鶏肉だぁ? 兎を食べなさい! いいや、ラムだね!
●|知らんがな……《めいわく》
素敵な夜にしんしんと降る雪を眺め、電飾で飾られた街並みは何故かワクワクする。
キラキラ、電飾が瞬いていつもより明るく……ん?
「|鶏肉《チキン》なんて贅沢だ!! いにしえから兎の数え方は羽なんだから!! つまり、兎を食べなさい!!」
こんなクソ寒い季節なのに、薄着で露出度が高い兎耳付けた……いや、アレは本物だ。
「いいや、ラムだね。|鶏肉《チキン》だの|兎《けだま》なんて食べられるまで待てないね」
第三の選択が増えて|√EDEN《チキン派》、|兎派《自称鳥》、|ラム《仔羊》の三つ巴に。
布教という名の√EDEN侵攻が今、戦闘機械群ウォーゾーンの軍団によって始まろうとしていた。
多分。
「えっ、と……あの……資源奪う為に侵攻してきたのでは?」
部下のメイド達が困惑した表情で兎派とラム派のボスを交互に見つめた。
「兎の獣人のクセに毛皮はないのか! 毛皮は!」
「はぁ? そんなに着込んだら動けないじゃない! のろのろ亀以下でただの動かないマトじゃない!」
言い争っている声が街に響き、気が付けばカップルの痴話喧嘩に雰囲気壊された! て、表情でそそくさと足早に人々はその場から離れていったのであった。
●急げー!
「……はわわー!」
と、悲鳴に近い声を上げるダミア・アレフェド(蒼海の人魚・h04434)。
「星詠みで、√EDENに戦闘機械群ウォーゾーンの軍団が侵攻してくるの予知しましたよ! 兎の獣人が鬼気迫った表情で侵攻してきますので、皆さんは阻止に向かって下さい。あ、クリスマスという事で侵攻阻止完了しましたらチキン料理を用意して待ってますよ〜」
と、言ってダミアはアナタを見送った。
第1章 ボス戦 『『脱獄囚三十三号』宇佐美・皆乃』

●チキンじゃなくて、兎食え!
「√EDENのみなさーん! クリスマスにはチキンなんて野暮な事はせずに兎を食べてね!」
そんな声がクリスマスムードの街に響き渡る。
「違う! クリスマスといえばラムだろ! 打ち合わせと違うじゃないか!」
「え〜そんな事は言ってませんよ? チキンを奪って我々の派に染めて、ついでに資源も奪っちゃう〜て話だよね?」
くるくる、と手の中でナイフを回しながら宇佐美・皆乃は睨んだ。
「ええい、ジビエとやらが流行っているんだ! どっちらかに染まるハズだ!」
「はぁ!? ラムなんて簡単に手に入るから希少種な兎に決まっているでしょ!」
侵攻しに来たハズの宇佐美・皆乃と白いマントの男と言い争っている。
「よし! ならば戦争だ! 我々ラム派、オマエの兎派、そして√EDENのチキン派に分かれてな!」
こうして、侵攻は開始されたのであった。
鮭派でも、シチュー派でも、自分の好きな料理で兎派を倒すついでにラム派にも言葉で戦えば白い男は落ち込んで豆腐ハートで弱体化するぞ!
あと、メイド派とラム派も選べるハズ……白い男が泣いて帰らなければ!
●牛派
「アタシはビーフステーキが好きなの! せっかくのお祝いを無茶苦茶にして、絶対許さないから!」
と、|青空《あおぞら》・レミーファ(ややこしい子・h00871)が声を上げた。
「チキンはありきたり過ぎるし、兎なんて食べた事ないから!」
「ならば今から兎のたべn……キャーッ!」
レミーファは宇佐美・皆乃の言葉なんて一切聞かずに、BMXに乗って跳躍すると顔面に拳をめり込ませた。
「アタシはご飯の前に呼び出し食らって、イライラしているんだから! 誰が何を食おうと好きにしなさい。でも他人の食事を邪魔するのはやめい!!」
そう、今は19時ッ!
本来ならば鉄板で焼かれたビーフステーキに特製ソースを掛けて、じゅわぁーと音を立ててナイフでスッと切れる程に柔らかい部位の牛肉。
はふはふしつつも口に入れ、口の中が幸せ肉汁に満たされている予定だったのに!
レミーファは胃はビーフステーキを求めて鳴り響き、口の中から涎が溢れて思わず垂らしてしまう。
「だ、だったら――」
「問答無用!」
BMXを漕ぎ、再び跳躍する。
宇佐美・皆乃が√能力を使うも立ったクソデカビーフステーキなのに、なのに……ウサミミだけが生えている。
「そんなのに騙されないわよーっ!」
ドッカーン!
