シナリオ

11
魔法の古城、ハロウィンオーベルジュ

#√ドラゴンファンタジー

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√ドラゴンファンタジー

※あなたはタグを編集できません。

 冒険王国に一夜だけ現れる、特別なおばけの古城に入るための魔法の合言葉。
 ――トリック・オア・トリート! お菓子くれなきゃ悪戯するよ!
 いつもとは違う格好で、そんなハロウィンの呪文を唱えれば。
 ジャック・オ・ランタンの光が灯る魔法の古城・ハロウィンオーベルジュの門が開いて、皆を招き入れてくれるだろう。
 そして古城に足を踏み入れれば、愉快で摩訶不思議なハロウィンの長い夜の、はじまりはじまり。

 ジャック・オ・ランタンの光が灯る中、彷徨い歩く愉快な客人達が楽しめるのは。
 ハロウィンの魔法がかかっている今宵だけおばけの古城と化した、冒険王国の古城で過ごす一夜。
 美味しいお菓子やハロウィン限定メニューや不思議な魔法ドリンクを作ったり味わったりだとか。まるで魔法のようにちちんぷい、ハロウィンアクセサリーやランプ作りなども体験できるし。ハロウィンネイルやハロウィンメイクをしてもらうのもまた醍醐味。それに、大きなおばけ南瓜が転がってくる地下迷宮には、お菓子のお宝があるらしい??
 一人部屋から大部屋まで沢山の部屋があるから、ひとりやペアでゆったり過ごしても、大人数でわいわいおばけパジャマパーティーや枕投げなどをするも良し、女子会男子会ならぬおばけ会を開くのもきっと楽しい。
 ハロウィン色の古城内では他にも、お菓子が貰えたり舞踏会などが開かれたりなど、飽きることなく楽しめるだろうから。
 いざ――トリック・オア・トリート!
 ハロウィンの魔法がかかる特別な夜を、目一杯満喫しよう!

●摩訶不思議ハロウィンナイト
「ハッピーハロウィン。皆は今年は、どのような仮装をするのだろうか、楽しみだな」
 楪葉・伶央(Fearless・h00412)はそう柔く笑み、集まってくれた皆に礼を告げた後、星詠みの予知を告げる。
「今回赴いて貰いたいのは、√ドラゴンファンタジーだ。ダンジョンを探索し攻略してもらいたいが、まずはダンジョン最寄りの冒険王国を訪れ、冒険の準備を整えてから向かって欲しい。ちょうど今はハロウィンの時期、冒険王国の古城ホテルもハロウィン仕様になっているようなので、折角だからハロウィンを楽しんでからダンジョン攻略に向かうのも良いだろう」
 ダンジョン最寄りの冒険王国にある、SNSでも映えるとバズっている人気の古城ホテルが、毎年一夜だけ、特別な城へと変化するという。
 それは、ハロウィンの魔法がかけられた、お化けたちが集う愉快な城。
 けれどこの日、城に入れるのはいつもと違う姿に変身した人のみ。
 この城に入るための条件は、仮装して――トリック・オア・トリート! と合言葉を告げること。
 そうすれば、ジャック・オ・ランタンの光が灯るお城の門が開かれるだろう。
 仮装は自前のものでもいいし、貸出もしてくれるというし、光る猫耳カチューシャをつける程度などでもオッケーだ。ハロウィンネイルやメイクなどもしてもらえるという。
 ハロウィンオーベルジュではその名の通り、美味しいハロウィンスイーツや料理をおなかいっぱい堪能できるようだし。南瓜頭シェフ直伝のお菓子教室や、妖しい魔女先生のカクテル講座など、作っても楽しめる。
 他にも、好みのハロウィンランプやハロウィンアクセサリー作り、古城探索や地下迷宮の冒険、おばけ舞踏会等々、他にも楽しい催しや仕掛けが盛り沢山なのだという。
 古城であてがわれる部屋も、一人部屋から大人数まで様々な部屋があるので好みで選べるので、雰囲気たっぷりな古城ホテルで思い思いに過ごして欲しい。
「そして今回攻略して欲しいダンジョンは、お菓子なダンジョンだ。それは「罠もお菓子、モンスターもお菓子、そして使える武器もお菓子のみ」というお菓子尽くしの迷宮だという。ダンジョン内に落ちているスイーツ系武器や装備で武装し深奥を目指して、ボスを撃破しダンジョンを攻略してきてくれ」
 伶央はそこまで説明した後、楽し気に微笑んで。
「俺は甘いものが好きだ。とても大好きだ。ダンジョン攻略は勿論のこと、ハロウィンの夜も目一杯楽しんできてくれ」
 トリックオアトリート――そうハロウィンの魔法の呪文を唱えつつ、摩訶不思議な夜の冒険王国へ続く路地を指し示すのだった。

マスターより

開く

読み物モードを解除し、マスターより・プレイング・フラグメントの詳細・成功度を表示します。
よろしいですか?

第1章 日常 『おかしなおかし』


 魔法の古城の歩き方、それは皆様にお渡しした、お城の秘密の地図をご覧あれ。
 ジャックオランタンの光が数多灯る古城は、今夜はハロウィンの魔法がかかっているから。
 このお城のドレスコードは、『いつもとあなたと違う格好』。
 もしも変身の準備がまだだったり、お色直ししたければ、メデューサのサロンへ。
 各種好きな衣裳を取り揃えていますし、南瓜頭や、猫耳や悪魔角などの各種光るカチューシャの貸し出しも。
 ハロウィンネイルやメイクなども承っておりますので、おばけなお洒落もどうぞ楽しんで。

 広い古城は、摩訶不思議な楽しいや美味しいでいっぱいのオーベルジュ。
 ゆっくりおひとり部屋からふたりでのんびり過ごせる部屋、わいわい広い大部屋まで、お部屋の選択もお好みで。
 そしてオーベルジュと謳っているからには、美味しいハロウィンスイーツや料理をおなかいっぱい堪能いただけます。

 まずメインダイニングにご用意しているのは、おばけモチーフのハロウィンメニューが満載のビュッフェ。
 おばけな具材がいっぱいなパンプキンシチューや魔女のイカスミ黒パスタ、黒パンミミックハンバーガーにおばけチーズピザ、狼男お墨付きステーキやおばけ大王イカの海鮮パエリア、目玉たまごのミートローフ、ミニ棺桶の器に入った南瓜グラタンなどの食事系から。各種モンスターケーキや毒林檎ムース、ジャックオランタンのパンプキンプリンアラモード等々のデザートまで、豊富なメニューを好きなだけ味わえます。
 落ち着いた雰囲気のブラッディーカフェ&バーで味わえるのは、吸血鬼マスターのおすすめスイーツとドリンク。
 蜘蛛の巣チョコがかかった真っ赤な血の色ベリームースに、ホワイトチョコをかぶったおばけカヌレ、おばけカボチャプリンパフェはミニサイズから超特大バケツサイズまで!
 飲み物も、成人していれば、血のように赤い「ブラッディーワイン」や、レモンピールの星がちりばめられたカクテル「マジカルポーション」、他にもお好みのカクテルを作って貰えるし。
 各カクテルはノンアルコールにも変更でき、お酒が飲めない人でも、好きなお化けを書いて貰える各種ラテや、魔法のレモンの雫たらせば色が変わるバタフライピーサイダーなどの限定ドリンクも。
 そしてこれらのものは全てテイクアウトが可能だから、各レストランやカフェだけでなく、展望テラスや庭など古城の好きなところで食べられるし、部屋にも運んでも貰えるのでパーティーしたり等々、お好きな場所でどうぞ!
 
