シナリオ

③遍く拡がれ金色の律

#√汎神解剖機関 #秋葉原荒覇吐戦 #秋葉原荒覇吐戦③ #第3番

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√汎神解剖機関
 #秋葉原荒覇吐戦
 #秋葉原荒覇吐戦③
 #第3番

※あなたはタグを編集できません。

⚔️王劍戦争:秋葉原荒覇吐戦

これは1章構成の戦争シナリオです。シナリオ毎の「プレイングボーナス」を満たすと、判定が有利になります!
現在の戦況はこちらのページをチェック!
(毎日16時更新)

●りっするもの
 旋律。

「すばらしいじゃないか。金色の旋律。|新物質の網《ゴールデン・ストリングス》――名付けに対して敬意を示そう!」

 金綱稲荷、鳥居の上にて……指をこん。中指と薬指、そして親指を合わせて。狐を作り、「こん、こん」と。楽しげに笑いながら、揶揄うようなしぐさを続ける女がいた。

 鍵盤の天輪が沈み込み、その名――『グノシエンヌ』の名の通りの旋律を、日本風にアレンジした音波を流しながら。
 魔力を乗せたそれは糸となり、情報を傍受するための網となる。

 人間災厄『グノシエンヌ』。此度は『だれかさん』に手を貸し、何らか企んでいるようだ。
 普段は凶暴性の強い――いや、正確には、己の欲に素直すぎる性格をしているのだが、どうやら今回、殺戮とは別の目的があるらしい。

「……ま、ぼくは楽しければ何でも良いのさ」
 彼との一時的な契約は成っている。その後に保証された『えさ』の質が良ければ、ぼくはいくらでも、この旋律を奏でてやるとも。

 鳥居の上から地へ降り立ったグノシエンヌ。
 どうせ己が目的を阻止するために、ここにも『彼ら』がやってくる。

「楽しませてもらおう」
 くるり踊るようにまわるグノシエンヌ――細められた瞼は、あまりにも、楽しげなものだった。

●おかえり。
「やあやあ『おかえり』諸君! 緊急事態だ! アッハッハ!!」
 高笑いはいつものことか。ディー・コンセンテス・メルクリウス・アルケー・ディオスクロイ(辰砂の血液・h05644)、やたらと楽しげな笑い声を上げる怪人が、ぱしりとテーブルの上に紙を叩きつける。描かれているのは秋葉原周辺の地図――そう。

「戦だ。諸君。予知通り、√EDENに他√からの簒奪者どもが攻め入ってきたのだ。そして此度の戦、中心となっている者の名をもって、こう命名された――秋葉原荒覇吐戦――!」
 ――テンションが高い!

「ああややこしい発音だな! 舌を噛みそうになる!」
 そうは言いつつ流暢に。辰砂の爪が示すは『金綱稲荷』である。メルクリウスは続ける。この場所を占拠するものたちのうち、一体をボッコボコにしてやれ、と。

「ここを『リンドー・スミス』とその他諸々が占拠している。何やら新物質を用いた網にて情報を傍受し持ち帰ろうとしているようだが、持ち帰らせては何をしてくるか分からない! ゆえに――厄介で、何を考えているかもわからん人間災厄を、ぶん殴ってこいということだ!」
 首を傾げる様はトリのようである。ふんと鼻を鳴らした怪人、己が翼を広げて、堂々宣言する。

「さあいざ行け諸君! わたくしは働かないぞ! アッハッハ!!」
 たまには働け。

マスターより

開く

読み物モードを解除し、マスターより・プレイング・フラグメントの詳細・成功度を表示します。
よろしいですか?

第1章 ボス戦 『人間災厄『グノシエンヌ』』


クラウス・イーザリー

「やあ、久しぶり」
 クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)の言葉に笑みを浮かべる奏者。まんまと知った顔が来た、とばかりの笑顔である。
「最近はどうだった? ハニー。楽しく過ごせていたかな」
「……今回はちょっと急いでてね。不躾だったらすまない」
 何度も対峙した相手だ、対策はそれなりに。人間災厄『グノシエンヌ』――陰鬱な旋律と共にある災厄。無駄話をしている暇ではないのだ。お喋りなんてしている暇はない。力を以てこの場を制そう! 奏でられはじめた第2番、音波がまさしく波のように襲い来るのを霊的防護で受け止め流し、隙間に挟まれる旋律をエネルギーバリアが弾き返す。

