シナリオ

血戦!宿命の戦士と殺しの間

#√汎神解剖機関 #√ドラゴンファンタジー #宿敵旅団 #ペンタクルム・ゲート #王劍『縊匣』 #スフィンクスゲート強襲作戦 #祝福と呪詛の担い手 #ご参加ありがとうございました。

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『ペンタクルム・ゲート』関連シナリオ

これは、宿敵旅団『ペンタクルム・ゲート』に関連するシナリオです。これまでの物語は、#ペンタクルム・ゲートで確認できます。
このシナリオに登場する宿敵は、宿敵主との『Anker』関係が失われており、シナリオに参加しただけでは絶対死しません。宿敵主に対して冷淡な反応(他の参加者と同程度の反応)を示す事も多いため、その点は理解の上ご参加下さい。

●死線こそ望むところ
 移動神殿スフィンクスゲートにて我らは再び招集された。要件は分かっている。いや、あるいは我の想像より厳しき状況となっているやもしれぬ。現に、モリアーティー殿の表情を見ればそうとしか考えられぬ。
『残念ながら、ペンタクルム・パールによるエネルギーの奪取は失敗となった。ペンタクルム・パールの性質を甘く見ていたのに加え、EDENの√能力者の力も予測以上だった。拉致してきた科学者や技術者を使って、ペンタクルム・パールの問題点の改善にも着手していたのだが、間に合わせる事が出来なかった。』
 予想通りの報告だ。しかし責めはすまい。我も|楽園の守り手《EDEN》に2度も敗れているのだから。しかし、これが本題ではあるまい。
『更に悪い事に、EDENの星詠みに、この移動神殿スフィンクスゲートの位置を知られてしまったようだ。おそらく、EDENの√能力者による襲撃が行われるだろう。』
 なるほど、相手方が我らの動きを察知していたのは星詠みのせいか。ふと、モリアーティー殿の様子を見るに、何かしらの策がありそうだ。目線で先を促す。
『皆には、特別な処置を加えたペンタクルム・パールを配布する。研究中に偶然できた失敗作だが、現時点では、他に手段は無い。これを使えば、一時的に、強大な力を得る事が出来るだろう。戦闘力が上昇するだけでなく、敵を異空間に閉じ込めて有利な戦場で叩く事が出来るだろう。
 ただ、このペンタクルム・パールは重大な欠陥がある。使用すれば、過大な負荷がかかり、場合によっては命さえ危うくなるだろう。その前に、襲撃してきた√能力者を撃退しなければならない。』
 これは策ではなく、足掻きの様に聞こえる。モリアーティー殿が深刻な表情をしているのは納得した。一度目を伏せ再び開く。それが宿命であれば是非も無し。

『だが、勝利の道筋は残っている。襲撃してきた√能力者を撃破すれば、その生命力をペンタクルム・ゲートに吸収させる事が可能だ。襲撃してきた√能力者を、多数撃破できれば、そのエネルギーで、ペンタクルム・ゲートを開く事すら可能になる。
 奴らが、それを許してくれるかは判らないが……。勝利の為には、なんとしても成し遂げねばならない。皆の検討を祈る。』
 ほう、ただの足掻きかと思えば、僅かばかりでも勝算があると。であるならば、我は。
 進み出てモリアーティー殿からペンタクルム・パールを受け取り、目を合わせ頷く。そして我の持ち場へと向かう。此度はこの神殿が|戦場《持ち場》である。
 良かろう、戦しか出来ぬ我が身なれば、この命尽きるまで敵を葬るが最大の務め。1人でも多く、ペンタクルム・ゲートにその|首級《しるし》を献上しようではないか!

●竜の少女が詠む宿縁の先
「"祝福と呪詛の担い手"、それが、つい最近、わたしが連続して詠んだ事件に出てきた強敵の名前みたいだよ。その宿縁が、彼のアジトへと繋いでくれたみたい。」
 星詠みのコルネリア・ランメルツはその場に集まったEDENたちに重々しい口調で説明を始めた。
「順を追って説明するね。まず、特殊なゲートを使って|わたしたち《星詠み》の予知を擦り抜け、阻止不可能な事件を引き起こしていた宿敵旅団"ペンタクルム・ゲート"っていう組織がある。祝福と呪詛の担い手…、長いから担い手で、はそこの幹部なの。
 要するに、今回突き止めたのは宿敵旅団の拠点、その名も移動神殿"スフィンクスゲート"。もう予想が付いてると思うけど、この拠点に侵攻してもらいたいの。
 目的は担い手含めた幹部や黒幕たちの撃破。そして、スフィンクスゲートに囚われている科学者・技術者の救出だよ。」
 その場がざわつく。敵拠点に一般人が拉致されている事もそうだが、それ程の事件にも関わらず関連した依頼に覚えが無い事が大きい。
「拠点に捕えられている科学者や技術者は、ペンタクルム・パール事件と同様に、特殊なゲートを使って拉致されてたみたい。対象者のすぐ近くに現れて捕まえ、すぐに撤退して、星読みの予知を掻い潜っていた感じ。"ペンタクルム・ゲート"は、今の所はこの技術を彼らの目的の為だけに使っているんだけど、星読みに察知される前に事件を起こせる特殊なゲートは、悪用されれば世界を揺るがす脅威だよ。
 世界の指導者たちを簡単に暗殺出来るだろうし、機密情報や重要物品も盗み放題…。この技術の流出を止める為にも、今回の事件は急いで対処する必要があるんだ。」
 一同、コルネリアが重々しく語っている理由を察したことだろう。それだけ危険で重要度の高い作戦と言うことだ。1度咳払いして切り替え、作戦進行の説明に入る。
「拠点の場所なんだけど、√ドラゴンファンタジーのサハラ砂漠だよ。スフィンクス型をしていて、拠点自体が強大な力を持つ魔法建造物になってる。
 皆が到着する頃には、この拠点の防衛に多くの敵が布陣しているから、まずはそれを撃破・突破して拠点に突入して。拠点の突入口は前方・後方・左右の4カ所。どこからでも侵入出来たらOK。
 内部にはいくつもの研究区画があって、技術者や科学者が強制労働させられているから、その救出をお願い。可能ならば研究データの奪取もしてくれると助かるよ。
 ただ、研究区画には"しっぱいさく"が配置されてて、技術者や科学者の脱走を防いでるの。救出の為には、"しっぱいさく"への対策も大事だよ。」
 コルネリアはここまで説明して黙り込んだ。心なしか少し震えている様に見える。少しの間を取った彼女は青ざめた顔で説明の続きを口にし始める。
「当然だけど、拠点に突入したら幹部が、担い手が待ち受けてる。以前の事件でも確認された『ペンタクルム・パール』と呼ばれる宝石の強化版を使って、自分に有利な戦場を創り出しその特殊空間に引きずり込んで戦闘を仕掛けてくる。
 わたしが詠めたのはそこまで…。担い手がどんな戦場を用意してるのか、分からない。だけど物凄く危険で、不利な戦いになるのは間違いない。十分に、準備と覚悟をして行って…。どうか、無事に帰って来て…。」
 祈る様に絞り出すコルネリアへ、EDENたちは頼もしい笑顔を残して出撃していった。

●奴隷労働
 移動神殿"スフィンクスゲート"はその名の通り、古代の建造物然とした外観と内装をしている。一方でその中を忙しなく動き回っている人々は近代的な研究者の出で立ち。そして彼らが扱うのは余りにも充実した最新のコンピュータや実験器材ばかり。特殊なゲートを利用して拉致し盗んだ最新最優の研究環境がそこには存在している。
 しかしながら、従事者たちは例外なく痩せ細り、足取りは覚束なく、薄汚れている。その中の1人がふらついて倒れると、醜い肉塊の様な者が背を打ち無理矢理立たせる。よくよく見渡せば、ぶたれた痕を残す者や、自分の衣類を破って包帯代わりにしている怪我人も少なくない。ここにいる者たちは暴力で強制的に研究、施設整備や復旧に従事させられているのだ。
 それは紛れもなく奴隷の扱いであった。

マスターより

HE・KA・10
 |HE・KA・10《へかてん》でございます。
 ペンタクルム・ゲート『祝福と呪詛の担い手』の第三弾となります。ついにコルネリアも宿敵旅団の存在をキャッチしました。今回は決戦です。

●第1章👾
 皆様の前に現われる集団敵は『狂信者』たちとなります。特筆することはありません。
 撃破して移動神殿『スフィンクスゲート』に突入してください。
 プレイングは断章公開後に受け付け開始となります。

●第2章以降
 現段階では不明です。各章、断章公開後に受付開始予定です。タグの受付期間や連絡事項にご留意ください。

●プレイングについて
 グループでの参加の場合は【グループ名】或いは【同行者名】の記入をお願いします。
 ※プレイング内容によっては採用が難しい場合があり、同行者記載があっても単独採用の可能性がありますので予めご了承ください。
 また、再送の際は内容を変更する事をオススメします。

●プレイング期間について
 タグにて締め切り日をお知らせしますので、随時ご確認頂けると幸いです。

 シリーズ物ではありますが、第一弾・第二弾に参加していなくてもご参加頂けます。ご興味を持って頂けたなら、どんどんご参加下さいませ!
 皆様のプレイングを心からお待ちしています!
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第1章 集団戦 『狂信者達』


POW 狂信の斧槍
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【狂信の斧槍】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【怪異への狂信により得た魔力】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
SPD 狂信の旗印
事前に招集しておいた12体の【狂信者達】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[狂信者達]全員の反応速度が半減する。
WIZ 狂信の炎
【教主】から承認が下りた場合のみ、現場に【魔力砲『信仰の炎』】が輸送される。発動には複数の√能力者が必要となる代わり、直線上の全員に「発動人数×2倍(最大18倍)」のダメージを与える。
イラスト すねいる
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●狂信の徒、奮い立つ
 移動神殿"スフィンクスゲート"は警戒態勢に入っていた。その周辺には幹部たちの配下が配置され、襲撃に来るであろうEDENたちを待ち受けている。もはや総力を上げての防衛戦の様相を呈しており、その戦力は多く侮り難い。そして、その中には当然、"祝福と呪詛の担い手"の配下も含まれていた。
『我らが主のご命令だ。皆、奮起せよ。』
 黒尽くめのローブに三角の被り物をした集団は、この砂漠の中で非常に目立っている。
 4人で1隊を構成し、組織立って動く様子は良く訓練されている事が分かる。そして、その集団の士気が高い事も一目瞭然だ。
 この"狂信者"共は星詠みの示した突入口を重点的に警戒している。激突は避けられそうもない。

『神も教義も偽りだった。しかし、神と崇めたお方は我らを拾い力の教えを下さった。今の我らは主を信奉する徒である!』
『主の為、主の為!』『楽園の守り手どもを寄せ付けるな!』『恩義に報いるのだ!』


○MSより
 ここまでご一読ありがとうございます。まずは集団敵との戦闘となります。上記のコメントでも述べておりますが、『狂信者達』は士気こそ高いですが特筆する事は何もありません。
 強いて挙げるなら、前作『神なるご威光の許に』を読んで頂けると思い入れが深まるのでは、と思います。

 状況的に、他のペンタクルム・ゲートシナリオで登場する集団敵も存在しますが、シナリオを越えて影響を及ぼすことはありません。突入口目指す皆様を見付けた狂信者達は向こうから仕掛けてくるので撃退し、移動神殿『スフィンクスゲート』に侵入して下さい。

 皆様のプレイングをお待ちしています!
アネリス・コーネリウス
[アドリブ/連携歓迎][POW]
一体一体が強くなくても、こう数がたくさんいて士気が高いとなると私みたいな新米冒険者には充分に脅威で……
でも中でひどい目にあっている研究者の皆さんのことを思えば、ここで立ち止まっているわけにもいきません
早急に撃破して移動神殿の中へと入らないと

卒塔婆に込めた霊力で戦います
相手の能力による先制攻撃は避けきるのは難しいかもしれないので、青嵐の[風使い]の力で少しでも軌道をずらさせてダメージを防ぎつつ
相手が隠密状態になられたら……こちらも√能力発動、敢えて外すことで私に有利な環境を作り出して相手を攪乱しつつ地道に卒塔婆でびたーんと攻撃していきます!

●数々の戦いを抜けて
「はぁ、はぁ…、こう数が多いと大変です…。」
 アネリス・コーネリウス(真紅・h09190)は額の汗を拭う。サハラ砂漠に降り注ぐ灼熱の陽だけが原因ではない。
 宿敵旅団"ペンタクルム・ゲート"の拠点である移動神殿"スフィンクスゲート"攻略の為、配置されていた配下たちと戦い続けてやっとここまで来たのだ。それは、最近|冒険者《√能力者》として覚醒したばかりの新米には厳しい戦場であった。
 だが、今も目前まで迫っているスフィンクスゲートの中では奴隷の如く酷い目に遭っている者たちを助けたいという気持ちが足を前に進ませている。いや、それはアネリスの中で確固とした物を形作り始めているのかもしれない。

『敵発見!かの者を始末せよ!』
 アネリスに次なる試練が課される。4人1組の黒尽くめの集団だ。言葉短に意思疎通して陣形を整え急速に迫ってくる。前衛に斧槍を構える者が2人、その背に片手剣、更に後衛としてランタンを持つ恐らくリーダー。新米冒険者のアネリスでも一目で分かる、士気と練度の高い相手である。
 アネリスは卒塔婆を握り締めて霊力を送り込む。その予備動作を察知したリーダーが『行け!』と指示を出すと斧槍を持つ2人が左右に分かれて跳ぶ。アネリスを挟み込む様に着地した2人、右手側は袈裟斬りの軌道で、左手側からは突きが来る。咄嗟に右手側に来た相手に中止していたアネリスは霊力の篭った卒塔婆で振り下ろされる斧槍を受け止めるが背から迫る槍には無防備だった。
 その時、アネリスの体を覆う様に疾風が巻き起こる。その風は突き出された斧槍の斧部分を押して軌道を反らせその穂先はアネリスの横の砂地に突き刺さった。それはアネリスが纏う"青嵐"と呼ぶ風の衣の加護であった。
 しかし、1つのピンチを脱しても状況は変わらない。2人の狂信者達は攻撃が失敗したと見るや即座に魔力を解放し風景に溶ける様に消える。その様にアネリスは戦慄する。が、ここまで戦ってきた経験が"止るな、動け"と命じ、霊力の篭った卒塔婆を山勘で振り下ろす。
 大振りなその一撃が当たることはなかった。が、それが良かった。卒塔婆は砂地に突き刺さりアネリスの霊力をその地に広げていった。それは砂に波紋を生み出し半径20mの範囲が俄に|騒がしく《・・・・》なった。
『うしろうしろ…。』
 背筋が寒くなる様なおどろおどろしい声にアネリスは従って卒塔婆を振り抜く。片手剣を振り上げた狂信者がいつの間にか迫っていたのだ。攻撃途中で無防備なその脇腹に霊力で強化された卒塔婆が叩き込まれて狂信者は武器を取り落として吹き飛ばされた。
「やった…っ!」
 1人目を倒してホッとした隙を隠密状態の狂信者が狙う、がその足下に流砂が生まれて砂の上に倒れ、人型の凹みが出来る。アネリスはきゃっと小さく悲鳴を出しつつも出現した人型の凹みに卒塔婆を叩き込んだ。
 そう、この20mの範囲の騒乱は、アネリスの味方だ。たくさんの霊や怪異たち、それらが騒がしく相手を混乱させる載霊無法地帯。これを咄嗟に作れたのは、冒険者としての明確な成長だったのであろう。

『なんとっ、させぬ、させぬぞ!』
 リーダーがランタンを掲げその火を炎として打ち出す。アネリスは深呼吸してその様子を見ていた。そして炎を引き付け、卒塔婆で打ち払い近くに迫って槍を突き出そうとしていた隠密状態の狂信者の方へと弾いた。燃え上がり姿を現した狂信者が倒れるのを尻目にリーダーに一気に接近、卒塔婆の連打をランタンで受けて粘られるが、下からランタンを打ち上げて返す刀で頭を殴打して決着が付いた。
「か、勝てました…っ。」
 集中を解いたアネリスはぽたぽた滴る額の汗を手で払って息を深く吐く。士気も連携もあった相手に勝てた事で自信が付いてきた気がする。が、それに酔いしれる暇は戦場には無い。目的のスフィンクスゲート突入口は近いのだ。むしろこの先が本番だ。
 アネリスは眼前に聳える巨大なスフィンクスに向かって走り出した。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

クラウス・イーザリー
(死んでも考え方はそのままか……)
或いは死を乗り越えてもっと狂信的になったのかもしれない
……やり辛いけれど、やるしかない
囚われた人達を助けるために、ゲート技術の流出を防ぐために

茨の蔓を操る魔法を使用
影から蔓を伸ばして敵の足や腕を拘束
動きを乱して連携を妨げ、その隙にダッシュで踏み込んでぶん殴って気絶攻撃
殺した方が早いなら、魔力を刀の形に錬成して居合で斬り捨てる

