シナリオ

侵略外星体簒奪者を撃て!

#√EDEN #√マスクド・ヒーロー #スパルタン教育委員会

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 チャンチャラ、チャンチャラ、チャンチャンチャンチャ、チャ~ンチャチャ~♪
 軽快な音楽とともに、|昭月・和子《あきづき・かずこ》(しょうわ仮面・h00863)は歌いながら登場した。
「顏を隠して正義を助ける、いい|女《ひと》よ♪」
 様々な|√《ルート》から、色々やって来るので、呼ばれた能力者たちも、とりあえず黙って聴いていた。
「みなさん、お集まりいただきありがとうございます。私はしょうわ仮面。√マスクド・ヒーローにて星詠みを行なっておりますが、今回はこの√EDENで悪事がおこなわれると出たので、協力をお願いしにきました」
 しょうわ仮面は、身体をすっぽりと覆ったマントの内側から、赤いグローブをはめた手先を伸ばしてくる。
 マントの閉じ合わせた部分が少しだけ捲れたが、一瞬のことで中はよく見えなかった。
 それよりも渡された地図と資料だ。
「神奈川県川崎市多摩区にある宇宙科学センターに、外星体『ズウォーム』が潜伏しています。人間の洗脳や改造を得意としており、狙いはおそらくセンターの科学者たちです」
 すでに職員や科学者が犠牲になっているかもしれない。
「悪事がおこれば邪悪なインビジブルも発生します。外星体の探しかたによっては、改造された職員や、インビジブルにつられた別の簒奪者との戦闘がおこるかもしれません」
 しょうわ仮面は、それらも手掛かりに外星体『ズウォーム』を見つけてほしいと頼む。
「おそらくは、秘密結社『プラグマ』による事件ですが、具体的なところまでは詠めませんでした。全容解明にはまた別の星詠みをお待ちください。しかしながら、いずれは邪悪なインビジブルの利用、果ては『全ての√の完全征服』という野望に繋がっていくでしょう。簒奪者と戦うみなさん、そして心を同じくするヒーローのみなさん。どうか外星体『ズウォーム』の撃破に力をお貸しください」

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第1章 冒険 『簒奪者の痕跡を追え』


ソノ・ヴァーベナ

 外観は普通の角張ったビルだが、柱の意匠に特徴があった。三角錐を逆さにしたようで、上にいくほど広くなっている。
「へぇ~。よくわかんないけど、宇宙的な?」
 ソノ・ヴァーベナ(ギャウエルフ・h00244)は|魔導《スペルブック》・タブレットをタッチ操作する。魔力の揺らぎや異常な気配があれば、感知できるはずだ。
 どうやら柱そのものは、宇宙科学センターの元々の建築だった。
「もっと隅々まで、痕跡を探してみよう」
 エントランスを抜けると、白壁に例の柱を並べた廊下が続いている。
「わぁ……」
 古代の神殿と未来の装置が合わさったみたいで神秘的だ。
 ソノの第六感は廊下のさきに引き付けられる。
 歩く彼女の日焼けした肌と、白壁がコントラストをつくり、非常に目立っているものの、誰もそれを見ていない。
「スタッフさんはいないのかなー? 普段と違うことや気になることが起きていないか聞いてみたいんだけど……」
 廊下を渡り切ると、アラーム音のようなものが聞こえてくる。
 タブレットからではない。
 音をたどっていくと、開きっぱなしのドアがあり、誰かが駆け込むところだった。
「あ、やっと人がいた。すみませ~ん……ギャギャッ!」
 人間には違いなかったが、部屋に駆け込む姿勢のまま、等身大の彫像のように固まってしまっている。しかも、警備員の制服のようなものを着ているのだが、半透明に透けた状態だった。
 腕を伸ばした室内には警報機らしき端末があり、アラーム音はそこから出ていた。
「『ズォーム』の犠牲者的な? この人の身体を調べるのはギャルちゃん的にはキビシイから、機械のほうにあたってみよう」
 この部屋は監視室だ。
 ソノは情報収集の腕前でタブレットを接続し、ひとつの映像を引きだす。
 館内にあるどこかの階段のようだ。白衣を着た女性が登ってくると突如、足を持ち上げた姿勢のまま動きが止まった。画面外のどこかから、赤い光が照射されて、白衣はみるみる透けていく。

