行き止まり、息詰まり
『ペンタクルム・ゲート』関連シナリオ
これは、宿敵旅団『ペンタクルム・ゲート』に関連するシナリオです。これまでの物語は、#ペンタクルム・ゲートで確認できます。
このシナリオに登場する宿敵は、宿敵主との『Anker』関係が失われており、シナリオに参加しただけでは絶対死しません。宿敵主に対して冷淡な反応(他の参加者と同程度の反応)を示す事も多いため、その点は理解の上ご参加下さい。
このシナリオに登場する宿敵は、宿敵主との『Anker』関係が失われており、シナリオに参加しただけでは絶対死しません。宿敵主に対して冷淡な反応(他の参加者と同程度の反応)を示す事も多いため、その点は理解の上ご参加下さい。
●といき
行き詰まった計画にもまだ息はあるのか。
「残念ながら、ペンタクルム・パールによるエネルギーの奪取は失敗となった」
静かに告げるは犯罪鬼妖教授『モリアーティ』。計画的に進めようとし頓挫し、結局自分たちは失敗した。
「ペンタクルム・パールの性質を甘く見ていたのに加え、EDENの√能力者の力も予測以上だった」
どれもこれもEDENのせい。囀る沈黙『レティセンス』はふん、と鼻を鳴らし、自分の髪の毛を弄ってモリアーティの言葉を聞き流していた。
「拉致してきた科学者や技術者を使って、ペンタクルム・パールの問題点の改善にも着手していたのだが――」
間に合わなかったんでしょ? 嘲る言葉を飲み込んで、ただ微笑むだけにしてやった。彼も彼で努力している、うるさいけれどまだマトモ。だが続く声はレティセンスをさらに不機嫌な心地に突き落としてくれる。
――EDENの星詠みに、『スフィンクスゲート』の位置を察知されたのだ、と。眉をひそめたレティセンス、つま先で床をぐりぐり踏み、にじる。
「おそらく、EDENの√能力者による襲撃が行われるだろう」
「おそらく? 絶対よ」
ふん、小さく呟いた声が皆に聞こえていたかはわからない。退屈になってきた|彼女《レティセンス》、だがモリアーティの次の言葉に髪を弄る指を止めた。
「皆には、特別な処置を加えたペンタクルム・パールを配布する」
曰く、研究中に偶然できた失敗作。使えば、一時的に、強大な力を得る事が出来る。
戦闘力の上昇、敵を異空間に閉じ込め、有利な戦場で叩き、潰すことができる――。そして現時点では、他に手段は無いという事実だった。
「ただ、このペンタクルム・パールは重大な欠陥がある。使用すれば、過大な負荷がかかり、場合によっては命さえ危うくなるだろう」
その前にやることはただ一つ。襲撃してきたEDENの殲滅だ。
勝利の道筋は残っている。襲撃してきたEDENを撃破すれば、その生命力をペンタクルム・ゲートに吸収させられる――。
上手く行けばそのエネルギーで、ペンタクルム・ゲートを開く事すらも可能になる。
「奴らが、それを許してくれるかは判らないが……。勝利の為には、なんとしても成し遂げねばならない」
勝利? 敗北を許し続けているのはだあれ。
「皆の健闘を祈る」
眉をひそめたレティセンスは舌打ちをした。
「――健闘なんて雑な言葉!」
ふん。「読まれてるみたいで気に食わないわ!」「あのくらいあっさりでいいのよ!」様々、去る|仲間《・・》に思うことあれど、吐き捨てて歩き、前に進むことしか出来ない。
ああ、いやだ。いやだけど……。
「目的のためなら」
いくらでもやってやるわ。
●おとどけもの。
「マジの厄介事の『お届け』だー!!」
滑り込んでくるは星詠み、オーガスト・ヘリオドール(環状蒸気機構技師・h07230)。やたら乱れた様相からするに、緊急事態のようである。
「特殊なゲートを使って星詠みの予知を擦り抜け続けてた、宿敵旅団『ペンタクルム・ゲート』の拠点を発見できたよ!」
投げられたカプセルから投影される情報――多々! 情報量が非常に多い。
「拠点には様々な√の科学者や技術者が拉致されてて、怪しい研究を進めてる。救出すると共に、事件を起こしている敵や、黒幕の討伐をお願いしたいんだ」
――拠点に捕えられている民間人はペンタクルム・パール事件と同様に、特殊なゲートを使って拉致されたようだ。対象者のすぐ近くに現れて拉致後、すぐ撤退していたため、事件の発生も確認できていなかったというカラクリだ。
「『ペンタクルム・ゲート』は、今はこの技術を彼らの目的の為だけに使ってる。星詠みに察知される前に事件を起こせる特殊なゲート……悪用されれば、世界を揺るがす脅威になる」
世界の指導者たちを簡単に暗殺できる――機密情報重要物品盗み放題。そも、その気になれば既にそのような事件を起こしていても不思議ではない状況だ。これが他の簒奪者たちに知られればどうなるか。
「この技術の流出を止める為にも、今回の事件は急いで対処する必要がある――マッハでお願い!」
両手を合わせて頭を下げるオーガスト。彼にしては本気の『おねがい』だ。
「敵拠点は√ドラゴンファンタジーのサハラ砂漠! √EDENのギザの……ピラミッド? のスフィンクスっぽい形で、拠点自体がすごい力を持つ建造物みたい」
それを護るために、沢山の敵が布陣している。まずはこの敵を撃破し拠点へ突入をしなければならない。突入口は前方・後方・左右の4カ所――いずれかから内部に突入する。
内部にあるいくつもの研究区画には知識ある一般人が働かされている……。
「一般人の救出と、可能なら研究データの奪取もお願い。ただ……」
困ったように眉根を寄せるオーガスト。
「研究区画には技術者や科学者の逃亡を防ぐ為に、敵の『しっぱいさく』が配置されている。救出の為にはこれへの対処も必要だよ」
何をもってしっぱいさくなんて呼んでいるのか……気味が悪いが。
「突入後は当然、敵の幹部が迎撃に出て来る――囀る沈黙『レティセンス』!」
ホログラムに映し出されるは、先日も『ペンタクルム・パール』事件で暴れていた簒奪者だ。
「以前の事件でも確認された『ペンタクルム・パール』って宝石の強化版を使って、自分に有利な戦場を創り出し、そこにEDENを引き込んで戦闘を行う……みたいだけど。彼女が創った特殊戦場内での戦闘では、かなり不利な戦いを強いられる」
彼女自身が強化された上に、相手の有利となる戦場。うまく対応して戦闘を行う必要があるが、果たして。
「可能なら、戦場からの脱出も視野に入れて。……頼んだよ」
事故が起きてからでは遅いのだ――何事も。
●いきがつまる
誰にも考えられなかった「想定外」というものは存在する。
実験の失敗やら徹夜続きなんてものはもはやどうでもいい。今はただ、不気味な怪物が闊歩する屋内に閉じ込められ、息も詰まるような思いでパソコンの前に向かい続けている現状。想定できた方がおかしい。
過呼吸になりながら、まともに眠る隙もないまま、延々と画面と向き合い続ける。意味不明な遺物を研究して過ごす地獄。ああ、地獄だ。ここを超えたところで、待っているのはまた、地獄なのだろう。
マスターより
R-Eおはようございます、親愛なる皆様!
R-Eと申します。
王劍『|縊匣《くびりばこ》』、そして宿敵旅団に関連するシナリオです。
1章の断章はなし、オープニング情報にある事がすべてです。
速戦即決! 頑張っていきましょう!
●1章
集団敵を蹴散らし、スフィンクスゲートに乗り込みましょう。不気味な大量の『蠢く石像』たちが防衛しています。
●2章以降
不明です。
それでは、雑音の中へどうぞ、お客様。
81
第1章 集団戦 『蠢く石像』
POW
捨て身の石像
【腕や剣】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【使用した部位】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
【腕や剣】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【使用した部位】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
SPD
助けを求める石像
命中する限り「【助けを求めるような手】による攻撃→技能攻撃→[助けを求めるような手]攻撃→技能攻撃」を何度でも繰り返せる。技能攻撃の成功率は技能レベルに依存し、同じ技能は一度しか使えない。
命中する限り「【助けを求めるような手】による攻撃→技能攻撃→[助けを求めるような手]攻撃→技能攻撃」を何度でも繰り返せる。技能攻撃の成功率は技能レベルに依存し、同じ技能は一度しか使えない。
WIZ
呪われた石像
【石の体や武器】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【呪いが渦巻く地帯】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
【石の体や武器】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【呪いが渦巻く地帯】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
馬車屋・イタチマッハで、と言われたからね~。呼ばれて飛び出て、イタチさん参上だよ~。偵察戦闘車両のアクセル全開で走っていくね~。 砂漠を走るのは、あんまり経験ないからね~。一応、タイヤの空気圧めっちゃ抜いてきたけど大丈夫かな……途中でスタックしないといいけど…。 【運転・運搬・情報収集】で、味方本隊より先行する形で敵陣に突撃~。電子戦とかじゃなさそうだから、あまり集める情報もないだろうけど、ピラミッド一番乗りを狙うよ~。攻撃?手段は、全速力の車両をぶつけるか、うっかり足を止めなくちゃいけなくなったらプラズマカッターで応戦するね~。・・・火力が貧弱なので、車両に乗ってくれそうな能力者さんがいたら載せてくよ~。
断幺・九アドリブ等歓迎
デケえダンジョンできたッつーから来てみれば、陰謀渦巻いちゃってるカンジじゃん。ちゅーちゃんってば場違いじゃねえ?
まーでも要するに。
在り物まるごとひったくって、気に喰わねえ奴は殺して帰る。ぎゃは、笑えるぐらいいつも通りのオシゴトでチュね!
折角の一番乗りみてえだし、陽動がてら派手めにかましたりまチュかァ――√能力【|叛郎党《デスマーチ》】!
鄙びた砂漠のド真ん中まで罷り越したる大軍勢、スフィンクスの土手ッ腹喰い破るみてえに横合いから突撃キメ込んで。空かせた腹の勢い任せ、石コロ相手の[無差別攻撃]!
数に飽かした[集団戦法]で向こうの動き止めてる隙に、丁寧にブチ抜いて回ってやりまチュよ。
照りつける日差しは避けようとしても難しい。眩い世界をサングラス越しに彼女は見つめ、そしてアクセルを踏んだ。
マッハでと言われたからには仕方がない。
「呼ばれて飛び出てイタチさん参上だよ~」
どやぁ、偵察戦闘車両、アクセル全開! 馬車屋・イタチ(|偵察戦闘車両《RCV》の|少女人形《レプリノイド》の素行不良個体・h02674)が駆る装甲車両がサハラ砂漠を駆け抜ける。
砂塵立ち込め照りつける日差しの中、イタチが向かうは――砂漠の砂の色の中で、黒い石像のようなものと、奥に見えるスフィンクス型の建物だ。
「ぬあ~! 走りにくい」
装甲車両であればイタチ本人の足を使うよりずっと速い。とはいえあまり経験のない砂にスタックはせずとも多少足を捕まれながら、味方の本隊よりも先に駆け出たそれが走る。
――しかし、敵の数が多い。少々分が悪いかもしれない……イタチはそう思いつつも止まるわけにはいかない。
勢い良く石像たちにぶつかり、轢き飛ばしながら進む装甲車両――無数の石像の助けを求めるような手が車へと伸び、その|車輪《タイヤ》を止めようと爪を立ててくる。
「フラグってのは立てるもんじゃないね~……!」
窓から入ってきた手をプラズマカッターで切断しながら、転がり出るように車両から降りたイタチ。のろのろとした、それでいて連続攻撃には優れた|それら《・・・》の手から逃れながら石を切り出すかのように応戦する中で。
「――デケえダンジョンできたッつーから来てみれば、陰謀渦巻いちゃってるカンジじゃん」
黒が、どこからともなく押し寄せた。
「おおっとぉ……!?」
イタチの足元をすり抜けて、石像の足や腹を目掛けて突撃するはドブネズミの群れ――!