魔力砲は発射しようとする信者を拘束するか撃破することでそもそも撃たせない
撃たれそうになったら直線上から逃れて回避する

敵を突破して前方からの突入を試みるけど、数が多すぎるなら引き付けて蔓で拘束し、側面に回って突入
状況を見て突入箇所を決めよう

●消えぬ狂信の炎
 クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)は防衛網を突破しつつ移動神殿"スフィンクスゲート"に近づいていく。サハラ砂漠の砂は照り付ける陽で熱されクラウスの体力を奪っていくかの様だ。
 もちろん、熱砂での戦闘への備えは怠っていないクラウスである。しかし、出来る限り消耗を避けるのも兵法である。そこで、スフィンクスゲートが近づいてきたこの段階で突入口の精査をした。
。O(あそこが良さそうだ。)
 目を付けたのは、スフィンクスゲートを挟んで進行方向の先に太陽がある場所だ。突入方向を決めたクラウスは走り出した。

『貴様はっ!?全員構えろ!』
「まずい相手に見つかったか。」
 砂山を登り切った先で黒尽くめの集団と出くわしてしまった。そしてクラウスにはその集団に覚えがあった。
 4人1組で編隊を成し、ランタンを持ったリーダーらしき狂信者を中心に4人が"砲"の様な陣形になる。そのランタンに灯った火が激しく目映い"炎"に変化するのを見るなり、クラウスは手近な砂山の裏に飛び込んだ。その背後を凄まじい炎が駆け抜けて行った。
 素早く起き上がり砂山の反対側から狂信者共に向かって走る。対する相手は陣形を維持したまま下がる様にして再びクラウスにランタンを向ける。リーダーの背を支える2人が周辺を警戒し報告、リーダーの指示に従い最後尾が射撃方向を補助する。そして、リーダーの判断が合理的だ。以前戦った時はまるで素人だったが、それが見違える様だった。無論、それはクラウスにとって喜ばしい事ではない。

「何故ここにいる?あの男はお前たちの神じゃ無かっただろう!」
 射線を躱す為にジグザグに走り砂山があれば身を隠して近づきながら、気を逸らす目的で言葉を投げる。それに、あの時の狂信者共であるならば疑問があったのだ。
『我らを切り刻んだ悪魔め!今度は言葉で我らを刻むつもりか!』
 炎が砂山をぶち抜いて砂をガラス化させる。クラウスは別の砂山の影から飛び出し、狂信者共は照準を合わせながら後退する。
「ああ、お前たちが敵対するなら何度でも切り刻む!俺には囚われた人達を助ける任務がある!」
『はっ!何度もやられぬわ。あのお方は確かに神ではない。が、絶望の淵で手を差し伸べて下さった。戦い方も享受頂いた。我らはあの方を主と定めた。主の為に、今度は我らが貴様を燃やし尽くしてくれる!』
 クラウスは目を細めた。その考え方は、信仰の対象が"神"から"祝福と呪詛の担い手"へと変わっただけ、いや、死を乗り越えた事でより狂信的になった様に感じられた。なにより、あの大男から戦の手解きを受けたと言う事に驚きを隠せない。現に、狂信者共の連携と戦術眼は目を見張る程向上している。
「……やり辛いけれど、やるしかない。」
 これは自分に言い聞かせる様に呟く。敵の関係性に思う所が出たが、情に流されている場合ではない。それに、チェックメイトの時が来た。

「|茨の蔓を操る魔法《シュタルテン》!」
 ふいにクラウスは無防備に姿を晒す。それに反応して照準を向ける狂信者共。その"砲口"たるランタンの炎がクラウスを捉える。が、それが放たれる事はない。狂信者共は|背後《・・》から大量の黒い茨の蔓に襲われ巻き付かれ締め上げられたからだ。
「成長はした様だが、実戦経験不足だったな。」
 蔓に締め上げられて気絶する狂信者共の隣を走り抜けながら、つい言葉を掛けてしまった。日陰にはいると熱はいくらかマシになる。そうだ、クラウスはデタラメに入っていたのではない。巧みに巧みに、狂信者共をスフィンクスゲートが作り出す"影"の方へと誘導していった。そうしなくても撃破も突破も難しくはなかったが、この手間を選んだのは移動のついでと消耗を抑える目的があったからだ。経験の差は、簡単には縮まらないのだ。
 クラウスは眼前に迫ったスフィンクスゲートを見上げ、左右を確認する。守りが薄く、突破しやすい突入口を探し、そして足を止めること無く進み続ける。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

フォルゴトン・シヴィライゼーション
ほう。諸君は死を経験しても尚、彼を主と。
ならばなにもいうまい。
幾重の死をこれからも重ねるであろう諸君にひとつ、占いの真似事を提供しよう。

相手の攻撃は羅紗で受け流しつつ、【果なき理想の形】を羅紗に使用、接触を媒介にこれから三十数年分の歴史を羅紗に浮き上がらせる。
未来は不確定なので先端が分裂し、羅紗文字も大小様々に浮かぶなか、簒奪者側では無くなる、か細い可能性の未来を探す。

この場は倒さざるえないので極力一撃で焼却を狙う。

●狂信の炎、再び
 戦場を進むフォルゴトン・シヴィライゼーション(忘れられた文明神・h09429)。その前に見覚えのある一団が立ちはだかった。
『あの時の曲芸師!』
 それは先日戦い、1度葬った憐れな狂信者共だった。あの時も彼らはフォルゴトンの"火"を手品だと言っていた事を思い出した。
「奇遇、と言うには些か訳ありな場所で遭ったものだ。なぜここにいる?」
『決まっている。我らは新たな主を定めたからだ。』
 その言葉に、フォルゴトンは瞠目した。何故なら、あの時彼らが"神"と崇めていた祝福と呪詛の担い手は、手を貸さなかった。見捨てられていたのだから。
「ほう。諸君は死を経験しても尚、彼を主と。」
『貴様に敗れ、教団も教義も失った我らに手を差し伸べて下さったあの方に!』
 再びの驚きがフォルゴトンにわき上がる。担い手は彼らを救ったと?
 意外な出来事が連続して少しばかり精神を乱したが、ここは戦場だ。そして、そこでで敵同士として出会ったのならば、衝突は必須。
「ならばなにもいうまい。」
 フォルゴトンは静かに、"破壊の炎"を生み出した。

『前の我らと同じと思うなよ!』
 リーダー格の狂信者が火の灯ったランタンを掲げ、その背後に上から見ると菱形の密集陣になる様に3人が配置する。フォルゴトンはそこに、"砲"の存在を感じ取った。今度はその力を確かに渡されていた様だ。
 然りとてこちらもやられるつもりはない。詠唱の言葉を呟き"文明の火"を喚び出す。同時に身に付けた羅紗へと魔力を注ぎ込む。2つの火に照らされて羅紗の文字が発光し、蛇の如く宙へとその首を上げる。
「幾重の死をこれからも重ねるであろう諸君にひとつ、占いの真似事を提供しよう。」
『ほざけ!我らが炎を受けてみよ!!』
 ランタンの火が燃え上がり炎が噴出される。狂った信仰心を糧として燃え盛り進路上のものを燃やし尽くす"狂信の炎"がフォルゴトンに迫る。その場を動かず、羅紗に文明の火を放つと文字の輝きが増した。そして目前の"狂信の炎"に巻き付く様に受け止めそ軌道を逸らす。
 "文明の火"の影響で羅紗は革新していく。羅紗は数百世代にも渡る知識が織り込まれ、継ぎ足されて作られている。であるなら羅紗の革新とは?それは"未来予想"である。羅紗はそれを成す為に"狂信の炎"を少しずつ取り込んでいく。"狂信の炎"は扱う者たちの信仰心、すなわち、彼らの心も同然。その情報を読み取って文字が伸びていく。そこに書かれているのは狂信者たちの今後三十数年分の歴史だ。しかし、それは予想であるが故に不確定であり、多くの分岐が発生して文字の大小も生まれる。その歴史予想が狂信者共を包み込んだ。
 彼らにそれはどの様に見えていたのだろうか。決定的な破滅か、それとも終わらない死と再生の人生なのか、あるいは、欠落したものを取り戻したのか。それはフォルゴトンとて知る事は出来ない。

「君たちにはどの様な未来が見えたか、それは次回に聞かせてもらおう。」
 フォルゴトンは静かに破壊の炎を解き放つ。羅紗の文字を伝うその炎は、歴史予想に包まれる狂信者共に伝播し、慈悲深く一瞬で燃やし尽くした。
「さて、進もうか。」
 羅紗を戻したフォルゴトンは、視界に大きく映っている移動神殿"スフィンクスゲート"へと歩を進めた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

和紋・蜚廉
ほう。
まさか、√を跨いだ狂信を持っていたとは。
共感できるものでは無いが、感心は覚える。

良かろう。
懲りぬのなら何度でも、
その信仰を打ち砕こうではないか。

翅覇域による飛翔。
半減している反応速度に、この翅の軌跡を追う事など出来まい。

殻突刃を腕部より生やし、飛翔のすれ違いざまに信者達へと斬撃を繰り出す。

密集の取れていない者達を追い込む様に、
一塊に集まるまで誘導を仕掛けよう。

守りを固め、正面から打ち据える体勢を取った瞬間こそ好機。

既に速さは十分に高まっている。
脚部の先、分かたれた足尖より鋭さを増した殻突刃を備えて飛び込み、
重量攻撃も加えた一撃を与えよう。

信仰を砕くならば信念で。
意志の下に倒れるがいい。

●意志を推し量ること
『集え集え、この者を打ち倒すには数が要る!』
 ランタンを高く掲げ号令を出すリーダーと共に狂信者共が和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)の前に立ち塞がる。その気配や匂いから、以前に倒した者たちだと悟る。尤も、少しは兵法を学んだ様子だが。
「ほう。まさか、√を跨いだ狂信を持っていたとは。共感できるものでは無いが、感心は覚える。」
『抜かせ。前の様にはやられぬ!』
 それぞれに武器を構える狂信者共。蜚廉は息吹と共に構えて、甲翅と薄翅を開き地を蹴る。一番左端の狂信者の背後のインビジブルを捉え入れ替わる。後、すぐさま手刀を繰り出す。その狂信者は反応出来ず無防備だ。その手刀が首筋を、と、横合いから槍が突き出され甲殻籠手で守られる腕を弾く。
「なるほど、少しは視野が広がったか。」
 少し離れた場所の狂信者が背後をカバーしていたようだ。素人でしか無かった前回とは確かに違うらしい。だが戦いは点ではなく、線である。
 蜚廉は一番遠くの狂信者の背後にインビジブルを見いだし再び入れ替わる。そして次は攻撃せずに反応した狂信者を見極めそこに襲いかかる。翅を開き宙を走るその速度は瞬間移動と見紛う程だ。腕から殻突刃を生やしながら脇をすり抜け様に首筋を斬る。短い悲鳴と共に1人目が倒れた。
 その速度のまま離れた場所にいる1人に斬り掛かる。しかし偶然か構えていた片手剣に阻まれてしまった。気にせず翅を動かし反転、密集の取れていない狂信者を狙って追い立てる。
『ぐ、いかん、固まれ!互いの背を守れ!』
 密集の中心でリーダー格が指示を出す。それに従い狂信者共は後退しつつ一箇所に集始める。そう、蜚廉が敷いた"翅覇域"の中央へと、狂信者共は誘導されていった。
 その間にも手を緩める蜚廉ではない。翅覇域の効果で徐々にその速度を上げながら反応の鈍い相手から仕留めていく。狂信者共はめまぐるしく飛び回る蜚廉を視界に捉える事さえ出来ていない。
 ついに狂信者共はぴっちり肩を押しつける程の密集隊形になった。この時を待っていた。蜚廉は殻突刃の生えた両腕を交差してドリルの如く回転して集団の中心に狙いを定める。
『背を預け円陣を組め!武器を前方へ!』
 リーダーの号令で更に陣形が狭まる。そして全方位へ向けて槍や剣が突き出された。
「ぬ?!」
 さすがの蜚廉もそこに飛び込めば無事では済まない。回転を止め一瞬浮遊する。そこで、リーダー格と目が合った。
『そこかっ!我が炎を受けてみよ!』
 掲げられたランタンの火が射出された。蜚廉は回避しながら後退を余儀なくされる。

「なるほど、ただの狂った信仰とは違う、と言うことか。」
 今までのやり取りで狂信者共は"神"に祈る事も、担い手に縋る事もしていない。だが、担い手の脅威となる自分を排除するというその一心で戦っているのを翳嗅盤が嗅ぎ取っている。
 恐らく、担い手を崇めているのは変わっていない。狂信的なのも間違いない。1つ違うのは、"己の意志"で進んでいると言うこと。
「信念を得たか。だが、信念ならば我に負ける道理はない。」
 信仰心を信念へと昇華した狂信者共に対する自身の信念、それは、他者と共に歩み生きるという信条だ。望みが多い程、絆が多い程、爆発的に力を増す。
 蜚廉は再び狂信者共へと挑みかかる。狂信者共は武器を前に差し出して待ち受ける。敵集団にぶち当たる直前で蜚廉は真上に飛び上がる。一瞬遅れてリーダーが気が付き炎の魔弾を撃ち出す。
「意志は意志にて、我が信念の元に倒れるがいい。」
 蜚廉は上空で反転、つま先にあたる足尖から錐の如く殻突刃を伸し回転しながら垂直落下、魔弾を弾き飛ばして集団の中心部に着弾・炸裂、その場にクレーターが穿たれた。
 クレーターの底から飛び上がって着地した蜚廉は振り返る。
「何度立ちはだかろうと、打ち倒すのみ。」
 クレーターの縁を滑り落ちる砂に埋もれゆく狂信者共に言い残して、移動神殿"スフィンクスゲート"へと急ぐのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ディラン・ヴァルフリート
「力の教え……
その新たな主も……毎度……敗れているようですが?」
狂信者の愚行も忠義や献身なるものと大差無く思いますが
嘗て聞いた記憶によれば別物だそうですね
何にせよ、ある種のテンプレートな集団に今更構う事も無いでしょう

装備[竜眼]《霊視50》全方位知覚で死角を潰すと共に隠密対策
不慮の展開に備え《第六感50》常時警戒
敵攻撃には《早業50》反応速度と《オーラ防御55》で対処

【影刻】見えざる刃
敵√能力が反応する場合も跳躍直後の隙を
他の影竜の刃や《怪力150》で狩って進みます

「大切なものの為に争う事はあれど……
他者のそれを理解もしないのは下の下……と言うのでしたか」
どうせ踏み躙るなら何の違いがあるのやら

●空虚さの中と外
 ディラン・ヴァルフリート(|義善者《エンプティ》・h00631)は無感情な瞳を左右に向ける。移動神殿"スフィンクスゲート"まであと少しの所で黒尽くめの集団に囲まれたのだ。それは星詠みの話に聞いた"狂信者たち"なのだろう。
 なんでも、幹部の1人に拾われて訓練を受けていたとか。敵も酔狂な事だと心の中で|感心する《呆れる》。そもそも、狂信される程の執着と言う物がどうにも…。
「力の教え……。その新たな主も……毎度……敗れているようですが?」
 腹の中でぐるぐる回る感情を表情には出さなかったが言い回しに表れてしまった。どうにもこの"言葉"という物は厄介だ。
『ふん、貴様も掃いて捨てる程いる連中の1人だな。構わん、やるぞ。』
 何故か鼻で笑われる。そこまで可笑しな事だったのか?おまけに聞き捨てならない事言葉があったが…。何にしても、相手はやる気なので軽く倒して終わらせよう。
 ディランは大剣"Fate/至斬傑牙"を手に取る。

 武器を手にした瞬間に狂信者たちの数人が飛び掛かってくる。上下左右に分かれて各々の武器を振りかぶる。左側に大剣を翳して姿を隠し、右側下から来る相手の前に影竜を召喚、右側上の相手には"Force/錬気竜勁"を纏った拳を繰り出す。拳は斧槍の柄で受け止められるがディランの怪力を受け止められず大きく吹き飛ばされる。片手剣を持って下から攻めてきた狂信者の前に現われた影竜はその|牙《見えざる刃》でその身を切り刻む。
 大剣に阻まれた狂信者は魔力を纏って姿を消すが、その瞬間を感知していれば魔力を追う事は容易い。背後に回り込んで斧を振り上げた所に力任せに振り回した大剣の腹を叩き付け影竜の口へと放り込む。
 ディランは直感的に横っ飛びして影竜の中へと潜り込む。先程までいた場所が燃え上がる。ランタンを持った狂信者の魔法だった。さらに飛び込んだ先の影竜に刃が突き刺さる。影は霧散したがその場に居るはずのディランの姿はない。それに驚く気配と共に風切り音がその場を薙ぎ払い、狂信者2人の首を刎ねる。別の影竜から半身だけを出したディランの大剣による攻撃だった。

 心中で溜息が止らなかった。先程の一瞬で圧倒的な差を見せたというのに、狂信者たちの士気は衰える気配がない。それはとても気に入らない事だ。これでは狂信故の愚行というよりは忠義や献身といった美談の様ではないか。
 ここまで考えて再び溜息を心中で漏らす。嘗て伝え聞いた話の上では別物らしいが、大差ないではないか、と。馬鹿馬鹿しい、構う必要もあるまい。
 相手に影竜に対抗する力は無い。単純な力でもこちらが上。無理せずに逃げれば良い物を。いや、折角ならそのまま殲滅させてもらおうか。

「大切なものの為に争う事はあれど……。他者のそれを理解もしないのは下の下……と言うのでしたか。」
 あっという間に戦いは終わっていた。空しい物だ。ならば、勇者らしい言葉を置いて先に行くか、そんな考えで出した言葉だった。
『…く、ふ……ふふ…。自己、紹介だな……。!?』
 片手で口元を隠し、足下に転がっている狂信者に大剣を突き立てた。
 "自己紹介"、その言葉がやけに面白く、そして苛立った。思わず体裁を崩してしまう所だった。言い得て妙だ。どうせ踏み躙るのだから、そこに何の違いがあるのやら。
 不意に沸いた邪魔な|物《感情》をゆっくり吐き出し、空虚の仮面を被り直した。すでにスフィンクスゲートは目前である。ディランは神殿の突入口へと向かう。その心中はすでになんの感傷もなくなっていた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

真白・漆黒
『担い手』とは敵対するのはこれで三度目になるのか……。
しかし既に一般人に被害が出ているとはな……。一刻も早く科学者や技術者達を助けなければ。
とりあえず落ち着いて、こういう時ほど冷静に……だったな。

『レギオンスウォーム』をの探知を使って、より安全に突入できそうな経路から潜入しよう。

あなた達はあの時の……!?
そうか、あなた達が自分の意志で信じる相手を決めたというのなら|我《俺》も全力で戦うまでだ!

