シナリオ

罠だらけのダンジョン攻略!

#√ドラゴンファンタジー

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●迷ったらおしまい
 街の中には迷路のように入り組んでいる場所があり、そこを『ダンジョン』と呼ぶ人々は少なくはない。
 本来出向くはずだった目的地とは違う場所に出てしまって、てんやわんやになりながら該当の目的地へ向かうための通路。それが一般人が考える『ダンジョン』の定義。

 しかし現在、√EDENの世界ではその定義から外れたダンジョンが生まれてしまった。
 生まれた……というよりも、何者かが別の√から何かを持ち込み、√EDENの世界にダンジョンを作り出しているようだ。
 そのダンジョンの存在が別の√からのものだと気づいたのは、星詠みの1人時谷・氷雨(√を知った普通のライター・h01462)が未来予知を見たからだという。
 一度入ればトラップが跋扈する迷路式ダンジョン。一つの部屋に複数仕掛けられているのはもちろんのこと、通路にも1つは必ず仕掛けられているという。

「……そのダンジョン……道も入り組んでるし、罠は多いしで……道中の敵がわかりづらかったんだよね……」

 しょも……とした様子で語る氷雨。
 未来予知で見えた範囲では罠に引っかかってお陀仏になる未来だったり、道中の敵が罠に引っかかってそのまま消滅したりと色々なことが起きており、正確な道や道中の敵などがわからないという。
 ただ、ダンジョンを呼び寄せた犯人の目星は既についている。√ドラゴンファンタジーの世界より降り立った『堕落騎士『ロード・マグナス』』が今回の犯人であり、彼を討伐することでこのダンジョンは消滅するそうだ。

「……ダンジョンが残ってたら、人々がモンスターになっちゃうし……騎士さんを討伐してきてほしい、な」
「……色々なトラップがあるから気を付けて……ね?」

 トラップ式ダンジョンを形成し、人々のモンスター化を図ろうという事件。
 放っておけば一般人は徐々に減ってモンスターが大量に発生するという事態に陥ってしまう。
 一般人の危険を回避するために√能力者達で元凶を討伐しよう!

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第1章 冒険 『トラップ! トラップ! トラップ!』


アリア・ビエント

●そこにいなければいません
「さて、今日も今日とて|ダンジョン《ギャンブル》に挑むとしようか」
 √EDENのある場所に出来上がったダンジョンに入ったアリア・ビエント(ウィンドシーフ・h04363)。冒険者として生きることを望んだ者が、罠だらけのダンジョンに降り立つ。
 雰囲気としては普通のダンジョン。だが一歩前へ進めば何処にあるかわからない罠に怯えなければならない迷路となっており、普通の冒険者ならば万全の準備をしてからダンジョンを攻略するものだ。
「罠ねぇ……」
 ところがどっこい、アリアは違った。解除をしながら進むよりも、踏んで発動させてしまえばいいという考えのもとダンジョンを進んでいく。
 アリアの持つ√能力『疾風の刃』は荒れ狂う疾風を纏うことにより、己の移動速度を3倍に上昇させる力を持つ。トラップを踏んだとしても、発動タイミングには既にアリアはそこにはおらず、空撃ちに終わる罠だけがダンジョンの部屋に残される。

 トラバサミを踏んだとしても、挟まれる前に足は前に出ている。
 吹き矢罠を踏んでも、矢が到達する頃にはそこにアリアはおらず。
 毒を与える罠が発動しても、その対象となるアリアは既に罠の一歩先にいて毒を回避して。
 痺れ罠が発動して辺りに電撃を撒き散らしても、既にアリアは範囲の外へと通り過ぎている。
「なるべくなら消耗はしたくないしね。アタシが踏んでおけば後の奴らも楽だろうよ」
 ダンジョンの先にはボスが居て、それを倒さなければこのダンジョンは消滅しない。ボスに会うまでに一度でもダメージを受けることはボスとの戦いにおいて不利になるため、1度もダメージを受けずに進むのが一番なのだ。
「あとはお宝があればよかったんだけど……このダンジョンにはなさそうだねぇ」
 ダンジョンを踏破しつつもお宝を探して回るアリア。せっかくならと思ってフロアをほぼ全て走って回ったが、残念ながら今回のダンジョンにはお宝は設置されていないようだ。
「まっいっか! さて、次のフロアどうなってるかな~」
 気持ちを切り替え、次のフロアへと進んでいくアリア。