鄙びた砂漠のド真ん中まで罷り越したる大軍勢、黒死病も真っ青、数で勝るというのなら同等以上の数をもって制せ。ネズミ一匹捕まえようとする、その手は空かされ、動きが止まる。
「ちゅーちゃんってば場違いじゃねえ?」
断幺・九(|不条理《テンペスト》・h03906)と共に現れたネズミたちがチュウチュウ喧しく鳴く。
「まーでも要するに」
在り物まるごとひったくって、気に喰わねえ奴は殺して帰る。美味しいところは贅沢に頂いてしまえ。
「ぎゃは、笑えるぐらいいつも通りのオシゴトでチュね!」
それは墓荒らしのやり方ではないか。否、本拠地があの姿をしているのだから、それは言い得て妙というやつだ。荒らすべき場所が目の前にあるのなら容赦なし。
スフィンクスの土手っ腹、鮮やかに食い破ってしまえ。無差別に|叛郎党《デスマーチ》が蹂躙する中、荒れ狂うネズミの群れ、その向こうでイタチと目が会う。
軽く手を上げた九の合図に合わせ、もう一度装甲車両に乗り込み――ドブネズミの群れに先導されるように奔るイタチの車両!
車両の上へと飛び乗ってくる九。迫る石像の手を食いちぎり、腹を食い破り、石像にド丁寧に道を空けて頂きながら、装甲車両は走る。
「折角の一番乗りでチュからね」
邪魔だ邪魔だ、前を開けろ。ついでとばかりに放たれる弾丸、足を止めた石像を轢き飛ばし、砂塵を巻き上げる装甲車両はスフィンクスゲートへと向かう――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
クラウス・イーザリー(早く片付けないといけないね……)
敵の拠点を攻めるのならもっと準備をするべきなのかもしれないけど
囚われた人々のこと、ゲートの悪用のことを考えるとそんな悠長なことをしている時間は無いね
真っ向から正面の敵に相対
ダッシュで踏み込みながら月時雨を発動
レイン砲台のレーザーで周囲を撃ち抜き、戦斧の
形に錬成した魔力兵装で続けてなぎ払う
相手の攻撃は回避を狙い、避けきれないなら魔力をかき集めて魔力防御を展開して受け止めて骨折を誘発しよう
基本的には敵を倒して正面から突入する気だけど、正面に敵を引き付けてから急いで側面に回り込んで突入してもいいかもしれないね
その辺は状況を見て臨機応変に動くよ
「(早く片付けないといけないね……)」
その為にも、轍の残る砂の上に並ぶ石像たちの相手をしてやらなければならない。敵の拠点を攻めるのだ――準備期間が取れるのならばそれに越したことはなかったが、人々が囚われている事、何より既にそのためにゲートが悪用された事実がある。悠長にはしていられない。
速戦即決。マッハでやれ。言われたのだから、そうしてみせようではないか。クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)は前を見る――少し遠目に見える、灰色の石像たちを。
ぎ、と石像の腕が鳴る。真正面から走り抜けようと迫るクラウスの影――曇る空。レイン砲台からの雨が降りつける! 輝く白雨が抵抗も出来ぬまま、石の体を削っていく。
それでも群れと化した石像は止まらない。捨て身で突進してくる腕や剣、爪をすり抜けて――魔力兵装を、強く、振り抜く!
戦斧が石像を両断する。ヒトに良く似たそれががらりと崩れ、砂漠の砂の上へと落ちていく。
大ぶりな振り抜きの隙を狙い迫る石像。展開された魔力防御と兵装で受け止め、足元を払い、そしてその体を戦斧にて打ち払う。
数は相当なものだ。ちらりと轍の先を見るクラウス。先陣を切ったものたちの行った道も今では石像たちが蠢いている。
真正面から切り込むには少々骨が折れるが、どこから侵入しようとも同じか。
白雨が伸ばされた指先を砕き、砂漠の砂粒のひとつへと変えていく。
前を向き直したクラウスは、石像の――何かを求めるかのように手を伸ばし、そして振り上げられた腕を断ち切りながら眉をひそめた。己の呼吸と動作音、石像が砕ける音、ぎち、という石像が蠢く音だけが響いている――。
これが『彼女』が望んだものだというのなら、ああずいぶんと悪趣味だ。
砂を踏む音ひとつひとつを聞き、迫る石像の追う足取りと伸ばされる腕や得物を振り払いながら、クラウスは先へと進む。砂に足を取られながらでも。この先に、救うべきものと、討たねばならぬ敵がいる。
スフィンクスゲートに乗り込んだクラウス。その肌にひやりとした感覚。屋内、影の中、下がった気温を感じながら、彼は走る。
🔵🔵🔵 大成功
和紋・蜚廉成程。
喋る言葉を持たぬ集団がこの場の敵か。
…随分と、徹底しているな。
確かにこれでは、放水は意味もない…。
ふ、だが肉弾戦こそ望む所よ。
放水で効かぬのなら、崩撃で全てをひっくり返す。
攻撃の挙動を潜響骨で感じ取りつつ、
意思の冷たさと敵意が最大限把握できる機を野生の勘で待つ。
迫る瞬間が重なった所で、逆墜を叩き込む。
重量攻撃をのせ、罅割れすら生じる威力で、
散らばった礫諸共、ぶつかり合う方向を下へと指定しよう。
崩撃から逃れた像も、石の雨とくればただでは済むまい。
雨だれでは時間が掛かるが、石だれでは穿つのもあっという間だ。
連鎖した衝撃で罅割れた箇所に向けてグラップルを行い、
構えた武器ごと握りつぶす。
成程。呼吸のひとつすら赦しはしない、と。
「喋る言葉を持たぬ集団がこの場の敵か」
砂塵の中、立ちすくむようにEDENを待ち受ける石像たち。雨に濡れようとも半端では穿たれぬ。それでも少しずつ数を減らしつつある灰色の影らを見て、和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)はひとりごつ。
「……随分と、徹底しているな」
前回のような対策を取らせはしないと考えられたものか、それとも単純に、自分以外の|雑音《ノイズ》を除去しようとしているからか。物言わぬ彼らは時折体をきしりと蠢かせるだけだ。
だが、都合がいい。何せ|突破口《・・・》はすぐそこにあるのだから。
肉弾戦こそ望む所。
「放水で効かぬのなら」
崩撃で、全てをひっくり返せば良い。
近づく蜚廉の気配を読み取った石像たちが蠢き始めた――その軋むような音を|己《蜚廉》の躰が捉える。
砂を踏む足音、軋む体、得物を振り上げる風の音――砂粒が流れていく世界の音。
遺志も朧げ、だが確かなる敵意が滲んだ、その瞬間だ。
逆墜。
強かに打ち据えられた石像の腹部――すべてはそこから始まった。
――蜚廉を囲み袋叩きにしようとした石像たちが砕けていく。
下はどこか。『墜ち行く先』は各々であった。砕けた石片が互いに打ち付け合い広がっていく。散らばる礫が周囲を埋め尽くす。
己の体であったもの、そうでないもの、砕けてしまえばすべて同じだ。混ざり合い、次なる犠牲を生み出すために外へ、外へと散らばっていく。
雨だれでは時間が掛かるが――石だれでは穿つのも、あっという間。
それでも形を保っている石像が、得物を掲げて突っ込んでくる。ひび割れまみれで脆くなった箇所へ叩き込まれる蜚廉の重い一撃。握りつぶされた得物、そのままバランスを崩して倒れていく石像を踏み、蜚廉は駆ける。
強かな肉体から放たれる一撃が一体、また一体と石像を砕き、石の雨が降り注ぐ。
するりと野生の躰が間を抜けて、スフィンクスゲートへと走り抜ける。その速度に追いつけるものなど、いない。
🔵🔵🔵 大成功
澪崎・遼馬「密葬課、現着した。これより突入を行う。」
予知さえすり抜けるゲート。星詠み殿の言う通り、これが普及してしまえばEDENと簒奪者のパワーバランスが覆る。だが本拠地が判明した今、攻守が入れ替わったともいえるだろう。
「悪いが時間が惜しい。押し通るぞ。」
蠢く石像、半端な物理破壊ではものともしなさそうな相手だな。それも複数いるとなれば尚更だ。やるなら徹底的に粉々にするか、或いは魔術や霊的なアプローチをするべきだろう。
当人自らの影を『異形化』し、それを武器にした『霊力攻撃』で石像たちを攻撃しよう。
連撃は喰らうわけにはいかない。敵からの攻撃には強化された『見切り』で対応。
「密葬課、現着した。これより突入を行う」
地摺耶烏の囀りを聞くもの、己の『先』を思うがよい。二丁拳銃を手に砂を踏む澪崎・遼馬(地摺耶烏・h00878)は静かに目を細めた。ひとのかたちをしている。では、ひとではない。あるいは『もう』と付け足したほうが良いだろうか。
星詠みの予知をすり抜け、此度の事件を引き起こしている件のゲート。これが普及してしまえば――『使い方』を知ってしまえば、どうなるか。
元より簒奪者は邪悪なるインビジブルから力を得ている強力な√能力者たちだ。それが好き放題暴れるとなれば、EDENの力だけではどうにもならない事件が発生する。現に、予知にさえ引っかかっていれば防げたであろう被害もある。
だが本拠地が判明した今――。
「いつまでも後手であるとは思わないことだ」
どれだけ防御を固めようとも、『入口』があるのなら。遼馬は静かに息を吐く。
「――悪いが時間が惜しい」
蠢く石像たちが動き出す。脆くなっている石像も存在するが、それを狙うだけではまだ数が多い。半端な攻撃を加えても無駄だろう。やるならば徹底的に粉々にするか――あるいは、魔術や霊的なアプローチ。
ならば手がある。「手」と呼ぶには少々語弊があるが。
――ずるり。日光に強く照らされた遼馬の『影』が立ち上がった。
光あるところに影はあり、強い光源を受ければより影は濃くなるものだ。地の利はこちらにある。異形化した濃い影が、先を急ぐ遼馬の目前に立つ石像を薙ぎ払う!
