シナリオ

常夏の絶対水着戦線-奪われた竜漿兵器-

#√ドラゴンファンタジー #武装モンスター軍団

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●絶対水着戦線ティアマト
「此度は、御協力ありがとうございます」
 拠点の会議室にてディラン・ヴァルフリート(|義善者《エンプティ》・h00631)は一礼する。
 |竜漿兵器《ブラッドウェポン》を強奪したモンスター軍団との戦いを予知したのだと彼は告げた。

 戦場となるのは地域有数の港町ティアマト、その近郊に広がる平原。
 冒険王国陥落を目的として進撃する軍勢との戦端が今まさに開かれようとしている。

「ですが……このままでは、人類側の壊滅は確実です」

 ティアマト側が大々的に戦力を招集した事もあり軍勢同士の戦力は辛うじて互角。
 互角では足りないのだ。
 消耗した戦力では軍勢を扇動する簒奪者――ジェヴォーダンには太刀打ちできない。
 仮にジェヴォーダンの存在が無かったとしても、相討ち同然の結果では冒険王国そのものが致命傷を負う事になる。
 そこで|√能力者《あなた》たちの介入が必要になるという事だ。

 ところで、肝心の奪われたという竜漿兵器なのだが。

「…………水着です」

 誤情報ではない。敵の軍勢は全て、竜漿兵器[水着]を装備している。
 大量の水着因子が解放されたこの戦場では主に以下の|法則《ルール》が敷かれる事となる。
 〇戦場の気候を常夏に固定し、水着姿の全員に大幅な強化(具体的にはLv+10扱い)。
 〇水着姿を称える者に強化、貶す者に弱体化。自慢でもOK、敵の誹謗でもアウト。

 なお仮に水着を所持していない場合でも現地で購入・レンタルできる。
 普段通りに戦う事も可能だが、水着を着たり称えたりするほど有利になる事を念頭に置いて損は無いだろう。
 兎も角モンスターの軍勢を退け、指揮を執る簒奪者を討つ事が今回の作戦だ。

「……最後に、もう一点。現地には、腕に覚えのある戦力が多数集結しています」
 国家の存亡を左右する一大決戦だ。水着だが。
 彼等との協力が勝利の鍵になる事もあるかもしれない。
 或いは全国的に動員の掛けられた戦い故に、見知った顔と再会する事もあるだろう。

「……どうか、御武運を」
 最後は言葉少なに見送られ、あなたたちは戦場へと赴く。

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第1章 集団戦 『ボーグル』


●開戦-陽光と潮風-
「「「オオオオオオオオオッ!!」」」

 両軍の雄叫びが大地を揺るがす。
 遮蔽の殆ど存在しない開けた平原では既に激突が始まっていた。
 モンスター側の主力を構成するのは狂える獣人ボーグル。
 その水着姿は意外にもバリエーションに富んでいる。

「中々の着こなしだな。ふっ、自分の持ち味をよく理解していると見える!」
 戦場には不似合いな賞賛が飛んできても油断してはならない。
 この場では――水着を褒める程に強くなるのだから。

※ちなみに水着を破壊する事による強化効果の喪失は不可能。
 敵は何らかの手段で水着と自身の命を連動させ耐久を強化しているようです。
 
石動・悠希

●其は水着と云う名の兵器
「……兵器ってなんだっけって言いたくなるけど
 あの暴れっぷりを踏まえると確かに兵器なのかもしれない」

 燦燦と降り注ぐ日差しの元、水着モンスターと水着人類の激突する戦場を見て石動・悠希(ベルセルクマシンの戦線工兵・h00642)は考える。
 百聞は一見に如かず。
 聞いた情報だけをもとに判断するとトンチキ極まりない気もするが、シンプルに戦闘力の強化度合いだけを見ても水着の力は馬鹿にならなかった。

「仕事の勘を取り戻す、といったらアレだけど。とにかく対応しましょう」
「ほう、スクール水着か! 一定以上の年齢になればアブノーマルと化すが、
 しかしこれはこれでカジュアルにして王道。
 |ソツ《・・》の無い選択なればこそ着用者の地力と合わさる事で――」
(スク水に一家言あるボーグルってなんか嫌だな)

 語りながらも襲い掛かってくる敵の【ポイズンニードル】は強力な√能力だが、乱戦に於いては強敵に使われた際より与しやすい部類と言える。
 危なげなく躱せるだけの実力があってこそだが……多勢が同時に繰り出せば結局は全員が行動阻害の影響を受けるのだ。
 近距離・中距離、間合いに合わせ武器を使い分けながら悠希は解析を進める。

「で、水着を褒めると強化されるんだっけか……うん。ワイルドだ。
 というかめちゃくちゃバリエーション豊かだな。
 しかも水着のデザインに合わせて着こなしも変えてる?」

(誉める判定はだいぶ緩いみたいだ。
 強化幅はまぁまぁ高い……というか2,3回も一方的に褒められたら力差埋まりそう。
 上限は見えないけどペース自体は緩やか?)

 割と雑な誉め言葉でも反応する一方、一度に大量に褒めても強化ペースが跳ね上がるという事も無い。
 早口言葉合戦めいた惨状になる心配は無いと見ていいだろう。
 何より特筆すべき性質としてはこの戦場の特異性と水着の相関関係か。

 まず|竜漿兵器《ブラッドウェポン》としての水着自体が通常の防具と同等の力を秘めているのだ。
 それが一つの戦場へ大量に集う事で共鳴し、互いの力を増幅し合っている。
 原理としては儀式魔術や大規模ネットワークの形成に近い。

(でもなんで水着……?)
 ……鎧や装飾でも同じ事は出来た筈だが。
 回帰した疑問は投げ捨て、忘れず水着を褒めながらマルチクラフトボックスを開く。
 【クラフト・アンド・デストロイ】――手応えは硬い。

「オーダーメイドアレンジか! 凝ってるなまったく!」
「グワーッ!」

 水着を解体すれば敵は爆散して死ぬ。
 生命と連動した水着の耐久性は高く、シンプルに武器攻撃で屠るのとどちらが早いかは状況に依る部分だが……選択肢が増えたと見ればプラスか。
 一体一体微妙に変質した水着を解析しながら、悠希はキルスコアを重ねていく。

和紋・蜚廉

●誇りは炎天に眩く
「殻に刻まれし聲よ、影となりて現れろ」

 朗々と、堂々と聲が響く。
 |魔物《モンスター》と人類が水着を纏いぶつかり合う戦場の只中、和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)も水着を纏う自らの肉体を惜しげなく曝け出す。
 彼の語る【穢語帳】は殻に眠りし聲と影を解き放ち戦場を塗り替える。

「我が語り、いま帳を下ろす──」

 現れたのは陽光の差すボディビル会場だった。
 効果範囲内に於いて敵対者の意識は希薄となり、舞台に立つボーグルは新たに敷かれた法則に倣って順番に各々の水着姿を誇示する。
 中には既に【ボーグルの狩り】で隠密していた者も居るが、実体が消える訳ではない。
 寧ろ隠密の為に称賛が途絶えていた事もあり、隠れていた者ほど深く術中に嵌る。

「筋肉は鋼のごとく隆起し、力強さは水着に映え、
 鍛え上げられた肢体と布の調和は眩いばかりだ」

 傍目には分かり難いが無数のボーグルも一体一体が独立した別個体であり個性がある。
 それを一層引き立てているのがレパートリーに富んだ水着姿だ。
 デザインと着こなしに意識を集中させ、意図を読み、的確な言葉選びで褒め称える。

「その色彩は美しく、布の裁ちも見事で汝らは観衆を熱狂させるに足る」

 これは戦いだ。
 事実、称賛を重ねるたびに自らの水着を通じ力が増していくのを確かに感じる。
 そして……一通りのボーグルのアピールが終わり、主催たる蜚廉の番となった。
 夏の日差しという大自然のスポットライトに照らされポーズを取れば、鍛え抜かれた肉体にオーディエンスから歓声が上がる。

「汝等の称賛は気持ちだけ受け取るとしよう――なれど主役はこの身」

 蜚廉とボーグル達の強化量に最も差が付いた瞬間。
 絶好の機を逃す事無く拳を振るえば、獣人の群れは木っ端の如くに薙ぎ払われる。

「チィッ、なんたる膂力! 力を振るえばこそ完成する肉体美という事か!」
「然り」

 凄まじい破壊力と覇気に我に返ったボーグルは称賛と共に正常な戦意を取り戻す。
 一斉に向かってくる内の一体を掴み取り、武器として振り回せば獣人の強靭な肉体は頑丈な鈍器となった。

