ドワーフと水晶の森
水晶の森に人の声が響いていた。森を根城にしていたドラゴンが倒されたことでスイショウウオの数が減っていた理由が明らかになったからだった。ウォーハンの街からやって来た冒険者達がスイショウウオを増やすために養殖を試みたり、ドラゴンの巣穴を撮ろうとやって来た配信者達がうろうろしていたりする。力の弱いモンスターはいるものの平和が戻った森にはのどかな春の空気が充ちていた。
そんな様子を傍目に岩永・湯布衣(黒岩姫とドヴェルグの事情・h09860)は森を流れる川の上流にある水晶の洞窟へと向かっていた。湯布衣は天上界からの遺産がどこかにないか探してみる。水晶の柱の陰にも木のうろにもそれらしきものは見つからない。
しばらく歩くと湯布衣は目的の洞窟までたどり着いた。川のそばに小さな池があり太陽の光が反射してキラキラと輝いている。ドラゴンに食べられることがなくなったからか池にはたくさんのスイショウウオの幼体が泳いでいる。ときおり微かに光っているのがかわいい。
洞窟の奥へとたどり着くと湯布衣は奥に空から落ちてきた祠がないかを探すが見つからない。入り組んだ水晶の結晶の奥にもしかしたらあるのかもしれないが今はそこまで行く手立てがなかった。どうしたものかと辺りを見回してみると大きな黒い鱗が1枚落ちていた。
湯布衣がサイコメトリーを試してみるとそこに映ったのは湯布衣がドラゴンに変身したときの姿だった。もう少し前の時間のことも探ろうとした湯布衣を飢餓感が襲う。なんとか覚悟を決め飢餓感の先へと記憶の糸を伸ばす。世界は徐々に色を失ってセピアを帯び始める。ゆっくりと息を吐き心を静めながら記憶の奥へと脚を伸ばすと見えてきたのは壮麗な庭園だった。
そこでは戦が起こり、怪物達が空から迫ってきていた。庭園は今にも焼け落ちようとしている。もしかしたらこの光景は失楽園戦争のものだろうか、そう思った湯布衣の耳に低い男の声が響いた。
「姫様を頼む」
ドワーフの戦士だった。戦士は姫をエルフの侍従へと託す。黄金の指輪を天にかざした何者かが黒いドラゴンとなって戦士に襲いかかる。戦いの最中地面は崩れ湯布衣は地割れの下へと落ちていった。
「幻ですの? 竜の正体は、正気を失った√能力者? 一度『リセット』したから……どこかで蘇った?」
呼び覚ました記憶は何を示していたのだろう。何かの手がかりだろうか。