夏だ!熱海だ!泊まり込みイベントだ!
●√汎神解剖機関:複雑構造宿泊施設の夜
「え、コレ、あそこにつながらないの!?」
エレベーターから降りてきた一人の女性が、周囲を見渡して驚きの声を上げる。
彼女は友人に誘われて、この宿で行われる二泊三日の貸し切りイベントに参加ことになった人間……|粟島・久那《あわしま・ひさな》。
「あれ?バイキング会場2階じゃなかったっけ、え?お風呂がある階まで降りてきちゃった?でも2階って書いてある……!?」
手元のハンドブックを確認しつつ、移動する。
「あ……あー……なるほど??館によって階数表示が違うのね……」
彼女は館内のゲームコーナー通過、本館の階段を上がっていく。
その後ろを追う影に気づかないまま。
●
「集まってくれてありがとう!
星詠みの結果、今回は√汎神解剖機関の日本、熱海で狙われている人を守ってほしいの」
千早・夏(|Al Tarf《ライオンの一瞥》・h05339)は言いながら、ホワイトボードに描かれた日本地図で、熱海の位置へと赤いペンで矢印を書きこみ、ペンを置く。
「今回は、謎めいた外星体同盟の刺客『サイコブレイド』が、『Ankerに成りうる者』を暗殺しようとしてる事件の一つでね。そのサイコブレイドは『Ankerを探知する√能力』っていう厄介な能力を持ってて。
その能力で配下をAnker抹殺へと動いてる事件のひとつにあたるんだけど――」
コレ、とB6サイズの小冊子を封筒のセットをいくつか取り出し、集まったメンバーへと一人一つねと回していく。
封筒の中にはID番号と、3日間の日付が書いてある名札が入っていた。
「今回、普段お医者さんとして働いてる【|粟島・久那《あわしま・ひさな》】さんが狙われてるんだけど。
熱海で二泊三日の大きいホテル貸し切りイベントがあってね。彼女がやっとの思いで、もぎ取った有給を使って参加するんだけど。その最中を狙われるみたいでね?」
夏はひどくない?と首を傾げる。
「とりあえず、不思議な構造っていっても東館と本館と旧館の階数が、同じ高さなのに表記が違ったり、東館、本館、旧館が全部つながってるのがきまってるとか、そのくらいで。基本はその小冊子の中にあるマップ見れば何とかなる。筈」
パラパラとめくりながら告げる。
「ああ、重要なこと忘れてた。
彼女の参加してるイベントの趣旨が、ボードゲームとかTRPGっていうジャンルのゲームを泊まり込みで遊ぼうってイベントらしいんだけど。
一緒に遊んでれば、打ち解けるのも早いとおもうよ」
それから、と続ける。
「二日目のお昼ご飯終わりの頃、サイコブレイドに従う悪の怪人達が、Anker候補である粟島さんを殺そうと襲撃をしてくるの。
その怪人たちを撃退しながら、粟島さん安全な場所に逃がしてあげて。
まぁ、イベントの中で、アクションショーほどじゃないけど、実際にコスプレして殺陣をする感じの企画があったり、企画ごとに広間を一室使ってたりするから……うまくやれば、粟島さんもノリノリで人質役をやるかもしれないんだけど」
「さておき、怪人たちを撃退すれば、乗り気じゃないサイコブレイド本人がやってくるので、それを倒してくれればいいかな!
怪人たちからきちんと粟島さんを助け出せてれば、粟島さんが皆を応援してくれるんだけど。
その応援があれば、サイコブレイドは明らかに苦悶の表情を浮かべて、戦闘力が低下するみたいなんだよね」
ふしぎー。と言いながらぱたん、と持っていた小冊子を閉じ、告げる。
「ともあれ、倒した後、皆ができるだけ無事に帰ってくるまでが依頼です!