「身にまとう肉の|鎧《ドレス》。これほど高価な物もあるまい」

 漲る力は誇張に非ず。
 主役たる証を実力で示し、男は戦場に君臨する。

八木橋・藍依

●獣の本性
「素敵な水着ですね、一枚よろしいでしょうか?」
「あ、はい。私で良ければ!」
「ありがとうございます! ルート前線新聞社もよろしくお願いしますね!」

 死闘を繰り広げる現地戦力の援護がてら、八木橋・藍依(常在戦場カメラマン・h00541)の操るドローンが彼等の水着姿を写真に収める。
 文字通りの戦場にして最前線。
 こんな戦場に水着姿で身を投じているだけあって参戦者の反応も良く、水着特集に使えるデータは順調に数を増やしていた。

「夏の明るさと爽やかさを強調するような水着、見事!」
「それはどうも。そちらの水着もお似合いですよ……っと!」

 襲い掛かる【ポイズンニードル】を躱し、毒棘領域の範囲外まで大きく下がってライフルで反撃。
 水着と言えど竜漿兵器、その防御は鎧にも引けを取らないが……
 同じく水着姿で参戦し称賛を重ねた藍依にも大幅な強化が蓄積されている。
 総体的に敵味方の強化が相殺され戦力バランスは普段に近しいと見ていいか。
 今のところは。

(うっかり「その水着似合ってないよ」とか言わないように注意しなくては……)
 絵面こそ水着だが戦いであり、敵の装備は盗品の類である。
 似合っている個体とそうでない個体も玉石混交、社交辞令レベルの誉め言葉でも強化条件を満たすのは都合が良かった。
 そして、法則をある程度分析できたからこそ取れる策もある。
 √能力者たちの活躍もあり人類側の優勢に傾きつつある戦場、狙いは特に敵の密度が高い一群。

「フェイクニュースから市民を守るのも、我々新聞社の仕事です!」
「ぬぅ……!」

 水着強化と合わさり半径50m近い範囲に【|虚偽情報告発!《フェイクバスター》】が炸裂する。
 景気の良い爆破に続け、藍依自身も飛び込みこれまでのように称賛と交えて追撃を見舞う。

「デザインも然る事ながら装備としての性能も優秀。質実剛健って感じですね!」
「髪の青色にバイザーのオレンジが映えるな!」
「だが平面にも等しい貧相な俎板で俺の心は動かせ――ハッ!?」
「それが良いのだろうが貴様ァ!」
「ボーグルの好みにも色々あるんですねぇ」

 正直病……藍依の告発記事は|偽り《フェイク》を暴き立てる。
 水着姿を貶した個体の動きがあからさまに鈍るのを見ながら抛る爆弾は二種類。
 高威力の殺傷榴弾が群れを薙ぎ払い、発煙手榴弾の煙幕が数の優位を打ち崩す。

「万が一この強化特性を残した個体が逃げ延びては厄介ですからね。
 しっかり撃破していきますよ!」

 元より巻き添えの心配は無い位置取りを狙った攻勢ゆえに遠慮も無い。
 瞬く間に大きく数を減らした好機を逃す事なく、半身たるアサルトライフルの制圧射撃が猛威を振るうのだった。

猫屋敷・レオ

●跳梁の牙
「なんだか季節イベント限定で現れるダンジョンみたいでありますね~」

 季節の魔法なる単語を聞いた事があるような無いような。
 まぁたまにはこんな依頼も楽しいかな、と顔を出したのは猫屋敷・レオ(首喰い千切りウサギ・h00688)だった。
 敵も味方も一様に水着姿。
 冒険王国の存亡を左右する軍勢の水着一つ一つにバリエーションがあり、その光景は壮観と言う他無い。

「よっ、立派な筋肉を引き立てる良い水着でありますね~」
「そう言う貴様の水着姿も――うおでっか……」
「まぁでもやっぱりそれ以上に超すごいのがボクの水着でありますね!」

 乱戦の只中へ飛び込むは9歳の現役小学生という年齢に不釣り合いな2m級のスタイル。
 水着と称賛による強化量は今のところ敵と此方で概ね互角。
 外見の違いこそ有れど感覚的には普段の戦闘と大きくズレる事は無さそうか。

「手練れだな……精々我等の水着姿から目を離さぬ事だ……!」
「ほほーう、【ボーグルの狩り】ってヤツでありますね!」

 獣人たちの√能力は戦闘力低下と引き換えに肉眼以外への完全隠密をもたらす。
 数を活かし取り囲めば誰かしらが知覚不能の攻撃を見舞える狡猾な集団狩猟。
 ……目視を阻害しない点で水着アピールとも相性が良い、と言えるかもしれない。

 ならば如何にして対応するか?
 |目を増やせばいい《・・・・・・・・》。
 レオが辺りに視線を巡らせれば、ちょうど顔見知りの面々が視界に映る。

「おーい、そこのナイス水着なパーテー!」
「うわ、レオちゃん来てたんだ。水着の破壊力すごいね!」
「今うわって言ったでありますか」
「気のせい気のせい。超すごいレオちゃんが居てくれて頼もしいなー!」
「今回も振り回され気味になるんだろうなぁ……」
「拒否権は無い! であります!」

 気心の知れたやり取りは相応の付き合いあってのもの。
 パーティは名の知れた熟練者たちであり、背中を預けるに足るだけの実力がある。

「それでは喰い千切ってやりますので! サポートは任せるでありますよー!」
「了解、テンション上げ過ぎて巻き込まないでよ?」
「にゃっはー! 善処するであります!」

 元気よく応じたウサギの姿が影と化す。
 【神千切・カゲヌイ】――神速の疾走は移動力・戦闘力の低下したボーグルに反応すら許さず、すれ違い様に纏めて獲物を屠る。

「グ、オオッ……!?」
「|影《そんざい》ごと喰い千切れば、どんな装甲も無意味であります!」
「レオちゃん、5時の方向から2体!」
「了解でありますよ!」

 隠密という唯一にして最大の武器を対策されれば後は脆弱性を晒すのみ。
 狩猟者がその隙を見逃す筈も無く……モンスターの群れは瞬く間に駆逐されていく。

クラウス・イーザリー

●雨と雷
「すごく……変な状況だね……」
「なんで水着なんでしょうね……」

 クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)の呟きに頷いたのは何度か戦場を共にした|竜人《ドラゴンプロトコル》の少女。
 この戦場に集った者たちの例に漏れず、二人もまた水着姿だった。
 それが勝利の為に必要ならベストは尽くす。
 尽くすが……大真面目であるが故に禁じ得ない困惑もあるというもので。

 此処からでも海は見えるが若干遠い平原。
 軍勢同士の命懸けの激突と共に飛び交う水着の称賛。

「幻覚を見ているような光景だな……イネス、大丈夫かい?」
「実は気持ち的にあまり大丈夫ではないので……なるべく早く終わらせましょう……!」
「うん、了解だ」
 イネス・エクレールは身の丈ほどもある大剣を振るう狩人だ。
 前線に切り込む彼女をフォローするようにクラウスは後衛を務める。

(水着を褒める事で強化。敵もその恩恵を存分に使ってくるんだったな)
 それまで恥じらうように身を包んでいた上衣が風に靡き、その下から現れるのはセパレートのワンショルダー。
 年相応の可愛らしい色合いと裏腹に大人びたデザインは、気弱な幼い少女であると同時に一人前の戦士でもあるイネスの二面性にも通じるようで。

「似合っているよ。色が綺麗だ」
「あ、ありがとうございます。
 クラウスさんも……スマートさの引き立つ、格好良い水着ですね」
「ほう……戦士の水着だな、機能性重視か。
 内面は外見にも表れると言うが、只者ではない事が伝わってくるぞ」
(このボーグル誉め慣れてるな……)

 人は見た目によらないとも言うが、それにしても|狂える獣人《ボーグル》の流暢さは如何なものか。
 ……我ながら称賛の語彙力が少なすぎる、と内心頭を抱えながらも集中は切らさない。
 肉眼以外の知覚を無効化する【ボーグルの狩り】を見逃さないよう視野を広く保ち、対処すべく手を天に向けて掲げる。

「長引かせるのも良くない――降り注げ」

 クラウスの持つ魔導書は初心者用だが、扱い慣れている。
 数で押し潰そうと包囲を目論む敵群の外側には追い立てるように火球を、接敵する内側には巻き添えを出さないように氷柱を。
 対多数に長けた【虹色の雨】は隠密の代償に弱体化したボーグルの群れを薙ぎ払う。

