【闲话休题:02】
◆主に命ぜられた男を始末した。
かの女の経営する夜総会で、商品の女たちに随分手荒な真似をしたらしい。
本人は酒に酔っていたと言って、お前もわかるだろうと小ばかにしたように宣ったが、生憎如何に享楽的と言えど、怪物には好んだ女に乱暴狼藉を働くことが好いと思えなかったのだ。
主との契約は絶対である。しかし、命乞い程度ならば笑えるかと思い、わざと少し泳がせていたものの、結局残るは少しばかり鉄の多い肉塊のみだ。
――これではどうも、今日はつまらないではないか。
|働き甲斐《しごと》を求めて、路地裏を歩く。太ったネズミが、次の油を求めて走るのを見送った。
√仙術サイバー、Ⅳ層。香港行政自治区。所狭しと棺桶部屋が犇めく路地裏にて。
夕暮れから、月が昇るまでのことだった。
・【誰でも歓迎】1:1中~長文RP
雰囲気で〆のご連絡をさせていただきます。
・返信速度は【中】・【ゆっくり】程度を想定。
・当キャラクターは少々、設定が特殊です。
・道案内をするか、誰かに絡まれているところを助太刀するか、――共にご飯を食べるのもOKです。便利な案内人だと思ってください。
★√仙術サイバー・Ⅳ層の香港に在住の方は顔見知りであったり、初対面に関わらずマイナスな印象でも構いません。(妖魔人間です)
・一週間ほど返信が空いた場合、こちらからご連絡のお手紙をお送りさせていただきます。
・お気軽に、ゆっくりと、雰囲気をお楽しみください。
。
黑・宵刃 8月28日15時冇問題。
身から出た錆です、……女癖が悪いと、よく叱られたもので。
(彼女にね、と老婆を指す。)
(手際よく叉焼を焼き、ソースを垂らすさまは素早い。しかし、その腕が義肢であることはこの夜の街ならばよく見えたことだろう。こびりついた油のせいで鈍く輝く鋼は、手入れをしばらくしていない証だった。)
(無効票)
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ゲルダ・ドレッセル 8月28日18時(おんなは『お飾り』でいることに慣れている。きれいなお洋服を着て、背筋を伸ばして、嫋やかに微笑む。言葉を発する必要はない。それだけで、おとなのむずかしいはなしは色々と『うまくいく』らしいのだ)(おんなはそれよりも、学校に行って勉強をしていたかった。過去を悔いても仕方がないから、今、一生懸命勉強にせいを出しているというわけだ――閑話休題、)
普段はね、クラシックやジャズに触れることが多いの。でも、こういうにぎやかなものもすき。
(音と、ひかり。それから、リズム。それらが人々の血管に、直接ちからを注いでいるようだ。皆目をぎらぎらとさせているのは、常日頃から闘争に身を置いているからなのだろう。この街に満ちるひかりと音楽は、さながらそれらを燃やす薪のようなものなのだと感じられた)
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ゲルダ・ドレッセル 8月28日18時ほんとう? ……あっ、そうだ!
(あなたに良い人が居ると聞けば、おんなは瞳を輝かせて『すてき』とちいさな声を上げた。あなたと親しい人たちがそれらを好むのなら、)
じゃあ、じゃあ……。ね、今日のお礼の、もうひとつ。私がお世話になっているお店に、どうぞ遊びにいらして。すてきな時間と、おんがくと。おいしい飲み物を、ごちそうさせてほしいの。
(店主の老婦人は一般人である、と念の為に添えておいた。おんなが『ともだちを招待したい』と言えば、彼女はきっと色良い返事をしてくれるであろうことも)
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ゲルダ・ドレッセル 8月28日18時(おんなはちいさなバッグから名刺入れを取り出した。あなたに差し出した一枚の宵色の紙片は、ショップカードであるらしい。箔押しされた店のロゴと、住所と電話番号が記されている。『烏夜』というのは、店の名前なのだろう)
汎神解剖機関の、日本。吉祥寺の街におみせがあるの。
ここからはすこし遠いけれど……よかったら。
(その√は、ある種あなたにとって『過ごしやすい』せかいのひとつなのかもしれない。黄昏に満ちたその場所で、烏夜はやわらかなおんがくを抱いて人々を包み込んでいる。誰かの涙に寄り添うために。訪れる夜が、やさしいものであるように)
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ゲルダ・ドレッセル 8月28日18時(わあ、とちいさな声を上げ、おんなは頬を薄く染めた)
……おとな!
