資料:人間災厄『忘却』
[文書へのアクセスを確認][プロトコル『Memory』を作動します]
[|形而上多元世界記録《アカシックレコード》のチェックを開始します]
[定義外の『忘却』の影響は検出されませんでした]
[ホストの存在核周囲に対『忘却』結界を構築します]
[構築完了]
[ホストのアカウントに、当該文書へのアクセス権限を一時的に付与します]
献体管理番号:HD-████-JP
分類:災厄
収容方法:
当該献体に対し、特別な収容手続きは取られていません。制限区画に入ろうとしたり、機関の管理区域から出ようとしない限り、サイト-██内を自由に移動させて構いません。当該献体が何らかの物質や行動を希望した場合、監視官の同伴を必須条件として許可します。当該献体は月に一度の解剖、暴走下にある新物質の消却業務、√能力者の義務である対怪異業務への参加が義務づけられています。当該献体がこれらの業務に反抗的な態度を示した場合に限り、強制処置"糸車"の執行が許可されます。
説明:
当該献体は『忘却』と定義された人間災厄であり、全長165cmの性別的特徴を持たない人型存在です。外見は黒い布状物質の上下、手袋、靴、フード付きローブに身を包んだ人体に類似しておりますが、衣装の内部は現状の方法では観測不能です。頭部フードの空洞奥からは、それぞれ1個の眼球が持った3枚の翼が伸びており、これらは15cm~20cmの間で伸縮します。衣装部位は、あらゆる破壊的手段に強い耐性を持ち、損傷は即座に修復されます。翼と眼球の実体部位は、あらゆる破壊的手段で容易に傷付きますが、損傷は即座に修復されます。衣装部位と実体部位の修復速度は全く同じです。
当該献体は『忘却』に関する事象を、他対象に対して実行することが可能です。特筆すべきは『世界的忘却現象』であり、これは|形而上多元世界記録《アカシックレコード》に指定対象を忘却させることによる存在の消滅現象です。この能力により、当該献体の潜在的な危険性は極めて高く、常に監視官による定義付け、並びに監察が必須と規定されています。
当該献体は職員によるケアやメンテナンスを必要としません。食事、排泄を行わず、睡眠も必要としません。実験122-1の結果、無刺激環境にも強い耐性を持つことが判明しました。
補遺-01:
職員の精神的な問題、後遺症に対し、当該献体の使用が検討されています。
補遺-02:
第████回解剖実験において、当該献体から新物質を得ることは出来ませんでした。
補遺-03:
桐谷監視官の特異な体質を引き起こしているのは、当該献体から抽出された新物質ですが、当該物質に対する記録が損失しています。検査の結果、当該記録の損失に、HD-████-JPは関与していない事が判明しました。