「あは、なら聞くなよ。目的はお互いわかっているんだし?」
 輝く『黎明の月』を見ても、グノシエンヌは肩をすくめ笑うばかり。魔力の灯火、剣がグノシエンヌの体を切り裂く。狙い通りに『弾き違えた』天輪の鍵盤、若干のノイズがかかる――!
「ちょっと。間違えちゃったじゃないか、奏者にプレッシャーを与えるなんて、本当に不躾だよ!」
 文句を言いながらも奏で続ける鍵盤。本来なら……この旋律に。甘く響く陰鬱に浸る、その渇望を覚えていたかもしれないが、今回は緊急事態なのだ。戦場となってしまった√EDENを守り抜かなければならない。余計なことを考えていては、脚が止まってしまう!

 だというのに奏者は余裕そうに自分の曲に合わせ口笛を吹いて――音波がクラウスの頭部をざくり切り裂いた。深く抉るように、まるで『脳を狙う』ような位置へ。

「……何だか楽しそうだね」
 いつものことかもしれないけど。今日は特別、余裕そうだ――。
 戦いが楽しいのだろうか、誰かと『協力している』状況が楽しいのか。普段ならひとり楽しく踊るのが趣味な彼女。
「ん? いつだって楽しいよ。君と踊るのも、ぼくの楽しみのひとつ」
 ああ、よくわからないけど……羨ましいと思った。

神咲・七十

「う〜ん? 音楽以外でこんな真面目な内容やる様な方でしたっけ?」
「きみの評価はいつもそうだ。低めに見積もるのをやめたまえよ……」
 日も変わらずお菓子をつまむ神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)を睨むは人間災厄『グノシエンヌ』。普段ならば音楽と人の脳を揺することを何より好むような災厄が何故、ここにいるのか。こん。また手で狐を作るさまは明らかふざけている。

「うん、まぁ……妨害なら本人に頼んだ方が確実ですよね」
 天輪に重なりくるり現れた幻影の鍵盤――ぱしんと弾けたかと思えば横に立つはグノシエンヌと瓜二つの女。七十の肩に肘を置き、『本体』たるグノシエンヌと視線を合わせる。

「そういえば、くれてやったんだった。仲良くしてる?」
 軽口と共に、奏者の手元にあった幻影の鍵盤がレーザー鞭へと変化する。その間にも彼女の頭部の天輪は音楽を奏で続けており――あれこそが、彼女の『傍受』の手段のひとつなのだろう。
 残念ながら『サティの落とし仔』、本人ではない一欠片。思考をトレースできるわけではないが。『ぼくなら、楽しいと思う』と。天輪の姿へと戻った落とし仔が奏で始めるは、グノシエンヌ『第3番』!
 グノシエンヌの、簒奪者の『たのしい』は大抵√能力者たちへ悪い結果だけを残そうとする。

「貴女の能力を考えると、情報収集させるにはもってこいな能力ですよね」
 |する《やる》気があれば。彼女へと迫ろうとした七十の足元に打たれる鞭。|音響波《『第3番』》が彼女の天輪から奏でられる音を打ち消していく。音楽には音楽を――ノイズとなったそれが目的の情報を拾うには少々時間がかかることだろう。
 大鎌が振りかぶられ、グノシエンヌの脚の肉をえぐり取る。致命傷にはならずとも散る血液と肉片、眉をひそめた|彼女《奏者》は楽しげだ。

「出来れば何を期待してこんな内容に参加しているのか知りたいのですが……答えて貰えます?」
 振り下ろされる『エルデ』と『アリル』の攻撃を掻い潜り、七十の腕をレーザーの鞭で強かに打ち付けたグノシエンヌ。当然のように、肩をすくめて知らんぷりだ。

虚峰・サリィ

「ハロー、ピアニスト。またアンタなの?」
 今回は|恋する乙女《・・・・・》たちを狙っていないのは幸いだ。だが根底、虚峰・サリィ(人間災厄『ウィッチ・ザ・ロマンシア』・h00411)は彼女に対して、特別気に入らない所がある。
「相変わらず曲への謙虚さがないわぁ」
 髪を耳にかけ、『奏者』に皮肉と文句を言うその姿。見慣れた者同士、思う所は互いにある。
「いやあ、本当に困っていてね。ぼくは|ぼく《グノシエンヌ》の演奏をどうしても……素晴らしいと感じてしまうんだ!」
 謙虚さの欠片なら捨てたよ。指を振ってみせる奏者、腹立たしい仕草だ。

 ゴールデン・ストリングが何かはともかく――この情報収集、|ピアニスト《グノシエンヌ》の音が関わっている。雑談に見せかけた情報収集の間、天輪が廻り音楽を奏で続けていることがその証明だ。
 ならば盛大な演奏で、音波を蹴散らしてやればいい!