「えっと、その……モノクロの落ち着いた配色に、
 ブルーのラインが良いアクセントになってると思います……!」
「うん、ありがとう。君も……フリルがお洒落だね」

 イネスも√能力こそ持たないが、群れる類の簒奪者には後れを取らない実力者だ。
 戦闘力の低下した敵など寄せ付けもせず、一太刀で多数を纏めて斬り捨てていく。
 それも敵が隠密の優位を活かせないよう援護するクラウスの立ち回りあってこそだが……目を光らせる分だけボーグルの姿も目に付くというもので。
 敵の装備している|水着《竜漿兵器》は人類側から奪ったものらしいが、体格に合わせた着こなしや水着と直接の関係は無さそうなワンポイントは彼等独自のアレンジだろうか。
 花飾りやチェーンなど豊かなバリエーションには各々の個性も感じられる。
 尤も、体毛に水着が埋もれているような雑な個体も偶に紛れては居るのだが。

「……ボーグルって、意外とお洒落なんだな」
(割とセンスがいい水着を選んでいる奴を見ると何だか悔しい……)

 機会があればファッションの事を学んでみても良いかもしれない。
 そんな事を思ったり思わなかったりする一幕であった。

神咲・七十

●水着と舞台と真昼の流星
「やっぱりそう思います? このいい感じにメイドらしい部分がいいと思うのです」
「兎モチーフの耳と尻尾も良いね。うん、実に僕好みだ!」
「……それはジュリアさんの性癖では?」
「ふっ、相乗効果というものさ」

 ボーグルの称賛を受け、友人とコンセプトを揃え誂えた水着に身を包んだ神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)は機嫌良く長髪を揺らす。
 その傍には以前戦場を共にした竜人の傭兵。
 ドレスを思わせる煌びやかな水着に身を包んだ麗人は今回も相変わらずの様子だった。

「ごほん。……と、言うわけで癒し?をお届けのライブですよ♪」

 水着姿への称賛と共に押し寄せるのは|モンスター化した獣人《ボーグル》の軍勢。
 迎え撃つように【|『フリヴァく』《邪神系アイドル》イン・ステージ】が幕を開ければ、周囲に演奏と歌声が響きだす。
 回復をもたらす『チル・マイ』の旋律――体内に有する異界より隷属者を呼び出し、戦力を増強すると共に七十自身は前線へ踏み込んで。

「肌を大胆に晒しながらも布地が少ないという訳ではなく清潔感に一役買っているな。
 この絶妙なバランス感覚、さぞ腕の良い仕立て屋の作に違いあるまい!」
「それはどうも。あなたの水着も筋肉を引き立てる良いデザインですね」

 誉め言葉を返し、振るう大鎌は普段より軽くも鋭い。
 思いのほか恩恵の大きい水着強化の感覚を馴染ませつつ獲物を斬り裂いていると、後方から次々に魔力の流星が降り注ぐ。

「揺れるウサ耳! 嗚呼、その大きさも半ばで折れたシルエットも実に愛らしいっ!」
「ふにゃ……相変わらず楽しい人ですね。
 ジュリアさんも見た目は高貴な御姫様みたいですよ」
「ありがとう、そう言って貰えると奮発した甲斐もあるというものだね!」

 彼女は√能力を喪失した分、要素ごとに術式を特化させ戦力を補っているのだったか。
 その割には威力も手数も増しているようだが……少し意識を向けて納得する。
 水着を褒める分だけ強くなるという戦場はジュリアと相性が良かったらしい。
 立て板に水の如き饒舌は歌を称賛に使う事で持続的に強化を得ている七十にも引けを取るものではない。
 結果、七十たちの連携は同様に水着強化を受けているボーグルの軍勢を圧倒していく。
 戦いはまだ序盤だが、これならこの後も順調に戦えそうな手応えがある。

「水着って改めて面白い衣装だな~と思いますね」
 それはそうと、モンスターも人間も各々が水着姿という特異な空間。
 視界に入る水着の種類は先日のコンテストにも匹敵するかもしれない。
 一つのカテゴリに此処まで多彩な個性を内包する衣類もそうそう無いだろう。

「色々な姿が見れて楽しいです♪」

 苛烈な戦いと裏腹、夏空へ響く歌声は伸びやかに。

竜宮殿・星乃

●夏空の一番星
 本来は人類側の武器である|竜漿兵器《ブラッドウェポン》を扱うモンスターの大規模侵攻。
 冒険王国の存亡が懸かった決戦には人類側の戦力にも大規模な招集が掛けられた。
 竜宮殿・星乃(或いは駆け出し冒険者ステラ・h06714)もそうして集った一人だ。

「……ぬ、濡れると大変なことになる水着だけど、ここは平原っ。
 水は多くないはずだし、大丈夫よね……?」

 竜漿兵器[水着]の力により防御力は普段の鎧にも引けを取らない。
 とはいえ……純白のモノキニ自体の性質はまた別だった。
 海までの距離はそれなり。雨が降ったり血飛沫を浴びたりしなければ問題は無いか。

「水着とは濡れてもよい衣類の事ではないのか?」
「|批判《Dis》かしら?」
「疑問だ! だが少ない布地ながらも着飾る事を意識したリボンの意匠、良い仕事だ!」
(純粋な疑問だとペナルティには該当しないみたいね……)

 襲い掛かってきたボーグルをディヴァインブレイドで打ち払えば、敵の誉め言葉に対応して重くなる手応え。
 適応あるいは対策、何らかの手を打たねば強化の影響は存外に大きい。
 確か自分の水着姿を自慢する形でも強化の恩恵は受けられるという話だったか。

「私の勇気が彼方へ駆ける風となる――未来示す道標となれ!
 轟嵐竜顕現! ひた疾れ、バーストストリーム・ドラゴン!!」

 謳いあげる【|竜宮殿式・轟嵐竜詠唱《ドラグナーズ・ロンド》】が呼び起こす竜を駆り飛翔。
 大空を舞台に、太陽を照明に、ステラはその水着姿を惜しげなく晒す。

(ほ、本当は恥ずかしいけど……!)
「私が水着を着れば、男性の目は釘付けよ。お日様よりも眩しいんだから!」

 振り撒く色香と共に煽情的なポーズを決め、自らのプロポーションを見せつける。
 効果は覿面だった。
 上空までビリビリと震わせる程の歓声が響き、水着の強化がその総身に力を漲らせる。

 戦場を俯瞰する視点からは敵の陣形もよく見えた。
 狙いを定め竜の背より跳躍、更に嵐を司る轟嵐竜の吐息を纏い更に加速。

「さぁ、纏めて吹き飛ばしてあげる!」
「グオオオオオオッ!?」

 疾風迅雷の飛翔蹴り『ゲイル・スパイク』は流星の如く――
 威力の程は宣言の通りに。

第2章 集団戦 『ブルーワイバーン』


●|竜漿兵器《ブラッドウェポン》・|第二機構解放《セカンドシフト》
 √能力者たちの活躍により、ボーグルとの激突は人類側が明らかな優位に立った。
 軍勢の大部分を占める主力の壊滅を受け、敵は切り札たる精鋭を投入してくる。

「バカな……マローネ・コール!? 奴は死んだ筈だ!」
「あらまぁ|美丈夫《イケメン》……」
「清楚路線の水着ドラゴンストーカーだと!? 僕のデータには無いぞ!?」

 突如として最前線から広がる動揺。
 |√能力者《あなた》がそちらに目を向けたなら……"理想の水着姿"を其処に見るだろう。
 それは水着の見せる幻。
 オーラのように淡く揺らめく影こそ、水着を装備したブルーワイバーンの本体である。

「おーっほっほっほ! 理想の光景を冥途の土産に散るといいですわー!」

 口を開けば偽物である事は明らかだ。その点で惑わされる心配は無い。
 無いが……しかし、外見だけは見る者の理想の水着姿。
 そして実体はブルーワイバーンであるが故の当たり判定のズレ。
 精巧な幻像は敵を普段以上に手強く感じさせるかもしれない。

※という事でこの章の敵は"見る者の理想の水着姿に見える"能力を得ています。
 竜の実体はオーラ状になっているのでよく見れば捉えられる他、
 視覚以外の感知に対しては一切の偽装効果を持ちません。

