⑰ぬえだったとおもう
●ぬえーん
それは言葉にするとこのようなすがたであった。
サルの顔をしている。タヌキ、あるいはアナグマの胴体。そしてトラの手足を持ち、尾はヘビである。ヒョーヒョーと、トラツグミのような奇妙な声で鳴くのだ。
そしてこちらは、このようなすがたであった。
ねこの顔をしている。タヌキの胴体を持ち、ふとっている。トラの手足も太ましく、尾もヘビではある。そしてこれは――。
「マ゛ーー!!」
このような声で鳴く。
「えぇいチクショウそんなんでヌエとか名乗ってんのかテメェーー!!!」
「マ゛アーー!!」
「ご立派に口答えしてんじゃねえぞ!!」
べっしべっしがっりがり。マガツヘビと一匹でそれなり対等めに戦えているのは何なのだ! マガツヘビも普通にコイツの言葉を解しているが我々にはわからない!
というかこれは鵺なのか!
「わたくし的にはキマイラだと思うのだが」
星詠みは今は黙ってろ!!
冬毛もこもこ怪異たる、おそらく鵺らしきなにか、健気にバリバリトラの手足で健闘中。
ふしゃー。毛を逆立てマガツヘビを逃さんと、妙に巨大な体でその横っ面を猫のように叩きまくっている――!!
そろそろ話していいぞ星詠み。
●おかえり。
「やあやあ『おかえり』諸君! 鵺が出たぞ!!」
一説によればこの怪人も鵺の一種である。よく呼ばれるはイヌネコトリケモノ、ディー・コンセンテス・メルクリウス・アルケー・ディオスクロイ(辰砂の血液・h05644)。変身能力を持つ彼、六足の犬だか猫だか分からぬトリの羽根混じりな獣に化けており。
「わたくしではないのでそんなに見るな」
すん。おすわりをしたその姿、現在もイヌネコトリケモノ。もふもふ冬毛。
「鵺……鵺……? あれはたぶん鵺だ。自称しているようなので」
でけぇ肉球がぽんぽん指す資料の先、大破壊されたカヤックアキバスタジオ! 【穴】の空いたそこへマガツヘビが逃れようとしている……のだが。
「全てのあやかしよ、マガツヘビを討ち滅ぼすべし」
それを阻止しようとしている古妖たち、その一体! のはずなんだけどなあ。
「鵺だ」
指されたそれ、鵺っていうか、ほぼネコ科。
「鵺だろう?」
鵺らしい。わからんねこれは。
「これが結構強い。強靭な足腰から繰り出される爪での一撃や噛みつきで、マガツヘビを大穴へ逃さぬために奮闘している」
穴かあ。今回は入らないので? 入りませんよ、入るの阻止しましょうね。
「まあ一匹では荷が重いのも事実だ、手伝うとよろしい。爪と顎、そして尻尾の毒蛇が噛み付くそうだ」
ど、どう手伝えっていうんです……? こう、いい感じに、挟み撃ちにするとか。鼓舞するとかしたらいいんじゃないでしょうかね……?
「さあいざ行け諸君! わたくしはもちろん働かないぞ! アッハッハ!!」
今回ばかりはもう少し情報くれませんかね?
第1章 ボス戦 『マガツヘビ』
「マ゛ーー!!」
あれは古妖というか怪異ではないのか? 柳・依月(ただのオカルト好きの大学生・h00126)、少々顎を揉んだ。
正直言うと『鵺』が協力してくれると聞き、見物がてら来たのだ。……来たのだが。
「……鵺? 鵺なのか」
「マ゛アーー!! ア゛ーー!!」
依月が見たのは、もふもふのデカイ猫。たぬきの胴体、尻尾がヘビだが、それ以外はネコ科である。モッコモコの冬毛を逆立たせて猛烈なとらぱんちをマガツヘビに叩きつけている!!
「(可愛いな。モフりたい)」
もふもふ……ふかふか……冬毛の誘惑である。あんな感じの怪異がいるのなら使役してみたい……。たぬきもねこも冬毛、トラのみ冬毛概念薄め。故にその鋭い爪が目立つ!