 本日のナンバー!『|急雲・恋はサンダークラウド《フォーリンサンダークラウド》』!! アンプたるハウリングバンシー、全開の演奏であの音、かき消してやれ!
「恋の乱雲、愛の積雲、落ちる先は貴方の胸元――!」
 荒れ狂う雲、雷の強襲! 雷鳴の音とバチリ爆ぜた雷で、グノシエンヌの音波が大幅に乱れた。
 ぎょっとした顔で目を見開いたグノシエンヌ、片耳を塞ぎながら撃ち抜いてくる雷を忌々しげに眉をひそめながら見つめる。舌打ちの後に繰り出されるは第3番!
 だがサリィの愛を歌う絶唱には届かない――届いた音波も、隔絶結界が拒絶する。わずかに声色が乱れても、ああそれは『ライブ感』のスパイスというものだ! ホワイトスター・トップテン、本日も絶好調の音響!

 その演奏と雷撃の雨が止む頃にはバチバチと、頭部の天輪が悲鳴を上げるかのようにノイズを発している。
「どう? いい音鳴らしてたでしょ? アンコールは受け付けないから退場なさいな」
 ふん、と鼻を鳴らし、目を細めてみせたサリィ。
「きみはいつも、カーテンコールの喝采だけを求めるよねえ」
 ……そんなところも、美しいなと思うよ。
 災厄、口説くことも忘れない。

東雲・グレイ

 √能力者とグノシエンヌの戦闘が始まった。スナイパーライフルのスコープ越しにそれらを眺めながら、東雲・グレイ(酷薄なる灰の狙撃手・h01625)は機を窺う。
 グノシエンヌの放つ音波。音という性質上、届く範囲には限界があるだろう――最良のタイミングで撃ち込んでやればいい。
 事前に仕込んでおいたレギオン――数多の兵装を詰んだスナイプスポッター。待機しているそれが正しく起動すれば、初手から有利を仕掛けられるはず。

 観察しているうちに、――グノシエンヌの動きが止まった。ここだ――!
 跳弾を交えた狙撃。スナイプスポッターを狙い撃ち、爆ぜるそれと共に放たれる跳弾、そして煙幕!
 続けざまに放たれた一発が、グノシエンヌの頭部を抉る!

「おっと……ふふっ、いいね、目くらましかな! 嫌いじゃないよ!」
 不利な状況に持ち込まれようと笑うのは、何故か。√能力者と同様、簒奪者の機動力は伊達ではない。反撃として繰り出されたのは第1番――鍵盤をレーザー鞭へと変化させたグノシエンヌは煙をその鞭で払い飛び上がると、そのままグレイの懐へと突っ込んでくる!
「でも、ダメじゃないか! ぼくの演奏をきちんと聞いてくれないと、ぼくがさみしくなるだろう?」
 相当なダメージを与えたはずだが、軽口を交え――否、無理はしているのだろうが、反撃してきた。手元の兵装やドローンを盾にしながら、まるで雷撃のような痛みを与えてくる鞭をグレイは往なしていく。掠れただけでも痺れる体――あの頭部で廻る天輪の陰鬱な音が、うるさくてたまらない!

「私は静かな方がいいな、雪の日みたいに」
 こんな喧しい音を発する相手なんて、心の底からごめんだ。グノシエンヌの腹へと前蹴りを繰り出し距離を取ったグレイ、再度弾丸を打ち出しそれを避けさせることによって、鞭の攻撃が届く範囲から離れることに成功した。

「そう……なら、雪の降る中で、ぼくの演奏を聞きながら死に絶えるっていうのは、どう?」
 軟派な言葉を口にしながら、射抜かれた頭部や穴だらけになった体を気に留めず、グノシエンヌは踊る。

見下・七三子

「ええっと。何も考えず、ぶん殴る、でいいなら得意分野です」
 頑張ります! ……いいんですよね? ちょっと|わたくし《地の文さん》にもわかんないとこある。
「いいんじゃないかな?」
 一方髪の毛をくるくる手遊びしていたグノシエンヌは頷いた。見下・七三子(使い捨ての戦闘員・h00338)、口からやや思考が出ていたらしい。