レミーファ視点では、生ビーフステーキの姿をした宇佐美・皆乃は吹き飛ばされるとツリーのてっぺんで星の形をした肉の塊として鎮座する。
「さて、アタシも帰ってご飯にしよう」
自宅の冷蔵庫で待っている愛しのビーフステーキの為にレミーファは。足取り軽やかにイルミネーションでキラキラと彩られた街道をBMXで駆け抜けて行ったのであった。
●え? |本気?《マジ》
プレジデントはPR会社『オリュンポス』のCEOであるプレジデント・クロノス(PR会社オリュンポスの最高経営責任者・h01907)は、社員達の為にとこの時期だけに販売されているクリスマスディナーのチキンを買い来ていた。
クリスマスツリーから宇佐美・皆乃が降りてきて、浮いている白い男は鼻で笑う。
「何で兎はダメなのよ!」
「北海道という地ではラムが人気だと聞くからな!」
と、二人の会話が聞こえる。
「(最近、世の中に様々な|芸人《√能力者》……いや、キャストが増えたという話は本当だったか。
我が社もこのビックウェーブに乗り、スカウトの機を失してはならんな!)」
『違う、そうじゃない』と言いたくても、言う人は今は彼の周りにはいない。
ツッコミ不在のまま、クロノスは木を登りスーツをビシッと整えた。
「ラム派に兎派、大いに結構!」
と、クロノスが声高らかに言った。
「「じゃぁ! どっちだ!」」
宇佐美・皆乃と白い男は声をハモらせながら叫ぶと、クロノスは軽く咳払いをして深呼吸をする。
「しかし、万民に届かなければ布教活動意味はない!
この私もターキーに涙を呑んでチキンにしているのだ」
チキンなバーレルの引き換え券を懐から出して一瞥し、クロノスは名刺ケースから名刺を取り出す。
「だが、そんな君たちの個性にも輝ける場所があるぞ?」
両手で名刺を持ち、ズイッと宇佐美・皆乃と白い男に差し出した。
「ぐっ……」
「ご丁寧にどうも」
宇佐美・皆乃はたじろぐものの、白い男は素直に名刺を受け取った。
白い男は礼儀正しい、それだけである!
あれ? 彼らは何で侵攻してきたんだったけ??
●同類?
「そうとも!!!! ウサギだよ、ウサギ!!
キミは良い耳をしているねぇ。見る目があるよ。
ジビエなんてクソくらえだ! この世はウサギが支配するに限る。
今なんの話?」
名刺交換? をしている男どもを無視して、|梅枝・襠《うめがえ まち》(|弥生兎《ヘイヤ》・h02339)が早口で右腕をぶんぶん上下に振りながら言う。
ハッとした表情になると首を傾げながら呟いた。
「同じ兎という事だけは分かったわ……」
宇佐美・皆乃はげんなりした表情で呟くと、襠はポンと手を叩くと理解した! と言わんばかりにキリッとした顔になる。
「わかった、わかった。つまるところ……お茶をかけて食べるならどちらが良いかだね?」
「うん???」
「それはもちろん、ネズミだよ」
困惑している宇佐美・皆乃の鼻先へ某名探偵バリに人差し指を向け、『決まったな』と言わんばかりのキメ顔であった。
「お茶っ葉の代わりにジャブジャブすると良い。わかるね? ネズミが正解だ」
「あの……兎のはn」
宇佐美・皆乃が話の軌道を戻そうと口を開くが――
襠の打出の小槌で殴られる! 何故!?
「今なんの話? イカれたうさぎの話! だれの話?
そんなわけで、君たちは偽ウサギだ!
だいたいウサギなのに耳が四つある! 裏切り者だ!
ネズミを食え!」
もう無茶苦茶だよ……襠の掌ドリルというより、もう縦にも横にもぎゅるんぎゅるん回って二転、三転と言葉が変わって誰にも理解出来ない。
いや、理解するのを本能で拒絶するレベルだ。
兎にも角にも宇佐美・皆乃の口にネズミをぶち込んだ襠は、興味を失ったかの様にふらふらと何処かへ消えていったのであった。
●メインはケーキだるぉ!?
