シナリオ

スパルタン教育委員会の野望

#√マスクド・ヒーロー #スパルタン教育委員会 #民間軍事会社『BBB』 #ミュケナイ七将軍 #デビオニア派 #空中クレタ固定装備

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 チャ~ラ、ラ~ラ、チャ~ラ~ラ~♪
「しょうわ仮面のおねえさま、顏を隠して正義を助ける、いい|女《ひと》よ♪」
 |昭月・和子《あきづき・かずこ》(しょうわ仮面・h00863)が歌う、自分のテーマソングは、今までのぶんを全部つなげると、原曲に近づくらしい。
「コホン。歌以外になにか聞こえたかもしれませんが、気のせいです。予知でもありません」
 マントにぎゅっとくるまると、本題にはいった。
「『赤い傘の女』を追っていただくことで、悪の組織の『戦闘員工場』を発見することができました。参加のヒーロー及び、√能力者のみなさんに感謝いたします。そこで判明したのは、完成した改造人間『おしおき先生』は『私立アテナイ学園』での実証実験を経て、『スパルタン教育委員会』なる悪の組織の構成員となっていた事です」
 工場を監督していた『コウモリプラグマ』は、秘密結社『プラグマ』の直属怪人だ。
 新組織の立ち上げの面倒をみていたらしい。
「悪の組織の多くは、『プラグマ』を筆頭に従属、協力関係にあります。これからも他の組織が関わってくるかもしれません。ゾディアック・サインが降りてくるごとに潰していきましょう。今回は『戦闘員工場』のひとつが発見されましたので、そこへの突入をお願いします」
 しょうわ仮面はマントの締め付けを緩める。
 隙間から、データメディアとその印刷物をササっと手渡す。
「現場は、『アンドロメダ・パソコンリース社』という会社の製造ラインです。内部では捉えた一般人に洗脳光線が当てられているところでしょう。突入経路は確定しており、設備破壊と一般人救出、記録データの回収をすぐに行うことができます。おそらく、敵怪人や戦闘員、完成した改造人間などが迎撃に現れますから、それらも撃破してください」
 依頼内容を伝えた赤いマスクの星詠みは、またマントを固く閉じた。
「『スパルタン教育委員会』の実態はまだ詠めていません。しかし、秘密結社『プラグマ』の下部組織には違いなく、いずれは邪悪なインビジブルの利用、果ては『全ての√の完全征服』という野望に繋がっていくでしょう。簒奪者と戦うみなさん、そして心を同じくするヒーローのみなさん。どうか力をお貸しください」

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第1章 冒険 『戦闘員工場を止めろ!』


ベニイ・飛梅

 工場そのものは、外観も内部も偽装した企業のままだ。
 だが、製造ラインに乗せられているほうが人間で、赤い催眠光線を照射する機械がその横にずらりと並んでいる。
「東風になります!」
 掛け声とともに、壁の一部が破壊され、武装したバイクが突っ込んできた。
 ヴィークル・ライダー、ベニイ・|飛梅《とびうめ》(空力義体メカニック・h03450)だ。
「間に合いましたよね……。今度こそ!」
 並列するベルトコンベアに乗せられている人間たちは服装に異常はなく、眼も普通のものだった。星詠みの言っていた『赤い傘の女』事件に関わったベニイは、一部の人間が改造されたあとの突入となってしまった経験をもつ。
 着衣を特殊化され、探査義眼を埋め込まれた元・一般人と戦わざるを得なかったのだ。
「無理です。駄目です。改造なんかさせません!」
 救助に熱意を燃やす。
 運転する巡航単車『イロタマガキ』に続いて、壁の穴からナデウシ型輸送車両が入ってきた。見た目は目立たない軽キャンパーだが、兵員輸送車としての機能が隠されている。
 スマホ型アシストAIを通じて、自動操縦していた。
 二台は工場内を走りまわり、一般人たちを解放していく。
 拘束されている者には、ベニイが戦線工兵としての腕前を発揮し、メカニック技能やハッキング技能で自由にさせる。
 消耗の激しい者から順に、輸送車へと収容した。団体行動の指揮経験が役に立つ。
 さらに『|天神《テンジン》ロマンチカ』により、技能も3倍相当になっていた。人々は短い言葉でこの、段取りのいい救出に感謝する。
 ベニイは、支援AI『イロタマガキ』に命じた。
「タマ、皆さんをいったん外へ!」
 輸送車だけが一般人を先導して、あけた穴から引き返していく。
 事前の予知で詳しい見取り図はもらっているから、安全に脱出できるはずだ。

