獣妖「アクジキジハンキ」の名前について
こんばんは。私の名前は「|北守川憑天翔竜対風火水土食以鎮神《きたのかみのかわつきのあまかけるりゅうにたいするはふうかすいどはむることをもってしずむるかみの》・|地祇深雪御前《じぎみゆきごぜん》」と言います。ええ、とても長いでしょう? ですから、「|食神《はむかみ》・|深雪《みゆき》」と省略しているのです。
人間の中には不思議な方もいるので、この長い名前を覚えようとなさる稀有な方、私の知り合いの迷子の達人のような伝承愛好家の方向けに、名前の由来について、噛み砕いてお話ししていこうと思います。
興味のある方はどうぞご自由に閲覧ください。
私以外の書き込みは禁止と致します。

◆北守◆
これは読んで字の如く「北の土地を守護する」という役割を示します。
私が守護を任されていたのは、日本の東北地方と呼ばれる範囲です。
拠点は宮城県あたりでしたかね……北上川という大きな川がありまして。岩手県から宮城県にかけて存在する大きな川なんですよ。そのあたりに存在していました。
ちなみに、|祠《いえ》はありませんでしたよ。祠というのは、参拝する人間がいるから、なくてはならないのです。√妖怪百鬼夜行には大正時代あたりまで人間がいませんでしたから、土地神だろうと、祠はありません。
(ちなみに、川が整備されたのは人間が暮らすのに氾濫が多くて不便だった時代のことなので、人間が訪れるまで、整備されていなかった設定です)
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◆川憑天翔竜◆
これは川を守る妖怪、または神様のことですね。川や水場を守護する者は、天候を司るとされ、天を翔る竜と表現されました。竜は竜で、川の秩序を守る立場にある存在でしたし、善良な竜も邪悪な竜も存在しましたが、どんなに善良であろうと、「川」や「天候」の関わる災害をもたらす場合は、私と戦わなければならない、相容れぬ存在なのです。|透明な怪物《インビジブル》に類する者もおりますが……古より存在する妖怪の殆どが√能力を持っていますから、そこの差はあまり気になりません。
竜は√ドラゴンファンタジーに嘗て存在したドラゴンとは関係ありません。便宜上そう呼んでいるだけで、竜の姿でないこともありますし、東洋と西洋では、|形《なり》も違うのでしょう?
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◆風火水土食以鎮神◆
「竜対」については直前の項目と被るので省略させていただきます。
さて、この部分にきましたか。この部分は、私が与えられた役割を果たすための手段にして、私という存在の最大特徴が表されています。
竜という大いなる存在によってもたらされる災いは様々あり、「風火水土」というのはありとあらゆる災害のことを表現しております。「鎮神」は災いを鎮める神という私の役割をまとめたものですね。
「食以」というのが、私という存在の最大特徴です。「以」という言葉が示す通り、私が災いを鎮める手段は「食」……つまり、災いを「食べる」ことだったのです。
嵐を、火災を、増水を、土砂を……あらゆる自然災害を食べ、腹の内に収めることで、私はお役目を果たしていました。
そのため、私の元々の姿は、目も鼻も手足もなく、大きな口だけがある、黒いへどろなのです。
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◆「地祇」について◆
その方面に精通している方ならご存知かと思いますが、地祇というのは「国津神」のことです。高天ヶ原……天上界におわす神を「天津神」と呼ぶわけですが、ざっくり言うと「それ以外」って感じですかね。もちろん、冥界の神は国津神ではないので、ざっくりしすぎですが。
土地に根づいた神という意味合いが強いですね。まさしく「土地神」ってことです。
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◆「深雪御膳」について◆
ここでようやく、私の固有名詞が出てくるんですね。そう、「深雪」というのが固有名詞です。
「深く積もった雪」の意味があり「しんせつ」と読むのが通常です。「みゆき」と読む場合は雪を美しいものとして称しているのです。決して駆逐艦の名前ではありません。
「御前」は敬称のようなものです。曲がりなりにも神なので。
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