資料:斎川・維月/モノローグ+α
出会ったのは偶然で。その時、丁度わたしの力が尽きていたのもそう。
人の形をした怪異のわたしを、病人だと勘違いしたお兄ちゃんが連れて帰って。
わたしは、わたしの知ってる事を正直に話して。
それで、家族を得た。
何もないわたしは、何もあげれなかった。
何もないわたしは、沢山のものを貰った。
家族から貰った愛情にも家にもご飯にも知識にも教育にも優しさにも何も返さないまま、わたしは家族を殺しました。
出かけていたお兄ちゃんだけは殺さずに済みました。
お兄ちゃんが帰って来た時、家族の遺体の前でわたしは笑っていました。
そうしないと、お兄ちゃんも殺してしまうから。
わたしは幸せです。
辛いけどとかじゃないです。辛い事は無いです。駄目です。
悲しいけども当然駄目です。
罪悪感とかないです。あっちゃ駄目なのです。
後悔とかしません。したら駄目。
絶望とか論外ですそんなの考えもしません。
ネガティブな感情は駄目です。駄目なのです。わたしの中の死が暴走して、みんな殺してしまうから。
強い人は殺せないでいれるけれど、弱い人はみんな殺してしまうから。
家族を殺した分、どれだけ考えない様にしても溜まって消えてくれないその感情を。出来るだけ相殺してから死なないと。本当に酷い事になるから。
わたしは幸せです。
わたしは厚顔です。
わたしは元気です。
わたしは愚鈍です。
わたしは明朗です。
わたしは楽観です。
わたしは愉快です。
わたしは幸せです。だって不幸でいる権利なんて無いから。
何でも楽しんで。どんな状況でも幸せで。どうなったってラッキーで。
笑って。笑って。笑って。
皆の事も楽しませて、幸せに出来たら良いなあと。
パフォーマーを志して見たりなんかして。
そしたらせめて。
違う駄目。『せめて』じゃない。そんな感情は無いです駄目なので。
楽しいな。
お兄ちゃんも一緒に居てくれる楽しいな。
毎日楽しいな。
何時までも。
何時まで
「あ、連絡員さんこんにちわーでーすよー! お仕事お疲れ様でーす!」
「お兄ちゃんを呼んできまーすね!」
「え? ボク? そりゃもう毎日楽しいですよーイエイイエイ!」
「あ、そうだ。折角だから聞いときまーすね。進捗いかがですか?」
「そりゃあもちろん、ボクを安全に殺す手段の進捗でーすよー」
「もちろん、相殺の方もがんばりますよ! がんばってまーすよー! 日々精進! でもやっぱり『呪の開放』を起こさない形でわたしを殺すのが一番早いし安全ですから」
「だから、お願いしますね? なるはやでバッチリお願いしまーすねー! 研究も実験も解剖も幾らでもお付き合いしーまーすーからね! ファイトー!」
「ちょっとちょっとテンション低いですよー連絡員さんー! もっと元気元気で行きまーしょー!」
「元気いっぱいなボクを見習うのでーすーよー!!」
だから、そんな顔しないで下さい連絡員さん。
良い人ですね。あなたも。