ジュリア・ルーフィスの日記帳

光沢のある黒色の本。四隅には紙の保護も兼ねた銀色の装飾がされている。本の端から水が流れているかのような、白く輝く装飾だ。A6サイズで文庫本くらい。厚さは1.5㎝程度だろうか、文庫本にしては思いのほか厚い。否、表紙の装飾を見るに文庫本ではなく……別の、何か特別なものだろう。ぱらり――と、女性の手によって本の頁が捲られる。色白で指の長い手だ。カチリとボールペンのノック音が鳴る。他に音は無い、静かだ。紙の上を女性のペンが彷徨う。逡巡の後、女性は書く。『Always.』たった一言、最初の頁の真ん中にそれだけを書いて、女性は本を閉じた。パタンという音が響く。だからと言って何かが起こるというわけでもない。ただ、女性が日記帳の最初の頁を書いた。それだけのことだ。『Always.』『いつも、いつでも、――いつだって?』いつだって、何だろう。何を想っているのだろう。それを知るのは、いつもその女性本人だけだ。
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