何とかころりん
▓ ▓ ▓逢魔が時。
揺蕩う船の中、窓から見える景色はいつも異なる。
水面を偽る濃霧の狭間に見える光や影は、何かの妖力か。
或いは数多の世界の境かもしれない。
――嗚呼、夕星が光る。
今日とて赤滲む場所に、星影が堕ちる。
染まらぬ銀の瞳が、見定めるようにそれを辿る。
▓ ▓ ▓
約束したやつとの1:1
期限などは特になし

(真白い何かが映る。大きな尾が揺れて、妖の類だと思った。|船《やど》に悪戯でもされたらたまらないと、一先ず船体から降りて、赤き水面のような靄を歩く)
――おい。
|悪戯《わるさ》をするなら他を当たってくれ。
(薄い表情を貼り付けて、不躾にそう声をかけた)
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(ぎゅるるる〜)お腹が、減ったのぅ。このままだとお腹と背中がくっついてしまいそうじゃあ。(おぼつかない足取りで、一先ず食べ物がありそうな場所へと歩こうとするが――)
ふぎゃ!(足が絡み前に倒れ込む)(結ちゃん、大ピンチなのじゃ!)
(ふと、頭上から聴こえてきた男の声に耳をぴこぴこと動かし)
――悪戯なんてせぬよぉ。むしろ、結は良いことしかしないのじゃあ。な、何か食べ物を恵んではくれぬか……。(ぷるぷると手を差し出した)
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(近寄って、見下ろすように腰を曲げた)
(ぴこと動く耳。揺れる大きな尾。ちんちくりんな妖怪――確かに害はなさそうだ。そんなことを考えながらも、向けられた言葉には無表情を貼り付けて)
良いことって例えば?
――まあ、やってもいいけど。
(一先ず懐に忍ばせていた飴玉をひとつゆらゆらとちらつかせる。もし飛びついたとしても、ひょいと高く、避けるように持ち上げるだろう)
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――おお、飴玉くれるのかっ?(ぴょこん)(耳に尻尾、顔を真っ直ぐにぴんと上げて)
ほしい、ほしいっ。(ぴょんぴょん、すかっ)
あー、なんでなのじゃあ!どうやっても届かぬぞ?
やってもいいけどという割には、全然くれる気配ないのじゃ。
良いこと――そうじゃな、困っていることがあればなんでもお助けするぞ。
おむすびも作れるし、誰も解けない謎も解き明かしてみせよう!
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(ぴょんぴょんしてる。思った以上にちんちくりんだな)
不思議なこともあるもんだな?
(そう言いながら、頭の上にそれひょいと乗せてやる)
(なぜおむすび。とは思ったけれど口には出さず)
何、謎解きとかが得意なのか?
(はて、と首を傾げて無表情のまま)
悪いけど、どうしたって賢そうには見えないんだが。
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