※水着姿を褒める事による強化やNPCとの共闘などの仕様は第一章と同様です。
 
猫屋敷・レオ

●青く散るは嘘の味
「水着を付けたワイバーン……どういう姿をしているんでありますかね?」
 異能の域に達した猫屋敷・レオ(首喰い千切りウサギ・h00688)の捕食技術は水着の見せる幻さえも喰い千切る。
 どういう姿、と言えば……そのままだった。
 ビキニやワンピースタイプの水着を装着したブルーワイバーンである。
 トップレスの個体も居るのは声から察するに雌雄混成なのだろう。恐らく。

「いやん♡」
「…………」

 幻を看破されている事に気付いたワイバーンの反応には敢えてノーコメント。
 そっと幻の効果を受け直して。

「さっすがボク! 傍から見ても超すごい水着姿であります!」
 レオの目に見えている理想の水着姿は自分自身のものらしい。
 幻ではあるが独立した他者として動く様には、鏡を見るのとはまた違った趣がある。
 とはいえ。

「それじゃ、お前たちも引き続き喰い千切ってやるであります!」
「ピギュッ」

 再び【神千切・カゲヌイ】が猛威を振るう。
 敵自体はあくまでブルーワイバーン、レオの戦闘力に太刀打ちできるものではない。

 速度や器用が倍加したところで影纏う神速の疾走を捉えるには不足。
 耐久を増したところで喰い千切りウサギの牙は竜鱗を貫き首を断つ。
 いわゆる八方塞がりというものだ。
 【スカイ・フラグメント】が如何な能力を覚醒させようと活路など有りはしない。
 短い断末魔を残し本体が墜ちるたび、対応する幻も霞の如く消えていく。

「ああっ、爽やか金髪美少年(の幻)が!?」
「狩り残しの首には目印付けといたからしっかり狙うでありますよー!」
「オーケー、ご丁寧にどうもっ!」

 一度に纏めて喰い千切れる数には限りがあるが、ついでに霊力で目印を付けるだけならカバーできる数は更に増える。
 更には切り札たる√能力も、圧倒的機動力で群れをズタズタにされる事で乱れた連携の立て直しには寄与しない。
 隙を見せた獲物は引き続き共闘する冒険者パーティの攻撃によって、十全な実力を発揮する事も叶わず仕留められていく。

 ふと……ワイバーンの血の匂いとは別の気配が空気に混ざる。

「くんくん……そろそろメインディッシュのおでましでありますね!」

 リンドヴルム『ジェヴォーダン』……やはり水着を着ているのだろうか。

石動・悠希

●ネクストステージ・パフォーマンス
「……あーなるほどね。幻による視覚偽装と水着装備による増強の掛け合わせって事か」

 |竜漿兵器《ブラッドウェポン》[水着]の更なる力。
 一見して戦闘とは無関係な方向に伸びたスキルツリーの効果を石動・悠希(ベルセルクマシンの戦線工兵・h00642)は分析する。

「何せどんな水着のデザインであってもそれに合わせた姿を用意できるんだから。
 つまり着る側に合わせて水着を選ぶんじゃなくて
 水着に合わせて最も適切な姿を選べばいい、って事だからね」

 敵の主な戦闘スタイルは近接攻撃に偏っている。
 自前の機動力と近接武装で対処しつつ……ブルーワイバーンも着用している水着自体は先のボーグルと同種らしい。
 違いは如何に竜漿兵器の力を引き出しているか、といった部分か。
 先の分析結果もある程度は流用できそうだ。

「ちょっと逆転の発想に感動した……から」
「そう、これが新時代のコーディネートッ! その力を存分に味わい散りなさい!」
「よし。強化もしっかり反映されてる」

 敵は調子づいた勢い任せに【セレスティアル・スケイル】で更に加速。
 すれ違い様……再びマルチクラフトボックスより取り出したツールが閃く。
 強力な速度強化の代償に脆くなったブルーワイバーンは、【クラフト・アンド・デストロイ】の格好の的だった。
 敵は多勢。
 この手応えならもっと戦果を狙えそうだと悠希は考える。

「最終的には調和こそ一番の美……
 なので単に水着がよかったり似合ってるとかよりも
 背景やシチュエーションもすべて合わせたうえで初めて完成する良さってのはある」
「ふぅん、この状況から更に先へアピールを進められるとでも?」
「そういう事」

 人間と融合したベルセルクマシンという素性ゆえか、|肉体《ボディ》の調整には融通が効く。
 スクール水着に適した外見への変貌。
 幻と実際の変形という差はあれど、此処まではブルーワイバーンの手法と同様。

「……だからそこを突く」
「っ!?」

 更にブルーワイバーンたちが攻撃を重ねる寸前、至るところで爆発が相次いだ。
 いつの間にか仕込んでいた破壊工作の妙手であり……今は悠希の水着を引き立たせる為のパフォーマンス。
 石動悠希という個ではなく、光景そのものを昇華した一つの作品として。

「これが私の魅せる水着の美だよ」
「これは認めざるを得ないわね……やるじゃない――」

 誇示が水着を通じて力となる。
 √能力の解体補正に強化を上乗せした大立ち回り、命と連動した水着を瞬く間に破壊されたモンスターは次々に爆ぜ散って。

八木橋・藍依

●レンズに映る真実
「ずっと気になっておりました」

 戦場に在って猶……否、戦場だからこそ情報の伝達は迅速だった。
 水着を纏い"見る者の理想の水着姿に見える"というブルーワイバーンの出現。
 その一報が駆け抜けると同時、八木橋・藍依(常在戦場カメラマン・h00541)は最前線へと飛び込んでいく。

「ブルーワイバーンの姿にも合う水着というのはどのようなものなのか……
 その姿を見せて頂きます」
「ややっ!?」

 水着の見せる幻が藍依に効いていない、というのはどちらかと言えば結果論だった。
 幻そのものは確かに見えている。
 だが、それがブルーワイバーン本体の姿と完全に重なっているのならその幻は意味を為さない。
 ワイバーンの着ている水着への好奇心がそれ以外のイメージを上回ったが故に……
 ある意味では記者魂の勝利と言えるだろう。

「写真にも撮影させて頂きましょう」
「水着のパワーとあなたの理想の勝負という訳ですね……ふっ、望むところです……!」

 そんなやり取りと加減無しの攻防が両立するのがこの戦場だ。
 一斉に【セレスティアル・スケイル】の強化を受け襲い掛かる大群に対し、藍依はアサルトライフルの応射と手数を補うドローンのフル活用で対応する。

「どのような水着姿を撮影できるのか、とても興味深いです。
 製作者はどちら様なのでしょうか」
「リーダーが人間の拠点から奪ってきた奴だから製作者までは何とも……」
「この軍勢を率いているのはリンドヴルム『ジェヴォーダン』という話でしたね。
 ああ、発端となった兵器の強奪は堕落騎士『ロード・マグナス』の犯行でしたか」

 どちらの仕業であれ水着大量略奪の絵面は何とも……という微妙な気持ちはさておき。
 単独でそれを為したとすれば曲がりなりにも|王権執行者《レガリアグレイド》、といったところか。
 製作者の事は寧ろ冒険王国側に問い合わせた方がよく分かるかもしれない。

「兎も角、写真は新聞の記事にも載せましょう」
「妙ですね……流し斬りが完全に入ったのに……」

 個々の力量は藍依に軍配が上がるにせよ、膨大な数の優位が敵にはある。
 更には攻撃偏重の√能力による強力な速度強化。
 遂に一撃、有効打が決まり……しかし藍依は揺らがない。

「そろそろですね……3……2……1……ゼロ!」
「しまっ……!?」

 近接攻撃を主とするブルーワイバーンを引き寄せ、タイミングを測り、炸裂したのはカメラマンとしての根性魂を解き放つ必殺カメラフラッシュ。
 【|衝撃の瞬間!《シャッターチャンス》】――60秒ものチャージを要する√能力は、取り回しの重さに相応しい威力を以て範囲内の敵を一網打尽に仕留めてみせる。
 棚上げされたダメージは纏めて降り掛かるも、そもそもが数える程の被弾だ。
 継戦能力に優れた藍依を止めるには程遠い。

「よしよし……きちんと撮れていますね」
 "見る者"に効果を及ぼす水着の幻と藍依の撮影術、勝るのはどちらか。
 カメラのメモリには……デザインも様々な人間用の水着を器用に着こなすワイバーンたちの姿が、しっかりと記録されていた。

和紋・蜚廉

●刻む勇姿
 硬質化したブルーワイバーンの尾を甲殻籠手が迎え撃つ。
 実に三十七連の拳打を重ねれば、同じ連続攻撃の性質を持つ筈の【ブルーティッシュ・テイル】は明らかに動きを鈍らせた。