ルミナスティア・エアルネイヴ

「施設の中だと、流石に飛んで調査とはいかないね」
 ルミナスティア・エアルネイヴ(|The Star of SkyDancer《空の魔女》・h00113)は、入り口に構える逆さ円錐の柱に手をあてて、宇宙科学センターを見上げた。
「そうなると、だ。足で探さなくてはならないということになりそうかな」
 肩をすくめるけれど、簒奪者特有の行動の痕跡を追って建物内をうろつく。
「だが僕だって浮遊魔法の天才であるからして、空の魔女(自称)なわけだ。ただ闇雲に探すだけで終わるわけにはいかないということだよ」
 いくつかのセクションを渡るうち、大がかなりな実験装置を備えた研究室にたどり着いた。
「洗脳や改造を施しているなら、何かしら機器に細工もしてあるかもしれないからね」
 空の|精霊銃士《エレメンタルガンナー》は、床にむけて銃を構える。
 精霊を魔弾に変えて射出する、銃器型の竜漿兵器だ。少し調整が必要だったが、|自在浮遊弾《エアリアルブリット》を打ち込むことに成功する。
「僕の得意とする魔法は”浮遊”を司るモノ」
 着弾の効果範囲で、実験装置が浮き始めた。推進力は持たせられないが、これなら調査がはかどる。
 大小、あるいは様々な形状の機械のあいだをルミナスティアは潜り抜け、外星体の技術が組み込まれていないか探した。あとで浮遊を解除すれば、物はもとの位置に収まり、散らかす心配もない。
 ところがだ。
 魔法に対抗する強力な力を感じて、ルミナスティアはまた見上げた。無意識のうちに天井を。
「これは浮遊……ではなく、無重力か?!」
 異なる作用がぶつかり合った結果、制御からはずれた実験機器は、糸の切れた人形のように、床へと落下して次々と壊れる。
「ああ、研究者の方々、ごめんなさい。けど、こんなことしてきた外星体くんの潜伏場所は掴んだよ」
 到着時にとった何気ない仕草が、正解につながっていた。
 最上階か、屋上だ。

四二神・銃真

「先行した能力者のレポートを拝見したが、この建物の上層に奴さんがいる……と」
 |四二神・銃真《やつがみ ガンマ》(そいつの名前は死神ガンマ・h00545)は、白壁の通路をたどって監視室まで来た。
「とは言え無防備に上層階に向かうのは危険そうだ。一旦調べ物をしようか」
 戸口には、例の被害を受けた警備員の後ろ姿が見えている。
 スマホで撮影したあと、『|サイバネティクス探偵システム《タンテイカギョウノジッタイ》』を発動した。銃真の右眼が光り出す。
「さぁてチビくん共……『おしごと』の時間だ」
 義眼がこの状態のあいだは、|四二神《やつがみ》・カイト(四二神・銃真のAnkerの使い魔・h02492)と使い魔友達が、事務所で調べものをしてくれるのだ。
 返事はチャットの形で受け取るようになる。
「カイトだよ☆ 被害者の服が透けているのは、『色』を奪われたからみたいだよ★」
「『色』だって? そんなもの盗んでどうすんだ?」
 √EDENでの外星体出現情報によれば、手にしたものから元の持ち主の記憶にアクセスできるらしい。それを転用した洗脳らしく、現在は重力を操って静止状態にされている。
「記憶か……。『色』もモノに含まれると。それじゃ、犯人の合図ひとつで後ろから襲ってこられるかもしれないな」
 銃真は、ほぼ肌がみえている男性からちょっと距離をとる。
「後は建物のマップを用意しておいてもらうか。最上階に突入する前に一通り建物の様子を確認しておきたいね」
 自分でも慎重すぎると思うが。
「オレはどこにでもいる只の私立探偵だからね……。罠しか無さそうなところに飛び込むには、準備はしておかなきゃさ」
 するとカイトから、いい方法があると返事がきた。
 監視室のカメラのハッキングだ。|探偵の必需品《スマホ》との接続で、静止状態の人間が放置された場所がおおむね把握できる。屋上に通じる階段にだけ、動ける人間たちがいた。
 残念なことに、活動状態の人々の洗脳は完全で、いまや潜入工作用改造人間『スニーク・スタッフ』だ。
 階段の突破は必須とわかったが、そのかわりに途中の静止した犠牲者を迂回できるルートは確定した。

