シナリオ

⑥蔓延る屍人

#√ドラゴンファンタジー #ゾディアック継承戦争 #ゾディアック継承戦争⑥

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⚔️王劍戦争:ゾディアック継承戦争

これは1章構成の戦争シナリオです。シナリオ毎の「プレイングボーナス」を満たすと、判定が有利になります!
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(毎日16時更新)


「集まってくれてありがとう。一ヶ月くらい前から予知されてた戦争……ゾディアック継承戦争が始まったな」
 赤神・晩夏(狐道を往く・h01231)はEDENたちの姿を確認すると、緊張した面持ちで口を開く。彼の説明通り、『星神ドロッサス・タウラス』が王劍『ファルの心髄』を掌握したことにより、福岡・博多にて王劍戦争が開始されたのだ。
「今回みんなに向かってもらうのは、川端通商店街ってところだ。ここに屍王『ラフェンドラ・オピオイド』が出現して、多数のゾンビを召喚しちまったんだ。そのせいで商店街はゾンビストリートと化して、危険な状況になっちまった」
 ラフェンドラは感染性のゾンビウイルスを創造し、それを他者に感染させ実験して回っている危険な簒奪者だ。その目的は未だ不明だが、ゾンビウイルスが蔓延したダンジョンの危険性は知っている者も多いだろう。

「幸いなことに、まだ人的被害は出ていない。けどこのままゾンビを放置していれば、いずれ民間人にウイルスが感染、爆発的なゾンビパニックが起きちまう。それを阻止するためにも、一刻も早くラフェンドラを倒してほしい」
 ラフェンドラを倒すためにやるべきことは二つ。
 一つはできるだけゾンビを倒し、商店街を守ること。ゾンビは一般的にイメージされるような、知能を持たない屍人の群れのようだ。
 もう一つは商店街のどこかにいるラフェンドラを探し、戦いを挑むこと。彼女は意識して隠れているわけではないようだが、ゾンビの群れをどうにかしなければ発見することは難しいだろう。
 召喚者であるラフェンドラを倒せば、ゾンビたちも自然に消滅するようだ。

「ざっくりまとめると、とにかくゾンビの群れを倒すか対処するかして、ラフェンドラを探す。で、ぶっ飛ばすって感じだな」
 晩夏は一通り説明を終えると、EDENたちに頭を下げる。
「川端通商店街を守るためにも、みんなの力を貸してほしい。よろしく頼む!」

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第1章 ボス戦 『屍王『ラフェンドラ・オピオイド』』


三奈木・二藍


 アーケード街にゾンビが溢れる光景自体は、映画でもよくあるかもしれない。けれどその中で頭蓋骨を抱いて歩くドレスの女は浮くだろう。
 奇妙な光景を頭に浮かべ、三奈木・二藍(Missing In action-1・h08865)は細く息を吐いた。
「|おねえさま《頭蓋骨》と一緒に博多散策……とか考えてんすかねぇ? わっかんないっすけど」
 その結果生まれるのが映画さながらの光景というのが迷惑極まりないのだが。それなら自分たちにできることは、この状況をマシにしていくことだろう。
 二藍は耳元の通信機に触れると、そこから指示を飛ばす。すぐさま姿を現したのは、小鳥の群れを模したレーザー砲だ。
 地上はゾンビがひしめいているが、上空には鳥たちが飛行できる程度のスペースは存在している。二藍はアーケードの天井を見上げ、静かに言葉を紡いだ。
「まずはゾンビさんたち何とかしてからっすね。制圧射撃開始っす」
 その言葉を聞き入れ、鳥の群れは勢いよく商店街の中を飛んでいく。