全力で掛かって来るのなら、此方も全力で|貴様達《・・・》と戦わせて貰おう!
『レギオンスウォーム』や[戦闘技能]を使って全力で戦う。
連携攻撃に注意して、こちらもレギオンとの[連携攻撃]を重視して油断せずに。

●覚悟を持って駆け抜けろ
「次は10時方向へ、だな。左翼、接近してくる相手に煙幕を撃て!」
 真白・|漆黒《ブラック》(|漆黒の支配者《ダーク・ルーラー》のジェネラルレギオン・h09483)は、展開しているレギオンたちからの索敵情報からここまで最小限の消耗と最短の時間で駆け抜けてきた。
 それは宿敵旅団"ペンタクルム・ゲート"がいつの間にか拉致していた多数の一般人の救出も作戦目標にあったからだ。時間が掛かる程に、技術者・科学者の人々の状況は悪化するのは明白で、それ故の焦りもいくらかはある。
「いけない。とりあえず落ち着いて、こういう時ほど冷静に……だったな。」
 熱くなりかけた頭を、深呼吸して冷ます。あの時の教えは確実に|漆黒《ブラック》の力になっている様だ。
 そして考えるのは移動神殿"スフィンクスゲート"の中で待ち受けて要るであろう"祝福と呪詛の担い手"の事だ。今回で3度目となる。もう1つ気になるのは、星詠みから聞いた、担い手がスフィンクスゲート防衛に当てている配下の存在…。
 レギオンからの警告に気が付いてその場から飛び退く。飛来した炎が砂をガラス化させながら一直線に奔った。索敵範囲を広げておいて正解だった。
 起き上がりながら炎の飛来方向を確認する。そこには菱形陣形でランタンの火をこちらに向ける黒尽くめの集団がいた。レギオンたちが一斉に牽制のミサイルを放つ。黒尽くめの集団、狂信者共は陣形を維持したまま鮮やかに後退していく。そして先頭でランタンを持つ者が声を張り上げた。
『貴様は|漆黒の支配者《ダーク・ルーラー》の小僧!ここで遭ったが百年目!』
「あなた達はあの時の……!?」
 思わず素に戻ってしまった。

「何故あなた達がここに?」
『決まっている。我らが主の力となる為だ!』
 どこかしらそんな予感はしていたが、実際に遭って彼らの口から聞くと、あの時の事が思い浮かんでしまう。もしも|担い手《神》に縛られているのだとしたら自分たちがやって来たことは何だったのか…。
「あなた達が信じる神などいない!現に助けてくれなかっただろう。」
 レギオンミサイルを避けながらランタンを向け続ける狂信者共の射線から逃れる様に走りながら言葉を交わす。敵なのは分かっているが、背景を知っている分やはり倒したくない気持ちが自身を迷わせている。
『我らに神はいなかった。だが、主は路頭に迷う我らを拾い、死しても蘇るこの身での生き方を説いてくださった。人間だった時に我らに手を差し伸べる者はいなかった。だが主は違う。我らは我らの意志で主に従う事を決めたのだ!』
 菱形に配置したその陣形は"砲"。|漆黒《ブラック》の体に流れる血がその魔力の高まりを感じ取っている。それは、狂信者共の信仰心を炎に変える魔力砲"狂信の炎"である。
 ランタンの火が向けられる。灯された火が激しく燃え上がり前方に放たれる。射線上のレギオンたちは大慌てでその場を飛び退き、|漆黒《ブラック》もまた横に飛び込んで回避する。その砲は上位の者の許可が必要だったはず。前回はそれを無視されていたが、今回は使えている。つまりは、彼らは憐れな信者のなれの果てではなく、祝福と呪詛の担い手の配下となったのだと悟る。

 |漆黒《ブラック》はマントを翻して立ち上がる。右の手指で顔の左半分を覆う様に隠し、右目だけで狂信者共を睨み付ける。
「そうか、自分の意志で信じる相手を決めたというのなら…、|我等《・・》も全力を尽くして|貴様《・・》達と戦おう!レギオン達!」
 切り替えた|漆黒《ブラック》の指示でレギオンたちが一斉に陣形を整える。それぞれがミサイルを装備して左右に広がり包囲する。その動きは狂信者共を攪乱し一瞬照準に迷わせる。|漆黒《ブラック》は氷銃・フェンリルを抜き打ちランタンの火を凍らせる。同時にレギオンたちが一斉にミサイルを放つ。最初の数発は途中で爆発して煙幕となって視界を塞ぎ、残りのミサイルがその中に殺到する。小爆発の音を聞きながら|漆黒《ブラック》は素早く近づく。煙幕が晴れ、ダメージを受けながらも這い出てきた狂信者に氷銃を突きつける。
「悪いが眠る時間だ。」
『…無念。』
 氷銃をホルスターに収めて|漆黒《ブラック》はマントを翻えす。その視線の先にはスフィンクスゲートの突入口がある。その奥にはたくさんの一般人が今も苦しめられているのだ。そして、倒すべき幹部もいる。
 |漆黒《ブラック》はどんな困難や強敵も乗り越える決意を固めて、突入口に向かって駆けて行ったのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

静峰・鈴
数多の方々の活躍により、斯くして路は見つかりました
狂信、狂気、悪意によるペンクルムという災いの元へ
ならあとは、ただ真っ直ぐに想いと共に駆け抜けるだけです
災禍の爪痕が刻まれることのないよう、夜帳の巫女としての務めを――いざこの刃を以て

「誇れある先陣、その切っ先となりましょう」

【明澄】を発動させ、いざ突入口へ
私が正面から挑み、活路を切り拓けば後に続く方や隠れ忍ぶ方とて有利となるはず

狂信者を見つければ、果敢にと鞘より『夜帳』を抜いて挑みましょう
「神、教義、信仰――そこに異論はありません。ですが、無辜なる人々を傷つけるのなら、それは禍津神でしかないのです」

それらを斬って鎮めるのも、また私の務め

破魔を宿した刃で斬り捨てて参りましょう
敵は複数
視界に捉え、更には第六感で捉えながらの【転韻】
フェイントにより加速と減速を織り込んだ足捌きで相手を惑わし、攻められればカウンターでの『燕返』、そこから魔力砲に近付く者へと早業での跳躍からの『逆風』と繰り返し続けます
留まることなく活路を切り拓く一刃となりましょう

●竜頭麟尾
ーーーーー開戦直前まで時間を遡る
 遠くに佇む移動神殿"スフィンクスゲート"、その周辺に展開していく様々な敵たち。それらを小高い砂丘から見下ろしているのは黒の壷装束に身を包む少女だった。
 その胸の内に己が使命への矜持を抱きこの戦場に誰よりも早くやって来た。
「数多の方々の活躍により、斯くして路は見つかりました。
 狂信、狂気、悪意によるペンクルムという災いの元へ。ならあとは、ただ真っ直ぐに想いと共に駆け抜けるだけです。」
 凜と響く声で呟きながら徐に装束をはだけて脱ぎ捨てる。嫋やかな指が市女笠に掛かり、顔の前に向かって引くと虫の垂衣がするると輪郭をなぞる。そのまま笠は足下に落とされた。
 顕わになった射干玉の艶やかな黒髪をさらりと背の方に掻き上げる少女・静峰・鈴(夜帳の刃・h00040)のその身は黒き巫女装束を身に纏っている。
「災禍の爪痕が刻まれることのないよう、夜帳の巫女としての務めを――いざこの刃を以て。」
 鈴は腰に帯びた霊刀・顕明剣『夜帳』を引き抜く。剣舞の様に流麗に一振り、二振り、後に静止。鈴はこれから向かう戦場を今一度見下ろした。
「誇れある先陣、その切っ先となりましょう。」
 構えた夜帳の刀身が陽を受けて月光の如き輝きを放つ。

ーーーーー時は進みスフィンクスゲート目前にて
 鈴はこの激戦の中を駆け抜けていた。途中、仲間との共闘で大軍を下し、背を任せて1人ここまで来たのだ。砂漠の熱と駆け抜けた距離は、鈴の体力を奪いその繊細な白肌には汗が滲んでいる。
 そんな鈴の前には最後の関門とばかりに立ちはだかる狂信者たち。彼らは背に突入口を守っている。
『この先には進ませぬぞ。』
 総勢13人の狂信者たちがそれぞれに武器を構える。その様子は統制が取れており士気も高い。
 鈴は柳の構えを取る。それを見た斧槍を持つ狂信者たちは跳躍して距離を詰める。そして斬り下ろしと突きが同時に繰り出される。鈴はその動きを静かに見切り、一歩左足を引いて槍の軌道から逸れ、夜帳の刀身で斧を受け流す。斧の擦り流し先には突き出される穂先があってお互いにかち合い隙が生まれる。そこに陽を受けて煌めく月光が奔る。鈴は鮮やかに鋭く狂信者2人を瞬時に斬り伏せた。
 しかし狂信者たちはまだ存在する。いや、存在しているはずだ。何故なら、最初に飛び掛かってきた人数が合わないのだ。鈴は冷静に視線を巡らせる。周辺から聞こえる激しい戦闘音に交じって、微かに聞こえるのは砂を踏む音。それに気が付き目線を下にやると、今正に靴の形に沈み込む砂地。
 鈴は後方へ跳びつつ柳の構えから夜帳を真上に振り抜く。金属同士のぶつかる音がして、先程の足跡の近くに別の足跡が生まれる。
「そこです。」
 着地と同時に振り上げた夜帳の刀身を翻しながらの跳躍、宙を風の様に舞って斬り落とす。手応えあり。足を止めずに向きを変えて後方へ跳躍すると魔力で姿を消していた狂信者が姿を現し倒れ伏した。
『く、もう背にはスフィンクスゲート…、皆、ここが正念場だ。我らの主の為に奮戦せよ!』
 リーダー格の狂信者がランタンから炎の魔法を打ち出す。鈴はそれをひらりと回避して再び天高く跳躍、月明かりの如き輝きの刀身を閃かせリーダーに振り下ろす。その刃は惜しくも片手剣を持つ狂信者に受け止められる。鈴は着地と同時にすぐさまその場を離れる。
「神、教義、信仰――そこに異論はありません。ですが、無辜なる人々を傷つけるのなら、それは禍津神でしかないのです。」
 目の前に立つ彼らはその胸に危険な神への信仰と教義を抱えている。それは人心を惑わせ狂わせ、世界に災いを齎す。そんな悪しき存在を鈴は許さない。
「それらを斬って鎮めるのも、また私の務め。」
 着地地点に目をやる。そこに向かって生み出されていく足跡を認め空中で身を翻す。身を捻って地面と垂直に一文字で切り上げる。金属音と手応えと共に片足だけ着地しそれを軸に左逆袈裟に斬り上げる。破魔の霊力を宿した霊刀は狂信者を斬り鎮めた。

 鈴の戦は舞い踊る様に、宙に跳ね、地で回り、夜帳の刀身に宿る月光の線をサハラ砂漠に引いていく。美しい剣技に心を惹かれた者さえ居たかもしれない。鎮魂の剣舞さながらの技の前に狂信者たちは次々に斬り鎮められていった。
 飛来する火の魔法を体をずらして避けながら踏み込み霞に構える。残るはランタンを持つリーダーのみ。鈴は夜帳を突き出す。相手はランタンで突きを受け横っ飛びして逃れ様とする。逃すまいと夜帳の切っ先をランタンに押しつけたまま体の方を引き付ける様に踏み込み、小さく後方へ跳ぶのと同時に振り上げる。突如力の方向が変わった事で対応出来ずに狂信者はランタンを弾き飛ばされる。一方、鈴は動作の流れで八相の構えを取りながら着地する。チャキ、と夜帳を手の中で回転させて刃を相手に向ける。
「その路、押し通らせて頂きます。」
 ふわり、という表現が似合う程に軽やかに舞い上がった鈴の剣戟が最後の狂信者を斬り、荒ぶる魂を鎮めた。

 残心と共に夜帳を鞘に収める。
 狂信者たちを降した事で、その背に守られていた突入口への障害が無くなった。この先には密かに拉致され強制労働を強いられる者たちが囚われている。
 そして、強力な幹部も控えている事だろう。しかし鈴はそれを恐れはしない。災いがこの世に訪れる事が無い様に鎮める事が使命であり、誇りなのだから。
 額の汗を拭って鈴はスフィンクスゲート内部へと進んで行ったのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 冒険 『スフィンクスゲートに囚われた一般人の救出』


POW 研究区画を徘徊する『しっぱいさく』を撃破する
SPD 研究区画の一般人の避難経路を確保、安全地帯に脱出させる
WIZ 一般人が行っていた研究について、調査を行う
√ドラゴンファンタジー 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

●移動神殿『スフィンクスゲート』内部では
 宿敵旅団『ペンタクルム・ゲート』の敷いた防衛網を突破しスフィンクスゲートへと侵入したEDENたち。身を隠しながら慎重に内部を探索する彼らは、所々で蠢く様に移動している『しっぱいさく』の姿を目にする。星詠みの説明にあった科学者や技術者の脱走を阻止する為に配置されたのがこいつらなのだろう。すなわち、この『しっぱいさく』が徘徊する場所に拉致された人々が居ると言う事だ。
 スフィンクスゲート内部は大まかに区画分けされた構造をしていて、それぞれに別の機能を集約している様子だ。時間的な余裕を鑑みると、回れる場所は多くは無い。しかし、『しっぱいさく』の動きや反応は決して良くない事を考えれば、出し抜く事も倒す事も難しくはないだろう。少しなら相手の情報を持ち帰る事が出来るかもしれない。
 そう考えるEDENたちは、ついにボロボロになって働かされている人々を発見したのだった。


○MSより
 第1章お疲れ様でした。移動神殿『スフィンクスゲート』に侵入成功です。第2章もよろしくお願いします。

・シナリオの目的
 科学者や技術者(一般人でOKです)を救出する事。

・情報収集について
 1プレイングに付き、得られる情報は1つとなります。どこで、どんな情報を、どうやって、入手しようとするか。それが重要になります。
◯追記
・行動について
 内容を絞ることをお勧めします。多くの事に手を伸ばしても全てが採用されるわけではありません。
アネリス・コーネリウス
私は科学者の皆さんの救助に向かいます!
戦闘している味方の合間を縫うようにして走り要救助者のもとへ
動けますか、大丈夫ですか
……苦いけど即効性は確かなスティック仙丹顆粒も持ってるので、良かったらこれ飲んでください
多少の元気は出ると思いますから……救助された暁にはおいしいものたべてくださいね

避難誘導している間も警護のために卒塔婆は握りしめておきます
『しっぱいさく』が研究者を狙うようなら[先制攻撃]でかばい
自身が負傷しても冷静に卒塔婆による攻撃を決め、√能力での回復を試みましょう
余裕があればどんな研究をさせられていたのか研究者さん達に直接聞きたいところですが、まずは避難最優先で動きましょう
静峰・鈴
『しっぱいさく』などと
確かに生きている存在へと向ける言葉ではありません
逆にいえば、それほど非道なる者達が行った研究、邪悪な道のり
阻む為にも、いざ参りましょう

研究者たちを護るよう立ち【散華】
破魔の気を宿すことによって、構えた夜帳の切っ先からおおよそ45Mの範囲に飛翔する斬撃を放ちつつ安全の確保
また2回攻撃と早業で翻すことで牽制へと致しましょう

