シナリオ

雪に描く星の座

#√EDEN #王劍『縊匣』 #デュミナスシャドウ #コウモリプラグマvsデュミナスシャドウ #二刀一対の王劍 #コウモリプラグマvsデュミナスシャドウ①

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 #√EDEN
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王劍『|縊匣《くびりばこ》』関連シナリオ

これは王劍『|縊匣《くびりばこ》』に関連するシナリオです。 これまでの関連する事件は#王劍『縊匣』をチェック!

●迫る影
 柔らかなソファにしっかりとした作りのテーブル、落ち着いた色の照明が照らすリビングには、似つかわしくない殺気が渦を巻いていた。周りを見れば荒らされ、破壊の痕も生々しいその一室、血に濡れた毛足の長い絨毯を踏みしめ、立っていたのはデュミナスシャドウだった。
「√EDENの√能力者が邪魔立てしてきたか、厄介な事だ」
 部屋の対角で直立不動の姿勢を取っている配下をひと睨みして、デュミナスシャドウは自らの手元に視線を落とす。そこに握られている王劍『縊匣』、そのオリジナルの一振りである。
 どうやら地の利はあちらにあるようだ。しかし、王劍を持つのはこちら。力の差は歴然だろう。しかしながら――。
「お前達に王劍の力の一部を与えたとしても、失敗を重ねるだけか」
 前回と同じ轍を踏むわけにはいかない。ならば、やることは決まっている。
「√EDENの√能力者どもは、俺が蹴散らしてやる。お前達は、能力者の邪魔が入る前に、組織を掌握して我が元に連れて来るのだ」
「御意」
 黙し、目を伏せていた配下が頷く。先日の作戦における不手際、それを挽回するのだと、瞳には決意が滲む。
「今度は失敗は許されんぞ」
 言われるまでもない。黙したまま平伏し、配下の忍びは姿を消した。

●三つ巴
「皆さん、大変です! デュミナスシャドウがまた動き出しました!」
 王劍『縊匣』を手にしたデュミナスシャドウは、以前よりプラグマの弱小組織を自らの配下に吸収し、勢力を伸ばそうと画策していたが、今回もまた√EDENに進出した組織のひとつを狙っているようだ。
「目的は変わっていないのですが、前回の失敗を踏まえて対策を取ってきているようですね!」
 標的とされたのは、北海道の滝川市に拠点を構える『常夏同盟』。そこにデュミナスシャドウの配下が派遣され、乗っ取りと吸収を試みる。しかし前回のようにこれを妨害しようとすると、デュミナスシャドウ自身がこちらの前に立ち塞がることが予知されている。
「向こうも星詠みの力を使っているのでしょう、どのような策を取ろうが、デュミナスシャドウは必ず現れます!」
 王劍を所持したデュミナスシャドウは言わずもがな強敵であり、ここで倒すことは極めて難しい。ゆえに、常夏同盟に対する乗っ取りを妨害することは叶わない、ということになるのだが。
「実は、そちらに関してはちょうど別のチームが動いています!」
 デュミナスシャドウとは敵対関係にあるもう一人の王劍所持者、コウモリプラグマ。そちらの動きを追っていた√EDENの能力者達が、既に常夏同盟の拠点を特定し、監視に入っている。
 先行しているチームは、デュミナスシャドウとコウモリプラグマの対立関係を利用し、漁夫の利を得るような作戦を展開している。うまくいけば敵の同士討ちを狙えるが、場合によってはコウモリプラグマとデュミナスシャドウの2勢力を同時に敵としてしまう危険性もある。ゆえにデュミナスシャドウの妨害を退けることができれば、急ぎ、救援に赴いて欲しいと星詠みは言う。
「そこからどうなるかはちょっと予測できません! 皆さんの現場判断で、事件を解決に導いてください!」

 こちらのチームがまず担当するのは、王劍所持者であるデュミナスシャドウ本人だ。
「デュミナスシャドウは星座の力を使って戦うようで、今回は『ケルベロスライブラフォーム』という形態を取って攻撃してきます!」
 素早い動きと、専用武装であるケルベロスソーサー、そして王劍。それらを駆使するデュミナスシャドウは超強敵……というのは先述の通りだが、付け入る隙はある。
 飽くまでこちらを足止めするつもりの敵を引き付け、耐え凌げば、必ず反撃を入れる機会が訪れるはず。
「王劍を所持している筈なのに作戦に失敗し、更に、足止めに対しても反撃で痛打を受けたとなれば、デュミナスシャドウも平静ではいられないでしょう!」
 相手を精神的に追い詰め、焦らせることもできるし、彼に従う部下の士気にも影響が出るに違いない。
 この強敵との戦いが首尾よく進めば、後は先行しているチームの動きと合わせて臨機応変に対応していくことになるだろう。
「場合によってはデュミナスシャドウの再襲撃、コウモリプラグマの乱入なんてこともあり得ます! 油断せず挑んでください!!」
 あとはよろしくお願いします! そう言って、星詠みは一同を送り出した。