よろしくおねがいします、ね」
第1章 日常 『複雑構造宿泊施設の夜』
●
「よっと」
次元螺旋による歪み、回す角度、速度を自在に操り、ルーレットを操作した、|霧札・エマ《きりふだ・エマ》(活動名『フロウ・ザ・リッパー』・h07798)は、人生ゲームを囲む卓にいた。
(なんとなく、気が向いてボードゲームに参加しようとしたところに、|粟島・久那《対象者》さんがいたなんて)
「6!」
手加減も加えつつ、エマは自身が程よく有利になるようにルーレットを回していく。
「わ、すごい!!次は私ね!」
久那の回したルーレットはくるくると回り……5を示し、駒を5つ分進ませる。
「くっ、追いつけそうなのに追いつけない」
「あ、そこ、臨時収入のマスだね!」
「ほんとだ!ラッキー。ええと、これで……あ、金額は2位になったわ」
「おめでとう……じゃあ、次はー」
順次、浮き沈みさせながら、順番にゴールを目指していく。
「やったー!ゴール!!」
「そんな……ボクの会社が……借金1千万……」
ぶっちぎり最下位でのゴールに、エマは膝から崩れ落ちる。
よい目が出たとしても、勝てるとは限らない。
それが、人生ゲームである。
「そ、そんなに気を落とさなくても」
「……そう、だね。まだまだいろんなゲームで遊びたいし」
――よかったら、一緒に回ってみない?
エマと久那。どちらからともなく誘い合い、顔を見合わせる。
「いいね!」
「つぎはフリー卓の募集掲示板見にいってみようよ、タイミングよければどこかの卓が空いてるかもしれないし」
そうして二人が参加した卓では。
一番難しいとGMが想定していたトゥルーエンドへと、二人、息の合った演出やプレイングが導いていくのだった。
●
……俺は、どうすればいい?
一羽の鳥がふよふよと。会場内のホワイトボードの一つに止まっていた。
彼はカトル・ファルツア(ラセン使いを探す者・h01100)。
√能力者ではあるが、どう見ても鳥だ。
鳥なのである。
(ボードゲームは何とかなるかもしれないが……TRPGはAnkerには言語通じないので無理だ)
そう考えながら、愛らしく、つぶらな瞳で周囲を見渡していれば、飲み物を買って戻ってきた一人の女性の姿を見つける。
「|ピヨー《どうも、貴女が粟島・久那さんか?》」
カトルが声をかけてみると、彼女は鳥の声に気づき、すぐ近くのホワイトボードの上へと視線が止まる。
「わぁ、かわいい」
おいでおいでと手を伸ばす彼女の腕に、すちゃっと止まってみる。
「あなた、飼い主さんはどこ?」
「|ピヨ、ピヨー!《俺は、カトル・フォルツアという》」
「うんうん、ご主人さまとはぐれちゃったのねー」
久那は手慣れたように腕にカトルを止まらせた状態で嘴の下あたりをやさしくなでる。
「|ピヨー《いや、俺は》」
カトルが訂正するように声を出すも、久那は迷わず、イベントスタッフの常駐する案内カウンターへと向かう。
「すいません、この子、迷子みたいで」
「|ピヨーーー!《お……おーい!待て待て!》」
誰かが連れてきたペットだと思われたのか、カトルはそのまま困り顔のスタッフに引き渡される。
「ご主人さまと会えるといいね」
最後、名残惜しそうに声をかけ、去っていく久那を|もふもふの鳥《カトル》は見送り……スタッフの隙をついて逃げ出した。
(畜生、そろそろ仲間を作った方がいいな…)
小さく呟くようにしつつ、見つからないようにと長距離狩猟の体勢を取り、館内を飛び回り始めるのだった。
●少しだけイベント開始前へと巻き戻る
住んでいる場所から、熱海まで走って向かうつもりでいた|和紋・蜚廉《わもん・はいれん》(現世の遺骸・h07277)は、同行者である|不忍・ちるは《shinobazu chiruha》(ちるあうと・h01839)との旅行気分を味わうために、イベントのバスツアーを利用してきた。