 彼女が通り過ぎたあとの道は、発動された罠がゴロゴロと転がっていたとさ。

朔月・彩陽

●索敵はダンジョン攻略の基礎
「……ケホッ。かなわんわあ……罠一杯とか……キッツイ事やで」
 眉根を寄せつつ、ダンジョンへと訪れた朔月・彩陽(月の一族の統領・h00243)。周囲を見渡し、既に先駆けてくれた挑戦者が罠を発動させているおかげで多少の罠の回避はしやすいだろう。
 だが、罠の総数は星詠みの未来予知でも判別出来ない。故に彩陽は残された罠をどう回避するかを考えに考えた。
「うぅん……まあ見つけて避ける、が簡単な方法やろなぁ」
 壊したり、発動させたり、というのも考えたが、それは|慣れている《・・・・・》者が行うもの。ある実験によって病弱になってしまった彩陽には到底難しいものだ。
 であれば、あとは純粋に見つけて避けるという至極単純で、だけどダンジョン攻略の基礎となる行動で罠を回避していくしか無い。√能力『|月の御霊の式神達《ヒキツガレシイチゾクノイサン》』を発動させ、月の一族の統領に代々受け継がれる式神達の超感覚を使い、索敵を行ってもらう。

 式神達はとても優秀だ。表にわかりやすく置いてある罠はもちろんのこと、それに連鎖して発動する吹き矢罠やワイヤートラップなども見つけ出してくれる。
 視界に入りづらい極細の糸を使った罠も式神達の超感覚にかかれば簡単に見つけ出し、彩陽を罠から遠ざけてくれる。
 しかしフロアによっては一歩も動けなくなる、という事態に陥ることだってある。順調に次のフロアに行こうにも、罠が複数仕掛けられていて彩陽は身動きが取れなくなってしまっていた。
「……これはー……うん、仕方ないなぁ……」
 どうしたものかと悩んだ彩陽だが、ここを抜けなければ移動できない。故に呼び寄せた式神による弱めの攻撃を罠に当て、起動と同時に破壊させて無力化する他なかった。
「これを繰り返せば……ケホケホッ、先に進めるはずや……ケホッ」
 粉塵が舞う中、吸い込まないように気をつけながら進む彩陽。式神達も順調に罠を見つけては知らせ、安全を確保していくのだった。

夜縹・熾火

●罠は壊すもの
「ふむふむ、なるほど……罠が沢山あるんだね?」
 星詠みから情報を聞きつけ、夜縹・熾火 (|精神汚染源《Walker》・h00245)はぽわぽわと色々考える。
 ダンジョンの中、逃げ場の少ない迷路のような場所。そういう場所にあるものは、大体壊してしまって良いのでないか、と。
 事実、罠を発動させる前に壊してしまえばいい理論というのは存在する(??)。ダメージやデバフを受けてしまうのなら、受ける前に壊してしまえば受けないのだから。
「それならまずはー、簡単なこれ!」
 即応式グレネードのピンを抜き、フロア内部にぽいっと1つ投げて通路へ避難する熾火。その直後に罠の作動音が鳴り響いたかと思えば、グレネードが爆発して周囲を吹き飛ばし、罠の存在などなかったかのように更地にしていく。
 起動したところで人がいなければ効果はないし、グレネードによって吹き飛ばされれば機構も壊され動作不良に陥り、その衝撃波で罠が作動して不発に終わる。一石二鳥の作戦だ。

「あとは……近道作れるかな?」
 コンコンと壁を叩いてみる熾火。強度は先程のグレネードでも確認しているが、思ったよりも柔らかな壁のようで、爆破されたフロアは少しだけ部屋が広がっているのがわかる。
 罠が|そこにある《・・・・・》とわかっているのなら、罠が|そこにないとわかっている《・・・・・・・・・・・・》場所を進めばいい。
 壁を掘り進めた先にまで罠が仕掛けられるなんてことは早々ないだろう。あったとしたらよほどのトラップマニアか、即座に罠を置きたがる変態ぐらいだ。
「あれっ? この先掘れないや……」
 しかしダンジョンには一定の規定範囲が存在するようで、壁から一定以上の距離を掘り進めるとそこから先は掘れないようになっているようだ。
 帰還不能者が出ないようにするための措置か、あるいはその範囲でしかダンジョンが作れないか。ともあれ、掘り進められる壁を掘り進んでは熾火は他のフロアの罠もバンバン壊していった。