影は砂上を走る遼馬の行先を|祓う《・・》ように石像たちの手と得物をへし折りながら、駆けていく。
目前に現れ、爪を立てようとしたその手をするりと抜け、その腕を影がざくりと切り落とす。それでも先の失せたそれで殴りかかってこようとするのを、拳銃の弾丸で撃ち抜いた。
「押し通るぞ」
静かな声が、軋む石像たちの蠢く音と砂上に響き。次いで、銃声とバキリと石像が割れる音。
静寂とは程遠くなった世界、ゲートへと向かう砂を踏む音が響いていく。
🔵🔵🔵 大成功
赫夜・リツアドリブ連携◯
かなり差し迫った状況だということが話を聞いて伝わった
彼女も動き出したなら急がないと…
動く石像…やたら数が多いし硬そうで厄介だな
内部に入ったら何が起こるかわからないし
今の内に血液貯蔵瓶の血をギョロに与えておこう
怪力状態の異形の腕で【荒れ狂う剛腕】を発動し石像たちを砕いていく
霊的防護を纏った腕で攻撃を防ぎつつ、射撃がきたらカウンターで対処
呪いを受けて成功が半減しても諦めず
石像の数を減らして突入するための道を作れるように頑張ろう
…この石像、よく出来てるな
もしかして…って思ったけど、ここで攻撃を止めるわけにはいかない
今は閉じ込められた人達を救うことに集中する
急ごう、手遅れになる前に…
星詠みの焦りとこの状況。差し迫った状態だ。そして思い出すは、あの『少女』の甲高い笑い声である。
目前に広がる石像たち、奥に見えるはスフィンクスゲート。まるで本物の石像のように立っているそれらを一瞥して、リツは静かに眉根を寄せた。
「(……やたら数が多いし硬そうで厄介だな)」
中に入ればどうなるか。前情報では、囚われている人々がいるというが……ともあれ準備をしておくに越したことはない。血液貯蔵瓶の血を|異形の腕《ギョロ》に与えて、赫夜・リツ(人間災厄「ルベル」・h01323)は走り出した。
踏み慣れぬ砂の上、だがそれを気にしている暇はない。
硬化した腕が石像たちをまるで撫でるように払えば――石像が、一気に砕けていく!
「(意外といける!)」
確かな手応え。圧倒的な怪力による二撃目が叩き込まれ、前が開けた。勢いづいたリツはゲラゲラと笑い荒れ狂う己が片腕と共に先へ走る。真横から伸ばされる腕を霊的防護を纏わせた腕で防ぎ、その効果の発動を防ぐ。避けてしまえば不利になる――故に一撃ずつ受けて進むぶん、速度はやや遅いが確実だ。
囲まれればギョロと共に腕を振るい、スフィンクスゲートへと向かっていく――!
石像の数は着実に減っていく。――それでも、砂の下から湧いて出てくる。殲滅は不可能かもしれない。砂の中に埋もれていたそれが這いずり出る様は、まるで墓場から出てくる死体のようで――。
「(……この石像、よく出来てるな)」
リツはこの先に待つ少女のことを考える。彼女が好むは、静寂だ。物言わぬ人形、感情も声もなく、動きもしない蒐集物。
もしかすれば……この石像たちは。
「……っごめん!」
察したところで、ここで攻撃を止めるわけにはいかない。EDENを待つ人々がいるのだ。何がなんでも押し通らねばならない。
彼ら――ペンタクルム・ゲートが研究を放棄することを決めれば、彼らはすぐに『処分』されてもおかしくないのだ……手遅れになる前に、対処せねば。
砂塵が、戦場に吹き荒れる。
🔵🔵🔵 大成功
神咲・七十アドリブ・連携お任せ
うにゃ……確かにマッハで行ったほうがいいかもですね?
……何処でも四六時中現れる様になったらおやつタイムもライブも出来なくなっちゃいます
(√能力のフリヴァくを呼び出して一緒に向かう)
んぅ……スフィンクスゲートと石像がマッチしすぎてて元からある防衛機構っぽいって思っちゃいます
まぁ、そんな事は置いておいて解決の為に通して貰いますよ
(『チル・マイ』を歌い、隷属者を呼び出してひたすら特攻を仕掛けさせる)
どうやらあんまり遠距離戦は得意ではなさそうですし、石が粉になる勢いで磨り潰しちゃいましょう……多分、その位は出来ますよね?
(石像を物量で圧殺しながらゲートに近づいていく)
「うにゃ……確かにマッハで行ったほうがいいかもですね?」
首を傾げた神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)。今日のおやつは熱さで溶けない、紙に包んだ小さいバクラヴァ。さくさくとした生地とナッツ、そしてとびきりの甘さが癒しを与えてくれる。水をひとくち飲んで、七十はスフィンクスゲートとその前に居座る石像たちを眺める。
「……何処でも四六時中現れる様になったら、おやつタイムもライブも出来なくなっちゃいます」
ズレてる。だが、今回ばかりはそのくらいのノリでいても良いかもしれない。堅苦しくてはあの石像たちと同じようなものだ。
呼び出すは|邪神の欠片《フリヴァく》。砂粒の中につま先が沈み込む。少女の姿をしたそれは、少し暑そうに額に掌を当て、手で庇を作った。
「んぅ……スフィンクスゲートと石像がマッチしすぎてて、元からある防衛機構っぽいって思っちゃいます」
異様であって、サハラ砂漠によく似合う、スフィンクスを象った建築物。√ドラゴンファンタジーらしい光景だ。
広大な砂漠の中にぽつんとひとつ。星詠みの探知に引っかからなかった理由は定かではないが、こうして捉えたからには突入も容易だ――ひとつの問題を除き。
「まぁ、そんな事は置いておいて、解決の為に通して貰いますよ」
歌声が砂塵の中に響き渡る。|邪神の欠片《フリヴァく》から発せられる甘く通る声は踊り子が舞う姿を想像させるような、澄んだ声色だった。
砂の中からうずめき、うごめき、そして立ち上がるのは隷属者。数の減ってきた石像たちの相手はこれで十分だろう。通るぶんには、だが。己も両手に得物を構え、隣の少女と共に駆けていく――!
隷属者たちの役目は簡単だ。七十を守り、石像の足を挫き、彼女たちに被害が行かぬようにするだけ。遠距離戦を得意とする石像は少ないようだ。弓の弦すら石に変えられていては、矢をつがえることもできないだろう。
「石が粉になる勢いで磨り潰しちゃいましょう」
……多分、その位は出来ますよね?
物量は相応、石像の上にさらに倒れる石像、罅の入るその体。その上を七十は駆ける。
🔵🔵🔵 大成功
ディラン・ヴァルフリート現状……ゲートを利用した敵の作戦阻止は不可能でないにせよ困難
しかし敵にとっても順風満帆には程遠い……と。
無為の儘に空中分解する事も無さそうですが……
さて、このまま敗北を重ねればどう動くやら
前座に時間を掛けるものでもありませんね
装備[竜眼]《霊視》全方位に視界を拡張し【響刻】
"石像同士を敵と認識する"錯覚を付与する事で同士討ちを誘発します
敵√能力は攻撃した側もされた側も大きく損傷するもの
弱ったところに最大震度をぶつけ効率的に破壊しつつ進みましょう
敵地に乗り込む形である事も念頭に《第六感》
罠や監視の可能性も留意しつつ
必要に応じ《オーラ防御+受け流し》
道を塞ぐ障害があれば《怪力》払い除け最短経路で。
ペンタクルム・ゲートの所業は厄介と呼ぶに他ならない。ゲートを利用し、一瞬で悪事を成し、そして撤退する。今回の誘拐事件は、その一例でしかないのだろう。
前回――ペンタクルム・パール事件時も星詠みが察知する以前に殺人事件が起きた――。困難ではあるが、目的が分かっていれば阻止は不可能ではない。理論上は、だが。
「(しかし敵にとっても順風満帆には程遠い……と)」
ディラン・ヴァルフリート(|義善者《エンプティ》・h00631)は前方を見る。
星詠みが詠んだ光景を見るに、彼らは度重なる失敗で相応の痛手を負っているようだ。
最初から統率が取れているかといえば間違いなく否であるが、各々野望がある様子。このまま空中分解する事は無さそうだが。
「さて、このまま敗北を重ねればどう動くやら」
笑むことはない。だが、ただ、興味はある。その感情とやら、教えてもらっても構わないかもしれない。
石像たちは前座だ。時間をかけてやる暇はない。支配するは竜の魔眼。
――『|響刻《ロア》』。
ディランの拡張された視界に見えるは石像たちだ。そして、砂の中に埋まっている石像も――。
錯覚するがいい、己らが戦うべきは、打ち砕くべきは何だったか。砕けるがいい。見ていてやろう。
蠢き始めた石像たちが、互いの躰を目掛けて得物を振り上げた。鈍い石同士が打ち付けられ、砕ける音。
それらは抵抗ではなく攻撃だ。容赦のない取っ組み合いにも近い状態で、攻撃が通っていく。容易く崩れていく体、おぼつかない足取りで殺し合いを『演じる』役者にもうひと息。
石像が揺れる。ひしめきあっていた躰同士がぶつかりあい――折れる、崩れる、罅が入る。
自ら砕いてやる必要もないか。ディランは先を見据える。この先は敵地だ。蠢く石像たちが同士討ちを繰り返している中で、彼は進む。罠や障害物はない。今は。だが先に待っているものが何かは星詠みが言っていた――『しっぱいさく』と一般人。
多少、念入りに警戒しても良い。――視えているのだから。
ディランはスフィンクスゲートへと踏み入った。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 冒険 『スフィンクスゲートに囚われた一般人の救出』
POW
研究区画を徘徊する『しっぱいさく』を撃破する
SPD
研究区画の一般人の避難経路を確保、安全地帯に脱出させる
WIZ
一般人が行っていた研究について、調査を行う
√ドラゴンファンタジー 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
静かな空間に、べた、べたと不気味な足音がする。外の――砂漠の気温とは異なり、冷えた屋内には広い廊下が広がっていた。
――研究区画はあちこちに分散している様子だ。……気配を探れば、人間以外のものも感じ取ることができるはずだ。
……『しっぱいさく』。それは、呼び名にふさわしい姿をしていた。
数体の、そう多くはない肉塊のような何かが、廊下を闊歩している。
けだものにも、にんげんにもなりそこねたかのような、赤黒い巨体がべた、べた。
これをどう処理するか。その不気味な目を掻い潜り一般人の救助にまわるか、真正面から打ち砕くか。
選ぶのはEDENだ。
馬車屋・イタチ……マッハで来たから、姉妹たち(少女分隊)を置いて来てしまったね〜…。ま、イタチは狭い細い通路を潜るのが得意な生き物。やれるだけやってみるよ〜。【撮影、地図作成、探索の心得】でマッピングしながら探索。敵さんはプラズマカッターの【切断】で何とか…頑張って応戦するね〜。 要救助者を発見したら、来た道を一緒に後退。【救助活動、キャンプ】で、道中の良さそうな地点で簡易な救護体制を作るよ〜。……ガチなバトルは強いヒトたちに任せるね〜。その代わり、まだ生きてて何とかなりそうなヒトがいたら、此処まで連れて来てくれると嬉しい〜。要救助者の様子や敵地の状況次第では、一足先に【逃げ足】で脱出撤退を検討するよ〜。
「……マッハで来たから、|姉妹たち《少女分隊》を置いて来てしまったね〜……」
今からでも呼ぼうと思えば呼べるだろうが、そうしている時間も惜しければ、少々リスクもある。数が多いということは、そのぶん発見される危険も増す。馬車屋・イタチ(|偵察戦闘車両《RCV》の|少女人形《レプリノイド》の素行不良個体・h02674)はちょっぴり顎を揉んで、それから頷く。
「ま、イタチは狭い細い通路を潜るのが得意な生き物」
潜入するには丁度よい。やれるだけやってみる。
こっそりひっそり。見つからないこと最優先。接敵しないよう足音を確認しながら、カメラなどで撮影しマッピングを続けていく。
どうやら区画がいくつかに分断されている構造のようで、闊歩するしっぱいさくの数はそう多くないが、個々の戦闘能力がどのくらいかは測れない。安全に入り込めそうな部屋を発見したイタチはぬるりとそこに入り込み、そしてドアをゆっくりと閉めた――。
「は……あ? だれ? だれっ……」
――暗闇の中、光るパソコンの画面。目の前の巨大なケースに収まっている謎の造形をした遺物。そしてその前に座っていた人間が、はっとこちらを振り返った。薄汚れた衣服と乱れた髪から、誘拐された時のまま、この部屋に閉じ込められていたことが容易に分かる。
「しーっ。静かに。イタチさん味方、救助、オーケー?」
「お……おーけー……」
端的に伝えるイタチに頷いた研究員は、怯えながらも立ち上がり、ふらつきつつイタチの後に続いてドアの前に立つ。『しっぱいさく』の気配がないかを確かめたイタチはそっと音を立てないようドアを開けた。
そして、彼らの巡回経路にない場所に築いていたごく小さな拠点へと研究員を案内する。
「生きててよかったよ~。これ水ね」
「あ、ありがとう……!」
ひそひそ声でのやりとりだ。水をひとくち口にした研究員は、自分が辿ってきた通路を見て、研究員は不思議そうな顔をした。どうやら、この辺りの構造すら把握できていないらしい。
……|ガチなバトル《本格的な戦闘》は強いヒトたちに任せるに限る。今は自分の出来る最大限のことをするまでだ。
もし合流できるのであれば一気に逃がすことも可能だろうが、研究員は相当に疲弊している。
拠点を残したまま――誰かが見つければ有効活用されるだろう――イタチはそのまま撤退することを選んだ。
🔵🔵🔵 大成功
神咲・七十アドリブ・連携お任せ
うにゃ……救助もですが……このしっぱいさく達もどうにかしてあげた方がいいですかね?
