とある日:8月の幽霊
───夏になったし、また屋上で遊ぼうか。誰とはなしにそう言ったものだから、貴方はまたこの屋上にやってきた。
蝉が鳴いている。
都会だからかそれとも昨今の環境問題とやらのせいか、蝉達の声は幼い頃の記憶よりずっと小さい気がする。それでも近いような遠いような音は絶え間なく聞こえるのだ。
「セミ、いつから触れなくなりました?」
嘘みたいに綺麗な青で染まった空は其処にあるはずなのに手は届かず。どこか他人事のように見つめるばかり。
照りつける日差しは誰にも優しくなくて。際限なく大きく膨らんだ雲だけが、何かへ募らせた自分の想いと重なって見える。
「あの雲、何の形に見えますか?それとも何の形にも見えませんか?」
誰かが気を利かせて置いたであろう、氷と水を張ったミニプールには炭酸飲料がいくつか。時折吹く風に揺られてラムネ瓶がぷかぷかと何処へもいけないクラゲのように微かに沈んでは浮く。
「ラムネのじょうずな開け方はまだ覚えてます?」
こんな理想的な水色の地獄なのに、いつもの彼ら/彼女らは居ない。いまここにいるのは貴方ともう一人だけ。
「どうも、おばけです。退治されにきました。」
見知らぬ少年は笑って言う。
うだるように暑い、ある晴れた日の、真昼のことだった。
・おばけを退治してくれる方/退治したくない方
先着1名様募集。どなたでも。
世々祇会館デラックスの屋上で、おばけとほどほどにお喋りしたり遊んだりしましょう。
おばけは最期に「さようなら」と言うだけで退治できます。
大体1ヶ月くらいで終わりの予定。
・誰も来なかった場合
1週間以上誰も来ないor発言なしで少年にお迎えが来ます。
戀ヶ仲・くるり 8月8日10時(どうしてこんなに暑いんだろう。小学生になった頃の夏はここまで暑くなかった気がする。照りつける太陽は肌を焦がすようで、外に出ない方が平和だ。
でも抜けるような青空も、もくもくとした入道雲も、遊びに行こうよと誘われるようで──だから、『夏になったし、また屋上で遊ぼうか。』そんな誘いに、すんなり頷けた)
(屋上のドアを開けると、ミーンミンミン、ジワジワジワ……階段でも聞こえていた蝉の鳴き声が大きくなる。
夏の暑さの中、カラン、とラムネと氷が擦れる音が涼しげで、音に釣られて手を差し入れた。しゃがみこんだところに影が落ちて、目線をあげる)
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戀ヶ仲・くるり 8月8日10時……きみ、だぁれ?迷子になっちゃった?
(この会館に出入りするEDENの中では、上から数えた方が早いくらい“異質に耐性も知識もない”女子高生が、ゆるりと首を傾げて尋ねた。)
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澪崎・遼馬 8月8日19時(湿気のせいで呼吸さえベタつく屋上に現れたのは期待していた彼ではなく、“普通”の少女。普通なのに普通じゃないそのアンバランスさに興味を惹かれて、おばけは思わず近寄ってしまう)
こんにちは、お姉さん。
僕はおばけですよ、おばけ。足はありますけどね。ふふ、こんなに暑いとおばけも出ますよ。
(長袖のシャツとハーフパンツ、ハイソックス。とても夏の装いには見えないが、肌には汗ひとつない。光を反射するのは蒼い瞳だけ)
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澪崎・遼馬 8月8日19時迷子はお姉さんの方だと思いますけどね。僕は退治されにここに来ました。
(何を誇っているのか胸を張りながら笑う。幽霊という自称に反して陽光のような笑顔。この10歳ほどの少年は、つまりそんな子供なのだ)
……それより、早く飲まないとぬるくなっちゃいますよ、それ。
(氷水に浸された手の側にある飲料を指さす。いくら氷があるとはいえ、日差しの下では長持ちはしないだろうと小さな親切を口にする)
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戀ヶ仲・くるり 8月9日08時こんにち、はー……?えー、そっかぁ、おばけさんかぁ……。
(考えるポーズをする。もしかして私、話さない方がいい存在に話しかけちゃった?
変な人がいっぱい出没する会館だ。そう宣う変な少年の可能性もあるけれど、おばけなんだ、とすぐ納得出来る不思議な説得力があった。目の前の少年が言う通り、おばけなんだと思う。
おばけさんで、)
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戀ヶ仲・くるり 8月9日08時…説明上手だねぇ。見た目より年上のおばけさん?