第2章 集団戦 『潜入工作用改造人間『スニーク・スタッフ』』


星々・空々

 |星々・空々《ほしぼし・そらら》(スターリースカイハイ!・h02946)が最上階まで駆け上がってくると、白衣や警備員制服、背広にネクタイ姿の男女が立ちふさがる。
「色を奪って透明にする……回りくどいことをするんだね」
 そう、職種ごとの服を着ているが、この潜入工作用改造人間『スニーク・スタッフ』が身につけているのは、ビニール製のレインコートみたいな素材なのだ。
「そんなことしなくても、私の服ならこの通り! 『フィンガーアクセプト! インデックス!』」
 人差し指をベルトに入れる。空々は、純白の褌姿に変身した。
 筋肉で引き締まった絶壁の胸、目を引く巨大な尻。褌一丁、他は衣服無し。
 武器として、棘付鉄甲『威風堂々』が装着された。(服装的に)背水の陣に立ったところで、洗脳改造された人間たちを鉄甲で殴り倒していく。
「√EDENまで来たのに、変身するヒーローは追ってきますか」
 改造人間のひとりが喋りはじめた。
「ボスの外星体だね。褌の『色』を奪われたってお構いなしなんだから!」
「私は忙しい。だから、この男の脳髄を借りて、君と話す」
 ズォーム本人ではないので、透明化はできないのかもしれない。ただこの警備員服(透明だが)の男だけ目が燃えるように赤くなった。
「君の褌には興味があります。ほら、分析で『隙』がみつかった」
 指差されたところを自分で確認する、空々。
 布地の横の『隙』から、金色のちぢれたものがはみ出している。
「こ、これは……」
 指でなぞって内側へ入れ込もうとするが、今度は上部にできた『隙』から、もっと直線的なものがワサッとのぞいた。
「むしろ恥ずかしくて興奮してやる気が漲るよ!」
 フィンガー・アクセプター空々が変身すると、速度と攻撃力、肉体耐久力とともに、羞恥心も二倍になるのだ。

ソノ・ヴァーベナ
四二神・銃真

 監視室で得られる情報は吸い出し終わった。
 ソノ・ヴァーベナ(ギャウエルフ・h00244)は魔導タブレットを、|四二神・銃真《やつがみ ガンマ》(そいつの名前は死神ガンマ・h00545)は探偵用のスマホを、それぞれ記録装置から抜いた。
 特定した上階への侵入経路は他の能力者にも送ったから、正解だったら先に戦闘が始まっているかもしれない。
「うまく、敵のいるところに出るかなー?」
「大丈夫だろ。ソノちゃんと、ウチのチビ共が調べたんだし」
 銃真が保証したとおり、最上階の廊下に並ぶ、透明な服の集団に出くわす。上り階段はここで終わって、屋上へは奴ら、『スニーク・スタッフ』が守る別の階段を使わなければならない。
 廊下への曲がり角に戻ると、ソノは宙に現れた魔法陣からルーン・マグナムを取り出した。
 敵はなにかしらの武器を発砲してくる。
 曲がり角を遮蔽に使って、乱れ撃ちでがんがん撃ち返す、ソノ。
「こういう展開って熱いよね、銃真さん!」
「え? ……ああ、まぁ」
 激しい銃撃戦に夢中な日焼けエルフをよそに、私立探偵は黒スーツの上から懐の拳銃に手をあてた。
(「洗脳された犠牲者に弾をぶち込むのは気が引けるな」)
 ルーン・マグナムは魔力を弾丸にしているし、敵が使っているのは外星体提供の光線砲らしい。銃真だけが、ガチっぽい銃器なのである。
「ここは、同じ撃つのでも異空間干渉弾といこう」
 廊下の前後に、異なる√世界の強制干渉によるひずみを起こす。
 銃真は生身で歩きだした。
 すでに倒れていた警備員から警棒を拝借し、喧嘩殺法による物理のゴリ押しで攻めていく。
 『ディメンションブレイク』が効いているあいだは敵の動きは鈍く、任意の味方をひずみから外すことで、結果的にソノの魔力弾は命中しやすくなる。
 殴り倒した相手から、早業で白衣を剥がした。
「なるほど、色を奪う……と。オソロシイことするね」
 試しに、黒スーツの上から羽織ってみる。うっすらと白が残っていた。
「今後に備えて奪える色が複数なのかを確認しておきたいからな」
 しかし、研究員のズボンやネクタイまで白だったとも思えない。
「まあ、仮にすべて奪えるとして……丸裸にしちゃって、いいのかい? そんなことしちゃうと、どこにでもいる只のイケメン私立探偵のすべてが曝け出されて全√にいる1億2千万人の女性ファンが泣いて喜んでしま……オイ誰だ笑った奴撃つぞ」
「フォッフォッフォッ……」
 一体だけ、赤い目を光らせている男がいる。
「面白い考えです。ぜひ実験したいところだが、私のいるところからはネガ・マインド・ウェポンは届かないようだ」
「外星体『ズウォーム』? ……に、操られてんのか」
 銃真は、集団敵の口を借りたボスと、戦闘の最中に会話しているのを奇妙に感じた。
 短い時間だったが。
「敵勢対象は沈黙させましょう。話し合いは終わりだ」
「じゃ、おしまいの一撃だよー! 『ラスト・ジャッジメント』!」
 ブランド『アルケイン・フレーム』の制服が生み出す魔法障壁を頼りに、ソノが廊下の真ん中で仁王立ちになっていた。
 ルーン・マグナムが変形した断滅神裁銃パニッシャーによる崩壊の弾丸を、赤い目の男に叩き込む。
 この一体は、透明の服がすべてバラバラになり、仰向けに倒れた。
「ギャギャッ!」
 ソノは目を逸らす。洗脳された敵は残りわずかだ。