「どうせ、最後には消えてなくなるんだし。今壊したところで誤差だよね」

第2章 集団戦 『バーゲスト』



 罠が沢山張り詰められたダンジョンは軽々と√能力者達によってクリアされていく。
 回避したり、発動させたり、爆破して壊したり。多種多様な方法で罠のエリアが踏破されていった。

 だが、『堕落騎士『ロード・マグナス』』は罠だけで終わらせるつもりはない。
 むしろ罠の多いフロアは様子見のために設置されたフロアのようで、ここからが本番らしい。
 √能力者達がどのような手法で罠を乗り切るかを見て、ダンジョンに出現させる敵を決めたようだ。

 √ドラゴンファンタジーに存在する『バーゲスト』――黒犬の妖精。
 ダンジョンに入った者を執拗に追い回し、臓腑を貪り食らう悪意にまみれた者。
 大量に放つことで逃げ場をなくし、ダンジョンを攻略させないつもりでいる。

 ……だが、ロード・マグナスは気づいていない。
 仕掛けられた罠は、まだほんのり残存していることに……。

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 プレイング受付:12/27 8:31~
 受付開始前のプレイングは一度お返しさせていただきます。

 集団敵『バーゲスト』との戦いとなります。
 場所は変わらずダンジョンの中ですが、一部プレイングによって部屋内部が広くなっており、逃げ道となる罠のない通路が存在しています。
 またフロア内部には検知されなかった罠が少しだけ残された状態となっていますので、ぜひご活用ください。

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朔月・彩陽

●身動き出来なきゃそれまで
「ケホッ……妖精? なんや、あんまり見ないタイプ?」
 目の前に現れたバーゲストの群れを見て、彩陽は首を傾げた。不吉の先触れ、邪悪な精霊とも呼ばれている妖精の名だが、その姿は妖精と程遠いのではないか、というツッコミまで入れた。
 しかしボスへの道を塞ぐというのなら、それは妖精であったとしても敵。故に彩陽はバーゲストを倒し、道を切り開いてからロード・マグナスのもとへと向かおうと考えていた。
「数が……多いなあ……」
 バーゲストの群れは、多かった。多かったと言うよりも、通路にみっちり詰まっていた。全てがこちらを向いてしまえば通路の中で身動きが取れなくなるのでは? と考えてしまうほどに。
 しかしバーゲスト達は類まれなる連携を見せることで通路に詰まることはなく、むしろ的確に彩陽に向かってくる様子が見える。これをどう処理するかで今後が決まっていくが……彩陽は無理をせず、ちょっとずつ倒していく方針を固めた。

 彩陽を見つけたバーゲスト達は皆、全身に生えた角で彩陽に向かって近接攻撃を仕掛けてくる。そのどれもが捨て身の攻撃となっており、命中するとバーゲストの前足が骨折するようだ。
 彩陽はこれをうまく躱して急ぎ盾となる者達を呼ばねばと√能力『月御霊・式神戦』を使い、朔月の御霊の式神を召喚。命中の矛先を式神へと変更させ、バーゲスト達を消耗させ続けた。
「――我が名に応えよ。我が命に応えよ。その名に刻まれし使命を果たせ……!」
 それぞれ色々な力を持つが、彩陽はまず頑なに受け続けることを指示。前足が2回骨折するだけでバーゲストは攻撃が不能となるため、まずは身動きが取れない状態を作り出そうとしていた。
 彩陽の作戦はもちろん大成功。バーゲストの攻撃が式神に命中するたびに前足が1回折れ、2回目の骨折ともなれば立つことすらままならず2回の攻撃を終えたバーゲストはその場にうずくまってしまう。

「ケホケホッ、ああ、これでしまいやね。立てんかったら、戦えんやろ?」
 気づけば彩陽の目の前にはうずくまるバーゲストの群ればかり。攻撃してくるバーゲストがいなくなった頃を見計らい、彼は式神に攻撃命令を下す。
 数が多くとも、身動きが取れなければそれまでなのだと告げるかのように、式神はバーゲストの群れを蹴散らして道を作り出していくのだった。

