのように言葉に出して――貴方も? と問うように首を傾げる)
なんの、気の滅入る暇などない日々でございますから――とはいえ、目新しい世界を見ることは、刺激にはなりますわね。
書も、それ以外のものも、堆く積んでも足りぬ程に目に入りますもの。
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冷嶋・華子 5月31日00時そうね。こういう偶然があるから、やっぱり出掛けるのはいいものね。
(世話役に面倒を押し付けた甲斐もあるわ、なんて思いつつ)
あら、詩的な修飾をして頂いてしまったわね?
……ふふ、ええ、それでいいと思うわ。
貴女のようなヒトがいないと、自分のことを時々勘違いしてしまいそうになるもの。
(言外に、貴女の認識を知らしめてくれるそのものいいは厳格さとともに気遣いのようなものも感じられる気がした。少なくとも、個人的には好ましい。……最近、自分にとって優しすぎるヒトとばかり話していた気がするので、尚のこと。)
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冷嶋・華子 5月31日00時……うーん。……貴女とは少し勝手が違うタイプの「出歩きづらい」かしら。ね。
(どう言ったものか、と暫し黙考。)
あまり堂々ということでもないのだけれど、普段は特殊な管理施設に収監されてないといけない立場で。
……許可を(むりやり)貰った時(とか勝手に出てっちゃう時とか)は外出できるんだけれど、ね。
……「人間災厄」って言って、貴女、何か分かるかしら?
(ある意味、反応を窺うために具体名を出す。√能力者に詳しければ察しがつくだろう。解らなければ、彼女がそうでない──まだ√能力や良く知られる√にまだ疎い言うことを知ることができる)
……ワーカホリックだったりする?
そういうところも含めて、なんだか知人と似てるわね、貴女。なんていうか、空気感が、というか……(扱う力も似てる気もするし。)
人柄はそんなに似てないのに、不思議ね。
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月森・夜深 5月31日00時ふふ、とはいえ、わたくしの申すことには|どちらも変わらない《・・・・・・・・・》、というだけのことでございますから。
貴方を「人間」と呼ばわる方の仰りようと、あるいはあまり変わらぬやもしれませんわ。
――生まれつき、視えてしまいますの。ヒトでないもの、平常の目には視得ぬものが――そして、大半のものとは言葉を交わすこともできますわ。
ゆえ、わたくしにとって、ヒトであるか否かはさしたる問題ではないのです。
(余人から見ればわたくしとて「人間」と定義するには能わぬやもしれませぬ。)
(そうと語る口調は平坦である――それこそ、他者からどう見えていようと、それも己にとってはどうでもいいことであるからだ)
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月森・夜深 5月31日00時――あぁ。ええ、存じ上げてはおりますわ。
わたくしの住まう|土地《るうと》では、そう呼ばわられる方々を監視している機関があるのだとか――では、ある意味同郷ということになりますかしら。
益々奇遇でございますね、では――、……。
(続けようとした言葉は一度途切れる。それはあるいは、彼女の話したことの意味を、考えているような沈黙であったろう)
(何度か、口を開きかける――のが、相手に見えていないことは幸いに思った。母の教えを守っていたのが、功を奏したように思われた)
……確か、街々では仕事に熱心な者をそう呼ばわる、のでしたかしら?
否定はしかねますけれど……ふふ、仕事以外にも少々、打ち込むべきことがあるものでございますから。
完全に職務に生きているとも申せませんわ。
(結局のところ、探すべき言葉を手放して――彼女の言葉にした耳慣れぬ外来語に言葉を残すにとどめた)
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月森・夜深 5月31日01時(それから)(もう少しだけ、思案するような間を置いただろう)
……あぁ、み冬の君?
折角でございますから、御名前を頂戴しても構いませんか――わたくしは、月森夜深と申します。龍ヶ淵村と申す、ほんの小さな寒村の村長をしておりますわ。
どうぞよしなに――あぁ、訪うのはお勧めいたしませんけれど。本当に、山以外は何もない土地ですから。
(――出自を語ったのは、)
(きっと、またいずれ会うことになるだろうと思った故だ。貴方の言葉に、もしかしたら――という微かな期待を覚えたから)
(けれど、訊かなかったのは――|きっと忘れてしまう《・・・・・・・・・》と思ったからだ。業腹にもかの|神性《・・》の影響は、己の身にも及んでいる。今こうしていても|いた《・・》ことしか憶えてはいない|██《かれ》のことを今聞かされたとて、きっと脳裡に留めてはおけない。それでは――意味がない)
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月森・夜深 5月31日01時それから、折角の奇遇でございますわ。
少しばかり散策をご一緒いたしませんこと? ――長雨は嫌いではありませんが、少々、この蒸し暑さには飽いておりましたの。
言葉を交わさせていただければ、少しは紛れるような心地がいたしますから。
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冷嶋・華子 5月31日01時……人ならざるを認知しながら、「変わらない」といえる貴女もなかなか稀有ね。
その生い立ち故、なのかしら。
(長らくヒトにあらざるものが見え、対話すらできたが故なのだろうと思いながら)
……あら、貴女もあの√の出なのね。
(話が早いわ、なんて言いながら)ええ、奇遇──……
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冷嶋・華子 5月31日01時……?どうかした?
