3
【サポート優先】One Gate
これはサポート参加者を優先的に採用するシナリオです(通常参加者を採用する場合もあります)。
うおっ、と気付いたように上がる声。
「なんだ、大忙しじゃん」
サインが降ったというのです、
「だれかー! へるぷみー!」
お菓子の国のお姫様に降ったというのです。
ルーシー・シャトー・ミルズの名を戴くその女の下に、丁度手の空いた|√能力者たち《あなたがた》。
「集まったね――よかったよかった。オーラム関連で忙しいところ悪いんだけど、√妖怪百鬼夜行の妖怪さんたちが黙っていられないみたいでね」
そう、わるーい妖怪さんたちなんだ――嗚呼、倒せというのですか。当たる予感。
「倒して欲しいです。極論言えば生死は問いません、重要なのは√妖怪百鬼夜行と√EDENを繋ぐ『入口』が開いちゃったので阻止する事」
悪戯を超える悪意であるのでおいたがすぎるのでして。
「√妖怪百鬼夜行に追い込めば、阻止が叶う場所……封印の祠があるはずだから。場所は割れてるから、良い感じにそこまで追い詰めて、封印お願いね!」
そこまで抱えているのならどの様な御姿をしているのかと気になるところではあるけれど。
「詳しい姿を説明してる暇はちょっと無いかも。ただ禍々しい形に変身するだとか、何か本気を残してはいるみたいだから、気をつけてね」
直ぐそこまで来ていたのですタイムリミット、いよいよ許されざる猶予を前に選択肢などありはしないのです。
「あ、怪我無く無理無く、だよ〜!」
そんな日の東京都内某所。
これまでのお話
第1章 集団戦 『ぬりかべ』

ほうら見なさい、がっぱりと。
「ぬ」
入口が空いていらしたのですよ。ここぞとばかりにぬうっと入ってきたほぼ黒色のっぺり妖怪さん、本日の目的は人間ですか。
ぬるりぬるり、“それら”が見渡しますれば、揃って上げます|共鳴《ユニゾン》の声。
「「「ぬ〜り〜か〜べぇ〜〜〜」」」
大変に透けてもいるのです下が……まるで|お魚さん《インビジブル》じみているというので。
ささ、お帰りいただきましょうや。
ぬる、ぬる、塗り壁が増えるのです。
あかしろきいろ、まるでお菓子の詰め合わせみたい――だからこそ。
「甘味の気配……じゃなかったのです。だけど!」
トッピングが必要なのですウィスカ・グレイシア、月読姫と鱗持つ妖の血が即座に促した噺、|空間《せかい》広げて話し易く。
「ぬーりーかーべー?」
紡がれる声に従って導かれる|お魚さん《インビジブル》、悲しきお菊の亡霊のイメージを補強して……割るべき|簒奪者《おさら》の数は何枚ですか。
「いちまい……にまい……!」
二叉の魔導槍が色の区別無く薙ぎ払い穿たれるのです、ヒビは入らぬものだし、がきんと跳ね返る音と力もかかるものですが、力の跳ね返り方さえ見当がついて、上手にいなしたので負担など無いようなもの。
次々串刺せば倒れる|妖《もの》ども、姫フォークの賜物です。見たらちょっと位置を立て直す必要が出てくる他のぬりかべの、色違いが消えていくから楽になるのです、
「お皿が、足りなくなっちゃいました」
一枚どころでも無いしで。
酒の貯蔵は如何ですか黒猫さん。
「にゃー!」
元気に鳴き声が響くならば良し――ぬりかべたちの意識が一遍に向くから一躍人気者なのですシェラーナ・エーベルージュ。当の猫さんはルンバ乗りで毎日日曜日みたいなものだけど、
「ぬーりーかーべー?」
すいすい誤魔化すように猫をするのです、色違いでさえそれを捉えられない、気まぐれウォークに気ままなウォーク、何をしようにも猫にしか見えないものだから数が増えるだけでなあなあなのですが。
「にゃ〜お!」
嗚呼あまりに飲み放題なのです、ぬりかべの内一体の眼前で出来上がる日本酒、まさか瓶ごと行くつもりですか、まるで錬金術かのよう、そのまま突っ込んでやるだけであっという間にへべれけぬりかべ様、
「ぬ、ぬ、ぬぅぅ〜〜〜……?」
出来上がっていらっしゃる。気付けば同じことを次々やってのけて、酔っ払い妖の数が増えるならそれはもう宴会も同じなのです。
「二時間制ラストオーダー三十分前〜」
過去も時間も置き去りにするまま。
妖たちの酔い潰れ跋扈する予感を感じ取るのです。遠くから、入口のがっぱり開いているのと、ぬりかべたちの数が未だ増え続けることを見て考えるのです、考慮するのです――彼ら√妖怪百鬼夜行の側より来たる妖共、
「……入口の奥を攻めてあげれば、入りにくくなるでしょうか」
