シナリオ

許されざる『最悪』

#√EDEN #√マスクド・ヒーロー #王劍『縊匣』 #コウモリプラグマ

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王劍『|縊匣《くびりばこ》』関連シナリオ

これは王劍『|縊匣《くびりばこ》』に関連するシナリオです。 これまでの関連する事件は#王劍『縊匣』をチェック!

●さいあくに、さいていに
 甲高く下卑た笑い声が響き渡っている。
「――ヒャーッヒャヒャヒャ! プラグマ直属怪人、コウモリプラグマ様である!」
 華美な装飾の部屋に、名乗りと共にその身一つで突っ込んできたコウモリプラグマ。麗しの部屋に似合わぬ下品な笑い声と翼の羽ばたきの中……声高らかに彼はこう宣言する。

「怪人『プリンセスクイーン』よ、大首領にお前が手に入れた『1対2本の超珍しい王劍』を献上せよ! 40秒以内によこしやがれっ!」
 その場に座すであろう部屋の主、怪人『プリンセスクイーン』へと放った威勢の良い言葉は、静かな部屋にギャンッと響き渡るも……返答はなかった。

「はれ? これは、一体?」
 一体も、なにも。怪人『プリンセスクイーン』は既に斃れ、部屋の中央で絶命していたのである。素っ頓狂な顔をぐるぐる傾げて、コウモリプラグマはその死体と部屋を漁り始めた。
 物言わぬプリンセスクイーン、名は体を表す華やかな衣装の上から、深く胸を貫かれている。これが致命傷か。

 お得意の超音波で探し当てた隠し金庫を暴けば、その中から現れたのは明らかに他者へのプレゼントと思われる箱。
 もちろん、箱があるからには中身は暴かれるべきである――!
 破り捨てられた包装の中から現れたのは、『質実剛健な白い刀剣』。それは間違いなく、王劍だ。

「プリンセスクイーンは『絶対死領域』により完全に死んだのか」
 死体の状況を見てまた首を傾げるコウモリプラグマ。
「だが、一本だけであるか。最も信頼する幹部に渡すつもりだったのであろうが……」
 そうしているうちに、ふと目に入ったひとつの手紙。無遠慮・無作法に開かれたそれに書かれていたのは。
「なになに……」
 ――『デュミナスシャドウ君へ、これは君の王劍だよ。ボクの王劍と瓜二つのお揃いの王劍なんだよ♪ この王劍とボクとキミの愛の力があれば世界征服なんて簡単にできるよね、ラブラブパワーで一緒にガンバろー♪』
 ……ラブラブパワー? 内容はよく分からないが、この王劍はどうやら片割れ……。

「渡すはずの王劍が隠されたままで、もう一本が無いということは……」
 既に、誰かの手に渡っているのではないか。
「だが、この王劍を利用すれば、もう一本の王劍を探し出し、大首領に献上できるだろう。ヒャーッヒャヒャヒャ!」
 何せ、二本で一対とあらば、それは引かれ合うべきだ!

 僥倖、僥倖!! その手に握られているのは他でもない。王劍、|縊匣《くびりばこ》の一本――!
 笑い声は高く、空へと消えていく。
 白い剣が空に踊る。王劍を手にしたコウモリプラグマは甲高く笑いながら、飛び立っていく……。

●おとどけもの。
「厄介事の『お届け』だ。――|縊匣《くびりばこ》案件だよ」
 オーガスト・ヘリオドール(環状蒸気機構技師・h07230)、いつになく真剣な顔でからり、カプセルをテーブルへ転がした。それから投影される情報量、過多!

「最初にやるべきことを示そう! 『コウモリプラグマ』による惨殺事件が起こる――それを阻止してほしい。場所は、福岡県の博多駅。この時期ならクリスマスマーケットやってる時期だね。人が多く集まる場所を狙ってきてる」
 己の顎をさするオーガスト。「ま、アレにとっては人さえ居りゃどこでもよさそ」などと付け足しつつも。

「コウモリプラグマは『王劍』を持ってる」
 謎多き王劍、どうやらコウモリプラグマはその一本を手に入れたようだが。
「でも、√能力者が現れたら配下を大量に呼び出して撤退しようとする。相手は王劍持ちだ、全力逃走されたら追い縋るのは難しいだろうね。出来て一発ブチ込むくらいかな」
 相手はプラグマ直属の強力な簒奪者、それが王劍を手にすれば相応の実力になっているはずだ。ここで仕留めることは叶わないだろう。