不破・鏡子

「皆、調査お疲れさま!」
 |不破・鏡子《ふわ・きょうこ》(人間(√マスクド・ヒーロー)のマスクド・ヒーロー・h00886)が宇宙科学センターの最上階に現れる。
「遅くなったけどこの戦闘、助太刀するよ!」
 フルフェイスのヘルメットは黒いシールドがあって素顔はわからない。『対怪人戦闘用装甲胴衣』の頑丈さが、外星体との戦闘経験を物語っている。
 『スニーク・スタッフ』の光線砲を前にしても、威力は低いが回数が桁外れであると、鏡子はすぐに看破した。
「多少攻撃を貰ってでも速攻で敵を倒すのが良さそうね。また何の目的があってそんな事してるのかは分からないけど……やってやるわ!」
 撃破済みで床に転がっている改造人間の恰好を、チラとだけ見る。
「アーマーパージ! 全エネルギー、スピード系へ!」
 スピード・アッパー形態になる。
 胴衣は軽装になって、青く輝いた。速度重視で攻撃回数を上げて、弾幕の中を最短距離で突っ切っていく。
 メット内のディスプレイには、『60』から始まるカウントダウン。
 反比例して敵の光線砲の被弾は増えていく。
「全部食らう前に、素早くやっつけてやるわ!」
 総ダメージが低く押さえられればそれでいい。透明な背広の男の腕をとって捻じりあげ、白衣にボディラインを浮かせた女性を蹴り飛ばした。引き金を連打している警備員の顎に、拳を叩きこむ。
 カウントは残り、10。
 被弾数は50以下。
 余った時間で、奥にあった鉄階段を登りきると、屋上へのドアも蹴破る。
「いたわね、外星体『ズウォーム』!」
「君の姿には覚えがあります。失礼、名前はちょっと……」
 青空を背に、昆虫を思わせる頭部の人型が立っていた。重力レンズに変形した眼全体が、回転しながら左右にぎょろぎょろと動いている。
 両腕には破壊砲が装着ずみだった。強大なハサミを思わせ、重そうに上方へと掲げている。
「フォッフォッフォッ……」