アリア・ビエント

●大量にいても関係ない
「アタシ以上に頭のおかしい奴がいるようだねえ……」
 バーゲストが大量に押し寄せる現場に辿り着いたアリア。他の能力者達が広げたエリア内にちょっぴり笑いながらも、まあ、この後は活用させてもらえばいいかと呟いた。
 反対に、バーゲスト達はとにかく敵を貪り喰らいたいという姿勢を見せる。ダンジョンに到達した者、√能力者達を喰らいこのダンジョンの攻略を阻止するようにと告げられているのだろう。容赦なく彼らはアリアに向かって走り出した。

 赤く輝く目。全身から映えた角。鋭い爪を備えた脚が迫る。食べて、貫いて、蹂躙したいと高く高く吠えて、アリアの全てを奪い取ろうと走り続けている。
 冒険者の勘を頼りにバーゲストの攻撃を避け続け、反撃のタイミングを伺うアリア。凄まじい猛攻を紙一重で躱し続けながらタイミングを見計らい、バーゲスト達の一瞬の動きが緩んだ瞬間を見つけた。
「っと、意外とすばしっこいね!! ――エンチャントトリニティ、夢幻泡影!!」
 √能力『夢幻泡影』を使い、自分を起点としてエリア内に無数の錬成刃を生み出していく。威力を100分の1に下げられたとは言え、数多の刃が300回も攻撃すればいくらかのバーゲストは無惨にも消えゆく運命だ。

 1つ、また1つ、集まっていたバーゲストの命が消えていく。√能力者を止めろと言われていたのに、止められることが出来ずに切り裂かれてしまう。
 それをどうにか避けようにも、アリアの近くに入れば無数の刃が飛び交って止まらない。たとえ回避しようにも、着弾地点で爆ぜてしまって肉体が吹き飛ばされ、壁に叩きつけられてしまって止められない。
「んー、もうちょっと先に進んでみるか」
 ダンジョンの攻略。それが終わるまでは、永遠にこの場所は残り続け、バーゲスト達が奥から現れ続けて√EDENの世界を侵食していく。

 それなら冒険者として、このダンジョンを攻略する。
 たとえ敵がたくさん出てきたとしても。

魔花伏木・斑猫

●何度狩っても怖いもんは怖い。
「ひいぃーーー!!?? 怖ぁ!! 寄らば喰いますって顔してるうううぅぅぅ!!!」
 悲鳴を上げながらダンジョンを走り、バーゲストの群れから逃げ続けるのは魔花伏木・斑猫(ネコソギスクラッパー・h00651)。何度か戦ったことのある相手ではあるのだが、それはそれでこれはこれ。怖いもんはいつ見たって、何度出会ったって怖い。逃げたくなるのも仕方がない。
 けれど、今回出会った場所は運が良かった。なにせ大量の罠が仕掛けられていたダンジョン、大半は既に他の能力者達が壊しているが、まだ現存する罠も残っているじゃないかと歓喜していた。

 どこにどんな罠があるか、それは斑猫にはわからないが……少なくとも『自分に利益のある罠』がないことは星詠みから聞いているため把握している。
 そのため斑猫はまずダンジョン内を走り回って、罠の配置と構造を把握。自分とバーゲストが入れて、まだ罠が発動していないフロアを見つけた後に牽制射撃でバーゲストを刺激。自分が襲われる形を作り出した。
 バーゲストは斑猫の狙いに気づいていない。穢らわしい牙で喰らいつき、その肉を骨から引き剥がしてやろうかと考えている程度で、それ以外の考えはまったくない。とにかく目の前にいる獲物にさえ喰らいつければ価値なのだ。
「残念ながら……私は食べられるわけにはいかないのですううぅ!!」
 泣き叫ぶ斑猫の声と同時に、地面を踏みしめたバーゲストの足元でバリバリと電撃が迸る音が響く。隠されていた痺れ罠が発動し、一部のバーゲスト達が連鎖して巻き込まれ肉体の組織が焼き尽くされたのだ。
 おかげでバーゲスト達は電撃が連鎖して次々に倒れ、肉体に痺れが生じて動けなくなってしまう。目の前に獲物がいても、脳からの信号を肉体が受け付けられない!