(“話して大丈夫”と根拠もなく思った。危なっかしい、と自分でも思うけれど“逃げなきゃ”“助けて”“こわい”……全部思わなかったから。こういう感覚は結構信じられる)
──私が迷子って、もしかして何かしないと出れないやつかなー??退治されにって、なにかしたいことある?この会館に会いたい人とか居る?
(加えて、かなしいけれどこの手の話を何度か経験していた。怪異の領域は、危なくなくても“ルール”があることが多い。ルールをひっくり返して抜け出す力は、自分にないと知っている。何かしてほしいことがあるなら教えてほしい!帰りたいから!!)
あ、そうだね、ラムネぬるくなっちゃう。きみも飲む?
(ラムネをふたつ取り出して、自分にひとつ。きみにひとつ差し出す。)
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澪崎・遼馬 8月9日16時うーん……じゃあそういうことにしましょう!そうです、僕のお願いを叶えてくれないとお姉さんは帰れません。あ、ラムネは頂きます。
(悩むように目を瞑り束の間考え込み、再びぱっと表情を明るく変えて。しかしラムネを差し出された途端、悪戯を思いついた子供の態度そのものから、恭しく丁寧な態度でそれを受け取る。ひんやりとした感覚が指先から伝ってゆく)
では、おばけ退治の手順その1。ラムネ開け勝負をしましょう!吹きこぼさなかった方の勝ちです!ふふ、僕は強いですよ……!
(飲み口部分の包装を剥がして玉押しを取り出すと飲み口に充てがって掌で押す。プシュ、と音と共にビー玉が落ちる。ジュワッと気泡が上がって────)
(ダイスロール:赤ダイスより青ダイスが大きいor同数ならセーフ。赤ダイスの方が大きければ吹きこぼれます)
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澪崎・遼馬 8月9日16時あ……!まずい……!
(自信ありげな発言は何だったのか、バシュ!と盛大に泡が吹き上がる。しゅわしゅわ泡が溢れ続けた結果、瓶の中身は四分の一ほど減ってしまう。これは嘆く他ない)
うう……大分なくなっちゃいました……。
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戀ヶ仲・くるり 8月10日20時な、なんか今、気遣われた気配がする!ちがうならちがうでいいんだよ!?
(私、見当違いなこと言った!?と女子高生が声を上げた。年上の貫禄がない!)
ええ?お願い叶えてくれないとって……ラムネ開け勝負が、お願い?ええと……よーし!まっけないぞ〜!
(ゆるく首を傾げた後、見た目より大人びているきみの年相応な態度を見て、全部乗っかることにした。ふわりと笑って、ぴりっと包装紙を剥がす。どうやるんだっけ、と首を傾げてる間に、隣できみのラムネが吹き上がる。んふふ、と笑って、)
しょうがないなぁ、お姉さんが見本を見せてあげよう!
(ダイスロール:ルールはきみといっしょ!)
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戀ヶ仲・くるり 8月10日20時──そう!ラムネはこう開けます!
(先陣を切ったきみから学びを得た女子高生は、プシュ!と音が弾けた後はしっかり数秒蓋を押さえた。見事吹きこぼれなくビー玉が落ちたラムネを、どうだ!と掲げる)
ふふーん、じゃあこの見事に開いたラムネはきみに贈呈しましょう。私にはきみのちょうだい?
(自分のラムネをきみに押し付け、きみのラムネを引き取って、交換したラムネをそのまま差し向ける)
かんぱーい!
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澪崎・遼馬 8月12日00時流石はお姉さんですね、僕の負けです。
(勝者をニコニコと讃える少年。自分が負け悔しさより、見事にラムネを開けて得意げな貴方の姿が嬉しい)
良いんですか!!んんっ……いえ、頂きます。ありがとうございます。
(貴方からの提案に一瞬ぱあっと顔を輝かせて、我に返る。ひとつ咳払いした後にまた恭しい態度で受け取る)
ふふ、かんぱい。───冷たい。美味しいですね、ラムネ。
(一口飲めば、身体の中にも涼やかな風が通るような気がする。初めて飲んだわけでもないのに思わずぱちぱちと驚きの瞬きをして)
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澪崎・遼馬 8月12日00時じゃあ次は虫取り……は難しそうですね。じゃあ……
(屋上で採れる虫なんてそうはいない。何より虫網もないのだから捕まえようがない。代わりを求めて辺りを見渡せば、ピッタリなものが見つかった)
これにしましょう。おばけ退治の手順その2、水鉄砲で勝負です!
(ミニプールの側に置いてあったクリアブルーの水鉄砲を自分に、クリアグリーンの水鉄砲を貴方に渡す)
……これも得意ですよ、僕は。今度は負けません!