「ぬぐおぉ!!」
強そうなのは事実!! ばりっとトラの爪がマガツヘビを切り裂く! メイン火力を任せても構わな……え……つよ。
「こっ……このネコ野郎!! ふざけたツラしやがってえェ!!」
「|ンナ゛ーー《ぬえだもん》!!」
なんか聞こえた気がする……? 依月が首を傾げている中、姿勢を低く威嚇していたぬえっぽいの。依月の存在に気がついたらしい!「ン゛な!!」と何やらアピール。共闘しようとでも言っているのだろうか。
「そっちがその気ならこっちもやってやらァーー!!」
どうやらマガツヘビのほうは依月をあまり意識していないようだ……。速さが足りないと判断したか、小型マガツヘビを纏い始めたマガツヘビ。
ならばその素早さ、奪い去ってやろう!
絡新婦の|糸《髪》がマガツヘビを締め付ける――! 捕縛され、小型マガツヘビが何匹かぱつんと切断された。そこで依月に気付いたマガツヘビ、ようやく咆哮を上げた!
「邪魔すんじゃねェ!! これは男と男の戦いだァ!!」
「鵺、オスなんだ……」
ともあれ捕縛され動きが鈍ったマガツヘビ、その腕で鵺を捉えようとするがその腕に逆に噛みつかれる始末! 次いで展開する防護のまじない!
「よし、存分にやっちまえ!」
「ム゛ーー!!」
「イッテェいてえ何すんだテメーッッッ!!」
マガツヘビの腕に噛みついたまま、小型マガツヘビを猛烈な蹴りが蹴散らしていく!
「……うーん、それにしても鵺の方は絵面が和むな」
確かに強いんだが。あれ、じゃれつく猫のケリケリなんだよな。
何が彼らをそこまで争わせているのだろう……。いや、争って当然であった。古妖の誓いにより集まった妖なのだ。マガツヘビに喰らいつくのは当然!
……猿の頭でないだけで本当にだいたい鵺なのだが。ごく一部分の影響がデカすぎたのだ、にゃーん。
ともあれ彼の姿はおはなしのネタになる。夜白・青(語り騙りの社神・h01020)はしっかりそれを目に留めておくことにした。
「えー、あるところに頭が猫の鵺がいてだねい……」
「ギャアーン!」
「グオォッ!!」
だいかいじゅうばとるを繰り広げている中、青の語りが広げるは無数の……無数のカヤックアキバスタジオと大穴と、鵺――!
穴多くない? 鵺も多くない? そういうふうに語ってみました。いかがでしょうかマガツヘビさん。
「ぐっ……ぬ! チクショウ、一体何、がッッ」
マガツヘビの横っ面に強かとらぱんち。周囲の景色が変わったことに双方気がついているようだが、ブチギレている鵺、目の前の光景よりマガツヘビに集中しているようだ。
「ミ゛!」
マガツヘビの体を火が包み始めた――! 妖の火である、自身が燃えることはなくとも本能的に後ずさった鵺。それでも怯むことなく飛び込んでいく鵺とその幻影!
「えぇい鬱陶しいんじゃア! おいそこのテメーどこに穴隠しやがった!!」
目指すべき穴を見失ったか、鵺に引っかかれ噛みつかれ――チャージ時間中は耐え切れるがゆえに青の相手をする余裕ができたらしい。
「どこだろうねい。探してみたらいいんじゃないかねい?」
「こんな! 状況で! 探せるかーー!!」
フギャフギャ。鵺の群れがマガツヘビへと飛びかかり、マガツヘビを引っ掻いたり噛みついたりとしているのを必死に叩いたり尻尾で払ったりしている中、その裏で秒数を数えていた。
ちょうど60秒……あれが鵺以外に一撃を放つことが考えられない状況なのは幸いだ!
「離れて!」
青のひと声により飛び退く鵺たち。纏わりつく鵺を払うために尾が振るわれる――! 一部避け損ねた幻影が消えていくが、それはそれ!
「マ゛ーー!!」
「クソこの卑怯な手をぉ!!」
スカされた尾に噛みついていく鵺。まだまだ元気いっぱいなだいたい鵺、チャージ中に受けた傷を一気に負うことになったマガツヘビ。
かいじゅうばとるはまだつづく。
イヌネコトリケモノこと星詠みディー・コンセンテス・メルクリウス・アルケー・ディオスクロイに降りたゾディアックサインはカヤックアキバスタジオ前で繰り広げられる猫のような鵺とマガツヘビの交戦風景であった。ここまで一息。言えたかな!?