避難を促しながら私が訪ねたいのは、この『しっぱいさく』達に何を求めていたのか
例をあげれば次元を渡る術や、悪意を集める能力――付与しようとた能力、設計の意図
研究者たちなら少しは分かるかもしれませんし
立ち合う中で、付与しようとした能力設計に気づけるかもしれません

●囚われた人たちを守り抜け
「居ました、あそこです!」
「私が引き付けます。一般人の方々の保護をお願いします。」
 アネリス・コーネリウス(真紅・h09190)は通路の角を覗き込み、その奥に閉じ込められている数人の科学者や技術者と奇妙な形をした肉塊を2つ見付けて隣を奔る静峰・鈴(夜帳の刃・h00040)に声を掛けた。
 鈴は返事と共に霊刀・顕明剣『夜帳』を鞘から引き抜いて肉塊・"しっぱいさく"に斬り掛かる。一般人の方を向いていたしっぱいさくは反応が遅れて浅く斬り付けられながら通路の左右に分かれる。アネリスはその一瞬の隙をついて通り抜け一般人の元に辿り着いた。

「動けますか、大丈夫ですか?」
 背後を警戒しつつ素早く一般人たちの状態を確認する。皆それぞれに打ち身や痣が浮かび痩せ細って弱っていた。
「すぐに動いてもらうのは難しそうです。少しお時間作れますか?」
 アネリスはしっぱいさく2体と対峙している鈴に声を掛ける。鈴は軽く顔を向けて首肯した。それに頷き返して羅紗織りのミニポーチからスティック状の包みを取り出した。
「スティック仙丹顆粒です。多少ですが元気が出ますよ。……苦いけど即効性は確かなので、良かったらこれ飲んでください。」
 一般人たちは受け取った包みから粉末状の仙丹を飲み下す。皆一様にすごく顔を顰めた。
「救助された暁にはおいしいものたべてくださいね。」
 アネリスは務めて笑顔を見せて一般人たちを安心させた。

 一方、鈴は自らの身を壁にして背後にアネリスと一般人たちを庇う様に戦っていた。
「『しっぱいさく』などと。」
 目の前に立ちはだかる2体の肉塊を見据えながら、それらが受けた研究とそれを成した非道な者たちとその邪悪な道のりを思っていた。これもまた、夜帳の巫女として阻み鎮めるべき相手だと気を引き締めた。
 何度か斬り込みながら"しっぱいさく"の一挙手一投足を観察する。これらはこの場での実験の結果なのだとすれば、その設計に何らかの意図を読み取れるかと思ったのだ。
 ふと、しっぱいさくたちが同時に吠えた。鈴はそれに良く無い何かを感じて攻めに打って出る。右側のしっぱいさくの胴体を横に薙ぐ。そこから血の様な赤い液体が溢れ出し通路を浸していった。
 ぞくりと肌が粟立つ。それが何かに気が付きそうになった時、背後から絶叫が聞こえた。

「ど、どうなっているのですか?急に怯え出しました!」
 スティック仙丹顆粒が聞き始めたぐらいのタイミングで、しっぱいさくの咆吼が聞こえて一般人たちは硬直し、次に通路から流れ込んできた赤い液体を見て彼らは絶叫した。ある者は部屋の隅に蹲り、ある者はその場で頭を抱える。これは恐慌状態だとアネリスは察した。取りあえず近くの科学者を宥めながら、どうすればいいのかと思案を巡らせるが良い手が思い浮かばなかった。
「迂闊でした。この場を早く離れた方が良さそうです。片方を倒しますから、その隙に皆様を連れて脱出を。」
 鈴は霊刀を構えて気を集中させ始める。アネリスは鈴の作ってくれるだろう隙を信じてとにかく一般人たちを宥める。何かないかとポーチを探ると、キャンディが出てきた。それを握り締めて、アネリスは一般人たちを一所に集める。
「これをどうぞ。緊張した時に舐めてると不思議と落ち着きませんか?」
 明るくクエストを説明する時の様に笑顔で語りかけながらエナドリ味キャンディの包みを剥いて自分の口に放り込む。恐怖の蔓延するこの場において、そのファンシーな包み紙と柔らかい笑顔は宥めるのに効果的だ。
 アネリスは1人1人にキャンディを渡して勧める。全員が口に入れたのを見計らって卒塔婆を取り出す。
「これからあの怖いのを抜けて逃げます。着いてきてください。安心してください、私も戦えますので!」
 卒塔婆をぎゅっと握るアネリスに一般人たちは少しだけ微笑んだ。

 鈴は破魔の気を宿した夜帳で攻め立てる。もはやその生態に何かを見いだしている余裕はない。しっぱいさくは動きが鈍く反撃も単調で対処はしやすいのだが、恐ろしくタフだ。斬撃で傷が付くものの効いているのか分からない。
 ならば、大技にて一気呵成に仕留めるのみ。鈴は夜帳を大上段に構えて気を練る。破魔の気が夜帳の刀身に宿って淡く光を放つ。
「鳴りて舞いなさい、散華の太刀。」
 夜帳が縦一文字に振り下ろされその斬撃の軌道が光波となってしっぱいさくに命中する。鈴は間髪入れずに振り抜いた夜帳を斬り上げ、再び光波が奔る。2条の剣閃により1体は体の中心から破断され破魔の力で消滅する。2体目は右半身が同じく消し飛び転がる。通路上の赤い液体も蒸発し通り抜ける隙間が生まれた
「皆さん、今です!」
 すかさずアネリスは一般人たちを促して脱出を試みる。先頭を進み2体目の横を通り抜けようとした瞬間だった。右半身を失い倒されたと思われたしっぱいさくが左腕を伸してきたのだ。アネリスが卒塔婆で必死に受け止める。背には守るべき一般人たちがいるのだ、下がる事は出来ない。その時、アネリスを風が包む。それがいっぱいさくの腕を押し返し始め、隙が生まれた。
「ええーい!!」
 卒塔婆を真上から打ち下ろして腕を叩き落とす。そこに鈴が夜帳を一閃、首を落とすとしっぱいさくはついに動かなくなった。

「や、やりました…。」
「いえ、脱出するまで油断は出来ません。私が先導しましょう。」
 鈴は油断なく夜帳を構えて鈴は一般人たちの先頭に立って元来た道を引き返し始める。アネリスも最後尾に付いて周辺を警戒し協力して進む。時間も掛かり、騒音も響かせているのだ。急いで脱出する必要がある。
 1つだけ気になった事がある鈴は、移動しながらすぐ後ろにいる科学者に一言質問をしてみた。
「先程の怪物、『しっぱいさく』との事ですが何か知っていますか?」
「す、すまない、あれは我々が連れてこられる前から居たから何も分からない…。」
「そうですか…、ありがとうございます。」
 立ち会いからでも、能力や特性から得られる物は見付けられなかった。少しばかり気分が落ちるが今は脱出中。気を引き締め直して前方を警戒しながら一団を率いて、なんとか見つかる事無く脱出に成功したのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

クラウス・イーザリー
(どうにか出し抜けそう……かな?)
しっぱいさくの動きを見てそう考える

花雫を使って行動
目立たないように潜入し、しっぱいさくの監視を掻い潜りながら進んでいく
発見されそうになったら適当な物を遠くに投げて物音で意識を逸らす

「助けに来ました。大丈夫ですか?」
研究者のもとに辿り着いたらまずは声を掛けながら状態を確認
それから、周囲に敵をの気配が無いことを確認してから研究者に研究の内容を聞き、パソコンなどがあれば並行してハッキングで情報を抜く
あまり時間はかけられない
焦らない程度に急いでやろう

最優先事項は救出だから、研究者が危ない状態だったり敵が来るなどのアクシデントがあれば研究者を連れて退避するよ
クラーラ・ミュスティアウゲン
まったく厄介極まりないですね
足音、空気の流れ、機材の稼働音などを拾いながら区画を進みます
倒すだけなら方法はあります。ですが、今必要なのは逃がす道ですね
通路の分岐、警備の薄い場所、しっぱいさくの巡回間隔を記憶
対象を見つけたら状態を確かめ、避難を促す

しっぱいさくが迫るなら、飛燕剣と能力で動きを止めることを優先
速やかに排除。長引くなら拘束して救助対象を先に逃がします
後続の救助に使える、安全な脱出経路を情報として得て、逃げる一般人に共有、伝搬させるよう伝えます
一人二人逃がすよりは、効率が良いでしょうから、なるべく広く伝わってくれるとよいのですが
さて……あとは得意な掃除に精を出すとしましょう

●潜入、その奥に
「どうやらこの近辺からは居なくなった様ですね。」
「ならば出し抜けそう…、かな?」
 クラーラ・ミュスティアウゲン(閉ざした瞳の武侠剣士・h12663)の言葉を受けてクラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)は頷いた。
 2人は移動神殿"スフィンクスゲート"に侵入後、壁に隠れたり気配を消すなどして"しっぱいさく"を避けて進んでいる。目を封じているからこそ、足音などの聴覚と空気の流れを敏感に感じ取れる触覚に優れるクラーラと、元より潜入工作の心得があるクラウスは、各々の特技を活かして敵と遭遇する事無く進んで来られたのだ。
 もう一点、クラウスたちとは別方向から絶叫と戦闘音が響き渡った為に、こちら側が手薄になっているのも追い風であった。とは言え、やはり全部が騒動の方へ向かうわけではなく、通路の影から奥を覗いたクラウスはハンドサインでストップを出す。クラーラも頷いて影に身を隠す。
 クラウスの視線の先には醜い肉塊の如き"しっぱいさく"が1体歩いている。クラーラもその気配は捉えている。クラウスは胸ポケットに大事に収めている"思い出の花"を一撫でする。そして空の弾倉を取り出し進行方向と反対に向けて投げる。カツン、という音に"しっぱいさく"は見事に釣られてその場を離れて行った。

「この先に人の気配がありますね。随分と気が弱っています。」
「急がないといけないな。」
「では、そちらはお任せします。私はさっきの相手の動向や増援、巡回経路を確認しておきます。」
「わかった。よろしく頼む。」
 小声でやり取りしてクラウスは足音を立てない様に、しかし素早い身のこなしで通路の奥へと消えていった。クラウスの気配が離れていった後、クラーラもまた移動する。
「退路の確保も重要ですからね。」

 クラウスは研究者が数人、ふらつきながら仕事を続けている部屋を発見する。罠の存在などを慎重に確認してから入り口を軽くノックし、注目を集めつつ指を一本唇に当てて"静かに"とジェスチャーをする。
「助けに来ました。大丈夫ですか?」
 クラウスの言葉を聞いた研究者たちは安堵の息を吐き、座り込んでしまう者もいる始末。皆一様に薄汚れ、顔色も良くなかった。この人たちを連れての戦闘は無理だったなと、ステルスで救出を目指した判断が正しかったと感じた。
 クラウスは一旦通路の左右を確認してみる。敵の気配や足音はない。少しばかりの時間はありそうだと判断して、近くの研究者に声を掛けてみる事にした。
「すまないが、ここで何をさせられていたのかを聞いてもいいだろうか?」
「自分たちは、部品探しを命じられていた。具体的には、破損して使えない部品と想定される機能のデータから、使えそうな物を探し出すことだな。」
 話を聞きながらクラウスはこの研究室を見渡す。なるほど、ここには実験装置が主に置かれている。データも見せてもらったものの、細かな部品のステータスに関するものばかりでこれだけでは全体を想像する事は難しかった。
「指定したものを、幹部らしい奴が運び込んでくるんだ。それを実際に組み込めるように調整などもする予定だった。
 が、それを担当する様にと連れていかれた連中は帰ってきていない…。」
 クラウスはモニターから研究者の顔へと視線を移した。その表情は絶望に染まっている。過酷な日々だった事、戻ってきていないという彼らの仲間の事、それらが積み重なって疲れ切っていた。一刻も早く、ここから連れ出さなければと頭を切り替える。
「その人たちも余裕があれば探してみるけど、まずはあなたたちをここから連れ出します。着いてきてください。」
 クラウスのその一言を聞いた研究者たちは、少しばかり顔を綻ばせた。

「無事に連れ出せた様ですね。」
「ああ、でも疲労の色が濃い。急いで撤退しよう。」
 元来た通路を引き返す途中の分かれ道でクラーラが待っていた。クラウスは端的に研究者たちの状態を説明し方針を伝えた。
「賛成です。しかし、"しっぱいさく"が戻ってくる気配があります。元の道は危ないでしょう。」
「そうか。なら迂回しよう。」
「それには及びません。この通路の先を調べています。これを参考にして進んでください。私は向かってくる"しっぱいさく"と交戦して騒ぎを起こしながら引き付けます。少しは安全に進めるはずです。」
 クラーラは紙片を差し出す。受け取ったクラウスは開いて確認する。それは簡単な見取り図だ。気配読みで得た危険も書かれている。
「了解した。1人で大丈夫か?」
「もちろんです。研究者の皆さんの事はお任せします。」
 クラウスは頷いて研究者たちを率いて通路を進んで行った。その気配を見送って、クラーラは錬成剣「藍月」を手にする。その肩の上辺りに飛燕剣「宵燕」「影燕」が浮遊する。
「さて……あとは得意な掃除に精を出すとしましょう。」
 しっぱいさくが通路の置くからみにくく歪んで膨れ上がった顔を出した。

「随分と頑丈ですね。」
 戦い、と言うには一方的にクラーラが攻め立てている状況で、しっぱいさくはすでに幾重にも切創が刻まれている。が、効いている様に見えないのだ。それに、囮としての役目も順調極まりない。しっぱいさくと同じ気配が何体かこちらに向かってきている。
 このまま粘られて体力を削られるのは頂けない。なら、合流される前に決着を付けなくては。
 クラーラは気功を練って2つの飛燕剣の操作に意識を集中させる。仙力を十分に込めた「宵燕」「影燕」が、"燕"の名前の如く宙を奔る。素早い疾駆からの鋭い旋回で失敗作の周囲を飛び回る。その軌道が錬金空間を構築、しっぱいさく周囲に発生した錬成陣から鎖が飛び出して拘束していく。動きを止めたしっぱいさくの心臓部分に向かって2羽の燕が突き刺さる。同時に跳躍したクラーラが大上段から錬成剣「藍月」を落下+全体重を掛けて振り下ろし脳天を割る。そのまま刃は心臓にクロスする様に刺さった飛燕剣にぶつかり、飛燕剣は左右に広がる様に、錬成剣は縦一文字にしっぱいさくを両断した。
「こんなものですね。残りも三枚に下ろして差し上げましょう。」
 錬成剣に付いた血を振り払って、クラーラは近づいてくる新たな気配に向けて3刀の切っ先を向けたのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

ディラン・ヴァルフリート
担い手とやら
過去の戦闘でも猛威を振るっていましたが
パール失敗作の強化も加わるとなると……
此度は効率重視としましょう
可能な範囲で予め方針共有
救助と調査は味方に任せ此方は失敗作撃破で援護に専念

【覇刻】強化した[竜眼]《霊視50》で敵味方の座標を把握
[飛葬殲刃]は陽動としても用い
特に敵能力の射程に味方を入れさせない事を重視
必要に応じ《オーラ防御55》敵攻撃を遮断したり
[錬気竜勁]《属性攻撃50》再生できぬよう凍結させ砕いたり

余裕があれば獲物自体に《早業50+ハッキング50》
如何な目的の・如何な実験の失敗作なのか
情報抜取りを試すのも視野に。

義に依り臨む強敵との闘争……
今回は何か収穫があればよいのですが

●監視者、殲滅
 竜眼の魔力に囚われた醜い肉塊の如き"しっぱいさく"を飛葬殲刃が削り取る。ぶしゃっと赤い液体を撒き散らすそれの胸から大剣の切っ先が飛び出す。
 ディラン・ヴァルフリート(|義善者《エンプティ》・h00631)は至斬傑牙を引き抜く。早くも彼は飽きていた。しっぱいさくが余りにも弱いからだ。救助も調査も他のEDENたちに任せたのは、力を振るえるからだというのに。
。O(担い手とやら。過去の戦闘でも猛威を振るっていましたが、パール失敗作の強化も加わるとなると……。)
 ディランの興味はこの先で待ち受けているであろう、宿敵旅団幹部の1人、"祝福と呪詛の担い手"へとすでに移っていた。話に聞く担い手は、その怪力と耐久力でEDENたちを苦しめたとか。そして、星詠みから聞いた"強化"と"特殊空間"。紛れもない強敵との闘争に、義を以て挑む己の姿。|収穫《・・》があるかもしれないと少しばかり期待してしまう。