嘯祇・笙呼

「同じタイミングで工場へ突入した人もいるらしいから『警備が厳重になるorホストコンピューターを破壊してデータを奪われないようにする』可能性も……急ぐか」
 |嘯祇・笙呼《しょうぎ・しょうこ》(人間(√マスクド・ヒーロー)のマスクド・ヒーロー・h01511)は、敵組織のデータを探して、工場内を移動する。
「フルダイブ型VRゲームで培った技術テクをフル活用ってね」
 監視カメラの死角を選び、罠は見切り、目立たず闇に紛れ忍び足……。
「空中移動も使っちゃうもんね。最短距離で……あ!」
 天井のトラス構造に掴まろうとして、手が滑った。
 すとーんと落ちたのは、段ボール箱の山だったので、それほど痛くはない。
 怪我がないか、確認したところで。
「Σくっそ服が破けた」
 というか、見上げたら梁の一部に、ウェアのほとんどが引っかかっている。
「自分の勘だと、ホストコンピューターまであとちょっとなんだけどな。ま、いっか。どうせ、見つからないように行動するミッションなんだから」
 ちょっと恥ずかしかったが、笙呼にはそうした耐性もある。
 下腹部だけ手で隠して、目的の部屋に入った。
 暗がりから出るのも勇気。
「もう一つ嫌な可能性はデータが書類とかのアナログだった場合だったけど。古い型だが、デジタルだな」
 モニターディスプレイはブラウン管で、緑の半角文字がカタカナで表示された。
「ようし、敵との交戦は全然オッケーなんで制限時間タイムリミットぎりぎりまで情報収集でデータの吸い出しを行なおう」
 見張りや見回りへの注意はしつつ、笙呼はどんな格好をしていたか忘れるほど、機器の操作に集中する。

零識・無式

「普通の会社のフリして中身は悪の組織が運営する下部組織……あるあるだなあ」
 |零識・無式《ぜろしき・むしき》(化異人零号・h00747)には、戦闘員にされそうな人々を救出する理由がある。
「俺としては敵組織の情報も探りたいところだがそういう能力は無いしな」
 などと謙遜しているが、心は燃えているのだ。
 自分みたいな怪人にされそうな人を見捨てることは出来ないから。
 すでに突入、潜入した能力者たちがいるようだ。少し気をつけて隠密行動をとっていれば、実力を行使しなくとも任務を果たせそうだった。
 改造装置に据えられてもいない、囚われているだけの人たちの牢屋を発見する。
「おい。鉄格子を破壊する。逃がしてやるが、みんな歩けるか? 怪我した者や、意識のない者は?」
 小声で伝えると、中年の男性ひとりが礼を言い、全員が自力で動けると請け負った。
「ありがとうございます。どういうわけか、この牢にいるのは運動をしていた人ばかりなのです。私は中学校で体育を教えておりまして」
「先生か。よし、脱出地点まで俺が誘導する。続きはこの案内図のとおり、あなたが指揮して抜け出すんだ。俺は逆方向に向かって、敵の目を引き付ける」
 無式は星詠みからの資料を渡し、一般人を見送った。
 さすがは団体行動に長けた人たちだ。きびきびした態度に好感が持てた。あとは囮だ、と敵にとっての優先事項となるべく、出会った怪人や戦闘員と戦うつもりで、堂々と通路を歩きだす。
「先生……。先生だって?」
 遭遇がないうちに、考えが浮かんだ。
「この戦闘員工場は、私立アテナイ学園に端を発しているという報告だったな。一般人を改造しようとした体育館で、俺も戦った覚えがある。あの事件でも、特別講師という肩書を出汁に一般人を集めていた。もしかして……」
 前方に、ビジネススーツ姿の人影がある。
 身構える、無式。相手は、ふつうの青年だが、その人相は報告にあった。
「またしてもヒーローに改造現場を押えられてしまいましたか。だんだん、手際がよくなっていますね。今回は『おしおき先生』を一体も生産できていない」
 青年の服が透明に透けていくとともに、外星体『ズウォーム』としての本性を現わす。
「体育館の時と同一個体なのか? ヤツの言ってることが本当なら、一般人は全員救出できたってわけだ」
 無式は構えを取りつつも、胸の内で安堵する。

