シナリオ

2025戦線異状なし!?

#√ウォーゾーン #偵察部隊を撃破。相手に情報が無い状態で交戦し、有利状態。 #14日夜にまとめて執筆する予定です。

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 #√ウォーゾーン
 #偵察部隊を撃破。相手に情報が無い状態で交戦し、有利状態。
 #14日夜にまとめて執筆する予定です。

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「メーデーメーデー! こちらフロント。誰でも良い。早く援軍を寄こして!」
「くそっ。12mmじゃ豆鉄砲だ。20mm……いや30mmを持ってこい!」
 無線ごしにフロントラインからの救難通信が走る。
 唸りを上げている12.7mmといえば、小隊火器とも言われるヘビィ・マシンガンである。だが、それもWZが握ればただの携行用のライフルに過ぎない。
「こちらヘッドクォーター。フロント、何があった? まだ緒戦だぞ! ルーデルでも呼べってのか! ヴァルハラには伝手なんかないぞ!」
 無線から聞こえる範囲で、ズダダダ……と間断なく叫び続けるけたたましいノイズ。
 その向こう側に司令部は絶叫を返した。町を守るために戦闘を始めたばかりなのだ。
 マシンガンではらちが明かないのか、そのうちに低反動とは名ばかりの対戦車用大型ライフルまでぶっ放している音が聞こえた。
「その緒戦にロボが来てんだよ! スーパー……」
「なんだって!? スーパー?」
「ス-パーロボット! おおおお!!」
 立ち塞がった敵部隊はリュクルゴスと呼ばれるスーパーロボット率いる連中だった。
 前線を支えるWZたちは奮戦したが、予知のままであるならば、容易く粉砕されるであろう。


「ウォ-ゾォーンで町を守るために迎撃に向かった部隊が、動きを掴まれて速攻で撃破されるのが分かった。多少の増援は警戒していたみたいなんだけど、予想よりも強力な部隊だったみたいなんだよね。イメージ的には手薄な所から始めて徐々に戦線を押し上げ、最後に戦うつもりだった連中といきなりであったみたいな感覚だね。ただの偶然か、それとも相手の戦略か、あるいは向こうの星詠みかは分からないけどね」
 ルベウス・エクス・リブリス が説明を始めた。
 星詠みの力で予見を得たとのことである。
 町を守るための戦力は足りてないことも多いので、徐々に戦力を増やして足りなければ援軍を呼ぶ……という計算が、相手の速攻で完全に崩れることになってしまうのだとか。
「理由はどうあれ、このままでは大変なことになってしまう。だからちょっと手助けしに行って欲しいな。戦線は続くからいずれ向こうも援軍を送るだろうけど、建て直せば戦線が優位に進むからね」
 そう言って簡単な地図をくれた。
 このまま行けば味方がやられる前に、敵部隊の前線を突破できるだろう。

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第1章 集団戦 『バトラクス』


瀬堀・秋沙
クラウス・イーザリー


「間に合って良かったよ」
 待ちが攻められ防衛隊が窮地に陥ると知って、クラウス・イーザリー(人間(√ウォーゾーン)の学徒動員兵・h05015)は急いでやって来た。
「簡単に生命が失われるこの世界だからこそ、助けられるなら助けたいと思うんだ」
 ウォーゾーンの絶望的な状況を知っているがゆえに、その悪夢に満ちた未来から、少しでも誰かを救いたいと思って居た。
「さて……ここからなら見晴らしが良いと思うんだけど……」
「にゃっ! 航空戦力はご入用かにゃ?」
 レインが形の残っている建物の中で比較的に高い場所に登ると、そこへ|瀬堀・秋沙《せぼり・あいさ》(都の果ての魔女っ子猫・h00416)がやって来た。もう見た感じ『私が来たにゃ!』とでも言わんばかりのドヤ顔である。
「|小笠原《ボニン》の海から、航空支援のプレゼントにゃ!」
「そうか……頼む」
 秋沙は実に真摯なクラウスの言葉にノリノリな顔で頷いた。
 悲壮な決意をした彼にとって、頭などいくら上げても良い物だ。
 それで人々が救われるならば、幾らでも下げて見せようと必死に頭を下げる。なお秋沙にとっては、フライングダッジマン号くらいの大船(幽霊船)に乗った気持ちで居てくれくらいのノリであったという。

 やがて二人は進行して来る敵部隊を確認した。
『……』
『……』
 ソレは移動砲台の群れであり、物言わぬ破壊兵である。
 小隊長らしきやや大きな個体以下、結構な数のバトラクスが現れたのである。
 やや大きな隊長機は大砲役として、ソレ以外は機関砲をバラまく掃射役であるようだ。
「俺が数を落すよ。後は頼んだ」
 そう言ってクラウスは高い位置から数の集まっている部分を指定した。
 するとその部分めがけて決戦兵器としてのレインが降り注ぐ。
 光の雨が指定した半径21m焼き払い、生き残っている敵に向けて個体携行型のレインに指示を出してトドメを刺していく。
『……』
「流石に全滅は無理だよね。他にも居るし……もう少しここで粘りたいところだけど……ここは無理はしない方が良いか」
 敵は機銃をバラまきながら接近し、粘着弾を曲射攻撃して来た。
 おそらくは体当たり突撃を掛けて来るだろう。
 そうなれば後手に回る為、クラウスは仲間がいることもあり、一度引いて下がりながら射線から逃れる。接近されても良い様にハッキングの準備をしつつ、電磁ブレードをスイッチを入れ立てるように抜くことにした。
「416ごろにゃん。416ごろにゃん。可及的速やかにお助けするにゃ!」
 秋沙は空中を浮遊していたが、途中からかっ飛ばし残像を残すほどの速度を出した。そして呪文を唱え、誘導弾を放ちながら完成させていく。
「空中にたら地上への衝撃波はきっと受けない筈にゃ! うちぃーかたー始め! にゃー! トドメの弾は……私だにゃー!!」
 秋沙は幽霊船団を召喚し、砲撃を掛けながら接近させた。
 それは彼女の姿を覆い隠すと同時に相手を牽制し、ワイヤー付きの銛で動きを縫い止め、魔力障壁を纏った秋沙が回転しながらひき逃げするバレル・ロールで連続攻撃を掛けて行ったのである。
『……』
「このまま一気呵成に地上戦力を吹っ飛ばすにゃ! 生き残ってる敵にはクジラ型のごーっつい誘導弾を!? ぎにゃ?! やるにゃ! う、畝傍。畝傍はどこにゃ!」
 もちろん相手の砲撃が完全に外れる筈もなく、情報共有した別個体からの砲撃を受けたりする。だが、終始イニシアティブを取っている彼女たちが負ける程ではないだろう。
「大事なのは、勢いにゃ! このまま偵察部隊も沈めたいにゃ! 猫たちの百鬼夜行を始めるにゃー!」
 そうして敵砲台が反論しないことを良い事に、秋沙は勝利宣言して、全体方針を提案するのであった。唐突な提案は女の子の特権化もしれないとかなんとか。