世界を跨ぐよりも、車窓から見る熱海の空は柔らかかった。
二人が到着し、イベントの受付にてルームキーを受け取り、荷物を置きにそれぞれの部屋に入った時。窓の外へと広がる熱海の空と海が、蜚廉とちるはの視界に飛び込んだ。
「ふむ、こういう道程を経ることも悪くはない」
「そうですね……!」
小冊子のマップページを開きつつ、ほわほわ完全に浮かれモードのちるはと、蜚廉が合流し、お散歩気分で館内探索を開始する。
「この旅館のマップ踏破だけでわくわくしますね」
「うむ。……奥に……バー?」
「あ、ここのお部屋、夜10時になると落語やるらしいですよ」
イベントスケジュールと、部屋の位置も一緒にさらりと確認していく。
階段降りて館が変わって、進んで戻って。
吹き抜けを覗き込み、さらに見上げて。きれいで不思議に興味津々にあたりを見渡す。
蜚廉は、階層の表示と実際の構造に違和を覚えつながらも、視線を常に動かし、動線を把握していく。
そんな蜚廉へとちるはは、迷子にならないようくっついて。
二人が食堂近くを通りがかる時。
ちるはは一人の女性が小冊子を手に歩いているのを見つける。
「こんにちはー、どうかされました?」
「あ、こんにちは。ええと、ちょっと迷いかけてました」
探している場所を聞いてみれば、先ほど探索中に通りがかった部屋の名前で。
「ここを通路に沿っていった右側にありましたよ」
「ありがとうございます、助かりました」
彼女の名札には粟島・久那との記載がされていた。
●
晩御飯も終わり、当初予定していたボードゲーム会場へとちるはと蜚廉が向えば、空いている卓へと案内される。
そこには先ほど出会った女性が座っていた。
「先ほどは、大丈夫でした?」
「はい、無事間に合いました。ありがとうございます」
ちょうど人数が揃い、卓の担当者からゲームの簡単な説明を受ける。
「基本は神経衰弱に近いんですけど、そこからの組み合わせが重要です」
三者三様に、札に映る名の羅列を静かに記憶へと焼き付け、勝負に臨む。
「「「いざ勝負」です」」
(……ふむ、札をめくるだけで神経が擦り減るな。面白い)
(……これは見分けが難しいですね…)
イベントは始まったばかりである。
第2章 集団戦 『潜入工作用改造人間『スニーク・スタッフ』』
●イベント二日目。
「いや、楽しかった。楽しかったよ?うん、市民として楽しかった」
食堂になっていた大広間から出てきた久那は、売り切れ表示が並ぶ自販機の中から、最後に残っていた缶コーヒーのボタンを押す。
「……高野豆腐、そのまま入ってるとか思わないでしょ。
ディストピア飯の中身、考えた人やばい。
でもあの野菜のシートは面白かった。今度探してみよ」
もそもそする口の中をコーヒーで流していく。
「粟島・久那、だな?」
「えっ?」
久那が振り向くと、スーツにサングラスを装備した集団が彼女を取り囲んでいた。
「……ッ!?これがうわさに聞く、突発イベント!!?」
「ああ、パーティータイムといこうか」
「やった!」
小さくガッツポーズで対応する久那。
「では、貴方は人質役をしていただこうか」
スーツ集団の中から一人が前にでて、にやり、と鮫の様に笑う。
かくして、運命の扉は開かれる。
――――
●マスターより補足
食堂になっていた大広間の中か大広間の外での戦闘になります。
どちらにも机やパーテーションがありますので、粟島さんを安全な場所に逃がすのは
、影に隠す、広間の外へ逃がすなどでもOKですし、他にもいい感じのものがあれば採用させていただくことがあります。
それでは、皆様のプレイング、お待ちしております。
●
囚われた|粟島・久那《あわしま・ひさな》は、 スーツにサングラスの『潜入工作用改造人間『スニーク・スタッフ』』たちによって、大広間の中へと連れ込まれた。