第3章 ボス戦 『外星体『ズウォーム』』


四二神・銃真

 外星体『ズウォーム』は奇妙な、くぐもった笑い声を発している。
「ようやく親玉か。お外の星からご苦労さんだな」
 |四二神・銃真《やつがみ ガンマ》(そいつの名前は死神ガンマ・h00545)は昆虫顔を指差した。
 回転する複眼が、下を向く。
「いえ……。私の母星はもう無くなってしまったのです」
「なんだって?」
 重い話でも聞かされるのかと身構えた銃真だったが、屋上に据えられた空調機器の唸りがきこえるほど、静かだった。
 そして、『ズウォーム』は出し抜けに、両腕のハサミを水平に向けてくる。
 赤い光線が放たれ、銃真が転がって避けると、室外機のひとつに命中した。煤けた外装が透けていき、内部のファンが回っている。『色』を抜かれたのだ。
 監視室のビデオにも映っていた、洗脳能力である。
「フォッフォッフォッ……」
「正直、因縁がある気がしないが、オレ自身記憶がないもんだからどこから因縁つけられるかわかったもんじゃない……しゃあない、ここは『変身』するとしよう」
 『MHルートバレット』をブラスターに装填する。さっきの戦いはこのまま発射したが。
「ガンマ……|MH《マスクドヒーロー》!」
 今回はブラスター側面のスライドトリガーを1回引いて、最後に自身の左腕に撃ちこむ。
 √の力を宿した姿に変った。
「これでようやく|ヒーロー《HEEL-O》のお出まし……ッて奴だ」
「フォッフォッフォッ……」
 外星体はネガマインド光線を連射してくる。バレット・アクセプターは強化された反射速度と機動力で、それらもすべてかわした。
「さァて……割とスペース取る変身を済ませたら、あとは撃ッて撃ッて撃ちまくる」
 変身時にだけ使える大型拳銃『グリムリーパー』。
 敵の光線を避けながらも、正確にポイントする。
「どこから来たか知らねェが、生きてるンなら|心臓《ココ》とか|頭《ココ》とか適当に弾ブチ込んでけば死ぬだろ」
 実は語彙の汚さも強化されている。
 『ズウォーム』の複眼がギョロついた。
「ですから! 私の故郷は、進んだ科学を持ち、それゆえにひとりの発明によって母星の……ぐわッ!」
 喋る気になったとたん、『グリムリーパー』に額を撃ち抜かれて膝からくずおれる。
「ホントに死んだか? ……いや、まだだ」
 うつぶせに倒れていく昆虫人の身体が透けると、脱皮したかのように無事な身体で立ち上がってきた。
 |ヒーロー《HEEL-O》は動じない。
「なぁに、ライフが一個消滅。そのうち0になって、死ぬ死ぬ」

不破・鏡子

「覚えがある……?」
 |不破・鏡子《ふわ・きょうこ》(人間(√マスクド・ヒーロー)のマスクド・ヒーロー・h00886)は、外星体の戦いぶりを見た。武器召喚など、いくつか違いがあるようだが。
「もしかしてあの時の奴と同一個体だって言うの?」
「ええ。講師の募集から『おしおき先生』を作ろうとして失敗しました。√EDENで実験を続けるつもりがいやはや」
 侵略外星体簒奪者も√能力者だ。
 死後蘇生してきたのだろう。戦いのなかではこうした再会もある。
「それなら先日はどーも、前回はあなたの力を読み損なって遅れを取ったけど……もうそうはいかないんだから!」
「私だって、ヒーローに邪魔ばかりされてもいられません」
 回転する複眼は、無重力レンズアイだ。
 外星体に近づこうとして踏み切ったコンクリート床に抵抗が感じられず、鏡子はその場で浮かび上がってしまった自身の恰好に気がつく。
「厄介な目ね、視線で重力を操作してるとでも言うの?」
 ダメージは覚悟の上であり、エネルギーバリアでの軽減も可能だが、無重力状態では戦い辛い。
「……なら、こちらも、『重力制御装置』作動!」
 完璧とは行かないが、ある程度は普通に戦える状況をつくる。
 今度こそ、前進した。
「きっちり雪辱を晴らしてやる!」
 徐々に上がっていく、移動速度。
 宇宙科学センターの屋上は、パイプ類や電気制御などでデコボコしており、遮蔽は十分にとれる。
 『ズウォーム』に正面から睨まれないように気をつけながら、『グラビティ・コンバット』を仕掛けた。
「そのでっかい頭を蹴っ飛ばしてやるわ。『重爆撃』!」
 3倍まで加速したダッシュからキックを放つ。
「むむ、うぐぐぐぐ」
 昆虫的な頭部を俯かせて、外星体は膝をついた。