(女癖が悪い、なんて。随分久しぶりに聞いた言葉のように感じられた。ああ、でも。あなたに優しく寄り添ってもらったら、勘違いをしてしまうひとも多いのかも。あなたはとてもきれいで、強いんだもの。きっと、男性からも、女性からも憧れられているのだろう)
(視界の端に入った老婆の鋼の腕を、あまりじろじろと見ないようにしていた。どういった理由であれ、それを不躾に眺めるのは失礼だと思ったからだ。だけれど、街中で『パーツ』が堂々と売られているくらいなのだから、もしかしたらこのせかいでは義手や義腕、義足の類は気軽なものなのかもしれない)
(無効票)
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黑・宵刃 8月28日19時(興奮しやすいきらいがある。)
(だから、激しいビートや音のせわしなさも好むが、大きな耳を休ませるにはクラシックやバラード、穏やかになりたいならレゲエを好む怪物である。皆が踊り狂うのを高所から見下ろすのが心地よい夜ばかりだった――それも、主らの連れたがる場所次第なのだが。)
(小さな声で歓迎されたことに機嫌をよくする。耳を寝かせながら尻尾を振った。)
おや、良いのですか。
(|歓迎されない《・・・・・・》のが普通だった。犬の耳と尾があるだけで、この地域では黑家の人間であると悟られる。出ていけと詰られることはしょっちゅうだった――この数か月でようやく、彼らは拒絶の声すらあげなくなったが、俯いて動けなくなったのだが。)
(しかし、あなたから与えられたのは名刺という証である。じっと眺めたり、そのまま光に翳すように見上げてみたりもした。きらきらと輝く紙には店の名が書かれている。)
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黑・宵刃 8月28日19時吉祥寺!……三鷹の|社宅《隔離住居》に恋人が住んでいるのです。近いですね。
(あなたにしかわからない地名だから、口にするのも憚られない。)
√汎神解剖機関には私もたびたび訪れています。仕事を手伝っているので――。
(もう少し出会うのが早ければ、恋人の仕事を手伝う提案をしたかもしれない。『必ず訪れます』と微笑み、早速、恋人に教えてやりたい気持ちでいっぱいになった。)
(彼女を癒すものは、多ければ多いほど良い。)
ええ、|成犬《おとな》です。
(微笑むものの、)とはいえ、少し前までの話ですよ。今は一人を大事にするので精いっぱいですから……そう言っているのに、この婆にはよく迷惑をかけたもので。
(未だに信用してもらえません、と付け加えていたら、婆から紙袋にくるまれた叉焼包が薄い不透明の袋に入れられていく。機械の指先がカウンターをリズムよくたたけば、空中にQRコードを浮かべた。此処から払えというのだ。)
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黑・宵刃 8月28日19時彼女は、私の面子を守るために、己の腕を落とした。
(あなたにしか聞こえない声の大きさで、視線の先の答えを告げる。)
そして、この街で私を受け入れ、|この貌《・・・》の呪いが効かない、数少ないかつての豪傑と言えます。
(怪物は、彼女の無礼を赦す理由があるのだ。まだ背丈が小さくて、無知で、身体に合わない丈の服を着ていたころから、この街をうろうろとしていたものだから。)
(額は、二つ合わせて14香港ドル。日本円にすると――おおよそ、285円強である。)
ゲルダさんには、この街には確かに、情があることを知って欲しかったのです――恐ろしい所と同じくらい、良い人もいる、と。
(ざらざらと、カップにたくさんの氷を入れる音が聞こえただろうか。)
(無効票)
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ゲルダ・ドレッセル 8月28日20時(この街に満ちる音楽は、あなたのそれも増長させるものなのだろう。もちろんこの街にだって、静かな場所は存在するのだろうが――代わりに満ちるのは死の気配なのかも、しれない)
もちろん。もちろんだよ。
|店長さん《ふつうの人間》がいないほうがよかったら、おみせがおやすみの日にいらして。予定を合わせられたら、『かしきり』にしちゃう!
(そんなことができるのかと言えば、YESだ。店の主人である老婦人は気難しく、厳しいひとではあるが、おんなをとてもかわいがってくれている。だから、おんなが数少ないともだちを連れてきたいと言えば休みの日でも店を開けてくれるし、その日に合わせてお買い物に出掛けたりして都合をつけてくれるのだという。そこには、確かな信頼関係があるようだった)
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ゲルダ・ドレッセル 8月28日20時わ、ほんとう? それじゃあ、すごくちかいね。
もし気に入っていただけたら、いつでも羽休めにきてほしいな。
(こちらのせかいでも仕事を手伝っているというのなら、あなたは正しく多忙なのだろう。だけれど、必ず来てくれると聞けばおんなはそれはそれは嬉しそうに笑った。あなたの大切なひとにとっても、肩のちからが抜ける場所となればいい、そう願って)
……ふふふ! だいじょうぶ、伝わってるよ。
(あなたの声音が、そのひとのことを話すときはよりやさしくなったように感じられたから。もちろん、おんなに読心術の心得はないから『なんとなく』ではあるけれど。とても大切にしているのだろうとおんなは素直に受け止めたようだった)
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ゲルダ・ドレッセル 8月28日20時――……、
(僅かに息を呑んだ。それは、)
(そうか。だから、あなたはこの老婆に対して頭があがらない様子でいるのだ。転んで膝を擦りむいただけでも痛いのに、腕を落とすなんて、そこにはどれほどの覚悟があったのだろう。痛みにめっぽう弱いおんなは、それを想像しただけで胸を抑えたのだけど――なんとか、顔には出さなかった。哀れみも悲しみ。そのどちらを抱くのも、あなたたちに泥を塗る行為だと思ったからだ)
うん。それが、この街にある……ひとのこころなんだって、わかる。
(『良い人』が『良い人』のままでこの街で生きていくのは、そう簡単なことではないのだろう。彼女の腕が、それを如実に表していた。おんなはスマートフォンでQRコードを読み取って、あなたへのお礼をきちんと支払い)
……そんなひとと、会わせてくれてありがとう。
(無効票)
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黑・宵刃 8月28日21時そんなことが?
(目を丸くした。あなたが、その店にとって随分な|稼ぎ頭《・・・》なのかと思って――それが重きではないのだと察する。)
(本で読んだのだ。きっと、それを人は信頼と呼ぶ。)
――哎呀……お願いすると思います。私もですが、彼女は少々特殊で。
普通の人間だと、彼女の温度についてこれないかもしれない。人間は、体を冷やさないほうがいいのですよね?