 ゾンビたちは、上空からの攻撃に為すすべを持っていない。彼らは次々にレーザーに貫かれ、本物の屍人に変わっていく。
 二藍もマルチツールガンにてゾンビを撃ちつつ、少しずつアーケードの中を進んでいた。
 進行ルートの先はゾンビのたまり場になっているようで、彼らはうめき声をあげながら身を寄せ合っている。
「……文字通り肉壁っすねこれ? 肉腐ってるっすけども。よし、まとめて攻撃するっすよ」
 二藍はレーザー砲を招集し、一気に光線を発射された。合わせて自分も攻撃すれば、無数の光がゾンビを貫く。
 彼らが倒れれば、視界は一気に広がった。すると、視界の端に黒いドレスの裾が掠めた気がした。
「……あ! 見つけたっすよ」
「くっ……!」
 急いでそちらの方に駆け寄れば、ラフェンドラの背中が見えた。屍王も二藍の接近に気づいたようで、呪文のようなものを呟きつつ立ち止まる。おそらくゾンビを呼び寄せようとしているのだろう。
 そうはさせるものか。二藍はすぐさま銃を構え、ラフェンドラの肩を撃った。不利を悟ったラフェンドラは再びゾンビの壁を形成し、その場から逃げ出していく。
「またゾンビ退治になりそうっす……映画みたいっすね」
 再び鳥の群れを呼び寄せつつ、二藍は屍の群れを撃ち抜いていく。なんだかんだでこの状況も、悪いだけのものではない。
 二藍は映画の主人公さながらに、状況を少しずつ改善させていった。

巫峡山・アヤメ


「あー……戦争、戦争ねぇ……」
 ふらりとした足取りで、巫峡山・アヤメ(止まり木を探して・h02911)は川端通商店街へと足を運ぶ。
 大きな戦いが起こっているということは把握しているが、その辺りはよくわからない。今アヤメにわかることは、たった一つだ。
 商店街の中に無数に蠢くゾンビたち。彼らはすべて、斬ってしまって構わないのだと。
 アヤメは霊剣を手に取ると、うっとりするように目を細める。愛らしく彩られた刀からは霊気が漂っていた。
「あはっ❤ ちょうどこの刀、試してみたかったんだよねぇ!」
 刀を引き抜くと同時に、アヤメの身体からも霊気が溢れる。彼女の身体に宿る大百足が姿を現し、アヤメの周囲でゆらりと蠢いた。
「食べた分くらいは力を貸してもらうよ。さあ、ゾンビ狩りだね!」
 先程までの気怠げな様子から一変し、凄まじい速度でアヤメは走る。

 まずは手近なゾンビに向け、刃を一閃。動きが散漫な屍人は、自分が斬られたことすら理解できずに崩れ落ちた。
 そのままの勢いでさらに刃を数度振れば、その度にゾンビが斬り伏せられていく。
「斬れ味抜群だね! けど……もっともっと試さないと!」
 アヤメは無邪気な、けれど獰猛な笑みと共に、さらにゾンビを切り裂いていく。彼女が通った道に残るのは、屍の山のみだ。
 これだけ思い切り暴れれば――当然ラフェンドラも異変に気づく。屍王は慌ててアヤメの前に姿を晒し、彼女の顔を睨みつけた。
「あなたですね、好き勝手やっているのは……!」
「あはっ、お互い様じゃない? あなたでも……試させてよ!」
 ラフェンドラは強力なゾンビモンスターを生み出し、アヤメ目掛けてけしかける。しかしそのモンスターも、大百足の力を借りたアヤメの前ではただの肉壁だ。
 アヤメはあっさりとモンスターを切り捨て、ラフェンドラの眼前に迫る。
「焦れって出てきたのが失敗だったね? いくよ――」
 かつて教えてもらった構えを元に、アヤメが放つのは古流剣術・毘沙門の一撃。その鋭い斬撃はラフェンドラのドレスを切り裂き、赤い血を舞い踊らせた。
 確かな手応えを感じ取り、アヤメは満足げに微笑むのだった。

ネメシア・ヘリクリサム


 商店街の中はすでにゾンビでいっぱいだ。ネメシア・ヘリクリサム(剣と共に歩み、息づき、愉しむ人生・h08297)は目の前の状況を冷静に確認し、軽く腕を組む。
「ゾンビが隙間なくうぞうぞと……で、この中からラフェンドラを探せ、か」
 片っ端からゾンビを倒せば、いずれ屍王と遭遇できる可能性はある。しかし、それだと時間がかかるだろう。それなら、何か別のアプローチはできないものか。
「……いやわざわざ|ストリート《地面》をいく必要はない!」
 閃いた瞬間、ネメシアはアーケードの天井を見上げる。同時に能力を展開すれば、ネメシアの背には火喰鳥の霊翼が現れた。
 蒼炎の翼で上空へと飛び上がり、地上の様子を見下ろして。目に留まるのは無数のゾンビたちだ。√ドラゴンファンタジーから連れて来られたのか、服装もそれらしいものが多い。
 屍王も同じ世界からやって来ているはずだが、彼女のドレスはさすがに目立つだろう。探す手がかりになるはずだ。