 背後から迫っていたしっぱいさくを竜眼の魔力が拘束する。今のディアンには、この区画のほぼ全体が見えている。別の事を考えているからとて遅れは取るまい。
「……そうですね、あなたたちからも何か得られますかね?」
 至斬傑牙で貫き、竜眼でその内を覗き込む。お前は如何な目的の・如何な実験の失敗作なのか、見せてみろ。
 ディランは溜息を吐いてしっぱいさくを真っ二つに斬る。これらも例の特殊ゲートで連れてきただけで関係のないものだった。つくづく、つまらない。
 こうなればさっさと片付けて本命に登場願おう。
 飛葬殲刃がもう1体を刻み付ける。が、しっぱいさくはまだ動いている所か急速に再生している。早く始末しようと思ったら、この異様なタフさを不愉快と感じ始めた。
「苦しむ必要はありません。もう……静かに眠りなさい。」
 もがく様に蠢く肉塊を冷気を宿した錬気竜勁で包み込んで凍結させる。もう動かなくなったのを竜眼で見ながら、先程の台詞は割と良かったか、などと場違いな事を考える。そう、つまらないのだ。

 期待はしていなかったが、この戦いは全てがつまらなくて失望した。ただただ蹂躙するだけの闘争、情報を何一つ得られなかった事、そんな事に体力を使っている自分の滑稽さ。本当に名前の通りのしっぱいさくだ。
 最後のそれを捕らえ、飛葬殲刃が四肢を突き刺し壁に貼り付ける。もはやディランに何の感慨も残ってはいない。
「解放してあげます。……安らかに。」
 至斬傑牙を振り上げて一閃、壁ごとしっぱいさくを両断し錬気竜勁で凍らせた。今度の台詞も良かったのでは?とまたしても場違いな事を考えていた。
 竜眼で戦況を確認する。どうやら他のEDENたちも残ったしっぱいさくを倒し、ディランが派手に暴れている間に一般人を脱出させた様だった。作戦は成功、だが、やはり感じるのは|空虚《エンプティ》だ。
 そんなディランの首筋がぞくりと泡立つ。
「そちらから……お出ましとは。」
 ほんの一瞬だけ、微かに、感じ取った強敵の出現にディランの口角が上がった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

第3章 ボス戦 『祝福と呪詛の担い手』


POW 神聖殺し
【手斧】による牽制、【鎖】による捕縛、【直剣】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD 不死殺し
【左腕から神聖】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【神聖な閃光】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【太陽神の加護】による戦闘力強化を与える。
WIZ 神呪葬送
自身の【杭で封印された右腕】を【神々からの祝福と呪い】に輝く【"ベルセルクの凶腕"】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
イラスト ひろたけどぎぬ
√ドラゴンファンタジー やや難15 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●祝福の炎と呪詛の澱
 区画内の"しっぱいさく"を殲滅して科学者や技術者の保護と脱出を急ぐEDENたち。救助活動もあと少しである。その時、突如として空間が冷えて張り詰める。歴戦の勇であるEDENたちはもちろん、疲れ切って感覚が鈍っているはずの一般人たちまでもその気配を察している。
 通路の奥から重々しい足音が響いている。近づいてきている。それにともなって緊張感も増していく。そして、それが通路の奥から姿を現した。
 2mを大きく超え筋骨隆々の巨躯。被った獣の頭部の奥に覗く深く静かな瞳。多数の杭を打たれ鎖で封じられている右腕。蛮族然とした見た目に反して洗練された佇まい。そして、そこから放たれる尋常ならざる|重圧《プレッシャー》。
 宿敵旅団"ペンタクルム・ゲート"の幹部、"祝福と呪詛の担い手"である。

 EDENたちはすぐさま迎撃態勢を整えつつ、重圧に怯えて竦む一般人を急いで脱出させる。意外にも担い手はその様子を見守っているだけだった。なんとか一般人を脱出させたEDENたちに向けて担い手は口を開く。
『気は済んだか?ならば、気兼ねなく死合おうではないか。』
 重低音のその声は、静かな口調にも関わらず周囲を圧倒する。それは彼の本質が"怪力"や"能力"とは違う深みに依って形作られている事を意味する。すでに数度対峙した者たちでさえ、ここまでの気迫を感じた事は無かっただろう。
 やおら、担い手はEDENたちに見せつける様に宝石を取り出す。それは見るからに毒々しい色をしたペンタクルム・パールだ。担い手は躊躇無くそれを飲み込む。
 パールと同じ色のオーラが担い手を包み始める。EDENたちにも聞こえるほどの担い手の体が軋む音が響く。ぎしっと歯ぎしりしながら耐え、両手を大きく広げて咆吼する。
 担い手の体から神聖な光が漏れだし燃え上がり、白い炎が空間を焼く。
 担い手の体から赤黒い澱が染み出して広がり、周囲のものたちを飲み込んでいく。
 空間を侵す炎と澱は反発しあって空と地に分かれて切り取った。EDENたちのいる場所はすでに、移動神殿"スフィンクスゲート"とは別物になっていた。

 EDENたちはすぐにその空間の異様さに気が付く。足下に敷き詰められた澱が徐々に這い上がってくる。それだけではない。力を、体力を吸われる様な感覚。態勢を立て直そうとジャンプしたEDENに目映い閃光が飛来、その体を残った澱ごと白い炎で燃え上がらせた。危うく落下しかけたが何とか澱の積もった地面に着地する。澱が這い上がり浸食してくると同時に炎が散らされる。
『ようこそ、我が"殺しの間"へ。全身全霊を以て、うぬらを叩く。』
 身から白い炎と噴き出させ、赤黒い澱を染み出させながら殺意を膨らまし、担い手は一歩踏み出した。


○MSより
 第2章お疲れ様でした。この第3章が、このシナリオの本番となります。難易度はやや難の上に特殊処理が入りまして、判定は物凄く厳しくなります。
 圧倒的不利な状況ですが、皆様の熱いプレイングで跳ね返してください。

・作戦の目的
 『祝福と呪詛の担い手』への大ダメージ、または撃破。

・『祝福と呪詛の担い手』
 桁外れの耐久力と怪力を誇り、多数の神々から祝福と呪いを受け、数多の戦場を経験した戦士です。宿命に従って『戦う事』が自身の存在意義と心得ており、戦場の作法や兵法にも賢いです。駆け引きにも長けていますので、パワープレイは通用しません。

・特殊戦場『祝福の白き炎・呪詛の赤黒い澱』
 『祝福と呪詛の担い手』から溢れる祝福と呪詛で作られた空間です。遮蔽物や凹凸の一切無い平坦な場所となります。炎と澱の効果は以下の通り。

 祝福の白き炎:能動的・受動的に限らず空中にいるPCに降り掛かります。閃光による目眩ましと一時的な行動阻害を起こし、燃え移って継続ダメージを与え続けます。
 呪詛の赤黒い澱:地に足を付けていると呪詛が泥の様に纏わり付いて足場を悪くしています。この澱はPCを衰弱させその効果は時間経過で積み重なります。また、定期的に亡者が現われて纏わり付いてきます。

 白き炎と赤黒い澱のどちらかの効果は必ず受けます。が、両方を同時に受ける事はありません。また、担い手はこの両方を、皆様でいう"技能"の要領で能動的に活用してきます。

・プレイングボーナス
 特殊戦場ギミックへの対策+担い手の隙を突いて大きな一撃を与える、事となります。両方を無理なく満たして初めてボーナスとなります。
 また、以下の基準も参考にしてください。
 √能力>技能>>アイテムの設定

・連撃について
 連撃数は成功度を引き上げる物ではない、と心得た上でご計画ください。
 連撃数が増えれば、相手も対応する√能力の使用回数が増えます。また、連撃の分だけ戦闘時間も延びます。その事をご承知置きください。

・連携について
 お相手のIDやチーム名が無い限り、この章のみ単独採用で進めます。連携前提のプレイングはオススメ致しかねます。

 恐らく、幹部宿敵の中で1番殺意が高いと思います。戦場のギミックは強力ですが、軽減は難しくないはずです。あとは、|担い手《わたし》との知恵比べです。
 皆様のプレイングをお待ちしています!
和紋・蜚廉
どのような権能も…盛者必衰。
破れぬ者は存在しない。

故に、生き続ける事が最も難しい。

祝福と呪詛が同時に撒かれているのなら、
相反する二つをぶつけよう。

融合によって獲得した引き寄せ能力で、宙の炎を引き落とす。

迸る閃光。
その眩さで視界を奪われた振る舞いをしながら、脚を縛る亡者を神力で浄化。

元より、我は視覚を備えておらず。
周囲を知覚するのは、別の感覚器によるものだ。

だが。
以前の戦闘では、視界が存在するかのような振る舞いを見せている。

ならばこの一手、
惑わされぬ隙はあるまい。

蘇生を行う肉体へ、弾丸が放たれようとした瞬間。
高速移動でカウンターの一閃を繰り出す。

汝ばかりが全力と思うな。
こちらもまた、全霊なのだ。

●手の内に残っている物は
 足下に纏わり付く赤黒い澱、それは大変な不快感を伴う。力を吸い取られていく様な、絡み付いて動けなくなっていく様な、まさしく呪詛である。
 そんな澱に覆われた地を1度踏み鳴らした和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)は刀型の両刃剣を下段正中に構える。それこそは鹵獲した王劍・明呪倶利伽羅である。
「原初の息吹よ、我を拾い上げよ。生命の境界、ここにて断つ。」
 すでに王劍としての権能は失せている物の、扱っていた者の神力の残滓は息吹いている。原初の神のその力と共に明呪倶利伽羅が蜚廉と融合していく。
 "祝福と呪詛の担い手"はもちろんそれを大人しく見守りはしない。澱から亡者たちが腕を伸し蜚廉に纏わり付こうとするが、震脚一撃、足を通して澱に神力をぶつけ吹き飛ばす。同時に振り下ろされる直剣の腹に左の裏拳を叩き込み甲殻籠手を滑らせて初撃を受け流す。その恐ろしい威力に籠手の突起が断ち切られて澱に落ち消滅する。
「どのような権能も…盛者必衰。破れぬ者は存在しない。」
 一瞬睨み合う状態から脇溜めにしていた右手を開き天を掴んで引き落とす様に振るう。その動作に合わせて宙に満ちていた白き炎が落ちてくる。神力で空間そのものを引き寄せる。例え、残滓であっても原初の神の力だ、この程度は訳ない。
 地に落ちる炎。それは澱と反発し相殺されると読んでいた。それは正しいが、1つ欠けている事があった。果たして炎と澱はぶつかり合い。強力な、非常に強力な衝撃波が発生した。

「ぐ、ぉ…っ!?」
 自身の周辺の澱を消す為に、蜚廉は自身を中心に選んだ。故に、その"力"の発生を諸に受けて五体弾け飛んだ。ごとりと落ちた部位から神力が迸り瞬時に蜚廉は復活を果たす。
 その衝撃が未だ蜚廉の精神にダメージを残しているが、そこは百戦錬磨の武人。本能的に状況を翳嗅盤と潜響骨が探る。
 澱は先程まで立っていた場所を中心に消滅して通常の地面が見えている。これは狙い通りだった。そして、考えるのは先程の衝撃波。実を言うと、蜚廉はそれを知っている。何度も相まみえたのだ、手の内もある程度見てきている。担い手の最強にして最大の力、"ベルセルクの凶腕"そのものに他ならないのでは…。
 そこまで考えて首を巡らせる。担い手はどこに?
『流行、うぬはこの程度では倒れぬか。』
 爆心地から少し後退した場所に、その巨体は立っていた。衝撃波でダメージを受けた様子は無い。相変わらずその体からは神聖な白き炎が燃え上がり、赤黒い澱が溢れ出して剥き出しになった地を再び覆い始めている。折角不利な状況をひっくり返したが、時間は掛けられない。先程の手は何度もは使えない。いや、規模を狭めればあるいは?

 担い手は徐に宙に右手を伸すと、なんと白き炎を掴み取り、立ち上がろうとする蜚廉に向かって投げる。炎の塊が直撃し閃光が迸る。同時に衝撃が体を軋ませ燃え上がる。
 ここでも1つ誤解があった。炎が炸裂した閃光の眩しさで動きを封じると思っていた。確かに閃光は目眩ましではあったが、ほんの一瞬だけ体を硬直させる衝撃があるのだ。
 担い手は次々に白き炎を投擲する。その動作と気配から球筋は見えているが蜚廉はそれを真面に受けてしまう。1発当たる度にびくりと動きを止められつつも担い手に向けて一歩を踏み出す。しかし当たる度に体を燃やす炎が強くなっていく。
 ついに膝を付き倒れる。その体を炎が飲み込もうとした時、再び神力が湧き上がって炭化した体を再構成した。
 少しだけ身を起こす。すでに眼前まで澱が迫ってきていた。神力にも限界がある。状況は絶望に傾いていた。
 そんな蜚廉の顔を照らす、一層目映い神聖な光が担い手の左手で球を成し始めた。トドメを刺す積もりなのだろう。左手を眼前に掲げ、右手に宙の白き炎を掴んで投擲し、蜚廉に当たって閃光が発生する。
 ーーーーこの時を待っていた。
 身を起こしたその姿はクラウチングの如く、瞬間の硬直を脱し0から即座に最高速度に到達するダッシュ!体に神力を充填しオーラを形成、進行方向に立ちはだかる亡者たちを浄化しながら知覚していた飛来する|白き炎《・・・》を身を沈めて避け、速度と神力を乗せた拳を構えーー、鏡写しの様に左手の光球を突き出す担い手と交錯した。

「なんと…、我の視界に気が付いて…?」
『知らぬな。だが、最後は懐へ入ってくる。そう読んだ。』
 蜚廉は腹から下を光球で削り取られ檻の中に落ちる。そして、ずしゃっと膝を付く担い手の背を見る。その胸には蜚廉の右腕が突き刺さっていた。それを知覚した蜚廉は意識が遠ざかると同時に、身に残った神力が再構成を始め、そしてその空間から弾き出されたのだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

クラウス・イーザリー
(負担が無い訳ではないのかな……)
軋む音や耐えるような声を聞けば多少のリスクはありそうに思える
そうしてまで俺達を迎え撃つ覚悟があるということなんだろうな

recollectionを使用
集合の花片を創り出して|無明《二丁拳銃》に貼って威力を上げて
できるだけ距離を取りながらレイン砲台のレーザーで牽制し、二丁拳銃の弾丸を撃ち込む
接近戦の間合いに入られたら居合の要領で無明を振って斬りつけ、喧嘩殺法で泥臭く戦う
相手の攻撃は魔力防御でとにかく致命傷を避ける

足元の澱は呪詛耐性と破邪で軽減を試み、跳んだり吹き飛ばされる時は咄嗟に目を瞑って最低限目眩ましを食らわないように心がける

できるだけ粘ってほんの僅かずつでも攻撃を重ね、限界になったら斃れる直前に夜明けを使う
投げ遣りになった訳でも諦めた訳でもない
干渉を無効化する者であれば祝福も呪詛も受けないかもしれないと考え、ただ死ぬよりも良いと判断して、|太陽の鳥《親友の象徴》に後を託す

●自分の命の強さ
 クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)は足下に魔法陣を展開する。体に掛かっていた重苦しさと、体温が冷える様な感覚が和らいだ。破邪の魔力は効果があった様だ。
 改めて遠い場所にいる"祝福と呪詛の担い手"を見る。膝を付いていた担い手はゆっくり立ち上がる。相変わらず体からは白き炎と赤黒い澱が溢れて空間を満たしている。ダメージを引き摺りながらもクラウスを真っ直ぐ見据え、左手に直剣を、右手に手斧を持つ。
 クラウスはその空間のインビジブルを集めて花片を創造し、二丁拳銃の無明に貼り付けて構える。一瞬だけ花片を見る。それはクラウスの思い出とリンクしている。その時に造られた花片は…、
「どうか、力を貸して…。」
 レイン砲台を展開しつつ後方に下がりながら引き金を絞った。

 引き金を絞った瞬間に無明に貼り付いた花片が輝き、無骨な拳銃を覆う。花片の幻影は形を変えて"竜"の如き姿となる。そして、|咆吼《ブレス》が担い手に撃ち出された。超高速で飛来する弾丸を、しかし担い手は左手の直剣の一振りで叩き落としながら凄まじい速度で踏み込んでくる。
 距離のアドバンテージを取るべくクラウスはバックステップを連続しながらレイン砲台へレーザー射撃を指示する。光の速さのレーザーは発射と同時に着弾する。さしもの担い手も防ぎ様はない。が、砲台の射撃気配を読んだのか、直剣の腹を向けて顔と胸をガードしながら速度を緩めない。直剣に防がれるのを確認する暇もなくクラウスは無明の咆吼を響かせる。その弾丸は担い手の肩や足を穿つが担い手は止らない。
「流石だな、っ!?」
 バックステップの着地を狙って手斧が投擲される。魔力防御の術式を込めて片方の無明の短刀でガードしつつもう片方で応戦する。直撃は免れたが衝撃でバランスを崩す。一方で放った弾丸も担い手の右手の平に直撃していた。
 魔法陣で守る足で踏ん張って転倒は回避しようとするが、ここで背後から亡者たちが取り付いてくる。それに気を取られた瞬間、金属の擦れる音が聞こえた。体を鎖に絡み取られ、間髪入れずに担い手が左手に持つ直剣を大きく振り下ろしてくる。
「ここで、やられるかっ!!」
 右手の無明を手放し腰の魔力兵装を握り、居合いの要領で振り抜く。大量の魔力を注ぎ抜き放たれた瞬間に大太刀に変じた魔力兵装と直剣がぶつかり合う。しかし、力比べはクラウスに分が悪い。1度止った直剣を強引に押し込むその圧力に押し潰されていく。魔力防御を展開し左手も添えて、刀身の反りも利用して全力で受け流す。直剣はクラウスの左側に滑り、鎖を断って地の澱を割る。そこから刃を翻さずに横に振り抜き剣の腹でクラウスは打たれ宙に浮かされる。
 咄嗟に目の前に腕をクロスさせて目を守る。そこに白き炎が殺到し閃光を発する。衝撃で防御態勢の体が一瞬硬直し、直後に着火し延焼し始める。目を塞いでいたからだろうか、その炎は以前に受けた覚えがあった。この炎はあの力と同じーー?