「僕の尾の力がぁああ!?」
「我が連肢、止まらぬが、理」

 和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)が解き放った【連肢襲掌】の拳打には‪√能力無効化の力が込められている。
 そして、性質はもう一つ。
 修めた技術を交えた追撃が標的を捉える限り、途切れる事無く連撃が続く。

「狙いが精密過ぎる――私達の姿を捉えているのか!」
「視覚は元々有していない、幻覚は通じぬ」

 戦線に投入された精鋭の数は一体や二体どころではない。
 微細な振動、熱源、匂い。
 偽装の及ばぬ情報を野生の勘で統合し、四方八方から迫る敵へ次の狙いを定める。

「幻影の水着姿は見えずとも、汝等の存在は鮮烈に捉えている」
 今、特に有用な情報は音だった。
 称賛による強化が戦闘の鍵となるが故に、その声が敵の居場所を教えてくれる。

「その力強き鱗に映える水着は見事だ。
 蒼の色彩と布の調和は美しく、雄大な体躯に相応しい着こなしといえる」
「フ……分かるか。貴殿も水着を以て己が肉体と鍛錬をこそ誇るものであろう」

 称賛を重ねるたび、一段と水着の強化が漲るのを感じる。
 油断する者としない者、反応は竜によってそれぞれだ。
 隙を見せれば殴り飛ばし、或いは先の獣人と同じく竜の巨体そのものを武器として群れを纏めて打ち据えていく。

「グッ……!」
「上辺だけでない重みと頑健、この腕を通じて伝わってくるな」
「応とも! 水着でより引き締まった俺の力、その身でも味わって貰おうか……!」
「その覚悟、我が武を以て迎え撃とう」

 ブルーワイバーンの強みは頭数と√能力の手数が合わさる事による膨大な連撃。
 一方……蜚廉の連続攻撃は積み重ねた研鑽が手数となる。
 多勢に無勢の様相ながらも後れを取る事は無い。
 寧ろ真っ向から押し返し、次々と挑みかかる群れの数を凄まじい勢いで削っていく。

 やがて無双の武働きが、あれほどの数を誇っていたモンスターの軍勢を掃討していく中……それまでと桁違いの存在感が本能を刺激する。
 リンドヴルム『ジェヴォーダン』。
 此度の将たる|王権執行者《レガリアグレイド》が、動く。

クラウス・イーザリー

●幻惑の試練
(理想……??)
 クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)は困惑していた。
 √ウォーゾーン……機械が人類を制圧した過酷な世界で生きてきた彼は、そもそも水着というものに馴染みが無かったのだ。
 参照すべきイメージがクラウスの中に無かった、という形だろうか。
 彼の目に敵の姿は普通の人がものすごく無難な水着を着ているように見えていた。
 ある種のデフォルトのような状態かもしれない。

(よくわからない状況だ……)
 これはこれで攪乱として機能しているのかいないのか。
 一方、性質上この水着は見る者が変われば見えるものも変わる。

「わ、わぁ……っ!」
「イネス、大丈夫?」
「大丈夫、です……あれは幻だと……分かってます、から……!」

 確か彼女には想い人が居るのだったか、と出会った時の事を思い出す。
 ……相手が見ている"理想の水着姿"を共有し得ないのは不幸中の幸いというものなのだろう。少女の為にも。
 顔を赤らめふわふわした様子のイネスを見て漠然と考える。

「戦い辛いのなら俺がやるけど……」
「いえ、私も戦います……!
 こんな理由で後れを取っては、流石に|稲妻《エクレール》の名折れですので……!」
「うん、分かった」

 信じたのはこれまでの共闘で彼女の狩人としての実力を知っているが故の事。
 多少の動揺を差し引いても心配は要らないだろう。
 元より状況に合わせてサポートする立ち回りは想定内だ。

「あー、その。やっぱり普通の水着が一番だよね……」
「声が小さいッ! ワン・モア!!」
「よく似合っているよ……」
(より一層褒め言葉が浮かばなくなったんだけど……)

 心なしか水着の強化効果にも若干の翳りが生じたような。気のせいかもしれない。
 それはそうと当たり判定のズレは厄介な要素だ。
 加えて発動するまで効果の定かでない【スカイ・フラグメント】も不確定要素を大きくする。

(……それなら)
 クラウスが意識を向けたのは使い慣れたレイン砲台。
 300連発もの【決戦気象兵器「レイン」】のレーザーを満遍なく降り注がせる。

「グ、グワーッ!?」
「このぉ……っ!」

 一発辺りのダメージは大きく抑制されるにせよ、攻撃範囲と総合的な火力は決戦兵器を冠するに恥じない。
 まともに受けたワイバーンはひとたまりもなく墜落し、或いは「現在最も必要な能力ひとつ」を引き出すという性質から√能力の発動を強いられる。
 レインを凌ぐ為の最適化では、“次”に対処するだけの余力は残せない。

「これで、見納め……!」

 斬鉄剣の一閃は空を駆ける。
 手数のレーザーと破壊力の斬撃、二人の連携は竜も幻も捻じ伏せて。

第3章 ボス戦 『リンドヴルム『ジェヴォーダン』』


●狡猾なる王たる竜人
 ――敵の初手は奇襲だった。
 飛龍を名乗る|竜人《ドラゴンプロトコル》型のモンスター、リンドヴルム『ジェヴォーダン』。
 真竜にはなれない身ながら、それ故に姑息と卑怯を武器とするこの|王権執行者《レガリアグレイド》は勝利の為に手段を選ばない。

「縊匣の収集がてらマグナスの旦那の計画に乗ってみたが、そう旨くはいかないか」

 そう零したジェヴォーダンは……水着姿だった。
 先の水着ブルーワイバーンと同じ"見る者の理想の水着姿"だが、それだけではない。

 そのタネは無意識下に働きかける魅了効果だ。
 傷つける事への忌避感、或いは過剰な昂揚による判断力への悪影響……
 理性でなく、思考でなく、竜人の罠は相対する者の心を惑わす。

「ああ、これは言っておかないとな。地道なアピールって奴だ。
 ――そうさ、全ては俺の仕業!」

 芝居がかった仕草も真意を隠す策に過ぎない。
 幾重にも張り巡らされた計略の中、確かな事はただ一つ。
 この簒奪者を討たぬ限り、脅威が去る事は無い。


※断章の奇襲で被害を受けたり受けなかったりは任意。
※水着着用による強化やNPCとの共闘などの仕様は第一章・第二章と同様です。
※ただし水着モンスター軍団が駆逐されつつある事により、
 "水着姿を褒める事による能力強化"は減少しています。
 この章のプレイングは戦闘等に専念して大丈夫、の意ですが
 誉める事で少量ながらこれまでのように強化を得る事も可能です。
 
 
和紋・蜚廉

●生き足掻く戦い
 |竜漿兵器《ブラッドウェポン》を奪い冒険王国を滅ぼさんとするモンスターの大軍勢。
 √能力者たちの活躍により形成が逆転すれば、その軍さえ囮として√能力者を狙ったジェヴォーダンの奇襲……
 対する和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)が頼みとしたのは己の鍛え上げた武と拳。

「ハ、幻なんざ気にも留めずに真っ向勝負か! 相性最悪で参るぜ全く!」
「音の反響、匂いの流れ、気配の脈動。視覚を持たぬ我だが、鮮烈に視えているとも」

 先刻はブルーワイバーンの群れを鎧袖一触に蹴散らした【連肢襲掌】と、
 ジェヴォーダンは真っ向から渡り合う――と言うのも些か正確ではないか。
 幻ではなく実際に姿を変える【ミステリアス・ジェヴォーダン】。
 力量に比例する速度の連続変身で近接戦闘能力を補うスタイルは正攻法には程遠い。

 √能力無効化の力を込めた怒涛の拳打、手応えは有るが|浅い《・・》。
 時に躱し、時に防ぎ、影響を最小限に抑えている。
 完全に打ち砕く為に必要な手数は百で足りるかどうか。
 鍛え抜いたグラップルの一撃を浴びせ、連続攻撃だけは絶やさせず繋ぐ。

「見事な変化だ。まさに変幻自在、その水着は汝を飾り立てるに相応しい」
「へぇ、もう強化量も知れてるってのに嬉しいねェ。お前の水着もお似合いだぜ!」
「なればこそ、姿を変えずとも誇りは揺らがぬだろう」
「クハッ! 誇り、誇りと来たか! なぁ――俺の|ソレ《誇り》は何だと思う?」

 今や微々たると言えど強化効果は今なお健在。
 褒めるほどに力は増し、蜚廉の拳は鮮明となる。
 ジェヴォーダンは終始防戦一方。
 油断するな、と野生の勘は訴え続ける。