●雪を踏むウサギ
「今回は、甘い顔をしてやる理由も、余裕もないでござるな」
 雪降る通りの向こう側、『常夏同盟』の拠点を見据え、スラッシャーバニーが独り言ちる。なにしろ、主であるデュミナスシャドウ自らが援護に回っているのだ。前回のように潜入や懐柔といった手段を選んでいる暇はない。
 かくなる上は、実力行使。この機を生かし、速やかに終わらせるべきだろう。
 引き連れた戦闘員達に合図を送ると、スラッシャーバニーは先陣を切って駆け出す。
「片っ端から叩き伏せ、頭目の首でも捥いでやれば、すぐに大人しくなるでござろう」
 いざ、参る。
 音もなく、軽やかに跳ねて、忍びは目標の拠点へと飛び込んだ。

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第1章 冒険 『デュミナスシャドウゾディアックフォーム』


クラウス・イーザリー
ゴッドバード・イーグル


 しんしんと降り積もる雪が、商店の並ぶ街を白く染めていく。この季節に相応しい静かな情景に反して、この裏では複数のプラグマの勢力が暗躍している。同じ組織にありながら対立し、ぶつかり合い、相手を呑み込もうとするその様。悍ましいそれを透かし見るように、ゴッドバード・イーグル(金翅鳥・h05283)は雪景色に目を細めた。
 プラグマ怪人同士の内部抗争は、こちらにしてみれば対岸の火事に過ぎない。他の味方がそうしているように、同士討ちとして利用価値まであるくらいだ。しかしながら、一つ間違えば、この同士討ちを経た先に『結束した精強な組織』ができてしまうのではあるまいか。
「恐らく……だいぶマズイことになっていますね……」
 そしてゴッドバードの何よりの懸念は、内ゲバに夢中で周りを見る余裕がなくなっていることだろう。
 まさか、こんな街中で戦い始めるとは――。
「思ったよりも遅い到着だな、EDENの能力者達よ」
 冷徹な声が冬の冷えた空気を揺らす。こちらが行動を起こす前に、デュミナスシャドウが立ち塞がった。右腕から噴き出る炎が周囲を禍々しく照らす。そしてもう一方の手には、件の王劍が握られていた。
 ――ただでさえ強力な相手だと言うのに。
 厄介な状況に歯噛みしつつも、クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)は油断なく構える。苦戦は免れないだろうが、ここまで来て引くわけにはいかないのだから。
「先日はうまくやったようだが……この俺が来た以上、生きて帰れるとは思うな」
 ゾディアックフォーム。星の輝きをその身に宿して、デュミナスシャドウの纏うスーツが形を変える。暗赤色のラインが星々を繋ぐ、その姿は『ケルベロスライブラフォーム』だ。
 無駄に時間をかけるつもりはない、そう宣言するように、デュミナスシャドウは前傾姿勢で雪を蹴立てる。機動力を増したその動きは、まるで一瞬で視界から消えたように映る。
「来ます……!」
 ゴッドバードが警句を飛ばした直後、飛来した円盤状の刃、ケルベロスソーサーが彼女の張ったバリアに喰らい付く。回転する刃はバリアを破り――襲い来るそれを、クラウスは剣の形に錬成した魔力兵装で受け止めた。
 重い手応え、牙を剥くように回転する刃を弾き返すと、空中に跳ねたそれを目にも止まらぬ速さでデュミナスシャドウが回収する。
「そこか」
 高速で移動する影に、クラウスの指示に従う砲台が攻撃を仕掛け――その一連の攻防による余波に、何事かとこちらを覗き込んでいた市民達が悲鳴を上げた。
「この人達を避難させます」
「ああ、任せた」
 急ぎ翼を広げたゴッドバードがそちらに向かう、が。
「逃がさんと言っただろう」
 その動きを目聡く捉えたデュミナスシャドウは、ゴッドバードを叩き落すべくそちらに向かう。強く地を蹴り、一気に加速したそこに。
「ようやく隙を晒したな……!」
 注意の逸れた瞬間を突き、クラウスが飛び込んでいた。交錯は一瞬、だが彼の狙いは触れるだけで達成される。
 『ルートブレイカー』、クラウスの掌が触れた瞬間、デュミナスシャドウの描く星座が掻き消えた。
「なに……!?」
 形態変化を無理矢理に解かれ、デュミナスシャドウがバランスを崩す。突進を阻んだそこで、クラウスは魔力の刃を薙ぎ払うことで一太刀を加えた。元に戻ったデュミナスシャドウのスーツに傷が刻まれ――。
「ふん……それで勝ったつもりか!?」
 動揺をすぐさま抑えて、デュミナスシャドウは再度突進する代わりに右腕の炎を迸らせる。
 咄嗟に盾を展開したクラウスを後退させ、燃え盛る炎はゴッドバードを包み込んだ……かに見えたが。
「――パージします」
 誘爆しかけた装備の一部を切り離し、ゴッドバードはダメージを抑える。そして、空中で爆発したそれは、まるで煙幕のように両者の視界を遮った。
「小癪な真似を……!」
 再度ケルベロスライブラフォームへと変じたデュミナスシャドウは、腕の一振りで煙を払う。しかし、既にゴッドバードは庇った市民を避難させた後だった。