その通り――おっと、焼き芋をまだ食べている途中でしたか。思い出して、然し集中するのです。|他√《むこうがわ》、丁度入り口辺りを見通すのです、ぎゅーん……開花を待つのです、花霊の宿り、力育つ、巡り巡って咲き誇る――、
「「「ぬぅ!!」」」
悲鳴にも似た驚愕だったのですぬりかべたち、完全なる不意打ちでもあり、一気に空白が空いたことは明白であったのです。焼き芋を一口齧りつつ、効果を認めた少女が、妖めいた世界線に戻ろうとするのを遮る様に、
「花見日和ですね!」
引きつける。
誰もが釘付けだったのです。
「こんな日ですが――人々を殺めさせるわけにはいきません!」
花木の霊の導くままに、駆けて、駆けて。
「魑魅魍魎、ですか」
跋扈を阻止するのです、それだけの力が射干玉の夜の夢にあるのだと証明して――続く言葉は要らず、ただ矢の如く鋭く向かっては、目についた大きな壁に――ええ、のっぺりぬりかべです――その御拳を叩きつけて薙ぎ倒すのです。
「「「ぬ〜り〜か〜べ〜!」」」
声が複数聞こえるのです、あっという間に増えているのです、指で数えるだけでも足りないところから更に数を増した分け身であるならば……心を乱すわけでもなくただただ覚悟を持ってさらに殴りつけるのです。立ち塞がる|課題《かべ》を打ち砕く様に、この身が壊れても構わぬ、その覚悟を常に抱き続けるまま……そう、例え他の分け身がどんとその身をどついたとて、一歩も揺らがず引かずに返す拳、轟かせることこそが百錬自得拳なので。
「ぬーーーりーーーかーーーべーーーぇ」
これにはぬりかべ集団もまいるまいる、あまりにも参ったので殴られ続けてサンドバッグなのですよ。
さて、次は喧嘩殺法ですか――絶えず紡ぐ攻めの手。
妖の台頭し続けるのが未だに厄介なのです。
「……幽霊さん、幽霊さん」
どうしましょう――Ask them, the ghost talker.
「あれは、どうしたら……?」
幽霊たちもお魚たちも、こぞって相談。集って出来上がって答えが出るのです一塊、人魂さえ|一度《ひとたび》集まりますならば、
「……そっか。じゃあ、そうしなきゃ」
一旅行きましょうや、己食わせちょいと|死《そこ》まで。それであっという間に出来上がるのです、彼女こそが無敵のデパスザウルス。
「「「ぬ〜!?」」」
ぬりかべ共も面食らったか、色の違う壁を増やしては囲い込もうとするけれど……3秒の隙間の悉くをすり抜けて、尻尾をばぐるりとぶん回して叩きつけるのです。纏めて薙ぎ倒す様でした多くの|壁《・》を、このような攻勢は些か性に合わぬものですが、時間がものを言うと教えてもらったものだから仕方が無い。
妖の群れもいよいよ大慌て。一狩りでも行きましょうか、ゾフィー・ゾルガー。
それでもまだ多いというので。
「落ち着いて対処していきましょう……未来を良くする為」
駆け付けましょう――其はアルカウィケ・アーカイック、ぬりかべたちの意識を縫うように状況を読み取る虚像の追憶。ここだというポイントを見つけてしまえば、太古の神霊をその身に降ろして……。
「はぁっ!」
「ぬっ!!!」
強烈にも吹き飛ばしてしまいましょう。妖共よ見なさい、古龍が其処に居ると知るのです、色違いの増える間も無い内に、片っ端から壁ごと抜かんばかりの猛攻を喰らい散り散りになっているのを見るにその概念を知らなさそうなものですが――知らしめる様にさらに加えるのです古龍閃の斬り抜けるのを、
「――増えた!」
色のバリエーションが例え増えて、ぬるり目潰しをせんと迫ってこようとも、
「ですが、僕が倒れ伏す未来などありませんっ!」
向こう側の黒色のっぺりぬりかべにも届く様に――真っ直ぐにもう一閃。
「ぬ〜り〜か〜べ〜ぇ……」
それが最後の一体の悲鳴だと気付く、
「……!」
垣間見るのですその先に“それ”を、
「あなたが――それですね?」
かくれんぼの終わりなのです。
第2章 ボス戦 『『七禍神ヶ参』呪狼人』

やあ、そこな御方。
「ああ?」
もう逃げられませんよ、七禍神の一角に座る身でありながら人を殺し奪う者。
「なんだぁい、もう見つかっちゃったァ――」
戯けて笑って、よよいのよい。
彼にもやることがあったのです。
「折角このようにブチ開いた入口なんだ、みすみす逃すわけがないだろう?」
かの父は、母を散々苦しめたので残酷だったのですよ。
「親孝行ぐらいさせなって――邪魔するなら手前らも消すだけさ!」
たったそれだけのことを――生憎とその都合の為に人命を奪われるわけにもいきませんで、
Path B chosen.