 硬直により受け身が取れないまま澱の中に落ちて転がる。炎はすぐに消えるが澱が深く纏わり付いて離れない。足に展開していた魔法陣の範囲を即座に広げて影響を緩和させ立ち上がって担い手を探す。いた、先程の所から動いていなかった。
『ぐ、ぅ…っ。』
 胸を押さえて呻きを押し殺している。
。O(負担が無い訳ではないのかな……。)
 担い手がこの戦場を生み出した時の様子を思い出す。こちらに聞こえる程の軋み音、戦闘中でさえ聞いたことの無い呻き声、リスクがないとは考えられない。
 相手も自分も時間が掛かると弱っていく戦場。それは生還を捨て最後まで戦い続けるという、苛烈な覚悟なのだろう。ならば、こちらも覚悟を以て応じるだけだ。
 魔力兵装を握り直して立ち上がるクラウスの視界が目映い光が覆う。担い手が右手の甲をこちらに見せる様に掲げると、その腕に打ち付けられている杭に光が奔る。右腕が神聖な白い炎と赤黒い呪詛の澱みで輝き、杭が抜け落ちる。それは、クラウスが初めて見る担い手の奥の手であった。

 白と赤に輝く右腕を振り上げて担い手が飛び掛かる。クラウスはちらっと吹き飛ばされる前にいた場所に目を向け、意を決してこちらからも距離を詰める。右腕が振り下ろされる瞬間に、レイン砲台からレーザーを放ちその背を撃つ。一瞬だけ動きが鈍った担い手の脇へと飛び込む。斬る余裕は無かった。地を撃った担い手の右腕から凶悪な衝撃波が放たれて澱諸共地面を破砕する。舞い上がった澱に塗れながら弾き飛ばされ転がるが魔法陣だけは維持する。そうして倒れた場所に、目当ての物があった。それを掴んで引き金を引く。
 未だに力を宿していた無明を二丁とも手にして連続で引く。担い手は輝く右腕"ベルセルクの凶腕"の力で弾丸を吹き飛ばし、今度は凶腕の指先で地面を削る様に踏み込み振り抜く。衝撃波が澱を地面ごと引き裂きながらクラウスに迫る。澱に塗れながら転がりつつ魔力防御を発動、直撃をギリギリ避けるが余波で吹き飛ばされる。しかしその間にもレイン砲台を駆使してレーザー射撃を見舞う。
 担い手が凶腕でレーザーを防いでいる間に起き上がる。くらっ、と目眩がする。少しずつではあるが、澱に生命力を奪われ続けた結果だ。だが、まだ戦う力は残っている。
 体に纏わり付く澱を振り払う様に腕を振り回しながら起き上がって二丁拳銃を撃ちまくる。白き炎でレイン砲台を破壊した担い手が振り返り凶腕を盾に弾丸を防ぎながら迫る。担い手は右手の甲をクラウスに向けて振り抜く。打ち上げられない様に倒れる様に後ろに跳び、クロスさせた魔力防御を施した無明に凶腕が叩き込まれた。

 真後ろに吹き飛ばされて澱に落ち滑って止る。すぐさま澱はクラウスを飲み込み始めたが、もう抗う力は残っていなかった。いや、クラウスには抗う力はまだある。
 視線を巡らせると、担い手が右腕を押さえて膝を付く姿が見える。凶腕は再び杭と鎖で封印され、担い手にクラウスが付けた弾痕からは澱とは違う液体が溢れている。やはり、相手は長く保たないと言う事だ。
 ならば、この"奥の手"はさぞかし効く事だろう。
「この命、ただではやならい…。なあ、お前なら…うまくやって、くれるだろ…?」
 握り締めていた無明に咲く花を見ながら、クラウスは微笑んだ。そして、集まってきたインビジブルたちがクラウスを一斉に喰らっていく。自らの身が貪られる苦痛を感じながら、クラウスの意識は闇の底に沈んだ。

『な…なんだと?』
 担い手はその光景に絶句していた。倒したはずの強敵の肉をインビジブルたちが貪り始める。あっという間に平らげたインビジブルたちから光が迸り、それらが混じり合って広がる。その光は羽ばたき、大きく鳴いた。
 陽光を纏った鳥は、目映く輝く。担い手はそこに好敵手と共に別の魂の光を見た。白き炎が鳥に炸裂し炎上させるが、その鳥はびくともしない。身を燃やされながら鳥は翼を広げ、担い手に向かって羽ばたく。翼から数多の光の粒が放たれ担い手を撃つ。
 被弾しながらも担い手は落ちていた手斧と直剣を拾い鳥に反撃する、が、その刃は鳥に通じない。クラウスの意志とその心に住む光の具現である"太陽の鳥"は担い手を追い詰めていた。
 しかし、担い手もやられたままではない。"光の雨"に撃たれながら剣戟を繰り返し続ける。何かを確認する様に、斬り方を、攻め方を、攻撃箇所を変えていく。そして、その右手を鳥の口にねじ込んだ。右腕が白と赤に発光し杭が抜ける。力の奔流が迸り、そして、"太陽の鳥"は内側から破裂した。
 3度封印された右腕を押さえて担い手は天を仰ぐ。その右腕も内側から爆ぜて血を噴き出したのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

ディラン・ヴァルフリート
宿命に従うだけの木偶と敢えて語る事もありませんが……
隙を突かれぬ程度に挨拶くらいは。

地上戦闘主体
《オーラ防御100》纏い澱押し退け足場対策
&足を止めず蹴散らしDoT対策
亡者は《怪力150》振り払い
浮かされた際は《空中移動1》翼で姿勢制御し隙を最小限に着地
スタンとDoTはオーラ防御
目眩ましには《第六感50》と光学情報に依らぬ《霊視50》対処

第六感先読みと《早業50》反応速度で敵行動に対応
鎖捕縛を特に警戒
手斧牽制は最小限の動きで対処
強撃は回避、必要に応じ怪力でパリィ

【征刻】此度使う√は速度重視で何でも
一度屈した世界なれば"僕の行動に対する抵抗力"を低減
疑似的に自らの全性能を10倍と化しつつ攻撃。

オーラ防御は領域対策の要
《受け流し20》運用で負荷を抑えますが破壊されればプランB
①澱に生命力流し込み《ハッキング50+属性攻撃50》支配権奪取
②《異形化50》身体性能補填
③【叛刻】大剣なり竜爪なり巨大化させ奇襲
三重策で即座に切り返し
敵動向の警戒は絶やさず
仮に躱されようと追撃を畳み掛け引き裂きましょう

●強者とは
 ズシャっと赤黒い澱を踏みしめたディラン・ヴァルフリート(|義善者《エンプティ》・h00631)は右腕を押さえて膝を付く"祝福と呪詛の担い手"を見下ろした。強者と聞いてはいたが、すでに手傷を負っている様子を見れば期待感はすぅっと冷めていく。
「宿命に従うだけの木偶と敢えて語る事もありませんが……、」
 ディランは敢えて言葉を投げかける。失望もあっての軽口という面もありつつだが、出方を窺うのと隙を突かれるリスク回避の為にだ。当然、担い手はその言葉に首だけ振り返ってゆっくり立ち上がる。左手に直剣を、右手に手斧を持って向かい合い形となった。
 呼応する様にディランは体から|錬気竜勁《オーラ》を噴出する。足下から広がってディランを包む錬気竜勁は澱を押しのけて地面を露出させる。これで足止めは気にしなくて良い。しかし、何かを吸い取られる感覚は無くならない。やはりこの程度では無効化出来ないか。ならば先手必勝だ。
「その企みは阻止します。……|界律権限《ワールドルーラー》、行使。僕に屈すと良い。」
 大剣・至斬傑牙を振りかぶり周囲に現われた亡者を切り払って駆け出し一気に近づく。縋り付いていた亡者はその踏み出しだけで引き千切れる。足を下ろした先の澱も錬気竜勁が弾き飛ばしその残滓がオーラに付く。担い手は左手の直剣を真横に、右手の手斧を胸の前に構えて迎え撃つ態勢。躊躇無く至斬傑牙を振り抜く。刃を合わせる形で手斧が振るわれ金属音が響き、担い手の目に驚愕の光が灯る。ディランの大剣は勢いこそ少し落とされながらも防御した手斧ごと担い手の体を横ずらしさせた。即座に大剣を引き上段から斬り落とし、今度は直剣と手斧をクロスさせて受け止められるが担い手は膝を付く程に押し込まれ、その隙を逃さぬと錬気竜勁を纏った蹴りを見舞う。担い手は血を吐きながら吹き飛ばされたが受け身と共に即座に態勢を立て直し、咄嗟に澱を手斧で掬い投げる。追いかける為に踏み込んでいたディランは大剣で澱を振り払い散った澱がオーラにこびり付いた。
 担い手は尚も澱を投げながら転がり距離を離そうとする。その滑稽な姿に益々気分は萎えてくる。真なる強者はこの様な無様は晒さないはずだ、こいつは偽物だ。すでに幾度も負けているのだから。
 気が付くと担い手は起き上がり武器を構えている。構うことは無い、少なくともこの空間ではディランが書き換えたルールから逃れられない。現に先程の攻防では力で圧倒したのだ。何度距離を取っても同じ事。
 いや、次は担い手から飛び掛かってきた。踏み込みと同時に直剣を突き出したリーチのある攻撃、避けるのは難しくない。剣を目で追いながら最少の動きで突きを躱して大剣を振るおうとしたところで、目の前に手斧が振り下ろされていた。突きは囮だ。だがまだディランの対応出来る範疇、腕を畳んで大剣の柄で手斧を受け止める。そして現在の世界法則なら押し返しも…、いや、受け止めた瞬間に爆発的な力が掛かったのと咄嗟のガードで態勢が悪く、押し込まれて膝を付く。が、それで姿勢が安定した為か相手の力が"弱く"感じられ、案の定、簡単に押し返して立ち上がる。脚回りの錬気竜勁は澱塗れである。
 担い手は即座に反撃を始める。恐るべき怪力で振るわれる手斧はディランの腕の骨を軋ませ、直剣を鋭い剣筋は疾く正確に急所を掠める。ディランは少しばかり心が躍り始めていた。その"攻め"は強者と呼ぶに相応しい迫力と威力、喰らってしまえば致命傷は避けられまい。
 大剣の腹を盾にして直剣を受け止める。踏ん張っているにも関わらず、今度はディランが横ずれさせられる。頭上から振り下ろされる手斧に気が付き、その右手首目掛けて手刀を繰り出す。すると、いとも簡単に右腕を弾いてしまった。疑問を抱きつつも反撃に出ようとするが担い手はすでに距離を取っていた。

 大技の予感にディランも身構える。担い手はその場から手斧を投擲した。担い手から目を逸らさずに手斧をすれすれに回避、飛び込んでくる担い手に向けて大剣を構える。担い手は右腕を大袈裟な程したから上に振り上げる。そこから伸びた鎖の先端が澱を纏って巻き上げながらディランを拘束しようと迫る。だがそれは最大限警戒していた物だ。澱は錬気竜勁で受けつつ踏み込んで鎖の軌道から逸れながら大剣を振り上げる。それを狙い澄ました様に直剣の突きが放たれていた。咄嗟に大剣を下げて盾にして受け止めるが|足の《・・》踏ん張りが利かずに弾き飛ばされた。翼で姿勢を調節して即座に地面に降り立ち転倒は避ける。錬気竜勁で削られた澱の跡が、その一撃の威力を物語っていた。
 冷たい悪寒を感じながらもディランは状況の不可解さを理解し始める。"自分に屈する"というルールの中で、何故圧倒出来ないのか。いや、している。ディランが|攻めている時《・・・・・・》は。要するに、ディラン|の《・》行動には屈しているのだ。現に担い手はディランの攻撃を受け止める事も出来ていない。そして、一度大きく距離を離してからは向こうから仕掛け続けられている。これは偶然か?
 再びの悪寒で我に返る。いつの間にか担い手は目前、その右腕を打ち下ろす態勢だ。自分の考えを確かめるべく、敢えて拳を受け止める。ぼぐっ、と肉同士のぶつかる音と凄まじい衝撃がディランに響く。ガードした左腕の骨が軋み痺れる。が、止った後に押してみれば相手は簡単に振り払えた。間違いない。
 そして、いきなりの脱力感が襲い来る。何事かと竜眼を向けると、脚回りの錬気竜勁に澱が大量に纏わり付いていた。オーラは発する者のエネルギーだ。それで物理的な壁を作って足場を確保していたのだが、それ故に直接取り付かれたのだろう。動き回ることで振り払えると思っていたが、それが出来ていたかどうかは確かめていなかったし、うっすらとしか感じない衰弱効果に気を裂ける状況でも無かった。何より、澱はルールの対象外だ。そこまで考えてハッとする。担い手は澱を投げつけてこなかったか?どこまで考えて行動したのか?分かっていないとして、直感と経験で最適な動きをしているのだとしたら、面白い。
 が、折角の余興も時間を掛けて楽しむ事は出来なさそうだ。担い手も時間を掛ける気は無いのか、再び大技を匂わせている。決着の時は近い。

 ここまで来ると楽観視出来ないが、それでも澱の衰弱効果が厄介だ。竜眼で澱を解析しようと試みる。そこに移るのは大量の神々による呪いの海だった。如何に神そのものから分かたれた力と言えど1柱ならディランでも対処は出来ただろう。が、担い手の体に宿る呪詛は数え切れない神々による物だ。その全ての呪詛を掌握することは不可能だろう。が、しないよりはマシだと割り切って錬気竜勁を通して呪詛に介入、一時的に支配して吸い取られる生命力を減らす。
 立ち上がって大剣を構え直す。担い手も左手の直剣を右肩の方に寄せて構え、右手には鎖を握る。そして担い手の方から踏み込んでくる。手斧はすでに相手の手元にはない。鎖の動向に注目しつつ自身のリミッターを外す。体中に竜の力が溢れて身体が変化を始めた。担い手はパンチの要領で至近距離から鎖を投げつける。まるで投網だ。直撃する数錠を大型化しつつある手で掴み取って握り潰す。担い手が右手を引いてディランはその姿を蝕竜装躯ヴァルフリートへと変ずる。直後に背後に衝撃、右手から伸びた鎖が手斧を引き寄せて翼の付け根に突き刺さったのだ。一瞬硬直したが構わず竜爪を振り下ろしそれが担い手の体を引き裂いて、担い手の直剣もヴァルフリートの腹部を貫いた。
 大きな爪痕から鮮血を迸らせて倒れ担い手は澱に沈んで見失う。ディランは蹌踉めきながら手斧と直剣を引き抜いてから影竜を喚び出して即座に脱出した。影に消える瞬間、自分でも自覚していなかっただろうが、口の端が上がっていた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

チェルシー・ハートサイス
★心情
ごきげんよう、強者がいると聞いて来たわ。
その様子では必要でしょう?援軍が。
呪詛なら、わたくしもひとかどの心得があるもの。少し噛ませて頂戴。
★行動【POW】
飛び上がりはせず、地上から敵に向けてまっすぐに。
澱の対処法としては、
・【衝撃波】で一時的に【吹き飛ばし】道を作る。
・【呪詛耐性】【魔力吸収】【精神抵抗】【地形耐性】で耐える。
・【怪力】で無理矢理引き剥がす。
・【血喰らい大鎌】で地形を破壊する。(敵の元に着き直接戦闘を始めた段階で使用)
を用意しているわ。適宜、有効なものをその場で。
直接交戦に入る前に【真紅の薔薇姫】を使用しておき、澱の機動力阻害を軽減しつつ力を高めて交戦に入るわ。
交戦の最初はハートサイスによる【死の舞踏】の一撃から。死の舞踏の効果で血喰らい大鎌を地形と敵本体の【2回攻撃】しつつダメージを与えていくわ。当然、全ての攻撃に怪力を加え、ハートサイスの【重量攻撃】、【生命力吸収】を加え。【焼却】の【呪詛斬撃】まで込めてしまおうかしら。ふふ、楽しくなってきたわ。
敵√能力に対しては、手斧の牽制を【見切り】、【ルートブレイカー】のこもった右手を使って怪力にて鎖を引きちぎることで対策。できるなら、そのまま【カウンター】の【グラップル】で投げ飛ばしてこちらの手番にしてしまってもいいわね?鎖を放棄する可能性もあるから、無理には狙わないわ。
レディを縛ろうとするなんて、扱いがなっていないこと。きっちりその身に刻み込んで差し上げるから、よく覚えてから死んでくださいな?