和紋・蜚廉
不忍・ちるは


 戦闘において展開された煙幕、それを振り払うようにしながら、デュミナスシャドウは素早く視線を巡らせる。元の目的は能力者達の足止めだが、思わぬ反撃を受けたことへの屈辱感がその眼光に滲む。だが鋭い視線が次に捉えたのは、先行させた部下の姿だった。
「主様」
 何をしに戻ってきたのか、訝るデュミナスシャドウに対し、忍びは恭しく頭を下げる。
「ご指示通り常夏同盟の頭目の首を狩り組織を掌握したでござる」
「……それで、その女は?」
 スラッシャーバニーの傍らには、縄をかけられたもう一人の能力者……不忍・ちるは(ちるあうと・h01839)の姿がある。
「こちらへ参る途中で捕縛いたした。主様に敵わぬと見て逃げ出したのでは?」
 何にせよ仕事は首尾よく運んだのか、部下の言葉にデュミナスシャドウは気を良くしたかもしれないが、仮面の下の表情までは窺い知れない。
「見覚えがないな」
「先日、拙者の仕事を邪魔した者の内ひとりでござる。√EDENの能力者であることは間違いないかと」
 ならば人質には使えるか、などと敵が思案する様子を見せたその時、捕らえられていたちるはが拘束を解いた。
 デュミナスシャドウの頭上を飛び越え、背後に着地。デュミナスシャドウによる振り向きざまの攻撃を捌き、反撃の機を窺うそこで、スラッシャーバニーが跳ぶ。
「逃がさぬ……!」
 首を刈り取るような回し蹴り、だがその狙いは、デュミナスシャドウに向かっていた。背後からの鋭い蹴撃は、しかし掲げられた王劍によって防がれる。完全に死角をついたはずだが、首が三つ付いてでもいるような察知能力を発揮したデュミナスシャドウは、スラッシャーバニーの体を余裕の様子で押し返した。
「まさか、それで騙し討ちのつもりか?」
「あら、ばれてました?」
 口調の崩れたスラッシャーバニーは、悪びれもせずそんな声を上げる。
「では仕方ありません、かくなる上は――」
 あえて注意を引くように、誰かさんのセリフをなぞって術を解く。どろんと煙が上がって、スラッシャーバニーの姿をしていたちるはが、その正体を現した。
「この顔、見覚えあります?」
「なに……!?」
 ならば先程捕らえられていたのは誰だ。思わず再度振り返ったデュミナスシャドウは、こちらでもまた術を解いた煙を見る羽目になる。
 突如膨れ上がるようにして、体格の良い男の姿が露わになる。最初にちるはの振りをしていたのは彼、和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)だった。
「主様、がっかりしました?」
「……!」
 からかうようなちるはの言葉に苛立った様子を見せながらも、デュミナスシャドウの思考は相手に合わせた最適な戦法を弾き出す。
 しかし。
「遅いな」
 二人がかりの二重の偽装に、追いつくところまでは至らなかった。
 蜚廉の体重の乗った拳と、槍のように放たれたちるはの蹴り、その双方を捌き切れず、デュミナスシャドウはまともに攻撃を受けることになる。卓越した機動力を駆使し、どうにか追撃を免れたようだが。
「してやられただと、この俺が……?」
 一度ならず、二度までも。星詠みの力を利用し、動きを予知した五分の条件、その上に王劍を以てしてなおうまくいかぬ状況に、デュミナスシャドウは明らかに動揺を見せていた。
 このまま正面から戦えば、結局は王劍の力にものを言わせて捻じ伏せることも可能だろう……と、そんな結論にさえ確信が持てぬほどに。
「チッ……!」
 部下の報告も上がっていない以上、一旦仕切り直すべきだ。そう判断したのか、デュミナスシャドウはそのまま家屋を飛び越えるようにして姿を消した。
「行っちゃいましたね、主様」
「……いつまで続けるんだ、それは?」
 安堵の息と共に軽口を交わして、二人はまた先行した者達を追う。
 デュミナスシャドウの迎撃を退けた今、常夏同盟の拠点で戦っている仲間達の援護に入ることができるはず。
 さて、そちらの戦況はどうなっているだろうか――?