「ごっ、ごご、ごめんなさぁああい!」
 バーゲストが痺れ罠で弱ったところを√能力『ズタズタチェーンソー』で刻み、解体する斑猫。
 まさしくそこにいるのは、根こそぎ解体していくスクラッパーの姿だったとさ。

ウィズ・ザー

●狩りは『食』のために。
「クカカ、こりゃ良い。食い放題のバイキングってェことだなァ♪」
 新たにダンジョンを訪れた√能力者ウィズ・ザー(闇蜥蜴・h01379)は近づいてくるバーゲストの群れに歯を見せて笑う。
 目の前に溢れているのはダンジョンを形成するうえで必要となるモンスター。ただし、相手もまた血に飢えており、新たに現れた|獲物《ウィズ》に歓喜の咆哮を上げた。
「おうおう、お前らも腹減ったって顔してんなァ」
 からからと笑いながら、ウィズはそのままダンジョンの中を歩いていく。無防備なその姿はまさに『食べてください』と言わんばかりの姿で、バーゲストがそれを見逃すはずもなかった。

 歩いているだけ。ただ歩いているだけの人間。白と黒の姿は味気なさそうだけど、歩いているだけなら食べるのはとても簡単。開いた口をそのまま相手に被せて、口を閉じるだけでいい。ただそれだけ。
 なのに何故か、|食べられない《・・・・・・》。そこにいる|獲物《ウィズ》はただひたすらに歩いているだけなのに、口で被せようとすると変なものが飛んできて、身体が飛んでしまう。
「やれやれ、品のない食べ方しやがってよォ」
 吹き飛ぶ理由。その正体はウィズの√能力『|星脈精霊術【梟刃】《ポゼス・アトラス》』。彼に近づいて攻撃しようとした対象はかつての自分の一部でもある闇顎の射程まで飛んで、先手の一撃を与えていたのだ。
 噛みつかれようものなら口内から内蔵を破壊するように。下段から飛びつかれればすれ違いざまに。どんな攻撃でもウィズはきっちりと対処してバーゲストを蹴散らして、その死骸を影で喰らって吸収した。

 やがてダンジョンを歩いて、食べてを繰り返した後。そろそろ飽きてきたと言わんばかりに、大きな一撃をバーゲスト達に叩き込みダンジョンの後片付けをしていく。
「ダンジョンの風景が変わらないとあんまり面白くねェなァ。まあでも、こんなモンかね」
 全部片付いたかなと周りを見渡して、そろそろ次に行こうかと歩を進めたウィズ。

 彼が歩いた道の後ろには、一切の死骸は見当たらず。
 |綺麗な道が残されていた《・・・・・・・・・・・》。

第3章 ボス戦 『堕落騎士『ロード・マグナス』』



 ダンジョンの罠は攻略され。
 大量に投入したバーゲスト達は倒れ。
 残るはこのダンジョンを作り、広げようとした元凶……堕落騎士『ロード・マグナス』のみ。
 √EDENの地にダンジョンを作り、人々をモンスター化させることで侵略を試みようとしたのもつかの間のこと。同じく√を見ることが出来る能力者達の存在によって、計画が止められようとしている。

 この√には素晴らしい素材が溢れている。
 この√には大量の素体が集まっている。
 この√には最高の材料が育っている。
 そんな素晴らしい宝を、そんな素晴らしい逸材を、ここで逃してなるものか。

 ロード・マグナスは剣を抜く。
 己が成し遂げたいことを、完全に成し遂げるまでは。
 断固として|この場所《√EDEN》から離れることはないのだ。

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 プレイング受付:1/11 8:31~
 受付開始前のプレイングは一度お返しさせていただきます。

 ボス敵『堕落騎士『ロード・マグナス』』が現れました。
 依然変わらずダンジョン内での戦いとなります。

 内部にはもう少しだけ、罠(中身自由)が残ったままです。
 ご利用の際にはプレイングへの記載をお願いします。

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魔花伏木・斑猫

●誰だって怒るよ
「と、遠目に見ても圧が強すぎますあの鎧の人ぉ……!」
 堕落騎士『ロード・マグナス』に見つからないように、斑猫はこそこそと遠目からロード・マグナスを見て恐怖する。あまりの威圧感にぷるぷると身体が震えて止まらないのだが、今はそんな事を言っている暇はない。
 ここで彼を止めなければ√EDENの世界のダンジョンは広がり続け、人々がモンスターとなってしまう。そしてその後に起こることを考えると……そっちのほうが恐怖でしかない。
 ならば、今ここで知識と能力を持って立ち向かい、その恐怖のもととなる存在を倒さなくては。