川西・エミリー


「聞こえますかー? 今からわたしたちが支えんします、のりこめー!」
 |川西・エミリー《かわにし・えみりー》(|晴空に響き渡る歌劇《フォーミダブル・レヴュー》・h04862)は敵陣営に切り込んでいった。苦戦する防衛隊を救うため、空を飛んで救援に訪れたのだ。その頼もしさはまるで小さな騎兵隊のようであったという。
「20mmならいっぱいありますよ! けがした人はいませんか? 運びます!」
 エミリーは分隊を合わせて合計13体分の人出を活かし、支援攻撃だけではなく面制圧、そし怪我人の救助に当たるつもりのようだ。
「す、すまねえ! ここを守るので……手いっぱいだった」
 どうやらエミリーたちが早めに介入したことで、まだ壊滅はしていないようだ。おそらくここで時間を掛けたら、スーパロボットがトドメを刺しに来る予定なのだろう。
『……』
「敵が来ました! このまま迎えうちますね」
「言ってる間に。みんな注意!」
「わー!? ベトベト! もーおこった!」
「何人かで、えんごに回ります!」
 たくさんのエミリーたちはみんなで20m機関砲をぶっぱなして応戦。
 だが流石に無傷とはいかない。あえて言うならば、戦線を構築して九九式二〇粍三号機銃を並べて撃ち合っている分だけ、行動とレスポンスの遅さを補っている感じである。
「こうちゃく状態に成功しましたね。このままなら大丈夫だと思います。スーパーロボットが出てくる前に追げきしませんか?」
 そんな様子をエミリー本体は冷静に確認していた。
 数というのは重要であり、敵も数で攻め、こちらも数で対抗している。
 ならば今の状況がこのまま推移し、何処かで分水嶺を越えて勝てると判断したのである。
「そうさな。他の場所でも同じことを提案したお嬢ちゃんがいるらしい。悪くないと思うぜ」
「なら決まりですね。何人か分体を呼ぶので下がって治りょうしてください。私は敵を押し返したら、このまま探しに行きますので」
 同意も取れたようなのでエミリーは分隊の行動を固定した。
 そうしておけばレスポンスが下がっても問題ないからだ。
 戦い続ける個体と、誰かを運ぶ個体に分け、そして撤退と同時に偵察隊を探しに向かったのである。

アダン・ベルゼビュート


 これは少し前の事である。
「√ウォーゾーンか。そして……」
 アダン・ベルゼビュート(魔蠅を統べる覇王・h02258)は視線を巡らせた。
 周囲から迫る無数の敵部隊、そしてその向こう側に居る強敵である。
「あれが絡繰兵器……否、ロボットとやらか。其奴等と戦える機会、此の覇王たる俺様が逃す筈あるまい」
 アダンはやるべきことをこなう前に、戦場を浮かんし、その上で地図を取り出した。それは星詠みが用意してくれた簡単な地図である。
「さて、先ずは挨拶代わりだ」
 そう言いながら敵前衛群へ向かった。
 そして呪文を詠唱して即座に攻撃を始める。
「万象の焼却、強化の呪い。覇王たる俺様の黒炎は、其の全てを内包すると知れ」
 アダンは右手から炎を、左手から闇の魔力を表した。
 そして腕を交差させると交ぜわせて一つの弾丸を作り出し、二重属性の魔弾を放つ! それは敵集団の一部にぶつかると、炸裂して半径21mもの黒焔をばらまいたのである!
「ふふふははは! 奴等の脚を潰してくれよう。片脚だけでも破壊出来れば重畳だとも。お前たちは今のうちに押し返すがいい」
 なお、攻撃が成功したからと言って高笑いをする必要は全くない。
 だが、どうやら相手の反撃は正直病を誘発するようだ。
 それは厨二病という病を発症している彼にとっては特別な効果を発揮したのかもしれない。
「逃れられるものならば、逃れてみせるがいい! 敵の全てを焼き尽くしてくれよう!」
 なんというか、この様子を見る限りあまり変化がないようだ。
 あるいは呪いに対する耐性で防いでいたのかもしれない。
 奇襲している分だけダメージを抑えられているし、このまま優位に立てるのではないだろうか?
「此の勢いで偵察部隊を潰しに征ければ良いが……さて、どうなるか」
 いずれにせよ戦いは進む。
 少しずつ形成が逆転し、あるいは一気に殲滅出来た場所もあるかもしれない。
 やがてその成果ははっきりする事だろう。


 能力者が駆けつけても、相手にも星詠みが居る可能性を考えれば一進一退。
「押し込まれつつある現状、出し惜しみはすまい」
 |夜縹・熾火《よはなだ・おきび》(|精神汚染源《Walker》・h00245)はやるべきことを思案し、苛烈かはともかく果断な決断を下した。重要なのは時間と、そして戦力差の問題であると判断したのだ。
「ここは……相手の動きを逆てに取るべきだな」
 熾火は押し込まれている人類側の戦力の中で、もっとも戦列を崩されそうになっている場所に赴いた。そして一挙両得の、いや一石がニ鳥にも三鳥にもなる手を打つことにしたのだ。
「私達に這い蹲ってる暇なんて無いのだよ。忘れてしまったのかな? まだやるべき事があるだろう?」
「何……を。いや、何だこれは!?」
「やれる。やれるぞ!」
 熾火の言葉で戦って居た戦士たちはその戦闘力を取り戻していく。
 塹壕に居る民兵の負傷どころか、破壊され掛かっているWZそのものが修復されていくのだ。それは熾火の認識に置き換えられていくのか? それとも、在りし日の記憶のままに蘇って行くのか?
「動けない者は暫くそこで見ていたまえ。私が時間を稼いでいる間に、補給でもしてコンディションを取り戻しておくことだな」
 熾火の使った力は10分の時間を掛けて傷や状態異常を全快させる力である。それだけの時間が掛かるし、ならば今のうちに弾丸でも補給して置けと伝えたのだ。そうすれば彼らも戦い抜く力が戻るだろうし、それは『この後』にも影響を与えるだろう。
(「速攻を仕掛けて来た? 関係ない。そうだろう? 奮戦空しくなんて言い訳するつもりかな? みんなは何の為に町を守ってるのさ」)
 熾火は無理ならばやらなくても良いと現実的な事を告げつつ、内心で冷めた目で見ていた。その上で、心の何処かで期待する自分が居るのも理解している。彼女の心は常に矛盾だらけ、炎のように熱く、同時に氷のように冷たい。現実を見る冷静さと、人々に期待する熱さを有していた。
「俺はもう戦える。協力させてくれ!」
「ならば任せよう。弾幕を張るのでね。巻き込まれない様に狙撃でもしているのだな」
 熾火は僅かに口角を上げ、30mm機関砲を用意して撃ちまくり、グレネードを射出して面制圧を行う。その爆発と衝撃波であったり、ばらまかれるガトリング砲弾。さらには『汚い核』を模した電子破壊兵器をばらまき足止めし、あるいは可燃性のガスで薙ぎ払って、敵群を葬って行く。
(「さて。これで暫くこの場所を任せる宛ては出来た。だが戦線を押し上げるだけでは、余裕がなくなればそれまでだ……もう少し状況を進めるべきだな」)
 状況的には優位になりつつあるが、その保証はどこにもない。
 ならば取り返しがつかなくなる可能性が出てくる前に、自分の手で今の状況を確定し、その上で決着を付けに夢生買うべきだと判断したのである。
「野晒しの骸、灰塗れの眼窩。罪深き理外者よ、死に往く獣達よ。我こそが汝等の悍ましき業である」
 必要なのは|打開力《キック》ではなく、|推進力《パワー》のある攻撃!
 熾火は心を分離させ、蒼炎を纏った巨大な髑髏蜘蛛に変身した。
 そして広範囲に爆発や衝撃波を伴う爆炎のブレスを放ち、炎でありながら凍えるという性質を持つソレで敵群を焼き払い、あるいは凍結させていった。
(「……少し早いがこれまでだな。真っ只中で倒れたら迷惑をかけるどころの話ではない。余裕の為に動いて置いて、余裕を失っては本末転倒だ」)
 やがて敵部隊を壊乱させ、味方が復帰した所で熾火は変身を解いた。
 まだまだ戦えたが、あれほどの力が代価なしで使える筈がないではないか。
 ゆえに枯渇して気絶するまでに変身を解くべく、冷静な判断力のまま分けて置いた精神を合体させ、変身を解く行動を実行させたのである。