第2章 冒険 『混戦の戦場』



 寒風の吹きすさぶ中、音を吸う雪の幕を越えて、戦いの音色が響き渡る。
 常夏同盟の拠点、商店街にある三階建てのビルの中は、まさに混迷を極めていた。常夏同盟は既にコウモリプラグマの傘下に収まっており、乗り込んできたデュミナスシャドウの手勢と争いになっている。
「やったるプレー!」「死ねレコー!」
 熱帯魚のプレコを改造したと思しきゆるキャラみたいな怪人達が、恐らく常夏同盟の戦闘員なのだろう。落とし穴とかを使って迎撃態勢を整えた彼等に対し、デュミナスシャドウ側の黒いスーツを着た戦闘員達が数を頼みに襲い掛かる。
「あいつら寒くなると動きが鈍るぞ!」「エアコンを消してやれー!!」
 一見すると微笑ましいが、先陣を切って突入したスラッシャーバニーにやられた戦闘員なども転がっており、まあまあ凄惨なことになっている。
 互いの戦力の現場指揮官、Mr.テトラヘドロンとスラッシャーバニーは最上階である三階で戦闘中。そして先行したチームは、この『同士討ち』を利用する方向で動いており……指揮官格に√EDEN側の存在を悟られないようにしつつ、外部からの狙撃で三階の戦いに介入している。

 この混沌とした、そして現在進行形で展開中の戦場において、細かい打ち合わせをしている暇はない。『この状況を利用し、敵を全滅させる』……先行したチームの方針を踏まえつつ、こちらのチームはこちらのチームで動くべきだろう。
 手始めに、一階と二階の戦闘員達に対処するのが得策に思えるが……?
若命・モユル
ゴッドバード・イーグル
クラウス・イーザリー
和紋・蜚廉
不忍・ちるは


 指揮官格が駆け抜け、三階で互角の戦いを繰り広げている今、その指示の届かない下の階の戦況は混迷を極めていた。攻めるデュミナスシャドウ勢力の戦闘員と、守る常夏同盟のプレコ怪人達。しかしながら守る側たるプレコ怪人達には罠を張るという準備の時間もあったようで、わずかながら常夏同盟側が優勢を保っていた。
「こんな地味な戦闘員片っ端からやっちまうプレー!」
「行くぞ……レコー」
 若干たどたどしい返事をした黒いプレコ怪人は、黄色のプレコ怪人にじっと見つめられて目を逸らす。
「床暖房のために成果を上げてココを熱帯にするプレー!」
 煽るように続ける黄色プレコの言葉に、黒プレコは「わかっている」とばかりに頷いた。
「やってやる、レコー」
 少しばかりスムーズになった口調でそう応じて、黒プレコは迫りくる戦闘員達を撥ね飛ばす。勢いづいた他のプレコ怪人達に、黄色プレコの声援が続いた。
「みんなすごいな……」
 そんな戦況の一角、マスクとスーツで偽装し、戦闘員達に紛れ込んだクラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)が感心したように息を吐く。今回の能力者達は乱戦に乗じて両軍に潜伏する作戦を選んでおり、彼もまたデュミナスシャドウの戦闘員として偽装しながら戦いに加わっていた。
 ちなみに黄色プレコが不忍・ちるは(ちるあうと・h01839)で黒プレコが和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)だ。敵に化けた上であそこまで堂々とやられるとさすがにもう褒めるしかない。だが、こちらもこちらで仕事はしなくては。
「みんな、援軍が来てくださったぞ!」
「デュミナスシャドウ麾下、サイボーグ翼竜怪人、現着しました」
 下っ端っぽい動きでクラウスが出迎え、援軍という体裁で、ゴッドバード・イーグル(金翅鳥・h05283)もそこに降り立つ。
「あんな人、隊に居たか?」「いやでも援軍だって……」
 さすがに無理がある言い分だが、この乱戦状態ならぎりぎり通せるか。
「我等が王権執行者はこの戦いを重く見ています。数多の小組織を統合した暁には、プラグマ内での確固たる地位を貴方方にも約束しましょう。命懸けで奮戦しなさい」
 双方共に煽りを加えて、戦闘を激化させていく。こうすることでおのずと戦力の消耗は早まり、常夏同盟側もデュミナスシャドウ側も、その数を減らしていくだろう。
 少々危なかったが、とりあえずはうまくいったか。安堵しつつ、クラウスは屋外に配置したレギオンによる索敵情報をまとめる。今のところ、『外』にはデュミナスシャドウの気配はない。
 ――が、その代わりに接近する別の能力者を、センサーが捉えていた。


