After Credits『夜汽車は朝へ』
「帰る場所は亡くすものじゃない。思い出すものだよ」――兄ソーヤ、駅のホームにて
▸𝗚𝗲𝗻𝗿𝗲
ファンタジー/ロードムービー/家族
▸𝗦𝘁𝗼𝗿𝘆
百年に一度だけ現れる《星降る駅》。そこから発つ汽車に乗れば、失くしたものが眠る場所へ行けるという。
十二歳の少女リタは、三年前に行方不明になった兄を探して汽車へ乗り込む。旅の途中で出会うのは、それぞれに「取り戻したいもの」を抱えた乗客たち。
やがて見つけた兄は、迷い込んだ人々を現実へ帰すため、ずっと駅に残っていた。
最後の星が消える前に、兄妹は皆を乗せた汽車で崩れゆく駅を脱出する。
夜明け。
三年ぶりに帰宅した二人を待っていたのは、泣きながら怒る母親と、すっかり冷めた朝食。
物語は、家族三人で食卓を囲む朝で幕を閉じる。
▸𝗧𝗮𝗴𝗹𝗶𝗻𝗲
この夜の終わりに、もう一度「ただいま」を。
▸𝗦𝗰𝗿𝗲𝗲𝗻𝗶𝗻𝗴
ひとりで/《はくちょう座》のホームシアター
▸𝗔𝗳𝘁𝗲𝗿 𝗖𝗿𝗲𝗱𝗶𝘁𝘀
エンドロールが終わっても、ジャンはしばらく席を立たなかった。
黒くなったスクリーンを眺めながら、膝の上の紙カップを傾ける。うすしおのポップコーンは、もう底に数粒しか残っていない。
「……よかったな」
誰に聞かせるでもなく、ぽつりと呟く。
兄は帰ってきた。妹も帰ってきた。母親は泣いて、怒って、それから三人で朝飯を食べた。
全部が元通りになったわけじゃない。
それでも最後には、ちゃんと同じ場所へ帰ってきて、同じ食卓を囲んでいた。
「やっぱ物語ってのは、ああじゃねぇとな」
残っていたポップコーンをひとつ摘まみ口へ放る。
途中でどれだけひどい目に遭ったって、迷ったって、離れ離れになったって。
最後くらいは、幸せになっていい。
やがてスクリーンも完全な黒へ沈み、静かなホームシアターには何の音もしなくなると、ジャンはようやく立ち上がった。
空の紙カップを片手に照明を点ける。ぱっと明るくなった室内を見回して、それから出口へ。
「次もハッピーエンドのやつにしよ」
古びた洋館の廊下へ出ると、さっきまで見ていた星空の汽車が、まだ少しだけ瞼の裏に残っていた。