(尻尾切れとなった言葉と、暫くの沈黙に、どうしたのだろうと首を傾げ)
……ああ、そうね、ちょっと仕事に精を出しすぎるひとのこと。
──ふぅん。気が滅入りようもないほど打ち込めるものなら、余程大事なものなのかしら?
(何だかちょっと気になる口振りね。)
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冷嶋・華子 5月31日01時……夜深。月に森、そしてヤミ。
包み込むような夜を思わせる名前ね。……良い名前。
(どちらかと言えば暗がりを好むわたしとしては、そんな印象を抱く名前だ。)
龍ヶ淵村……ああ、やっぱり村長さんなの。
……あら、何か曰くを感じるわ。
むしろ興味を惹かれてしまうわね。(くす、と笑って)
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冷嶋・華子 5月31日01時……御冬の君、って良いわね。
今度から災厄名、それにしようかしら?
──ハナコ。冷感の冷、山鳥の嶋、華氏の華に子供の子で冷嶋・華子。
本当の名前を出すのが面倒だから、「ひんやりひえひえ」なんて災厄名を騙ってる人間災厄よ。
よろしくね、夜深。
……袖触れ合うも、なんて言うしこれも何かの縁よね。
ええ、喜んで。
暑いのが嫌ならちょうどよかったわね、貴女。わたしの側にいれば多少は涼しいんじゃないかしら。
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月森・夜深 5月31日01時あら、己のやり方が通ずるのなら、どちらも変わりはありませんわ。通じない時は――ふふ、少々困ってしまうやもしれませんが。
家族の影響というのも、否定はできませんけれど。
(|██《かれ》はそういうひとだった。何者も隔てなく、鷹揚に受け止めるひとだった――己の|死《・》にすら、それを願われることにすら、浮かべた笑みを崩さないほどに)
(――気付けば、空いた手をきつく握り締めていた。脳裡に浮いた、今はもう名も姿も思い出せない|██《かれ》のことを思うときばかりは、灰色の世界に色が、感情が宿る心地がある。ひとつ息を吐いて、力を緩めた)
ええ――尤も、異なる|世界《るうと》なるものが視得るようになったのは、つい先ごろのことでございますが……
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月森・夜深 5月31日01時(いえ、と、問う彼女に緩く首を振ってみせて)
……探しているものがありますの。
けれど、見つけるに易くはないものでございますから――今は様々な土地にて関わりのありそうな物事を見分・蒐集して回る日々でございますわ。
それこそ、己の職務もありますから、遅々として進まぬのが難点と言えば、難点でございますね。
(己にとって、職務など、己の|目的《・・》に比べれば何ほどの意味もないものである。けれど――それを手放すことは決してしない)
(|██《かれ》は、生まれ育ったかの地とその民が平穏と幸福の裡にあることを願って、その存在を代価としたのだから。それを守るのは、己の使命である)
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月森・夜深 5月31日01時ふふ、尤も、その為の方法すら偶然に頼らざるを得なかった昔よりは、余程良い状況でございますから、贅沢は申しませんわ。
……あら、そのように趣深い受け取り方をしてくださるならば、名乗った甲斐もあるというものでございます。
左様、夜、山林、|闇《くらがり》……余人の力の及ばぬ領域、俗に言う|カミのもの《・・・・・》を預かる、という由にございます。
ご明察の通り、少々曰くもある土地でございますから――そこを統べる家に連なる血の者も、このように仰々しい名を戴くもので。
(けれど、そのように仰ってもらえるのなら、悪い気はしませんわ――なんて、こちらも微かに笑みを浮かべて)
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月森・夜深 5月31日01時あら、名付けの栄誉を授けてくださるということですの?
光栄の至りにございますわ、ふふ、お気に召したのでしたら、如何様にもお名乗りくださいますれば、幸いに存じますわ。
冷嶋様と仰るのですね――うふふ、そちらもとてもお可愛らしい|御名前《こおどねえむ》でございますが。
あぁ、しかし――御名前の通りでございましたら、やはり、先程から少々涼しく感じておりますのは、気のせいではありませんでしたわね。
ふふ、そういうことなら、ご一緒いただけて正に望外というものでございます。
(山中の村は、もう少し涼しく過ごしやすい。この格好で村中を歩いていても、こんなに蒸すことは余りなかったから、口実以上に参っていたのは、事実だ)
ええ、では、参りましょうか――
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