「他にも彼女を目立たせるには……よし、一つ試してみようかな」
 ネメシアはロングソードに炎毒蜥蜴の焦熱涙を纏わせ、そのまま蒼炎を生み出す。
 そのまま地上を向けて、まずは一閃。刃から放たれた毒性の高熱煙は地上へ着弾し、ゾンビの周囲を漂い始めた。
 知性のないゾンビたちは異変に気づかず、毒に侵され倒れていく。この反応は予想通りだ。
 ネメシアはさらに斬撃を繰り出し、商店街の適当な位置に煙を起こし続けた。そのたびにゾンビが倒れていくが――一つだけ、機敏に動く影が見えた。ひらひらと布が舞う様は上空からもよく見える。
 その方向に目を凝らせば、鼻と口を抑えて逃げるラフェンドラの姿があった。予想通り、彼女はきちんと煙の対策をして動いている。
 ネメシアは急いでそちらの方向へ飛んでいき、ロングソードと凶閃霊剣『誘夜』を構える。
「見つけたよ、逃さない!」
「嘘、空からですか……!?」
 霊翼の力で一気に下降し、その勢いを乗せて刃を振るって。ネメシアの急襲は見事に成功し、ラフェンドラに連続斬りを叩き込んだ。
 ネメシアの作戦と剣技は、見事にEDENたちを勝利に近づけたのだ。

神隠祇・境華
シンシア・ウォーカー


 川端通商店街の内部は、異様な気配に包まれていた。蠢く屍人が発する不気味な声や、死のウイルスの邪悪な気配――まるで悪夢のようだ。
 けれど少し視線を上げれば、お店の看板が目に留まる。ゾンビたちの合間からも、店先に並べられた商品や、店員が使っていただろう道具が転がっていた。
 きっと騒動が起きるまで、ここは多くの人で賑わっていたのだろう。現状を再確認し、シンシア・ウォーカー(放浪淑女・h01919)はグッと拳を握りしめた。
「何故こうも人が多そう、かつ平和であったであろう場所を狙ってラフェンドラは!」
「そうですね……まだ人的被害は出ていないようですが、より被害が広がらないうちに、対処しなければ」
 神隠祇・境華(金瞳の御伽守・h10121)も険しい表情を浮かべ、シンシアの言葉に頷く。そのあと少し俯いた表情は、いつもの境華とは少しだけ違って見えた。
「……それに。なんとなくですが、私はラフェンドラさんが気に入りません。理由は……」
(……あら、境華さんがそういう事を仰るのは珍しい気が?)
 境華の顔に差した影に気づき、シンシアは小さく首を傾げる。境華もそれに気づいたのか、ハッと顔を上げた。
「……いえ、なんでもありません。急がないといけませんね、シンシアさん、行きましょう」
 真剣に言葉を紡ぐ境華の様子はいつものものと変わらない。シンシアもコクリと頷き、意識を切り替えた。
「はいっ、行きましょう! 一刻も早く商店街を取り戻しましょうね!」
 とにかく今は、ゾンビをなんとかしなくては。二人は戦いの準備を進めつつ、商店街へと飛び込んだ。

 シンシアがレイピアと短剣を構えたことを確認すれば、境華はちらりと目配せする。大量のゾンビを掃討しつつ進むなら、連携は大切になるだろう。シンシアも境華の視線に頷くと、大きく頷いた。
「境華さん、お願いしますね」
「わかりました。物語は我が手に――南天を守りし朱の翼よ。 その浄き火、いま一時だけ我と歩みを共にしたまえ」
 境華が御伽絵巻を広げ、力のある言葉を紡げば――現れるのは浄化の炎を纏う朱鳥だ。
 朱鳥は二人に先行するように前へと進み、その先に蠢くゾンビたちを一気に薙ぎ払っていく。屍人である彼らには、浄化の炎はよく効いた。
 そうして切り拓かれた道に、シンシアは迷わず飛び込む。炎から逃げ延びたゾンビを見つければ、容赦なく刃を振るって。
「私たちはラフェンドラに用があるので。ここで時間をかけているわけにはいかないのです」
 舞い踊るように刃が煌めく度に、屍人たちは倒れていく。彼女の背を守るよう、境華の朱鳥も周囲を飛び回った。