(既に水は充填済み。やる気十分とばかりにクリアの水鉄砲を構え、不敵に笑む)
(ダイスロール:ダイス値の高い方が勝利!同数なら引き分け)
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戀ヶ仲・くるり 8月14日22時ふふ、いいよぉ。(子供らしい笑顔になったきみを微笑ましそうに見てから、ラムネをぶつける。ぶつかった瓶がカチン!と涼やかな音を立てた。)ねー、おいしいねぇ、ラムネ。なんだか夏!って感じがする。
おっ、次は水鉄砲勝負か!負けないぞー!(おばけ退治ってきみと遊ぶのでいいのかな?という考えを横に除けつつ、楽しげに水鉄砲を握った。楽しいのは本当だ。こういうノリは高校生になると中々やらないから。)
(ダイスロール)
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戀ヶ仲・くるり 8月14日22時……あはは! 街中でびしょびしょになるの、新鮮かも!
(この年になると早々ない事柄に楽しげに笑って、濡れた髪をかきあげた。暑さ故に気持ちいいほどで、この暑気ならすぐに乾くだろう。)
次、なにしよっか。シャボン玉とか飛ばす?もうここ、屋根の上だけど。
(これも誰かが置いたらしき、シンプルなシャボン玉セットを持ち上げた。屋根まで飛ばすのは難題だけれど、どこまで飛ぶかは見晴らしがいいから見守れそうだ)
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澪崎・遼馬 8月16日16時僕の勝ちです!!不運があったようですが、結果は結果ですからね!
(勝利に大人げなく子供がはしゃぐ。大人でないのだから当然といえば当然なのだが。屋上に風が吹く。黒い髪が揺れ、少年の身体が一瞬透けるように空の色を透過した)
しゃぼん玉、ですか?……確かに屋上で飛ばしたことはないですね。
(貴方からの提案を聞いて空を見上げる。ここからなら地上で吹くよりももっと高くまで飛ばせるかもしれない)
じゃあおばけ退治の手順その3、しゃぼん玉を飛ばしましょう。どうせなら、あの雲まで!
(どこまでも青い空に浮かぶ入道雲を指さす。少し大人になればそんなに遠くまで飛ばすのは無理だとわかる。でも夢見ることは自由だ)
(ダイスロール:50以上で雲に届くかもしれない)
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澪崎・遼馬 8月16日16時ふー……
(シャボン玉セットの容器からキャップと一体化しているリングを外して、リングへ息を吹く。リングからぷくっと細かな泡が飛び上へと昇ってゆく)
う〜ん、届くと思ったんですが……駄目ですね。世は無常ですね。
(数mも上がると、虹色のシャボン玉は音もなく弾けてしまう。深い青色の瞳がその様を写すと儚いなぁ、なんて随分背伸びした感想を溢す)
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戀ヶ仲・くるり 8月19日22時あは!そうだねぇ、私の負け。
(濡れた髪を撫で付けながら、はしゃぐきみに笑いかける。きみの顔が微笑ましくて、悔しげな様子は作れなかった。
話す最中、きみを通して空を見た。“種族:幽霊”と関わった歴はないけれど、きみが本当に幽霊なんだ、と思うのには十分な事象。目を細めて、…すぐ笑う)
うんっ、シャボン玉、飛ばそっか!雲まで届くかなぁ!
(もくもくの入道雲は見るからに高い。雲までなんて…と野暮なことを口にせず、シャボン玉の拭き具を口にした。)
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戀ヶ仲・くるり 8月19日22時ふー……あー。
(さして上がることもなく、シャボン玉はパチンと割れた。残念、と言いながらも必然という意識も強く、きみの言葉に頷くも必死さはない。)
儚いねぇ。…ねぇ、(その呟きには、シャボン玉の行末だけではなくきみにもかかっていた。)──なにかしたいこと、ない?
(視界を上げれば半透明の魚が泳いでいく。インビジブル。生き物の行末。世界を変えれる熱源。……きみという存在は形を失い、あの魚と同じようになるのだろうか。
流されてしまった問いかけを、もう一度。そうなる前に、したいことは?を問う。消える前の時間を過ごす相手は、私でいいの?)
