迷子、何周目?

【K.K】Release of malice

戀ヶ仲・くるり 6月11日08時

こんな夢を見た。

https://tw8.t-walker.jp/scenario/show?scenario_id=10916

──夢だよね?
今は日中。建物の中でもない路地に立っているのだから、立ったまま白昼夢を見た、のだと思う。あれは夢だ。夢なのに会話の生々しさが口に残っていて、ただの夢だと笑えなかった。......悪夢だ。あんな光景、悪夢じゃなければなんだと言うんだ──

『そう、今はまだ夢だね!』
「!!」

口に出していなかった独白に返答が返ってきて、ぶわ、と肌が粟立つ。やっぱり悪夢だった!アクマが恣意的に見せた、悪夢!
逃げなきゃ!と駆けだそうとして、

『でも未来の√のひとつだよ』

……アスファルトを踏みしめた時に耳元で囁くくらがりのこえ。その声に出鼻を挫かれて走り出しそびれた。足が上手く動かない。ざらりと胸が騒ぐ。無視してしまえと思うのに、心を逆撫でする言葉選びに向き合ってしまう。

「私はそうはなりたくない!」

くらがりを睨めつけようとしたのに、今日は姿も形も見えなかった。でも絶対に居る。……夢の中と同じように、絶対に折れないという気概を持って虚空に言う。

『“そうはなりたくない”は、“そうなると思う”からだよねぇ』

柔らかいアクマの声が、拒絶の言葉尻を捕らえて哂う。

「ちっ、ちがう!ちがう、ちがう。ちがわないけど、ちがう──!」

夢の中と同じように、必死で言い募る。ちがう。ちがう。ちがう、ちが……そんなことはない!

『あはははっはははははあはははははははは!』

アクマが苛立ちを、恐怖を、自尊心を、疑問を引っ掻くかのように嗤う。

「分からないと怖いね!いつでも質問してくれていいよ!』

いつかの時と同じように、鷹揚に示すかのようにそう言う。そう、アクマはいつでも答えてくれるだろうという|信頼《・・》がそこにはあって……同時に、その信頼に触れてはいけないという怖さもあった。

『じゃあ12から数えるから、3になったらおしまい』
「......え?」

12から3?なんだろう、変な数字。引っかかる数だ。問いかけが口からこぼれそうになる。

『──捕まる前に、質問してね!』
「ひっ」

……零れる前に、アクマ自身が邪魔したのだけれど。
ずぷり、と影の中からくらがりの大きな手が這い出てきた。空気が重くなった気がする。何かが肩の上に乗ったかのような違和感があった。ゆらりと周囲の光景が揺らぐ。路地裏の中に影が広がっていくように見えた。......ここ、どこだっけ?

「っ、質問しない!!」

ぶんぶんと首を振る。周囲がまるで、影の中に引きずり込まれた時と同じように見える。この場に留まっては行けない、と肌感覚で思う。逃げなきゃ!震える足に力を入れて駆け出す。

『どうして?』

追うくらがりの手と同じように、アクマの声がくるりを追う。

『どうして12からで、どうして3まで?』

くるりの視界の端で白い花が揺れた。なんだっけ、あの花、たしか、...…マーガレット。花はいくつ?3本。ああ、だから3...…どうして?

『どうして20歳になるまでに真実の愛を見つけられなきゃいけないんだろう!真実の愛に答えなんてあるんだろうか!』

そう、ずっと聞きたかった、こんな悪魔の証明みたいな問いに答えなんてあるの?
どうしてそんなふわふわの定義の呪いを、

『なんだろうね?どんなものだろう?どうして?』

アクマの声が頭に届き続ける。頭が痛い。

|『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』『どうして?』 《アクマの呪。探り、尋ね、誰かに拡散するごとに、呪われているという認識が広まるごとに、呪いの形は強固になっていく。どうして?...…呪いってそういうものだから!》

繰り返し繰り返し繰り返し問いかけの声があまりに重い。足が止まりそうになる。走り続けて酸素が足りないところに追い立てるよう頭の中に声が響く。止まってしまいたいのに追う手の存在に背筋が震える。
止まれない『どうして?』逃げなきゃ『どうして』アンタなんかに『どうして?』......頭が痛い!!

「アンタなんか────どっかに行っちゃえ!!」

叫ぶ声が反響する。バタバタと走り続ける足音、ドクドクと自分の血潮の音、...…それ以外何も聞こえない。
え?
走りながら後ろを見れば、捕まえようと伸ばされた手がピタリと止まっていた。どうして?これなんか、...…いや、今は、逃げなきゃ!明るいほうへ!
もう後ろは振り返らない。くらがりの路地から抜け出せとただただ前を見て走る。
光に満ちた入口、くらがりの外、──逃げ切った──!
ぜえはあと息を乱しながらまだ足は止められない。どこか、私の、...…居場所まで行きたい。
EDENになってから見つけた、私の帰れる場所に。



✴︎ ✴︎ ✴︎



『あはは!鬼ごっこはオレの負け~』

あーあ残念。捕まえられたらもうちょっと“進んだ”だろうに。問いかけにも答えなかった。答えたら“道筋が見えた”だろうに。
“真実の愛とは?”
やだなぁ。勿論答えは“ある”よ。出題者のオレが答えを決めてるから、あるよ。一般的な定義なんか関係ない、その答えがきみの正答。ちゃんとほら、準備もしてるじゃないか。きみが真実の愛を得られるように。
アクマの懐で白い花が揺れる。4輪目のマーガレット。手折られたことにも気付かなかった戀ヶ仲くるりの心の花。
初めの花は泣いて悲鳴をあげたっけ。次の花は“慣れた”から嫌がりながらもすぐ意識を逸らしたね。次の花は“気付かなかった”だろう?今みたいに。ああ、随分馴染んだね!
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。時計の針が傾くように、季節の星座が動くかのように、呪が進む。

『待ち遠しいなぁ』

時計の針の頂点。星座の一巡り。花開く日。数字は決まっている。それを思って、アクマは咲った。
オレが面白そうだと思う√は、“きみが20歳になるまでに、真実の愛を見つけられなかったら”だけじゃないよ。

影の中でアクマが笑う。笑っていながらも縛られていた。いくつかの制約。いくつかの規律。些細なように見えて“踏み外せない” 束縛。提示はしても定めるのはいつだってきみ次第だ。
けれど……きみがその鎖を緩めたなら、その限りではない。

『どっか行っていいの?そっかぁ、』

じゃあ、対価のおまけはこれにしておこうか。
くらがりのかげの形が変わる。くらがりのこえが笑う──さぁ、なにしてあそぼうか。
戀ヶ仲・くるり 6月11日08時
✴︎unlocked √ability...Release of malice
https://tw8.t-walker.jp/garage/gravity/show?gravity_id=47365

✴︎Q&A...簒奪者の定義:奪ったエネルギーで自らの√を支配せんとする、邪悪な√能力者達
じゃあさ、『√能力者がインビジブルを奪うようになったら』『邪悪なインビジブルを取り込むようになったら』──その時点から簒奪者になるんじゃない?
1