 そんな美味しいものを、味わうだけではなく作れたりもするんです。
 南瓜頭シェフ直伝のお菓子教室では、ハロウィンアイシングクッキーとプチカップケーキ作りが。妖しい魔女先生のカクテル講座では、好きな色や味わいのオリジナルカクテルが作れるから、今夜だけ南瓜頭や魔女の弟子になるのもいいかも?
 それから魔法みたいにちちんぷい、モノづくりも楽しめます。
 キラキラ好みの色で作れる、ジャックオランタン型のハロウィンステンドグラスランプ作りであったり、ハロウィンステンドグラスサンキャッチャー作りだったり。好きな色の石や宝石と、好みのハロウィンモチーフを組み合わせた、銀細工アクセサリー作りも。
 また、雰囲気たっぷりな古城を探索をしながら、出会うおばけスタッフに「トリックオアトリート」の呪文を唱えれば、お菓子が貰えるし。
 おばけ南瓜がごろごろ転がってくる地下迷路にチャレンジして見事攻略できれば、お菓子詰め合わせなお宝が貰えるらしい!?
 それに、ジャックオランタンやキャンドル灯る大広間では、おばけ舞踏会が開催されます!
 ちょっぴり怪しかったり愉快だったりする音楽に合わせて、くるくる他のおばけたちと踊ったり。
 色々な種類のアイスが楽しめるおばけアイスクリームバーもあるから、躍るお化けたちを見ながら、アイスハロウィンパーティーを楽しむのもまた良し。
 チョコレート味の黒猫さんにゴーストバニラアイス、イチゴモンスター味に、虹色マジカルミックスアイスにパチパチ弾けるイタズララムネ味、季節限定のジャックオランタンアイスなどなどのアイスが食べ放題。ビッグサイズからミニサイズ、色々な味を楽しめるひと口用プチサイズなども選べて。そのまま食べてもいいし、夜空色のソーダに浮かべてハロウィンクリームソーダにしてもらうこともできるんです。
 
 勿論、ハロウィン仕様に飾られた部屋でゆっくりお過ごしいただけます。
 古城レストランやカフェバーで提供される、料理やスイーツやドリンクは、全て部屋までお運びいたしますし。
 部屋で思いっきり、おばけパジャマパーティーや、人をダメにするもふもふモンスター型枕投げなどをするも良し。女子会男子会ならぬ、おばけ会をするのも楽しそう。
 それに部屋だけでなく、古城には密かな穴場スポットも沢山。
 古城の展望テラスから望む夜の冒険王国の景色と夜空はとても幻想的で美しいし。
 ハロウィンイルミネーションが煌めく広い庭を散歩するのもまた、雰囲気抜群。
 秘密の書庫に足を運べば、もしかしたらレアな魔導書も見つかるかも……?

 他にも古城でできることならば、自由に楽しんでいただければ。
 何かございましたら、当古城のおばけスタッフにお声をかけてくださいね。
 それでは、ハロウィンの魔法がかかった古城の夜を、存分にお楽しみください!


<マスターより補足>
 仮装がドレスコードですが、仮装にプレイングで触れていなくても仮装していることになります。文字数削減のため仮装に関して触れずとも大丈夫ですし、逆にご指定あれば描写いたします。
 OPや断章に記載なくても、できそうなこと、ありそうなメニューやイベントや場所などなど、作っていただいても構いません。
 お好きなように、自由に過ごしていただければです!
八卜・邏傳
野分・時雨

 ハロウィンの魔法がかかった古城に入る条件は、ひとつだけ。
 門番おばけが早速チェック!
「今年の仮装~! 代用ウミガメくんです」
「ステキ代用ウミガメちゃんとやってきたカカシでぃす」
「カカシくんとメルヘンしに来ました!」
 野分・時雨(初嵐・h00536)こと代用ウミガメくんと、八卜・邏傳(ハトでなし・h00142)なカカシは、勿論入城オッケー!
 長い袖やスートの装飾をふりふり、背中の甲羅を弾ませるウミガメさんな時雨と、通された城内を歩きながら。
 鳩さんたちも一緒に、視線巡らせていた邏傳カカシが早速見つけたのは。
「おいしそいっぱーい!! ミミックハンバーガーにミートローフなお目めかわい〜♡」
 オーベルジュを謳うだけあって、美味しそうでしかもかわいいおばけなごはんたち。
 黒パンミミックハンバーガーやミートローフの目玉たまごたちと、ぱちりと目が合って見つめ合ってから。
 魔導書みたいなメニューをぺらりめくってみれば。
「他にも面白可愛ぇのいっぱいね、時雨ちゃ……れ? 迷子?」
 ハロウィンの魔法のメニューに目移りしていれば――時雨の姿が忽然と消えています!?
 そう、爆速ではぐれたのである。
 とはいえ、カカシさんは城内の地図を確認してから。
「わぁぁ会えてよかった!」
 向かってみた先で、速攻合流!
「ごめんね。妖しい魔女先生のカクテル講座行ってきたの。美味しい酒くれるって……」
 ウミガメくん、魔女先生にトリックされていたようです。
 というか。
「でもそこ居てそな気はしちょったんよ」
 お菓子ならぬ酒がもらえるここだと思いました、ええ!
 そんな邏傳に、時雨が差し出すのは。
「代用カクテル作ってきたから! 邏傳くん用のモクテル! ノンアル! 許して。ね!」
「俺用の! モクテルちゃん!! 作ってくれたの? めちゃ嬉しーっ♡ 俺も美味しそいっぱい包んで貰ったんよ」
 ということで――おばけメニューをつまみに、カンパーイ!
 美味しく食べて飲めば、魔法にかかったみたいに、いい感じにふわほわ。
「いい気分なので迷宮行こ~」
「わぁい迷宮GO!」
 おばけな夜に酔い痴れながら向かうのは、どきどき地下迷宮!
 見事攻略できれば、お菓子詰め合わせなお宝が貰えるらしいです!
 けれど、いくらほろ酔いでも、迷宮に無策で飛び込むような時雨ではなく。
 しゃきんと手にしたのは、貰っておいたお菓子。
「こういう時は! お菓子落として、帰り道の目印作るんですよね。知ってますとも!」
「帰り道の目印! 時雨ちゃんあったまいー!」
 というわけで、余裕な様子でお菓子をぽとぽと落としつつ、どんどん奥へと進んじゃいながらも。
 時雨はそっと、お隣のカカシさんに訊いてみる。
「邏傳くんお化けさん平気タイプ?」
「お化けちゃんすきよ?」
 そして返る言葉通り、うきうき楽し気な邏傳のその姿を見れば、確かに好きそうで。
 だから、時雨は先に言っておくことにする。
「時雨ちゃんもへー……きでないん?」
「ぼくあんまり。妖怪は平気ですけど、見慣れないお化け苦手です」
 ということで――出たら盾にするからね、って。
 でも邏傳はお化けちゃんすきな頼れるカカシさんだから。
「へへ♡ 立派な盾なれるかな?」
 むしろ盾にされることに、嬉しそう……?
 というわけで頼もしい盾もゲットできたし、お菓子大作戦で迷子になることは――。
「あれ、邏傳くんの鳩、目印食ってない?」
「てぇ、うゎぁぁ本当だ、鳩ちゃんズお腹すいちょったん!?」
 なんと目印にと落としてきたお菓子が、邏傳カカシさんと一緒にいる鳩さんたちのおやつになっちゃいました!?
 けれど邏傳は、クルックーと主張する鳩さんたちの証言にこくりと頷く。
「うん? 散らかしちゃらダメ? そゆことなら仕方ねぇね」
 むしろ鳩さんたちはいたずらっ子ではなく、いい子ちゃんです!
 だが時雨は、見慣れないお化けがこないか震えながらも、紡ぎ落とす。
「嘘……帰れない……おしまい……ぼくらの墓はここ」
 けれどそう、邏傳はお化けちゃんが好きだから。
「俺達が本物オバケになっちゃうね☆」
 本物おばけになっちゃうのも、いいかもしれない……?
 そんな楽し気なカカシさんに、ウミガメさんは必死に懇願する。
「諦めないで! 鳩に吐いてもらって!」
 諦めて残りのお菓子を美味しそうに食べている鳩さんを、涙目で見つめながら。