(怪物は生憎、体が冷えすぎない。身体のつくりはそもそも犬で、それを人間の体に無理やり引き延ばしたような、無理やりなつくりをしているのだ。だから、体温は常人より高く、まるで毛皮を着ているように寒さに強い。)
少し心を病んでいる人ですから、ゲルダさんのお店で休ませてやれたらと思って、いて……。
(そう語る顔は少し、先ほどよりは幼いものだったかもしれない。)
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黑・宵刃 8月28日21時(怪物の血肉を通してならば、固形物を食べられるようになってきた女のことばかりを考えてしまう。怪物を怪物たらしめる――欠けた|自己認識《・・・・》の楔そのものであるから、切り離せないのだ。)
(たった一人の女の心を、温かく包んでやることが、恐怖でひとつの縄張りを支配するよりも難しい。名刺を大事そうに指先で撫でるさまは、焦がれる女のようであり、惚れ込む男のようであったかもしれない。)
(あなたが、かの女に抱く怪物の慕情を認知してくれたから、どこか恥ずかし気に目線が泳いだ。尻尾はせわしなく先端だけが揺れる。)
それなら、良いのですが……。
(少なくとも、あなたに声をかけたことが、下心からではないとわかってもらえたらそれでいい。あなたは知る由もないが、怪物の性は|どちら《両性》でもある。ドイツ語を扱う同居人が言っていた。『紳士的であれ』と。わざわざ話題にしたのは、怪物から絞り出せる誠実さの表れでもある。)
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黑・宵刃 8月28日21時(息を呑むあなたから香る、哀れみと悲しみと、共感を感じ取る。ただ、あなたがそれを表情に出さなかったことも、怪物は認めた。あなたには、この街に根付く|面子《・・》というものが、きっと肌感で分かり始めているのかもしれない、と。)
(この街は確かに、眠ることを赦されぬ恐ろしい町だ。)
(同時に――人々は活気にあふれ、怪物のことすらまるで野良の犬猫のように扱い、呪われた美貌に目もくれないで、「腹が減っているのか」と情けを賭ける誰かもいるのだ。)
(有象無象が犇めく魔都である。首都ほどでないにしても、光の数だけ闇がある。誰かの栄光の数ほど、犠牲がある。それでも、)
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黑・宵刃 8月28日21時いいえ、こちらこそ。
(支払いの音を聞いて、老婆が何といえばいいのか、怪物に聞いた。怪物が声を添えれば、「ああ」と声を上げただろう。|良い一日を《Have a good day》と、愛嬌のある笑顔が、あなたに向けられる。)
(怪物の手元には、叉焼包が二つ入った袋と、香港式ミルクティーがあった。怪物は『どうぞ』と一つずつ、あなたに渡そうとするだろう。客人のあなたより早く、口はつけない。)
(無効票)
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ゲルダ・ドレッセル 8月29日02時うん!
(要は、そうだ。店主の婦人とおんなは『祖母と孫』のような間柄なのだ。おんなはそう思うのは失礼かもと遠慮をしているが、婦人の方はとっくにそう思っているからそれを許してくれるのだ。婦人はあまり多くものを語らないので、想いは通じ合っていない)
わあ、そうなの? じゃあ、じゃあ。今の時期なら、冷房をひかえめにしたほうがいいかな。
(氷や雪に愛された種のひとが存在するということを、知識面でのみ知っている。あなたが愛するひとも、似た体質を持っているのかもしれない)
……烏夜はね。そういうひとたちが、ほっと息を吐ける場所なの。
(黄昏の世界に於いて『心身ともに健やか』なにんげんは多くない。多くのにんげんが薄らとした絶望を抱いていて、夜明けを受け入れられなくなってしまったひともいる。そんなひとたちに、あたたかいのみものは、ひととき、呼吸の仕方を思い出させることが出来るきっかけになるらしいのだと微笑んで)
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ゲルダ・ドレッセル 8月29日02時(おんなは知る由もない。あなたと、あなたの愛するひとがどれほどの苦労を重ねてきているのか。それでも、知らない、わからないなりにあなたたちに穏やかな時間を過ごしてほしいと思う気持ちは本心からくるものだ)(大切なひとを想うあなたの様子に、おんなは嬉しそうに微笑んだ。あなたがどれほどそのひとを大切にしているのかが伝わってきて、なんだか自分まで胸がそわそわと落ち着かない)
心配しないで。私、あなたがやさしいひとに見えているよ。
(実のところ、あなたの性別をおんなはまだ判別できないままでいる。どちらでも納得できるから、追求をしなかったのだ。何にせよ、あなたが女性で、あなたの愛するひとも女性だと知ったとしても、おんなは然程驚かないだろう。『あい』のかたちはひとそれぞれだと思っているが故のものだった。あるがままを受け入れるおんなの性格は、ここでもよい方に作用していたのである)
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ゲルダ・ドレッセル 8月29日02時(においで全部ばれている、とまではおんなは知り得ないことだ。だから、己に示せる精一杯の誠意であなたの言葉を受け止めた。義理人情や面子というものは、おんなにとってすこし難しいことだったけれど。それでも前者に於いてはちょうど『知り始めた』ところだった。だから、彼女の腕を不憫に想うことは決してするまい)
……おいしそう!