「……ないんか? ケーキは、ないんか……!?」
|七星・流《ななほし ながれ》(√EDENの流れ星・h01377)が心の叫びを口にする。
「チキンも兎もラム? も美味しいんやったら全部食えば良いと思うけど……それはそれとしてケーキは!? ケーキの無いクリスマスなんてイチゴが乗ってへんショートケーキやん!」
と、頭を抱えながら魂の叫び声を上げた。
「甘いのは胃がーなんて草臥れて夢を失った大人みたいな事言わんよな!? 特にそこの白い人!!」
「え、えぇ……」
流は何故か白い男を指すと、彼は困惑の声を上げた。
「あの……その~兎か|ラム《子羊》の話をですねぇ」
「邪魔せんといてや! 今はそこの白い人に言っているんや!」
宇佐美・皆乃が現状を伝えようとするが――流には譲れないモノがある。
クリスマスの主役はケーキやろ!
「俺の√能力を喰らえやぁぁぁ!!!」
「ひぃ~ん!」
|怪異(以外も纏めて)殺し《フランケンシュタイナー》でぼっこぼこにされてしまう宇佐美・皆乃は、『私、なんで侵攻しに来たんだろう?』と疑問を持つほどにボロボロにされてしまった。
「そういや前に習った歌に兎美味しいって歌詞あったっけ……ちょい噛んで良い?」
流はふ、と疑問に思った事を口にすると宇佐美・皆乃へ視線を向けた。
「それは! “追いし”よ!」
「な、なんやてー!?」
宇佐美・皆乃のツッコミが入り、流は驚きの声を上げた。
おあとがよろしいようで……完!
●|お ま え も か《シ ャ ケ 派》
「チキンもビーフも勿論好き、兎とラムは……興味はある、けれど」
と、イスト・エーベルヴァイン(気ままに歩き続ける|孤独な放浪者《ローンワンダラー》・h04696)は呟きながら|武器《マルチツールガン》を手にする。
「ん?」
「へっ?」
素っ頓狂な声を上げる兎と白い人。
「折角の雰囲気を、私のアツアツのピザタイムを、何より皆とのパーティの邪魔をしたキミ達は許されない」
|光線銃《マルチツールガン》でこれでもか! て位に乱射しながら怒りを表す様に炎属性の刀身を錬成された詠唱錬成剣で切り付ける。
「何より、こんな事をする位ならみんなに兎とラムの良さを伝えられるように努力するべきだと思う」
ジュッ、と宇佐美・皆乃が焼けるニオイが焼き鳥みたいでちょっと美味しそうだと思ってしまう。
白い人は燃えるマントを消火する為に真冬の噴水へダイブ。
「もう、やーだー!!」
焼き兎にされてしまった宇佐美・皆乃は、兎派の布教なんて1ミリも出来ないまま倒されてしまった。
白い人は……噴水に水死体の様に浮かんでいるのを一瞥してイストは踵を返した。
「……ああそうだ、みんなへのお詫びにシャケでも買って帰ろうか」
と、呟いてその場を後にし、スーパーへと向かうのであった。
第2章 ボス戦 『統率官『ゼーロット』』

●兎派は敗れた、つまりラム派が優勢ではないのか?
「さて、兎派は消えた――つまり、√EDENでの諸君とラム派の|我々《ゼーロット独り》との一騎打ちとなったワケだ」
と、統率官『ゼーロット』は腕を組み、『はーはっはっはーっ!』と笑い声を上げながら言った。
「さぁ、決着を付けようではないか!」
統率官『ゼーロット』がアナタ達の前に立ちはだかる!
アナタは確信する――あ、コイツ弱いわ。
お正月ムード直前!
今、不毛な最後の戦いが始まるのであった――……
●|焼き?《オーブン》 |揚げ?《フライ》
思想の違いで兎派は爆ぜてしまい、ゼーロットのラム派が仁王立ちで演説という名の洗脳を始めようとする――
だが!