「最大の幸いであり不幸なのは、あいつが一般人から情報を収集しようとしてること。偽の情報とか流しちゃったら信じちゃうかもよ? ――ともあれ、アイツが撤退したらこっちのターン! 一般人を守りながら、現れる戦闘員とかをボッコボコにしてやれ!」
 へらり軽薄な笑みではあるが、星詠みである以上その情報は信用できるものだろう。

「あいつが持ってるのは間違いなく|縊匣《くびりばこ》の一本。で、あいつは何かを必死になって探してる……情報戦を仕掛けたりするのもアリだろうね」
 人差し指をぴんと立てて、くるくる。少し調子が戻ってきたか軽口を言いながらも、オーガストは目を細め。

「星はいつだって輝きを変える、未来は変わる。……君たちに任せたよ」
 微笑みは深い。何せ空想未来人、未来が常に移り変わることをよく知っているのだから。

●うかれてんじゃねえ!
「ビカビカギャアギャアうるせぇんだよォ!! オレ様の耳をグチャグチャにする気かァ!!」
「きゃああっ!?」
「うわっ、なんだっ、こいつ――!!」
 ――福岡県、博多駅。クリスマスマーケットが開かれている中、コウモリプラグマは大声を上げながら、一般人を踏みつけつつ会場に降り立った。

「丁度いい……おい! オマエ!! オレ様の問いに答えろ!」
「ひぃいっ!」
 踏みつけられた体、その頭部の真横に突き刺さるは白き剣、|縊匣《くびりばこ》!
「この剣と同じモンを見たやつは正直に手を挙げやがれ!」
 だが当然、それに挙手できるものなどおらず――。
「ほほぉ……このコウモリプラグマ様に隠し事とはな。よし、体に聞いてやろう!」
「いっ、ぎゃあぁっ!?」
 深く切り付けられた一般人の腕。そうしている間に、マーケットの周囲に集まってくるプラグマの配下たち――!

「さぁ、もう一度聞くぞ……見たやつは、いねぇのかァ!!」
 叫ぶコウモリプラグマ。――それにやれやれ、といった様子で、配下であろう怪人が首を振った。

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第1章 冒険 『コウモリプラグマの蛮行を止めて、話をする』


クラウス・イーザリー

「ケッ、どいつもこいつもロクな情報持ってねえッ!!」
「うぐぁっ!」
 踏みつけていた一般人を足蹴にして転がすコウモリプラグマ。感情のままに白い剣を振り回しながら喚き立て吠えている――。

 逃げ惑う一般人に紛れるように、渦中へと飛び込んだクラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)。情報収集はしたいが、囲まれつつあるこの状況だ、一般人の救出を優先しなければ、助けられる人を死なせてしまっては意味が無い。

 傷つけられた腕を庇いながら逃げようとする一般人へ蹴りを入れようとしたコウモリプラグマ――そこへ割り込んだクラウス!
「……そこまでにしてもらおう」
「あァ!?」
 強力な蹴りを受け止められ、邪魔をされ憤ったか、二発目の蹴りを繰り出そうとしたコウモリプラグマへレイン砲台からレーザーを射出し、彼をその場から退ける――!
 同時に舞い降りるは暖かく鮮やかな輝きを放つ鳥類のシルエット。クラウスが庇った先、腕を傷つけられた一般人を癒し、そして逃げろとばかりに飛び立っていく。

「おーおー|√能力者《EDEN》のご登場か! ギャハハッ、ちぃっとミリほど遅ぇんじゃねえかぁ〜!?」
 ゲラゲラ笑い声を上げるコウモリプラグマ。力強く羽ばたき、空中からクラウスを見下すように首を傾ける。
 ひとまずは相手の興味を引けたようだ。この隙にと一般人が逃げていく中、クラウスはその時間を稼ぐために、コウモリプラグマへと声をかける。