物部・真宵
井碕・靜眞

 ハロウィン色に煌めく古城を共に巡るのは、ハロウィンの花嫁とチャイナマフィア。
 そして、こどもおばけが、トリックオアトリート! ってわくわく声を掛けてくれば。
 悪戯も楽しいかもしれないけれど、でもやっぱり困っちゃうだろうから。
 お菓子をどうぞ――そう、今宵花嫁に変じた物部・真宵(憂宵・h02423)がちいさなおばけたちに差し出すのは、手作りの一口アップルパイとカヌレ。
 同じように、今夜はチャイナマフィアな井碕・靜眞(蛙鳴・h03451)も……同じく、こちらでご勘弁を、と。
 チョコレートや飴玉を渡せば、無事に悪戯されずに、嬉しそうに去っていくこどもおばけたち。
 そんな様子を見送っていれば――ふいに、つんつん。
 左腕に感じれば、靜眞はあげた飴玉みたいに目をまるくしてしまう。
 真宵のつんつんは、ふとわいた悪戯心。
 だって今日は、ハロウィンなのだから。
「井碕さんトリックオアトリート?」
 そう紡いで見上げれば、靜眞は瞳をぱちりと瞬かせた後。
「えっと……お、お菓子でいいですか?」
 彼女にもチョコレートや飴玉を差し出しながら、そっと小さく困惑する。
 ……いや、なんで一瞬戸惑ったんだおれ、って。
 そう内心思っていれば、真宵のルールブルーの瞳が無邪気な色を湛えて。
「ふふ、残念。悪戯チャンスだったのに」
「……チャンス、でしたか」
 思わず靜眞は、どき、としてしまう。
 それから、引き続きおばけたちにお菓子を配っていたのだけれど。
 ずっと巡るのも大変だから、古城の庭でひと休み。
 真宵は改めて、彼の姿を見つめて。
「井碕さんの仮装意外でした」
「あ……これはその、同僚が。潜入捜査用でもあるんですけど」
 そう返した靜眞は、彼女にも思いのまま言葉を向ける。
「……その、物部さんもお似合いです」
 そしてそんな、彼らしい飾らぬ賛辞に微笑みを返しながら。
「いつもと違ってちょっとどきどきしちゃいますね」
 真宵が耳をふと澄ますのは、幽かに聞こえる舞踏会の音色。
 それをこうやって遠くから楽しむだけでも、わくわく心躍るのだけれど。
「踊っていただけますか」
「――え」
 思いがけないお誘いに、ぱちりと瞳を瞬かせてしまう真宵。
 だって、聞こえる舞踏会の音を耳にすれば、靜眞の心に生じたのはこんな気持ちだったから。
 今日はいつもと違う格好だし、魔法がかかっている特別な夜だからだろうか……なんとなく、誘いたくなったから、と。
 そんなやっぱり飾らぬ言葉で告げられたお誘いを、真宵はうれしく思うのだけれど。
 でも、恥ずかしくもあって。
「わたし踊ったこと、なくって……」
 そう、そっと返せば。
「まぁ、自分もうまくは踊れないので。足さえ踏まなければ、大丈夫です」
 彼も同じだと聞いて少し安心する。
 だから、差し伸べられた手にそっと指先を添えて、お返事を。
 ――はい、喜んで、と。
 そしてリードしてくれる彼の手を、今宵も頼もしく思う。
(「大きな手、何度助けられただろう」)
 今だって、この温かさにとてもほっとしているから。
 そしてそんな真宵と共に舞踏会の輪に入りながら、靜眞は慎重にくるり。
 きっと傍から見れば、おぼつかないステップかもしれないけれど。
 でもそれでもいいって思う。
 音にさえ合わせられれば――あなたが楽しくあるように、って。
 だってもう、目の前の彼女のことしか見えていなくて。
「あの、お綺麗です、すごく」
 耳に届いた靜眞の声に、真宵も飾らぬ言葉で返す。
「ふふ。嬉しい」
 そして……綺麗に笑えているかしら、なんて。
 そう思うのは、とても今、ドキドキしてしまっているから。

ネム・レム
エストレィラ・コンフェイト

 ジャックオランタンたちに歓迎されながら、古城の門を潜ったのは、三人の魔法使い。
 そう、今夜は仲良くお揃いで、魔法使いに変身!
「ふふ、似合っているか? ふたりも大変に愛いなぁ!」
 無意識的に翼をぱたぱた、そうご機嫌なエストレィラ・コンフェイト(きらきら星・h01493)の声に、ネム・レム(うつろぎ・h02004)も頷いて。
「うんうん、ふたりともよう似合っとるねぇ」
 ハニーもエストレィラと同じくらい、ご機嫌な魔法使いさん。
 そしてやってきた古城で過ごす魔法のひととき、何をするかと考えて見れば。
「ハニーもおるからお部屋でのんびりしよか」 
 今宵の魔法使いたちの秘密基地でもある部屋へと案内してもらえば、ネムはくるりとひと通り見回して。
「にしても……賑やかなお部屋やねぇ」
 つん、とつついてみるのは、ゆらゆら揺れる起き上がりこぼしのかわいいおばけ。
「かわいらしいお顔のおばけさんやから、これやったら怖ないやろか?」
「可愛らしいとは思うが怖いとは……」
 彼の言葉に、エストレィラはそうそっと声を潜めて口にしてしまうけれど。
 ……ふふ、冗談、なんて自分をにこにこ見つめる彼に気づけば。
「い、いや、わたくしはおばけとか全然怖くないぞ!?」
 あたふたしつつも、こほんとひとつ、咳払い。
 そんな彼女の様子に笑いつつ、ネムが広げるのは、魔法使いらしい魔導書……?
「ほれほれ、レィラちゃんは何食べたい?」
 その魔導書の中身は、美味しそうなハロウィンメニューでいっぱいで。
 メニュー表を開けば、ぬっと出てきた白い手がてしてし!?
 いや、それはもふもふおばけさんではなくて。
「……ハニー、全部は無理やで」
 食いしん坊な魔法使いさんでした!
 そんな待ちきれないようなハニーに、ふたりは目を向けて。
「やけど色々頼んでわけよか」
「ハニーちゃんは欲張りさんだなっ。ではわたくしのも分けてあげよう」
 早速、気になるものをあげてみる。
「目玉たまごのミートローフとおばけチーズピザ。モンスターケーキ……は化け猫さんやったら可愛いやろか」
「おばけかぼちゃのスープ、ハロウィンミニバーガー。どれも美味しそうだ」
 ハニーが全部ってお強請りする気持ちも、わかります。
 そして注文を済ませ、頼んだものが運ばれて並べられれば――いただきます!
 それから、エストレィラはそっとスプーンを手にしつつも。
「目玉ゼリー……見た目がすごいが、ハロウィンっぽいな」
 ……ネムちゃんも一口どうだ? なんて勧めてみれば。
「おや、うれしい」
 ネムはエストレィラのことをじいと見つめて、こう続ける。
「ふぅん……目玉くれるん?」
「わ、わたくしの目玉ではないぞ!?」
 そんな彼女の反応に思わず笑っちゃって。
「あはは、わかっとるよ。ちょいとからかいたく……おっと」
「何やら揶揄われているような……」
 そう物言いたげに自分を見るエストレィラに、逆に差し出す。
「ほれ、猫さんケーキがレィラちゃんに食べてほしいて」 
 ……一口どうぞ、って。
 そんな猫さんならこわくないし、かわいくて美味しそうだから。
 エストレィラははむりと一口いただき、こくりと大きく頷く。
「うむ、美味である!」
 それから、気を取り直して目玉ゼリーを一匙掬い。
「わたくしの目玉は美味しくないからな」
 ――こちらの方がいっとう美味だぞぅ!
 そうエストレィラが主張すれば、再び白い手がぬうっ。
 ネムはもちろん、てしてしお強請りするハニーにもちゃんと、おいしい目玉をお裾分けするつもり。