「寂れた商店街にこっそり潜んでたなんて……」
 現場に駆け付けた若命・モユル(機獣戦士サイバー・カヴ・h02683)は、一見すると周囲の風景に溶け込んでいる雑居ビル――常夏同盟の拠点を見上げる。何の変哲もない建物のようだが、この調子で地元にも悪の組織が潜んでいるとしたら。そんな想像が膨らんで、思わず眉を顰める。
「こうなりゃどっちも叩き潰すしかないね」
 ウィンドモードに変身したモユルは、降る雪の結晶、そして冬の風を伴い敵の拠点へと乗り込んでいった。
「機獣戦士サイバー・カヴ、参上!」
「今度は何だ!?」「さ、寒いプレー!」
 突然の乱入者、それと寒風に両軍の戦闘員達が慌てた声を上げる。その間に、√EDENの能力者達は密かに顔を見合わせていた。
「え? この状況は……?」
「うろたえるなプレー! こちらには大首領様の支援とめっちゃつよい同盟員が控えているプレー!」
「これ以上計画を遅れさせるわけにはいきません。即刻排除するのです」
 黄色プレコとサイボーグ翼竜怪人の声に従い、黒プレコと下っ端戦闘員がモユルに向かう。率先して動いた彼等に続いて、残りの戦闘員達も戦場の中心へと飛び込んでいくことになった。
「よくわかんないけど――」
 モユルの手に輝く剣が握られる。ウィンドモードによって増強された速度を活かし、彼は迫る敵達を迎え撃った。
 旋風の如く薙ぎ払われたモユルの刃に、蜚廉はさりげなく別のプレコ怪人を盾にして応じる。一方のクラウスは逃げ遅れた振りで他の戦闘員の行き先を誘導し、プレコ怪人の罠の前に固まらせる。丁度モユルの起こした風がそれを押し出し、落とし穴に呑み込まれていった。
「ゴーゴープレー!」
「ふむ、負けてられんレコー」
「敗北など許されません。最後の一兵まで戦うのです」
 シリンジシューターにブレイズアックス、モユルの備えた武装が次々と展開される。こうして真正面から戦う彼の動きを、偽装したメンバーが援護する形で残った敵部隊を倒していく。
「悪いな」
 最後に残った戦闘員を味方の振りをしていたクラウスが撃ち抜いて、一旦こちらの階層の制圧は完了した。
「ええと……全部倒せたってことで良いのかな?」
 合流したモユルと共に、一行はさらに先へと進む。

●三階へ
 すっかり風通しの良くなった戦場を抜けて、√EDENの能力者達は最上階への階段を駆け上がる。こちらも下の階にも負けず劣らずの激しい戦場と化していたが、一見すれば状況の違いが見て取れるだろう。両軍の戦闘員は統率の取れた様子で、連携しながらの戦闘を繰り広げている。これも指揮官格の力量、そして手腕によるものか。
 さすがにこの状況では、先程のような『なりすまし』は通用しない。だが、その代わりに。
「なんかこっちもややこしいことになってるけど、この機獣戦士サイバー・カヴがまとめて相手してやる!」
「なんだと?」「まさか……後ろから!?」
 待ち受ける常夏同盟勢力に対し、攻め込んだデュミナスシャドウ勢力。√EDENの能力者達がさらにその背後から現れたことで、デュミナスシャドウ勢力は挟撃に遭う形になっていた。
「くっ……迎え撃つでござる!」
 スラッシャーバニーの指示に従い、後列の戦闘員達がそれぞれに銃を構えるが。
「そんな速さに負けるもんか!」
 揃わぬ戦列を待ってやる義理などない。風の如く切り込んだモユルが剣を振るい、光刃がその銃を両断、返す刀で戦闘員達を地に伏せさせていく。
「今が好機、みたいだね」
 小型拳銃の引き金を次々と引いて、クラウスが敵陣を穿つ。その大きな綻びを押し広げるように、蜚廉が飛び込み、指揮官に向けて蹴りを放った。
 重い斧のような一撃を受け止めたのは、刀の鞘。先日の模造王劍ではなく愛用の刀を手に、スラッシャーバニーは蜚廉――のみならず、その後方を睨む。剣呑な光の宿ったその瞳は、そこから飛び出してくるちるはの追撃を予測していた。
 手刀と白刃、各々のそれを紙一重で躱して、対峙する。
「また会ったな」
「お主等がここに来たということは、我が主は……」
「さあ、どうしているんでしょうね?」
 そらとぼけるように、含みを持たせた様子でちるはが微笑む。まあ、本当にどこに行ったのか知らないわけだが、はったりとしては十分だろう。
 挟撃され、介入阻止に向かったはずのデュミナスシャドウも退けられた……その事実に、スラッシャーバニーはもとより配下の戦闘員達も大いに動揺している。
「隙だらけですね」
 そして散漫になった意識の隙間を突くように、ゴッドバードの放ったミサイルが炸裂。爆発に巻き込まれたスラッシャーバニーは、手傷を負いながらも後退する。
「おのれ……!」
 傾いた戦況はもはや簡単には覆らない。結果的に挟み撃ちにされ、逃げ場のないデュミナスシャドウの戦闘員達は、次々と打ち倒されていった。