●淑女と戦士のダンス・マカブル
 澱の中から"祝福と呪詛の担い手"が立ち上がる。その身にはすでに深い傷が刻まれ、血が流れ出ている。それでも放つ気迫は未だ衰えていない。これだけしてもまだ倒せない状況を察して1人の少女が駆け付けた。
「ごきげんよう、強者がいると聞いて来たわ。」
 チェルシー・ハートサイス(強者たれ・h08836)。彼女は"強者たれ、孤高であれ"という矜持を以てこの場に馳せ参じたのだ。噂に聞くペンタクルム・ゲートの戦士とは如何ほどかを確かめに。
 震脚を1つ、その衝撃波で足下の澱が吹き飛ぶ。
「呪詛なら、わたくしもひとかどの心得があるの。お相手してくださる?」
 優雅に微笑んでピルエット、くるりと回転が終わる時には紅いドレスに身を包み、真紅の巨大な宝石から光を放つ大鎌・ハートサイスを手にしている。空いている方の手でスカートの裾を摘まんで礼をし、ピケ・ターンをしながら担い手に向かって行く。
 回転と共に踏み出す足が衝撃波を絶えず生み出し、群がろうとする亡者はハートサイスに触れて刻まれる。チェルシーを阻めるものはいなかった。
 担い手は近くに落ちている直剣と手斧を拾って待ち受ける。回転する度に速度を増したチェルシーは真っ直ぐ近づき、
「さぁ、踊ってくださる?」
 遠心力がたっぷり乗ったハートサイスで横薙ぎに振り抜く。担い手は右手に持った直剣でそれを受け止める。遠心力にハートサイスの重量、そして、真紅の薔薇姫となったチェルシーの怪力が合わさったその斬撃は強力で、担い手は手斧も添えて両手で押さえて姿勢を沈み込ませて何とか耐えられる程であった。
「噂通りね。もっともっと踊りましょう?」

 初撃を受け止められた事で足が止ったチェルシーに澱が纏わり付いてくる。それは流動的ですぐに空いた空間を埋めてしまうのだ。そして、そこに込められた呪詛の力に驚くことになる。|神々《・・》の呪詛なのだ、文字通り格が違っている。
「あまり耐えられそうにはないわね、っと!」
 担い手は左手の手斧を振るう。その軌道を見切ってピケ・ターン。震脚を起こしつつ移動や攻撃に繋ぐのにこの動作はもってこいだ。大鎌という武器の特性とも相性がいい。足下の澱を再び拭き飛ばしつつ大鎌を頭上で回転させて飛来する鎖を弾く。そして、ワンテンポ遅れて振り下ろされる直剣とハートサイスを打ち合う。さしものチェルシーもその重さに動きを止められ、上から押さえ付けられる形になった。足下を澱が埋めて纏わり付き、湧き出た亡者たちが取り付いてくる。
「お誘いしていない人の介在は、失礼にあたるのよ!」
 直剣をいなし、ハートサイスの重量を活かしてその場で回転する様に亡者を振り払い大上段から振り下ろす。担い手はさっと後退して回避するが、ハートサイスは地面に突き刺さってクレーターを作った。
「これで少しは邪魔立てされないかしら?」
 担い手は陥没に巻き込まれて膝を付いていたが立ち上がって無言で構えた。
「寡黙ね。でも、お喋りで口程にもない相手よりずっと上等よ。」
 チェルシーは上機嫌だ。手を合わせてみてよく分かる。"祝福と呪詛の担い手"は紛れもない強者だ。自分の全てを叩き込んでも良いくらいの価値がある相手だ。
「もう一度よ。」
 亡者たちから呪詛のエネルギーを吸収したハートサイスを構えて体を回転させる。担い手は左手の手斧を投擲してくるが、スッとワンステップで回避して懐へと踏み込む。直剣を左手に持ち替えた担い手も右手に巻き付く鎖を頭上で回転させながら踏み込み横薙ぎに投げる。チェルシーの体に鎖が巻き付く所をハートサイスを差し込んで空間を作り右掌に備わるルートブレイカーの力で鎖を引き千切る。鎖を引こうとしていた担い手はバランスを崩し、その隙にチェルシーは畳み掛ける。
 回転斬りからの袈裟斬り、横一閃、斬り返し。担い手は左手の直剣を両手で保持して重量とパワーのある斬撃を受け止めて防戦一方になる。1回刃をかち合わせる度に火花が散りそれが呪詛となって担い手の身を焼く。チェルシーの連撃は止らない。思う存分、自身の力を振るえる事が快感となっている。流石に全て防いでくる担い手の技量にも喜びが溢れてくる。チェルシーは、笑った。
「ふふ、楽しくなってきたわ。」

 だが、その楽しさは毒へと変化していく。チェルシーは気が付かない。次第に震脚で吹き飛ぶ澱が減ってきている事に。澱の積もる高さが上がってきている事に。
 少しずつチェルシーの回転は鈍ってくる。吹き飛ばし切れなかった澱が纏わり付いてきている。ここはチェルシーが穿ったクレーターの中だ。自分が有利なフィールドではあるのだが、クレーターという地形が悪かった。裾からは上に満ちていた澱が流れ込み、何より、澱の発生源である担い手のすぐ傍だ。凹んだ地形に、呪詛の赤黒い澱が溜まってきている。そして終にはチェルシーの優位を奪い去る。
「はしゃぎすぎたかしら?これは良くないわね。」
 足が重くなり、バレエダンサー顔負けのステップが踏めなくなって気が付いた時にはすでに膝辺りまで澱が溜まっている状態であった。亡者たちもどんどん湧き出してきてチェルシーに掴みかかろうとする。それらをハートサイスで斬り飛ばす。
 幸いなのが、現状では担い手が直剣しか手に持っていないことだろうか。手斧は投擲でどこかに埋もれ、鎖は先程ルートブレイカーで破壊した。鎖を出してくれば、それが相手の勝負所と分かるのも大きい。だが、どうにかしてここを抜ける必要はある。
 そう考えている時に担い手が動いた。右腕から鎖を数本伸し投げてくる。自分に絡まろうとする分のそれを左手で受け止める。そして反対方向から振り抜かれる直剣を右掌で止めた。
「レディを縛ろうとするなんて、扱いがなっていないこと。」
ルートブレイカーの力がその強撃を無力化すると同時に渾身の力で鎖を引き、振り回す。担い手の手から直剣が離れ、その体は鎖に引き摺られて空中に舞う。そのままクレーターの外に投げ飛ばしてありったけの魔力を込めて衝撃波を放ち澱の戒めを抜ける。
 もう1本、敵から奪った魔力でハートサイスの模造品を造って限界を超えて強化された脚力でクレーターを駆け上がっていく。クレーターを抜けた先には左手を掲げて神聖な光を凝縮した光球を生み出していた。その力の行使は想定していないが、通常の4倍強化された速力なら避けるのは容易いはず。チェルシーは両腕に一刀ずつ携えたハートサイスを構える。見る間に担い手が近づく。
「きっちりその身に刻み込んで差し上げるから、よく覚えてから死んでくださいな?」
 チェルシーは回転を始めたその時、担い手は左手の平の光球を握り潰した。指の間からは神聖属性の弾丸が散弾の様に撃ち出される。回転を乗せたハートサイスでいくらかは弾くが被弾もする。そして、弾いた分や直撃しなかった弾丸が澱に突き刺さって炸裂、閃光を放ちその衝撃と熱がチェルシーを焼いた。

「……、最後まで、隠してたのね。…連れない人。」
 横たわり澱に埋もれるチェルシーを"祝福と呪詛の担い手"が静かに見下ろす。
『加減出来る相手に非ず。うぬとしても望むまい?』
 ふっ、と不適な笑みを浮かべてチェルシーの意識は闇へと沈んでいった。そしてチェルシーの体が光の粒となって宙に立ち昇っていく。生命力がペンタクルム・ゲートへと吸収されているのだ。
 担い手はチェルシーの体が吸収され尽くすのを見届け、血を吐き呻く。もう、彼に残された時間は僅かとなっている。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 苦戦

真白・漆黒
一般人を誘拐して暴力で従わせて……こんな事を許せる訳が無いよな。
『戦う事』が貴様の理由なら、『民を護る事』が我の理由なんだ。
貴様が幾ら強くとも……我は支配者として、民を傷つける者を放っておく訳にはいかない!

……とにかく相手があの神聖な光を使わないような手段を取りたいな……。
戦場が変わった……!?
絶対に当たる攻撃で、急いで倒し切らないと危険な感じだ。

相手が自分に有利な舞台を用意して来るのなら、此方も『漆黒の幻影』を使って、必ず攻撃を当ててやる!

『漆黒の幻影』で必中効果が得られたら『氷銃連続射撃』を使って、
【先制攻撃】【牽制攻撃】【不意打ち】【クイックドロウ】【乱れ撃ち】【喧嘩殺法】【援護射撃】【連携攻撃】の内で使えるものはどんな手でも全て使って必中の最大火力を叩き込んでやる!

先に『漆黒の幻影』を使えれば、向こうもそちらに備えて『神呪葬送』を使ってくれるだろうか?
攻撃力や速度も上がるだろうが、相手の受けるダメージが大きくなってくれれば……あとはやられる前に撃ち切るだけだ!

●矜持の弾丸で敵を撃て
「戦場が変わった……!?」
 真白・|漆黒《ブラック》(|漆黒の支配者《ダーク・ルーラー》のジェネラルレギオン・h09483)は足を浸す赤黒い澱の感触と、白く輝く空間に呼び込まれていた。同時に体から生気がゆっくりと失われていく冷たい感覚を覚えた。直感でしか無いが、これに対抗出来る手段が|漆黒《ブラック》には思い付かない。ならば、急いで倒し切らないと危険な感じだ。
 件の"祝福と呪詛の担い手"は顔を大きな手で覆って何かを耐える様にしていた。星詠みから聞いた話では、"戦う事"を使命にしていると言う。それ故に、こういう場所を用意してまでEDENたちを待ち受けていたのだろう。そして、この空間に取り込まれる前に担い手が言った事が引っ掛かっている。
 "『気は済んだか?』"
 まるで一般人にはもう用がないから見逃してやる、とでも言いたげな台詞だ。その身勝手さに|漆黒《ブラック》は怒りを覚えるのだ。だが、怒りのままに戦って勝てる相手でないことはよく知っている。だから、怒りを力に変えるのだ。

「一般人を誘拐して暴力で従わせて……こんな事を許せる訳が無いよな。」
 担い手に声を掛ける。怒りで我を忘れているわけでは無い。懇々と聞かせる事が必要なのだ。
「荒廃した世界に降り立った者がいた。その世界のあらゆる問題を解決した英雄。|俺《・》の憧れるその人は言っていた。『民を護る為に戦え』と。だから|我《・》も同じ様に戦う。我は|漆黒《ブラック》、|漆黒の支配者《ダーク・ルーラー》を次ぐ者!貴様が幾ら強くとも……我は支配者として、民を傷つける者を放っておく訳にはいかない!」
 そう、これは、真白・黒人が|闇の英雄《ダークヒーロー》となる為に必要な演説だ。その自負が形となるかの様に、白と赤黒に染められた世界に薄闇を纏った仄暗い空間を生み出す。それは|漆黒《ブラック》が|漆黒の支配者《ダーク・ルーラー》として戦える舞台である。
 担い手はその演説を静かに聞いていた。邪魔もせず。その目に悲哀の色を見たのは見間違いだっただろうか。
『うぬは何度も我の前に現われた者だな。なるほど、その胸に期するものがある様だ。ならば、せいぜいそれを失わない様に足掻く事だ。』
 意外にも担い手は諭す様な口ぶりだった。|漆黒《ブラック》は担い手のこの様子にたじろぐ。それは、過去での戦いでは見られなかった姿だ。いや、実際はどれが本当の担い手なのか。
『迷うな。うぬはこの程度で惑わされるのか?』
 満身創痍の担い手は鎖を引く。その先端には直剣と手斧が引っ掛かっていて、それぞれを左手と右手に持って構える。そこで|漆黒《ブラック》も首を振って氷銃・フェンリルを引き抜き狙いを定める。
「迷っていない!我は貴様を倒す!」
『やってみせるがいい。しかし、我が意も容易くは折れぬ!』

 担い手の右手が白と赤に輝き杭が抜ける。神々の祝福と呪詛によって輝く"ベルセルクの凶腕"が空間を震わせる。凶腕が地面を叩くと澱と共に爆ぜて衝撃が伝い|漆黒《ブラック》の足下を揺らす。来るっ!と直感し即座に引き金を2度引く。その弾丸は粉塵で隠れた担い手を正確に撃ち先制攻撃となる。|漆黒《ブラック》は集中する。仄暗い空間を奔る圧と凶腕の暴威を感じ取り牽制の2射目。これは左手の直剣で弾かれる。だがそれに隠れる様に撃っていた氷弾が着弾し担い手の肩口を凍てつかせる。続けて2射。担い手は避けずに踏み込み凶腕で弾丸を消滅させた。
 |漆黒《ブラック》はバックステップしながらクイックドロウで乱射する。速度を落とさず突進してくる担い手は殺到する氷弾を凶腕で弾くが全てを捌けず足や胴に弾丸を受けて流れ出る血も凍り付く。しかし確実に距離は縮まってくる。再び凶腕が地面を叩く。爆ぜた地面と澱がフェンリルを構える|漆黒《ブラック》に降り注ぎ視界を遮る。いや、澱が纏わり付き亡者も取り付いてくる。
「うぉらっ!!」
 蹴りと銃床による打撃の喧嘩殺法で亡者を引き剥がし狙いを再び担い手に。いや、流石に見失ってしまい万事休す!しかしそれはレギオンたちのミサイルの爆煙が救った。土煙を払い担い手の姿が顕わになる、が、もう相手の間合いが近い。
 不意に担い手が凶腕で保つ手斧を投擲してくる。大きくステップして身を躱した所で足から力が抜ける。何の対策も抵抗もせずに澱に触れ続けた為、|漆黒《ブラック》はかなりの力を吸い取られていた。その体を鎖が拘束する。身動きを封じられ、それを解こうと身を捩る。その時何かが動く気配がして右腕の所に少しだけ隙間が出来て腕を出しフェンリルを照準する。その銃口に傷を持つレギオン・アラクラが自らの体をセットして振り向き目線を送る。|漆黒《ブラック》は氷弾の力に自らの冷気を送り込んで暴走させる。見る間にアラクレは凍り付いて氷柱となる。
 担い手は左手の直剣を振り上げ斬り掛かってくる。そのガラ空きの胸に目掛けて、引き金を引いた。アラクレは暴走した氷弾と共に撃ち出され自らもミサイルを撃つ。ミサイルは右肩に命中し死角から迫っていた凶腕が|漆黒《ブラック》のすぐ脇を貫く。同時に氷柱となった氷弾はアラクレの推力も得て担い手の左胸を貫通した。

「はぁ、はぁ…。」
 鎖の拘束から何とか抜け出した|漆黒《ブラック》は担い手の様子を確認する。力は出し尽くし、目の前に靄が掛かり始める。
「何故、あの様なことを言った…。」
 担い手は答えない。変りに直剣を杖代わりに起き上がろうとする。担い手もすでに動ける様な状態では無いのに、その闘志は砕けていない。本人の言っている通り、折ることが出来ない。
『これから、何度も負ける日が来る。それでも貴様は、持ち続けられるか。此度、我に対峙した様に。』
 衰弱し動けない|漆黒《ブラック》に担い手は問う。最後の力を振り絞り、答える。
「あたりまえ、だ……、われ…は、|闇の支配者《ダークルーラー》だ…。」
『良かろう。さらば。』
 直剣の強撃で|漆黒《ブラック》は斬り裂かる。鮮血を迸らせ、それが光の粒子となって虚空に消える。崩れ落ちる|漆黒《ブラック》の体も同様にして消えていく。その行く先はペンタクルム・ゲートだった。

 担い手は膝を付き直剣を地面に突き刺して体を支える。右手を見れば、末端から崩れていく。他の場所も同様だ。もう自身の体が維持出来ない領域に達したらしい。
『せめて、我の全てが崩れるまでは…。』
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

静峰・鈴
神聖なる光であるか、邪なる呪詛であるか
私の知る神霊とはどちらでもあるもの
その心ひとつで、祝福も災禍ももたらすもの

そんな暴虐に立ち向かうことこそ、夜帳が巫女の務め、その刃

「故に挑ませて頂きます。ひとの悪意の結晶、それを背負う戦士よ」
インビジブル化――姿は何一つ変わらずとも、それはこの身が夜の神の寵愛を受けるが故
されど刃と心技の鋭さ、増すばかり