 そして……待望の敵偵察部隊を発見したとの報告があった。
夜縹・熾火


 能力者が駆けつけても、相手にも星詠みが居る可能性を考えれば一進一退。
「押し込まれつつある現状、出し惜しみはすまい」
 |夜縹・熾火《よはなだ・おきび》(|精神汚染源《Walker》・h00245)はやるべきことを思案し、苛烈かはともかく果断な決断を下した。重要なのは時間と、そして戦力差の問題であると判断したのだ。
「ここは……相手の動きを逆てに取るべきだな」
 熾火は押し込まれている人類側の戦力の中で、もっとも戦列を崩されそうになっている場所に赴いた。そして一挙両得の、いや一石がニトリにも三鳥にもなる手を打つことにしたのだ。
「私達に這い蹲ってる暇なんて無いのだよ。忘れてしまったのかな? まだやるべき事があるだろう?」
「何……を。いや、何だこれは!?」
「やれる。やれるぞ!」
 熾火の言葉で戦って居た戦士たちはその戦闘力を取り戻していく。
 塹壕に居る民兵の負傷どころか、破壊され掛かっているWZそのものが修復されていくのだ。それは熾火の認識に置き換えられていくのか? それとも、在りし日の記憶のままに蘇って行くのか?
「動けない者は暫くそこで見ていたまえ。私が時間を稼いでいる間に、補給でもしてコンディションを取り戻しておくことだな」
 熾火の使った力は10分の時間を掛けて傷や状態異常を全快させる力である。それだけの時間が掛かるし、ならば今のうちに弾丸でも補給して置けと伝えたのだ。そうすれば彼らも戦い抜く力が戻るだろうし、それは『この後』にも影響を与えるだろう。
(「速攻を仕掛けて来た? 関係ない。そうだろう? 奮戦空しくなんて言い訳するつもりかな? みんなは何の為に町を守ってるのさ」)
 熾火は無理ならばやらなくても良いと現実的な事を告げつつ、内心で冷めた目で見ていた。その上で、心の何処かで期待する自分が居るのも理解している。彼女の心は常に矛盾だらけ、炎のように熱く、同時に氷のように冷たい。現実を見る冷静さと、人々に期待する熱さを有していた。
「俺はもう戦える。協力させてくれ!」
「ならば任せよう。弾幕を張るのでね。巻き込まれないように狙撃でもしているのだな」
 熾火は僅かに口角を上げ、30mm機関砲を用意して撃ちまくり、グレネードを射出して面制圧を行う。その爆発と衝撃波であったり、ばらまかれるガトリング砲弾。さらには『汚い核』を模した電子破壊兵器をばらまき足止めし、あるいは可燃性のガスで薙ぎ払って、敵群を葬って行く。
(「さて。これで暫くこの場所を任せる宛ては出来た。だが戦線を押し上げるだけでは、余裕がなくなればそれまでだ……もう少し状況を進めるべきだな」)
 状況的には優位になりつつあるが、その保証はどこにもない。
 ならば取り返しがつかなくなる可能性が出てくる前に、自分の手で今の状況を確定し、その上で決着を付けに夢生買うべきだと判断したのである。
「野晒しの骸、灰塗れの眼窩。罪深き理外者よ、死に往く獣達よ。我こそが汝等の悍ましき業である」
 必要なのは|打開力《キック》ではなく、|推進力《パワー》のある攻撃!
 熾火は心を分離させ、蒼炎を纏った巨大な髑髏蜘蛛に変身した。
 そして広範囲に爆発や衝撃波を伴う爆炎のブレスを放ち、炎でありながら凍えるという性質を持つソレで敵群を焼き払い、あるいは凍結させていった。
(「……少し早いがこれまでだな。真っ只中で倒れたら迷惑をかけるどころの話ではない。余裕の為に動いて置いて、余裕を失っては本末転倒だ」)
 やがて敵部隊を壊乱させ、味方が復帰した所で熾火は変身を解いた。
 まだまだ戦えたが、あれほどの力が代価なしで使える筈がないではないか。
 ゆえに枯渇して気絶するまでに変身を解くべく、冷静な判断力のまま分けて置いた精神を合体させ、変身を解く行動を実行させたのである。

 そして……待望の敵偵察部隊を発見したとの報告があった。

第2章 集団戦 『ナイチンゲール』



『前線が止りました。対応策の判断を認めます。以上』
 こちらを確認していた敵部隊は、当初見たままを報告していた。
 だが、それはあくまで遠距離からの確認である。
『仕方あるまい。我の投入を早めよう。人類側の位置を確認せよ。送れ』
『任務了解。これより戦線の情勢を探ります。以上』
 そして遊撃位置にいるスーパーロボットが出撃の判断を下すための情報を求めた。
 何処に出撃すれば優位に立てるのか? その情報を調べさせようとしたのである。

 だが、能力者たちはこの後すぐに敵部隊を発見。
 更にこちらを探ろうと動いたところで、襲撃を可能としたのであった。
 敵の偵察部隊は能力者たちが既に動けるとは知りもしなかったという。
川西・エミリー