……まずは誘導を優先して避難、それから倒しましょうか
(√能力を使用。引き続きフリヴァくを呼び出して。『チル・マイ』を歌い、隷属者達を呼び出す。最初はしっぱいさくを誘導して、科学者達が避難しやすい様に)
んぅ、全体の誘導して纏めもして一気にいける様にもして……避難優先ではありますけど……
(避難と敵の誘導、敵を一纏めにして相手も誘導もしやすくして。避難が終わってから纏ったしっぱいさくを一気にに室内の狭い中での物量で圧殺して倒そうとする)
んぅ……こういう相手はどうしても気分が悪くなっちゃいますね
「うにゃ……救助もですが……このしっぱいさく達もどうにかしてあげた方がいいですかね?」
べたべたとした足音を物陰から聞きながら、神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)はその足跡の主――『しっぱいさく』を観察する。
「……まずは誘導を優先して避難、それから倒しましょうか」
方針は決まった。となれば呼び出すは|邪神の欠片《フリヴァく》だ。彼女が歌い始めるは『チル・マイ』。その場から現れるは隷属者たち――だが、その『歌声』を、しっぱいさくは確と聞き取った。
歩いていたはずの足音が走る音へと変化する。ぬぢゃぬぢゃと一体、二体と現れた『しっぱいさく』。下手に|音《声》を発してしまったのは、少々無策だったか――!
隷属者たちを用いて『しっぱいさく』の意識を誘導し、七十は急いで研究室のドアを開ける。
外の物音と響く歌声に驚いている様子の研究員は七十を見て後ずさりをした。今までこの部屋に訪れるものはとんでもない『監督者』だけだったが、今回は違うようだ。
「お話は後です、早く!」
七十に急かされ――救助に来た相手だと理解したのか、研究員は彼女に連れられて外へと出る。
外で待機していた|邪神の欠片《フリヴァく》が歌い続けることで生み出されていく隷属者たち。だが物量だけではその巨体は押しきれないようだ。ひとりであれやこれやをこなすには力不足。
研究員が居なくなった室内に押し込み、隷属者たちによる圧殺を試みるも――『しっぱいさく』の一体が、自分の顎を、破壊した――!
同時に破壊される隷属者たちの顎。食らいつく力を失った彼らは『しっぱいさく』を強く負傷させる手段を失い、そして倒れていく。新たに生み出され続ける隷属者たちが、倒れた同胞の|屍《かばね》を踏み越えて進むが、出来ることは足止めどまりだ。
ならば避難優先。|邪神の欠片《フリヴァく》に任せ、七十は廊下を駆けていく。
「んぅ……こういう相手はどうしても気分が悪くなっちゃいますね」
自分が言えたことではないかもしれないが――それでも、全力で挑まねばならない。……殿をつとめていた|邪神の欠片《フリヴァく》の歌声が消えた。同時に消えていく隷属者たちの気配を感じ取りながら、七十は研究員の手首を掴み、走る。
🔵🔴🔴 苦戦
ディラン・ヴァルフリート心を折り反抗の芽を摘む……合理的ですが非効率ですね
果たして研究はどれだけ進んだのか
さて
"正義の味方"としては僕も此方を重視すべきでしょう
《第六感》見当を付け《霊視》で敵や罠、救助対象の配置を把握
味方とも臨機応変に連携し救助に当たります
「……遅くなった事にお詫びを。助けに伺いました」
【仁刻】オーラ付与
最長10分の完全回復と共に身体・思考・精神のケアで逃走補助
他、有用そうな資料は回収を。
失敗作の能力射程に救助対象が入らぬよう留意
適宜[断界]《オーラ防御》で護りつつ
[至斬傑牙]《早業+怪力》遠隔斬撃で処理します
次の敵が異空間へ閉じ込めてくる戦術も予め伝え
救助対象が巻き込まれぬよう備えたいところですが
静かに。予知を聞き得ていた情報を思い出しながら、ディラン・ヴァルフリート(|義善者《エンプティ》・h00631)はこの先に待つ被害者たちのことを考える。
「心を折り反抗の芽を摘む……」
彼らは逃げようという気力を徹底的に削ぎ落とされているのだろう。睡眠時間、清潔感、食事、削れるものはいくらでもある。
「合理的ですが非効率ですね」
さて、それで果たして研究はどれだけ進んだのか。お察しなことだろう。餌がなければ生物は動かない。それは人間も動物も同じこと。――こうも|缶詰《・・》に密閉されていては、中身がわからない。
さて、『正義の味方』をしようではないか。優先すべきが何か。ディランは「それらしさ」を選んだ。
第六感で感じ取るのは道を塞がんばかりの『しっぱいさく』の派手な気配だ。霊視で見える視界の中には罠はない。
肉塊どもは同じようなところをぐるぐると巡回している。ありがたいことだ、そこに救助対象がいると分かるのだから。
肉塊の巡回を抜けて、ディランは研究室内への侵入を果たす。研究員はディランを見てびくりと肩を跳ねさせ、椅子から転げ落ちそうになってしまった。
「……遅くなった事にお詫びを。助けに伺いました」
そんな女性に手を差し伸べるディラン。女性は恐る恐るディランの手を取る――ずいぶんと爪が伸びている。どれだけの間閉じ込められていたのか、その期間を察することができた。
|仁刻《ロア》。|生命《いのち》の本質は善である。外にいる『しっぱいさく』たちは部屋に侵入されたことをまだ察していないらしい。
ゆっくりではあるが体力と落ち着きを取り戻していく研究員の女性。だが、あまり長居はしないほうがいいだろう――。
「何か、有用そうな資料はありますか。少しでも頼りになります」
「あっ……あ、紙のものなら、何枚か……!」
外の気配を探りながら言うディランに、女性は急いで机の上に広げていた資料を回収する。束にしたそれを抱えて、女性とディランはドアから出た。
しっかりと周囲を窺っていたのもあり、このまま無事に無傷のまま脱出できそうだ。
――この後に待ち受けるレティセンスがどのような空間を作り、待ち受けているのだろうか。ディランは救助を終えた女性を安全な場所へと逃がしながら、考える。
🔵🔵🔵 大成功
断幺・九アドリブ等歓迎
ぅわお。こんなの作ってンのコイツら? 趣味わッるぅー。
ああいや、それとも作り損ないなんだっけ。ま、どーでもいーけど!
何にせよ触らぬなんちゃらに祟りナシって言いまチュからァ? 無駄にカロリー使うのもヤだし、[闇に紛れ]てテキトーにやりすごすかね。
こちとら[探索の心得]なら一通り。軽く脱出経路に当たり付けたら、捕まってる連中の間抜け面でも拝みに行って――うえ、骸骨みてえな有様じゃんか。日の光とか浴びた方いいでチュよ?
ほらほら、いいから持てるもん持ってネズミみてえに意地汚く逃げろって。護衛なんざガラじゃねーけど、エンカウントした|挽き肉《・・・》の調理くらいはしてやりまチュから!
「ぅわお。こんなの作ってンのコイツら? 趣味わッるぅー」
あんな不気味な肉塊、誰が作り上げたのか。研究員たちがあれの製造に関わらされていたのなら……損な役回りだ。
「ああいや、それとも作り損ないなんだっけ」
まあ、『しっぱいさく』と呼ばれているからには、研究者たちは実に巻き込まれ損。まあしっぱいさくとはいえ、役立っているかといえば是であるだけマシなのだろう。
「ま、どーでもいーけど!」
――そこまで考えて、断幺・九(|不条理《テンペスト》・h03906)はばっさり思考を切り取った。九にとって、前提とは取るに足りぬことである。
触らぬなんちゃらに祟りナシ。無駄にカロリー消費もしたくない。薄暗い廊下、そのさらに暗がりを走る九。耳で感じ取るべとべとの気配に注意を払いながら、『しっぱいさく』と出会わない最短経路に当たりをつけつつ、足音を殺して走っていく。
「はいー間抜け面拝みに……うえ」
ドアを開けた瞬間見えたのは、今にも力尽きそうに背を丸めながら、パソコンに向かっていた研究員だった。
消耗がかなり激しいらしい。無精髭を生やした彼は反応もどこか薄い。「まだ……まだ成果は……」などとブツブツ呟いている……。
「骸骨みてえな有様じゃんか。日の光とか浴びた方いいでチュよ?」
……その日の光を浴びたら、浄化されて消えそうな気すらする干からび具合である。さながらミイラ。最低限の生活しか保証されていなかった様子だ。このまま放置していたら本当に干からびて死んでいたであろう。
「ほらほら、いいから持てるもん持ってネズミみてえに意地汚く逃げろって」
「持てる……持てるもの……」
ふらふらしながら机の上を探る研究員の手。その手が取ろうとした紙束を「まったく!」と九が束ねてやり、その胸に確と抱えさせる。
耳をぴるっと動かし、音を探り、べたべたとした足音が遠ざかるのを確認してから――九は研究員と共に、導き出していた最短経路の道筋で退路を行く。
だがやはり研究員の脚は遅い……足音がゆっくり迫る――仕方がない。
「ここ、まっすぐ行ったら出口でチュから」
研究員の背を軽く叩いてやる。出口の光を見た研究員が、ふらつきながらも走り出した。
九は振り返る。目前には、一体の『しっぱいさく』――! 護衛なんざガラじゃない。だが。
「――|挽き肉《・・・》の調理くらいはしてやりまチュから!」
|黒死無葬《ダンスマカブル》、泣いて喜べ仇腫救廃!! 銃声が通路に、高らかに響く――!
