シナリオ

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#√妖怪百鬼夜行 #紅涙流離戦 #第二章プレイングは5/19~5/21の受付です

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⚡️大規模シナリオ『紅涙流離戦』

これは大規模シナリオです。1章では、ページ右上の 一言雑談で作戦を相談しよう!
現在の戦況はこちらのページをチェック!
(毎日16時更新)

 露店の奥では大きな笑い声が響いている。
 見れば、二足歩行の大化け猫がふんぞり返り、豪快に客をあしらっていた。
 尾はゆったりと揺れ、鋭い目は通り全体を見渡している。

「――アァ!? 本気でその値段で通る思とんかァ!?」
 怒鳴られた側は思わず背筋を伸ばし、それでも引かずに食い下がれば――今度は猫がにやりと牙を覗かせる。
「ほう、まだ引かんか。ええ度胸や」
 途端に周囲から「おおっ」と声が上がり、小さなどよめきが広がる。やり取りそのものが見世物であり、同時に真剣勝負でもあるのだ。
 別の露店では店主同士の言い合いが始まりかけていたが、化け猫がちらりとサングラスの下の視線を向けただけで、ぴたりと収まる。代わりに鼻を鳴らして笑い、どちらも何事もなかったかのように商売へ戻っていく。
 どうやら、この場の秩序は、彼の一睨みで保たれているらしい。

 近くを通る子どもの妖怪が転びかければ、尻尾で軽く支え、何事もなかったように離す。
 客が持ち上げた品を乱暴に扱えば、低く一声だけかけて手を止めさせる。
 威勢のいい言葉とは裏腹に、細やかな目配りが行き届いていた。

 この市を束ねる大親分、ドラ吉。
 その一声が飛ぶたび、空気がぴりっと引き締まり、同時にどっと笑いが起こる。



「おまえら、骨董市に興味はあるか?」
 紅涙流離戦の或る最中。君たちを見渡すと、ジャン・ローデンバーグ(裸の王冠・h02072)はそれだけ短く問うた。

 今回の舞台は、√妖怪百鬼夜行の一角に広がる巨大な蚤の市だ。
 泣く子も黙る大親分、化け猫ドラ吉が率いる√きっての骨董市。人呼んで〈大三毛市〉。
 そこは幾重にも露店が連なり、布の天幕が空を覆い、光を鈍く反射している。
 主催しているのは地の気を宿した妖怪たち。刀剣、装具、古美術、家具、古本、カトラリー、果ては精巧な装飾が施された楽器、西洋アンティークまで。扱うのは、ありとあらゆる古き良き品。新品はほとんど見当たらない。あるのは、時を経て、誰かの手を渡り、役目を終え、それでもなおここに在るものたちだ。

 通りに一歩足を踏み入れれば、鼻をくすぐるのは古い紙や湿った金属、端にある屋台の焼きそばの匂い。
 ――いらっしゃい! ここは天下の〈大三毛市〉!

 赤錆びた鎧を誇らしげに並べる者は、かつての戦場の話を聞いてもいないのに語り出す。
 磨き上げられた刃を布で撫で続ける者は、刃文に宿る光をまるで宝石のように愛でている。
 古びたティースプーン一本に強い執着を見せる者は、どうやら特別な客を待っているらしい。
 どの店主も一癖も二癖もありそうだが――総じて、商売には本気だ。
 値札はあってないようなもの。目の前の客を見て、値段も態度もコロコロ変える。
 気に入れば破格で譲るし、気に入らなければ倍でも首を縦に振らない。

「ガラクタに見える中に、おまえだけのとびきりの一品が埋もれてる。そういうのを拾えるかどうかが腕の見せどころってわけだ」
 人混みは濃く、熱気は重く、道は決して開けてはいない。肩が触れ、声がぶつかり、視界はしょっちゅう遮られる。
 それでもなお、誰もが何かを探している。
 価値を、物語を、あるいはただの"運"を。