嗚呼|騎士《おおかみ》よ、見るのです。
「……駄目だ」
禍々しく狼が人を呪わんとするのです。止めなくては。
「その力は、使わせない」
親孝行と聞いた騎士の、二刀一対のそれが長物となりて何かを凌ぐ様。過ぎ行く風、突風――あの扇子が悪さをしているのだと気付けるのです。
「その奥に何を隠していようが、止めなくてはならない!」
それでまだ一つ何か隠しているとも確信しているのです。
「なんの、ことだか――!」
悪戯を許してくれと乞う子供にも似て、更に扇子を一振りしてしまうので圧が強烈に強くなる……向かい風、
(……あの扇子を、弾き飛ばしてしまえば)
以後の発露のタイミングを狂わせられるか、そう、時が満ちたのです。
「錬成完了、お返しだ!」
凌いでいる間にあっという間に完成してしまったのです、錬成・贋作武装、なんと形だけ芭蕉の趣を模して、片手でびゅんと振るってしまうのみで、
「うお、お!?」
凶つ狼の手を離れゆく扇子――揺れる、揺るがす。
風に揺れ過ぎて、生命揺るがされる簒奪者であったのです――征くのです、暁・千翼。
「……やってるなあ」
隙間をより埋め易く立ち回りますか。
「く……おうおう、手前も邪魔をするんで?」
柳・依月とは普通の大学生をするネットロア。
「嗚呼――何せ人間の作る文化が好きだからな!」
晴れ雨どんと来いな仕込み番傘ぶんと振り回せば、鋭き狙いに狼の肝っ玉すら冷え込むのが今日なのです。それでは堪らんと、
「なら、この瓢箪にでも吸い込まれておくんだね!」
ささっと取り出したる紫金紅葫蘆に気を付けて、急速に侵し広がってくる呪いこそ。
「人を酒に変える、ご自慢の酒さ!」
「――へぇ!」
この|簒奪者《おとこ》の力満たす√能力なので。
「それは面白そうなお話だ――ぞっとするね」
一度死んでおくことにしました――もぐもぐする|お魚さん《インビジブル》。
「……あぁ?」
不思議に思って動きの止まった狼を照らすは……大きく丸い絶対の太陽。空亡がごく強く照り付けて灼き尽くす光、凶暴性を削るには十分なのです!
「ああああアッツゥ!? このっ、おのれぇ!」
こんがり狼。
>召喚call ヘルプキャラ:イルカ
「……おう?」
突然イルカが出申した。
「……今度はなんだと、」
狼の隣に出申した――泳ぐ様に動くのです、アニメーションじみているのです。マウスカーソルでも追いかけているみたい、超音波が特徴です。
「なんの、まやかしか、」
振り払おうとしますが梨の礫、どころか気付くと眼前に居たのですふんわり緑髪、きゅと拳握り締めた軌道は直線的でしたがキーを正確に叩くみたいに確実だったので怯み後退るのです狼。
「人々の平穏な暮らしの維持の為、行動します」
「嗚呼そうかい、ちょこまかと――!」
いい加減黙らせる為にまた瓢箪を突きつけようとするものでしたが……其処はまたタスク解消の如くあっという間に飛び込むイルカ、体当たりが実に効くのです。
「うおっと!?」
弱いものですが、ぶちまける瓢箪の勢いを見出すには十分だったでしょう、それ程零れずちょっとしか触れなかった青木・緋翠、その拳はどうしてクリックする様に正確無比なのでしょうかと、
「さあ、次の手順を組みましょう」
古いパソコンの付喪神だからなのです。
さてさて、次に現れたるは戦地に生まれし|少女人形《レプリノイド》。
「そんなにも力が欲しいのね、人を殺したいのね」
クーベルメ・レーヴェが人類の敗北など許すはずはなかったのです、妖が人を喰らうこと罷り通るならば、覆し人の勝利を――、
「なら手前は見逃してくれるんだろうね!?」
