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【悲報】お茶飲み友達にメイド姿を見られました

#√EDEN #ノベル #秋祭り2026

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鳴宮・響希
ヴェルタ・ヴルヴァール

「ふむ、"ぶんかさい"、とやらに誘われたしな……」
 折角だからと足を運んだヴェルタ・ヴルヴァールは、|鳴宮《なりみや》・|響希《ひびき》の通う√EDENのとある大学へと訪れている。
 人混みに紛れ込むにあたり、一応の配慮として狼の耳と尻尾は隠す魔術を施してある――つまり今はどう見ても、一般の来場者だ!響希にそのままで大丈夫と言われてはいたが、一応だ。
 まあ、背中に背負った大きな杖と、全身黒の装い――流れるような白髮は隠しようがないので、すれ違う人々からはいささか(コスプレ……?)(気合は入ってるねあの人)と浮いた視線を向けられているのは、黙殺することとした。

 本音を言えば、初めての場所であるからこそ図書室を覗いてみたかったのだが、文化祭中であるからこそ、閉館の札が下げられていた。まあ、納得。"また来れば良い"と切り替えた気分は散歩であり、ヴェルタはキャンパスをふらふらと散策を開始した。
 ――この世界の通貨?は持ち合わせがないし。
 買い食いは、出来ない。悔しい。しかしその程度でヴェルタは歩みを止めることはなく、手持ち無沙汰ということもない。文字が不思議に綴られたものだって、翻訳魔法を駆使して看板や展示の解説を読み進めるだけでも、旺盛な知識欲を満たすには十分だった。

 ――流石異世界の学びの場……。
 ――興味深いものが多くて楽しいな……。

 ――ん????

 ふと、鼻腔をくすぐる嗅ぎ慣れた匂いに立ち止まる。
 匂いの元を辿って視線を向けると、そこには間違いなく見知った青年の姿がある。
 しかし、その場でヴェルタは瞬きを数回繰り返し、しばし思案する。
 ――女装して、いる?
 あれは間違いなく響希だ。しかしその装いは、どう見てもフリルとリボンがたっぷりふわふわマシマシであしらわれたメイド服だった。
 何事かと近寄り、ヴェルタは何気ない調子で声をかける。
「やあ、響希」
「ひぇっ!?ヴ、ヴェルタさん!?」
 有志で出店した喫茶店のお手伝い要員として、なかなか客が集まらない現状に煮えきらない環境下で客寄せの任を任された響希は、大学を宣伝活動しつつまわってるところであった――この時、メイド服をきゅっと抑えて俯いていたのだ。
 流石に!
 思うところがありすぎます!
 写真取らないで通行人の方々!写真取るなら喫茶店へどうぞお嬢様&旦那様!
 そこにお茶飲み友達に声を掛けられては、顔を伏せて歩いていた響希が弾かれたように顔を上げた。その顔は真っ赤だ。
 早く終わらせようと早足で更に俯いてたところを、知り合いの登場です。
 それはもう、許容限界でした。無理ですよ、名前バレしてますからね!
 ヴェルタ、響希を頭からつま先までじっくりと検分するように見つめると、破顔して頷いた。それはもう、満足そうに、うんうん頷いて。

「似合ってるじゃないか!」

 お世辞や揶揄いは一切ない、素晴らしい笑顔から放たれた感想だった。
 ふわりと響希の傍らで、一般人には見えない犬神――白く大きな犬神のシロまで一緒になって囁き始める始末。
『クカカ!だから言っただろうヴェルタはよく見ている!よく似合ってると俺も太鼓判を押して言ってるじゃないか!」
 腹を抱えて笑っている。こちらもまた、凄く満足そうに。

「ち、違うんですヴェルタさん!これは喫茶店の客寄せで無理矢理着せられて……って、シロさんも笑わないでください!」
「ふむふむ。EDENだとこういう事もするんだな……これが異文化交流というやつか!流石学び舎だな、此処に来て新たに良き知見を得た!」
「違います!絶対に違いますからね!?」

 周囲の学生たちが(あのメイドさん、誰かと喋ってる?)とか(客寄せコス仲間とか、知り合いかな?)とザワついているのを視線と共に感じつつも、ヴェルタはどこ吹く風だ。
 いつも通りであった、とも言える。
 響希の焦りなど露知らず興味深そうに彼の服装や、背後にある楽しげな教室の展示を眺めて満足そうに頷く。

「急な誘いだったが、実に楽しめたよ。誘ってくれて感謝する、響希」
「えっ、あ、もう行っちゃうんですか!?」
「ああ、充分に満喫したからな。もう少し他のところも覗いてみたい」

「では、またな」

 満足したヴェルタは、軽やかな足取りで翻身し、人混みの向こうへと歩き出してしまう。まさかの、鼻歌混ざりの楽しそうな声を残して。その場に残された響希は、あっけにとられて反応が遅れてしまった。女装癖があるともしかしなくても勘違いされました?されましたよね??
 はっと気が付いて、勘違いされたまま立ち去っていくヴェルタの背中に向かって、必死に手を伸ばした。

「ヴェルタさん!?あの、これはその……!待って違うんです、誤解なんですー!?」

 響希の切実な叫びが秋空に響き渡るのを背に受けながら、ヴェルタは今日一番の笑顔で帰路につくのであった。ああ、とても|面白いもの《・・・・・》を見たなあ。

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