そこへ入口の扉からふよふよと一羽の鳥……カトル・ファルツア(ラセン使いを探す者・h01100)。彼が久那を広間の外へと誘導するため、スニーク・スタッフたちの前へと立ちはだかる。
「|ぴよ《避難する時間は稼ぐ》!!」
「さっきの|鳥《こ》!まあ、スタッフさんの子だったのね!!」
両羽を広げ、首元から下げたスマホで、久那へと逃げるように指示を出す。
「なになに……?広間から出ろ……?」
一人のスニーク・スタッフによってつかまれながらも、久那はカトルの首元からぶら下がっているスマホの文字を読み上げていく。
「なるほど!プレーヤーへの目標をそうやって提示してくれてるのね!」
こくこくと頷き、久那の傍にいるスニーク・スタッフたちへと、カトルはスピリットガンから素早く回転魔弾を射出。その隙をつくように久那はカトルの方へと走り寄っていく、瞬間。
スニーク・スタッフたちから、久那ごと、カトルへと向けて銃弾が降り注ぐ。
「|ぴよ……ッ《数が多いな!ちくしょう!》」
エネルギーバリアを久那へと張りながら、カトルはスニーク・スタッフたちからの弾幕を破壊の炎で燃やし尽くし、それを超えてきた弾丸をスピリットガンで撃ち落とす。
「|ぴよ《よし、今だ》!」
敵の弾幕が収まった瞬間を狙い、手近なスニーク・スタッフへと光速移動で近寄っていく。
「|ぴよ《『これがラセンの力だ!』》!」
カトルは牽制の為にオーラパンチで殴る、さらには周囲のスニーク・スタッフへと吹きすさぶ風で行先を封じ。雷の力での麻痺により捕縛し。
さらにはラセンの爪弾にて止めを刺していく。
「ぴよ!!」
そして、まだ立っているスニーク・スタッフたちへとカトルは立ち向かっていくのだった。
●一方そのころ。
そんな広間のパーティータイムに乱入する者、フロウ・ザ・リッパー。
鬼の仮面を被り、レインコートを装備して隠れていた|霧札・エマ《きりふだ・エマ》(活動名『フロウ・ザ・リッパー』・h07798)は、正面突破は最終手段。と決め、次元螺旋重力変異現象にて重力異常を発生させることで、可視光を変異、さらに姿をも変異させて。
特殊なシャベル、ハルピュイア・ルアンレイクを手に、誰にも気づかれないようにして……影へと潜りこみ……集団でいるスニーク・スタッフの端の方から殴りつけ、再び影へと潜る。
殴られた、スニーク・スタッフが反射的に銃を放つ。それは、味方である近くにいたスニーク・スタッフへのヘッドショットが決まる。
「誰だ!!」
「あいつが突然!」
「俺じゃない!!」
混乱が始まる。
再び霧札は少し離れたスニーク・スタッフの背後の影からハルピュイア・ルアンレイクを振りかぶり……殴る。
瞬間、その背後にいたスニーク・スタッフたちから弾丸の嵐が霧札へとむけられ……次元螺旋による歪みで、弾丸の嵐が消え去り。虚を突かれた数人のスニーク・スタッフたちへとグレネードを軽く、ぽい、と放り投げれば。
それを、つい、受け取ってしまった者を中心に爆発がおき、綺麗に跡形もなく消えていくのだった。
●
|和紋・蜚廉《わもん・はいれん》(現世の遺骸・h07277)と|不忍・ちるは《shinobazu chiruha》(ちるあうと・h01839)は大広間のなか、出口へと出ようとしている久那を影を確認した。
「位置、見えた」
「了解です、いきましょう」
二人はそれぞれの配置へと向かう。
蜚廉が事前に残していた殻の微粒が、塵煙の中で微かに光り。
さらにそれを翅音板で音を散らして蟲煙袋の煙で敵の視界を歪ませ、彼は敵の攪乱の為、敵の只中へ。
「蜚廉さんの隠密能力値判定、救出判定ともに成功ですね!」
ちるはが明るく、イベントとしての成否判定であるかの演出として声を上げる。
瞬間、蜚廉が久那を影へと導いて覆い。さらに擬殻布で輪郭をぼかし、斥殻紐でスニーク・スタッフたちの進路を封じていく。
「え、え?」
「久那さん、こっちです」
「ちるはさん!いたんですね」