第2章 ボス戦 『外星体『ズウォーム』』


嘯祇・笙呼
ベニイ・飛梅

 外星体『ズウォーム』の前へ、|嘯祇・笙呼《しょうぎ・しょうこ》(人間(√マスクド・ヒーロー)のマスクド・ヒーロー・h01511)が姿を見せたとき、この昆虫っぽい人型はかすかに動揺した。
「服を着ないとは……。まさか、そのような方法で、私の催眠光線を無効化するとはね。本当に手際がよくなっている」
「なんの話かわからんけど、戦闘だ。短期決戦で仕留めるぜ!」
 防御力とは別である。
 鉄壁を誇る構えで、守備を固める。笙呼はカウンターで迎撃するつもりだ。
「コォォォ……!」
 チャージの呼吸を開始した。
「笙呼さん! 大丈夫ですか?!」
 巡航単車『イロタマガキ』で駆け付けたベニイ・|飛梅《とびうめ》(空力義体メカニック・h03450)も驚きはしたが、ダメージを負った結果ではないと知り、戦闘に集中する。
「貴方が! 仕置かれる番です!」
「こうも簡単に素材を逃がされては、私も不愉快になってきますよ……『ズウォーム・レンズアイ』!」
 蟲の如き眼球から、無重力光線が発射される。
 ベニイは、ヴィークルを飛び上がらせて、工場の柱のあいだを縫うように駆け回り、光線を回避する。
 普段よりも荒っぽい操縦だ。
 輸送車で一般人を退避させているあいだ、支援AIの補助が得られない。
 いっぽう、フロアでどっしりとした構えの笙呼に、異変が起こっていた。
「時間はかけられない敵なのに。作戦が違ったか? チャージがうまくいかない」
 威力を溜めるはずの呼吸も不発で、仕方なく|刻印弓《フェイルノート》を解放して矢による通常攻撃に切り替えた。
「弾道計算に、スナイパー級の腕前だってあるんだぜ……!」
「フッフッフッ。おふたりとも、スピード戦闘は得意なようだが、私の高いウィズダムには及ばないようですね」
 『ズウォーム』はレンズを最大にした。
 空中のベニイは、ますますコントロールが効かなくなり、笙呼の矢も狙いがつかなかった。
 勝ち誇った外星体に、ふたりは無理やりにでも攻撃を当てようとする。
「無重力でも、無理です! 無駄です! いま飛梅は怒っています!」
「俺だって……あ、救出に来てたのは、ベニイだったか。よし、空中移動を手伝うぞ。ふたりで戦おう!」
 笙呼のお尻が、『イロタマガキ』のタンデムシートにぺたんと座った。
 それでも操縦は難しいから、ベニイが飛び降りてキックを放つのは不可能だ。進行方向を定めると、ヴィークルごと『ズウォーム』にぶつかる。
「いっけぇ!」
「ゼロG戦です!」
「フッフッフッ……グェッ!」
 透明背広のどてっぱらに、ヴィークルとふたりぶんの質量が衝突した。