(手渡されたそれらを受け取れば、あち、あち、とちいさな声を上げて。指が沈むほどやわらかな生地のほのかなあまい香りと、ごろごろと大きな具が除いた叉焼包に瞳を輝かせ)
それじゃあ、……えへへ、いただきます。
(どうぞ、と促す言葉に頷いて、ちいさく喰んだ。中身が飛び出してしまわないように、慎重に。叉焼から滲み出る肉汁と濃い味のタレが口いっぱいに広がって、ぱち、ぱち、と目を瞬かせた。すぐにもうひとくち齧る。どうやらとても美味しかったのだと、それで伝わるだろうか)
(無効票)
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黑・宵刃 8月29日11時はい、むしろ、窓を開けたほうがいいかもしれません。
(換気にも良いだろうか、と考えるのは都合が良すぎるか。)
(怪物が隣に居れば多少は彼女の|寒さ《孤独》が和らぐとはいえ、周囲の気温を10℃以上下げてしまうのだから――その場にいるだろう、あなたのことも考えて、そう提案した。あなたも女性の体だ。冷やさないほうがよいと怪物が判断する。)
(あなたが言うように。)
(愛するあの人が、息を吐ける場所があればいいと思っている。寒さに震えているから、息もまともに吸えていない。怪物が傍に居て、ようやく肺が本来の動きを取り戻すほどなのだから。)
……啊啊、良いご縁をいただいてしまいました。
(きっと二人きりの世界のままだったら、いつか|また《・・》破滅する。)
(――だから、輪を広げられたらと願っていた。怪物の中で、かの女はあまりに邪神としては弱く、|人間に近い《・・・・・》ほうが良い。)
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黑・宵刃 8月29日11時(しかし、怪物の歩く世界では、彼女の安寧というものは遠かった。外を連れ歩いても、きっと何処に居ても命を狙われるか、首を垂れて沈黙するかしか齎せない。だから、あなたから貰ったこの名刺は、きっとあなたが意図しないところで怪物を救うことになる。)
(あなたが誤解をせず、素直に受け止めてくれる性格の女性でよかった。怪物の知る限りで、女と言うものはどれもこれも、――いずれ、猜疑心にまみれてゆくから。)
(無論、|貌《・》に狂わされているせいなのだろうが。)
(あなたの素直さは、毒気を抜かれるし、同時に庇護欲も掻き立てる。「気を付けて」と添えて、指先を熱がるあなたにほほ笑んだ。)
(あなたが小さく齧るなら、怪物はうんと大きく齧った。食べ慣れているのもあるが、元から早食いの性質である。あなたの様子を見ながらふかふかの生地を愉しみ、喉を鳴らして呑みこむ。――美味しいものを食べるときは、無言になってしまうものだ。)
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黑・宵刃 8月29日11時気に入っていただけてよかった。
(口の水分を持って行かれたから、香港式ミルクティーで潤す。紅茶とエバミルクを混ぜたものだ。勿論砂糖シロップを混ぜてくれているから、風味は日本のミルクティーに近いかもしれない。喫茶文化のあるこの土地ではよくある飲み物で、老婆の計らいは洒落ている。)
(あなたが美味しそうに食べるさまは、怪物のみが見ているわけではない。しわの多い顔も、少し嬉しそうにしていただろう。怪物に一言、二言老婆が言って、頬杖をついた。)
……|我都交到朋友㗎啦《友達くらい作れるよ》。
(無効票)
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ゲルダ・ドレッセル 8月29日12時ほんと? それじゃあ、私もその日は上着を用意しておくね。過ごしやすいようにしていただけたほうが、私もうれしいから。
(きっと、冬に愛されたひとなのだろう。本人もきっと困っている体質だとおもうから――ならばと、おんなはより張り切り出したようだった。恩人であるあなたと、あなたの大切なひとがひとときの安らぎを得られるように。凍りついたこころが溶けきらなくとも、ほんのひととき、『ほっ』と息を吐き出すことが出来たらいい)
あのね、あのね。おみせにはいっぱいカップのコレクションがあって……冷めづらいコーヒーマグもあるの。だから、ちょっとでもあたたまってもらえたらいいな。
(必要であればヒーターも出せるから、もしその方がとっても寒がりであるならば教えて欲しいのだと頷いて)
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ゲルダ・ドレッセル 8月29日12時(黄昏のせかいに於いても、この店は珍しい部類なのだろう。なにしろ、売上金のほとんどが『だれかのやすらぎ』であったり、『だれかの帰る場所』であるために使われているのだから。店が黒字になる日は少ない。おんなが演奏会をひらくとき、きもち程度のチケットが儲けになるくらいなのだ)(年寄りの道楽だと、店主である老婦人は優しげに目を細めていた。そのこころを、大切にしたいと思っている)
(雛を育んだ環境は劣悪なものであったが、奇跡的におんなは素直な性格のままおとなになった。あなたがいとしいひとの話を嬉しそうに聞かせてくれるとき、ずっと、おんなも嬉しそうに目を細めていた)
(八角が効いた甘辛いタレの味は馴染みが薄いものだったが、仕事柄ハーブやスパイスの類には親しんでいるから、違和感を感じずに美味しいと感じることが出来た。おんなはひとくちがちいさく、食べるのが遅いけれど、飲み込んだあとにぱっと顔を上げ)
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ゲルダ・ドレッセル 8月29日12時おいしい。……とっても!
(あなたと、振る舞ってくれた老婆に向けて、きちんと伝わるように口にした。ふかふかの生地がタレを吸って、噛むたびにじゅわりと滲み出てくるのが特によい。辛さもちょうどよく、ひとくち、もうひとくちとすぐに齧り付きたくなる)(くせになる味って、きっと、こういうもののことを言うんだ)
…………わ、あまい! ミルクよりもっとコクがあって……練乳? かな?
(ミルクティーを続けて飲めば、飲みやすくあまくしてくれているのがすぐに伝わった。ベトナムの珈琲も練乳を扱うけれど、そうそう、それに近い感じがする。生クリームよりもすこしカラメルの風味がして、ミルクよりもうんと濃厚で。それなのにごくごくと飲んでしまえそうなのだから――これは、たいへんな発明だ!)
(無効票)
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黑・宵刃 8月29日18時ええ、ええ!その際は、上着をお持ちのほうが良い!