(「まだこっちに気が付いてないみたい、ばれないようにしん重に……急いで行動しよう!」)
 偵察部隊を発見した|川西・エミリー《かわにし・えみりー》(|晴空に響き渡る歌劇《フォーミダブル・レヴュー》・h04862)はお口にチャックして移動を始めた。
(「……居ない?」)
(「居るよ。ここに何人か残そう」)
(「二人か三人。他の人が来そうだから二人かな」)
(「やだよー。さみしいよー。もう一人くらいいても良いじゃん」)
(「負しょー者運んでおくれてるから二人で良いんじゃないかな」)
 なんて十三人の自分達で報告し合いながらコッソリ移動。
 誰が残るとか、何処からどう移動しようとか、そういう部分の相談も含めて少しレスが遅いのは気にしないであげよう。人数がいる分だけ頑張ってるからね!
(「あっちの方があわてるはずだからこっちが落ち着いて対しょすれば大丈夫! ここと向こうで情報あつめよっ。無線機をおろして」)
 肝心な決定はエミリー本体が行いながら、何をするかを決めていく。
 見つけた敵には即座に攻撃せず、何人か残して、みんなで迂回して行った。

 やがて目的地の付近へ移動したことで、行動する準備は整った。
(「さっき居た場所。ここが逃げる場所のはずだよ」)
(「いちげきりだつする可能せーは? むこうぬけるかも」)
(「やっぱりエミリーたちだけじゃ足りないね。味方が来るの待とうよ」)
(「さんせー。それが最初の目的だったしね。見つかりそうだったら攻撃しちゃうしかないけど」)
 なんてことを居つつも、結局みんな同じエミリーなので同じような決断をする。
 同じ成功をして同じ失敗を知る分隊=分体なので、そこは仕方のない所だ。だが、マンパワーが一気に増えるし、損得を考えないのが良い所である。
(「……あ。何か見つけたのか、それとも誰かが見つかったのかな?」)
(「仕方ないね。じゃあ攻撃しないと」)
(「みんな構えて。一気に行くよ」)
 とはいえ相手も動いているし、同じ戦場に他にも仲間が居る。
 それは良い面であり悪い面でもあるので仕方がない。
 だから総合的にいっぱいいっぱい考えてエミリーは攻撃を始めることにした。
「攻撃開始!」
「「了解!!」」
 エミリーたちは携行用のレインを使って攻撃を始めた。
 決戦兵器レインの端末であり、レーザーを放つ事が出来る。
『敵部隊の迎撃を確認。ブレイク』
『ブレイク』
 その攻撃に驚いたのか敵も十二体の分隊を呼び寄せて反撃を始めた。
 能力者側のソレと違い、あくまで戦闘用なのだろう。
 情報伝達などは行わず、統制射撃気味に集団で撃ち返してくる程度である。
(「これなら逃がさないように戦えるかな? さすがに偽情報でゆーどーとかはむつかしーだろうけど」)
 その状況にエミリーは一応の満足をしつつ応戦したという。

夜縹・熾火


 これは少し前、後方遮断に動いた仲間が攻撃をする前の事だ。
(「あれは……威力偵察をしているのかな?」)
 |夜縹・熾火《よはなだ・おきび》(|精神汚染源《Walker》・h00245)は敵の空中騎兵が広域展開しているのを見つけた。その広さはあちこちを探る為であり、同時に撃破されるのを避けているのだろう。つまり、被害を許容している威力偵察との推測である。
(「本隊と情報共有はしているんだろうけど、生きた個体に情報を持ち逃げされるのは都合が悪い。此処で屑鉄にしてしまうのが最良か」)
 通信で情報共有しているだろうが、どう動いているのかリアルタイムで分かるはずもない。交戦して戦闘に入ったとか、有利であったり不利であるかを告げる程度だろう。ならば今のうちに撃破するべきだと熾火は判断する。詳細を知られてしまうと、相手の星詠みに対応されてしまうのだから。
「数と方向を把握させるのは上手くない。適当に利用してたまえ」
 熾火はグレネードをぶっぱなして毒煙を撒くと、その間にあちこちへ連結式の隔壁パネルを展開した。自身もソレに隠れて移動し、あるいは壁にして攻撃を続行している。この事により、敵はこちらの攻撃方向とタイミングが掴めず、それにより人数把握が難しくなるだろう。
『敵部隊の迎撃を確認。各個に対応せよ。威力偵察を続行する』
『召喚。プロンプトはかくの通り、敵を攻撃して退去』
 敵は予測通り、攻撃されようが気にせずに行動を継続する。
 自身は散発的な射撃を行いつつ、観察に専念。
 召喚した小型メカを飛ばして攻撃を担当させた。
「増援も来ているし分隊を動員している子も居る。十分だとは思うが、せっかくだ。ここは楽しく行こうじゃないか」
 超広域型殲滅兵器『スルト』を起動し、貫通レーザーを射出。機関砲やグレネードを斜めに撃ち上げながら熾火は移動を続け、その多彩さで更に敵の把握を難しくしていく。隔壁から隔壁の間を移動する時はダッシュで繋ぎ、必要であれば目の前に現われた敵の召喚した小型マシンに応戦する。
「……火遊びも程々にね」
 古より神に闇の中へ封印された鎮めの焔。
 それは本当なのか? 逆に、古に居た神そのものを鎮めているのかもしれない。そしてその正体があるとしたら当然、炎であろう。熾火の放った炎は着弾した周囲を燃やしていくが、その熱波は周囲を狂熱を有していた。敵を焼き焦がす熱であり、同時に味方の体調を促し戦いへ狂奔させる熱でもある。そう、炎も太陽も離れた位置にある星々も、全て同じような物だ。プラスもマイナスも使いよう、そして誰に向けて放つか次第なのである。
『被弾。攻撃続行……続行』
「小型マシンが通じなければ、当然そう来るな。そして、場所はもちろんそこからだ」
 敵は小型マシンだけではなく、自身も積極的に投入。
 白兵戦を行いつつ、一撃離脱で情報の確認に来た。
 熾火は試験管からナニカを垂らし、即席のブレードを作り上げて白兵戦を挑んだのだ。FPSという射撃系ゲームがあるが、重要なのは方向とタイミングを制する事だ。熾火は隔壁の間に割り込んで攻撃しようとした敵を怪力に任せて切裂き、あるいは衝撃波で追撃したのである。