「……ああ、奥には市の親分、ドラ吉ってのがいる。次に何かと戦うなら手を貸してくれるし、飯屋に行くってなら美味いとこに案内してくれるらしい」
 ジャンはそこで一度言葉を切り、少しだけ視線を横へと流した。
「しかも奴さん、表に出てる連中とは桁が違う。年代モノ、逸品、いわく付き。簡単に言や"本命"の品を山ほど持ってる」
 けどな、と肩をすくめる。
「気に入らなきゃ、金積んでも門前払いらしい。逆に気に入れば、驚くほどあっさり手放すこともあるらしいが……まあ、その基準が厄介でな。根性かもしれねえし、見る目かもしれねえし、あるいは、"そいつがその品に選ばれてるかどうか"かも」
 くつ、と笑ってこちらを見る。
「逆に通れば本物だ。試してみるかは好きにしろ」

 ジャンは肩をすくめ、少しだけ楽しそうに目を細める。
「ま、難しく考えたって、いいもんは逃げるときゃ逃げるし、逆にふらっと入った店で当たりを引くこともある」
 少しだけ口角を上げて、最後に言い添える。
「だから――1個でいい。自分がこれだって思えるもんを、見つけてこいよ」

 古きよきものがきらめく市。
 価は眠り、値は揺れ、声は飛び交う。
 触れれば冷たく、けれどどこかに熱を残した品々が。

 君に選ばれるのを、待っている。
これまでのお話

第2章 日常 『ハーモニカ横丁探索』


POW 気合いで大量の料理を食べまくる
SPD ちょい飲みメニューをつまみながら飲み屋を渡り歩く
WIZ 乱立する店の常連達から横丁歩きのコツを聞く
イラスト 柑橘るい
√妖怪百鬼夜行 普通5

「夜市に行くで」
 君たちを迎えたのは、昼間に見かけた三毛の大化け猫、ドラ吉だ。
 二足で立ち、サングラスの奥からぎらりと目を光らせ、尾をゆったり揺らしている。肩には古びた羽織、片手には提灯。そこに描かれた三毛猫の紋が、夜風に揺れていた。
「カカッ! 昼の骨董市もええが、夜の横丁は別腹や。今夜はわしが案内したる」
 ドラ吉が顎で示した先には、細い路地があった。√妖怪百鬼夜行、吉祥寺――ハーモニカ横丁。

 普段から狭い通路に店が詰め込まれた迷宮じみた場所だが、今夜はさらに様子が違う。
 軒先には赤提灯が連なり、店と店の隙間には小さな屋台が無理やり滑り込み、頭上には色とりどりの短冊や幟が揺れている。路地の奥まで灯りが続き、まるで夜そのものに細い金の糸を縫い込んだようだった。
 焼き鳥の煙。
 鉄板で焦げるソース。
 甘い味噌だれ。
 揚げたての天ぷら。
 湯気立つ小籠包。
 冷えたラムネと、注がれる酒の匂い。
 夜風に混じったそれらが、容赦なく腹の虫を叩き起こしてくる。
「今夜はハーモニカ横丁の屋台市や。いつもの店に加えて、流れの料理人やら、奥の妖怪やらが集って、何売っとるか分からん屋台まで出とる」
 ドラ吉はにやりと牙を見せた。
「食べ歩きにはもってこいやろ?」

 入口近くには、炭火でじゅうじゅう焼かれる《猫目焼鳥》。
 山椒の香る一口餃子を出す《福々鉄鍋》。
 甘辛い味噌おでんの《三日月屋台》。
 揚げたてコロッケを紙に包んで渡す《からころ亭》。
 黒蜜豆花と冷たい茶でひと息つける《白雨茶房》。
 少し奥へ行けば、狐のカミさんの《おまかせ狐火》や、もっとディープな屋台だってある。
「どこから回るかは好きにせえ。飯で攻めても、甘味で攻めても、酒で攻めてもええ。店主と話してもええし、常連に混じっておすすめを聞くんもアリや」
 横丁の奥から、どっと笑い声が響く。
 それに混じって、笛の音、三味線の音、皿を打つ音。どこかで誰かが乾杯をし、どこかで誰かが熱々のたこ焼きに悶えている。

「一軒目や」
 カカッ、と豪快に笑って、化け猫は君たちを手招きする。
「さあ、腹ぁ空かせてついて来い」