🔵🔵🔵 大成功
和紋・蜚廉徘徊する位置取りを潜響骨で聞き取り、
繰り出した赫裂脚より生じた分身と共に、失敗作の排除へ取り掛かる。
逃がす役目は他の者達へ。
我は道を切り開く事に徹する。
翅音板より魅了の音を放ち、集団を誘い込もう。
精々、上手く惹き寄せられるがいい。
…その姿、創造主を恨む意思すら無いのだろうな。
ならば、人形と変わらぬ。
分身と共に斥殻紐の捕縛罠を張り巡らせ、
誘いへ乗った失敗作を絡め取る。
紐には殻喰鉤を纏わせて、
藻掻く程に食い込む不自由を味わうがいい。
……いや。
そもそも、自由と不自由の違いすら分からぬか。
元より障害でしかないのなら、倒すのみ。
肉壁らしい役目を果たす姿も、
我が物量で押し潰してくれよう。
徘徊する足音は減ったようだ。先を行くEDENが撃破を果たしているのであろう。潜響骨が伝えてくる情報は、数と、その行先だ。
なれば己もそれに続け。和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)は、接敵と同時に振りかぶられた『しっぱいさく』の腕を避け、穿脚を確りとその肉に叩き込んだ。
わらわらと溢れ出る分身――数えるのも億劫。見ゆる虚、文字通りの黒山が、要救助者の居なくなった通路を埋め尽くしていく。
遠慮の必要はない。これで群れの中の一匹となった蜚廉本体を叩くには難しくなった。蜚廉から鳴り響く音が、べったべったという足音を立てて迫る『しっぱいさく』の耳――どこにあるのだかわからないが――に入った。精々、上手く惹き寄せられよ。
まるで人体が溶けたかのような姿だ。肉塊、そうとしか言いようがない。あらぬところに人らしきパーツがついたそれに蜚廉は思う。
「……その姿、創造主を恨む意思すら無いのだろうな」
ただ、目の前の敵を排除しようという本能はある。蜚廉の分体を傷つきながらも押し除けて進んでくる様。
「ならば、人形と変わらぬ」
内面の静けさだけは、あの少女が好みそうだ。分身が張り巡らせていた斥殻紐、その捕縛にかかる『しっぱいさく』。
分身の多さで隠れていた鉤がその肉体に食い込み、真っ赤な傷を作っていく。必死になり手を伸ばしてくるその様は不気味で、異様で、それでいて哀れにも見えた。
自由と不自由の違いすら分からぬ思考でも、己を阻害する「何か」があるのは理解できたらしい。ようやく引きちぎった紐、そして突進してくる体。蜚廉はそれを蹴り付け後退させ、分身と共に袋叩きにする。
元より障害でしかないのなら、倒すのみ。そうすることでしか救われない。目的を果たすことだけが、彼らが生まれた意味ならば――肉壁らしい役目を果たす姿こそが、それなのだろう。だからこそ、物量で押し潰す。
それでも必死に押し返してくる。しぶとさは逸品だ。蜚廉に届いた手がその外殻を引きちぎろうと動いたが――その前に、その手から力が抜けていった。
沈黙した肉塊たちを見て、蜚廉は何を思うのか。ともあれ視界内で障害となる敵は、これで殆ど排除できただろう。
次なるは、囀る沈黙だ。
🔵🔵🔵 大成功
クラウス・イーザリー機械仕掛けの瞳を使用
感覚共有と透明化能力を使ったドローンを周囲に飛ばし、しっぱいさくと研究者たちの位置を確認
救出/退避に用いるルート上にいるしっぱいさくだけを倒して進む
しっぱいさくは遭遇次第拳銃の射撃とレイン砲台のレーザーで撃破を狙う
接近されたら槍の形に錬成した魔力兵装でなぎ払って退ける
研究者たちのところに辿り着いたら守りながら安全地帯に逃がす
もし余裕があれば、数機のドローンに周囲を見張らせて残りをハッキングに回して研究成果のデータを奪い取っていく
(最優先事項は救出たから無理をしない程度に留める)
帰路で多数のしっぱいさくに襲われたら、自分は足止めに残って研究者たちを先に逃がす
|機械仕掛けの瞳《オートマタ》は確と呼び起こされた。ドローンたちはすぐに己の姿を透明化させ、索敵のために散開する。
先ほど、どこかで銃声が聞こえた。誰かが『しっぱいさく』との戦闘を開始したのだろう。急いだほうがよさそうだ。
索敵にて発見したひとつの部屋――その前にずん、とした巨体が視えた。
巡回している。同じ場所を、べた、べた……隙をつくことは可能だろう。クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)はその様子を視て目を細める。選んだのは、『しっぱいさく』の排除だった。
クラウスが放った弾丸に合わせ、レイン砲台のレーザーが『しっぱいさく』の肉を焼く。唸り声を上げてうねる体を不気味に思いながらも、まずは一体――!
物音を聞きつけられる前に事を済ませなければ。クラウスは『しっぱいさく』の死体を押しのけるようにして研究室のドアを開く。それに気づいた研究員がびくりと反応した。ドアの外に倒れている肉塊を見、クラウスが味方であることを理解したのか、急いで彼の側へと駆け寄ってくる。
「もう大丈夫だよ。外へ!」
「ま、待ってください……!
そう言って研究員を外へと連れ出すクラウス――ふと目に入ったのは、起動したままのパソコンと散乱した資料だ。慌てて荷物と資料をかき集める研究員の横で、クラウスはハッキングを仕掛ける。厚いプロテクトは破れなかったが中身の情報は最低限持ち帰れた。見れば、資料のタイトルには『失楽園戦争』というワードが踊っていた――。
少し走ったところで、物音を聞きつけた『しっぱいさく』たちが集まってきた。
挟み込まれたが、幸いにも退路を塞がれたわけではない。殿を務めよう。研究員を走らせ、自らはぶよぶよとした肉塊たちの前に立ち塞がるも。
肉片のような肉体から、赤い液体がどろりと垂れた。
「――ひ、っ」
背後を振り返った研究員が、悲鳴を上げる。与えられたのは『恐怖』だ。あっという間に通路へ満ちた液体がクラウスと研究員の足元へ、波のように、ぞわりと迫り、足が浸る。……思い出すはあの|日《陽》の赤だった。恐怖は伝播する。
それでもクラウスは最低限、そして最大限、有効であろう行動を取る。
敵と出会わない安全なルートを導き出し、ドローンに導かせる。『しっぱいさく』はEDENにとってはたかが一体だが、されど一体。研究員たちにとっては間違いなく命取りになる相手だ。
「――いいから、逃げて!」
後退しながら弾丸を放ち、魔力兵装で肉を切り裂く。生ぬるい血飛沫があたり一面に散っていく。
🔵🔵🔴 成功
赫夜・リツあの肉の塊のような何かが『しっぱいさく』なのか
…見た瞬間、胸が苦しくなったけど
相手は囚われた人達の逃亡を防ぐために配置された敵だし
救出にきた僕たちに襲い掛かってくるよね
今は躊躇う気持ちを心の中にしまって、対処することに集中しよう
炎の蝶を召喚し【緋色の舞】の浄化の炎を敵に向かって放つ
苦しむかもしれないけど、祈る気持ちを込めて燃やし
赤黒い何かの体を浄化していく
攻撃がきたら、全身に霊的防護を纏わせて受け止めて
その命が尽きるまで対応し続ける
この赤黒い姿を見ていると
いつか自分もこうなるかもしれないって考えてしまって…ダメだな
そうならないように、がんばっていくって決めたんだから
しっかりしないと…
肉塊であった。
ただ、赤黒く、グロテスクな、唾液のように赤い液体を垂らしているそれ。床を汚しながらべたべたと廊下を歩き回っている。
あれが、あの肉の塊のような『何か』が、『しっぱいさく』なのか。何をもって失敗作だと定義されたか。彼らはどう生まれ、どう定義され、そのようになったのか……一度想像してしまえば、止まらない。
赫夜・リツ(人間災厄「ルベル」・h01323)の胸が軋むように痛む。だが、|あれ《・・》を見て躊躇っている暇はない。
自分たちが捕らえ、監視していた一般人たちが、EDENの手で逃がされている。それに気がついているのか、いないのか、べたりべたりという足音が迫ってくる。接敵は近い。腹を括るべきだろう。
角を曲がってきた巨体――見えるは生ぬるい肉体『しっぱいさく』! 先手を取ったのはリツだった。祈るように、あるいは誰かへ手を差し伸べるように掲げた掌から、蝶がふわりと飛び立った。
「ヒイちゃん、頼んだよ……!」
炎の蝶が踊る。浄化の炎が『しっぱいさく』の肉体を焼いていく!
嗅覚が嫌な匂いを拾う。油臭い煙を上げながら苦しむそれを見て眉をひそめながらも、リツは祈るような気持ちで、殴りかかってくる赤黒い体を受け止める。
浄化の炎を受けてなお燃え続けるその体、いくらの業を背負っているのだろう。ぬちゃぬちゃと脂ぎった体はよく燃え、そして何よりも臭く、しぶとい。
リツは異形と化した腕を振るい距離を取る……唸っていたその体が、絶叫を上げながら床へと倒れていくのを、彼は確かに見送った。
息を整えながら息絶えた『しっぱいさく』を見るリツ。
――いつか、自分もこうなるかもしれない。ひゅ、と喉が鳴る。焼き払われた巨体を見ながら、リツは救助のために走る。
いつか自分もこうなるかもしれない。『しっぱいさく』。その名前が頭の中をぐるぐる、延々と回っている。腕が疼く、異形化が解けた今でも、『それ』がわらっている気すらする。
自分はそうならないように。刻み込まれたトラウマを刺激してくる名前――首を振る。
自分は、しっかりしなければ。……救助のためにドアを開けて、中にいる研究員へ声をかけ、そして彼は焦げ臭いその場を後にする。
🔵🔵🔴 成功
澪崎・遼馬研究についての情報も得たいところだが、警官としては人命を優先するべきだろう。だが……死神としてはあの『しっぱいさく』を対処しなければならない。あれの元がなんであれ不可逆だとすれば尚更。
「許せ、とは言わん。恨むと良い」
【貴方の為の葬送曲】を使用。哀悼と共に『しっぱいさく』達を攻撃。一般人達を助けるための経路を確保しよう。命を奪うことの罪も、殺した者達からの怨念も当人が背負うべきものだ。だが───
「……命を弄んだ贖いは貴様達にしてもらうぞ」
この先に待つ者へ、この悪趣味な拠点を作り上げた者達へ。そう告げて歩を進める。
人命が優先だ。――澪崎・遼馬(地摺耶烏・h00878)の結論は素早い。
彼らが行っていた研究についても気になるところだが。監禁されてまで何を研究させられているのか――だが警官としての努めをまず優先すべきだ。
然し、死神として。葬送を司るものとして、闊歩するあの肉塊を、『しっぱいさく』をそのままにすることなど、出来なかった。
彼らの元の|材料《・・》が何であれ、その存在そのものが命を冒涜している。不可逆であることは姿ですぐ分かる。不気味な顎、意味不明なところについた目玉、アンバランスな肉体……。
廊下にいやに響き渡る、べたべたとした足音を辿ればすぐに接敵できた。異形の体へ銃口を向ける、容赦はいらない。なにひとつ。この先に待つ要救助者のためにも。
「許せ、とは言わん。恨むと良い」
哀悼と共に放たれた弾丸により、『しっぱいさく』の腹らしき部位が撃ち抜かれる。狭い廊下に甲高く響く銃声――!