瀬堀・秋沙
継萩・サルトゥーラ


 町を守るための戦いは順調に押し返すのではなく、ド派手に逆転した。
 その上でこちらを偵察に来る部隊を出し抜いた格好である。
「これぞ晴れ舞台ってな」
 継萩・サルトゥーラ(|Chemical《ケミカル》 |Eater《イーター》・h01201)は血が湧きたつのを感じた。正確には『彼』個人の情動のみではないが、我思うゆえに我在りと実感できる時間は重要であった。
『敵集団を発見。威力偵察を開始、各個に応戦』
「あちらさんもオレらに気がついたか? やったろうじゃないの!」
 サルトゥーラは状況的に自分が為すべきことを理解した。
 そして浮遊砲台に命令を出し、戦闘を開始する。
「ひとまずはここで迎撃戦だな。問題は支えることは可能でも、都合よく進ませるには難しいわけだが……」
 敵が撃ち返してきたこともあり、サルトゥーラはひとまずの手応えを感じる。
 お互いに能力は未使用で、まだまだ牽制段階だが……そう思って居た所にもう一人加わった。
「空中戦にゃ! 腕がなるにゃ! |空戦機動《マニューバー》なら負けないにゃ!」
 そして彼方から|瀬堀・秋沙《せぼり・あいさ》(都の果ての魔女っ子猫・h00416)も来援。箒に跨ってゴキゲンだった。まあ彼女はいつもこんなのだが気にしてはいけない。
「まずはご挨拶にゃー! 猫は二回招くにゃー」
『召喚。プロンプトはかくの通り、敵を攻撃して退去』
 秋沙は敵を迂回する様に円を描いて攻撃を掛けた。
 誘導弾は直進に斜め移動にと、相手の方向を目指して移動、これに対して敵は小型メカを召喚して対応しようとする。
「空での箒さばきなら負けないにゃ! 必殺、ネコキックにゃー!! そして~」
 秋沙はこれに対してキリモミしながら突撃すると、小型メカを踏みつけるように蹴っ飛ばし、蒼い海の如き魔力をまとってそのまま敵本体へと向かった。
『迎撃。即応』
「箒が無くても、実は猫、飛べるにゃ?」
 二段キックで敵本体を狙うのだが、スカっと外れた。
 もし彼女が後にクール系委員長に成長したら黒歴史になりそうなくらいにスカートを翻し、まるでスケート履いた猫系アイドルの様に空中を回転ループを繰り返しながら箒を手元に呼び寄せる。その能天気な姿を見ていると、やはりクール系委員長は難しそうだ。パッション系アイドルではどうだろうか? きっと歌はパラダイス小笠原|《ボニン》。まあ将来の進路は小型メカの追撃を振り切ってから考えよう。
『損耗軽微攻撃を続行』
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ」
 それほどダメージを追って居なかった敵が追撃しようという所で、サルトゥーラが横槍を下から入れた。対空コマンドなど入れずとも自動でガトリング砲は既に方向を調整し、対空砲火を掛けている。
「狙え」
 そんな中でサルトゥーラは用意しておいた特殊な弾丸を選択。
 敵周囲へ超強酸による範囲攻撃を掛けたのだ。
 自動で稼働する浮遊砲台はあくまでオートであり、転機をもたらすのはいつだって彼の決断である。
『迎撃。即応』
「敵が居て味方が居てオレたちが居る。これが戦いってやつだよな」
 小型メカをふっ飛ばし、敵本体も攻撃を巻き込んだ。
 だが敵に反撃は別に通常攻撃も可能だし、それは彼も浮遊砲台でやっている。
 ゆえにこれからが闘いの本領であろう。
「なあ、あんた魔法の方が本命じゃねえのか?」
「てへっ。使ってみたかったのと、後は賢い相手かと思ったのにゃ。賢い奴には真っ直ぐ行ってキックが効くと思ったのににゃあ。あと範囲攻撃?」
 サルトゥーラが念のために尋ねると秋沙はチャーミングな笑顔を返した。
 決して咎めているわけではないし、もちろんワザとやってるわけでもない。
「だろうと思った。とはい相手はスピード型みたいだな。援護してやっから、頼んだぜ」
「おお~聞いて来たにゃ! 猫、エース名乗れるかにゃ!? スーパーロボットも怖くないにゃ! いえす・にゃー、いえす・にゃーいつか~♪」
 仕方がないと言いつつ、サルトゥーラはドーピングで秋沙を強化してあげた。
 そして二人は蒼い魔力による爆風攻撃と、風に乗ってまかれる薬剤攻撃ユニットを臨時結成。華麗に素敵に戦い続けたという事です。めでたし、めでたし……あれ?

アダン・ベルゼビュート
クラウス・イーザリー


「偵察部隊がこちらを探り、適切なタイミングと場所に本命を投入……か」
 クラウス・イーザリー(人間(√ウォーゾーン)の学徒動員兵・h05015)は敵がやってる戦術を脳裏に思い浮べ、その内容を思案した。
「偵察情報を持ち帰らせる訳にはいかないね。ここで奴らを倒してしまえば、次も優位に立てる筈だ、頑張ろう」
 目の前の敵は数が居るだけの雑魚だが、倒しても爽快にならない。
 それは情報を奪われ、窮地に立たされることをクラウスは理解していた。
 ゆえにここで敵を素早く叩き、情報を奪わせない意味は大きいのだ。守る意味でも、攻める意味でも、である。
「貴様達が、偵察部隊とやらか」
『召喚。プロンプトはかくの通り、敵を攻撃して退去』
 その頃、アダン・ベルゼビュート(魔蠅を統べる覇王・h02258)は既に交戦中。彼の声に応じたのは、言葉だけではなく反応|も《・》であった。
「指揮官たる者に俺様達の位置情報を伝達するつもりだったのだろうが……残念だったな」
『迎撃。各個に……たい、おう』
 アダンは不敵に敵の召喚した小型マシンを見据えつつ、指を鳴らした。
 敵機の一体が吹き飛び、他の小型マシンも迫る中で爆散したのだ。
「此の覇王たる俺様の前に姿を表した時点で、貴様達は今此の時、撃滅対象となったのだからな! 俺様の覇道を貫く為、貴様の全てを撃滅してくれよう!」
 それは影で作られた高射砲であった。
 ドカドカと唸りを上げて射出され、敵機の周囲を吹き飛ばしたのである。
「移動せずに三秒の詠唱が必要だが、召喚された小夜啼鳥型ロボットは様々な効果を持つ?──だから、どうした?」
 その勢いは敵偵察部隊の詠唱するタイミングすら破却しているかのようだ。
 実際には召喚している敵も居るし、アダン自身も無傷という訳ではない。
 だが、その猛烈さには勢いがある。時としてソレは戦闘に対して非常に重要なものであった。
「……む?」
「こちらも参戦させてもらうよ。敵指揮官を上手く嵌めるには、確実に行く必要があるからね」
 このタイミングで回り込んだクラウスも攻撃を開始。
 決戦兵器タイプのレインが無数のレーザーを放ったのだ。
『敵部隊の迎撃を確認。ブレイク』
『ブレイク』
「悪いけれど、お前たちに付き合っている余裕はないんだ。まとめて薙ぎ払わせてもらうね」
 敵は待機させていた予備機込みで攻撃を掛けようとした。
 だがクラウスが指示したレインにより、無数のレーザーが周囲に光の雨を降らせていく。
「飛行中に撃ち落としたら……いや、試すまでもないな。やるならこっちでだけど……どちらかと言えば防御行動になるか、な!」
『敵機を確認。攻撃します』
 クラウスは銃を構えて向かって来る敵機を打ちながら、電磁ブレードを抜いて包囲されないように動いて行く。ダッシュで走りながら味方と合流し、逆に敵には合流しない様に戦場をコントロールしながら。
「フハハッ! 此れぞ、一切砲滅也! 偵察部隊は誰一人として残さず、撃ち落としてくれる!」
「こいつらはまだ偵察部隊だし、本番は次だ。気を引き締めておかないとね」
 やがてアダンは最後の敵を打ちのめし、クラウスは生き残って情報を送っている個体が居ないかを確認して回った。