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澪崎・遼馬 8月21日00時───出来るなら、ずっとこうして遊びたいです。
(貴方が問いかけを投げた瞬間、時が止まったように静寂が訪れた。風も蝉の音も断絶し、青色だけが屋上を染める)
次はトウモロコシを焼きましょうか?おじいちゃんに焼き方を教えてもらったので、多分美味しく焼けます。
(ザザッ)
(世界が刹那、ノイズ混じりに歪んで。気がつけばトウモロコシを焼くためのグリルが少年の前に置かれている)
暑いですしプールが良いですかね?プールの底に宝物を沈めて宝探ししましょう。
(ザザッ)
(銀色のグリルが消えて、代わりに現れた浮き輪を抱える少年。足元から微かに、ちゃぷんと水音がする)
でも、夏といえばやっぱり虫取りですよね?この辺りでヘラクレスが採れたって聞きましたし!
(ザザッ)
(虫取り網とグリーンの虫かごを携えた少年は、これまで以上に喜色が浮かんでいた)
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澪崎・遼馬 8月21日00時(とめどなく続く、遊びへの誘い。少年より年上である貴方にはどれも随分子供っぽく映るかもしれない。でもきっと、貴方が将来忘れてしまうことや、やりたくても出来ないことに溢れている)
でも、ずっとは無理だって知ってます。あのしゃぼん玉と同じで終わりは来てしまう。それに、お姉さんも帰りたいですよね?
それなら───「さようなら」がしたいです。僕は、それが言えなかったから。
(いつの間にか、日は傾き。残酷なくらい青かった空は、治りかけの傷跡のようなオレンジ色に滲んでいる。どんよりとした重たい湿気が涼やかな風に押し流されてゆく)
おばけ退治の手順、最後です。僕にさよならをさせて下さい。
(目を伏せた笑顔でそう口にする。この少年は「退治されに来た」と言っていた。最初から消えることだけが彼の望み。だから、貴方が別れの言葉を許してくれるなら。貴方が僕の待ち望んだ人に違いない)
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戀ヶ仲・くるり 8月21日23時(ザリザリ……ザザザ……ジジジ……ザザッ)
(まるで、擦り切れてしまったフィルム映画の不具合のよう。でも現実の視界で起きていることだ。起きている事象は無かったことにならない。眉を寄せながらも目は閉じなかった。“自分が問いかけたから起きた”と分かったから尚更に、閉じれなかった)
──どの遊びも、楽しそうだね。
(きみは、多分、自分を引きずり込もうと思えば引きずり込めるんだろうな。そう思ったけれど、楽しそう、ときみに同意した。)
…うん、そうだね。ずっとは付き合えないし、帰りたいな。
(でもきみは、そうはしないだろう。そう感じたから、この同意もすぐに口から滑り落ちた)
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戀ヶ仲・くるり 8月21日23時私ね、きみに似てる人、知ってる。きみみたいに、(自分のことより先に、誰かの幸いを思いやれる人。そんなこと、きみは言われても戸惑うだろうか)…やさしい人でね。そう言えば年は全然違うけど、見た目も似てるかも。
(卵が先か、鶏が先か。きみが元々似ているのか、重ねてしまったから似て見えるのか、答えは分からない。でも、関わりの短いけれど好意を持ったきみに、幸いであって欲しいと思う人を更に重ねてしまったから、…尚更なにかしたいな、と思った。)
……うん、いいよ。それって手順があるのかな。私の好きにしていい?
(手を差し出す。“幽霊”にするにはあまり良い行為じゃないとは、薄々思う。そう思っても手は引かない)
お別れの握手をしてから、お別れの挨拶。どうかな?ダメ?
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澪崎・遼馬 8月22日22時……僕は怖くてずっと逃げてただけの子供でしたから。お姉さんの言うやさしい人とは似ても似つかないと思います。
(貴方が思い浮かべた人のように成れたらどれほど良いだろう。そう思っても、そう成れはしない。寂しげに口元が歪む)
それに、やさしいのはお姉さんの方じゃないですか。
(恐れず自称幽霊と遊んでくれる。そんな人、そうはいない。楽しそうに遊んでくれたこと、今こうして手を伸ばしてくれたこと。それが泣きたいくらい嬉しい)
……でも、おばけにまでやさしくしてると、いつか怖いおばけに取り憑かれちゃいますよ。手を取るなら『過去を生きるモノ』じゃなくて、『未来へ生きるモノ』にしないと。
(だからこそ、そのやさしさは自分に注がれるべきではないとそう思うから。差し伸べられた手を取ることはできない)
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澪崎・遼馬 8月22日22時だから、握手はダメですけど───お姉さんの好きなように「さよなら」って言ってください。
(微笑みながら、そっと両手を隠すように後ろに組む。揺らぐオレンジの陽を背にして少年は貴方の一言を待っている)
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戀ヶ仲・くるり 8月24日22時え、逃げちゃダメなの?危ないことから逃げていいよ、大人にまかせていいよ、きみ、“子供”なんでしょ?