「確か、まだ……」
 ふと斑猫は思い出す。このあたりにまだ、罠が残されていたはず……と辺りを見渡して、付けておいた印を見つける。一度起動してもまだ起動できるタイプの罠だったため、斑猫はいざというときのために印を残しておいたのだ。
 ならばあとはどうやってロード・マグナスを動かすか。それを考えようとしたその時にはもう斑猫は多機能式改造型ライフルを構えて牽制射撃を使い、ロード・マグナスを誘導する準備を整えていた。
「そう、こっち! こっちに来てください!」
 撃って、逃げて、撃って、逃げて。常に一定の距離を保ちつつ、相手の詠唱を止めていく斑猫。ロード・マグナスが止まって詠唱を唱えると、何かやばいことが起こりそうな予感をビンビンに感じ取っていたので率先して攻撃を止めていく。
 それが功を奏したのか、ロード・マグナスは詠唱を止められる毎に怒りを感じているようで、撃たれる度に斑猫へと近づいて、彼女を捕まえようとしていた。
「ざ、残念ですけど……そこは」
 斑猫が何かを言おうとした瞬間、カチリ、と音が鳴る。
 それと同時にロード・マグナスの足元――もとい床が迫り上がると、彼の重心を崩して倒す。
 いかに強いと言えども、人の形をしているならば片足だけが持ち上げられれば体勢は崩れ、倒れてしまう。なんとも無様な姿を見せていた。

「あとは、これを……!」
 √能力『|蛍飮火狩《ホタルノヒカリ》』を使い、ロード・マグナスに爆炎によるダメージを叩き込んだ斑猫。
 体勢崩しからの追撃に怒り心頭のロード・マグナスの姿が、そこにはあったとさ。

ウィズ・ザー

●騎士に教えを請う
「はっ、残念だったなァ?」
 歪に笑みを浮かべ、堕落騎士『ロード・マグナス』の近くへと近づいたウィズ。先ほど大量のバーゲストを倒して大量の食事を摂ったというのにもかかわらず、大したことはないと言った様子で彼は歩いていた。
 同情心もなく、喰らったモノの重さすら感じることなく、その足取りはロード・マグナスですら理由を考えることを拒んでしまうほどに軽く、戦った後とは感じさせることはない。
 ――この男は、|危険《・・》だ。
 ロード・マグナスの脳裏に浮かんだその言葉は、瞬時にウィズとの距離を詰めて攻撃を放とうと向かってくる。その巨体から繰り出される刃の一撃は強い衝撃波を作り出し、ダンジョン全体を響かせる。

「あらよっと!」
 黒縄を使い、ロード・マグナスの振り下ろされた直後の刃を絡め取ったウィズ。黒蜥蜴の身体の一部を使用しているため、その縄が千切れることはまずない。
 だが問題は次だ。ロード・マグナスは自身の受けた武器を複製する力を持ち、偽りの聖剣として創造する。黒縄の千切れない力をその身に宿した聖剣は2つ目の武器として君臨する。
「おおう、危ねェ危ねェ。√能力を使ってたら、それも|複製《コピー》されてたってことかァ」
 喉の奥で笑いながらも、ウィズは頑なに√能力を使うことはなくロード・マグナスと対峙した。こうすることで相手の複製能力を武器の攻撃のみに縛り、自身の√能力をコピーされることなくロード・マグナスとの一騎打ちに持ち込めるからだ。

「戦闘一手、ご教示願おうか!!」
 √能力を使用することなく、虚無の精霊に呼びかけ無数の刃で攻撃を繰り出すウィズ。
 ロード・マグナスはそれを剣で凌ぎ、耐え、時にはマントを翻して刃を掻い潜っていく。
 だがその数は100をも超える刃。1つ凌いだところで2つはロード・マグナスに直撃し、2つ凌いだところで3つは鎧の隙間に入り込む。
 無数の刃を受けてもなお、反撃の意志を見せるロード・マグナス。まだまだその体力は充分に有り余っているようで。
「……強いねェ、お前さん」