嗚呼装備の数が多く外していたのですクインテットウォール、ただ突撃銃の|咆哮《うな》ることそのものが攻勢で狼の灼けた傷痕に|銃痕《あな》など複数開けていくのです、制圧射撃でこれならば風穴開けるのも叶うでしょうか、否、逃れた狼、扇子を拾うので、
「飛んでいっちまいな!」
突風吹き荒れ圧されそうな――然し容易でしょう、風速に見当はなんとなくつく、
「Штурмовик!!」
ロシア語で叫ぶとほら――熱く降りしきる航空攻撃の雨。酷く火力が凶悪めいて戦争になりそうだというので、狼も堪らんと生命削られてしまうのです。
そして少女、飛び出していくのです――その手にシャベル――ざっくり。
今度こそ扇子を落とさなかったけれど狼の姿、
「よお――お前か、ここの人々をめちゃくちゃに襲ってんのは」
紅蓮の氷術師の|瞳《め》には些か疲労困憊である様に見えたのです。それでいてまだ何か酷く危険なものが隠れているかと――だから凍らせ、でも良い、それが良いのだけど。
痕があるのです。
大変な傷痕焼け痕ばっかりなので。
「それがどうした――!」
「凍らせるよりかは、こいつの方が良さそうか!」
激る情熱、熱血のままに施すウィザード・フレイム、ぼつりぼつりと動かしていくのです。3秒毎に増えゆくそれを果たして、これだけでいいなと考えたのか、
「そんな焔が、この親孝行を止められると思うかい!?」
また瓢箪より出します吸い込みの呪い。酒の呪い。重力斥力に逆らいそうな勢いのそれを、焔が満たし上げるだけであら不思議。
「そんなもんで――この焔は消し飛ばねえぜ!」
その言葉通り、逆に侵し広がっていくではないですか。
「ぐ、おおおおぅ……!?」
そろそろ焦げつく瓢箪。
嗚呼どうしましょう、ハスミン・スウェルティ。
「どいつもこいつも……手前らそんなに人を護りたいかぁ!?」
灼けてばかりの狼さん、そろそろ限界ですけれど。
嗚呼それとも全て曖昧か、ぼんやり手錠の人間災厄が|黄色く《・・・》弾けて躍るのです。
「ふふっ!」
嗚呼、楽しい。
唯只管に、楽しさに溢れて居るのです。
「たのしいなぁっ!」
そのままに手を突っ込む亜空間、武器庫からまっ黄色なバールが出てくるならば一度思いっきりガツンと殴ってやるのが良いのです。咲く紅。妖の思考揺らすにはあまりに最適で、然し。
「ねえねえ、キミは|楽しく《・・・》ないの?」
「楽しいだ!? 力を求めるのに楽しさ、なんぞ、」
くらり。くらくら。
ちょっとフラフラしてきた妖なので、一気にぱくっとしてあげましょう。念じて念じて楽しみ深めた先。
大きな鴉がかあと鳴いて――突っつき、嘴の先で腕の一部を挟み込んで肉を喰らわんとばかりにぐい、ぶちっと千切るくらいの獰猛さ。
「いたたたたぁ!! わかったよ、わかった!」
一先ず負けたよ――嘘をつかないで、未だ五体満足であるのに。
第3章 ボス戦 『『七禍神ヶ弐』蝠禄呪』

それで負けたと聞くには、自ら入口を通って従う振りでもするかの如くあっさり下がる狼なわけですが。
いざ妖の世界が広がってみるとまあ大変。
「……なあんてな。そんな簡単に諦めるわけが無いのよ」
人が変わった様に笑ってる狼なのです。
否、変わるのです。“かの場所”に収まるまいと、最後の抵抗とばかりにその身を変えるのです。
より禍々しく、より理由要らずになる七禍神――そもそも真なる呪狼人ですらなかったというのです。
「それもこれも全て――人を解放せんが為」
松と桃に邪神が実った結果がこの様で。
「憎き若人も老いし人も、等しく黄泉路に送ろうぞ」
邪魔になる|√能力者たち《あなたがた》までもを葬ろうというのです。
Path A chosen.