榊・蓮
榊・空狩

 ――これいきたい、って。
 そう榊・蓮(わすれたもの・h09297)が言い出したのを聞いた時は、驚いたけれど。
 でも、榊・空狩(歩みを止めない者・h09296)は折角の機会だし、と。
 蓮と一緒に向かったのは、ハロウィン色に染まった古城。
 そんな空狩は、ハロウィンの催しは知識はあるのだけれど。
 行きたいと言われた声に、いいよって告げれば、蓮からこう問われる。
「でもハロウィンってなに?」
「悪霊から身を守るために仮装するお祭りだ」
 だから、自分が限りの事を、空狩は蓮には教えて。
 ついでにこれも教えてあげるか、と付け加える。
「それに甘い物が沢山食べれる」
 そう告げれば、蓮はちょっとそわりとするように返す。
 ……あまいものがおいしいのはおぼえてるの、って。
 でもすぐに、こてりと首を傾けて再び訊ねる。
「おばけのおまつりだからぼくもおばけになるんだね」
 仮装するお祭りだと、そう空狩からさっき聞いたから。
 そして今宵のふたりの姿は、目や口とかだけ穴をあけたひらひら布のおばけ。
 顔を隠したいと思っている空狩は、そんな幽霊の仮装はうってつけであるし。
 蓮もうれしくなる。
 ……顔あんまりみられたくないって言うくぅがのからだがやわらかいのわかるから、って。
 はぐれない様にと優しく肩を抱えられつつ、空狩とビュッフェに足を運びながら。
 それからずらり並ぶ料理を前に、空狩は再び教えてあげる。
「どれでも食べ放題だからな」
 そしてお皿をそちゃりと手にしたのはいいのだけれど、何せ蓮はかなり小柄だから。
 一人で伸びして取ろうとする姿をみれば、空狩はその身体を抱えあげて。
 彼が、これたべたいっていうものをとってあげつつも、思うのだった。
 ……やっぱり蓮は甘い物を沢山選ぶ、って。
 そして蓮は、うんうんとのびしていたら空狩が抱っこしてくれたから、気になるものに手を伸ばして。
「あれとこれとそれと……」
 たくさんいっぱい、お皿にもりもり。
 そんなお皿に乗るだけ乗せている姿を見れば、空狩はほわりと微笑ましく思う。
 というわけで、いっぱい美味しそうなものを取り終われば。
 取って来たものは、部屋で食べることに。
 そして魔法の鍵みたいなルームキーに記された部屋へ、空狩は蓮をつれて向かえば。
 ハロウィンの魔法がかかったみたいなお部屋で――いただきます!
 たくさん食べる気満々で、はむりと蓮はスイーツを口に運べば。
「おいしい」
 それから周囲に飾られたおばけさんたちを見て、こう空狩に訊ねる。
「ここ、てんごく?」
「天国ではないよ」
 空狩はそう訊いてきた蓮に、こう教える――二人の此処は現実だからな、と。
 それを聞けば、蓮もここは天国じゃないっていうのはわかったのだけれど。
 はむはむ食べていれば、おなかもいっぱいになって、ふわりおねむに。
 そして、ねむくなってこしこししてたら、くるんって。
 空狩が包んでくれて、そして優しくなでなでしてくれれば、蓮は心地よくなってうとうと。
 ふたりで過ごすおばけの時間に、ふわふわ夢見心地で思う――おいしいしあったかいしうれしいな、って。

マルル・ポポポワール
エアリィ・ウィンディア

 ハロウィンの魔法が掛かった古城へと向かうのは、ふたりの魔女さんたち。
 だって今日は、仮装がドレスコードだって聞いたから。
「仮装はスタンダートな魔女さんになろうかな?」
「わぁ! お揃いの仮装ですね! エアちゃん可愛いです!」
 三角帽子をかぶって、ふりふりひらりと黒の魔女服を身に纏って。
 ――それじゃあ一緒にトリックオアトリート!
 そうばっちり準備してわくわくやって来たのは、エアリィ・ウィンディア(精霊の娘・h00277)とマルル・ポポポワール(Maidrica・h07719)。
 マルルは、ちらりと古城のお化けスタッフさんを見て、三日月を象った魔女のほうきを思わずきゅっと握るけれど。
(「ちょっと怖いですが、エアちゃんと一緒なら平気です!」)
 お揃い魔女さんのエアリィが一緒で心強いから、大丈夫!
 そしてふたりで向かったお菓子教室で、今宵の先生にぺこりとご挨拶。
「南瓜頭のシェフさん、よろしくお願いしますね」
 そんなマルルは、お菓子作りにやる気満々。
 ……私もメイド修行で鍛えたお菓子作りの腕を披露して見せます! って。
 教えて貰って作るのは、いたずらおばけたちに配りやすいクッキー。
 エアリィは、先生が作った見本をじいと見つめて。
「ハロウィンアイシングクッキー? ええと、どんな形でもいいのかな?」
 好きな形でオッケーだと聞けば、ちょっぴりだけ考えてから。
 それなら――と刹那、精霊交信で喚んだのは、6属性の精霊さん。
「ええと、モデルになってー」
 そう、しっかりと精霊さん達を見ながら形を作っていって。
 火・水・風・土・光・闇――各属性の色を着けていく。
「わ、精霊さんのクッキーですね、カラフルで可愛いです!」
 マルルは賑やかでカラフルなエアリィの作業台を見て、口にしてから。
 じゃあ私も……とモデルたちを召喚して、クッキー生地をこねこね、形をつくっていく。
「ルルちゃん、ふーこちゃんとシイロさんかな?」
 エアリィが言うように、召喚した竜のシイロさんと、狐の精霊ふーこちゃんのクッキーを。
 でもマルルが作るのは、シイロさんやふーこちゃんだけではありません。
(「それに……大好きなエアちゃんのクッキーを作っちゃいます!」)
 というわけで、大好きで可愛い魔女さんも作ってみれば。
「あれ? あたしもいる? それなら、あたしもルルちゃんを作るー」
 マルルの作っている魔女さんが自分だと気づけば、エアリィも仲良し魔女さんを追加して。
 楽しくわいわいしながらどきどき、カタチを作ったクッキーたちをオーブンへ。
 そしてあとは焼けるまで待つのみ……なのだけれど。
 折角ハロウィンの魔法がかかっている夜、じっと待つだけでは勿体無いから。
「アイシングが固まるまで、エアちゃん、一緒に踊りませんか?」
 マルルがお誘いするのは、古城の舞踏会場。
 勿論、エアリィは喜んで差し出されたその手を取って。
「踊ったことないけどなんとかなるなるっ!」
「少し嗜みありますので、エスコートはお任せを!」
 仲良し魔女さんだけでなく、竜も狐も妖精さんたちも、皆で。
 風に乗るようにふわふわくるり、ハロウィンらしい音楽に合わせて、一緒に楽しく踊ります!
 そして、めいっぱい楽しい時間を満喫していれば、あっという間にクッキーも焼けて。
 そうっとオーブンから取り出してみれば――カラフルな皆の姿のクッキーの出来上がり!
 美味しそうなばっちりな出来に、嬉しくてはしゃいじゃいながらも。
 エアリィはマルルと一緒に顔を見合わせ、笑い合う。
 ハロウィンの魔法がかけられた魔女たちの夜に……ドキドキしたけど楽しかったー、って。