兎玉・天
久遠・群炎
灯理・ナンシィ

 ダンボール箱がいくつも浮き上がっている。
 蓋が開いてこぼれた中身は普通の電子部品で、おそらく会社のダミー用だろう。工場内での戦闘で乱射された『ズウォーム・レンズアイ』の流れ弾のせいだった。
「これはまぁ、不思議かな? ポルターガイスト現象にも似てるしね」
 灯理・ナンシィ(バブーシュカレディ・h01791)の反応は、驚きというより値踏みだ。なにせ、不思議骨董屋店主である。はしゃいでいるのは、|兎玉・天《うさてんちゃん》(うさてん堂・h04493)だけで。
「すごいネ☆ うさてんちゃんも浮かんでみたいヨ☆ えい☆ えい☆」
 両手を上に伸ばしている。
 しかし、ジャンプのぶんだけ床から足が離れただけだ。
「あれれダメだったヨ☆ ウチュウくーかんを思い出すのにネ☆ ニンゲンちゃんはへーきかナ☆」
「はい。確かに不思議な光景ですが、すべての物体が浮いてはおらず……」
 |久遠・群炎《くおん・ぐえん》(群青の炎術師・h01452)は、冷静に分析する。
「工場の時空全体を無重力にされたわけではないでしょう」
 視線は、箱のひとつに向けられる。
 その陰から、甲虫型の外星体が立ちあがってきたところだった。
「ちょっとした計算違いです。さいわい、ヒーローたちから雲隠れするには都合が良さそうですね」
 『ズウォーム』は、縦方向にまで散らかった場を利用し、逃げるそぶりをみせる。
 ナンシィはピンときたようだ。
 舌なめずりをすると、両手のあいだに奇妙な物体がのった。大きさはダッフルバッグくらいで、蟹のハサミのような形をした銀色の金属である。
「ねぇ、外星体さんが√EDENで落としたものですよね?」
「ええッ? なぜ、持っているのですか!」
 原理を説明しよう。
 骨董店主ナンシィは19坪の事務所に召喚される妖怪執事の助けを借りて、証拠品の転送を完了するのだ。
「戦闘員工場の赤い光線の元はコレっ。情報を盗むことで相手の行動を邪魔したり、一般人なら洗脳したりできるの。『ズォーム』自身も、素手で同じことできるから、みんなは触られないように注意してね」
「承知しました。敵の逃走は偽装で、浮遊物を遮蔽にし、接触を企んでいたのでしょう」
「うさてんちゃんは許さないヨ☆ そんな悪いコト、ニンゲンちゃんたちにしてたなんてネ☆」
 能力者たちは、慎重に立ち位置を変えて、侵略外星体簒奪者を撃とうとする。
 ナンシィも戦闘ドローンを宙に並べながら、事務所の便利さを改めて実感していた。
「じゃあ……。200万円、ほしい」
 何も送られて来ず。
「ですよね〜」
 と、てへぺろ。
「決戦気象兵器、『レイン』発動」
 群炎は、端末を操作した。
 粒子状のレーザー発生装置が、工場内の空間を取り巻いている。300発もの光線が放たれ、浮遊するダンボール箱をぶち抜いて、『ズォーム』に命中する。
「うわァッ! か、数が多い、近づけない、ひいっ!」
 撤退も、隠密もできず、全身に焦げ目をつけられている。透明なコスチュームが本体を守っているようだが、苦痛はあるようだ。
 群炎はとりたてて感情をみせないまま精密な操作を続け、外星体を追い詰めた。
 敵は暗躍をあきらめたのか、能力者にむけて、破壊光線砲を召喚してくる。
「ズウォームキャノン一斉発射……」
「怪異殺しだヨ☆」
 |兎玉・天《うさたま・てん》の足払いが決まり、砲口は別々へと散らかる。
 触られないうちに棺桶についた鎖で敵の腕を縛ると、棺桶本体で蟲型の頭部を強撃するのだった。

ベニイ・飛梅

 無重力状態を解除できず、工場内で暴走していた巡航単車『イロタマガキ』。
「AIの支援抜きでは、私の実力はまだこの程度だと、よく判りました」
 ライダーのベニイ・|飛梅《とびうめ》(超天神マシーン・h03450)は、他√から集結した能力者たちの知見のおかげで、逆襲の手掛かりを得た。
「動きを読まれていたのも、イロタマガキの機動パターンを抜き出されていたのですね……」
 その証拠に、ふたりぶんの運転であれば、特攻に成功している。
 二度目は通用しないことも。
 ベニイは空中ダッシュで、ヴィークルを飛び出す。
 外星体『ズウォーム』とて、不自由な状況にある。逃がさないように、ドローンや粒子状兵器、果てはニセのパソコンケースを蹴って、生身のまま宙を渡った。
 |超天神応報《テンジンブレーク・フーリーディスチャージ》の電撃エネルギーを貯める。
「無理……では、ありません!」
「あわわ。せ、先生! 用心棒の先生、早く来てくださいよ!」
 足だけはバタバタと動かす、外星体。
 体当たりの姿勢をとるベニイを、電撃が覆った。
「超天神! 応! 報!」
 威力は18倍。
 無重力で漂う電子機器が次々とショートし、火花散るなかをベニイの身体が通り抜け、肩から『ズウォーム』に衝突した。
 今度こそ、トドメだ。
 虫っぽい人型は、壁まで吹っ飛ばされて爆発した。
 床に膝をつくベニイのそばに、正常に戻った『イロタマガキ』が降りてくる。さすがに無理をしたようで、ここまでに受けたダメージがぶり返したようだ。立つために、ヴィークルのシートに掴まる必要があった。
 顔をあげたとたん、工場内に銃声の響きを聞く。
「『ズウォーム』が助けを求めた……なんの先生、ですか?」
「いやだなぁ。用心棒じゃなくて、民間軍事会社だよ」
 鳥の着ぐるみが、小銃を構えていた。