「頑張ります!」
言えずともよろしいのである! きゃっきゃとはしゃぐ椿之原・希(慈雨の娘・h00248)、デッカイネコチャンVSマガツヘビの現場に到着だ!
「まー!」
「ナ゛ー!!」
「挨拶しとる場合かあ!!」
希の元気な挨拶としての鳴き真似、どうやらしっかり返ってきたらしい。取っ組み合いの喧嘩にも見える乱闘を繰り広げる鵺、まだ余裕そうだ!
「こんにちは鵺さん! 私は希って言います。一緒にマガツヘビさんを止めちゃいましょう!」
「俺の話聞いてた!?」
「ヌあーん゛!!」
「助かるじゃねーんだよ!!」
すっかり翻訳係になっているマガツヘビ。だがその腕は強く鵺の体を打ち付け、腕をへし折らんばかり――! ぎゃあぎゃあ争う古妖バトル!
「えっと、えっと、鵺さん、私がマガツヘビさんの注意をひきますから、隙を見てポカポカ叩いてくださいー」
「ン゛!!」
「作戦丸ごと言ってんじゃねえかよお!! いいじゃねえか、かかってこいオラァ!!」
作戦言っていいんですかね。マガツヘビもいいのかそれで。いいんですよ! なぜなら彼がそれを知ってなお対処できない作戦ならばね!!
展開されるはファミリアセントリー『あられ』! 空中へ浮かび上がるそれ。装填されるは……。
「対戦闘機械群用炸裂焼夷弾装填しまーす」
がっしょんがっしょんじゃこんじゃこん。がちゃり、安全確認、ヨシ! 指差喚呼!
げえっという顔をしたマガツヘビ、小型のマガツヘビを纏い逃げようとするも――。
「発砲ー」
――洒落にならん音が響いたのであった。どかーん。で済まない音である。
耳をぺそっとイカ耳にし伏せている鵺のようななにか! 小型マガツヘビを根こそぎ焼き払われ吹き飛ばされ地に伏せているマガツヘビ!
「えっへん。マガツヘビさんにどっかんなのですー」
どっかんだった? 鵺が思わず希を見た。だが構わない、耳はキンキンするが今がチャンス!!
「鵺さん今です! ねこねこぱーんち!」
じつはとらとらぱんちであるが、この際それはどうでもよいこととする!! ばりばりお背中を引っ掻かれているマガツヘビ! つめとぎだ!
ちょっと真剣になるには惜しい感じの回だったかもしれない。
「一緒に戦……」
「マ゛ーー!」
「ガアア!!」
おお、話が通じるがギリ通じていないようにみえるタイプの事案である。猫のような鵺、必死になってがるがるしている。それに対しマガツヘビ、文句を言いながら互いに睨み合っている……自分が入るとどうなるか?
まあ、構わないだろう! 魔竜顕現――竜を含めての乱戦だ!!
「またデェッケえのが出やがったなァ!!」
穴の真正面へと立ち塞がるように立つは、竜へと変身したイリス・ローラ(支配魔術士見習い・h08895)。それを見て唸るマガツヘビ。鵺との挟み撃ちとなったが、マガツヘビはまだまだやる気満々だ!
「クソが!! 全員ブッ殺して細切れにしてやらぁ!!」
逃亡よりも戦意が勝っている! 隆々とした腕がイリスの体を打ち付けるが、彼女の鱗はその攻撃を一切通さない――! それでもへっ、と鼻で笑って追撃を加えてくるマガツヘビへと、イリスは口を開く。
「このブレスを浴びても、平然としていられるかな」
飛びかかってくるその腕を受け止めて――イリスがブレスを放つ! 虹色の光が周囲を焼き払う中、鵺はぴょいんと跳ね上がって範囲外へと逃れ。「ンナ!!」となにやら声を上げていた。自壊の魔力が込められていようと、相手は強大な古妖。まだ体力は尽きない!
「じゃ、ま、くせぇー!!」
振りかぶられた腕。それを避けようとしたイリス――その間に割り込んでくるのは。
「ム゛ァウ!!」
受け止めたのは鵺の体だった。ここで回避を選べば、この地が汚染されることを理解しているようだ。知能そのものはしっかりとした古妖。外見に騙されてはならないが、騙されないのは無理がある! 毛皮は多少剥げたが問題はない。
なにより、攻撃を受ければイリスの魔力が尽きていくことを理解している……!