(瞬きしてから、そんなことを言う。大人びた口調だから、見た目相応の年なのかは分からないけど…きみが“子供”だって自分を言うなら、そこは甘えていいはずだ。
この女子高生の育った世界では、“子供は大人に手助けしてもらえる”ものだった。)
(そう言いながら、一歩、きみに近寄る)
……そうだね。きみに手を差し出したの、知られた相手によっては怒られそうだよねぇ。あんまりよくないよね、これ。
(そう言って、また一歩、きみに近寄る。)
(──うん、お別れの握手、断られるかと思ってたんだよね。そういうこと言いそうだなぁって。遊びながら一度も触れる範囲に来なかったし、やんわり避けられてたし。自分への気遣いだろうな、と汲みとれる。汲めとれるけど。)
…大丈夫、誰にでもやらないよ。
(もう一歩、距離を詰めた。もうきみの目の前)
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戀ヶ仲・くるり 8月24日22時事情はなにも分からないけど、きみががんばってそう、って思った!えらかったねぇ。
(……こんなことを言って、こんな気遣いをする子供が、がんばってないことがあるか。
そう思ってきみを抱きしめる。だって手は隠されちゃったし、激励するなら握手か抱擁でしょう?)
がんばったね。がんばりすぎないでね。もう苦しくないといいね。
(回した手で背中をポンポン、と軽く叩く。そのまま回していた手を離して、きみと目を合わせてそう笑う。きみのことをほとんど知らないから、消えゆく先のことを知らないから、泣いてはあげられない。だから笑ってこう言おう。)
気をつけてね、──さようなら。
(きみが望んだ、お別れの言葉を)
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澪崎・遼馬 8月26日23時でも、大人だって誰かに守ってもらいたいじゃないですか…………………あ。
(抱擁に、動けなくなる。少女には自分のことを何も教えていない。何よりおばけに触れる危険さなんて少し考えれば分かるはず。だから彼女の行いも言葉も同情ではなく、心からのものであると理解できた。……拒否なんてできるわけがない)
───ぼく、がんばれたかな?みんなのこと、まもれた、かな?
(その温度に仮面が溶け落ちる。抱きしめられているのは、不釣り合いに大人びた少年ではなく。どこにでもいる、ただのやさしい子供だった)
ほんとに、そう、なら……痛い、こと、たくさんあった、けど……っ
(押し留めようとすればするほど、空の色を吸った雫がこぼれ落ちる。もう温度は感じないはずなのに、涙はこんなにも熱い)
ぼく、しあわせ、だよ。
(貴方の真っ直ぐな励ましがうれしくて、拙い声でしか伝えられないのが悔しい。幽霊になってから今が一番幸せな瞬間なのに)
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澪崎・遼馬 8月26日23時……はい。お姉さんも、もう悲しくならないと良いですね。
(向けられた笑顔に一度、呼吸を止めて。涙は止まらないけれど、笑ってくれた貴方には笑顔でお別れしないといけない。せめて自分ができる精一杯の笑みを浮かべて、精一杯の祈りを返す)
さようなら、お姉さん。───ありがとう。
(待ち望んだ別れの言葉に、そっと応えて。少年は、滲むオレンジ色の空に掻き消えた)
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戀ヶ仲・くるり 8月28日18時きみは、いっぱいがんばったよ!
(なんにも根拠がないくせに、威勢だけは良く太鼓判を押した。見送る時くらい、伝えたい言葉を言うのを許してほしい。涙に濡れた目が笑みの形になったから、悪い言葉かけではなかった。…と、思いたい。)
(きみの涙をぬぐおうとはしない。笑おうとしてくれたからなおさら出来ない。きみの祈りとお礼に、笑みを返す)
うん、ありがとう。ばいばい、……どういたしまして!
(腕の中にいた少年の身体が空に混じるように、居なくなる。でも、届くかもしれないから、応える声を張り上げた)
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戀ヶ仲・くるり 8月28日18時──今日は本当に暑いなぁ。
(一人きりの屋上で、じりじりと刺すような太陽を見上げてそう呟く。コンクリートにポタリと汗が落ちた。今日は暑いから、汗が滲んで、随分目に染みる)
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澪崎・遼馬 8月29日07時(ある異能捜査官曰く、夏の暑い日には“忘れられたモノ”の集積、“懐かしさの幽霊”というべき怪異が現れるという。神隠しのいくつかはこの怪異が起こしているとも)
(いつだって、懐かしさに浸り切るより先に夏は自ら去っていく。───気がつけばもう少しで8月も幽霊になる頃だ)
『8月の幽霊』
了
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