(尻尾を大きく左右に振る。あなたがこの条件を開示が提示してなお、受け入れてくれることに前向きだからだ。怪物は知っている。彼女がいつも、人目を気にして出勤に車を使うことを。怪物は知っている。彼女がいつも、本当は人に触れたかったのに、触れてしまえば凍らせるからと一人でいたことを。怪物は知っている――彼女を受け入れる場所が、どの√でも少なすぎることを。)
ああ、有難い限りです。
触れたものを凍らせてしまうとよく嘆いていらっしゃって。
そういったご配慮をいただけるのなら、彼女も安心するでしょう。
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黑・宵刃 8月29日18時(あなたから与えられる返礼は数多い。しかし、きっとそれに報いようと怪物が大金をはたくのは、良くないのだろうとも思っていた。信頼で成り立つ店には、情というものが血よりも濃く通っている。怪物が聞く限りでも、『儲けようとは思っていない』店だとは直ぐわかった。金の匂いに目ざとい教育を受けているのだから、そのやり方ではきっと経営も苦しかろう。まして都内であるのに――つまり、怪物の兄の知らぬ、金より価値があるものを大事にしている場所なのだ。)
(だから、あぶく銭で湧かせて穢すようなことをしてはならない。怪物はあなたへの感謝の示し方を、あとで愛しい女と相談すべきだと思った。きっと断られない確信もある。)
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黑・宵刃 8月29日18時(怪物は、滅多と恋人の話をしない。出来ない、が正しい。同居人の彼ならばともかく、怪物の弱点にもなり得る存在の話は、そうそうできなかった。まして、主らを狂わせて、疑似恋愛から金を吸っているというのに。まして、家のものなど、余計に。)
(――素直に、嬉しそうに聞いてくれるあなたの存在が、怪物にとってかなり身近で、優しい場所に思えた。知らぬ穏やかさが、まだむず痒い。耳としっぽがぱたぱたと揺れて、それから、人間の悪しざましか知らぬ自分の居心地が悪く、少し恥ずかしそうに視線を逸らしたのだった。)
ふふ。
(あなたが言葉を口にしたころには、怪物には充分にわかっていたし、老婆には音となって届いていただろう。このあたりでは珍しい観光客に気をよくしたのか、頑固なシワがひとつ薄らいだ。)
(何故こんなにも柔らかい生地になるのかは、怪物も知らない。老婆には何か、隠している技術があるのだろうと――ひと齧りしてから。)
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黑・宵刃 8月29日18時そうです。|花奶《evaporated milk》です。
それを紅茶と割ったものなのですよ。こちらでは一般的な飲み物で、皆が日常的に愛飲しています。
(質の悪い氷を使っていないらしい。溶けだすそれが濃度をうまく調整しているようで、怪物はストローから口を離し、プラスチックのカップを見た。)ここの婆は、昔から、この紅茶を淹れるのもうまい。全く、どういった技術なのかは私にも見当がつきません。
(ねえ、と合意を求めて老婆を見ても、面倒くさそうな顔をするだけだ。手は「さっさと行け」と言いたげに怪物を追い払った。それもそのはずだ。あなたと怪物がとどまっていたら――ひとが、だれも訪れないのだから。)
(無効票)
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ゲルダ・ドレッセル 8月29日18時(おんなは絵本の類がすきだ。おとなになってから言語を覚えるための教本にしていた。だから、雪や氷をモチーフにした登場人物のことはちょっぴりだけ知ったつもりでいる。どう工夫したらもっとお茶の時間を楽しめるかな、と考え始めていた)
わ、たいへん! じゃあ、ちょっと早い『ふゆじたく』のつもりでお迎えするね。
私たちが、ゆっくりおはなしできるように。あなたのたいせつなひとが、私を凍らせてしまう心配をしないでいいように。
(おんなの恩人のひとりに、妖精に憑かれたひとがいる。彼は妖精や精霊の類のちからに善悪は存在せず、ただ在るだけで『そう』してしまうのだと言っていた。あなたの大切なひとが纏う冷気も、きっとそれに近しいものなのだろう。うっかり準備をせずにいてお客さまを悲しませてしまったら大変だ。暖炉の掃除をしておいてもいいのかもしれない――おんなはそうして、誰かをもてなす計画を立てるのがすきだった)
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ゲルダ・ドレッセル 8月29日18時(おんなが欲しがるのは、多分、あなたたちの笑顔とちょっとした会話だけだ。気に入ってくれたら、また日を合わせて一緒に来てくれたらうれしい。そうしてくれたら、何度だっておいしい紅茶や珈琲を用意するだろう)
(拠り所はひとの弱みたり得るものなのだと言う。おんなは自由を得たばかりのころは理解できていなかったが、老婦人との信頼関係が出来てからはその意味がわかるようになってきた。他人が自分をどれほどひどく扱おうとも、それは常のことだから、幾らでも諦めることができた。だけれど、婦人や、数少ないおともだちが自分のせいで傷つけられるようなことがあったら。きっと、自分で自分が許せない。だから、そのためにも『おかね』は必要だった)(発表会でよい成績を残せたことは、おんなにとって幸運であった。そのおかげで、夜闇に怯えずとも安定したおかねを得ることが出来るようになったのだから)
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ゲルダ・ドレッセル 8月29日18時おいしいね。濃いめだけど、氷でちょうどよくなってするする飲めちゃう。おうちでも真似してみようかな?