にこりと微笑みながら、久那の声に、しーと指を口に当てて見せれば、久那も、ふふりと合わせてしーですね?と、ちるはに合わせてほほ笑む。
「次、大技でますよ……!」
敵が蜚廉に気づき、動いた瞬間。塵尾連閃が起動する。
『廻りて帰るは、斥けし環の軌』
横一線の斬撃。それは常人の目では一度に見えたかもしれない。だが、それは蜚廉の素早い動きにより可能となった二重の斬撃。
「……演出としては、少々派手か」
火花は抑え、風圧と残響のみ残すことで、あくまでイベントの一環であると認識させるように制御する。
「これが戦闘判定、クリティカルの演出!」
「わ……!すごい、綺麗に真横に一閃……」
「かっこいい……!」
「私も判定に成功してれば転ばせる程度のつもりでしたが……ちょっと、大きい目がでちゃいました!」
てへぺろ、と舌をだしながら、久那を守れる位置を陣取りつつ。
ちるはがつまさきをとん。とならす。
『ご』
小さく口にした瞬間。
ふわっと、それでいて舞う様に。
ちるはが、まず周囲のスニーク・スタッフたちへと、足を払い、床に就いた脚とは反対の脚をそのまま回して蹴りを連撃で入れ……跳ぶ。
更に着地地点のスニーク・スタッフを足蹴にしながら着地。次の標的を目視、重心を下げ再度足を払い、蹴り飛ばす。
「ちるはさん、すごい!!」
「次、いきます」
騒ぐような、それでいて楽し気な声に、蜚廉がちらとちるはの姿を視界に入れる。
(……楽しんでいるな。ふ、まあ、護衛は破綻していない)
そうして二人の連携が、スニーク・スタッフたちを殲滅へと導くのであった。
第3章 ボス戦 『外星体『サイコブレイド』』
●
ゆらり、と。音もなく、広間へと入ってくる人影。
「おいおい、目標を捕まえることもできねえってのか」
目深にフードを被り、その下から覗く眼光は鋭い。
「まぁ、仕方ねえ。√能力者相手にしてそんな簡単に勝てるわけもねえ、か」
ぎらり、と刀身が光を反射させる。
「俺は……サイコブレイド、本人だ。それ以上でもそれ以下でもない。まずは√能力者であるお前達を倒し、それからAnker候補であるそこの女……粟島を消してやろう」
彼は肩に担いだ剣を下げて構えると、やる気なさげに、そう名乗った。
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●マスターより
3章はボスであるサイコブレイドとの戦闘になります。
サイコブレイドは、もともとAnker暗殺に乗り気ではないため、まず√能力者を倒すまでは、Anker候補である|粟島・久那《あわしま・ひさな》へと手を出すことはありません。さらに粟島は、イベントなのかガチなのかちょっと悩みつつも、自分を助けようとしてくれた√能力者たちを応援してくれます。
粟島の応援に力が入らないサイコブレイド。とはいえ、強さはそれなりにあるので、気を抜かず、がっちり倒してしまってください。
●Anker候補である|粟島・久那《あわしま・ひさな》(医療関係者)について
もし、希望者がいらっしゃれば、権利をお渡しさせていただきます。
ご希望の際はプレイングで「粟島希望」とご記載ください。
(複数いらっしゃった場合は抽選となります)
それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
●
「さあ、いざ勝負」
|霧札・エマ《きりふだ・エマ》(活動名『フロウ・ザ・リッパー』・h07798)がとハルピュイア・ルアンレイクを構える。
「……ああ?先に√能力者をやるっつっただろうに……命が惜しくねえなら」
言いながら『外星体『サイコブレイド』』が手にしたサイコブレイドを肩に担ぎなおし、手招きをする。
「こいよ」
「体は星屑で出来ている」
エマが力ある言葉を静かに。それでいて力強く紡ぎだす。
サイコブレイドはその言葉を警戒しながら、片足を半歩下げ、腰を落とす。