 二人の連携により、ゾンビの数はどんどん減って、視界が開けていく。すると――。
「シンシアさん、向こうを見てください!」
 境華が指さす方向には、魔術を行使するラフェンドラの姿があった。シンシアもそちらに視線を向け、二つの刃を握り直す。
「境華さん、一気に踏み込みましょう!」
「はい! 朱の翼よ!」
 まずは朱鳥が翼を広げ、周囲のゾンビを一気に薙ぎ払う。そうして開かれた道に、シンシアが力強く踏み込んだ。
「――いきます!」
 縮地の原理で前へと進み、まっすぐにレイピアを突き出す。迷いのない一撃は一瞬でラフェンドラの元へと到達し、彼女の肩を貫いた。
「くっ、邪魔をしないで……!」
 忌々しげにこちらを睨む屍王に、シンシアが返すのは鋭い言葉。
「いいえ、あなたの悪行はここで止めさせれいただきます!」
「多くの人々に迷惑をかけた報いを、受けていただきます」
 シンシアのレイピアによって動きを止められたラフェンドラの元に、境華も躊躇なく飛び込む。
 御伽斧を握る手に力を籠め、狙うは敵の死角になる位置から。勢いよく振るった刃は、ラフェンドラの身体を裂き。彼女を大きく吹き飛ばした。
 けれどここで逃がしはしない。二人はさらに別々の方向からラフェンドラへと迫る。
「あなたの目的のために沢山の人が犠牲になるのを黙って見過ごせはしないのです!」
「そうです。この商店街を、貴女の実験場にはさせません。ここで止めます」
 二人の息を合わせた刺突と斬撃は、踊るように美しい。思いを乗せて繰り出された攻撃は、屍王の力を大きく削ぎ、商店街を取り戻す一歩となったのだった。

小明見・結


 小明見・結(もう一度その手を掴むまで・h00177)は戦場に辿り着くと、すぐに周囲に目を向けた。
 アーケードの下は、やはりゾンビで溢れている。この状況で屍王を探すのは困難だから、まずはゾンビの対処をしなくては。
 それと同時に気になるのは、周囲の民間人の様子だ。
(もしかしたら、近くに逃げ遅れている人が居るかもしれない。巻き込むのは絶対駄目だから、どうにかしないと)
 商品や道具をそのままに逃げたような店もあれば、入口を固く閉ざしている店もある。ゾンビたちは開きっぱなしの店には侵入しているが、閉ざされた扉をこじ開けたりはしていないようだ。
 人的被害はまだ出ていないが、閉め切られた店の中には民間人も残っていそうだ。状況を確認すると、結は雑貨屋らしき店へと飛び込む。
 この店にいた人はすでに逃げ出しているようだ。彼らの無事を祈りつつ、結は売られていた防犯ブザーを手に取った。
 料金をレジの近くへ置いたのなら、すぐさまブザーを準備して。幸いなことにレジの側には商店街の地図が貼られていたため、目的に合っていそうな地点も確認できた。
「……よし、行きましょう」
 呼吸を整え、結は防犯ブザーを起動させる。響く音に合わせるよう、ゾンビたちが動きを変えた。

 結はこちらに迫る気配を感じ、急いで視線を巡らす。どうやらブザーを鳴らす作戦は成功のようだ、周囲のゾンビは少しずつここへ集まってきている。
 それなら次の作戦に移らなくては。結はブザーを鳴らしたまま、先程の地図で確認した地点を目指した。
 目的地は閉店した店や空き地のあるエリア。そこならきっと人も少ないはずだ。
 結は開けた場所に辿り着くと、すぐに周囲の様子を確認する。人の気配はない、ここなら大丈夫だろう。
 目論見通りゾンビも音に意識を向けられ集まってきている。結は大鎌鼬を呼び出すと、共に戦うようにお願いした。
「できればもっと穏便に済ませたかったのだけれど。でも、皆を守るために力を貸して」
 その願いに応じるよう、大鎌鼬は大きな竜巻を巻き起こし、やってきたゾンビを次々に切り払う。
 こうして結はゾンビたちを倒し、そのおかげで商店街の被害を減らせたのだった。