――√能力者の存在を知っているほどの古妖なのだから、|彼ら《EDEN》の能力についても詳しいのだろう。じぶんで説明できるかはおいといて。
「なんで庇ったこのクソネコ!!」
「|ン゛ゥ《ねこじゃない》!! |マゥアウヴ《まもるの》!!」
「何が守るだ、どうせ今だけのくせによぉ!」
――この鵺は、自分以外の犠牲をも許す気がないのだ。どう見ても猫とて、その覚悟、確かなもの。力強くマガツヘビを引っ掻き、小型マガツヘビを纏い始めたそれを見てイリスを見る。
「ンナ゛!」
――意図は、わかった。
「任せて」
すう、と吸い込んだ空気――吐き出されるは虹色のブレス!! 小型マガツヘビが焼き払われていく中飛び込んでいく鵺。首元へと食らいつき動きを止めたそれへと、イリスの爪での追撃――切り裂かれ完全に薙ぎ払われた小型マガツヘビ!
一撃を喰らい転がるそれ。これならば、インビジブルに己を食わせる苦痛も味あわなくて済みそうだ。
「フシャーッッ!!」
イリスを守るようにして前に出る鵺。その覚悟にマガツヘビが舌打ちをする――!
「鵺……なるほど、これが鵺ですか……」
ごめん、神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)ちゃん、これギリ鵺じゃないかもしれない。
「とても可愛いですね♪」
「マ゛!!」
|本鵺《ほんにん》はご満悦そうにしているので何も言わなくてよさそうだが。マガツヘビと睨み合う両者を見て、食べていたお菓子の包装紙をポケットへと突っ込んだ七十。構えた大鎌と共に、鵺の横に立つ。こうしてみると……鵺、でかい。マガツヘビと対等のデカさを誇っている……デカい。
「そんな事より、マガツヘビはこの可愛い鵺の言葉が分かるんですね」
「|ン゛ナァアアン《みんなわかんないの》!!」
「はぁ!? ざっと聞けばわかるだろうが!! 全員わかってくんねえだとよ!!」
ちゃっかり翻訳するあたり、本当に|√能力者《EDEN》に流されている……。マガツヘビにとっては完全に理解できる鳴き声のようで、ニャゴニャゴ言っている鵺に対してマトモに受け答えをしているものだから、ちょっとうるさい。
「何と言ってるか翻訳して下さい。翻訳してくれたら……」
まるでメリットがあるかのような七十の溜めに、マガツヘビがごくりと息を呑むが。
「穴には通しませんので」
「通さねえのかよォ!!?!?」
そんな中で召喚されたフリヴァく、唐突なのでちょっとよくわかってないが、隣のモフモフを見てから己の仕事を全うする。歌い始めたチル・マイによって生み出される隷属者に、マガツヘビの攻撃を受けさせながら――ダメージを負いつつあった鵺の体が再生していく。
「ンナっ?」
「あ、また鳴きました。今のは何と言ったんですか? 教えて下さい」
生み出された、か弱くも鬱陶しいそれらを尾や腕で払いながら七十を睨むマガツヘビ。もう察してる、何て言うのか察してる。
「教えないのなら……?」
「絶対に通しませんので」
「だよなー!! 「へんなの」だってよ!!」
脅しじみた言葉もなんのその、返答。汚染地帯を作り上げようと振り上げたマガツヘビの腕を大鎌で受け止め、返しの刃でマガツヘビの腕を掻き切る! その傷に向かって苦痛を倍増させようと噛みつく鵺!
「ム゛ー!」
「今のは?」
「まずい!!」
もう本当に翻訳係じゃんね。じたじたケリケリする鵺をなんとか振り払ったマガツヘビ、ぜえぜえ呼吸しながら七十と鵺から距離を取る……。
「……この可愛い鵺をどうにしかして飼えないでしょうか?」
「マ?!」
あ、これは普通にわかる鳴き声かも。
可愛い、可愛過ぎる。
口元を抑えながら緩みそうな頬と上がりそうな口角をぐっと堪えるは櫃石・湖武丸(蒼羅刹・h00229)である。ああ~ど~う見ても猫派!! わかりやすい! 猫派!