「……もしかして、手がかりも無いのに虱潰しに聞いて回ってる? それ、|縊匣《くびりばこ》だよね――」
「アァ?! 聞き捨てならねぇなそんなのもナシに来てると思ってんのか! この王劍と同じ形の王劍を持って、√EDENに向かった奴が居んだよォ!!」
 クラウスの言葉を遮るようにして、コウモリプラグマがゲラゲラと下卑た笑い声を上げた。喧しい笑いが鼓膜を揺らす中で、クラウスは咳払いをして、言葉を続ける。
「――王剣執行者を争わせるって聞いたことがあるけど……どこかにあるとしたら、他の王剣執行者が持っているんじゃない?」
「だーかーらーァ王劍使ってる奴を探してんだろうが! ――そりゃア2人の王劍所持者が同時に世界支配を企めば、当然戦う事になるだろうさ! それが王劍の意思というなら、そうなのかもなぁ、ヒャーヒャヒャ!!」
 余裕綽々だ――ばさばさと翼を羽ばたかせ、クラウスを小馬鹿にするかのように空中でぐるり、白い剣と共に躍る。

 どうやら一般人を狙う理由は、彼なりにはあるようだ。そして王劍執行者同士の争いになるというのなら、それも運命のひとつであるとでもいうかのように笑っている。
 唇を引き結び、いつでも武器を構えられるよう臨戦態勢を取るクラウス。まだ、この蝙蝠を問い詰めてやる時間はありそうだ。

赫夜・リツ

 炎の蝶が踊る。冬のイルミネーション……白と青で彩られた博多駅、クリスマスマーケットの会場にて。赤い灯がふと足された。
 今助けに入らなければ。これ以上の暴虐を許してやるわけにはいかないが、自分たちが現れればすぐに撤退する可能性もある――かといって、タダで逃がすわけにもいかない。
 やぶれかぶれだ。猫の手も借りたいようなマルチタスク。あれもしなければ、これもしなければ、だがそれをすると――。
 考えている間にも、赫夜・リツ(人間災厄「ルベル」・h01323)の召喚した蝶は怯え逃げ惑う人々や傷ついた者を癒やす火を灯していく。新しく現れた|√能力者《EDEN》にケッと明らか面倒そうな声を上げたコウモリプラグマ。

「オイ! オマエ! オマエも何か知ってんなら吐きやがれ!!」
 がなり立てながら、空中で白い剣をぶんぶんと振り回すコウモリプラグマ。王劍の居所はともあれ虫の居所は大変悪いらしい、放置しているといつまた一般人を襲い始めるか分からない。リツはコウモリプラグマの気を引くために――そして、ひとまずこの場から立ち去ってもらうために一芝居打つことにした。

「王劍? 王劍なんて知らないよ」
「この期に及んでしらばっくれてンじゃねえぞ!! これが見えねえのか!!」
 剣を見せつけるかのように、リツへと白い剣の切っ先を向けるコウモリプラグマ。質実剛健、美しい白い刀身には先程傷つけられた一般人の血がまだ滴っている。
 それに後ずさってみせるリツ。こちらへ向けてくるそれは『絶対死領域』を発生させているのだ、それを無闇矢鱈、空中で振り回されているこの状況、非常によろしくない。
 リツはなるべくとぼけた雰囲気で、自然体を装いつつ――そのような性格なのだと思われるように表情や態度を作って。
「知らないって! 白い劍を持ったヤツが博多埠頭を目指してるなんて、……あっ……」
 ――情報というグラスを『倒して』みせた。偽の情報をわざとコウモリプラグマへと洩らしたのだ。

「今の無し! 違う、ほんとに知らないよ……!!」
 慌てて否定するリツ。必死に首を振って、ちょっと震えてみたりなんかして。それを見たコウモリプラグマはふむふむと頷くように首肯し。
「確かにソッチは行ってない方向だな……」
 と、そんな顔をして、リツに向けていた刃をようやく下げてみせた。その視線の先はおそらく博多埠頭へと向けられているのだろう。盛大な嘘であるが、それはともかく。

「……邪魔も入った! 次は、その博多埠頭とやらに向かうとしよう! ヒャーヒャヒャ!!」
 どうやら次の目的地を決めたらしい。埠頭には観光名所があるものの、博多駅ほどの人はいないはずだ。ともあれリツはこの場を切り抜けることを優先した。

夢宮・ロココ

「まあ、何だか大変そう……」
 慌ただしく人々が動き回る中、口に手を当て、喚くコウモリプラグマを眺める乙女がひとり。夢宮・ロココ(恋とはどんなものかしら・h09766)、喧騒と混乱の中でもマイペースに呟いた。
 そして淑やかに、優雅に歩みを進める。所作のあまりの異質さに、逃亡する人が避けて走るほどの様相だ。

「ごきげんよう、コウモリの方」
 丁寧にカーテシー。その声に気づいたコウモリプラグマ。先ほど得た『|情報《嘘》』のことを考えていたのか、上空からどこか遠くを眺めていたが――「アァ?」と声を上げ、ロココへと視線を向けた。

