ケオ・キャンベルの日記帳

玉蓮からサングラスを貰った。俺の目が硝子みたいになっていて、中身が見えてしまうから。それを遮るための隔たりらしい。この目は玉蓮を俺自身で見つめるために、こうなんだけど。それは秘密にしておいた。
だって、玉蓮からプレゼントを貰えた。絶対に返したくない。絶対に、ぜえったいに。
かけてみると、感覚器官から送られてくる情報量が減った。光を遮断する以外にも|物理法則に従わない《或いは従う》効力があるのだろう。視野から漏れ出る情報が、隔たりを越えられないでいるのがわかる。
認識さえ出来なければ、俺とて中空に広がる|N2とO2と、微々たる元素の混合体《あたりさわりのない日常》と変わりないのだ。
いや、今は質量も得ているから少々かさばりはするけれど。
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玉蓮に「善い子ね」と言われると、なんだか身体中がざわつくような気がする。それは玉蓮が髪に触れる心地好さとは少し違っている。
俺に心拍があるのなら、人間の症例と当てはめて気持ちというものに名前をつけられただろう。
けれども俺は人間ではないから、この感覚は人間にとって何に当てはまるのか、日々検証を重ねている。
ただひとつだけわかっていることがあって。それは玉蓮と一緒に居たいと願うこと。
かれこれ2年程此処にいるけれど、離れたいだなんて一度も思ったことがない!
花開くように、俺の日々はいつだって様々な色彩に満ちている。
かわいいな。好きだな。玉蓮の眠る夜の時間は少しだけ寂しいけれど、君をじっと独り占め出来る時間でもあるから、大好きだ。
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玉蓮とのクリスマスデート。楽しかったな。好きなものを見繕えただろうか。とても甘いことはよくわかったけれど、どうだろう。味の好みもまた知りたいな。
玉蓮に髪も梳いて貰えたし、いいことばかりだな。やっぱり心地よくて気持ちがいい。瞼を閉じる必要なんてないのに、気づいたら目を瞑っている。
不思議だなあ。玉蓮はなんでか知ってるかなあ。
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歪な幾何学模様に似た。二次元でも三次元でもない四次元の。人が知覚する世界にないものを。在る筈でないものが在る筈の世界の。表側でも裏側でもない真中に。ぽっかりと浮かび上がるように存在する。
人の皮を被る俺と、人の肉を纏う心に。
どれほど違いがあるのだろうか。
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綺麗なものは壊れやすい。嘘だ。宝石だって綺麗だけれど硬い。だからきっと綺麗なものは壊れやすいのではなくて。——あ、掴みかけたのにどっかいっちゃった。残念。また会おうね。
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好ましいとはなんだろう。熱を伴って起きる現象か。物理学的な変化はないように思うけれど、確かに心象と捉えるべきものがここに在る。人の皮を捲った先にあるのは何一つ人らしくないものだ。だというのにこの胸と称するべき部分に居座るのは、確かに心地よいと|言わざる《• • • •》を得ないものなのだ。
これは元になった人間の残滓か。それとも俺として顕現したものか。
区別する前に曖昧になっちゃった。
残ったのは俺だし、俺のものでいいよね。
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うれしいな。玉蓮と一緒のすき焼き。うれしいな。
おいしく食べてくれたのも、ケーキを食べてくれたのも。ぜんぶうれしい。
俺、すき焼きもロールケーキも好き。好きなものってこうやってたくさん増えていくのかなあ。
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