「あれが鵺……鵺ってあのような姿だったかな?」
あのようなすがたでした。そういうことになっております。爛々と輝くまんまるな目で、バリっとマガツヘビの皮膚を切り裂き、「こんにゃろォ!!」とバチギレているマガツヘビにヒットアンドアウェイ。
そんな事はどうでもいいのだ、今は多様性の時代だってよ! あのようなフォルムの鵺が居たって全く問題ないのだ!!
「(何を隠そう、俺は猫派なんだ)」
初手からわかるよ、湖武丸くん。
「あの子と共闘出来るなら俺は頑張ってしまうぞ……!」
がんばってくれ!! カワイイって正義!!
「こっちは任せてくれ! 無理はするなよ!」
「ンンニャ!!」
「どいつもこいつもコイツ利用しやがって!!」
そりゃあ頑張ってくれてるんだから、こっちも頑張らなきゃじゃん? 当然のことながら、マガツヘビにとってそれはあまり理解できない思考らしい。従獣でありながらこの戦場からの逃亡を選ぼうとするその性根から見ても明らかだ。
|猫《鵺》が傷付くなんて以ての外――! いざとなれば俺が庇えばいいのだ! 丈夫なのだから。
待ってそれでいいのか湖武丸。鵺も丈夫だぞ! でもそれでいいな。だって概ねでっかいネコチャン、守るべし――!
駆け出した湖武丸、鞘から引き抜く刀、鬼々蒼々。色即是空――! 僅か開いた空間を無視し切り裂かれるマガツヘビの肌。びくりとマガツヘビが狼狽えたその瞬間、彼の喉元へと一撃とらぱんちを食らわせる鵺!
「楽しそうにしているなあ、俺も是非混ぜてくれ」
「これは猫じゃらしじゃねぇぞ!!」
なんとか間合いを取り小型マガツヘビを纏おうとする彼に湖武丸は笑う。
「次は鬼ごっこか? 逃がすつもりはないぞ」
「|ンなんな゛っ《アレおそいもん》!!」
「あァ!? ご立派に言ってくれんじゃねえかよぉ!! お望みとありゃあ――!!」
挑発に、乗った! どっちの挑発かはわからないが! 湖武丸の手、持ち替えられるは備州天津時雨、刃渡り三尺の大太刀が、振るわれた――!
襲嵐。嵐のごとく、薙ぎ払われる小型マガツヘビ。そして二撃目、慌てて逃れようとしたマガツヘビ、間に合わずその肌を深く切り込まれた――!
「テメェエェーー!!」
絶叫。僅か残った小型マガツヘビを体に纏ったまま、巨体が突っ込んでくる! その爪を指ごと切断しつつ受け流す湖武丸。横から飛び出した鵺が、勢いのついたその体に爪を立てて動きを止め、蛇の尾でマガツヘビに食らいつく!
「鵺……もっとゆっくり見てみたいのだが、そうもいかないかもな」
何せ混戦だ。デカいのがデカいのと戦っているのだし、あの鵺も古妖である。マガツヘビを倒してしまえば、共闘も終わってしまう……。
「また今度会えるのを楽しみにしておこうか」
名残惜しいが、ひとまずここまで。できれば次はモフモフしたいところだ!
「……猫さんと協力、頑張るぞ。おー」
鵺です。吾亦・紅(警視庁異能捜査官カミガリの不思議ちゃん・h06860)ちゃん。あれ鵺です、ちょっとあやしいところはあるけれど。
お花いっぱいのあきちゃんを両手で持って、あきちゃんのおててを上げて「おー」のポーズ。いや……猫じゃないんだけど、まあ、まあいっか!!
その眼の前で繰り広げられているのはかいじゅうばとるなのだが。それもまあ、いっか! 猫さんをサポートすればよろしいらしいし!
いつものマイペースさで、てってこ側に寄ってみる。あんまり巻き込まれないであろう位置で、二匹の会話を聞く。
「マ゛ーー!!」
「語彙無くなってきてんぞ猫ォ!!」
通常、こっちからは鵺が何を言っているかよくわからない……が。
「あし、おそいねっていってるねぇ」
あきちゃんに話しかける。あ、「わかっちゃう」タイプであった。ともあれ戦闘開始だ! マガツヘビが小型のマガツヘビを自身の体に纏い始める――だが、鵺の相手に夢中になっているこの隙、逃すのは当然損だ。
紅が持ち上げるは。
「よいしょ」
でっっっけえ鉄骨つきのブロック!!