「わたくしはただの通りすがり。武器も戦う意志もございませんわ」
「そんなのがオレ様に話しかけてくるわけがあるか!」
 ごもっともといったところだが、それはそれ。実際ロココは無手であるし、コウモリプラグマを攻撃しようという意思などない。目的は、彼を煽ててその刃と敵意の向かう先を逸らすことだ。

「王劍を手にできるなんて優秀でいらっしゃるのね」
 当然だとばかりにフンと鼻を鳴らして、これ見よがしに剣を振ってみせるコウモリプラグマ。会場に聳え立つ巨大なクリスマスツリーに足をかけ、じっとりロココの出方を見る。

「ですが、彼らをあてにするのはお勧めいたしません。忘れようとする力……でしたか? この世界の人間たちはとても忘れっぽいのです」
 先の戦争の事も、もう綺麗に忘れているのだとか。……事実、被害に遭った者はすぐに日常に戻っていっていたし、秋葉原の異変について、報道すらされていなかったという点もある。

「王劍を目にしたとて覚えていられるとは思えません。時間の無駄ですわ。やはりお話を聞くのなら√能力を持つ者でないと」
「――ほお? 確かにその通りかもナァ!」
 √能力者。そのワードを聞いた瞬間、コウモリプラグマの目の色が変わった。改めて、ロココを|√能力者《EDEN》であると認識したようだ。
 ちらちらと逃げていく一般人に向いていた視線が、目前の彼女へと定められた。これで一般人が避難する時間を稼げるだろう。

「その王劍はどうやって手に入れたのでしょう? ……関わりのある方で、どなたか心当たりはございませんか?」
「ヒャヒャヒャ! お前に教える意味があるか!?」
 小馬鹿にした笑い声と共に首を傾げてみせるコウモリプラグマ。にんまりと唇の端を吊り上げて、翼を大きく羽ばたかせる。
 その風圧でクリスマスマーケットの会場が荒れる中、ロココは乱れた髪を少し整え、目前で得意気にしているコウモリプラグマを見つめるが――くるり、彼の視線が周囲へと向いた。

「ここには王劍は無いようだな。丁度いい、次は博多埠頭とやらに向かうとしよう!」
 ばさりと再度皮膜の翼を広げるコウモリプラグマ。人がすっかり失せてしまった博多駅前。これでは情報を集めるも何もあったものではない――してやられた。
 だが長居は無用。次の目的地が決まっているのだから、『飛び立つ方向』もまた、決まっている!

 飛び立とうとするコウモリプラグマの様子を合図とするかのように、プラグマの戦闘員たちが会場を包囲しようと動き始めた――!

第2章 集団戦 『戦闘員』


クラウス・イーザリー

「(逃げたか……)」
 ――相応の無茶をすれば通せるだろうが、安全に一発ブチ込む隙は無さそうか。宙へと飛び立ち戦闘員をけしかけてくるコウモリプラグマを眺めるクラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)。
 ひとまずこの群がってきている戦闘員たちを倒すのが優先だ。今は気にしている余裕はないと、向かってくる戦闘員たちへと視線を向けた。

 初手自分に向けて照射されるレーザー光線を避けながら、彼らの様子を窺う。
 戦闘員たちはどうやら通信装置で連携を取っているらしい――各々の所持する得物で俊敏に襲いかかってくる彼らの攻撃を避けて、ならばとクラウスは隙を見て飛ばしたドローンのジャミング機能を作動させる。

「うおっ!?」
 近くにいた戦闘員の動作が途端に鈍る。そこへ撃ち込まれる牽制射撃はレイン砲台とファミリアセントリーのものだ! それをどうにか避けた先でも、逃げ場はない。二段構え、広く展開される風魔法が戦闘員たちの足を掬い、宙へと巻き上げる――!