「どうかね? 君のその|調理器具《マルチプライクラフターの新兵装》で、揚げてみようではないか?」
プレジデント・クロノス(PR会社オリュンポスの最高経営責任者・h01907)が腕を組んだまま提案する。
「どういう事かね?」
「つまり――|唐揚げ《チキンフライ》あらず、|子羊揚げ《ラムフライ》を作り、チキン派を取り入れるのはどうかね?」
と、ブレジデントが落ち着いた声色で進言する。
敵に塩ではなく、エビで鯛を釣ってそれを美味しくいただくだけの作戦だ。
「指示を出す立場足る者、自分の意志を訴えるならば、相手に配慮したフリもしなければならんぞ?」
「それもそうだな!」
そう――プレジデントの|言葉《エビ》にホイホイと納得する|ゼーロット《鯛》は、指示通りにフライヤーを『マルチプライクラフター』で作り出す。
「しかし、ラム肉がな――」
「準備はしてある」
ゼーロットはラム肉を持ち合わせておらず悩んでいると、通販番組否、数分で終わる料理番組の如く後は揚げるダケのラム肉がジッパーが付いた袋に入っていた。
流石、社長。
ゼーロットがナントカ院みたいな表情で受け取ると、フライヤーへラム肉を美しく、無駄のない動きで入れ――
「メ、メェ……」
愛らしい野良羊のふわ・もこ(ふわふわもこもこ・h00231)が寒さ――否、揚げられそうになっている|子羊《ラム》を見て震えている。
つぶらな瞳からダイヤモンドの様な涙がぽとり、と雪の上に音も無く落ちる。
「|羊《マトン》はお呼びでないんじゃーっ!」
「(食べないでください、おねがい、食べないでください)」
「|羊《こいつ》脳内に――ッ!?」
きゅる~んとした瞳で潤ませながらもこはゼーロットを見詰めた。
「ぐっ! いいや! 我慢出来ないね!」
「なんと無慈悲な」
プレジデントの棒読みなのは気にせずにゼーロットは、手にしているラム肉をフライヤーへぶち込む!
「メェ~――ッ!」
もこの悲しげな鳴き声が聖夜の澄んだ空に響いた。
バチッ
「おや?」
「メェ?」
プレジデントともこは異変に気付いて同時に首を傾げた。
「あるぅれぇ!?」
ドーン!
バッコーン!
聖夜の街道で派手に汚い花火が上がった。
「おや、何時の間に」
「メェ~……(低重音)」
プレジデントが見上げた先にはでっかいひつじが仁王立ちしていた。
ふ、と横を見たら先程まで居た愛らしいもこは、羊毛を残して消えていた。
「おのれ!! ゼーロットめぇ!!」
アイドルとなれる逸材であったもこが犠牲になった事をプレジデントは、黒焦げになって落ちてきたゼーロットに向かって叫んだ。
あと、でっかいひつじがついでに踏んで煎餅にされたのであった。
●知るかーっ!
「そんな事よりも! 始末書!」
|志藤・遙斗《しどう はると》(普通の警察官・h01920)が叫ぶ。
ラムだの兎だのジンギスカンな戦いで羊が召されて、何故かゼーロットをよいしょして|羊《ラム》唐揚げ作らせた挙句の果てに爆発オチさせている横で書いていた始末書が炭になってしまった不運な男。
「どうして、くれるんですか!!」
「だから、ラムを食え!!」
「こっちは年末だの、年始だの、関係ない職業なんですよ? 事務が休みになるからってクリスマスなんて浮かれている暇もなく、始末書や領収を纏めていりゃ……どうしてくれるんです!! 二時間掛けて書いたのが炭に! 貴方のせいで!」
鬼気迫る表情で遙斗は早口でゼーロットに不満を口にし、煙草を咥えて火を点けた。
「さて、やるか。悪いが【悪】は斬る!」
遙斗は殺戮気体となったタバコの煙を纏い、霊剣術・|朧《オボロ》でスパッとゼーロットの白いマントを斬り落とす。
「ご、ごめんなさぁい!」
黒焦げゼーロットはラム唐揚げを落としながら脱兎の如く何処かへ逃げて行った。
「開いている喫茶店でやり直しましょう……はぁ、二時間……」
スッキリとはしたものの遙斗は、炭になってしまった始末書の書き直しにかなり落ち込みながら喫茶店へと足を向けるのであった。
●違う!!
「話は聞かせてもらったよ!(実はよく聞いてない)」
と、元気に言いながらシアニ・レンツィ(|不完全な竜人《フォルスドラゴン・プロトコル》・h02503)は、ゼーロットの前に立つ。
しかし――
「ラムを称えたま――」
「んん……? ドラゴンじゃない……??? なんだがっくし」
翡翠の様に大きな緑の瞳は落胆の色へ変わり、シアニは腕が伸びるのではないか? と思う程に肩を落とす。
「あっ! 食べ物をそんな風にしちゃダメなんだよ!」
「エッ、アッ、ハイ……ゴメンナサイ……たべ、ます?」
シアニがぷんすこ怒ると、ゼーロットは先程の八つ当たりやら因果応報な事を思い出して大人しく頷いた。
「いる!」
かなーり焦げてしまっているが、|モノ《ラム唐揚げ》は沢山あるのでローゼットは恐る恐る差し出す。
「肉だ! 美味いっ! 美味いよ! これ!」
大きな口を開けてラム唐揚げをシアニは頬張り、美味しそうに次々と満腹になるまで食べたのであった。
●嗚呼、羊が
「(な、なんて事を――)」
|色城《しきじょう》・ナツメ(頼と用の狭間の|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h00816)は頭を抱えていた。
そう、彼の目の前で愛らしい|羊《√能力者》が昇天してしまう場面を――
『何か、温かいモン買って来るなー』と言って出かけたら、爆発音と誰かが泣いている声がして向かった。
そうしたら、いい年のしたおっさんがぐったりと横たわる羊を抱えて泣いているではないか!