が、ひゅんっと飛び、マガツヘビの頭を打った!
「う……お……」
思わずぐらつくマガツヘビ。昏倒寸前のその体を押し倒し、ばりばり爪とぎをする鵺! 起き上がれぬまま爪を受け続けることになっている!
「……ヘビさんは暗いところが好きなのぉ?」
両手に持ったあきちゃんと、こてん、首を傾げる紅。しゅばっと戻ってきた鵺、にゃごにゃご何かを言い始める。
「|ン゛マぁん!! なァう、ゔー《あそこ、はいるとにげちゃうの!》!!」
「そっかあ、じゃあ、ここに入っちゃダメだから。通せんぼするねぇ」
……じんわり染み出す気配が、穴を覆う。ようやく起き上がったマガツヘビ――その気配に目を細めた。
「テメェ……なにもんだ……」
紅はよくわかっていない様子で目をぱちぱち。穴を埋める禍々しいそれら――マガツヘビには、確と視えている……!
「よいしょ」
とはいえそういうのちょっとどうでもいいので、身の回りにあった元・カヤックアキバスタジオさんの残骸をマガツヘビへとぶつける紅! それに追撃とばかりに飛びつき、尻尾の蛇を噛みつかせる鵺!
「……おやつ」
「は・な・し・聞けェ!!」
「|ワ゛ぁぅーーッッ《そっちもきかないもん》!」
お菓子袋から取り出した小さなおせんべい。紅がぱりぱり食べている間にも、文句の応酬は続く……。
もこもこは、好きだけど。
もこもこしてても、でっかいなあ。
「まー……」
実によく鳴いている。猫の喧嘩としか思えないほど鳴いている。
「……まぁ、ね? 本人が鵺だと言うのならね?」
鵺なんでしょうね。そういう事にしておきましょうね。頭以外ちゃんと鵺ですし、ね??
ふわっと体を浮かせるはノア・キャナリィ(自由な金糸雀・h01029)。遠距離からサポートすべく――そして、穴へと逃がすことを許さないよう、大穴の前へと陣取った。
「鵺さん、どんどんマガツヘビさんと喧嘩してください」
少しだけ張り上げた声に顔を上げるマガツヘビと鵺。浮かぶノアに気づいた両者。なるほどとばかりに「ナ゛!!」と鳴く鵺、「卑怯だろうがァ!」とこの期に及んで叫ぶマガツヘビ!
遠慮なく、さぁどうぞ。
かいじゅうばとる再開だ。獣の取っ組み合い、噛み付き合いを経て爪でばりばり引っ掻き合う。叩きつけられるマガツヘビの腕、にくきうつきのとらぱんち! それを見ながら、こちらに攻撃が飛んできても構わないようにオーラを纏いながら詠唱を始めるノア。
ヒットアンドアウェイ、すばやい動きでマガツヘビを翻弄する鵺の攻撃の合間を縫うように、光がマガツヘビの顔面で爆ぜていく!
「まっぶし、テメッ、邪魔すんじゃねえ!!」
邪魔というか、鵺に夢中になっているのが悪いというか。その隙に飛び込んだ鵺のしたたかとらぱんち!! 横っ面を叩かれる!
「この……クソ……いい加減に……」
ぜえぜえと息を切らし、小型マガツヘビが体を覆う中。追加で放つ夢蛍――! その性質に気付いたか、ぴゃっと鵺が駆け出し範囲外から逃れていく! じぶんもあたったらたいへんだと理解したらしい!
マガツヘビはとびきり邪悪な存在だ、浄化という性質はあまりにも効果覿面。その身に纏おうとしていた小型マガツヘビが、光の中弾けるように消えていく。
「ぐ、おォオォオ――!!」
マガツヘビが咆哮する――そして、力尽きたのか、とうとうそのまま前のめりにばたん、と倒れたのであった。
禍々しい気配が消えたことで、ふうと息をつくノア。
「……鵺さん」
「ンナ」
大激戦であった。ぼろぼろになった鵺、地上にそっと降りてきたノアのほうへとゆっくり進んで。
「ちょっと撫でさせてください」
でっかい顎下と額をもふもふ、なでなで。心地よさそうに目を細めたそれ。
次会うときは敵同士とはいえ……今は、味わっていいもふもふだろう……。