イワタ・レイジ
白百合・蓮華


 此度の戦場は、ごく普通の町中にある。だからバイクで近づく分にはまったく支障はなかった。
 イワタ・レイジ(気ままなバイク乗り・h13218)は愛車のハンドルに上半身を乗せながら、川端通商店街の惨状を眺める。
「すごいな。この前観た映画みたいだ」
「あは、映画より賑わってるね! 本当にフィクションみたい」
 隣の白百合・蓮華(徒花の|実《じつ》・h12988)はレイジの言葉に楽しげな声を返す。いつも通りの軽く明るいノリだ。
「映画だったらよかったんだが。けどポップコーン片手にというわけにもいかんからな、ヒメちゃんも怖がってるし」
 言葉を紡ぎつつ、レイジは軽くバイクを撫でる。『ヒメちゃん』というのはこのバイクに搭載されたAIのことだ。彼女はゾンビが苦手らしく、黙ってじっとしている。
「ポップコーンは後で食べようよ。それと、ヒメくんは……確かにこの状況見ない方がいい。何か策はあるかな?」
「オレが巨人に変身するよ。指示は蓮華くんとヒメちゃんに任せても構わないか?」
「わかった。こっちもフィクションみたいに暴れちゃおうか」
 ヒメは直接ゾンビを目視しなくても、レイジを落ち着かせたり周囲の変化を観測したりはできる。より直接的な情報収集は蓮華に任せれば大丈夫だろう。
 作戦が纏まったところで、レイジは意識を集中させる。
「――輝きはこの中に」
 次の瞬間、レイジの背から大きな五枚の苞葉が姿を現す。その中にバイクを格納すると――レイジの身体が大きく変化し始めた。

 知能のないゾンビたちも、目の前に巨大な存在が現れれば顔を上げざるを得ない。
 彼らの虚ろな瞳に映るのは――土と植物でできた巨人だった。その肩には、楽しそうにはしゃぐ蓮華が立っている。
「まるでロボットアニメの操縦席だね、最高!」
「楽しそうでなによりだ。どっちに向かえばいい?」
「そうだねぇ……」
 巨人と化したレイジがゾンビを薙ぎ払うのを横目で見ながら、蓮華は周囲の様子を探る。
 ゾンビたちは訳もわからず吹き飛ばされる者が多い。しかし攻撃的な個体は、レイジの身体をよじ登ったりしようとしていた。
「っと、危ない危ない」
 特にレイジの背面、苞葉に近づこうとしているゾンビを『銀の手』で切り裂きつつ、蓮華は観察を続ける。
 その時ふと気づいたのは、少し離れた地点。あそこだけゾンビの動きが少し機敏に見える。彼らを操る存在が近くにいる分、動きが強化されているのかもしれない。
「レイジくん、あそこが怪しい! このまま直進で!」
「わかった、任せてくれ! 振り落とされないでくれよ!」
 指示された方向を目指し、レイジはゾンビを吹き飛ばしつつ進んでいく。
 溢れる屍人を、緑の巨人が蹂躙していく――確かにこの光景は、どこかフィクションめいて見えた。

 目的地に近づけば、黒いドレスがふわりとはためく様が見えた。間違いなくラフェンドラだ。
「蓮華くん、次はどうする?」
 邪魔なゾンビを振り払いつつ、レイジは叫んだ。蓮華はその肩にしっかりと捕まりつつ、少し考え込む。
「そうだなぁ……強襲したいね。レイジくんに僕を投げてもらいたい角度はヒメくんに計算してもらって大丈夫?」
「わかった。ヒメちゃん、やろう!」
 ヒメが自分たちとラフェンドラの位置を照らし合わせ、すぐさま計算結果をレイジへと伝える。レイジはしっかりと答えを確認し、掌に蓮華を乗せた。
「僕を許すと言え……耳元でうるさくしてごめんね。ゾンビ映画といえばこれだから」
 蓮華は手にした花鋏に天人としての力を注ぎ込み、チェーンソーへと変形させる。駆動したチェーンソーは頼もしい音を立てた。これにて準備は万端だ。
「せーのっ!」
「行ってくるよ!」
 レイジは勢いよく蓮華を投げ飛ばし、ラフェンドラの真上へと導く。ラフェンドラも頭上の危険には気づいたが、多くのゾンビに囲まれているせいか、逃げるのに手間取っているようだ。
「嘘、めちゃくちゃですね……!?」
 ぞんな自業自得な彼女へ向け、蓮華は容赦なくチェーンソーの刃を振り抜く。屍王は鮮血を撒き散らし、勢いよく吹き飛ばされていった。