「駄目に決まっているじゃない、そんなこと」
おやベルナデッタよ、本日の|瞳《め》のお加減は如何ですか。さっきまで人を殺めさせろと騒いでいた狼の騒ぎを簡単にも把握しているならば、
「逆らうか、|人形《ひとがた》よ」
「逃がさない」
ぎらっと|魅了《てら》しちゃいましょCouches de Jugement、妖の身が龍に転じようとするのが見えるけれど、
「ずっと囚われ続けるの――」
さっと始めちゃいましょ影踏み遊び。|黄昏《クレピュス》が呼ばれ忽ちその御手にて蝠禄呪を捕らえるのです、置き忘れられた影が今妖の認識にあっては思い出されて、
「足掻くか、人の為に?」
「物を傷付けるお前を罰する為によ!」
|魔法《ほのお》を叶えるのです、焼き切るのです。全てのものが求められるその手に渡る前に死ぬなどとあってはならないことなので。そうあるべきと、簒奪者を焼くのです。徐々に痛み焦げ付く身は龍に転じて然し、
「黄泉路へと送る邪魔をするでない――」
人形もまた樹毒などとは無縁なまま、ひらりひらり。
龍への転身解け疲労が蓄積して来る頃なので幾らか楽なのです。
「今回のは――見るにシンプルで助かるモグ」
ぶっ飛ばして封印すれば良いだけと気付けたので拳銃ぶっ放しつつ突撃していく今日、油断など無い|簒奪者《むこう》の、髭が妙に根の如くついているのが見えた次には。
「じゃあ、もっとイージーにしてあげる」
颯爽と現れ|手を伸ばして《・・・・・・》くるが廻夜・歌留多、運命を掌で弄ぶかの如くヘルプをしようというのです。暫し見合って――拳銃を差し出せば――触れる手。
「阻むか、ならんぞ」
嗚呼髭が伸びてくる、その場網羅するかの如く伸びるのです。咄嗟に分かたれて上手く避ける二人、実に経験値が生きている――なんなら歌留多の頭の中、過去のモコが|生きて《・・・》いるのです。先のテレビの男から仔産みの神を摘出する依頼を達成せんが為準備するモコ・ブラウンの。
野良ギャンブラー心得:弱点無きものは存在しない。
その記憶、みるみる内に快諾の意思をば示し。
「『あれの弱点を、突く為モグね』」
同調する現在と過去。
「そういうこと。今だけあんたも、」
賭場を荒らすギャンブラーよ――だなんて次の瞬間、明確に改善されたような、非常に素早い身のこなしのモグ。そう見えていたのです彼女にも、ついさっき出来たばかりの、
「――愚か!」
七禍神ヶ弐の弱点!
頭部にそれが|ある《・・》ならば、今一度狙い定め銃弾にてぱぱんと届かせ響かせるのです。貫く様でもあったのです痛みが蝠禄呪を、呻いてよろめくその身その両手、手錠をぶん投げてかちりとロックしてしまえば……おおなんと|容易《イージー》でしょう、流れる様なコンビネーションで|簒奪者《かれ》はこの連続殺人未遂の容疑者なのです、
「いっぺん逮捕するモグ!」
そのまま抉る頭。爪の鋭く剥がすように引っ掻いていく、モグラ逮捕連撃の確実性が担保されているのです――ビンゴ。なんでこんなに連携が強いのかって、
「「まだまだ、いける(モグ)」」
同じ賭け事好きの者だからでしょう。数奇な|運命《ルーレット》。
一つ気になる、というより心配でもあったのです。
「さてはて、お役に立てるでしょうか」
微かに滲むそれを然し塗り潰してしまうのです、人を黄泉路に送ると謳い猛威を振るう妖というものへの興味、俄然湧いて来るからこそ気を引きたくなるものです青白い|人魂《ほのお》で。か弱く愛らしい魂の火、躍り躍るから妖もつられるというもの。
「これまた面妖なまやかしよ。人を送る邪魔立てをする」
不届な――腕を振るいけしかける蝙蝠たちの持つ|怨念《おと》を聞くのです。嗚呼、姥捨てに見舞われては使われて、なんたる悲劇!
「ふふ。それがユーレーというものでしょう?」
瓶一つ投げましょうぞ、その間に此方に到達させぬよう死霊たちを向かわせるのです、蝙蝠たちを上手に抑え込む間に、瓶にぶち当てし一条の|革新《ビーム》。己の手で持つ装備ですもの、ピンポイントで妖に香水が如くぶちまけることだって出来るでしょう、
「なっ――うおおお、」
「さあ、隙が出来ましたね」
そのまま妖の視界からズレることも叶うのでしょう――誉川・晴迪が次いで与える一撃。