「ど、どうしたんだ!」
「彼女が、体を張って……ゼーロットを……ずびーっ!」
「な、なんだと!? そのゼーロットを倒してやる! その可愛い羊の敵討ちだ!」
そういってナツメは駆け出した。
以上、回想。
「(あ、あれは――子供にも手を出そうとッ!)」
ローゼットが子供に何かを渡す後ろ姿を見てナツメは駆け出し、霊剣を鞘から引き抜いて振り下ろした。
「ラム派万歳ッ!」
謎の言葉と共にゼーロットは倒された。
「二度と食うな!!」
ナツメはふわーと空へ旅立つインビジブルに向かって叫ぶと、後ろから可愛い羊の鳴き声がする。
振り向くと愛らしい羊は立っており、メェメェ鳴きながらナツメにお辞儀をした。
こうして、ラム派と兎派は倒されて侵攻は阻止されたのであった。
第3章 日常 『チキンの季節に』

●パーティーだー!
鶏肉パーティーだ!
ケーキだってある!
シャケ一尾まるっとある!
鶏肉パーティーとは?
ええい、気にせずにクリスマスを楽しんでね!
●混沌と化した?
「事件に巻き込まれるは、報告書は燃やされるは、散々な目にあいましたが折角ですし、楽しませてもらいましょうかね」
過ぎた事を悔やんでも仕方がない、|温かい部屋《パーティールーム》で|志藤・遙斗《しどう はると》(普通の警察官・h01920)は冷えたビール缶を手にすると開けた。
「食べ物に罪はない。
折角、|彼の勇士《ゼーロット》が、遺した|遺産《揚げ物》を皆で頂かなくてどうする! かんぱーい!」
気付いたら汚い花火上がってて、気付いたらパーティーするだの聞いたプレジデント・クロノス(PR会社オリュンポスの最高経営責任者・h01907)は何故か乾杯の音頭を取ることになっていた。
「唐揚げ、どうぞ~」
「あ、どうも、ありがとうございます」
あと、勝手に配膳している。
ターキーだの、チキンだの、ラムだの、ラビットだの……否、プレジデントはただのCEOなので侵攻なんて知らない。
「は~……アレ、これはよく見かけるスパイスですね。どれが一番ビールに合うか試し放題、ですか」
遙斗は山盛りの唐揚げを見て、明日は胃もたれかなーと思いながら食べていると有名なスパイス全種類があって思わず手が伸びる。
そう!
かけ放題!
マキ○マムとか!
ほりに○とか!
「(あと、ビールも飲み放題……コレはチャラになるのでは??)」
普段はお高くて手が伸びない本物のビールへ視線を向けた。
「これ、クリスマスプレゼント……始末書を灰にされた代償はデカイですが! うまいっ!」
遙斗はスパイスぶっかけたアツアツの唐揚げを頬張り、冷たい本物のビールで胃に流し込む。
「もうこうなったらやけです。報告書は明日頑張ります」
こうして、遙斗のクリスマスは美味しいビールと味変し放題の唐揚げを食べて過ごしたのであった。
一方、|プレジデント《一般人》は――
隅の方でまるでプロデューサーの如く立ち、うんうんと頷きながらほぼチキン料理パーティーの唐揚げを口にする。
オカシイ、本当に此処は|鶏《チキン》派のパーティーだと察する。
※星詠みが用意した、ただの鶏肉メインのクリスマスパーティー会場です。
「やはり、このパーティー……宗教団体の類だったか……」
ハッして、皆に聞こえない位の声で呟くと、そろーりそろりの抜き足、差し足、忍び足で会場からプレジデントは脱出するのであった。
あ、もちろん揚げ物とかターキーはお持ち帰り用を持たされてね!
星詠みにバレているとは知らずに――
ちょっといつもより変わったクリスマスは、鈴の音と共に終わりを告げたのであった。