シナリオ

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ごめんね、セリヌンティウス

#√マスクド・ヒーロー #シデレウスカード #プレイング受付中 #【受付〆】6/10(火)朝8:30まで

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 #√マスクド・ヒーロー
 #シデレウスカード
 #プレイング受付中
 #【受付〆】6/10(火)朝8:30まで

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●メロスは理不尽に憤激する
 |瑪路《めろ》|羊太《ようた》は激怒した。
 羊太は急いでいた。己を信じ、待ち続ける相手の元へ走らねばならなかった。無情にも太陽は昇る速度を緩めず、約束の刻限は目前に迫っていた。それでも、あと僅かで辿り着けるはずであった。
「そんな……」
 突如、進む道が遮られた。羊太の前に横たわった巨大な障壁は、言うなれば荒れ狂う大河であった。迂回などしていては、到底、時間には間に合うまい。
 羊太は茫然と天に祈り、やがて怒髪を突くと天を呪った。
 果たして、通じたのはどちらであっただろう。
 ──ひらり。
 何処からか。彼の手へ舞い落ちたのは、一対の奇妙なカードであった。

●星詠みは悲哀に沈む
「中学生の男の子が初デートに遅刻してシデレウス化するんだ」
 哀れみと呆れの混じった遠い瞳で、星読みの瑠璃・イクスピリエンスは告げた。
 少年の名前は|瑪路《めろ》|羊太《ようた》。夢見盛りの中学二年生で、ゲームと漫画が好きなインドア系男子。同じ図書委員会に所属する『|石川《いしかわ》|星理奈《せりな》』という同級生に恋心を抱いている。
 長い間、星理奈を誘う口実を探していた羊太に、絶好の機会が訪れた。お互いに好きなとある漫画作品が、めでたく映画化されることとなったのだ。
 た、たまたま兄貴が前売り券をくれてさ。石川さん良かったら一緒に──などとぎこちなく誘えば、はにかみながら星理奈は了承した。
「青春だよね! アオハルだよね!」
 だがデート当日。すなわち本日。悲劇は起こった。
「羊太くんは緊張で寝付けなくて寝坊して。大急ぎで家を出たけど自転車が途中でパンクして。乗り捨てて必死に走ったけど、最後に渡るはずだった大通りが、市民マラソンのコースになってて……封鎖されてたんだ」
 応援の群衆を掻き分けて進めど、当然係員に止められる。示された迂回路は遠かった。待ち合わせ時間どころか、映画の開演にも間に合わない。
 だめだ。終わった。フラれる。羊太は絶望した。

 嗚呼、こんな大会さえやってなければ──!!

 というところに登場したのがシデレウスカード。『牡羊座』と『英雄メロス』という、おあつらえ向きのそれに、彼は取り込まれてしまった。
「シデレウス怪人……アリエスメロス・シデレウスになった羊太くんは、怒りで我を忘れたまま、マラソンコースに羊の群れを放ってランナーさんたちを追い払っちゃう」
 劇的な逆恨みである。
「急いで向かっても、ちょうど羊の群れが現れた辺りかな……ごめんね、ボクの星詠みが遅くて」
 まずは、周囲を埋め尽くす羊の波を乗り越え、羊太に接近するのが目標となる。
「羊は基本的にメェメェ言いながらうろついてるだけだから、一般の人は充分避難できるはずさ」
 とはいえそこは怪羊。怒らせるとウールから電撃(静電気)を放ったり、跳ねて眠気を誘ったりもするらしい。
 ある程度ダメージを与えれば消滅するようだが、アリエスメロス・シデレウスがいる限りいくらでももこもこ湧き出る。なるべく早く本体を叩くべきだろう。
「上手く近づけたら、アリエスメロスを倒して、羊太くんを正気に戻してあげて欲しいんだ」
 それでも、まあ、待ち合わせ時刻なんてのは。
「とっくに……過ぎてるけどね!」
 ボクの星詠みが遅くてごめん、と。瑠璃は繰り返し、しょんぼり肩を落とした。

●セリヌンティウスは健気に祈る
「瑪路くん、まだかな……」
 ざわめく映画館の中でぽつんと一人。星理奈はパステルカラーの腕時計と、館内の様子を交互に見やる。
 前売り券があると言っていたから、チケットの心配は不要だろうが、他に何か準備はいるだろうか。
「……一人で映画なんて来たことないし」
 彼女は家庭の方針で、まだスマホを持っていなかった。だから念を入れてとても早く来たし、羊太を信じて待つしかなかったのだ。
 もし、もしも彼が来なかったら……。
 真面目な少女はぷるぷると首を振り、暗い想像を振り払う。大丈夫、大丈夫。
「瑪路くんは必ず、間に合うもの!」

 間に合わないんだな、これが。

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第1章 冒険 『道を塞がれた!!』