 こんな強いのをどう食べてやろうか。
 ウィズの思考は、少しずつ影で染まっていく。

朔月・彩陽

●騎士は神のお膝元に
「……ケホ。堕ちたりし騎士様、どうもお待たせしました……と」
 堕落騎士『ロード・マグナス』を前に、咳き込みながらも捉えどころのない様子を見せている彩陽。既に他の√能力者達が痛手を与えているとは言え、ダンジョンが消え去っていない以上まだまだ攻撃を続ける必要があるわけで。
 待つ、待たないは関係ない。さっさと倒して√EDENに出来てしまったダンジョンを消し去って、元のとおりに戻すだけだ。
「――その力を御身に。古龍よ、その力を我に貸し給え……ってな」
 √能力『古龍降臨』を利用し、太古の神霊『古龍』をその身に纏った彩陽。瞬時に移動できる速度を手に入れると、素早くロード・マグナスとの距離を詰めて近距離戦に持ち込む。
 予想外の彩陽の動きに一瞬混乱してしまったロード・マグナス。それもそのはずだ、彼は√能力者の動きをダンジョン内部の罠を利用して判別し、その対策を考えていたのだから。

「だーれも、接近戦はでけへん言うてへんよ?」
 まるでロード・マグナスの焦りに何かの言葉を見出したかのように声をかけた彩陽。ロード・マグナスの焦りの気持ちだけでその意味を汲み取ったのだろう、霊剣術・古龍閃を放ちロード・マグナスの鎧を砕くほどの一撃を与える。
 その一撃はほぼすべての装甲を貫通する、普段の攻撃の倍の威力を誇る一撃。例え鋼鉄の鎧で肉体に届かないとしても、彩陽の一撃の前には成すすべもなく肉体へ大きな衝撃が迸るのだ。
 とはいえロード・マグナスにも意地はある。どうにかその場を動かずして3秒詠唱し、呪いの炎を作り出して彩陽への反撃を行い始めた。どうにかしてでも、彩陽だけでも打ち倒そうとして……。

「……叩き割ったらぁよ。その鎧も、炎も、全部」
 その一撃を最後に、ロード・マグナスは神霊の前に膝をついた。

アリア・ビエント

●速く、疾く。
「時間をかけるほど厄介みたいだね……速攻をかけないとまずいか」
 堕落騎士ロード・マグナスを一目みただけでその強さを把握してしまったアリア。√能力『疾風の刃』を用いて移動速度を上げ、ロード・マグナスに攻撃する時間を与えないようにすることにした。
 ロード・マグナスの詠唱時間は3秒。その時間を過ぎれば彼から呪いの炎が創造され、1回分の攻撃としてアリアに向けて射出され、詠唱を繰り返す毎に周囲が炎に包まれる。
 強力無比の一撃。しかしそんな一撃にもしっかりとした弱点が残されている。アリアはそれを見逃すことなく、疾さを求めて攻撃の一歩を踏み出す。
「そこだ!」
 アリアの刺突――フィロビエントがロード・マグナスに入る。その刺突を避けようとロード・マグナスはその場から一歩動いたのだが、それが仇となってしまった。
 呪いの炎は確かに強力だ。しかし、だからこそ制限がついている。ロード・マグナスが一歩動くだけで、呼び出した呪いの炎が全て消えてしまうという制限が。

 アリアの攻撃を回避するために動いてしまった故に、辺りに散らばった呪いの炎は全て消え去る。燃えていたものも、これから呼ぼうとしていたものも、全て。
 もう一度呪いの炎を作り出せばよい、というのは一般的な考えだろう。だがその考えを一瞬にしてかき消すように、アリアは間髪入れず刺突を繰り出してロード・マグナスを穿つ。
 彼女が風を纏っている間の攻撃は、どんな鎧でも突けば穴が開いて中身に突き刺さる。分厚い鎧でも、魔力の鎧でも、彼女が荒れ狂う疾風を纏えばどんな装甲も紙きれ同然となるのだ。

「――さあ、行くよ。アタシの速さについて来れるかい?」
 どんどん加速する。どんどん装甲を貫く。たったそれだけでアリアの真価は発揮され、ダンジョンが攻略されていく。

 ダンジョンクリア。それが冒険者にとっての最高のご褒美となるのだ。



●平穏
 ロード・マグナスは討伐された。
 それと同時に、ダンジョンは少しずつ崩落していく。
 これは√EDENに作られた、一般人には見えないダンジョン。故にその形は瓦礫となって崩れ落ちるのではなく、闇の中へと落ちる形で消えていくのだ。

 ほどなくして、その形は完全に姿を消した。
 そこに『ダンジョンがあった』などという事実は何処にもなかったかのように。

 今日もまた、√EDENの日常は続いていく……。

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