第3章 冒険 『コウモリプラグマvsデュミナスシャドウ』


●凶星巡りて
 降り続いていた雪は、いつの間にかその激しさを増していた。風に煽られ窓を叩く大粒の雪が、細かく砕けて空に舞う。
 予報に反して吹雪き始めた拠点の屋外、そこに浮かべられていたクラウスの無人機達が、この場に近づく熱源を捉えた。
「これは……トラック?」
 ビルに横付けされた大型トラック、そのコンテナからは、戦闘員と思しき影がいくつも飛び出してきている。
「ふふふ……誰か知らないけどこれでお前達もおしまいプレー」「覚悟するレコー」
 生き残っていたプレコ怪人達は、敵対するスラッシャーバニーと、見知らぬ乱入者――要するに√EDENの能力者達に向かって、勝利を確信した様子を見せ始める。どうやらトラックに乗ってやってきたのは、彼等にとっての援軍のようだ。
 調子に乗ったその態度は余裕か、それとも油断か。付け入る隙を見極めようとしたそこで。
「……蜚廉さん!」
「ああ――」
 何か来る。迫る気配を察知した二人が咄嗟に飛び退く。次の瞬間、常夏同盟の拠点であるビル、その一角が人外の力で引き裂かれた。
 屋根の一部が崩落し、先程まで二人がいた場所に、嵐のように雪と風が吹き込む。そしてその中心には、闇色の炎が燃え盛っていた。
「デュミナスシャドウ……!」
 敵の姿を察知し、モユルが身構える。しかし再び戦場に現れたデュミナスシャドウは、√EDENの者達の姿に舌打ちすると、自らの部下へとその目を向けた。
「主様……」
「お前には失望したぞ、スラッシャーバニー」
 手傷を負い、配下の戦闘員までも失ったスラッシャーバニーが、上官の言葉に身を震わせる。
「だが、最後にもう一度チャンスをやろう。俺がもう一本の王劍を奪い取るまで、こいつらを足止めしておくのだ」
「――御意」
 力強く頷いたスラッシャーバニーの目に、再び決意と殺気が宿る。背水の陣を敷かれ、覚悟を固めた部下の様子に頷くと、デュミナスシャドウは割れた窓の縁に足をかけた。
 彼が見据えるのは『下』、トラックで現れた敵の援軍の方だ。
「まさか……コウモリプラグマも、ここに?」
 ゴッドバードが小さく呟く。確証はないが、これまでの言動、そして敵の行動から、もう一人の王劍所持者もここに来ていると考えるのが妥当だろう。

「……困りましたね。我々が大人しく通すとでも?」「そうだプレー」「そうだレコー」
「黙っておれ、お主等の相手は拙者がいたす」
 一触即発……いや、既に燃え上がっていた炎に、新たな火種が投げ入れられたと言うべきか。
 それぞれの思惑と、それぞれの野望。吹雪の中で絡み合い、うねる炎は、果たして何を描き出すのか――。

 予知の範疇を超えた今、ここから先にガイドはない。すべては、『現場の判断』に委ねられている。
ゴッドバード・イーグル
クラウス・イーザリー


 コウモリプラグマとデュミナスシャドウ、双方の到着によって場は大きく転回する。それぞれの目的を果たさんと動く王劍所持者達と同様、スラッシャーバニーもまた目の前の標的へと襲い掛かった。
「残りはお前だけプレー」
「こんなに寒くしてくれて許さないレコー」
 だがその目の前に、Mrテトラヘドロンの従えたプレコ怪人達が立ち塞がる。そうして両者が争っている今の内に――機先を制するべく飛翔したゴッドバードだが、デュミナスシャドウに向かうその眼前に、大振りの刀が飛来した。
「ここは通さぬ。我が命に代えても――」
 自らの得物を放り投げたスラッシャーバニーは、手刀で仕留めたプレコ怪人を踏み台にして素早く迫る。天井に突き刺さったそれに飛び付いた彼女は、引き抜き様にゴッドバードへと斬撃を見舞った。
 咄嗟に展開したレーザークローと、スラッシャーバニーの刀がぶつかり、戦場に火花を散らす。
「ひとまずは、この連中をどうにかする必要があるか」
「そのようですね……」
 羽ばたき後退したゴッドバードがクラウスと言葉を交わす。別のルートを選ぶならともかく、最短距離での突破となれば彼等との戦闘は避けられないだろう。スラッシャーバニー、そしてプレコ怪人の稼いだ時間によって、彼等の上官はまたそれぞれに動く。
 コウモリプラグマはMrテトラヘドロンを呼ばわり、さらにデュミナスシャドウを誘う。
「さぁ、来るのだ、デュミナスシャドウ。お前が、王劍を奪うチャンスは、いましかないぞ。ヒャーッヒャヒャヒャ!」
「飛んで火に入る……とはよく言ったものだな」
 その余裕がいつまで続くか見ものだ。そうせせら笑うようにして、デュミナスシャドウは風雪の荒れるビルの外へと身を躍らせた。
「この状況は……」
 想定外、と言ってしまっても良いのだが。素早く状況を見定めたクラウスは、密かに屋外へと出た味方の動きを察知して、銃を引き抜く。外の戦いへの介入を彼等に任せるのなら、こちらはこれ以上の邪魔を入れられぬよう、牽制を担うべきだろう。
「ほーら、この声を聴くとお腹が空いてくるプレー?」
「ええい、鬱陶しいでござるな……!」
 実力では劣りながらも搦手と数を頼りにスラッシャーバニーを抑え込むプレコ怪人、その戦いの中心に、クラウスは紅蓮の魔弾を解き放った。
 着弾したそれは赤く爆ぜ、燃え盛る炎となって彼等を包む。
「も、燃えるプレー!」「こんなに熱いのは欲してないレコー!」
 大慌てのプレコ怪人達に対し、ゴッドバードはハウリングキャノンを叩き込んで反撃を阻害する。そして体勢を整える暇もなく、混乱に陥った彼等の間に、クラウスが飛び込んだ。
 『月下氷雪』、氷の如く研ぎ澄ませた感覚でプレコ怪人の間を駆け抜け、狙うは他を圧倒しているスラッシャーバニーだ。
 踏み込みと共に、刀の形に錬成した魔力兵装を振るう。焔に揺らぐ熱気を斬り裂き、走る刃を敵は立てた刀で受け止めた。
 決死の覚悟に染まった瞳がクラウスを睨む。素早く跳ね上げられた太刀がクラウスの刀を浮かせ、その隙間を縫うようにしてスラッシャーバニーの刃が滑る。執拗なまでに首を狙う斬撃を、クラウスは咄嗟にガントレットで受け止めた。
「――覚悟」
 追い詰めた、と見越したスラッシャーバニーが呟く。だがその太刀の動きを、いつの間にか絡みついていたワイヤーが留める。それがクラウスのガントレットから伸びた物であると、敵が察知したその直後。
「詰めが甘いのは変わりませんね……!」
 飛来したゴッドバードがレーザークローを突き立てて、至近距離で帯電したブレスを見舞った。
「小癪な!」
 電撃に身体を焼かれながらも反撃に出る敵から、ゴッドバードはすぐさま逃れて自動小銃で牽制する。連射される弾丸の悉くを、スラッシャーバニーは弾いて凌ぐが――マスクの下の表情が、怒りのそれから驚愕に変わる。
 咄嗟の対応は上手くいっていたように思えたが、しかし。先ほどまで事を構えていたクラウスの姿が、視界から消えている。
 戦場を照らし、染める炎の色。目を晦ませるそれらの影で、クラウスは既に敵の背後を取っていた。
「ここまでだ」
 一閃。魔力の刃は今度こそ敵を捉え、斬り裂く。
 驚愕に見開かれた眼は、相手の姿に届かぬまま。スラッシャーバニーは炎の中へと倒れていった。