 そして能力者一同は本命の敵であるスーパーロボットと出逢う事になる。

第3章 ボス戦 『スーパーロボット『リュクルゴス』』



『見事だ。我らの戦術に誤りがあったとは思えない。ゆえに逆算される可能性は一つ』
 現れたのはスーパーロボット、リュクルゴス!
 鋼のボディを翻し、間t里の手前にある戦場へと飛行している。
『イニシアティヴの奪取である。お前たちは自ら動き、リソースを集中することでイニシアティヴを奪い続けたのだな。学習した』
 そして戦局をひっくり返すべく現れ、その猛威を振るうだろう。
アダン・ベルゼビュート
クラウス・イーザリー


 ズドドドド……。と移動するだけで爆音がし、その姿が見え始めた。
 まだ遥か彼方であり、長距離移動用ブースターであろう。
 これで目の当りにしたらどのくらいの大きさと重量であるか判らないほどだ。
「来たか……」
 クラウス・イーザリー(人間(√ウォーゾーン)の学徒動員兵・h05015)はその様相を全身で噛みしめる。
「指揮官たる余裕なのか、此の状況でも尚、戦局を裏返すつもりとはな」
「ああ」
 アダン・ベルゼビュート(魔蠅を統べる覇王・h02258)は正面決戦ならまだ互角とみなしてやってきているのかもしれないと告げ、その言葉にクラウスは頷いた。
「優位に立てているとしても強敵には間違いない。気を引き締めて臨もう」
 敵はこちらを把握しておらず、しかも想定外の推移なので有利ではある。
 だが常に苦境と主にあったクラウスは、決して侮っては良い存在ではないだろうと楽観論を捨てた。場合によって相手の強みをこちらが受け止めきれない可能性もあるのだから。
『恐れるに相応しい人間たちよ。前たちに死という褒美をやろう』
(「加えて、其の佇まい……相応の強者だと見受ける。だからこそ、俺様は貴様との闘争に心が躍って仕方がない」)
 アダンは間近く敵を眺め、己に掛かるプレッシャーを体全体で受け取った。
 ズズズンという着地の衝撃、そして想定される火力に唇が動く。
 気がついた時、彼は己の口角が上がっている事に気がついた。
「さあ、存分に楽しもうではないか!」
 そう言ってみなぎる闘気と魔力を全開にして迸らせた。
 ビリビリと振動が彼が来ている鎧を脱ぎ、あるいは非稼働状態にしていく。
「──貴様の胴体に風穴を空けてくれる!」
『装甲をパージした? 機動力を上げての強襲戦形態と推測』
 アダンは服こそ来ているが、裸同然の装甲厚である。
 敵は高速襲撃の為に余計なデットウェイトを捨てたと判断したようだ。
 だが違うのだ、彼はそんなクレバーな事を狙っているわけではない。
『超大型光線砲。発射』
 敵はアダンを捉える為、周囲に数基の大型光線砲を召喚して薙ぎ払った。
 体力と装甲差もあり、数回撃って一発当れば全てが決着がつくと判断したのだ。
 一撃離脱する相手に付き合って飛び回る方が問題だと考えたのだろうが、それは悪手である。
(「俺様は無痛覚、急所さえ外せば問題ない。狙うは一点!」)
『避けない? 攻撃専念に修正……っ』
 アダンは愚直に直進し、回避などしなかった。
 ただ、周囲に影をまとい狼の頭のような存在を作り上げて急所を守ったのみ! それも光を受けて散ってしまったかに見える。
「後は全身全霊を以て、穿つのみ──破砕せよ、『尖影』!」
 我が一撃は無敵を破る、覇王の一撃!
 そうあれかしと吠えて昂るみ言葉、己を奮起させる言霊により全てを攻撃力に注ぐ一撃であった。狼の影のみ防御を残したのは先手を譲ってのカウンターであることと、単に影を武器として使うからというだけだ。その影も拳に集中させて、いわゆるパイルバンカーとして撃ち込んでいた。
『装甲厚突破を確認。だがもう一撃は放たせ……』
 確かにその攻撃は協力で、生半可な攻撃など弾き返す装甲を易々と貫いた。
 だが、一撃で倒されなどはしない。追撃して倒そうと光を放とうとして……。
「今だ! 下がれ……いや、態勢を立て直せ!」
 ここでクラウスは攻撃を掛け、斧で敵を強打した。
 以前に使っていた決戦兵器としてのレインは使わず、己の体を高速化させている。全身に電流を纏いながら囮となって、携帯兵器としてのレインを使って射撃指示していた。その上で、己もまた体に流れる電流を斧に集中させ、至近距離で放つことで攻撃を掛けていたのだ。
「これが俺の全力だ!」
 クラウスが決戦兵器型のレインを使わなかったのは、仲間を巻き込む可能性を考えたこともあるが、それよりも攪乱の為に機動力を欲していたからだ。そして戦いに影響を与える為には、徐々に相手の装甲を削り取る必要があると考えたからである。。だからこそ、電流を纏って高速機動を掛け、敵を切裂ける機会を狙っていたのである。動き回るのは命中力が多少下がるが……。
「さて、これで借りは返した。後はあいつを何とかするだけだね」
 クラウスは当初、手数で時間を掛けて手数で何とかしようとしていたのだ。奇しくもアダンが引きつけてくれたので相手の機動力が下がって助かった形である。
『……追撃戦を選択』
 そんな事もあり、敵は攻撃重視の状態から機動戦に切り替えた。
 クラウスが建物の影に隠れるなど、攻撃範囲外に下がってしまった為に追い切れないと判断したからだ。こんなところも偵察部隊が倒された影響であろう。翼を生やしてあちこちを切裂きながらクラウスを探し始めた。
「場所を特定させるな。それだけで良い」
「俺様は逃げも隠れもせぬ。正々堂々、真正面から穿ってくれよう! だが……言いたいことは判った。再度攻撃する前には時間が掛かるからな」
 クラウスが攻撃をしのぎ動き易い電磁ブレードに持ち替えて機動戦を挑んでいると、アダンと途中で話すことが出来た。その提案にアダンはそれなりに了承する。互いに援護になったわけだから仮と思って居る訳ではない。単に、もう一度正面から挑むには治療をして次の攻撃に耐えるだけの回復をしてからでないと難しいからだ。
「自分の身を気にして勝てる相手じゃない。それはお互い様だ。チャンスがあったら頼む」
 クラウスはそれだけ告げると、再び攻勢をかけるためにタイミングを見計らい、次の場所に移動するのだった。