セレネ・デルフィ
マリー・エルデフェイ
ララ・キルシュネーテ

 今宵の合言葉はそう――トリックオアトリート!
 そしておばけの古城の門を通るのが許されるのは、いつもとは違う姿に変身したモノたちだけ。
 でも勿論、やって来たサァカスの面々やキョンシーは、どうぞと中に案内される。
 だって、サァカスの道化師となったララ・キルシュネーテ(白虹迦楼羅・h00189)や玉乗りの魔女のサァカス衣装のセレネ・デルフィ(泡沫の空・h03434)、そしてチャイナ服を着てお札を張ったキョンシーのマリー・エルデフェイ(静穏の祈り手・h03135)は、上手にどろんと変じているのだから。
 ということで、一夜限りのハロウィンの魔法がかかった古城でこれから楽しむのは。
「ハロウィン使用のお部屋でハロウィンおばけ会です!」
 そう、マリーの言うように、愉快な仲良しハロウィンおばけ会!
 案内された部屋も古城の雰囲気とぴったりな、おばけいっぱいのハロウィン仕様。
「すごい……お部屋も、とってもハロウィンです……!」
「むふふ、見事なハロウィン部屋ね。ハロウィンおばけ会だなんて胸が踊るわ」
 魔法のカギで部屋の扉を開ければ、セレネと一緒に、ララも思わずわくわくしちゃう。だってこれから3人一緒に、華やかで美味しく怪しいハロウィンの夜に飛び込むのだから。
 そしてやはり、おばけ会といえば、まずはおいしいごはんの確保から。
 魔導書みたいな分厚いメニューをぱらりと紐解いてみながら。
「料理やスイーツは運んでくださるようですけど、ララさんとセレネさんは食べたい物はありますか?」
「料理を運んでくださるなんて、至れり尽くせり、ですね」
 お札は暫し上にぺらりと捲りつつも訊いたマリーと一緒に、セレネもメニューを覗き込んでみて。
「私は、毒林檎のムースが気になります」
「私はこのロシアン目玉マカロンと七色の層が綺麗な虹色ドリンクにしようかと思います」
 そうそれぞれ、気になるメニューを選んでみれば。
 ふたりに続いて、ララもこう告げる。
「ララは全制覇する勢いで食べ尽くしたいわ」
 ……ハロウィンのお菓子ってみんな独特でわくわくするわよね、なんて。
 サァカスの道化師になっても勿論、ララは腹ペコさんです。
 それから、それぞれが決めたものを注文をし終えれば。
 キョンシーなマリーは、勢いよくぴょんっ。
 その身の行先は、人をダメにするもふもふモンスター型枕!
 ずぼりともふもふモンスターに埋もれて身を沈めれば、だらーんとしながら、美味しいものを届くのを待ちます。
 お部屋ハロウィンのおばけ会だからこそ、堂々とできることです!
 そして注文した品々が続々と運ばれてきて、ずらりと並べられた刹那。
 セレネがどうしても視線がいってしまうのは、そう。
「……! おばけカボチャプリンパフェの超特大バケツサイズ……!
 それからつい、くいしんぼうなララをちらりと見てしまうけれど。
 目玉たまごのミートローフに早速舌鼓を打ちながらも、そんなセレネの視線を受け止めるララ。
 だって思われている通り、腹ペコ食いしん坊さんだから。
「その毒林檎ムースにおばけカボチャプリンパフェの超特大バケツサイズもいただこうかしら」
 皆で虹色ドリンクを手に乾杯した後、ララはわくわくしたように花一華咲くしせんを巡らせて。
「おばけカボチャプリンパフェの超特大バケツサイズ!? 超特大と言うだけあって大きすぎでは」
 マリーも、おばけカボチャプリンパフェの超特大バケツサイズの、そのあまりにもな大きさにびっくりする。
 でもやはり、マリーもセレネと同じように、ちらり。
「けれどララさんが居るし食べきれるかな?」
 ある意味、ララの胃袋への信頼は揺るぎありません……!
 そして期待通り、はむはむと、美味しくどんどんいっぱい食べていくララを見て、セレネはハッとする。
「は、こんなに食べさせてしまっては、護衛の皆さんに怒られてしまいますかね……?」
「護衛の皆さんが居ない今くらいは思う存分食べて貰いましょう!」
 でもララの嬉々とした食べっぷりを見れば、マリーの言うように。
 存分にいっぱい食べて貰うのが、きっと今いる皆の幸せ。
 セレネも頑張って、おばけなご馳走を沢山食べていきたいとは思うものの。
「私はそんなに沢山は食べられないので、よければ……少しだけ、お裾分けしてもらえると、嬉しいです……!」
 でも大きなテーブルの上に隙間がないほどに並べられた品々を見れば。
 こんなにあれば、好きなものを好きな量、お裾分けだって勿論できちゃうし。
 その量にもびっくりだけれど、セレネはそろりとマリーの前にあるものにふと目を向ける。
「マリーさんは、なんだか面白そうなものを選びました、ね」
「マリーのロシアンマカロンもいいわね。ふふ……トリックオアトリートの運試し、やってみる?」
 それは、ロシアンマカロン……!?
「ロシアンマカロンは誰が外れを引くか楽しみですね!」
「ロシアンマカロン……ハズレはどんな味なのでしょう……」
 早速、目の前にマリーがロシアンマカロンを並べれば。
 セレネは、思わずじいと、マカロンたちを見つめちゃう。
「大丈夫、かな……」
 そんなセレネに、ララは教えてあげる。
「ハズレは……ある意味で当たりなのよ」
「が、頑張ってチャレンジしますね……!」
 ハズレも、ある意味美味しい当たりなのですから……?
 ということで、皆で顔を見合わせ、こくりと頷き合えば。
 せーので、それぞれ選んだロシアンマカロンを、ぱくりっ。
 ハロウィンのかみさまは誰に微笑むのか――さぁ、3人の運命はいかに……!?