(ジェヴォーダンの水着には無意識下に作用する魅了効果があるのだったな)
 称賛には迫真を込め、しかし踊らされる事の無いように。
 無数の手傷を重ねながら、敵の方が虎視眈々と狩りの好機を狙っている事を意識する。

「過程も手段も問題じゃねぇ。最後に立ってた奴が強いのさ!」
「そうだな――我も、生き延びてきたことを誇りとする」

 長く生きた者は生き延びた者、選ばれし強者であると蜚廉は断じる。
 故にジェヴォーダンの動きが言葉で左右される事は無いと分かった。
 生きる事、勝つ事。それを至上とし、手段を選ばない手合いであるなら……
 そうであればこそ、読める動きもある。

 斯くして互いに隙を見せぬまま攻防は拮抗。
 つまりジェヴォーダンの一方的に殴られる状況が続くという事だ。

「チィッ……これで愚直なバカなら嵌め甲斐もあったのによ!」
「蛇の道は蛇、と言うのだったか」

 仕切り直しを図る後退を許さず貫通力で縫い留める。
 反撃を見切り、更にカウンターで封じ込める。
 水着強化の蓄積はやがて変身の所要時間を上回り、遂に√能力をも打ち砕く。

「だが覚えていろ……最後に笑うのはこの俺、ジェヴォーダンだ……ッ!」
「その野望は叶わん。何度蘇ろうと打ち倒そう」

 それが最後の応酬。
 均衡は決壊し、圧倒的な連続攻撃が簒奪者を磨り潰した。

石動・悠希

●心中擬き
「成程ね、幻による視覚偽装の次は魅了効果によるさらなる強化……」

 ジェヴォーダンの先制は初手の奇襲に留まらない。
 ブルーワイバーンと同様の幻覚に加え魅了効果……
 無意識下に働きかけるというそれにより、自身の動きに影響が出ている事を石動・悠希(ベルセルクマシンの戦線工兵・h00642)は自覚する。

「一見するとそこに関連性はないにしてもたった一つのアイテムが間に挟むと
 全く別の効果を生み出す……実に面白いよ」
「ハッ、そうだろう? どうせ蘇生するんだ、面白いついでにくたばっていきな!」
「いい方を変えれば物は考えよう。俯瞰した視点というかねぇ……」

 敵の【ミステリアス・ジェヴォーダン】は幻に隠された実体を変化させる。
 小型化による回避や加速、大型化による攻撃性能の強化が瞬く間に切り替わるのだ。
 対策無しには手の出しようが無いと言っていい。
 幸い今のところジェヴォーダンの攻撃手段は近接攻撃がメイン、
 全力で後退する事により猛攻を凌ぎながら悠希は考察を進める。

「という事で、ね」
 取り出したのは先程の対ブルーワイバーンでも演出に使った炸裂弾。

「へぇ……それで俺をやれるのか?」
 ブルーワイバーンと違い、ジェヴォーダンは声も"理想の水着姿"に寄せてくる。
 些細な演技でも魅了効果は増すのを感じながら、しかし悠希が取り合う事は無い。
 何故なら爆破の標的は自分自身……それが【|因果爆撃《チェーンバーン》】の|発動条件《トリガー》。

「あんまり使いたくないんだけど……」
「ッ!」
「その先の結果はまぁ……どうなるだろうね?」

 悠希の√能力は事前の細工により。最低限死にはしない程度に調整された爆破のダメージを効果範囲内の標的にも適応する。
 着ていたスクール水着も無事では済まない程のダメージの転写。
 命と連動させ対策している敵の水着を破壊するには至らないが、その分与えたダメージの影響も大きくなる。
 幻が揺らいだ。

「なおポロリはない。事前にもう一着着てるから」
「ハ、重ね着かよ! 狡い奴だ……!」

 姑息と卑怯を武器として憚らないジェヴォーダンのそれは誉め言葉に等しい。
 |二着目《・・・》の存在が意味するのはこの戦場に於ける水着強化の健在だ。

「それはどうも……ってね」

 魅了の薄れた隙を突き、決め手はエネルギーブレイドの一閃。
 自在の太刀筋から成る斬撃が簒奪者の実体を斬り裂いた。

クラウス・イーザリー

●曰く、攻撃は最大の防御であると
「ッ……!」

 一撃で命を刈り取らんとするジェヴォーダンの急襲。
 咄嗟に迎え撃ったのはクラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)が展開したエネルギーバリアだった。
 障壁は甲高い音を立てて砕け散り、致命の攻撃は辛うじて皮一枚掠めるに留まる。

「やるな、巧く凌ぐものだ!」
「ジェヴォーダン……一見珍妙に見えた水着作戦も、
 こいつが考えていたことなら油断ならないな」

 一見どころか二度見、三度見してもその姿はブルーワイバーン同様の幻ではあるが。
 それはそうとこの簒奪者の狡猾をクラウスはよく知っている。

「イネス、平気?」
「おかげさまで……何とか……!」

 声を掛けつつ隣の少女の様子を確認。
 少なくとも奇襲による負傷は無い。
 厄介なのはジェヴォーダンの水着が発揮する誘惑効果か。
 無意識下に働きかけるという性質上、どの程度影響を受けているか測り難い。
 自分自身を含めて。

「それでも、これ以上の策を弄させはしない」
「出来るもんならやってみなァ!」

 元々は√能力者でも無かったと目され、真竜への変身も出来ないというジェヴォーダンは強くはないが弱くもない。
 それをジェヴォーダン自身が自覚している事。
 最初の奇襲のように躊躇ない搦め手が最も厄介な要素だった。

 故に踏み込む。
 これ以上後手に回りはしないと、精神抵抗で魅了を振り切り十全の動きを保つ。

「【盈月】――変幻自在はお前の専売特許じゃない」
「ほぉう……!」

 敵の【ミステリアス・ジェヴォーダン】は瞬時の変身で能力をも自在に変動させる。
 打ち破るべくクラウスが選んだのは一撃見舞うたびにその形を変える怒涛の連続攻撃。

 |半自律浮遊砲台《ファミリアセントリー》の絶え間ない制圧射撃が形を変えるジェヴォーダンの実体を炙り出す。
 高速の居合から大剣に変じての薙ぎ払い、
 動きを縫い留める手槍の串刺し、防御ごと砕く戦槌の強撃。

「大した技だ、認めるのは癪だが分が悪いな! ってワケで――」
「逃がさない……っ!」
「あぁクソッ、やってくれるな!」

 一度でも外されれば連続攻撃は途切れる。
 射程外に逃れ仕切り直そうとした飛竜を撃ち落としたのはイネスの斬撃。
 魅了に動きを鈍らされながらも破壊力に曇りは無く、クラウスへの対応で手一杯の簒奪者を阻むには充分な一手。

「――お前、|能力者じゃない《殺せば死ぬ》な?」

 不利を悟ったジェヴォーダンの狙いが少女に移る。
 √能力者は死しても蘇るがそうでないなら話は別だ。斃せば大なり小なり次へ繋がる。
 この場は差し違えてでも仕留めようと切り替え、無論クラウスがそれを許す筈も無い。

「させない。これで終わりだ……!」

 元より、それを通さない為の前のめりの攻勢だ。
 隙を晒したジェヴォーダンに苛烈さを増した連撃が叩きつけられ……
 一か八かの賭けは実を結ぶ事無く、呪詛の呻きを残して王権執行者は力尽きる。

「慣れない服装、慣れない状況での戦闘は精神を使うから疲れるな……」
「その……今回もありがとうございました、クラウスさん」
「こちらこそ」

 一度でも敗れればその分だけ奪われる、言い訳の効かない命の奪い合い。
 無数の策謀を実力と細心の注意で乗り越え……
 状況が落ち着いてから漸く、張り詰めていた緊張を解いて。

 守り抜いたティアマトは豊かな港町だ。
 戦いを終え凱旋する人々のように、一休みしていくのも良いかもしれない。

八木橋・藍依

●妥協無き追求
「ロード・マグナスだけではなくあなたも|王権執行者《レガリアグレイド》でしたね」

 縊匣の完全掌握を企む飛竜……未だ多くない、王劍を狙う動きを捕捉された一体。
 黒幕として名乗りを上げたジェヴォーダンを八木橋・藍依(常在戦場カメラマン・h00541)は鋭く見据える。