 ゴッドバードのアサルトウェポンが、そしてクラウスの展開した砲台が残った敵へと弾丸を浴びせかける。
「や、やられたプレー!」「痛いレコー!」
 緊張感のない悲鳴が上がったが、多分倒せてはいるだろう。三階に残ったプレコ怪人の大部分、そしてデュミナスシャドウ配下のスラッシャーバニーを打ち倒し、道は開けた。そして一行は、炎の揺れる敵基地を駆け抜け、吹雪の荒れるもう一つの戦場へ。
 ぶつかり合う王劍同士の戦いは、√EDENの能力者達の介入を経て、また新たな局面を迎えていた。


 吹き荒れる風が、冷たい氷の破片を運んでいく。熱気に溢れるビルの3階から見下ろせば、吹雪の合間に戦う者達の姿を垣間見ることができるだろう。
 Mrテトラヘドロンに命令し、優勢に戦いを進められるはずだったコウモリプラグマは、√EDENの能力者の介入を受け、デュミナスシャドウから手痛い一撃を加えられてしまったようだ。胸を押さえて呻くコウモリプラグマに、地上へ降りたMrテトラヘドロンが駆け寄る。
 手傷を負ったとはいえ数の上ではまだコウモリプラグマ側が優勢か。しかしデュミナスシャドウは余裕の表情を崩さぬまま、現れた√能力者――蜃の宣言を聞いている。無傷で立つ王劍所持者、彼こそがこの場で最強の戦力であると、そう理解しているように。