渡瀬・香月
饗庭・ベアトリーチェ・紫苑

 ハロウィンの魔法がかかる夜、お互い、いつもとはちょっぴり違う姿。
 何せ、おばけの古城のドレスコードは仮装。
 入城するには、普段とは違った姿に変身する必要があるようだから。
 渡瀬・香月(Gimel店長・h01183)と饗庭・ベアトリーチェ・紫苑(|或いは仮に天國也《パラレル・パライソ》・h05190)も、今宵はおばけの仲間入り。
「紫苑は元々が花の精霊みたいな雰囲気あるから仮装も違和感なく似合ってるな!」
 そう告げる香月と並んで歩く今日の紫苑は、木の精霊であるドリアード。
 香月の言うように、ハーバリウムのような花咲く印象がある彼女には、選んだ仮装がぴったりで。
「香月さんの仮装、とーっても似合ってます!」
 いつもは来店したお客さんをもてなしている香月だけれど、今日は悪魔執事として紫苑をエスコート。
 いや、古城なんて普段は来ることはないから、香月はちょっぴり圧倒されてしまうし。
 紫苑はその豪華絢爛さに、うきうき少し浮かれ気味。
 そしてやはり、ふたりが足を向けるのは。
「吸血鬼シェフの食材といえば、丁度血抜きした食材がありそうですね?」
「このメニューの魅せ方、参考になるなー」
 オーベルジュの花形でもある、メインダイニング!
 ハロウィンオーベルジュと謳っているだけあって、雰囲気作りは勿論のこと。
 ビュッフェ台に並ぶ料理も美味しそうな上にひとつひとつ凝っていて、紫苑は思わず瞳をキラキラ。
「わ、すごい……美味しいが何でも揃ってます!」
「パーティー料理に応用出来るかな?」
 香月も、自分の店の参考にもと、興味深く並ぶ料理を色々と見て回って。
「どれから摘まむか悩んじゃいますね」
 そうわくわく迷いつつも、紫苑はふと思う。
 ……普通の人は軽いものから入るんでしょうか、なんて。
 そんなスレンダーで美しいドリアードは実は、たくさん食べる健啖家なのです。
 そして香月は、料理も勿論だけれど。
「テーブルセッティングも豪華でいいなー」
 古城やハロウィンに相応しい雰囲気作りやテーブルセッティングも見逃せない。
 でもやはり、実際に食べてみないと色々わからないから。
 まず香月が取って食べてみたのは、おばけ大王イカの海鮮パエリアや棺桶の器に入った南瓜グラタンなど、ガッツリ食事系。
 そして紫苑は色々迷いつつも、まず取ったのは、数個の南瓜プリン。
 それから美味しさに舌鼓をうちつつも挑んでみるのは、食材を探る謎解き!
 まずはひと匙、はむりと口に運んでみれば。
「生クリームと、後味に少し栗っぽさがあるような……」
 紫苑はそう推理しつつ、香月へと視線を向けて。
 ここは本職に聞いてみるに限ると……どうですか? と訊ねてみれば。
「うーん、中にちょっとマロンペーストが入ってる気がするな。シナモンやカルダモンのスパイスに微かな洋酒の香りが最高」
 じっくり味わって、美味しいプリンの謎を解き明かしながら、香月は続ける。
「今度俺も作ってみたい」
「あ、作ったら是非味見させて下さいね!」
 謎の解明という名の試食だったら、いくらでもします!
 それから、美味しくて有意義な食事を終えれば、紫苑はこんなお誘いを。
「まだ未成年なので酒精で乾杯はできないんですが、ノンアルなら問題なしですのでバーにも行ってみませんか?」
「いいね、ハロウィンのとっておきカクテル飲みに行こう」
 そしてノンアルコールにできる、レモンピールの星がちりばめられたカクテルを頼んで。
 グラスに浮かぶ星と、そして古城の展望テラスから望む空の星を眺めながら、グラスを傾けることにする。
「古城から夜景見ながら乾杯ってなんか良いな」
 望む冒険王国の夜景はとても美しく、なかなか普段見ることができないものであるし。
 ハロウィンの夜だからか、魔女や蝙蝠も飛んでそうな、何だか幻想的な雰囲気。
 それから香月は、星のグラスを小さく掲げて。
「アルコールは2年後のお楽しみだな」
「2年は遠いなぁ……乾杯です」
 まだ少し先に思ってしまうけれど、その時を楽しみに――特別な魔法がかかった夜に、ふたりで乾杯を。

空廼・皓
白椛・氷菜

 夜になれば、沢山のジャックオランタンが一斉に灯って。
 訪れる客人を迎え入れつつも、ちちんぷい。
 今宵限りかけられるのは、不思議なハロウィンの魔法。
 でも、おばけの古城に入るための条件がひとつだけ。
「仮装……」
 白椛・白椛・氷菜(雪涙・h04711)はそんなドレスコードを満たすべく、色々な仮装の衣裳を眺めてみた後。
 目を向けるのは、表情こそ変わらないけれど、いそいそうきうき尻尾が揺れている空廼・皓(春の歌・h04840)の姿。
「俺羽ある系がいい、な。んーと……こういう……小悪魔系?」
 そうすちゃりとつけてみるのは、ぱたり揺れる悪魔の羽。
 それに、悪魔角のぴかっと光るカチューシャも、お耳に被らないようにと慎重に装着してみれば。
 満足するように、ひとつこくり。
「かんぺき、だ」
 尻尾もゆらゆら、ご満悦!
 そんな晧の様子を、氷菜はじっと見て。
「晧は似合うわね」
 それからふと、氷菜も手にしてみる。
「……私も同じ小悪魔にしようかな」
 そして晧と同じく悪魔の羽と角カチューシャを着けてみれば。
「……どう?」
「氷菜も小悪魔かわいい、ね」
 今日のふたりは、お揃いの悪魔です!
 それから難なく入城を許されれば、思わずきょろり。
「ほおお……すごい、ね。俺おしろはじめて」
「私もお城は初めてよ」
 豪華で広いお城の中を、まずは少し探検してみることに。
 そしてるんるんと歩いていた皓は、ハッと一瞬足を止めて、じー。
「あのよろい、は……動く!」
 そう聞けば、氷菜は少し距離を取って様子を窺う。
 お化けでも、中が人だとやはり苦手意識があるから。
 そんな氷菜が見つめる中、皓はそろりと鎧さんに近づいてみて。
「おばけさんとりっくおあとりーと」
 そう告げてみれば、思った通りに、ギギギッと動き出して。
 晧に手渡されたのは、そう。
「氷菜おかし、もらった」
 ハロウィンのお菓子です!
 そして氷菜も、晧がお菓子を貰った後ろから、そっと告げる……トリックオアトリート、って。
 それから、鎧さんから差し出されたお菓子を受け取って。
「うん、私も無事貰えたわ」
 氷菜は少しほっとしたように紡ぎながらも。
 階段をぐるぐる上までのぼってみれば。
「ここは……テラス、かな。夜景きれい」
「流石テラス……景色が凄いわ」
 到着したのは、近隣の冒険王国の明かりや瞬く星たちなどの美しい夜景が望めるテラス。
 幻想的な夜空を見れば、箒に魔女やおばけが飛んでそうな雰囲気で。
 皓はふと真下にも目を向けてみれば、お耳がぴこり。
「下は庭、かな……ランタンとかふんいき、ある、ね」
「あれはジャック・オ・ランタンの灯りよね」
 オレンジ色の光がいっぱい溢れる、古城の庭が見えて。
「降りて、みる?」
 そうそわりと尻尾を揺らす皓とともに、氷菜はハロウィンの夜空へ。
 悪魔の羽も秋風にばさばさ、彼の手を引いてふわり、空中浮遊で庭へと降り立って。
 先程までは少し距離があったジャックオランタンの明かりたちや、ハロウィンモチーフの飾りがすぐ目の前に。
 そんな降りた先の庭を進んで再び城の中へ入ってみれば、辿り着いたのは大広間。
「……あら、お化け達が踊ってる」
「すごい! 舞踏会、だ」
 皓はそう舞踏会の会場へと歩みを進めてみれば、見つける。
「あっアイスある、よ。休憩、しよ」
 色々な種類のアイスが楽しめる、おばけアイスクリームバーを。
 そして晧の声に、ぱっと氷菜は振り向いて。
 目が輝いちゃうのは、休憩とアイスの言葉に心擽られたから。
 そんなアイス好きな氷菜が、ちょっぴりうきうきとしている隣で。
「氷菜何に、する?」
「アイスも色々あるのね」
「いろいろあって迷う……」
 彼女と二人、どの味にするか悩んじゃう皓。
 でも、氷菜はひとつには到底絞れなさそうだし、折角だから。
「んー……私、プチサイズで色々食べてみるわ」
 一口ずつ色々な味を堪能できるプチサイズにしてみて。
「晧もチョコ味も食べてみたら」
 黒猫さんチョコ味を皓にも勧めてみるも。
「黒猫? でもぱちぱちなの、気になる」
 悩んだ末に選んだのは、ぱちぱちするというイタズララムネ味。
 それをぷかりとソーダに浮かべてもらって、ぱちぱちしゅわしゅわに。
 それからふたり、嬉々とアイスを口にしながらひと休みしていれば。
 皓はお耳をぴこり、聞こえる音楽に誘われるように視線を向けてみて。
「くるくる楽しそう、だね」
 ――食べ終わったら一緒に踊る?
 そう氷菜を誘ってみたのだけれど。
「踊るのは良いけど……個人か晧としか踊れないわよ?」
 返ってきた言葉に、皓はこくこくと頷く。
 だって、それならば何も問題ないから。
 ……氷菜としか踊らないしだいじょうぶ、だよ、って。
 アイスを食べ終わったら、くるりくるり――躍るおばけさんの仲間入りを、ふたりもしてみるつもり。