「こっ、これはどうなって――ぎゃあ!」
 放たれる魔力兵装の剣が戦闘員たちを貫き、なす術もなく次々と倒れていく戦闘員。一般人に手を出す隙もないのか、クラウスへの対処で手一杯な様子だ。
 それでも強烈な風が吹き荒れる中、銃を構え一般人への攻撃を挟もうとした戦闘員がいた、その動きを察知し、その照準の先へと回り込むクラウス。
 魔法により作られた盾が銃での射撃を受け流し、反撃としてレイン砲台から発射されたレーザーが戦闘員の一人を屠った。

 自分が相手だとばかりに、文字通りに自らを盾にしながら立ち回るクラウス。
 対して連携を崩された戦闘員たち。未だ体勢を立て直す事ができず、本来発揮できていたであろう能力を持て余しているように見える。初手でジャミングしてやったのが相当効いているらしい。
 ――数は減ったが、まだまだ相手の気力は尽きていない。魔力兵装を構え直し、クラウスは襲い来る戦闘員を両断した。

ジェイド・ウェル・イオナ・ブロウクン・フラワーワークス

 ぱしゅん。空を裂く小さな音と共に戦闘員に突き刺さったのは、マリーゴールドの押し花が封入された栞だ。放った先にちらりと見えるのはジェイド・ウェル・イオナ・ブロウクン・フラワーワークス(笑おうぜ・h07990)。
 たった一枚の栞から広がっていくかまいたちのような斬撃、栞が刺さった戦闘員が炎を纏って倒れ――それにやや遅れ、周囲の戦闘員もまた倒れていく。

「(使えるもんはなんでも使う。戦場じゃ当たり前さ)」
 広がっていく禍々しいイルミネーションに、趣味が悪いとばかりに小さく肩をすくめたジェイド。投擲された方向へと意識を向ける戦闘員たちだが、既にジェイドはそこに存在しない。
 クリスマスマーケットの屋台の陰を利用し、じっくりと確実に数を減らしていく。素早く動ける彼らだが、『彼』がそこにいなければ、攻撃する先がなければ意味がない。栞の大盤振る舞い、鮮やかな橙が広がっていく――!

「くっ……見つけたぞ!」
 だが、それでも目敏い者はいるものだ。戦闘員の一人が指差す先、ジェイドが潜んでいた陰へとなだれ込むように迫る戦闘員たち――!
 傷ついた敵を狙い、サバイバルナイフを振るうジェイド。抉られた傷口から散る血液、戦闘員たちの体、切り裂いた箇所と同じ場所に刻まれる傷。
「おっと!」
 その傷をも厭わず特攻してくる相手の腹へ、押し当てた拳銃の引き金を引いた。高く響いた銃声、周囲の戦闘員の腹にも風穴が開く。

 ――素早く派手に、そして命をかなぐり捨てた特攻だ。ジェイドの体にも刻み込まれていく傷。だがジェイドの笑顔が崩れることはない。一切だ。
 数ばかりがうじゃうじゃいるのだ、範囲攻撃は着実に戦力を削り取る。
 我慢比べならいくらでも、覚悟はいくらでも。用意できる手段も、いくらでも。
 ざくりと切り裂かれた戦闘員。それが倒れる先に立ち笑うジェイドを見て、戦闘員の|群れ《・・》は後ずさりをした。そこへ追い打ちのように投擲される栞が、橙の炎を広げていく。どこか懐かしく見えるそれにジェイドは目を細めた。

エーリカ・メーインヘイム

 目立つものだが、それはそれ、これはこれ。戦闘員たちに脅威であると思わせるには十分すぎる大きさだ――なにせ、彼女は8mである。博多駅に立てられたシンボルたる巨大なクリスマスツリーの、約半分!
 エーリカ・メーインヘイム(あなたの帰りを待つ母艦・h06669)はややおどおどした様子で戦場を眺める。元は結構な人数が居たようだが、今となっては戦闘員、『半分より少し多い』程度か。

「作戦を開始しますっ!」
 たとえ戦場が故郷でなくとも、守るべきものや場所があるのならエーリカは戦うまでだ!
「レギオンさんたち、いってらっしゃい!」
 頑張ってね! 周囲に展開したレギオンの射撃――高命中のそれが、戦闘員たちに降り注ぐ!
 上空から放たれる弾丸やレーザーによって撃ち抜かれていく戦闘員、負けじとエーリカへと反撃を開始する! |大きい《巨大娘》ゆえに攻撃そのものは命中するも、所詮は戦闘員だ。されど、戦闘員。痛いものは痛い。