第3章 ボス戦 『ベンジャミン・バーニングバード』


嘯祇・笙呼

 自動小銃を構えたゆるキャラは分隊ふたつ程度がいて、鳥の 『ベンジャミン・バーニングバード』が指揮官らしい。
 |嘯祇・笙呼《しょうぎ・しょうこ》(人間(√マスクド・ヒーロー)のマスクド・ヒーロー・h01511)は相乗りさせてもらっていたヴィークルから裸のお尻をあげると、敵分隊の前に立った。
「どうせ一点特化型には敵わないんだ。全力でゴリ押しして|殺《や》る」
「……うわぁ」
 鳥は引き気味に唸った。
 丸くて大きな目をぎょろぎょろさせ、笙呼の身体をじっくり見てくる。蟲の外星体といい、服装や恰好にこだわるやつらだ。
「裸になる、のは有効なのか?」
 そう言えば、敵がとってくる戦術も予測と違った。
 行動を妨害されるような卑怯な罠が張ってあるのかと、手数を増やして勝負するつもりだったが、兵隊の数で正面から押してくる。
 迅速な行動が求められるだろうに、鳥の指揮官がショックから立ち直れないせいなのか、兵隊の動作は妙にもたついていた。
 ならば、『|肢体爆弾《リンボム》』でまとめて爆破したほうが早い。
「コォォォ……!」
 笙呼は、体内に空気中の火気物質を吸収し始める。
 『ズォーム』戦での不調はない。
「確実に勝てる! なぜなら裸だからだ!!」
 胸元や下腹部を覆っていた手もおろし、のしのしと敵兵へと近づいていった。
 散発的な銃撃を受けるが、この裸体には通用しない。飛んできた銃弾が大きな膨らみに当たり、ポヨンとはじかれる。
 命中箇所がこちらの突起だったときだけ、ちょっと感じる。
「あ……ゾクゾクしちゃうかも。なんて言っているあいだに、ハマったァ!」
 近接距離まで歩きとおす。チャージも満タン。
 いっきに放出し、大爆発を起こした。
 ゆるキャラ分隊は、真っ赤な炎のなかに消え、工場の壁には大穴があく。