(日本ではすこし大きな製菓材料の店に行かなければ無糖の練乳は少々手に入れ難いものだ。だが、おんなは主に店でお菓子作りを担当している。行きつけの店のどこにそれがあるかは、もうばっちりだ)
(露店の氷は胃腸に自信がない限りは少しばかり気を付けた方がよいとされているが、おんなはそういった意味でもあなたを信頼していた。客人を案内することに慣れているのであろうあなたの様子から、これらの飲食物は安全だと思ったから迷わずに口に出来た。とてもおいしい!)
ふふふ! きっと、おばあさんはだれかの『おいしい』顔を見るのがすきなのかも。
(追い払うような仕草を見て、くすくすと笑いながらもう一度頭を下げた。せっかくの美味しいものを自分たちが居ることでみんなに振る舞えなくなってしまっては、たいへんだもの)
(無効票)
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黑・宵刃 8月29日21時なんと、お優しいのでしょう。
――私も、彼女があなたがたを凍らせないよう、気を付けておきます。
(手間をかけるし、世話をかけるし、気を揉ませるだろうとはわかっているのに。あなたがどこか、嬉しそうな声色だったから。怪物はつくづく、自分が『ぬくもり』というものに無頓着だっただけで、世界には思ったより温かみがあるのではないかと思うのだ。ちょうど、あなたにそう言ったように。)
(――|都合が良い《・・・・・》世界は、自分たちで作るものなのかもしれない。)
(何もすべて自由であろうとは思っていないが、せめて今の社会という檻が苦しいならば、花嫁の体を傷つけるまえに広げてやりたいのだ。そのために必要なものは、怪物は何だって利用する。|愛《・》も、|金《・》も、縁も。その三つに、何ら優劣はないのだ。)
ああ、|良《よ》いかもしれません。もし家で試されるなら、……少し手に入れるのが難しいかもしれませんが。
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黑・宵刃 8月29日21時(怪物も、おそらくこの飲み物が知られていないということは、流通が難しいものなのだろうとは思っている。何処の世界にも物を運ぶ時、どうしても検閲がかかるものだ。こちらでは何ともない薬が、他の国では違法なことがあるのだと、四番目の兄が言っていた。彼は薬師である。)
(あなたの察する通りだ。わざと大口で食べたりするのはもちろん早食いのせいでもあるが、安全であることの証左でもある。群れの秩序では、上位のものがまず肉に口をつけるように、強いものが肉の安全を下に知らしめるものだからだ。)
(尤も、あなたとの間に上下関係はない。ただの、――安全であることのアピールだ。)
(怪物は不潔に慣れていた。いざとなれば腐った自分の死体すら食べるのだから。)
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黑・宵刃 8月29日21時(まして、まだ幼獣のころ、家族に入れてもらえずあの庭に放り出されたときから生き抜いてきたのだ。主らに土を食えと言われても口にしたし、もっと悍ましいものも摂取してきた。だから、きっと気づかないでいる。ただ、あなたの目でなら分かったかもしれない。老婆の店は、――調理場が、とことん綺麗に磨かれていることを。)
そうなのですか? ……そうでなければ、飲食などやれないか。
(怪物には老婆のその理由だけがわからないでいた。きっと、あなたとあなたの店の婦人が、心を通わせきれていないのと同じだ。)
(頭を下げるあなたを連れて、怪物が歩き出す。老婆はあなたにほほ笑んでから、空中に液晶を浮かべて、またニュースを見ようとしていた。)
(――あなたと怪物が立ち去れば、あっというまに老婆の店には人が群がる。今日は殊更にぎわうだろう。あなたという美しいおんなが、それはそれは、美味しそうに食べていたものだから。)
(無効票)
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ゲルダ・ドレッセル 8月29日21時えへへ。おともだちをおまねきするなら、とびきりたのしい時間にしてほしいもの。
(なんて、あなたをそう呼んでしまうのは図々しいかしら)
(あなたがそれに笑みを返してくれるなら、おんなはとても嬉しそうに顔を綻ばせるだろう。おんなの部屋はこぢんまりとしているから、冬物の上着を引っ張り出すことも困難ではない。あたたかさは、それだけですこしの安らぎをくれるものだと、自分も婦人に拾ってもらってから知ったから。あなたたちにも、それをお裾分けできたらいい)
宵刃さんのたいせつなひとに、よかったらお伝えしてほしいな。……『こわがらなくて、だいじょうぶ』って!
(必要なら暖炉に薪を焚べよう。お店の中だけ冬になったって、それはそれで『あべこべ』で、なんだかイベントごとのようで楽しい。飲み物がすぐに冷たくなってしまうなら――そうそう! 去年、『いいもの』を買ったことを思い出した。きっと、そのひとにぴったりだと笑みを深め)
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ゲルダ・ドレッセル 8月29日21時ちょっとおおきめの製菓材料のお店にね、エバミルクは缶で売っているの。おうちでひとりで使い切るのはちょっぴり大変かもしれないけれど、おみせで焼くお菓子にも使えるから、試してみるね。
……そうだ、お菓子や軽食もお出しできるのだけれど、好みはある?