その瞬間。エマの周囲に次元螺旋による歪みが、弱点を覆う鎧の様に首もとや鳩尾へと展開されていく。
「血潮は金剛で 心は合金」
エマが一歩、足を踏み出した瞬間。
サイコブレイドの姿が視界から、聴覚から、嗅覚から。すべての感覚から消え去った。
「幾たびの戦場を越えて無敗。故に勝利を求めず。
ただの一度も心は折れる事は無い。
彼の者は常に独り 星の降る丘で正義に酔う」
さらに一歩足を進めれば。エマの右腕を狙う一閃が走り……歪みが弾く。
また一歩踏み出せば、脚を狙う一撃を歪みがずらす。
エマは強力な領域を展開する為の詠唱をしながら、サイコブレイドの攻撃をひとつひとつを、当たる寸前に第六感で歪みを利用して弾いていく。
そうして隙のできたサイコブレイドの鳩尾を蹴り……距離を離す。
「故に、我が生涯に意味は不要ず。
その体は星剣で出来ていた」
ヴィジランテスキル――無限の星霜完全形態発動。
瞬間。エマを中心にして、世界の色が変わっていく。
そして彼女は大量の武器の刺さる丘の上に一人。
空には冬の夜空の様にピンと空気が張りつめて、夏の夜空の様に煌めく数多の星々が煌めき。春の夜空の様に柔らかな星の光を感じさせ、秋の夜空のように澄んだ空気が漂っていた。
「GO!」
エマが軽く腕を上げ手を振れば丘に刺さっていた武器が数本浮かびあがり、サイコブレイドの立つ場所へと矢のように飛翔して降り注いでいく。
「ちっ!厄介な!!」
サイコブレイドは手にした剣を振るい、一本、二本、三本と叩き落としていく。
四本目を跳ね返した……その瞬間。
エマが次元螺旋重力変異現象を利用し、次元移動で夜空へと飛び上がり……消える。
ヴィジランテスキル――龍神斬・煌!
「上、じゃねえな!?」
サイコブレイドが言いながら横へと斬り捨てるように剣を振りぬくのと。
彼の真横に現れたエマがハルピュイア・ルアンレイクに纏わせた星属性の斬撃を放ったのは――ほぼ同時だった。
火花が上がり、土煙が上がる。
数瞬の静寂。
「……くそ……手加減が間に合ったからよかったものの……ッ」
土煙が晴れたそこには、苦々しい表情を浮かべたサイコブレイドが立ち、エマは涼しい顔をしながら、少し離れたところで自分の体の状態を確認していた。
「てめえは後だ。いいな?」
言いながら、サイコブレイドは視線を次の獲物へとむけるのだった。
●
大広間の隅の方へと寄せられた机の影から。
ぴょこり、と顔を出し、戦場を覗くのは|粟島・久那《あわしま・ひさな》。
(たぶんこれ、ほんとに私、狙われてるやつ、では……)
そう思いながら、自分を守る為に立つ人影たちへと向かって声を出す。
「皆、勝って!そして、そのあとで一緒にほかのゲームやりにいこう!!」
その応援の声が戦場に立つ者たちへと届く。
「……チッ……やりにくいな……」
声がした方を一瞥し、再び目の前に立つ者たちへとサイコブレイドは視線を戻し。
「次は、どいつだ」
担ぎなおしていた剣を、下段に構えるのだった。
●
「サイコブレイド、次は俺だ!」
勇ましく、サイコブレイドの前に羽ばたきながら立ちはだかるのは、カトル・ファルツア(ラセン使いを探す者・h01100)。
「……鳥、いやお前も√能力者か。なら……」
二人は同時に戦闘体勢取る。
動き出したのはどちらが先か。
カトルが放つ破壊の炎は目眩ましとして、サイコブレイドへと燃え移ろうとする。
瞬間、掻き消えるように動きを変えるサイコブレイド。
だが。
「迂闊に入ると痛い目見るぜ!」
カトルは同時にエネルギーバリアを展開しながら、飛んでいるがゆえにできる俯瞰する視界と、野生の勘。さらには第六感でサイコブレイドの死角を狙うような攻撃を光速移動で回避。
瞬間。攻撃のために近寄っていたサイコブレイドへと、さらにオーラパンチを繰り出して牽制重ねていく。
「くっ……その光速移動、両羽によるパンチが……厄介だな」