氷薙月・静琉
櫻・舞

 沢山燈る南瓜顔のランプたちに、出迎えられながら。
 櫻・舞(桃櫻・h07474)は、そこかしこから聞こえる挨拶に、首をこてりと傾ける。
「はっぴーはろうぃん……? えっと……何かのお祭りでしょうか?」
 それから、近くにいたおばけスタッフさんが、親切に教えてくれた内容を聞けば。
「ほわ、仮装してお祝いするのですね! とても楽しそうです!」
 そしてくるり、共にやって来た氷薙月・静琉(想雪・h04167)へと、こう紡ぐ。
「静琉様、是非是非やりましょう!」
 そんなわくわくしている姿を見れば、静琉も口にしてみる。
「ハッピーハロウィン……だな」
 けれど、いつも感情が凪いでいて冷静な彼にしては少し珍しく、垣間見えるのは、そわりとする機微。
 それから、言い訳をするように続ける。
「……いや、生前は若いなりに素直に愉しめてた筈なんだが。永い事娯楽と無縁だった為か、こそばゆいと云うか、……うむ」
 そんな何か戸惑っているような様子に、舞は首を傾げて、不思議そうに静琉を見るけれど。
 静琉は気を取り直して、今宵の祭りに興じようと思う。
 ……舞が楽しいんならそれでいいんだ、って。
 というわけで、古城へと入るための条件は、仮装をすることだと聞いたから。
 舞は色々と悩んで、和装に猫耳と尻尾をぴょこり。
 そして魔法のように変身し終えた彼へと目を向ければ、ぱあっと笑みを綻ばせる。
「ほわぁ、静琉様! とても綺麗です! とってもお似合いです」
 雪女に扮した、静琉の姿をみれば。
「雪女だが、男だけどな」
 それから何気に思うのだった。
 ……日本で雪男と言うと全く別の部類になる不思議、なんて。
 そして静琉は、眼前ではしゃぐ猫さんに改めて目を向けて。
「舞もよく似合ってる」
 ふと、つい腕を伸ばしそうになるも。
(「……触りたくなるが、流石に我慢」)
 そっと、出しかけたくなる手を密かに引く。
「似合ってますか? ありがとうございます」
 そうにこにこしている舞が知らぬ、心の内で。
 それから入城の条件を満たせば、大きな門を潜って中へ。
 静琉は視線を巡らせながらも。
「古城もおばけスタッフも、世界観徹底しててすごい、な」
 その豪華さと雰囲気に、感心したように紡ぎ落として。
 舞が見つけて、じいと見つめるのは。
「お料理も沢山……」
 吸血鬼マスターのおすすめスイーツがいただけるという、落ち着いた雰囲気のブラッディーカフェ&バーのメニュー看板。
 そして入ってみれば、静琉も豪華な料理に目移りするのだけれど。
「蜜芋アイスを使ったおばけカボチャプリンパフェを頂こう。実はさつまいもが好きなんだ」
「静琉様はパフェですか? ホワイトチョコをかぶったおばけカヌレ……とても可愛くてこちらにします」
 それぞれ気になったものを注文して、運ばれてくれば――はむり。
 もぐもぐとカヌレを味わいながら、美味しいですね、と。
 紡がれた彼女の言葉に、静琉も頷いて返す。
 好みなさつまいもの味わいに、何気にご満悦な様子で。
 それから足を向けてやってみるのは、舞が気になっているアクセサリー作り。
 初めての事できりり真剣に、黙々と、作業を進めていく舞。
 そんな彼女が作るのは、黒猫さん。瞳が櫻の様にピンク色で、三日月の上に乗っているようなデザイン。
 静琉も、蝙蝠型の菫青石を中央に嵌めて。
 月と雫型の琥珀を、ゆらり波形の銀細工で繋げてゆく。
 そして……出来た、と。
 出来を確認するように一度くるりとそれを眺めた後。
「舞……帯留めなんだが。もし良ければ……」
「帯留! ありがとうございます!」
 静琉が差し出した帯留を受け取り、舞は嬉しく笑って返す……大切にします! と。
 だから舞も、初めて作ったアクセサリーを彼へと手渡す。
「私はブローチなのですが……良かったら?」
「これは……俺に?」
 静琉は一瞬、そうぱちりと瞳を瞬かせたのだけれど。
 大事そうに手に取って……サンキュ。大切にする、って。
 自分の作った帯留とブローチを、交換こ。

