【バベル建設√ZERO】
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解剖機関に所属する施設で実験が行われていた。
「フィラデルフィアから連絡は?」
「特にない。第48480回目の実験を開始せよ」
この実験で独特なのはその結果と検証方法だった。
毎回異なる方法でチェックし、その方法がどのように駄目だったかを記載している。
「これだけのエネルギーが何処に消えてるんでしょうね?」
「それを突き止める実験だよ。暴走どころか何も反応しなくなったし、何かが起きているんだ。我々はその事を計測した。失敗は成功への架け橋であり、『この方法では駄目だった。次を探そう』と思えるための礎なのだよ。霊が何を語るか……のな」
そこで実験されていたのは『発明王の遺産』、『最後の遺品』である。
研究対象は霊魂の検知と通信。
発明王エジソンの『霊界通信機』の起動実験であった。
「今のところ霊的現象は虚数(i)に近い情報体ではないかと仮定されておる」
「虚数……つまり動いていないのではなく、分かって居ない領域に流れていると?」
研究者の一人が放った言葉を助手は即座に理解した。
解剖機関に所属するエリートであり、霊に関する事を良く知っていた。
「そういう事だ。|我々《・・》では理解できないならば?」
「見えるモノを用意するだけの話だな。『オペレーター』の具合はどうだ?」
これまでの実験が全て間違いだったのではなく、足りなかったと判断した。そこで研究者たちが用意した回答がある。
それは霊的現象を理解する存在を用いること。
「ワタシ、……メリィ? 誰、私は誰? もしもし? もしもし? わた、わたしし、だれれれれ?」
オペレーターに選ばれたのは日本で回収された怪異である。その中でも『活性化』と意味するメリィと名前を付けられた人形タイプの存在を使用していた。
「捕獲時と変わってません」
「出力上げてもこれか。こりゃ、今回も実験失敗か……って、誰だ出力こんなに上げたの!?」
助手はエネルギー出力を見てため息を吐いた。
だが、暫くしてその数値が以上であることに気が付いたのだ。
「これ、喰われてません? ヤバッ! 施設の電力全部持ってかれますよ!」
忠告とも悲鳴ともつかぬ言葉が放たれた。
研究初期では施設を燃やしたこともある実験だ。暴走する危険はあり得るだろう。
『申す申す。妾を喚ぶ声は誰ぞ?』
「霊界通信機起動しています!? 通信先は……いや、これは霊界……じゃない、古代か!?」
突如響いた声に計器類を見返した。
すると場所を示す数値は動いておらず、計測時間にマイナスが掛かっていた。
『なんじゃ、名乗らんのか。はぁ、何千年経っても礼節を守れぬものよの。仕置を下賜してやろう、有り難く呪われ、悶え、死ね』
霊的存在にはルールがある。
ソレを破る者も居るが、破らない者も居る。
言葉を迂闊に交わすなという術者も居るが、今回は悪例であろう。
返事をしなかった者は体に斑が浮かび、首がへし折られ、あるいは窒息する。
『やれやれ。この場で返事をしたのが形代のみとは。随分と戯けておる』
呼び出されたナニカは即座に行動を終えていた。
霊的時間軸の問題で、返事をしたことになっているメリィのみが生き残った。
『妾をもてなす禰宜も居らぬでは退屈もしのげぬではないか。まあ良い。巫代わりの祭具はある。暫し戯れようぞ』
神々が蔓延っていた時代のナニカが動き出した。
ぐちぐちと呟き、この施設を蹂躙する為に動き出した。
己を呼び出した霊界通信機……とぶらさがっているメリィを浮かべて動き出す。
そして施設からエネルギーを奪い去った事で、拘束を解かれて脱出を始めた別の存在と出逢うのは、そう遠い話ではない。