サイコブレイドが唸り、手にした剣を振り上げる。
空中で軌道を変え、ぎりぎりを避けるカトル。
「武器持ちの動きは止めねえとな!」
さらには風と雷を放ち、サイコブレイドの動きを無理矢理止め――。
「喰らいやがれ…ラセンの力をよ!」
カトルの宣言と同時に、サイコブレイドをラセンの力を纏った爪弾が打ち抜いていく。
「……ッ……!」
だが、それでも、サイコブレイドは手にした剣を支えに立ち上がる。
「まだ立つのか、やっぱ強えな……」
カトルは呟きつつ警戒するように、飛んでいた。
●
|和紋・蜚廉《わもん・はいれん》(現世の遺骸・h07277)が、手にした剣を支えに立ち上がるサイコブレイドへと相対するように、構え、立つ。
それは、どちらが先に動くか、という蜚廉による膠着状態の演出でもあった。
長くも、短くも感じる間。
先に動いたのはどちらだったのか。サイコブレイドの踏み出す脚へと蜚廉が斥殻紐を絡ませ、動きを封じ、サイコブレイドが横なぎに払う剣を甲殻籠手で刃ごと捕らえ。さらに連肢襲掌で動きを止めていく。
――隙を晒せ。狙いは頭か、うなじか。外れても構わぬ、我が節が穿つ。
「ちるは」
その一言で、|不忍・ちるは《shinobazu chiruha》(ちるあうと・h01839)が蜚廉の背後から勢いをつけ、肩を駆け――蜚廉の掴むサイコブレイドのうなじへと手にした得物で一突きを狙う。
サイコブレイドはちるはの持つ武器がうなじへと突き刺さる寸前。掴まれていない方の肩から半身をずらして回避を試み――。
「ぐっ……」
空中で、その半身のずらしを読んでいたかのようにちるはは手の中の武器の軌道を変え、肩口へと狙いを変え、容赦なく突き刺す。
そして、ちるはの着地した地点は、蜚廉とでサイコブレイドを挟む位置取りとなった。
「ここで一つ、助力を願おう」
「ええ。というわけで、久那さん!」
「えっ、あっ!」
――運の良い者、声を飛ばせ。幸運を呪詛の如く投げてくれ。
ちるはは、机の影からこちらを覗いていた|粟島・久那《あわしま・ひさな》へと声をかけた。
「ここでミッションです
敵にデバフが入りますので1d100で声援をどうぞ」
それは、ここが戦場であるということを感じさせない、ただ、卓上でゲームを進行しているかのような声かけだった。
「あっ、ハイ!ちるはさん、蜚廉さん!!
頑張ってください!!」
久那が大きく手をふり、二人を応援する。
「……やりづれえな……おい」
その声で、√能力者である蜚廉とちるはから、一瞬、サイコブレイドは視線を逸らしてしまう。
(事情があれど私たちも譲れませんし。
悪役に隙がある時点で勝ち目なんてないですから)
「助かる。汝の念は強い、故に我らの命中精度も上がる」
その隙を見逃さぬとばかりに、蜚廉が影より走り、影にてその節を打ちこみ。サイコブレイドが捌くも、ちるはの攻撃が続けざまにサイコブレイドへと決まっていく。
「……ああ、今回は、ここまで、か」
二人の攻撃が、同時に入ったその時。
サイコブレイドは、静かに消えていったのであった。
●
「おつかれさま、でした?」
サイコブレイドの影も消え、ちるはと蜚廉がどちらともなく息をついた時。
机の影から出てきた久那が二人へと頭をさげ、声をかける。
「久那さんも、お疲れ様です」
「ええと、さっきのってもしかして」
不安そうな顔をした久那の言葉を途中で止めるように、ちるはが人差し指を口に当てる。
「突発イベント、たのしかったですね!」
「え、あ……!はい」
「まだまだイベントは目白押しですし、明日の朝までは、一緒にまだまだ遊びましょう♪」
「ああ、明日の朝までは、我らの時間だ。
最後まで楽しんで帰れ。土産話は、笑って語れるものがよい」
その言葉に久那は安堵したような笑みを浮かべ、二人へと頷き。
そうしてそのまま三人は、次のイベントへと向かうのであった。