 各々の狙いと共に流転する戦況。果たして、その行き着く先は。
二階堂・利家
ゴッドバード・イーグル


 より勢いを増した雪の合間を、ゴッドバードが翼を畳んで降下する。炎に煽られたビルの中から、視界を阻む白の向こう、戦場となった場所へと舞い降りた彼女は、素早く状況把握に努める。先にこちらへと向かっていた√能力者達とMrテトラヘドロンが刃を交わし、混戦じみたこの状況、デュミナスシャドウとコウモリプラグマの間で崩れた均衡は、すぐに決着へと向かうだろう。
「王劍を2本揃えさせてはいけない!」
 ここに至って様子見をしている暇などない。響く味方の声に応えるように、ゴッドバードは仲間と共に王劍所持者の間へと割り込んだ。
「またお前達か……!」
 忌々しげに吐き捨てたデュミナスシャドウが、ちらとビルの上へと目を遣る。
「まさか、足止めすらできんとはな」
 配下の末路は確かめるまでもないだろう――そんな敵の様子に、ゴッドバードに並び立った二階堂・利家(ブートレッグ・h00253)が口を開く。
「あんたのために働いた奴は、みんなろくな目に遭わないな」
 揶揄するような言葉が指すのは、スラッシャーバニーをはじめ各地に派遣されたデュミナスシャドウの部下について。もちろん、王劍を彼にもたらしたプリンセスクイーンもまたその対象だ。
「プリンセスクイーンの|Anker《想い人》って、あんただったんじゃないのか?」
 √能力者であるにも関わらず、呆気なく『死んだ』。その意味するところを推測した利家の言葉に、デュミナスシャドウは短く応じる。
「知らんな。俺はあいつを利用していただけだ」
 常と変わらぬ冷酷なその言葉に、どこか言い訳じみた色を感じるのは気のせいだろうか。いずれにせよ、ここでそれを確かめることはできない。
「どれだけ犠牲を出しても構わない、ということですか」
 ゴッドバードが小さくそう呟く。容赦なく味方を切り捨てるその姿勢は、デュミナスシャドウの冷酷さのみならず、抱いた野望の大きさを表しているように感じられる。
 ただの狂犬、盲目な愚者であるならそれで良い。だが、飽くまで冷静に、それらを『対価』と断じたとするならば。
「然らばその大願を成就させる事など、許すわけにはいきません」
 王劍を揃えさせるなどもってのほか、必ずここで止めなくては。コウモリプラグマへと向かう別班の動きを察して、ゴッドバードは監視に飛ばしていたものに加えて、レギオンランチャーから全てのドローンを展開させる。雪の中に舞い上がったそれらに指令を下すと、無数のドローンは一斉にデュミナスシャドウに襲い掛かった。
 数に任せた集中攻撃――使用する武器は当然一番威力の高い物、つまりは自爆特攻だ。
 敵へと殺到したドローンは次々と自爆し、爆発の炎と煙が吹雪とは別の嵐をもたらす。豪雪を根こそぎ吹き飛ばすような風を、ゴッドバードは翼で制して宙を舞う。眼下の爆煙、その中心で、星が瞬いたように見えた。
「邪魔だ」
 瞬間、眼前に炎を纏った五指が伸びる。スピードに高じたケルベロスライブラフォームを取った、デュミナスシャドウによる強襲。だがその情報は、既に味方に共有済みだ。
 シールドを構えた利家が両者の間に割って入り、鋭いクローによる一撃を防ぐ。装甲を削る爪、火花と擦過音を散らしながら着地した両者は、雪を踏みしめ、対峙する。
 白上の静寂は一瞬にも満たない。間髪入れずに放った利家の蹴りを、デュミナスシャドウは受け流すようにして捌く。身を翻すようなその動きに合わせて、円盤状の武器、ケルベロスソーサーが旋回。襲い掛かるそれを、利家は殴り棺桶で受け止めた。
 同時に、棺桶を結ぶ鎖を放ち、デュミナスシャドウを絡め取る。
「――今!」
 腕力を生かして鎖を引けば、敵の動きを一時的に留めることに成功する。その瞬間を逃さず、高速飛翔形態を取ったゴッドバードが突撃した。
 素早い動きを生かした回避行動を封じられ、防御を余儀なくされたデュミナスシャドウに、機銃とミサイルによる波状攻撃が突き刺さる。バリア機能を一点に集中させ、そのまま突っ込んだゴッドバードは、広げたレーザークローで以て王劍を狙うが。
「貴様ごときに触れられるとでも?」
 奪取を狙ったその動きには敵も即座に反応し、フォームチェンジを解いて接近する彼女を打ち払う。続けざまに鎖を引いて利家を引き寄せると、炎を纏った蹴りを見舞って吹き飛ばし――王劍を握り直したデュミナスシャドウは、倒れた敵達を睥睨した。
 しかし。
「チッ……!」
 口を突いて出たのは苦々しい舌打ち。数の多寡など関係なく、デュミナスシャドウは自分が優勢であると確信している――が、『圧倒する』には至らぬことも、同時に理解しているようだ。
 間に立ちはだかる利家達を退けたとて、果たしてその状態でコウモリプラグマを仕留めきれるか。ここまでの戦闘での負傷もあり、結論が出るのに時間はかからなかった。
「……ここまでだな」
「逃げるつもりか?」
 煽るような利家の言葉に、踵を返したデュミナスシャドウが一時、足を止める。振り返った仮面の奥、その瞳が、怒りに揺らいだように見えた。
「王劍さえ揃えば、お前達など……」
 どうやら、あの対となった王劍は、ひと揃えになることで相乗的に力を増すようだ。流転する状況の中で、それが成される結果も十分にあり得ただろう。しかし√EDENの能力者達の選択によって、それは見事に阻止された。

「デュミナスシャドウ様、ご無事ですか!?」
「ああ」
 遅れて駆け付けた怪人達、デュミナスシャドウは配下の声にそう応じて、バイクに跨る。
「――どうやら、俺達は奴等に踊らされていたようだ」
 今は引くしかあるまい。敵の姿を一瞥し、そう口にしたデュミナスシャドウは、吹雪の中へと走り出した。
 残されたのは、増援として現れた配下の怪人達。振り向けば、コウモリプラグマもまた撤退を選んでいる。降り積もる雪の中の戦いは、こうして終息を迎えた。

 ……が。
「ここで逃がす手はありません」
 ゴッドバードはもう一度翼を広げて、仲間達もまた武器を手に取る。
 相手側も星詠みの力を利用しているというならば、なおさら次の作戦を練る暇など与えるわけにはいかない。これはきっと、デュミナスシャドウを追い詰める最大の好機。
「――追いましょう!」

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