「金色の旋律って言うとたしかにオシャレで素敵な気もしますけど、それでやってることはただの情報収集です!」
「結構効率的に集められているほうだと思うのだけれど」
 天輪の鍵盤が発する音波は広く、七三子の耳にも届く。この音の糸を編むようにして、情報を捉えようとしているのだ。

 でも……。
 なんか格好つけるだけ恥ずかしくないですか……?
 飄々とした様子で後ろ髪を手で流しているグノシエンヌ。ちょっと厨二病入っているのが彼女だが、|彼女《グノシエンヌ》はコメディとなると途端に『おもしろ』くなってしまう。
 個人の趣味は人それぞれ、触れずにおきましょう。切り替えた七三子、問答で主導権を握られるとどうなるか察しているらしい。

 先程の戦いで上方から降りてきたか、鳥居の上にまた陣取っている奏者へと七三子が跳躍する。瞬間、演奏され始めた第2番――だが甘い!
「おっと!」
 音波を受ける直前、背へと現れた七三子、その靴がグノシエンヌの背を蹴った。突き落とされながらも受け身を取って着地し、口笛と共に鍵盤を撫でて奏でてみせる。彼女なりの称賛か。
 だが蹴りを受けた影響で七三子を見失った――このままでは先のような不意打ちを食らうことだろう。となればする行動はひとつ!

「そーこっ♥️」
 明らかに作った、愛らしい声と共に叩かれた鍵盤。周囲を薙ぎ払うように広がる音波――!
「むぐっ……!」
 周囲のものが音波により破壊され、物陰から炙り出すようにして七三子の位置を特定したグノシエンヌ。楽しげに演奏を再開する彼女……だが、索敵に時間を割かせた。十分だ、後続にまかせて良い! 自分たちは、ひとりで戦っているわけではないのだから!

シアニ・レンツィ

「あっはっはー! お姉さんが敵だね!?」
「そうだとも、愛らしいお嬢さん!」
 ご機嫌である。傷つけどなお余裕を見せているグノシエンヌ、非常に楽しげだ。こちらも何か移ってないかな。

「なんかねっ慌ただしすぎるとこういう感じになっちゃうよね!」
 とてとてトストス。その場で足踏みをしているシアニ・レンツィ(|不完全な竜人《フォルスドラゴンプロトコル》の羅紗魔術士見習い・h02503)、そわそわしすぎてもう止まれない! お口も止まらなければ体だってそわそわだ!
「とりあえずっ! 倒すね!」
 宣言。同時に竜化していく脚――その足踏みがどすどすと、重く、だがしなやかな音へと変化していく!

「さあ! 先に止まった方の負けだよー!」
 それって心臓の話? ――ともあれ速度、グノシエンヌが構える隙を与えぬほどだ。突っ込んできたシアニをなんとか往なし、高く上機嫌に笑うグノシエンヌ、その鍵盤がレーザー鞭へと変化する!
「あはは! いいね、きみ! 素直でストレート! 文字通りね!」
 ぱしゅんとまさしく音の速度、シアニを打ち付けようとする鞭をハンマーで受け止め、二撃目として放たれたものは魔術により硬化した羅紗のマフラーが防御し軌道を逸らす。グノシエンヌへと素早い蹴りを繰り出した。今度は反応することが出来た奏者、その脚へと鞭を振り傷をつけるが、竜化した脚である。装甲が厚い――!

「わ、お姉さんも早いね!」
 見とれちゃいそうなくらいだ! だがシアニ、楽しげに戦っていながらもしっかりとグノシエンヌの動きを観察している――鞭を振るい終わった攻撃の合間、僅かに動きが緩くなった瞬間を突き、その竜化した脚で懐へと強く踏み込んだ!
 振りかぶられるハンマー。直撃してはどうなるか察していようとも――ああ、上回っている、避けられはしないか!

「あたしね、こういう風にお互い高速で打ち合うの楽しくて好きなんだ!」
「いいね……連弾でもした気分! きみ、気に入った!」
 直撃を受ける前に、高く嬉々とした声を上げたグノシエンヌ。あとはお察し、どうなったか。悲惨な光景だろうとも、シアニはふんすと鼻息を。

「よしっ! 倒した!」
 ――宣言通り!
 張り巡らされていた音楽の糸と網、|新物質の網《ゴールデン・ストリングス》が一本ほどけた瞬間であった。

挿絵申請あり!

挿絵申請がありました! 承認/却下を選んでください。

挿絵イラスト