クレア・霧月・メルクーシナ
四宮・鏡弥
川西・エミリー
エスピリトゥ・ナククン

 √EDENで日常をおくる人間たちが、多摩のビルの屋上でこんな戦いが行われているなど、夢にも思わないだろう。
 ボス怪人は手負いであり、あと少しで撃破できそうなのだが。
「外星体かぁ……。お互い、殴り合おうか。なんて、するわけないだろう」
 エスピリトゥ・ナククン(永遠に闇から守る者・h04426)は、屋上の性質をつかって遮蔽をとった。
 敵、『ズウォーム』は洗脳光線や無重力レンズなど、命中されると厄介な武器を多く持っている。
「卑怯と言われてもね、これが得意技だからな」
 研究施設だからか、様々な大きさのタンクと配管があり、その下を潜って接敵を試みる。エスピリトゥは外星体『カラン』なのだ。護霊『シャドウ』の手も借りて、腕を剣に変化させた。
 腕がハサミになってるヤツの隙をつき、一撃加える。
「グフッ! き、君の存在はわかりにくい……」
 焦れた『ズウォーム』はハサミからの破壊光線を一斉発射した。
 屋上のあちこちで溶けたり、燃えたりする箇所が出てくる。命中率は低いので、能力者は隠れたままでいられるが、やはり光線に当たるわけにはいかない。迂闊に攻撃できなくなった。
「どうするかな……おお?」
 タンクのあいだから覗いたエスピリトゥは、東京都の方角から飛来する物体に気がつく。
 |二式飛行艇《H8K》の性能を具現化した|少女人形《レプリノイド》だ。
 |川西《かわにし》・エミリー(|晴空に響き渡る歌劇《フォーミダブル・レヴュー》・h04862)は、他にふたりの√能力者を乗せ、合流してきたのである。
「間もなく戦闘区域です。災厄のみなさん、突っ込みますよ!」
「災厄のみなさん……ちょっと、エミリーちゃん! ほかに言い方あるんちゃう? なぁ、クレアちゃん?」
「アハハ。気にいったよ。私は『ネクロノミコン』で、鏡弥さんが『オオマガツヒ』ね」
 そう呼ばれた男性が、|四宮・鏡弥《よみや きょうや》(人間災厄「オオマガツヒ」の警視庁異能捜査官カミガリ・h04253)で、笑っている女性が、クレア・|霧月《ムツキ》・メルクーシナ(能天気災厄「ねくろのみこん」・h04420)だ。
 エミリーは、宇宙科学センターの屋上と水平になるよう、高度を維持した。
 10歳の少女は、乗せてる大人たちが感心するほど度胸が据わっている。ぼやきながらも鏡弥は、仕事をキッチリこなさねばと、身を乗りだした。
「僕の√能力がよう効くんは、調べがついとるんや」
 屋上一帯を含めるように、『霊能震動波』を放った。
 外星体がハサミを持ち上げ、波動を防ごうとしている姿が見える。目立った外傷はない。
「わからんやろ。|霊震《サイコクエイク》が効果を現わすんは、この後や」
「次々と……。あれもヒーローなのですか?」
 ズウォームは見上げ、旋回にうつったエミリーに破壊砲を向けた。
 その足元に達したエスピリトゥが、詠唱する。
「我、影に住む者として護霊『シャドウ』に命ずる。『ズウォーム』に融合せよ!」
 この能力もダメージはない。
 そのかわり、融合されたほうの外星体は、行動力が下がっていくのだ。持っている武器の使用が極端に難しくなる。さらに、鏡弥が|霊震《サイコクエイク》の対象に選んだ。
 本人にだけ、激しい振動が起こる。
「フォッ?!」
「かかったで! クレアちゃん!」
「お任せあれ♪ サモン・クロウ、カラスく~ん。お願いねっ!」
 漆黒の鳥類が十数羽、|古代語魔術師《ブラックウィザード》に喚び出され、外星体の頭へと群がる。
 クチバシや爪による攻撃は、弱った敵の体力を削るには十分だった。
「フォフォフォ~」
 外星体『ズウォーム』は情けない声を出しながら、屋上の床にうずくまってしまった。
 自分から動けず、振動にも邪魔される。カラスからみれば、虫などデカいご馳走。
「すご~い。こんなコンボってあるう?」
 クレアは大喜びだ。
 うずくまった状態から、また分身蘇生しようとしたらしいが、薄ぼやけた状態で身を起こしただけで、失敗する。
「と、鳥を、鳥を見た……成田先生、ごめんなさい」
 カラスが引き上げ、能力者たちが見つめる前で、『ズウォーム』は爆発四散する。
 事件の首謀者はいなくなった。
 エミリーは着陸すると、仲間を降ろしたあとで、『世界を変える歌』を歌いはじめた。
 屋上から階段で建物内に入り、歌いながらセンター内を下の階へとおりていく。色を奪われた非√能力者に聞かせることで、『励ます歌い手の幻影』がその場に残り、回復を手助けした。
 洗脳改造が完了してしまった被害者は、√能力を獲得した集団敵となっていたので、元には戻せない。√EDENゆえ、同僚を失った悲しみも消えてしまうが、ともかく多くの人を救ったのだ。
 宇宙的な柱が連続する、白壁の通路を歩くエミリーは、花道をいくスタァのようであった。
 能力者たちは、それぞれの√へと帰還する。

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