撃たれた風穴から血液がどばりと溢れてくるのを見ながら、遼馬は眉をひそめた。『しっぱいさく』は苦しげに唸りながらもまだ迫る。遼馬はゆっくりと後退しながら冷静に弾丸を撃ち込んでいく。
少しばかりのしぶとさをもって、『しっぱいさく』は遼馬に手を伸ばすかのように――恐怖から逃れようと、救いを求めるかのようにして、前のめりにぐちゃりと倒れ伏した。
硝煙の匂いと、『しっぱいさく』の脂ぎった体の臭い、そして血液らしきそれの鉄臭い臭いが周囲に充満している。息を吐く。混ざり合ったそれ、気色が悪い臭いだ、と思った。
――この『しっぱいさく』が命を奪った数は知らない、知ることはできない。だがこれを『作れ』と命じた者たちがどれだけ殺めてきたかは分かる。
この『しっぱいさく』たちが、己を殺した怨念を持つことができるならば。自分はそれを背負ってやろう。
「……命を弄んだ贖いは貴様達にしてもらうぞ」
その眼差しは『しっぱいさく』たちではなく、この先に待つ者へと向けられていた。囀る沈黙よ、ペンタクルム・ゲートよ、悪趣味な集団よ。それらを確りと黙らせてやる必要がある。
先へ、歩みを進めよう。要救助者の元へと向かおう。
……『しっぱいさく』への葬送曲の演奏は終わったのだから。
🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『『囀る沈黙』レティセンス』
POW
沈黙の香気
【他者を魅了するレティセンスの身体】から【思考、感情、言葉を失わせる甘い香り】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【思考も会話も出来ない人形と化】して死亡する。
【他者を魅了するレティセンスの身体】から【思考、感情、言葉を失わせる甘い香り】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【思考も会話も出来ない人形と化】して死亡する。
SPD
静かなるベラドンナ
自身の【影】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【言葉と意思を奪う沈黙の毒】を付与する【変幻自在の黒い茨の触手】に変形する。
自身の【影】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【言葉と意思を奪う沈黙の毒】を付与する【変幻自在の黒い茨の触手】に変形する。
WIZ
沈黙人形
半径レベルm内にレベル体の【言葉と意思を奪われた元人間の人形達】を放ち、【大勢の目と鋭敏な感覚】による索敵か、【言葉と意思を奪う沈黙の毒が付与された短剣】による弱い攻撃を行う。
半径レベルm内にレベル体の【言葉と意思を奪われた元人間の人形達】を放ち、【大勢の目と鋭敏な感覚】による索敵か、【言葉と意思を奪う沈黙の毒が付与された短剣】による弱い攻撃を行う。
●だまりなさい。
「どうして邪魔をするの」
普段の甲高い声はなりをひそめて、いやに静かな呟きが、聞こえた気がした。
禍々しく、毒々しく、口にすべきではないと一目で分かる『ペンタクルム・パール』を、まるで飴玉でも飲み込むかのように。あーん、と口を開け……お菓子を頬張る少女のように、『囀る沈黙』レティセンスはパールを飲み込んだ。
毒々。ドクドク。心臓が脈打つ。己の体に巡る、巡る毒が、ぼたりとレティセンスの足の先を腐らせた。自壊。知っていたというのに、黒くも愛らしいつま先が徐々に溶けていく様子に、レティセンスは歯噛みする――。
――周囲の風景が一変する。屋敷の廊下だ。永遠に続いているかのようで、先の見えぬ廊下。言うなればリミナルスペース。
そこに、あちらこちら。人間によく似た生々しい『|人形《・・》』が落ちている、座っている、転がっている。
あるEDENがレティセンスの姿を視認した瞬間――踊るように、少女はその場でスカートを翻す。
静寂の中でよく響く、布のはためく音と、高い笑い声と共に姿を消す。
レティセンスが居た場所へ残るは、少女のような姿をした人形だけ。
――直後。EDENの足元にあった人形が、|カタリ《・・・》と音を立てた。その音にやや遅れて、EDENのそばに現れるはレティセンス!
「ようこそお客様、邪魔者、うるさい|雑音《ノイズ》のお客様……消えて……いなくなって!!」
言葉はもはや通じない。一方的な|雑音《ノイズ》だけを響かせて、ヒステリックに少女は叫んだ。
赫夜・リツレティセンスの叫び声と共に【赫耀たる飛翔】を発動
――以前の彼女とは違う
そうしなければならないと感じ取れるほどの殺意と脅威が
彼女の体から溢れ出ている
瞬時に距離を詰めてくる彼女は危険だ
飛翔を維持し触手に捕らわれないように注意しながら戦おう
霊的防護を高めて、黒刃と怪力状態の異形の腕で攻撃を行う
迫り来る触手は、カウンターとジャストガードで対処し
異形の腕で触手を握り潰し、引き千切り
黒刃の切断も駆使して、まともに喰らうのを防ぐ
毒を喰らっても喰らわなくても
彼女が話しかけることがなければ、沈黙を貫き攻撃の手を休めない
躊躇えば救助した人達にもこの場にいる人達も…友達も危険に晒される
最後まで気を緩めず戦い抜こう
空間には静寂が満ちている。
「静かで素敵」
甘い声で笑う少女を前にして、赫夜・リツ(人間災厄「ルベル」・h01323)は身構える。囀る沈黙――どうやら体に相当な負荷をかけているようだ。体の端々、肌が変色している部分がじわりと夏のアイスクリームにも似て溶けていっている。少女らしいつま先も同様だ。ゆっくり溶けていく脚で小さくくるりと踊る少女。
「なのにやっぱり、あなたはうるさい」
心臓の音。血潮が流れる音。呼吸、思考ですらも|雑音《ノイズ》。向けられた赤い視線。リツはそれに睨み返して、身構えた。
躊躇ってはならない。救助した人たち、この場にいるEDEN……友達も危険に晒されるのだ。そんな状況で油断など、できるものか。
「さあ――死んでッ!」
叫び声、優雅に揺れるスカート。それを合図としてリツは飛翔する。特殊な空間とはいえインビジブルは存在する。高い天井を利用して宙に浮き上がる。
以前の彼女とは違う。それは殺意か、戦闘能力か。目の前で姿を消したレティセンス、どこへ現れても良いようにと構えていたが。
……天井に吊られていた人形が、カタリと音を立てた。はっと振り向くリツ。だが、反応がやや遅れた。
「隙だらけよッ!!」
「――うあッ!?」
唐突だ。真横から殴りつけられた――! 彼女の体に咲き乱れるはベラドンナの花。レティセンスの影がずるりと揺れている。……先手を取られた! 見れば、先程吊られていた人形が失せている。
なんとか滞空状態を保つリツ。体を蝕む毒素を解していく体。
強力な直撃を受けてなおリツが冷静でいられたのは、彼自身の体がその毒素に打ち勝てる体だったからこそだ。これが他のEDENであれば、どうなっていたかわからない。
一瞬レティセンスが居た場所を見れば、彼女の居た場所に残るは、人形――。
「……そういうことか!!」
仕組みは実に単純、だからこその『厄介さ』だ。再度スカートを振り、衣擦れの音を響かせたレティセンスが姿を消す――次はこちらだ。最寄りの人形の山を見て構え直すリツ、そこへ案の定現れたレティセンス。伸ばしてくる触手を黒刃にて切り裂き、異形化した腕で彼女へ一撃を食らわせ、なんとか叩き落とす!
「――嫌。嫌、いや、いやぁっ!! なんで大人しくできないのッ!」
叫びと共に、舞い上がった塵埃や血にも似たどろりとした体液を残し、レティセンスは転移した。
再度上空に吊られた人形と位置を入れ替えたレティセンスが、リツの四肢を狙い、茨の触手を勢い良く伸ばしてくる!
「さあ! その魂をちょうだい! 少しでも……そう、少しでも、私たちの糧になって、死ねぇッッ!!」
なんとか横へと転がり、触手は床へと突き刺さる。だが床に跳ね返るように襲い来る茨の触手。それをなんとか往なし致命傷にならないよう逃すが――遠距離から攻撃を加えてくるレティセンス、そして近距離からの攻撃を選んだリツ。分が悪い――!
🔵🔴🔴 苦戦
断幺・九アドリブ等歓迎
おしゃべり禁止って? 寂しいこと言うなよなァ。
ま、これじゃあ無駄口叩く暇もねえのは間違いないンでチュけど!
ワープだか入れ替わりだか知らねえが、ギミックの起点は人形かね。
甘えた攻め手は打たねーで、まずはソッチからツブしきりまチュか。
そ・れ・にィぃ――ぎゃは。お嬢サマってば、なァんか随分顔色悪りイみてえじゃん?
向こうも火力で瞬殺ッて手合いじゃあなさそーだし、そーゆーことなら遠慮無く――√能力【|平和《ドゥームズデイ》】!
デバフを帳消しにする護霊の超回復と自慢の[逃げ足]で泥仕合めいた遅延戦法仕掛ける間、銃口は徹底した人形狙い。
ゆっくりじっくり削ってこうぜ。オマエの息の根止まるまで!