「いたたっ、やめてくださいっ!」
 ぺい。ちょっと足元を手で払えば、まるで小虫のように前が掃けた。それでも立っている戦闘員へ向けてレギオンが射撃し、とどめを刺していく。何度かべちべち払ってしまえば、ずいぶんと見通しが良くなった。
「ええい増援! 増援だ!」
 呼びかけに応じて増える戦闘員たち――だが、エーリカにとっては――高く広い視界を持つ彼女には、「ちょっと増えた」程度に見えていることだろう。見下ろした先の増援に対してもレギオンへ指示を飛ばし、飛びかかってきた戦闘員をぺちりと叩き落とす。
「レギオンさんたち! あそこです!」
 司令塔として――これは文字通りの意味も含むかもしれない。敵が固まっている場所を見つけて指示を送り、的確に戦闘員の数を減らしていくエーリカ。戦闘員を全滅させるまで、あと一押しだ。

赫夜・リツ

 わらわらと集まってくる戦闘員たち――先程ついた嘘のおかげで、コウモリプラグマの意識はすっかり埠頭へと向いているようだ。
 赫夜・リツ(人間災厄「ルベル」・h01323)はひとまず胸を撫で下ろした。
 だが次に襲いかかってきた脅威――戦闘員たちと対峙する。
 この数だ、コウモリプラグマを追うには難しいかとリツは思考しながら――彼は、己の腕を異形と化した。めきりと異様な音を立てながら変異する皮膚、開かれる瞼。眼球が姿を表す。

「ギョロ、出番だよ。ここで足止めを食らうのは……ね!」
 振るわれる剛腕、呼ばれたギョロとやら。名の通りに戦闘員を睨めつけ、血飛沫を浴びながらゆったりと瞬きをする。そのうちに殴り飛ばされ吹っ飛んだ戦闘員がクリスマスマーケットの屋台へと叩きつけられていった。

「この……ッ厄介な! お前たち、かかれッ!」
 一人の戦闘員が声を上げた。途端、蛍光色に輝き出す戦闘員たち――! イルミネーションと呼ぶには禍々しい光を纏った彼らが、先程よりも素早い動きでリツに襲いかかる!
「(一気に動きが変わった?)」
 落ち着いて、殴りかかってきた戦闘員の腕を異形の腕で防御し、そのまま周りの戦闘員ごと薙ぎ払うリツ。ここから先も気を抜かずに戦わねばと、特攻してくる戦闘員たちを打ち倒していく。
 囲まれたり後方へ追いやられぬように気を使いながら、自分を狙った射撃を世界の歪みにて受け止め飲み込み、カウンターとしてご返却。撃ち返された弾丸にて戦闘員が倒れ伏した。

 範囲攻撃を受けぬように各々距離を取ろうとしているようだが、それもお見通しだ。空中へ飛び上がり、落下と共に振るわれる腕。
「どいてもらう――よっ!」
 何はともあれ殴りぬく。信じられるのは己の体と――|異形の腕《ギョロ》については――ギャアギャアと喚き立てるばかりで喧しいことこの上ないが、それでも頼れる相棒だ。
 切り裂かれ倒れる戦闘員たち。ナイフを手に襲いかかってくる戦闘員を往なし反撃し、周囲を見回す。
 どうやら先程の戦闘員で、最後だったようだ。ようやく静かになった博多駅前。立っているものは|√能力者《EDEN》しかいない。

第3章 ボス戦 『アポローン・アルケー・へーリオス』


 さて、邪魔者たる戦闘員は排除できたが。
「時間稼ぎご苦労! |引き続き《・・・・》頑張ってもらおうか! ヒャーヒャヒャヒャ!!」
 変わらず喧しい声で笑い、そのまま天高く飛び立ったコウモリプラグマ。次に向かうは埠頭だろう――だが、それを追うことを許さぬ影がある。

 コウモリプラグマの高笑いでも聞きすぎたのだろうか。
 現れたアポローン・アルケー・ヘーリオスはどうにも少し疲れた様子で首を傾げる。
「――私|も《・》見逃すつもりはあるかね?」
 冗談めかした様子で肩をすくめるが、勿論、提案に従う必要などない。
クラウス・イーザリー
ジェイド・ウェル・イオナ・ブロウクン・フラワーワークス

「よく会うな……」
 まったくもって。
「おっ先輩、また会ったねー! 相変わらず仕事熱心」
 どちらに言っているか。『両方』だ。クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)とジェイド・ウェル・イオナ・ブロウクン・フラワーワークス(笑おうぜ・h07990)がハイタッチをする。その前で、「げぇっ」という顔を浮かべているアポローン・アルケー・ヘーリオス。