【三尺の氷】を発動すると共に続けて素早く地を滑る早業と、ゆらりと唐突に速度を変えるフェイントを織り成ぜる緩急自在、進退一体の歩法で距離感の幻惑
技の起こり、歩みの速さと変化を掴ませることなく、自らは高霞に構えた刀身で間合いを確実に捉え、刹那の勝機をうかがいます

呪詛の澱は脅威なれど、全身に纏う破魔の気で影響を軽減しつつ

左腕より放たれる閃光
その挙動の始まりの意志を【夜霞】で捉えれば、先制跳躍による閃光を躱して懐へ
また跳躍によって地より足離したことで赤黒き呪詛は消え去り、されど白炎が挟まる余地はなし
後の先を奪う冷艶なる一閃は重ねた【詠刃】による左腕への切断にて、神聖の光を放つ腕を斬り飛ばす、ないし一時の使用不可で不死殺しを制しつつ速度低下を

これで勝負ありとはなりませんでしょう
私には澱が、貴方には速度低下の霊水が動き蝕む
ならば後は気魄宿した刃で押し斬るものが勝つと、斬り結びましょう

「負けられない。必勝を願う。私達が担うは神霊の威ではなく、祈りそのものなれば」

反撃に移る勢いと太刀筋を見切り、受け流すと同時に【朧刃】
不自由な左腕の方へと滑り込み

「後は全力と敬意を以て――命を殺めあうのみ」

神聖殺しとて左腕の機能が殺されば手斧に鎖、直剣と持ち帰るに隙が出来る筈
その刹那を捉え、カウンターで割り込むよう【鏡花】一閃

悪意と狂信を斬るは、静謐なる心でこそ

「全身全霊――」

儚くとも果敢に【朧刃】
さりとて止まらぬだろう猛撃も【夜霞】にて機先奪い、翻す【詠刃】の斬刃で心の臓を捉えてみせます

「この夜帳の刃で貴方を討ちます」

それが私の務め
「祝福であれ、呪詛であれ、過度な神霊の力は今を生きるひとには不要」

尊きは今を生きるひとの心

「悪意で奪うばかりの存在もまた等しく不要です」

●虚像を追うか、実像を見るか
 末端から少しずつ崩れていく右手を握り、担い手は立ち上がった。静かに直剣を右手で抜いて振り返る。その視線の先には黒い巫女衣装に身を包んだ静峰・鈴(夜帳の刃・h00040)がいた。白き炎と赤黒い澱によって禍々しい気配に満たされたその空間に、りん、と鈴の音が響き渡る。その音と共に破魔の気が放たれ無粋にも彼女に縋り付こうとした亡者が祓われて消える。同時に、この空間に立ち入ってから感じていた体の芯から"生気"を吸い出される感覚も和らぐ。月鈴『氷響』の音が巫女の霊力を以て呪詛を押し留めているのだ。
「挑ませて頂きます。ひとの悪意の結晶、それを背負う戦士よ。」
 もう1度氷響を鳴らし、神経を統一する。鋭く、静かに、研ぎ澄ます。鈴の肉体はその姿を残したままインビジブルへと変化し霊力が爆発的に高まる。その身に"夜の神"の寵愛を受け、目前の強者へといざ挑まん。

 顕明剣『夜帳』を鞘より抜き放ち正眼に構え、間合いを詰めるべく一足前に出す。足下を浸す赤黒い澱が、進む脚に押されて積み上がり重さを増す。それどころか澱は脚に纏わり付いて動きを遮ってくる。何より氷響の音だけでは泥の如く足下を浸す澱を祓う事は出来そうもない。纏わり付く澱からは幾柱もの神々の力を感じられた。
 鈴の足運びは多くの"武"と同じく、すり足が基本。泥の様な澱の中では些か支障が出てしまう。だが、それでもやるだけだ。鈴は構えを高霞へと変え、つま先を少し上げる形で澱を踏み、その上を滑る様に移動する。踏ん張ると澱の下に足が潜り込んでしまうので想定の歩法は使えないが、立ち回りは可能だ。
 時間にしてほんの数秒でしか無いが、担い手は言葉も発さず、動きもしていなかった。見れば胸には穴と巨大な爪の痕、左肩に貫通痕、その他凍り付いている箇所や右腕の破裂痕などですでに立って動いている事が不思議な状態だ。ただ、その目だけは戦意を失っていない。鈴はその視線の鋭さに切り込む隙を見いだせずにいる。
 が、そんな膠着状態は担い手が破る。左手を眼前に掲げ、その手の平に神聖な光が収束して光球を生み出す。その瞬間、鈴は霊力を夜帳に流し込み、澱を強く踏んで一足跳びに距離を詰める。その速度は殺到する白き炎を置き去りにするが、澱が引き剥がされる事は無かった。そう、澱と炎がぶつかり優位な方が残り逆が打ち消される、これがこの空間の法則なのだから。
 とは言え、"夜の神"を宿した鈴は多少の足枷程度では止められず、間合いに難なく入る事が出来た。そして夜帳を手元で返しながら上段斬り。霊刀に遷った霊力は切っ先から雫となって鍔までを濡らす。そして斬撃が霊水の帯を引いて担い手に振り下ろされる。担い手は直剣を掲げて打ち合い怪力で押し込もうとする。それをいなす様に霊刀より引かれた霊水の帯に包まれ鈴は姿を晦ましていた。そしてすでに次の斬撃を繰り出す態勢。狙いは神聖な光球を持つ左腕。そこで一瞬の疑念が過る。なぜ、それを放っていないのか?冷たい殺気を感じて澱を踏みしめ大きく後退する。そして、担い手は光球を握り潰した。弾けて細かくなった光球が散弾の如く飛来する。直撃しそうな光の散弾を夜帳で弾いて難を逃れようとするが、弾いた物も含め、足下に着弾したそれは炸裂し閃光を放った。その熱量と衝撃に撃たれて鈴は後ろに弾き飛ばされた。辛うじて転倒は避けるが、顔を上げた鈴の目にはもう一つ光球を生み出す担い手の姿。それを真面に受けるわけにはいかない。
 霊力を再び夜帳に込めて一刀、剣気を飛ばす。担い手は右手の直剣でそれを振り払おうと腕をあげる。その影に入る様に素早く踏み込み脇を抜け様と試み、そして視界が光に包まれた。咄嗟に身を丸め夜帳の刀身で出来るだけ体を隠す。同時に激しい衝撃を受けて弾かれ、今度は澱の中に倒れ込む。途端に澱は鈴を飲み込もうとする様に覆い被さってくる。身動きが取れなくなる前に月鈴『氷響』を手に取って霊力を送り込み、1鳴らしする。りん、と澄んだ音が響き力を大きく減じた澱から鈴は立ち上がった。
 担い手は手を緩めず、鈴に手斧を投げつける。鈴は間一髪で飛来する手斧に気が付いてそれを夜帳で弾く。しかしその余りの重さに態勢が崩れてしまい、その後ろに隠れる様に伸された鎖に腰を絡め取られる。しまった、と鈴が対応する前に凄まじい力で引っ張られる。
「なん、のっ!」
 つんのめって引き倒されるのが最悪だ。ならばと自らその勢いを活かして地を、澱を蹴る。直剣を左手に持ち替えて突き出す構えの担い手を見据え、蛟に構える。視線が交錯し、両者同時に突きを放つ。瞬間に鈴は足を踏ん張り急制動を掛ける。澱が足の裏に押されて重なり足場となった。そこから左側に滑る様に半歩踏み込んで体の位置をずらし直剣をスレスレで躱しながら夜帳を突き出した。
 鮮血が飛び散る。手応えあり、その切っ先は担い手の肘手前の前腕を貫いていた。担い手は直剣を取り落として澱が舞い上がる。しかし相手の立ち直りは早い。獲物を奪おうとするかの様に左腕を引く。鈴は離すまいと必死で夜帳の柄を握り締めて引き摺られ、それが結果として霊刀を引き抜く事に繋がった。だが、担い手は気を抜くことを許さず、右拳が真横から迫ってくる。咄嗟に頭を左腕で守りながら右方向へ軽く足を出して衝撃を受け流す。そして距離を取って柳に構えて仕切り直す。

 担い手の左腕はだらんと力なく垂れ下がっている。"三尺の氷"の霊水を直に打ち込んだ効果が出ている様子。しかし、未だにその瞳には強い意志が宿っている。そして、ここまで手合わせして気が付いた事がある。それは、"祝福と呪詛の担い手"という戦士の技は研ぎ澄まされ、曇りがまるで無いこと。敵意こそ感じるものの、悪意の類いが無い事だ。心静かにただ敵を砕く剣となる。鈴の"夜帳の巫女"の矜持と近しい思想が視え隠れしている。
 対して、呪詛の澱と神聖な光からは常に禍々しい気配が出ている。|担い手とは別に《・・・・・・・》。
 神聖なる光と邪なる呪詛。そこから感じるのは数多の神霊だ。鈴の知るそれはその心ひとつで、祝福も災禍も齎す存在だ。ならば、それを同時に身に受ける担い手とはもしや…。
「ならばこそ、そんな暴虐に立ち向かうのが、夜帳が巫女の務め、その刃。」
 担い手は答えない。油断なく身構えるその瞳に戦意とは別の感情が入り込む。それを読み取ろうとして失敗してしまう。急激に体から力が抜けた為だ。何とか気を持ち直して霊力を高める。気が付けば澱は鈴の体のあちこちに纏わり付いている。すでにかなりの"生気"が失われている。長引かせることは出来ない。それに、"三尺の氷"が効果を発揮している今が勝負時!
「負けられない。必勝を願う。私達が担うは神霊の威ではなく、祈りそのものなれば。」
 鈴は顕明剣『夜帳』を正眼に構える。担い手は右腕を引いて動かない左腕を前にして半身で待ち受ける。彼は武器を持っていない。恐れることは無い。
「後は全力と敬意を以て――命を殺めあうのみ。」
 月鈴『氷響』が、りん、と開戦の合図をする。周囲に湧いた亡者たちが祓われる中、鈴はつま先を浮かせて澱を掴む様に蹴って表面を滑る様に接近する。担い手は右手を振り上げるといつの間にか鎖が背後に伸びていて、その先端に手斧が引っ掛かっている。それを手にして打ち込んでくる。霊刀で受けるそれはかなりの"重さ"があるが、動きが鈍っているので受け流せる。担い手は鈍っている分を振るい方で補うのだが、そうなると重さが落ちる。だから、心を静めるのだ。明鏡止水に達すればーーーー、
 担い手の右脇をすり抜ける様に一閃、血が花片の様に噴き出した。
「全身全霊―― 」
 振り返ると同時に霊力を込めた剣気を飛ばす。その時、担い手の体に白き炎が宿って剣気を掻き消す。急に動きが速くなり、手斧で迎撃される。その下を掻い潜って背後を取ろうとしたところで目前に直剣が突き出されている。鎖で引き寄せられた直剣を頬に掠りながらもギリギリ避ける。通り抜けていった直剣を手斧を捨てた担い手がキャッチして振り返りながら横薙ぎ。背中越しにその気配を掴んだ鈴は真上に飛び上がる。
 生気をかなり失った今の状態では流石に以前と同じとはいかずに白き炎が着弾、閃光を放ち光が目を襲い、衝撃が体を一瞬硬直させる。いや、目の前に夜帳を掲げて視界は死守している上に、体に纏わり付いていた澱が全て燃え尽きて動きを制限する枷が外れた。鈴はその身を焼かれながら目下で自身の左腕を掴みその手に光球を宿した担い手と視線がぶつかる。
「この夜帳の刃で貴方を討ちます!」
 左腕を右腕で武器の様に振るい神聖な光を直接叩き付け様とする担い手に向かって、鈴は渾身の大上段斬りを繰り出す。光球と夜帳が交錯し、鈴は右肩を灼かれながらも担い手の左手を肘の辺りまで両断し着地、再び澱の浸食を受けながら頭上の担い手へ切っ先を突き込んだ。

 背中から担い手は倒れ込んだ。右肩から激しい痛みと共に右腕が動かなくなっている。そのせいもあって、少しズレてしまった。
「はぁ…、はぁ…。祝福であれ、呪詛であれ、過度な神霊の力は今を生きるひとには不要。尊きは今を生きるひとの心。
 悪意で奪うばかりの存在もまた等しく不要です。」
 時間切れでトドメを刺す力も残っていないが、それでも鈴は言わずにいられなかった。担い手は倒れたまま鈴を見つめている。あの時の目で。それがどういう感情か、やっと分かった。これは、"憐憫"だ。
『うぬも同じだ。|我《・》と変わらぬ。』
 ここまで無言を貫いた戦士は、それだけ言って口を閉ざした。鈴はその真意を問いただそうと口を開き掛けた所で、その空間から弾き出された。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

折木・龍也
ここまではそろ~っと付いてきたが、ボスのお出ましか……
オジサンはこういうので死力を尽くしたいわけじゃないんだけどな、仕方ない
やるか
リミッター解除
WZユーサネイジアで地を這うように突っ込む
飛べば白い炎、止まれば澱だ。なら、地上を最速で抜ける
澱に脚を取られても構わん。衰弱する前に終わらせる
銃撃で牽制し、担い手の攻撃は機体の加速と姿勢制御でかいくぐる
「狙撃機に突撃させるな? 俺もそう思うぜ」
機体を組み付かせる

覚悟ってのは使いどころが肝心だ
対応が機体に向いた瞬間、装甲の隙間から滑りでる
「最後の弾は、俺ってわけよ」
爆ぜるのは心臓
即死すりゃ上々
仕留めきれなくても、心臓を爆ぜさせりゃ流石に長くは持たんだろう

●伏兵の奥の手
 折木・龍也(|伏龍《Quiet Fuse》・h13162)は決戦用|WZ《ウォーゾーン》・ユーサネイジアに搭乗した状態でこの空間に入り込んだ。
 本来は潜伏型狙撃機であるユーサネイジアでここまで着いてきたのは、待ち受ける幹部クラスを確実に仕留める為だ。なのに、肝心の幹部"祝福と呪詛の担い手"の姿が見えないと来ている。
「他の奴が倒してくれたのかね?」
 ユーサネイジアのカメラでそれらしい相手を探す。あまり時間は掛けたくない。何せ、脚部からは原因不明のエラーと、WZのエネルギーの減少が計器に表示されている。
 と、地面がもそっと動いて立ち上がる。WZに迫る程の背丈に筋骨隆々な姿、間違いない。
「やっとボスのお出ましか……。」

 確認した担い手は、なぜ生きているのか疑問な程にダメージを負っている様だ。おまけに、あちこちがグズグズと崩れてるおまけ付きだ。そんな状態なのに立ってこっちを睨んで武器を構えている。
 龍也は頬を掻いた。この手合いは、油断出来ない。
「オジサンはこういうので死力を尽くしたいわけじゃないんだけどな、仕方ない。やるか。」
 ユーサネイジアのリミッターを解除し、全機能をオーバーブーストする。そして、真っ直ぐ突撃する。白い炎と赤黒い澱にやられる前に距離を詰めて決着を付ける思い切りの良い作戦だ。真っ直ぐ近づきながら長距離狙撃銃である"Last Call"をぶっ放す。それは本来想定されていない運用の為、火器管制系等から警告が出る。
「狙撃機に突撃させるな? 俺もそう思うぜ。」
 軽口を返しながら姿勢を傾ける。その肩にドスッと音を立てて手斧が突き刺さりスパークが起こる。"Last Call"の銃撃をあのボロボロの担い手は避けただけではなく反撃までしてきたのだ。しかも、投擲でWZの装甲をぶち抜いた。ますます以て全うにやってられない。
 投げつけられる鎖を"Last Call"で受けて投げ捨てる。そして取っ組み合いをする。担い手は左手を大きく破損していて動かないらしくその分は有利かと思ったその時、ユーサネイジアの胸部に直剣が突き刺さる。スパークしてWZの動きが止る。
 担い手は振りほどこうとするが、ユーサネイジアは離れない。そして、胸部装甲が強制パージされ龍也が滑り出る。
「最後の弾は、俺ってわけよ。それじゃ、吹き飛びな!」
 担い手の傷だらけの胸に手を当てて奥歯を噛みしめる。爆発が2箇所で発生する。1つは龍也、もう1つは担い手、それぞれの心臓だった。
 そう、龍也は|確実《・・》に、仕留めに来たのだ。
「へ…、覚悟ってのは…、使いどころが、肝心だ…。」
 ニヒルに笑って、龍也の意識は途絶えた。

 "祝福と呪詛の担い手"は心臓を爆破されてもまだ意識を保っていた。だが、その体はもう死んでいる。そして、心臓付近にあったペンタクルム・パールも先程の爆破で砕け散ってしまった。
 力が急速に失われていく。空を覆う白き炎が消えていき、地を埋め尽くす赤黒い澱が泡が消える様に消滅する。
 移動神殿"スフィンクスゲート"の内部へと戻ったそこで"祝福と呪詛の担い手"の命は尽きた。その体は神聖な光と赤い澱に分かれて分解されていく。
 そして、その場にはもはや何も残りはしなかった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

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