(触れただけでものを凍らせてしまうと言うのなら、食べ物もきっと難儀しているのだろう。食べられそうなものはあるだろうかと、ちいさく添えた。あなたの大切なひとがもし、食事自体が苦手なひとであるならば、無理強いはしたくない)
(あなたのアピールは正しくおんなに伝わっていた。きっとおなかを壊してしまうような苦い思い出も増えないだろう。あなたより幾分か遅れておんなは惜しむように最後のひとかけらを頬張った)
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ゲルダ・ドレッセル 8月29日21時(おんなは老婆の厨房を見て、そのあたたかみを知った。『氷』や『なまもの』の類は特に気を使うべき食材だ。屋台の食事であれば、夕方以降はすべて。安心して口にしていい食べ物が、どれほど貴重か――これは、おんなをかわいがっている老婦人がスリランカに茶葉の買い付けに行った時、彼女の伴侶が二日ほどホテルから出られなくなったという体験談を聞いていたから、知識として有していたことだった)
おばあさんのおまんじゅう、おいしかった。お茶も。……ふふふ! こわいきもち、もう、ぜんぶ飛んで行っちゃった。
(全部ではない。だけど、あなたが『この街ではもう二度とないだろう』と、『楽しい思い出を残して帰ってほしい』と言ってくれたから、自然にそう口にすることができた。自分たちの背後からぞろぞろと人が店に向かっていく気配を感じれば、こころはまた上向いて行った)
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黑・宵刃 8月29日23時そうですね、私も――友人と、大切な人には、どうか良い時間を過ごして欲しい。
(あなたの気づかいを嗅ぎ取ったわけでない。ただ、怪物もまた素直に人を評するのだ。あなたは、怪物が友人になりたいと思えるほどのあたたかみと、優しさがあった。犬らしい性分は、少しだけ人のそれより距離が気安いかもしれない。)
(微笑んで、あなたに寄り添う姿はまるで大きな犬のようだったかもしれない。無警戒で、体格に見合ったおおらかさを携えて、はふはふと舌を出して笑っているときのように。)
(そう、言ってもらえることが、どれだけ彼女を救うだろうか。)
……ええ。ええ! そう、伝えます。必ず。
(人から恐れられる女だ。どうしても、その性分から人食いであることからは逃げられない。怪物の肉から、血液で我慢できるようになっても、やはり人のかたちをしているものを『食べられる』と一度判断してしまった瞳というものは、いくら隠しても無理がある。)
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黑・宵刃 8月29日23時(それでも、)
(『恐怖』という感情が、あの寒さを冗長させると知っているから。)
(訪れるときは、少しばかり――恐れ過ぎずに在れるのではないかと思えば、怪物が救われる心地がしていた。)
そうなのですか、缶で!
(そちらの√では、そのように波及しているのだと知る。耳はすっかりあなたのほうを向いて、興味深げであった。怪物もまた、主らに求められれば菓子を作ることがあるせいでもある。)
好みですか、……(頭の中で|模倣《・・》した。)……最近、固形を食べれるようにはなっているようですから、……温かいビーフシチューなど、いただけたら。
(お手間なのはわかっていますよ――そう添えて、怪物は笑う。彼女が吐き戻さないよう、怪物の血を少しばかり垂らすつもりでもあった。かの|精霊《ほんしょう》は、すっかり怪物の血を介さないタンパク質を歓迎しないのだから。)
(あなたが最後のひと欠片を食べきって、安心した。)
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黑・宵刃 8月29日23時(偏見やイメージというものは、どうしても『病は気から』を引き起こす。確かに観光地であれば、厨房を整える前に提供物を拵える必要があるから、至らぬところもあるかもしれないが、ここまで文明が進めばそのリスクはうんと下がる。まして、この老婆は――潔癖なくらい、丁寧な気質であった。)
ああ、それならばよかった。
(あなたの感想に、怪物は微笑んで)
……恐れは対立を生みます。私は、|EDEN《同胞》との諍いを望んではいない。
(歩き出すつま先に、迷いはない。あなたが望む亀裂がどこにあるか、最初から知っているような足取りだった。)
まだ、……取り持つのは未熟かもしれません。
ですが、――客人には、溢れんばかりの恩恵を持ち帰っていただくのが流儀なのです。
ゲルダさん。あなたにとって、此度は良い思い出になりましたか?
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ゲルダ・ドレッセル 8月30日11時(それは、『ゆるし』だ。あなたを、おともだちだと認識してよいという。あなたの大切なひととも、おともだちになれたらいいな、なんて。気恥ずかしげに語るおんなは、とても嬉しそうだった)
うれしい。私もその日がとってもたのしみ。
腕によりをかけてごちそうするね。ビーフシチューは、冬の看板メニューなの!
(英国式のビーフシチューを、日本のひとの口に合うように整えたとびっきりだ。気に入ってもらえたらいいな、とあれこれ想像を巡らせ)(おんなはとても、ひとの負の感情に敏感だ。特に、怯えや恐怖といった感情は自分がよく滲ませるものだから。あなたの大切なひとが不安げにしていたなら、きっとそれに寄り添うだろう)
(人喰いの事実を、おんなは知らない。知ればびっくりはするだろうけれど、会話が出来て、思慮がある友好的な存在に対して極度のおそれは抱かないだろう。良くも悪くも、本当に『中立』なのだ)
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ゲルダ・ドレッセル 8月30日11時(加糖の練乳であればちいさいチューブで売っているのだけれど。無糖なら無糖でいくらでも使い道がある。料理に使うならまろやかなコクを生んでくれるだろうし、おいしいもののレシピをあれこれ考えるのはとてもたのしい)
そうなの、けっこう大きな缶でね、トマト缶くらいおおきいの。
フロランタンやパンナコッタに使ってもおいしいと思うし……ふふふ! いまからキッチンに立つのが楽しみになってきちゃった。
(手間だ、と言うあなたに、ふるふるとかぶりを振って否を唱え)
私ね、お店で働くようになってから……いろんなひとが笑顔になっていくすがたを見ることができるようになってきたの。それが、とってもうれしくて……だから、そのためのおもてなしを『めんどう』だっておもったこと、いちどもないよ。
(それが友人を喜ばせるためのものであるなら尚更だ。だから、あなたも憂う必要はないのだと微笑んで)
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ゲルダ・ドレッセル 8月30日11時(身構えているとにんげんというものは本当に『そう』なってしまうのだ。だけれど、あなたを信頼したおんなはそれを呼び起こすことは最後までなかった。それに、老婆の戦場である厨房を見れば食に対して真摯に向き合っているのだということは痛いほど伝わってくる。それを、心から信じたのだ)
また来たいな、って思ったの。
私も、もっとせかいのさかいめをかんたんに見つけられたらいいのだけれど……。
(今はまだ、星視の天球を使って漸くほんのわずかな『ほころび』を見つけられるくらいだ。ひとりでは、とても、とても時間がかかってしまう――『えにし』を辿れば、或いはもう少し容易いだろうか?)