「シンメンボク先輩、おれらを通してくれる気はない?」
 返答無く即座に矢を番えた時点でもはや『お察し』だ。このまま飲まれると|また《・・》アレが待っている。まったく|√能力者《EDEN》とは厄介な! ヘーリオスの心の内、察して余りある、かもしれない。
 当然黙って通してくれるわけもなく、速射される矢が放たれる!
「聞くまでもないけど!」
 さあ、おっぱじめようぜ! 放たれた牽制射撃に合わせて投げつけられるは栞一枚。空中でかち合い互いの軌跡が逸れ、栞は宙へひらり落ち、矢はそのまま地へと向かい、舗装のタイルを割り突き刺さる。続けざまに発砲される拳銃弾を避けるヘーリオス。

「チッ……まったく貴様らは、邪魔をするときは徹底してくれる! 何よりだ!」
 舌打ちと共に吐き捨てられる言葉に肩をすくめてみせるジェイド。その横から飛び出したクラウスがヘーリオスへと魔力兵装の剣と共に迫る。
 素早い|装填《クイックドロウ》にて放たれた矢が空中で分かたれた。矢の雨となって降り注ぐ中――盾で受け流せない位置から迫る、クラウスへと命中しかけた矢。それをジェイドの栞が遮り、鏃の行く先を逸らしていく。
 その手際、『自分のものと似ている』と察したか。ヘーリオスは舌打ちをして、目前から剣を振りかぶるクラウスの一撃を盾で受け止めた。

 クラウスの盈月の光に混ざり放たれるレーザー射撃を受けながらも狼狽えず、ひとつひとつの攻撃に対処しながら矢を撃ち込んでくるヘーリオス。
 近接戦だとしても、矢さえ放つことができれば周囲に弾幕のように展開され広がる矢が二人を襲う。
 魔力を乗せた斬りつけがヘーリオスの装甲を抉り、それを|盗み見た《・・・・》ジェイドが偽神の頭部を掠める発砲を繰り出した――ぢり、と僅か燃える髪、それに気を取られた瞬間、ヘーリオスはクラウスが放った蹴りによって地へと叩き落とされる。

「くそ……舐めるな、よッ!」
 技量そのものはヘーリオスが上回っているが、前衛に徹するクラウスと後衛のジェイド、その連携攻撃に対し往なす防戦一方。だがそれだけで終わるような簒奪者ではない。
「ッ!」
 クラウスを蹴りつけたかと思えば、そのままの勢いで浮上する体。放たれる頓死の矢――ジェイドを狙って放たれたそれ。「おっと!」となんとか躱すも、二人の攻撃は途切れた。矢の雨が降り注ぐ中、だが――。

「シンメンボク先輩、覚えてる?」
 にこやかな笑みは、ジェイドの顔にぺたりと貼り付けられたものだとしても。ヘーリオスに「察して」もらうには十分な表情である。
 素早く距離を取るクラウスを見て完全に察したヘーリオス、確と盾を構えた!

「二人で無事に帰りたいからね」
 クラウスが呟く、前回は無事とは言い難かったから。
「それじゃ――とっておきだ」
 人間爆弾とはなんとも厄介。途端鼻につく火の匂い、ヘーリオスが避けるには早い起動、ならば守り抜くしかない!

「クリスマスプレゼントだ!」
 ――爆破!!
 轟音と共に広がる煙。クリスマスにぴったりの|花火《フラワーワークス》だ!
 燃えてなお、今回はまだ立っている偽神。けほ、と咳き込む彼はぎろりとその鋭い眼光を二人へ向けて。

「――爆発オチには、させはしない!」
 放たれた矢が飛び交う中、笑うジェイドの前へと出るクラウス。盾で受け流して、クラウスもまた僅かに笑う。ジェイドの爆破、そんなに嫌なんだ。
 嫌だとも。
 毎度毎度、喰らってたまるか! 少々頭に血がのぼっているのか。突っ込んで殴りかかってきたヘーリオスの一撃を、ジェイドがサバイバルナイフで受け止め。横から繰り出されるクラウスの剣を避けて再度離れる際の、偽神のその悔しそうなツラ。まじまじと楽しく拝んでやれ。