瀬堀・秋沙


「にゃっ! ホントにスーパーな感じにゃ!」
「ヨーヨーはあってもハイパーロボットって聞かないにゃ」
「なんでにゃ!」
 |瀬堀・秋沙《せぼり・あいさ》(都の果ての魔女っ子猫・h00416)は敵の姿を見て次々に話題がシフトした。猫は目の前の話題に夢中なのだ。そして妖怪は昔の趣味を何時までもあてこすっているのだ。子猫の魔女なので、その両方でもあるのだ。見てわかる通り、中途半端に混ざるのではなく、両方と言うのが特徴だ。
『敵飛翔体を発見。今度こそ焼き払ってやろう』
 その声を聴きつけたわけでもないが、敵は彼女を見つけたようだ。
 まあ、秋沙の方でも相手の動きを見切りたかったから出ていくのは仕方がない。
『召喚』
「たくさん砲台を浮かべても、狙いは猫1人にゃ?」
 そう言うと秋沙は高速で飛行を始めた。
 先ほど地上に居た仲間は走り回って隠れていたが……。
(「敵が砲を撃つのに、射線計算を強要出来るのは……敵の懐かにゃ! ここは突撃にゃ!」)
 どちらかと言えば最初に攻撃した仲間に近い戦術と言えるだろう。
 ただし秋沙は高速で突撃すると、相手の射角を読んで、攻撃の当り難い位置に飛び込んだのである。最初の仲間が初手を譲ってのカウンター狙いであるならば、彼女は高速での強襲を狙っていた!
『万歳突撃!?』
「自分はできるだけ巻き込みたくないもんにゃ? 刹那の常識(ためらい)が命取りにゃ! 名古屋撃ちならぬ小笠原撃ちにゃ!」
 秋沙は敵の目の前に移動して零距離目指しての移動攻撃。
 召喚した幽霊船団に射撃させつつ、ワイヤー付きの銛を放つ鯨砲を放った。
「特大クジラ弾もオマケだにゃ! 2回攻撃でにゃ!オマケに全力魔法! トドメの弾は……私だにゃー!!」
 それは|小笠原《ボニン》|蒼色《ブルー》の海原を思わせる魔力攻撃。
 戦場に流れるスターライトはそんな色。見つめた視線は敵の射角の隙に、飛び込む彼女はフリーダムな夢見る南の島系御転婆子猫であった。
『ファイア』
「ぎにゃ!?」
 それはそれとして放たれるシリアスな極太レーザー。
 サンマの様になりたくなかった秋沙は全力でガードし、攻撃が当たり難い部分に全力で身を縮こまらせた。当らない様にして、その上でガードである。
「海はいつだって理不尽にゃ! 次は理不尽も学習してくるといいにゃ!」
 そして次の仲間が援護攻撃を始めた所で、秋沙はアッカンベー(死語)をしながら撤退したのである。

川西・エミリー


「こんなに大きいのはまだ戦ったことないね……みんなは先に帰って準備しておいて!」
「「了解」」
 同じころ、|川西・エミリー《かわにし・えみりー》(|晴空に響き渡る歌劇《フォーミダブル・レヴュー》・h04862)はゴクリと喉を鳴らして少女分隊に帰還を促した。後手に回って対応しきれない可能性と、火力問題を想定したのだ。
(「ここは仲間がはなれた所で一気に攻撃した方が良いよね。でも、普通に撃ったら攻撃が通らないかもしれない」)
 エミリーは相手の動き・装甲・火力を素早く計算した。
 判断力の遅い分隊では逃げる前に焼き払われるし、火力問題もある。
 だが決戦兵器レインを使用する気とはいえ、本来の威力よりも低いのだ。射程と連続攻撃力の問題は何とか出来ても、防御されてしまう可能性は否めない。
(「これだけみんなで戦っていればどこかに無理がでてくるはず……!」)
 エミリーが分隊を帰還させた一因として、分隊制御で判断力が劣る対策でもあった。つまり、彼女一人ならば相手の隙を見出すことも出来るだろうとの考察である。特に先行した仲間は一点突破で攻撃しており、突くならばそこだろう。
(「……今度の子は連続攻撃で大きなダメージを与えたところとそうでない場所がある?  なら、撤退の援護しつつ、そこを付けば良いはず!」)
 エミリーは開戦当初からその場に留まっていたが、分隊を帰還させる時間のついでにずっと観察していたのだ。詳しく調べるには自分も空中に上がるべきだろう。そして彼女は本来、飛行艇の力を持つレプリカントである。普段は輸送や量産性を活かしているが、ここは空中戦で戦いながら場所を探り当てるべきだろうという考えに至ったのである。
「てったいしてください!。後はわたしが引きつぎます!」
 そして肉薄した空飛ぶ仲間を援護して、別方向から周囲を巡る様に機銃で援護射撃を始めた。それは仲間たちと出来るだけ動きを変えて攻撃を特定させないようにすると同時に、少しでも傷ついた部分を探すためである。そしてその成果は少しずつ現れようとしていた。
『機動戦の敵に付き合う必要は無し。コールサンダー』
「っ!? 来ましたね。でも、それは油断ですよ!」
 そしてエミリーもまた高速で突撃に動きを変えた。
 先ほどの仲間がやったように、零距離を目指しつつ手持ちの端末型レイン兵器を使ってレーザー攻撃。こちらの周囲をマーキングした状態を振り切りつつ、角から放たれた直後に別の場所に移動する様に狙った。もちろん本命は彼女自身の攻撃ではないので、高速移動しても問題ない。
『墜ちよ』
「それはこちらのセリフです! 撃ってください!」
 強烈なスパークが先ほど居た場所を薙ぎ払っていく。
 電撃が来るところにギリギリまで居たのは、手元を狙われたら困るからだ。
 そして手持ちのレインで情報誤魔化しつつ、離れた位置にある本命の決戦兵器型のレインで300発近いレーザー攻撃を相手の損傷部分に叩き込んだのであった!