ガザミ・ロクモン
神楽・更紗

 ハロウィンの夜、やって来た古城にも一夜の魔法がかけられているというけれど。
 ガザミ・ロクモン(葬河の渡し・h02950)と共に歩む神楽・更紗(深淵の獄・h04673)も、今日は摩訶不思議なマジックを披露する和風手品師に。
「更紗さんのマジシャンの仮装、すっごく似合っていてとってもカッコいいです!」
 お耳の間に乗せたシルクハットに、ひらり大きな袖と裾を揺らした、格好良いパンツスタイル。
 そして更紗も、ガザミの今宵の姿を見て、思わず九尾も大きく揺れてしまう。
「僕は時計ウサギの仮装。更紗さん、ウサギが好きみたいなので」
「ガザミは時計ウサギの仮装か」
 ――愛らしさとカッコよさのミックス、と。
 そうお耳をぴこりとさせるだけに、見えるのだけれど。
 更紗は内心、大忙し。
(「まいったな、その仮装は反則だろう」)
 ……妾だから、耐えられた、と。
 そんな、何に耐えられたのかは謎であるが。
 手品師と時計ウサギさんは、勿論入城を許可されて、門を潜って中へと足を踏み入れてみれば。
「古城に入るの初めてですよぅ。雰囲気満点でワクワクしますね」
 ガザミはそう心躍らせながらも、やはりまず最初にするのはこれ。
「全部、食べていいんですかぁ。幸せすぎるぅ」
 そう――まずは、ハロウィンビュッフェで腹ごしらえ!
 沢山の美味しそうなメニューに瞳をキラキラ輝かせているガザミと共に、更紗も並ぶ料理を見回してみて。
「ほう、どれも手が込んでいて素晴らしい料理だな」
 早速皿に気になるものを取っていって、席に着けば――いただきます!
 ガザミがはむりと口にしたのは、ぎょろり目玉たまごのミートローフ。
 肉ととろりたまごの味わいが絶妙で濃厚で、頬張った頬っぺたが落っこちちゃいそう。
 そして更紗は手品師のごとく流れるような動きで、あーん。
 ガザミの口に、色々な肉料理を運んでいく。
 ――妾も知りたいのだ。おまえの胃袋の底を、と。
 そんな彼女から食べさせてもらうのも、もうガザミには随分と慣れっこになっているから。
 素早くあーんと差し出されてはぱくり、またあーんされればもぐもぐ。
 それから彼の胃袋の限界をはかっていた更紗は、すっかり空になった皿を見てお耳をぴこり。
「肉料理は制覇か」
 まだまだ底は見えません……!
 いや、勿論肉料理だけではなくて。
 ガザミが先に味見せんとするのは、ドラゴンのファイヤー赤パスタ!
 ちなみい辛さは★★★、三ツ星級です!
 ということで、はむはむと味見すれば、ガザミはこくりと頷いて。
「美味しい辛さです」
 そして更紗も続いて、ドラゴンのファイヤー赤パスタを頂こうと――した、その時。
「食べさせ返しです」
 そう彼からにこにこと差し出されれば、一瞬ぱちりと瞳を瞬かせた後。
「……!!?」
 九尾のもふもふ尻尾がさらにぶわわっと膨らむほど、動揺してしまう。
 それから、きょろきょろと周囲の目が途端に気になって、恥ずかしくなりつつも。
 でも、ガザミからあーんと差し出されたものだから――ぱくっ。
 あーんされた赤パスタを食べれば、カアッと何だか熱くなる。
 いや、やはり更紗にとっては、香りと刺激は感じても、味はしない。
 でもそれなのに――甘く思えて。身体がぽかぽかと温かくなるのを心地よく思うのだ。
 それからガザミは、口に残る三ツ星級の辛さを和らげるべく、パンプキンシチューをスプーンで掬って。
「更紗さん見てください、蓮根が骸骨の形をしてますよ」
「うむ、この人参は猫か?」
「蟹や狐はあるかな?」
 オバケの具材を見つけて掬っては、見せ合いっこ。
 そして更紗には、相変わらず酒以外のものの味はわからないけれど。
 それでも彼と一緒に、食事を大いに楽しむ。
 まるで魔法にかかったみたいに――食べる楽しみを心で味わうとしよう、と。

ナンナンナ・クルルギ・バルドルフルス

 沢山のジャックオランタンたちの灯火に案内されながら到着したのは、古城の大きな門。
 そしてナンナンナ・クルルギ・バルドルフルス(|嵐夜の《ワイルドハント・》|竜騎兵《ドラグーン》・h00165)は、城の中へと案内されながらも。
 周囲へときょろり視線を巡らせてみつつ、思い出す。
(「ハロウィンオーベルジュ……学校の子たちが話してるのは聞いたことあるけど、実際に来るのは初めてだな……」)
 SNSでバズっただとか、有名配信者の動画チャンネルで紹介されただとか……話だけは小耳に挟んだことがある程度だけれど。
(「普段はこんな所にくる贅沢しないし、|依頼《おしごと》に向けて英気を養うためにも、存分に味わって行こうかな」)
 きっと話題にしていた学校の子たちが知れば、羨ましいと思うかもしれないし。
 一応、星詠みの告げた仕事を受けてここには来たのだから、ダンジョンに向かう前に英気を養うことも、冒険者には必要なこと。
 それに今日は一人だからこそ、好きにハロウィンの魔法がかけられた古城を楽しめると思うから。
 ナンナンナは早速、お目当ての場所へと向かう。
 それは――オーベルジュと名乗る古城ホテルの一番のウリであるという、ハロウィンビュッフェ。
 折角だからナンナンナは、とことん食道楽を楽しんでいくつもりです!
 そしてくるりと並ぶ料理を見回せば、思わず目移りしてしまう。
 美味しそうであるのは勿論のこと、凝ったハロウィンモチーフのものばかりで可愛くて。
「ハロウィンビュッフェ……気になるものばかりだけど」
 でも、ナンナンナが手にした皿に取ったのは。
 ……特に気になるのはミミックハンバーガーかな、なんて。
 黒パンに旬の食材の財宝と、やみつきになる罠のような美味しさの、ミミックバーガーをいただきます!
 見た目も、宝箱みたいに飾られていて。
「うん、やっぱり冒険者としては宝箱って心惹かれる。よね」
 そうこくりとひとつ頷けば――いただきます!
 食べることは好きだし、はむりとわくわく口にしてみつつも。
 どんな具材のお宝が入っているのか、ミミックの罠に気を付けながらも美味しい宝探しを。
 それからビュッフェを楽しみつつもマスターに作って貰ったのは、おまかせノンアルカクテル。
 ナンナンナの瞳のようなミステリアスな深い赤のベリー味カクテルに、ブラックベリーがぷかり浮かんでいて。グラスのふちに添えられているのは、三日月のレモンピール。
 そんなハロウィンの夜を思わせるようなノンアルコールカクテルを一口飲んでみれば。
「うーん、おいしい……」
 そして、まるで魔法のような手際で作って貰ったカクテルの美味しさを味わつつも。
 ナンナンナは瞳とカクテルの赤を重ねながら、こう呟きを落とすのだった。
 ――これ、味盗めないかな……なんて。

ジズ・スコープ

 ジャックオランタンたちが照らす古城までの道を、おばけたちが大行進。
 目的地は、今宵限りの魔法がかかった古城。
 でもひとつだけ、このお城に入るための条件があるのだけれど。
 ジズ・スコープ(野良|古代語魔術師《ブラックウィザード》・h01556)は尻尾をゆうらり、門番おばけにTrick or Treat!
 問題なく歓迎されたのは、今夜のジズがいつもとは違った、不思議の国の住人に変じているから。
 ジズの今日の格好は、不思議な国のアリスなアンティーク風ダイヤのトランプ衣裳。
 古城に入るドレスコードは仮装、だって今宵はハロウィンなのだから。
 そしていよいよ入城となれば、ジズもわくわくな足取りで。
「御城探検は、心躍りますね」
 まずはぐるりと、好奇心を擽られるものがいっぱいな古城の探索へ。
「抜け道とかは機能してないのでしょうか……」
 ……古城には仕掛けがあるかと思っていたのですが、なんて。
 ふと見れば、何だか不自然に飾られた絵画が……? 
 だからジズは近くにいたスタッフお化けに断りを入れてから、その絵をそっと退かしてみることにして。
 絵に隠れていた謎のレバーを引いてみれば……隠しお菓子部屋を発見!?
 スタッフから部屋のお菓子を分けてもらえばほくほく、引き続き、あちこちと。
 見られる場所を巡っては、きょろきょろうろうろと不思議な古城探索を満喫して。
 メインダイニングを見つければお耳をぴこり、ふわり漂ういい匂いに小腹がそろそろすいてきたから。
 美味しそうな香りに誘われるまま入店すれば……いざ! お料理堪能!
 折角のビュッフェだから、目指せ全制覇――。
「……あっ、種類豊富! これは無理そうですね」
 でも、沢山の種類の料理を食べたいから、色々ちょこっとずついただくことにして。
 そして次に足を向けたブラッディーカフェ&バーでは、別腹のスイーツも!
 けれど、ここでも食べ過ぎないように、ジズはしっかり調整を。
「後でアイスクリームバーにも行かねばなりませんから、加減しつつ……」
 だから、特大おばけカボチャプリンパフェに心惹かれるも、ぐぐぐと我慢してミニサイズにして。
 でもそんなミニサイズ作戦は大成功、アイスクリームバーでもプチサイズの色々な味を存分に楽しめました!
 そしておなかも満たされれば、次は……なんて。
 魔法がかかった古城の、特別なハロウィンの夜を――出来るだけいっぱい、堪能満喫しちゃいます!