ふふ! うん、とっても!
(怖い思い出が消えたわけではないけれど。それでも、あなたがていねいに上書きしてくれた。だから、もう怖くない。このせかいのいいところを、おんなはきちんと知ることができた)
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黑・宵刃 8月30日13時(きっと、あなたのような人だったら――すぐに、愛しい人も気に入るだろう。)
(怪物よりもずっと人のぬくもりに飢えている。彼女に自分以外からのぬくもりを与えられることは、怪物の気分を害することだったというのに、あなたという人間とぬくもりに接してみれば、彼女が日頃より欲しがる理由も分かる気がするのだ。――分け与えるべきだと、あなたは気づかせてくれたのである。)
(人の貌をしていながら、怪物は犬の群れで育った。そして群れの長である兄は、愛情と言うものを欠落している。だから、初めて知ることもできた。あなたのような人から得る情念がこれほどまでに居心地が良いことを。)
(金にならぬことをするな、と長兄に何度も叱られた。)
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黑・宵刃 8月30日13時(即ち無償でひとを助けるなということ、家に奉公できぬなら価値がないということ、群れから追い出すぞということ。芯まで刷り込まれたこの価値観は揺らがぬし、これからもここで生きて、金を稼ぐときの基準のままが――あなたは。)
(あなたは、『めんどう』だと思わないという。)
(怪物は、何かをいいかけて、やめた。)
(あなたにほほ笑む貌は、様々な言葉を呑みこんでいただろう。)
(あなたが言葉を尽くしてくれたのだから、教えてくれたのだから、それ以上を唱える必要もなかったのだ。)
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黑・宵刃 8月30日13時それならば、よかった。
(|逢魔が時《たそがれ》にあなたを救ったのは、――怪物にとって、足らない刺激を埋めただけだというのに。)
また来れますよ。
……あなたの目ならば、必ず。
(『忘れないで』と囁いた。怪物は、狭い路地の前で止まる。明るく微笑んでくれたあなたに、行き先を示した。)
振り返らずに、真っ直ぐ歩いていくと良い。
そうすれば、――あなたの世界に戻れるはずです。
(怪物もまた、『鼻』で判断している。ここから、行きなれた√の香りがした。絶望と、苦悶と、それからほんの少しの、希望が混ざったそれである。)
お気をつけて。
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ゲルダ・ドレッセル 8月30日13時(泥濘の底で生にしがみついていた日々は、決して忘れられるようなものではないけれど。それでもいまあるぬくもりは、おんなにとって手放し難いもの。そのお裾分けが誰かに出来るのならば、こんなにもうれしいことはない)
(自分が地に足をつけるための金銭は自分の力でも十分に稼ぐことができるようになった。だから、友人たちに、帰る場所を失った人々にやすらぎの一杯を差し出すことを惜しまない。自分の血と涙でくしゃくしゃになりながら飲んだ一杯の紅茶は、たしかにあたたかかったのだ)
遊びに来てくれる日を、待っているね。
名刺の裏にね、私の番号も書いてあるから……そうそう、『080』からはじまるほうの番号! いつでも、連絡してくれたらうれしいな。
(手書きで書かれている番号は、おんなが以前必要になったいくつかの『あまり』だった。たまたま残っていてよかった。あなたの微笑みが絶えないのを、おんなはとても嬉しそうに見つめていた)
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ゲルダ・ドレッセル 8月30日13時(忘れないで、と告げる声。こくんと頷き返せば、見えないやくそくが交わされたような気がして、なんだか擽ったい気持ちがむずむずと湧いてくる。誤魔化すように、照れ隠しのように笑い)
ここまで連れてきてくれて、ありがとう。わたしのしらないせかいを教えてくれて、ありがとう。
……また、あおうね。きっとだよ。
(深く、深く頭を下げて。おんなはそっと踵を返す。振り返るなと言われたから、迷わないように真っ直ぐ、真っ直ぐ歩いていく。喧騒が、ひかりが、風が、そのいろを変えていくけれど、それでも振り返らない)
(路地がひらけたそのさきに広がっていたのは、見慣れた街の、薄暗い風景であった)(それを寂しく思うことはない。胸にある確かな約束を胸に、おんなは足早に家路につくだろう。早く帰って、婦人に今日の出来事を教えなければ)
(――あたらしいともだちが、できたんだってこと!)
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黑・宵刃 8月30日15時(あなたを見送ったあと、怪物は――名刺を裏返す。番号が書かれていた。)
(主らに取り上げられないよう、数字を二度見て暗記する。番号を端末に登録させて、大事に胸ポケットの内側にしまい込んだ。)
(狭く、微かなネオンが照らす路地に、あなたはもう居ない。)
(それを確認してから――怪物は、音もなく闇夜に馴染んで姿を消した。また、愛しい人に聞かせてやる話が増えた。)
(友人ができたこと。その人がとても穏やかで過ごしやすく、温かい人であること。あなたに是非会わせたいこと。それから、それから。)
(影を渡って、√を跨いで、興奮気味に愛する女が住まう場所に駆けつける。きっと、驚かせていたかもしれなかった。)
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