ベニイ・飛梅
蔵太・びあ

 外の景色までが見えている。
 割れて燃えているのは、アンドロメダ・パソコンリース社の看板。まぁ、普通の会社のフリするためのものだから壊しても問題ない。施設の棟数を表すのか、『#36』の表記。
 そして、黒っぽいOL的なレディススーツの人物が、敷地を隔てるフェンスの内側に立っていた。
「まさか、一般人? 悪と知らずにダミー会社に勤めていた方、でしょうか……?」
 ベニイ・|飛梅《とびうめ》(超天神マシーン・h03450)は傷ついた身体をおして、ヴィークルのシートに跨った。
「支援AIは……避難誘導からまだ戻ってない。あの人の救助を、どうすれば」
 焦って端末の暗い液晶を連打する。
 もう一度、穴の外へと視線をむけると、なんと一般人だと思った女性が、ふらふらした足取りで、穴のほうへと近づいてくるではないか。
「なんなにによもぉ!」
 ろれつが回っていない。べろんべろんに酔っ払っている。
 爆発であいた穴の縁に、オフィスパンプスを引っかけながらも、工場内へと入ってきてしまった。
「ゆるキャラならもっと人を癒すべきでしょうがぁあ!」
 持っていた傘で、『ベンジャミン・バーニングバード』の頭をぶったたく。
「いッたぁ~い!」
 鳥は麦わら帽子ごと頭を押え、ひっくりかえって足をバタバタさせた。まぁ、着ぐるみキャラクターらしい動作ではあったが、傘の猛攻は続く。
 簒奪者にダメージが入っているということは。
「あの方も、√能力者なんですか?!」
 ベニイは驚くが、他に考えようがない。
 そう、|蔵太《くらふと》・びあ(酔い時雨・h06300)は、悪と戦いにきたのだ。
 普段の仕事で溜まったストレスのはけ口として依頼に参加している。
 義憤のガワを被せた日頃の憂さ晴らし、|シンプルに八つ当たり《デンジャラスアンブレラ》が簒奪者を容赦無く滅多打ちし、敵を倒すという大義名分のもと、酒の力で心のリミッターを解除している。
「あ゛ぁあぁぁ!!」
 思い切り振りかぶった強打で、ついに傘の骨が折れた。
 ついでに、ズボンのおしりの縫い目が、バリッと裂ける。
「イタッ、イタタッ! ゆるキャラ分隊、見てないでボクを助けて!」
 ベンジャミンは情けない命令をだす。
 残った兵士は、びあを囲み、指揮官からひきはがそうとした。
「もぉお゛おぉぉぁあおあ!!!」
 びあは暴れる。
 ズボンの裂け目は大きくなり、生のお尻がぶりんと全部丸見えだ。下着はつけない主義か。
 もともと尻肉は厚く、ぱっつんぱっつんだった。
 屈んでいるが、よく見ればずいぶん大柄な女性だ。ゆるキャラは低い頭身でも背丈はあるはず。それが簡単にふきとばされている。
 ただ、引きはがすために、びあのジャケットやシャツ、ズボンの裂け目を掴んでいたものだから、着ぐるみの手には布切れが残った。
「あ、ゆるキャラ分隊よ、人間を裸にしちゃ、ダメ……って遅かったか」
 傘から逃れ、離れた位置で立ち上がるベンジャミン。
 びあは、服が破けてもお構いなしに、千鳥足で追いすがろうとする。シャツからのぞく乳は控えめ。
 軍事会社のマスコットはうなった。
「う~ん。『ズウォーム』の赤色装置は完成したけど、能力者に脱がれると効果が薄くなるのは考えものだなぁ」
「その装置を使って、『スパルタン教育委員会』が企む野望って、何なのですか?!」
 ベニイは思わず叫んだ。
 悪の信条か、ベンジャミンはぺらぺらしゃべる。
「『スパルタン教育委員会』にはプラグマ系っぽさがあってね。全|√《ルート》での基盤確立を目指してる。あちこちに出張していく|民間軍事会社『BBB』《ボクたち》とは相性もいいんだ。もっとも……」
 精一杯の悪そうな顔をした。
「|委員会《彼ら》は、エージェントを送り込むだけでなく、現地勢力と融合した組織を置いてるね。『ミュケナイ七将軍』に、『デビオニア派』と『空中クレタ固定装備』もすぐに動き出すんじゃないかな」
「ぬぁんですってぇ~! そぉんなのぉ……」
 なぜか半泣きで、びあは傘の先端のほうを握った。
「ぜんぶ、覚えられるかよぉ!」
「BBB式戦闘術ッ!」
 銃身がシャツの破れ目に向けられるが、傘の持ち手に引っかけられ、脇へやられた。追い打ちで、鳥の翼を先端が貫く。それでも翼にはサバイバルナイフが握られ、叩きつけられる傘と打ち合って、傘地は切り裂かれる。
「うわぁあん! うわぁあああん!!」
 びあの勢いも凄まじいが、刃物の扱いはベンジャミンのほうが上のようだ。
 ヴィークルに接続された端末にアイコンが灯る。
「……タマ!」
 ベニイの支援AIが復帰した。
「今日はひどい日です。未熟さを思い知ったし、義体はもうぼろぼろ。でもイロタマガキがいてくれる。もう無理じゃない、まだ戦える!」
 単車の後輪が、床の埃をまきあげた。
 エネルギーバリアを車体前面に展開し、工場内を全力ジグザグ走行する。
 ゆるキャラ分隊が、通せんぼしようと横から出てくるところを、次々と跳ね飛ばした。もはや、この集団の反応速度では、ベニイとイロタマガキの敵ではない。
 小銃を撃ってくる個体には、テンジンリボルバーの一斉射撃を叩き込んで沈黙させる。
「じっとしていてください。でないと、無ーーー理ーーー!」
 ベニイの掌から『|超天神竜巻《テンジンブレーク・エレクトロマグネパルスストーム》』が放たれた。
 視界内の全対象を、麻痺させ続ける。
 会社員の女性と『ベンジャミン・バーニングバード』が止まっているあいだに、自動操縦で簒奪者だけを跳ね飛ばした。
「野口先生……ご、ごめんな……さい」
 骨が、バキバキに折れた鳥は、痙攣してから息絶える。
 麻痺は使用者が目を閉じると解除されることから、ベニイはもろとも轢かないために味方である|び《・》|あ《・》の動きも止めていたと、目を開いてから謝罪しようとした。
「あ、あれ?」
「う~……ちょっと立ちションしてこ……」
 びあはすでに、帰宅の途についていた。
 ズボンで残っているのは、膝から下の裾部分のみ。あいかわらずの千鳥足。
「……タマ」
 ログを見れば、改造されようとしていた人々が全員無事だと判る。戦闘員工場のデータも能力者たちによって入手できたのだった。

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