 ラフェンドラが弱まったからか、周囲のゾンビは消滅していったようだ。その光景を前に、返り血まみれの蓮華は楽しげに笑っている。
 人型に戻ったレイジは蓮華の元に駆け寄ると、苦笑いを浮かべた。
「お疲れ様だ」
「お疲れ……うん、やっぱりヒメくんはこの場にいなくて正解だ」
「本当にな」
 二人で顔を見合わせて、肩を竦めて。ゾンビ騒動は、やっぱりフィクションだけでお腹いっぱいかもしれない。

チェルシー・ハートサイス


 たとえ√が異なっても、屍王が呼び出す死者の気配は変わらない。
 繰り返して見てきた惨状を前にして、チェルシー・ハートサイス(強者たれ・h08836)は呆れたように首を横に振った。
「またしても、あの女なのね」
 ラフェンドラ・オピオイド。幾度となく戦い、同じことを繰り返してきた因縁の相手。彼女は今、この商店街のどこかにいる。
 ならば今日もまた、同じことを繰り返す――『死の絶対性』を刻み付けなければ。
 チェルシーにそれを行わせるのは、ラフェンドラが冒涜的な行いを止めないからだ。彼女はあまりにも、死者の尊厳を踏み躙り続けている。
「――故に、わたくしとは絶対に相容れない」
 不倶戴天の敵の気配を感じ取り、チェルシーは『ハートサイス』の柄を強く握りしめる。溢れる力がチェルシーの周囲を舞い踊ったかと思えば、彼女の衣服は紅いドレスへと変化していた。
 吸血鬼の身体能力で飛び上がれば、一瞬でアーケードの高さまで辿り着ける。そのまま空中を突き進み、チェルシーは黒衣を纏った女を探した。

 縦横無尽に空を駆けていけば、大量のゾンビは無視できる。チェルシーは赤い瞳に魔力を宿すと、そのまま周囲をざっと見回した。
「……あそこね」
 目に留まったのは邪悪な魔力の流れ。その中央に、死霊術を行使する屍王がいるはずだ。
 チェルシーはまっすぐにラフェンドラの元へと向かい、彼女の頭上を目指す。ラフェンドラもチェルシーの接近には気づいたようで、すぐにゾンビたちに指示を飛ばした。
「あの人は……! ゾンビたち、わたしの壁になってください……!」
 屍王は周囲のゾンビを操り、肉の壁を作り出す。しかし、この程度の守りもチェルシーの前では意味を成さない。
「無駄よ。我が力、天地神明に届かん!」
 チェルシーは上空を突き進みつつ、大鎌を勢いよく振るう。そこから発射された衝撃波は、ゾンビの壁を一瞬にして破壊していく。
 衝撃波はラフェンドラまで届いていた。威力が殺されたためか、拘束させる程度の威力になってしまったが――それでも十分だった。
「逃さないわ。覚悟なさい」
 チェルシーは急降下すると同時にラフェンドラを掴み、そのまま地面へと叩きつける。彼女は抱いた頭蓋骨を守ることを優先したようで、まともな受け身も取れなかったようだ。
 呻く屍王にチェルシーが振るうのは大鎌の一撃。刃は深々とラフェンドラを抉るが、すぐに命までは落とさない威力に調整されていた。
 その傷口に、チェルシーは躊躇することなくヒールを突き立てる。溢れる鮮血は、そのまま吸血鬼の糧となった。
(……さて、ここからね)
 チェルシーは、意識を朦朧とさせつつも頭蓋骨を抱くラフェンドラを静かに見下ろしていた。いつもなら、あの|頭蓋骨《ぬけがら》は奪い取り、破壊するのだが――。
「此度は戦争、時間が惜しいわ。今日はさっさと終わらせてしまおうかしら」
 チェルシーがさらに吸血鬼の力を発揮させると、ラフェンドラの出血が勢いを増した。その血は地面に溢れることなく、すべてチェルシーに吸収されていく。
 すべてを失った屍王は、頭蓋骨こと塵のようになって消えていく。それをしっかりと確認し、チェルシーは大きく息を吐いた。
 彼女との戦いは、これからも繰り返すことになるだろう。それでも――『死の絶対性』はまた一つ、刻んでやることができた。
 その事実を胸に、チェルシーは商店街を去るのだった。


 ラフェンドラが倒れると同時に、商店街を覆っていたゾンビたちも消滅した。
 避難していた人も、隠れていた人も無事だ。EDENの活躍により、川端通商店街は平和を取り戻したのだった。

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