赫夜・リツ

「え。……え!?」
 知った顔、知った声。厭世的な笑みと共に立つ偽神を見て、赫夜・リツ(人間災厄「ルベル」・h01323)が声を上げる。まさかこんな所で出会うとは。以前、一戦を交えた相手である。先の戦争――秋葉原荒覇吐戦にて遭遇した、神を騙る怪人だ。
「奇遇ではないか、EDEN。リツといったか。――私が相手では不服かね」
 ――|ディー・コンセンテス《十二神怪人》・アポローン・アルケー・ヘーリオス。どうやらリツの顔を覚えている。
「……困ったな」
 相手がどこか疲れていようとも見逃すつもりはない。戦わなければならない相手だが、聞きたいことはあるというものだ。
「ヘーリオスさん、あのコウモリと仲がいいんですか? その……本当に仲がよかったら申し訳ないけど」
 申し訳ないが、その続きは何だというのか……と、いうと。コウモリプラグマの所業や、そのやり方について、リツは当然納得がいっていないのだ。すなわち、『友人なら、関係を今一度考え直したほうがよいのでは?』という意味である。
 リツの問いを聞いたヘーリオス、あからさまに怪訝そうな顔をする。
「我々|悪の組織《プラグマ》の体系はご存知だろう。全ての悪はプラグマに通ず。それは|十二神《ディー・コンセンテス》も変わりない――」
 矢筒から矢を取り、まるで手遊びでもするかのようにくるり指で回し、弓へと番える。優雅な動作ではあるが、それは間違いなく敵意を向けている証であり。

「|あれ《・・》は大首領から直接命令を受ける事もある、最古参の怪人だ。そんな奴の命令で私が動いても、何も奇妙なことではないだろう?」
 あれとは、コウモリプラグマを指しているのだろう。同じ|悪の組織《プラグマ》である。前回リツと対峙した時も、他の怪人の誘いに乗ったような男だ。……ただ今回、どこか小馬鹿にするような雰囲気であるのは……。
「……純粋な戦闘力はさておいてな」
 ――その自信から来るものだ。浮き上がる体、光背が輝く。臨戦態勢だが、不意打ちのような一撃は加えてこない。それもまた高慢であるからか。

「よかったです。つい……すみません、こんな事を訊いて」
「構わん。だが、世間話をしている暇はもう無い」
 特別仲が良いわけではない。その事実にほっとした様子のリツとは対照的、敵意を膨らませていくヘーリオス。『正々堂々』と、『高慢であること』は両立するのか。ともあれこの男、姑息な手段は| 《そんなに》使ったことはない。
「あなたとはもやもやした気持ちのまま戦いたくなかったんです」
 今回も、真っ向勝負だ。相手は強大な能力を持つ簒奪者。当然油断などしない。加えて、彼の戦法をリツは知っている。血液貯蔵瓶から注がれる血が、異形の腕へと流れて行った。

「搦手でも構わんが」
 余裕綽々といった様子で笑うヘーリオス。本心から闘いを楽しんでいる顔だ。さて、先手を取るはヘーリオス! 降り注ぐは矢の雨――! 世界の歪みで受け止めきれなかったものが貫通し、リツの頬を抉っていく。|確実に殺す《・・・・・》にはどこを狙えばよいのか、分かりきった狙いであった。
 音響兵器へと変化した銀の弓。矢と同時に放たれる音響弾! 受けた矢をカウンターとして射出するも、その反撃の速度では、ヘーリオスにとっては避ける事も容易いようだが――リツにも対抗手段がある。
「ギョロ、ちょっと無理させる、よッ!」
「――ぐ、っ!」
 霊的防護により矢を受け止めた異形。ヒビの入る腕。再起を願え。|諦観《・・》に浸るつもりはない。じわりと細かな傷が修復されるが、速度的に完全回復は間に合わないか。
 空中へと飛び上がったリツ――その剛腕が、ヘーリオスに向かって穿つように突き出された! 咄嗟に腕の盾で受け止めるも、その威力は半端なものではない。二撃目により地上へ落とされた偽神、すぐに体勢を立て直す。再度宙へと逃れられる前に、リツの腕が再度振るわれる!
 速度を犠牲に防御を捨てる戦法。ならば、圧倒的な力で一撃一撃を叩き込めば良い――!
「は……はは! 流石だ――!」
 笑う、笑うヘーリオス。だがその顔の疲弊、隠しきれてはいない。連続攻撃により叩き壊される盾、吹き飛ばされる体が、聳え立つシンボルツリーへと叩きつけられた。
 ……ぐらつくツリーから落ちた体、消える背後の光輪。もはや動くことは、ないだろう。

 ……王劍はコウモリプラグマにより持ち去られたが――あの様子であれば、次の作戦を決行する日も遠くはないはずだ。
 リツはふうと息を吐き、己の異形化したままの腕をさすった。

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