澪崎・遼馬アドリブ、連携歓迎。
「余程此度の計画に執心しているらしいな『囀る沈黙』」
やはり待っているのはあの災厄か。加えて、今はペンタクルム・パールによって強化されている状態だったか。過去に勝利しているとはいえ慢心するつもりはない。
「こちらが不躾な客であることは承知しているとも。だが誘拐事件における突入に礼儀は必要あるまい。ゆえに───貴様達の目論見はここで砕かせてもらおう」
敵が強化されている今、√能力もこれまでと同じだとは思わない方が良いだろうな。まずはレティセンスの√能力である香気を【唯識】で砕く。
続いて【汝、埋葬に能わず】を使用。銃撃による牽制をしつつ接近し、技能の『捕縛』と併せて棺に巻かれたベルトを使い災厄へ巻き付けることで拘束する。その隙を突いて殴り棺桶で攻撃。強化されているレティセンスを相手に攻撃がどこまで通じるかは分からないが、短時間でも拘束できれば他のEDEN達も有利に動けるだろう。
敵からの攻撃は『第六感』と『見切り』で回避を試みる。
「おしゃべり禁止って? 寂しいこと言うなよなァ」
「黙って……黙れッ、黙れ黙れ黙れッ!!」
まあ、こちらが喋っておらずとも、囀る沈黙はひとりで騒ぎ立てるわけだが。地団駄を踏む脚がべちゃべちゃと音を立てている。
「ま、これじゃあ無駄口叩く暇もねえのは間違いないンでチュけど!」
構えられた銃口。断幺・九(不条理テンペスト・h03906)。戦場は惨状。人形ひしめく不気味な空間、こんな不気味な場所で戦い抜かねばならない。面倒だが、それでもここまで付き合ってやったのだ。ダルいが――ダルいなりにやってやろうか。くるり銃を回し、彼女は戦場の様子を伺う。成る程、人形だらけだ――。
――片や並び立つ、黒衣。
さて、待っていたのは災厄である。人形に固執する、静けさに固執する災厄――『囀る沈黙』レティセンス。禍々しいペンタクルム・パールにより強化された能力は、あまりにも強大だ。彼女自身の体を自壊させていくほどに。
過去、邂逅した際は勝利しているが――慢心するつもりはない。
「余程此度の計画に執心しているらしいな『囀る沈黙』」
引き金に指をかけ、レティセンスへと銃口を向ける澪崎・遼馬(地摺耶烏・h00878)。
「こちらが不躾な客であることは承知しているとも。だが誘拐事件における突入に礼儀は必要あるまい」
少女がその言葉を聞いていないことは理解している。自らに言い聞かせるようにして呟かれる言葉。少女は「うるさい」と喚きながら首を必死に振っている――。
「ゆえに――貴様達の目論見はここで砕かせてもらおう」
弾丸は放たれた。ふっと衣擦れの音を立てながら目の前から消える体。そしてぶわりと溢れるは、魅惑的な香気――! 思考、感情、言葉、すべてを曖昧にする甘い香りを、遼馬は『握りつぶした』。これで、状況はシンプルな『殴り合い』だ。次にレティセンスがどこに現れるか――警戒していた遼馬の後ろ。カタリ、人形が音を立てた!
「はぁい♥️お兄さん、こちら♥️」
次に現れたその姿へと弾丸を放つ――埋葬に能わず。その弾丸を避けた隙を狙い、すぐさまベルトをレティセンスへ巻き付け拘束する。撃ち抜こうとした弾丸はレティセンスの長い髪と頬を掠め、少女の眉をひそめさせたが――瞬きの瞬間。
封じたはずのそれは――人形になっていた。
「……!」
「私を操り人形にしようだなんて――甘いのよッ!」
遼馬の体を貫いたのはレティセンスの茨だった。どくりと苦痛。毒は打ち消されているが、それでも痛みは伝わるものだ。唇を結び、自分の体を貫いた茨を掴み上げ、レティセンスを廊下の奥へと投げ、振りほどく!
「は……か、ふっ、ふ、……ふふ」
それでも、まだ少女は余裕そうに笑う。黒い血液を口から垂れ流しながらでも。
その瞬間だ。
「――へーい、お兄さんこーちらァ!」
疫病。病。毒。転じれば――薬。|平和《ドゥームズデイ》は唐突に。最後の審判、その一日は平和であるべきだ。
遼馬の傷の痛みがじわりと楽になる。僅かではあるが、理性を取り戻すには十分だ。
ワープだか入れ替わりだかご存知ないが――実際のところ両方。あの|ギミック《・・・・》の起点は人形だと、九は理解していた。ならば狙うべきは――大量に存在する、この人形!
「甘えた攻め手は打たねーで、まずはソッチからツブしきりまチュか」
まずはとレティセンスが立っていた場所に現れた人形を打ち抜きながら九は笑う。それに青ざめた表情をするレティセンス――!
「そ・れ・にィぃ――ぎゃは。お嬢サマってば、なァんか随分顔色悪りイみてえじゃん?」
「やめなさい……っやめて!! 何するのっ、私の人形たちを、ああっ!?」
悲鳴など一切関係ない。銃口は徹底した人形狙い。どんどん破壊されていく人形たち。慌てて九を狙い始めたレティセンスだが、さすがの逃げ足だ。なかなかその茨は命中しない。掠っただけではすぐに回復されてしまう。
その焦りの隙をついて遼馬の|殴り棺桶《レノーア》がレティセンスを横殴りにする――!
「あぐっ……!」
壁へ叩きつけられたレティセンス、歯噛みしながら次の人形へと転移する――残された人形を撃ち抜く九。
一部の空間であるが、転移先の人形が絞られてきた。再度遼馬が放ったベルトがレティセンスを拘束する。その一瞬の隙に、九が放つ弾丸が人形を撃ち抜く!
「感謝する」
「ひひ。そういうのいらねっ」
じわりじわりと塞がっていく傷口――持久戦だ。打ち抜き、貫かれ、互いに消耗していく――。
救済執行。最後の審判を受けに、黒き街へ行くがよい!
ゆっくりじっくり削ってこうぜ。鼠、死神、ともに進めや進め、人形の葬列。どこまで行くかって? お聞きになるか、その言葉。
「オマエの息の根止まるまで!」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 成功
ディラン・ヴァルフリート目障り、耳障り、他者が存在するだけで虫唾が走る
その心理はよく分かりますが
それ故に敢えて問う事も特にありませんね
さて
有利な戦場……との事でしたか
戦闘力の上昇した敵速度には
《第六感》先読みと《早業》反応速度で対処
【覇刻】特に[竜眼]《霊視》を重視
異空間に何らかの法則が敷かれているなら分析し戦術に反映
色欲の悪性も封じている以上何かを感じる所以もありませんが
敵√能力の作用だとしても微弱ダメージなら香り共々
《オーラ防御+受け流し》
耐久力は必要に応じ自己《ハッキング》と
《異形化》肉体再構築で誤魔化し
3割を切らぬよう留意
防御重視で立ち回り自滅を誘い
敵が隙を見せれば√能力の金縛り拘束から《怪力》強撃に繋ぎます
目障り、耳障り、他者が存在するだけで虫唾が走る。
同意だ。故に何も言う事はない。ただ喚く少女を見ていればいい。ディラン・ヴァルフリート(|義善者《エンプティ》・h00631)は剣を構え、その動きを目で追っている。
「あなたも、あなたもうるさい。何よ、何よその目――黙って!!」
無言であれ災厄、難癖をつけてくる。踊るように足音が鳴り、スカートが翻った。
魅了能力に備わっているのが色欲だけとは限らない。演舞から人々が目を逸らせぬように。レティセンスにはそれでよかった。自分の舞う姿さえ見せることができるなら、それでいい。――『|覇刻《ロア》』。姿を消したレティセンスの気配を追う。
「――そこ!」
唐突。懐に踏み込んできたレティセンスの一撃を受け止める。異様に速い――目を細めたディランが飛葬殲刃を振る。抉られる腹、血液は花びらとなって散っていく。軽いとはお世辞にも言えない一撃を喰らい、ディランの目前から舌打ちと共に姿を消すレティセンス。
――リミナルスペースはどこまでも。いくら遠視・霊視が出来るとはいえ戦闘と同時では追いつかないか。
そして何より『おかしい』のは。霊視を用いても、捉えられない。否。
|すべての人形《・・・・・・》に、反応がある――!
「あなた、ずっと人を小馬鹿にしてるでしょ」
気づけば近接している笑う少女。法則は掴めた。この少女は『音』を起点として、『人形』と己の位置を『入れ替えている』――! 荊巻きつく腕で切り裂かれる肌。ディランは勤めて冷静だが、その眉間にほんの少しだけ、皺が寄る。甘い香りにより、じわじわと蝕まれていく感覚。感情を、思考を、己の『悪性』すら削ぎ落とそうとしている――!
どれだけ防御を固めようとも嗅覚、そして呼吸を封じなければ完全な防御は敵わない。
……持久戦だ。自壊を厭わず攻撃してくるレティセンス、防御に徹するも削られていくディラン。入れ替わりのタイミングに発生する僅かな隙を狙い、レティセンスの体力を削り取っていくも、このままでは自己回復だけでは間に合うか怪しくなってきた。耐え忍ぶということは、そういうことなのだ。
「あなたは私とおんなじよ、分かるわ、|雑音《ノイズ》が似てる」
どろり溶けた指先で両頬を覆うレティセンス。その隙に叩き込まれた強撃、しかし少女はまだ笑う、笑う、笑う――そして咳き込んで、血液としての花びらを吐き出すのだ。
「――どうする?」
顔を上げた少女、くすくす、笑い声は止まらない。
これは切り捨てる他無い相手だ。『悪』である。――削られた理性がそう叫んだ、気がした。
🔵🔴🔴 苦戦
クラウス・イーザリー「悪いけど、いなくなることはできないよ」
どうしてと問われれば、答えは『誰かを守りたいから』というものになる
そんな想いは理解されないだろうから戦うしかないんだけどね
relierを使ってネックレスと融合
相手の力は……何だろう
人形を媒介に転移する能力だろうか
神経を研ぎ澄ませ、聞き耳と第六感で敵の移動を察知して
拘束詠唱を交えた魔法で反撃
人形を破壊すれば能力を抑えられるかなと考え、可能なら範囲攻撃を合わせて人形ごと攻撃
あとは空間引き寄せ能力で転移を妨げられないか試してみる
相手の攻撃は見切りで回避を試み、避け切れないなら魔力防御で防ぐ
毒で動けなくなりそうなら自分ごと敵を攻撃して蘇生能力で復活する
「悪いけど、いなくなることはできないよ」
答えることはないだろう。それでもクラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)は静かに呟いた。
どうしてかと問われれば、『誰かを守りたいから』だ。レティセンス――いや。彼女だけではない。ペンタクルム・ゲートがしてきた行動は許されざる行為だ。
誰かを守りたい、そのために戦う。そんな想いは理解されない。戦うしかないのだ、目前に立つそれと。
「黙って」
どろどろ溶けていく指先、指の先が失せてしまった。けれど問題はない、まだ、まだ立っていられるのだから――。
レティセンスの声に返答せず、クラウスは紅いネックレスを握りしめ、胸に抱く。溶けるように消えていったそれの熱を感じながら、前へと向き直る。獣の耳を備えた|灰狼《クラウス》が、レティセンスを睨みつけた。
神経を研ぎ澄ませる――レティセンスの行動を観察する。
ぎろりとこちらを睨んだレティセンスが、びちゃりとその場で、虫でも踏み潰すかのように足を鳴らした。
|カタリ《・・・》。側の人形から、音が鳴った。狼の耳が向く――これだ!
「――そこだッ!」
人形との位置交換、その直後を狙い撃つように放たれた魔法が、レティセンスに直撃する――!!
「づ、あぁっ!?」
不意を突かれたレティセンスが悲鳴を上げながらその場に崩れる。だが……周囲を見回し、舌打ちを合図として次の人形へと転移する!
「っ……あなたにはトリックがわかるのね!」
遠くの人形と入れ替わり、ワープしたレティセンス。ベラドンナの形をとった影が茨の触手となり、クラウスの脇腹を抉っていった。静かに回る毒――奥歯を噛み締め、痛みに耐えるクラウス。
レティセンスはそのまま姿を消し、次の一撃に備えている様子だ――。
「……そっちがその気なら、手があるよ」
手の内は透けた。どこかで機を伺っているというのなら――人形の破壊へと移る。人形を自分の周囲から排除し、先手を取られないようにと魔法を放つ――!
「あ、あっ、やめ……やめなさい!! ひどい、ひどいわっ!!」
人形を破壊されていくことに耐えかねたのか、姿を表したレティセンスが頭を掻きむしりながら、それを阻止しようと次なる茨の触手を伸ばしてくる。戦いにより熱を持つクラウスの呼気が炎となり――ふうと吹けば、その茨を灼いていく!