「……一体何を企んでいるのですか?」
「ククッ、聞きたいか? 聞きたいよなぁ?」
「それが本当の事なら、ですね」

 仮に巫山戯ているなら――何も良くはないが――まだマシだった。
 顕示欲を演じ煽るような声の裏にあるのは紛れも無い殺意。
 水着の魅了効果を利用し意識を誘導する詐術めいた語り口……
 記者は真実を追求するものだ。藍依の|感覚《精神抵抗》を欺けはしない。

「お堅い奴だ! まぁいい、本番は此処からだぜ?」

 |HK416《アサルトライフル》の盾となったのはヴォーグルだった。
 今や壊滅状態に陥った軍勢の残党、ではない。
 やはり水着を身に着けた|狂える獣人《ヴォーグル》、そしてブルーワイバーン。
 新手――【ジェヴォーダンの烙印】はその身一つで新たな軍勢を作り出す。

「見た目は似せていても実態は異なるようですね」
「目敏いな。だが、気付いたところで何になる!」

 倒してきた敵が纏めて立ちはだかるという絶望。
 |この程度《・・・・》が、絶望?
 脳裏によぎる慈悲無き機械の影……もっとどうしようもない地獄を知っている。

(個々の大まかな|性能《ステータス》自体は元の軍団を構築していた者たちと同等。
 √能力相当の手札はジェヴォーダン由来のものに置き換わっている、と)

 数は多いが既に打ち倒してきた敵だ。
 同様に複数種の手榴弾で攪乱し、薙ぎ払い、或いは銃撃を叩き込み、
 群れを囮として立ち回るジェヴォーダンにもダメージを蓄積させながら葬っていく。

「今更何を隠そうと云うのか。持っている|記憶《レコード》、全部見せてもらいましょう!」
「ほう、妙な技を使う……!」

 実弾に記憶を引き出す特殊弾を織り交ぜる【|新聞記者の記憶収集!《レコード・スナッチャー》】、
 一定条件で発動する即死効果は敵群の処理にも効果を発揮していた。
 半ば使わされた、とも言えるか。
 一気に増えた敵の頭数にも押し込まれる事無く渡り合うには必要な選択だった。

「暗号化とは、回りくどい真似をするものですね」

 王劍『縊匣』や竜漿兵器、断片的な情報を読み取れたのは最初だけ。
 ある種の文字化けにも似て、引き出された記憶は不意にノイズの塊と化す。

「……潮時か。及第点には遠いが仕方ねぇ」
「何を……!」
「次のゲームを震えて待てってなァ! ハハハハハッ!」

 あと一息……そう感じた矢先に幕切れは訪れる。
 藍依の√能力が即死条件を満たす寸前、ジェヴォーダンは自ら命を絶ち消え去った。

 あまりに呆気ない最期。その死も偽装ではないかと警戒を緩めるのにたっぷり数秒。
 あれだけ溢れかえっていたモンスターも遂に全滅し、藍依は大きく息を吐く。

「やってくれるものですが……ええ、腕が鳴るという奴ですね!」
 モンスター軍団の撃退という主目的は達成。
 暗号化されているとはいえジェヴォーダンの記憶自体も引き出せたのだ。
 解読が叶えばその情報は簒奪者との戦いに大きな価値を持つかもしれない。

神咲・七十

●解き放つ力
「ふにゃ……
 ジュリアさんの水着やいろいろな水着を見てたら出遅れてしまいました……」
「なに、その分だけ敵も多く倒せたからね! ウォーミングアップとしては上々だ」

 此度のモンスター軍団を率いるジェヴォーダンとの間に遂に開かれた戦端。
 神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)の呟きに|水着姿の麗人《ジュリア》はやはり機嫌良く応じる。

 ……多種多様な水着姿に見惚れていたのは彼女も大概だったりするのだが。
 敵群の配置や戦場の流れ、そうした要因に由来する不可抗力的な面も偶には有る。

「ここから挽回できるように頑張りましょうか。
 ――来てください、まだまだ一緒に歌いましょう?」

 呼びかける【|『フリヴァく』《邪神系アイドル》イン・ステージ】は十八番と言ってもいい。
 響く『チル・マイ』の歌声は七十が体内に有する独自の異界より隷属者を呼び出す。

「ハ、軍団持ちか。大した化け物のお出ましだなァ?」
「んんぅ……もっと水着を見て回りたいですので……本気で行きます」

 本気。その言葉に違わず、召喚した無数の影は質も量も普段とは一味違った。
 半分は|古代魔術師《ブラックウィザード》であるジュリアと共に後衛へ。
 そして半分は前線へ切り込む七十と共に前衛へと割り振る。

 対する簒奪者の姿は、やはり水着の見せる幻の裏に隠れているが……
 一瞬未満の刹那で別物に切り替わる動きは【ミステリアス・ジェヴォーダン】による実体の変化が為せる業か。

 飛竜の力で上空を取れば後衛からの魔術と飛び道具が弾幕を形成し撃ち墜とす。
 大狼の力で喰らいついてくれば歌声のもたらす再生力を頼みに避けもせず、寧ろ好機であると捨て身の攻撃を集中させる。

「この数で全員が死兵とは恐れ入る! イカレてやがるなァ、おい……!」
「本気で行くと……言いました」

 手札は尽きず、敵の行動パターンは猶も変わり続ける。
 手を変え品を変え隷属者の多勢と真っ向から渡り合う武術に魔術、多彩な戦法は過去の英雄を模したものだろう。
 構わない。
 仮に再生速度が追い付かないなら召喚速度を上げればいい。
 更に手勢を増やし、力尽くで押し込む。

「チッ、こんなゴリ押しでこの俺が……!」
「ジュリアさんの水着ももっと堪能したいですし急ぎましょう」

 絶え間ない攻撃はさながら|不死者《ゾンビ》群がるホラー映画の一幕にも似て。
 事実、|王権執行者《レガリアグレイド》という枠組みの中では不足しがちな出力を戦術で補うのがジェヴォーダンの強みだ。
 搦め手に付き合うより力を集中させ短期決戦で捻じ伏せる、正攻法こそ最善手。

「ふっ、美しき覚悟には結果を以て応えようじゃないか!」
「――――ッ!」

 後衛に割り振った隷属者の役回りは火力支援であると同時にカモフラージュだ。
 速度、手数、威力、精度、或いは特殊効果。どれかを伸ばせば何処かに足が出る。
 √能力喪失者であるジュリアの能力は小回りが利かない。
 逆に言えば。相応の時間を準備に集中させたなら――二つ名に違わぬ流星が、取り付く隷属者諸共に簒奪者を打ち砕く。

「フィナーレです」
「覚えて、やがれ……! 俺は……必ず……!」

 捨て台詞が最後まで紡がれる事は無い。
 鮮血に染まった鎌が真紅の軌跡を描き……簒奪者の命脈を刈り取った。

猫屋敷・レオ

●かみちぎりの竜殺し
 命は等価ではない。
 例えば死しても蘇る√能力者とそうではない非能力者。
 戦場であれば単純な戦力や働きの差。
 そこには自ずから優先順位というものが生じる。

「ッ……!」
「コイツは儲け物だ!
 この手のヘマする手合いには見えなかったが、試してみるモンだな?」
「レオっ!」

 ジェヴォーダンの奇襲が狙ったのは一度死ねば終わりの冒険者たち。
 その攻撃を受けたのは身代わりに割って入った猫屋敷・レオ(首喰い千切りウサギ・h00688)。
 致命傷こそ咄嗟に防いだが負った傷は浅くない。
 或いは彼女が年齢的には子供である、という事を差し引くとしても……|王権執行者《レガリアグレイド》に抗し得る戦力の負傷は明らかなマイナスだとこの場の全員が承知している。
 だからこそ、そのレオが真っ先に意思を示した。

「これは皆にはちょっと荷が重いかもしれないでありますね~」
 声色には余裕を残したまま、共に戦っていたパーティに冒険者の避難誘導を頼む。
 |子供《レオ》を矢面に立たせる事やみすみす傷を負わせた負い目の為に命を捨てる事は無いと。

「レオちゃん……死なないでね」
「任せるでありますよ~」

 熟練者として知られるパーティがレオの意を汲んだ事で流れは定まり、冒険者たちは警戒しつつも王権執行者の戦闘範囲から後退していく。
 ジェヴォーダンが大人しく見送っていたのはレオが牽制するように対峙していた為だけではない。

「俺もあいつらには感謝しないとな。おかげで勝算も俄然高まった訳だ!」
「卑怯だなんて言うつもりは無いでありますよ、
 奇襲、騙し討ち、使える物は使って最善を尽くすのが狩りであります」