ゼーア・アストラ
ソフィア・テルノーバ


『まだだ。まだ我が計測は終わっていない。全力稼働、承認』
 能力者たちに追い込まれて尚、リュクルゴスは諦めて居なかった。
 各所から煙を吹き出しつつも、今からが本番だとばかりに唸りを上げる。
(「何かこの世界に強い繋がりを感じてきました。そうですか、あなたの戦いを終わらせる為ですね」)
 ゼーア・アストラ(星々の名・天使の力・h00110)はこの瞬間に出現した。
 援軍として呼ばれたのだが、そこに運命を感じているようだ。
(「でも今すぐ倒すには難しそうですね。このルートの力であるレリック・マキナがその繋がりの力で活性化するまで戦闘をし続ける必要がありますが……」)
 その強さはスーパーロボットと呼ぶに相応しい相手だ。
 アストラがどう戦おうか思案していた時の事……。
「あれは……お姉様? 一緒に戦いましょう」
(「……何かを感じます」)
 そこに新たな仲間が駆けてつけて来た。その名前はソフィア・テルノーバ(使命は人類防衛・h01917)、アストラとは関係ない『誰か』の筈なのだが……。がつながりを感じる妹分である。戦うための力と時間を欲している時に彼女が現れるとは、まさしくナニカの導きに違いあるまい。そんな不思議な縁を感じたのである。
「アレは危険な相手ですよ。あなたはなぜ戦うのですか?」
「人と共に生きる。それが私の唯一の結論よ。そして、あのウォーゾーンを野放しにしたら甚大な被害が出る。それは私の倫理に反するわ」
 アストラは何も関係ないはずの少女が共に戦ってくれると不思議がった。
 関係ないはずということはソフィアにとってもそのはずなのだが、記憶領域には彼女が姉貴分というか特殊な存在であると認識していた。初めて会うはずなのだが、どこかそんな感覚を思い起こさせる。もしかしたら作成者であるとか、あるいは関連する誰かの記憶でも移植しているのだろうか?
「わかったわ。一緒に戦いましょう。これが私の本気の力!」
 アストラは今は共に戦う事が必要な事であり、疑ったりするよりも、力を合わせ心を合わせて連携すべきだと判断した。ゆえに深淵より力を引き出し、ソレを武器として構えたのだ。
「今はまだその時ではないわ。だから、まずはその装甲を破壊するの」
 アストラは結晶化した刃を振い、リュクルゴスに対して戦闘を仕掛けた。
 普段ならばあえて言葉に出す必要のない決意だが、即座に連携を取るために言葉で伝えた。人には言葉があり、思いを伝えあるにはこの方が良いと判断したのだ。
(「アストラお姉様と協力しながら敵の装甲の破壊を目指すわ」)
 ソフィアは頷いてWZを操った。言葉に出さずに実行するのはまだ世の中に慣れておらず、堅い反応であると言えるだろう。
(「元々はこの悲惨な状況を打破するためにこのライフルはウォーゾーンを貫くよう設計されているわ。いつか人間と共に笑って過ごせる世界の為に使命を全うするまでよ」)
 疑似神・アルコーンは彼女の相棒のような物である。
 ソフィアは特注のレーザーライフルを構えて攻撃を掛ける。
 出来るだけ『姉』と同じ場所を狙い、また偶に場所を変えて離脱や場所を変える援護を行ったのである。
『全力砲撃開始。目標群を蹴散らすのみ』
(「っ!? 痛い。でも、このくらいなら耐えられる」)
 アストラは敵が放つ極太レーザーを受けながら身体強化でカバーした。
 耐えられないほどではないし、そして相手は既に大きく損傷しているのだ。
 それに何より今は仲間がいる!
「アストラお姉さま!?」
「ソフィアちゃん! 私は大丈夫! ……お姉ちゃんが君がここでみんなのために戦ってるって言ってたから」
 自分を心配する言葉にアストラは首を振って否定を返した。
 そして『君』という言葉を投げかける。
 その間も手は結晶の刃を振ったままで、痛みを感じるよりも、敵を倒さねばならない。いや、ここで戦い続ける必要があると告げたのだ。この場合、『君』が誰であるのか自分の事なのかソフィアには関係なかった。
「了解!」
 今度こそソフィアは言葉を返した。
 先ほどは問題ないだろうと思って、シミュレーションの様に反応した。
 だが、今は共に戦い、彼女のために戦いたいと言葉で応じたのだ。
「私だって理想を目指したい! 本当か分からないけどお姉ちゃんってのも叶えてあげたい」
 だからアストラも言葉を返した。
 ソフィアが自分を姉と呼ぶならば、その期待に応え、共に戦いたいと返した。
 その証左がその手の中に! 心が共にあるから腰、生まれる絆の武器が此処にある!
「イミテイトオブナインオーソリティ! 変身! その力借りますよ!」
「あれは……わたしの……」
 その瞬間、このルートの力の深部にアクセスするように、全て仕組まれているようにナニカのピースががっちりと嵌った。武装のカスタムが得意なマキナ・モードにアストラは変身した。それだけではなく、先ほどから攻撃を続けているソフィアの隊WZ用レーザーライフルを作り上げたのだ!
「レリック完全! そして起動!」
「凄い能力ゲイン……」
 アストラは今までの二倍の力を振い更に専用ライフルまで使っている。
 その戦闘力は爆上がりし、己の武装を真似されているというのに……不思議とソフィアは反感を抱かなかった。
「お姉ちゃんの言った通り! これならもっと強くなれる! 強化モジュールセット!」
 レーザーによる徹甲弾×連射性×パワー!
 強烈な攻撃を叩き込みつつ、相手の攻撃を避けながら攻撃を始めた。
 だが、それだけではない。彼女にインジブルが集まって行き、高速で飛ぶ為の翼を与えたのだ!
「遅いわ」
「凄い……攻撃なんか全然追いついてない」
『馬鹿な。攻撃が早過ぎる。否、我が遅い? まさか、この場で進化しただと!?』
 敵は砲撃モードから広角攻撃モードに変形して雷撃を放っていたが、最終的に高速移動モードに変化へと移行した。一発逆転を狙うには悪手だが、そうでもしなければ更に強大化したアストラとは、まるで戦えなかったからだ。当初の二倍どころか四倍近い能力ゲインであり、もはや計算するのが馬鹿馬鹿しいほどではないか。あえて言うならば、一点集中型ならば彼女の能力を部分的に超えられるくらいであろう。
「ソフィアちゃん! 一緒に決めよ!」
「了解! SFA武装完全適応化。私の……私たちの特注武装の力を味わいなさい」
 アストラの呼びかけによってソフィアも本気を出すことにした。
 先ほどまでは武装の限界で戦い、シミュレーションのように冷静に戦って居た。
 だが、今はそんな事は関係なく、アストラと共に戦いたかったのだ。
『そうか。私の死は、我のこの場における闘争はこのためであったのだな。魅事』
 最後の最後に大爆発を起こすリュクルゴス。
 だが、その刹那の時間に彼は有意義な計算を行って散ったようだ。
 苦戦をしつつもそう言い切れるだけの矜持と、派閥の為に戦う姿こそが、彼がスーパーロボットであり王であると言えるのかもしれない。
「アストラお姉さま。本当に大丈夫?」
「ソフィアちゃん! さっきも言ったけど大丈夫よ。あえて言うならば、何処でも使える力じゃないから……かな?」
 受けた傷にではなく、あまりにも圧倒的な力を引き出したことにこそソフィアは心配していた。その答えはアストラにも一口では言えないし、理解できないこともある。だが、アストラは『姉』であればこう答えるのだろうと、心配させないように明るく振舞ったのであった。

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