次いで、空間が歪む感覚。抵抗なく、引き寄せられる人形たちと、それに溶けかけた足を踏ん張り引き寄せられぬようにと粘るレティセンス――!
「チッ……ふざけないで……!!」
目の前から消え失せる。どうやらレティセンスは遠くの人形に転移したようだ。
構えた魔力兵装は手放さないまま、クラウスはレティセンスの気配を追う――。
🔵🔵🔴 成功
和紋・蜚廉そうまでして静寂を好むのならば、好都合。
元より我が種族は、目立たぬよう生き延びてきた。
ならば、その隠密性――今こそ発揮してみせよう。
本来の姿へと変化を解き、蟲の姿へ戻る。
極めて軽い体重による静音性。
脚部に備えた細毛による隠密。
この身が形作る流線型による俊敏さ。
目立たぬ技能と迷彩、そして擬殻布を纏い、領域内へ姿を溶け込ませるように沈んでいく。
隠れた我を探すのは、さぞ骨が折れるだろう。
尾葉と潜響骨。
更には翳嗅盤も用いながら、躍起になって我を探す気配を探知。
探り当てた気配と、領域内にはびこる人形。
その全てが、汝の悪意が刻んだ痕跡となる。
壊痕より掌を生やし、既に我は居ないと油断した隙へ向けて握撃を放とう。
……何者よりも静を望むのなら。
いっそ、生を手放す事だ。
生きている以上、あらゆる音からは逃れられまいよ。
そうまでして静寂を好むのならば、好都合。静かなるは己の領域だと思わないほうがいい――もちろん、互いに。
和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)はその名通りの生き方をしてきたのだ。
その隠密性――恐怖を覚えるものもいるだろう。軽快、静音、脚には繊毛、流線型。狭い場所もすり抜けてみせるその体。
破壊された人形たちが増えてきた戦場、隠れるには丁度いい。
レティセンスはその姿を見てあからさまに嫌そうな顔をした。
彼女は人間らしい感性などまともに持ってはいないが、『それ』が人の嫌悪感を刺激する姿だということは理解していたからだ。
「叩き潰して。姿通りにしてやりなさい」
蜚廉が隠れた廊下を指さし、静かに呟くレティセンス――彼女の背後、影から現れるは沈黙人形。
ヒトに限りなく似た顔と体を持つ傀儡――否。材料が『人間』なのだから、たちがわるい。それらが、周囲に放たれる――!
ぐるり、あちらこちら、何処を見ているのか分からぬ焦点の合わない視線。ぎこりと首があらぬ方向へと向く。呼吸音はしない。彼らが動く音だけが響いている――そんな自分たちの足音すら聞き取る感覚と共に、蜚廉の姿を探し――瞼すら閉じぬ硝子めいた目玉が、残骸の隙間を覗き込む。そして、壊された人形たちの残骸を勢い良く腕で払いはじめた!
文字通りの骨が折れるような音、人形たちの腕は容赦がない。自らの腕にヒビが走るほどの勢いで払い除けていく。
蜚廉は発見されれば次の物陰へ、隠れたそれが破壊されれば、また次へとするすると。だが『姿によるアドバンテージ』はある程度でしかない。それは蜚廉も理解している。狭い隙間を駆け抜け、ある程度の『痕跡』を残し、レティセンスへとじわりと迫る中――。
その瞬間は、まさしく唐突だった。
「――きゃっ!!」
レティセンスが悲鳴を上げた。床から肉が盛り上がる。無数の掌が、廊下を埋め尽くさんばかりに発生した――!! 一本目の腕は何とか逃れたが――二度目。続けざまに生え変わる腕、そのうちの一本がレティセンスの脚を掴み取り、ぎりりと力を込めて――引きちぎる!!
「ぎ、――ッ!」
強く歯噛みをする音と共に、レティセンスの姿が消えた。脚を引きちぎられたことによって、拘束から逃れたのだ。掌の中に残ったのは少女の片足。そして――蜚廉が隠れていた側の人形が、|カタリ《・・・》。
「……見つけたッ!!」
「――ぬぅッ!」
小虫を叩き潰すかのように放たれたのは、棘を纏わせた掌での一撃。すぐさま人化けの術にて逃れるも、深い傷を蜚廉に残す。
姿が見えぬからといって、気を抜くような災厄ではない。加えて人形たちの索敵がある――完全に隠れ抜くことは、不可能だったか!
互いに呼吸を乱しながら相対するレティセンスと蜚廉。
「……何者よりも静を望むのなら。いっそ、生を手放す事だ」
「そう。ごめんなさいね、嫌よ。私だけ生きていればいいの」
互いに消耗している――それでも、くすりと笑う少女。千切られた脚を茨を絡めた義足で補いながら――あちらこちらが溶けた姿で。咳き込み、どろり溶けたような黒い液体を吐きながらも。肺腑を侵され己の|音《・》が|雑音《ノイズ》へと変わっていっている事に気がついていても。
「――だが生きている以上、あらゆる音からは逃れられまいよ」
「気に入る音だけ残せばいい。違う?」
意思の疎通は不可能だ。
――私は知ってる。生き物はどれだけ静かにしてても、|カサカサ《意思のある》音がするの!
🔵🔵🔴🔴🔴🔴 苦戦
クラーラ・ミュスティアウゲン私は、あまり喋る方ではありませんから安心してください
気配と音で敵を捉えます
人形の足音、衣擦れ、動きの気配
沈黙人形には距離を取って対応
広く薙ぐように範囲攻撃を行います
狙いは撃破よりも、索敵網と転移先を削ること
近づく人形は藍月で受け流し、短剣の毒をまともに受けないよう立ち回ります
数で見るなら、こちらは数で斬ります
人形が動けば、本体も動く
カタリと鳴る音、香気の流れ、気配の薄い空白
そこからレティセンスの逃げ場を読み、飛燕剣で進路を塞ぎます
逃げ場を削り、転移先を狭め、最後は藍月の間合いへ
一撃で仕留めるより、静かに箱庭を解体するように
逃しません
本体が現れた瞬間、飛燕剣で退路を縫い留め、踏み込んで斬ります
クラウス・イーザリーインビジブル化
影の竜を模した翼や角を持つ姿になりレティセンスを追う
移動しながら囚影を使い、|無明《二丁拳銃》を影喰らいに変形
片方の銃で牽制し、もう片方の銃で撃って影縫いを付与する
……影を縛る能力、うまく効けばいいんだけど
聞き耳による音=転移の察知は変わらず続け、人形の破壊も続ける
あとは視界に入り次第根気強く攻撃して撃破を狙う
茨の攻撃は魔力防御で凌ぎつつ高速詠唱+属性攻撃で焼き、できるだけ攻撃を食らわないように立ち回る
毒を食らいすぎると戦えなくなるからね
能力を読んでいることはバレているし、それを利用したフェイント(転移すると見せかけてしないとか)にも気を付け、第六感も使って察知するよ
「私は、あまり喋る方ではありませんから安心してください」
何なら、|見る《・・》ことさえも。視線すら|雑音《ノイズ》と断ずる今のレティセンスにとっては、クラーラ・ミュスティアウゲン(閉ざした瞳の武侠剣士・h12663)は好ましいと言える存在だった。
「……それでも、うるさいのよ」
心音が、呼吸が、存在が!! 髪を掻きむしっている間に、頬の片側が溶け落ちていく。自壊は近いが、あと一押し、二押し必要か。
広範囲の攻撃で、人形を潰していけば良い。その意見と方針はクラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)も同じとするところだった。レティセンスとは異なり、濃い影と気配を持つその姿。竜の角に翼、ばさりとはためかせたそれ。自分よりも『濃く、煩い気配』など、当然囀る沈黙は気に入らない――!
「――黙りなさいよぉッ!!」
叫ぶ声は甲高く、それを合図に姿が消える。
レティセンスから溢れた気配と音。クラーラが薙ぐ飛燕剣、人形たちを両断していく。
物言わず迫る琺瑯の目をした沈黙人形だけでなく、その場で横たわったままの人形たちをも巻き込んで。一定の距離を保ち、人形たちを丁寧に潰していく。
クラーラはただ静かに迫る人形の短剣を受け流す。攻撃は些か単調な様子で、意思の無さが伝わってくるようだった。なまじ大量、あるいは大人数というべきか。短剣の切先、その幾らかは掠めるように受けたものの、弱い毒素程度では止まらない。
「数で見るなら、こちらは数で斬ります」
それだけです。……クラーラの狙いはレティセンスの撃破ではなく、その索敵網と転移先を削り切ること。
転移先を絞らせれば当然隙も見えてくる。人形が動けば、本体も動く。カタリ音を立てた人形を潰せば、別の人形へと転移せざるを得ない――トリックを暴かれ、踏みにじられる心地とはどのようなものか。今のレティセンスでは答えられない質問だろう。
距離を詰めようとしても――それを許さないのが、クラウスだ。
クラーラに背を預けるようにして、影の竜は後退しつつ|無明《二丁拳銃》にて弾丸を放っていく。こちらなら手数が劣ると、レティセンスが近接し、クラウスの隙を突こうとしたが――。
「あっ……!」
影喰らい――レティセンスの茨が消え失せる。己の影を『喰らわれた』! 慌てて身を引くその体に牽制の弾丸を一発打ち込んで、クラウスは静かにレティセンスを睨む。その背後からクラーラの斬撃が放たれ、彼女の周囲の人形が壊されていく!
影を喰らわれた感覚を確かめるように、レティセンスは一歩後退する。クラウスは静かに銃口を向けたまま、その焦りを見据えていた。
沈黙人形たちも砕けてしまえば『黙りこくる』もの。殲滅。クラウスとクラーラの手により一体も残らず壊された等身大の人形たちの欠片を踏み、レティセンスは息を吐き、咳き込み、血反吐を溢した。
……限界が、来ている。そこへクラウスの弾丸が飛び込んで来る。対処しようと体を捻り、致命は避けるも、ふらついて。それでも反撃の茨がクラウスの喉を狙い伸びていく。こちらもギリギリだ。一歩間違えれば一瞬で戦闘不能に陥るであろう一撃を避け、クラウスは静かにレティセンスの次の動きを見る。根気強く削ってやった。互いに息を切らし、呼吸する中で。竜は、咆哮のひとつも上げはしない。ただ静かに……そう。彼女が好むような静かさで、レティセンスを見続けていた。
「か、ふ……っ」
美しく舞っていた少女はもうどこにもいない。咳き込む声も弱々しい。――数だけではどうにもならない。慌てる暇もなく、残り少ない人形への転移を繰り返して防戦に走るも――もはや、彼らの射程からは逃れられなくなっていた。
静かに、箱庭を解体するように。おもちゃ箱の中はからっぽだ。箱庭療法の四角い世界には、砂すらも残らない。
「逃しません」
退路も影も縫い留められた。
「ここで終わらせよう」
無明の紋様が光る。
クラーラの剣閃が災厄の体を袈裟懸けに切り捨てる。
クラウスの弾丸が災厄の頭に確りと撃ち込まれる。
斯くして手詰まり、いきどまり。
少女の体はゆっくりと――ぼろぼろ、崩れ落ちて、その場に大量の黒い花びらとして残ったのだった。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功