 離脱した戦力はレオさえ排除すればどうとでも料理できる。
 作戦完遂を狙うなら下手に残られる方が面倒だったと【ジェヴォーダンの烙印】――
 召喚された新手のヴォーグル、ブルーワイバーンがレオを取り囲み群れを成す。

「お利口な事だ。だが――お前が死ねば結局皆殺しだって事は分からなかったか?」
「でもそんなものを跳ねのけて狩るのが真の狩猟者であり、超すごいボクであります」

 ふふん、と血を流しながらも胸を張る。
 状況は絶望的に見えるだろう。
 ジェヴォーダンの嘲笑も出鱈目を並べている訳ではない。
 それでも。自分が|勝てば《狩れば》済む話だと兎は笑う。

「という訳で――お前たち全員、纏めて喰い千切ってやるであります!」
「言うじゃねぇか。何をする気か、見せて貰おうか!」

 ズキリと傷口の訴える痛みは想定より小さい。
 撤退する冒険者が密かに残した即興の治癒と強化が効いているらしい。
 勝負に出る元手は充分、笑みを深くしたレオの姿が影と化す。

 決め手となる√能力が溜めを要するならそこが狙い目だ。
 持続強化なら数の暴力で磨り潰し、単発の大技なら耐えて切り返せばいい。
 ジェヴォーダンに油断は無く、しかしその目論見は正解であり不正解だった。

「ウサギは鋭角なんか無くとも空間さえも跳躍出来るでありますよ」
「マジか……ッ!」

 瞬間的に世界から消失したレオは数秒後、強引に蹴破った異空間ごと帰還する。
 インビジブル化と並ぶ√能力者の大技。
 √能力の連撃は此度、ある種の合成めいて作用した。

 即ち60秒のチャージから強力な攻撃を繰り出す【神千切・カゲバミ】、
 そして異空間を経由し攻撃範囲と威力を強化する【神千切・カゲトビ】。
 時間さえ実質的に踏み倒し、段違いに跳ね上がった破壊力を察したところでもう遅い。

「――何故ならウサギは超すごいでありますので!」

 狙いはブレない。
 水着の幻が惑わそうと、それ以上に強固な自負と自我が有る。
 威力54倍もの倍率に至った喰い千切りの強襲はジェヴォーダンを巻き込み、召喚されたモンスターの軍勢を纏めて殺し尽くした。

「ガハッ……おいおい……そりゃあ、ズルだろ……!」
「誉め言葉でありますね」

 虫の息で転がる簒奪者と軽口を叩き最後の一閃。
 斯くして此度の戦いは決着を迎える。

七州・新
不酒・杉留
久遠・群炎
柊・冬臣
金菱・秀麿

●幕引き - 常夏に別れを -
 |竜漿兵器《ブラッドウェポン》[水着]を強奪したモンスター軍団の大規模侵攻……
 曲がりなりにも竜漿兵器だ。
 その水着は装備者の戦闘力を大きく引き上げ、集まれば気象にすら干渉する。
 絵面はさておき事態は|深刻《シリアス》だった。絵面はさておき。
 その戦力は冒険王国が動員した人類戦力さえ打ち破るに足る。

「……筈だったんだがな。お前等の介入のせいで俺の計画はボロボロだ」
「今の|ナレーション《地の文》ジェヴォーダンさんだったんです?」
「そうさ、全ては俺の仕業!」
「この簒奪者は身一つで森羅万象の仕掛け人になるつもりか……?」
「ククク……」

 なお事態を解決すべく集った√能力者も強化の恩恵を受ける為に水着を着ていたり着ていなかったりする。
 閑話休題。
 その手の胡乱な会話ならいつまでも続けられそうな不酒・杉留(巫山戯過ぎる・h05097)だが、現実はそうもいかない。
 此処まで撃破されたモンスター軍団と同等の戦力を単独で容易く発揮する|王権執行者《レガリアグレイド》のポテンシャル――【ジェヴォーダンの烙印】は新手のヴォーグル・ブルーワイバーンの群れを召喚する。

 猶その全てが例に漏れず水着姿である。
 数を揃えた事による共鳴は"見る者の理想の水着姿の幻を見せる"段に至っていた。
 副産物的に付随する微妙な当たり判定のズレも戦闘に及ぼす影響は小さくない。

「……炙り出す」

 一面に炎を放ったのは久遠・群炎(群青の炎術師・h01452)だ。
 √能力により召喚された軍勢が容易く倒れる事は無いが、彼女の狙いは別にある。
 幻を見せる敵の水着。実体が変化する訳でない事は既に判明済み。
 攻撃範囲と持続性を重視した火炎は言葉通り、幻に隠れたモンスターの輪郭を捉え浮き彫りにした。

「なるほど、大した力だ」
 予知によると√能力者の介入が無ければ人類側の壊滅も確実との話だったか。
 確かに並大抵の戦力で太刀打ちできる相手ではないのだろう。
 一瞬にして展開された質を伴う数の暴力は人知及ばぬ災厄の域に達している。

「それでも……そんなに簡単にやられたりしないさ」
 柊・冬臣(壊れた器・h00432)の言葉は危機意識の欠落による楽観だけではない。
 敵が規格外と言うなら此方も同じ事。
 絶望を打ち払うに足るだけの勝算がある。

「精霊よ、雷霆万鈞の力を示せ」
 唱え放つ雷の弾丸が今の冬臣に打てる最善の一手。
 |精霊銃士《エレメンタルガンナー》の代名詞たる【エレメンタルバレット『雷霆万鈞』】が引き起こすのは広範囲の爆発……そして帯電がもたらす同等の戦闘力強化。

「……ジェヴォーダン」
 全ては自分の仕業だと嘯く簒奪者、王劍『縊匣』掌握を狙う|竜人《ドラゴンプロトコル》。
 いったいどれ程の情報を掴んでいるのかと七州・新(無知恐怖症・h02711)は考える。
 記憶を失くした今の新にそれを推し量る術は無い。
 分かるのは相手の思い通りに企てを進めさせる訳にはいかないという事。

「――地よ踊れ」
 緩く手を伸ばす動きと共に、射程内の敵の足元に魔法陣が追従した。
 飛行するブルーワイバーンであろうと逃れる事は敵わない。
 最大震度で牙を剥く【|制御下の大地震《アースクエイカ》】が多勢を纏めて蹂躙する。

 一方……起死回生を図り召喚された新たなモンスターの群れとの激突が火花を散らす影で。

「この造形は、曰く付きの趣きがあるねぇ……」
『こんな水着が死に装束になるなんて嫌だぁぁああああ……』
「まぁまぁ」

 √能力者の奮戦により被害は最小限に食い止められていたが……
 それでも冒険王国の存亡を賭した決戦、立ち向かった現地戦力も無傷とはいかない。
 動けなくなっていた負傷者の手当がてら、金菱・秀麿(骨董好きの異能刑事・h01773)の【遺留品はかく語りき】は触れた物品に眠る記憶から力を引き出す。
 相手はこのモンスター軍団を破るべく参戦した戦士だ。
 それを率いるジェヴォーダン討伐の協力を得る事は容易だった。

「流石にそう簡単に蹴散らせやしねぇか。だが好都合、貰うぜその力!」
「……させない」
「ぐおおッ!?」

 敵の実体を炙り出した群炎の炎は援護であると同時、本命から目を逸らす陽動。
 展開していた【ウィザード・フレイム】……発揮する目潰しの効果が【偽竜創造】で逆転を図ったジェヴォーダンの動きを止める。

「ま、まだだッ! ならばこの俺の最強の姿で――!」
「――なーんてな」
「何ィッ!?」

 不酒・杉留がネタに走るのは言わば現実のストレスからの逃避だ。
 だからこそ彼の語る【|ギャグ世界の住人《ギャグセカイノジュウニンハシナナイ》】は危険が迫る程に出力を上げる。
 歪んだ認知ゆえにその作用も癖は強いが……嵌った時の効果も抜群。
 結論から言えば。
 その場を凌ぐ力を求めた【ミステリアス・ジェヴォーダン】の変身は、展開されたネタ空間により盛大に空回った。

「国家転覆も大量殺人も見逃せねぇわな。って訳で――終わらせるか」
 生じた隙は一瞬。
 戦闘に於いて致命的なそれを見逃す筈が無い。

「クソッ……覚えてやがれ、最後はこの俺こそが――!」
「じゃあな」

 想いを宿す骨董品の一撃が命脈を断つ。
 後に戦場付近の町名から絶対水着戦線ティアマトと呼ばれる戦いは、こうして幕を下ろすのだった。

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